純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

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「じゃあ、芽衣の身体と山寺さんの身体が入れ替わっているってこと?」
「そうなの。だから、いまの私はこうして霞ちゃんの家に来ることができたの!」

 事情を聞いて霞は状況を把握しながら、素直に喜んでいいのかわからない表情を浮かべていた。
 目の前にいるのは山寺貢ではないのは間違いない。女性らしい仕草と間延びした喋り方は間違いなく芽衣そのものだ。『入れ替わった』という話も分からなくない。
 しかし、それで本当に歩けるようになったと言えるのだろうか。
 貢の足を使って歩いてやってきた芽衣には悪いけど、それは本当に芽衣が歩けるようになったとは言えないのではないだろうか。
 霞が望んでいたのは芽衣が貢の身体に頼って会いに来るのではなく、芽衣が芽衣自身の身体で会いにきてほしいと想う気持ち。
 まるで今の状況は、芽衣の心理を逆手に取った貢の身体交換にまんまと騙されたようにも思えてならない。

「それって大丈夫なの?大丈夫って言うのは、芽衣の身体目当てだったんじゃないの?」
「山寺なら心配ありません。ちゃんと躾けてありますから」

 疑いもなく屈託のない笑みで貢を信じている芽衣。そんな円らな瞳で言われるとさすがに霞も抵抗がある。

「犬じゃなくて狼かもよ」
「ケダモノ?」
「男はみんなね」

 断言する霞に少し悩んだように俯く貢(芽衣)。思う節があることを呑気に談笑している暇はない。一刻も芽衣を帰すことが本人のためになると霞は思っていた。

「早く帰った方がいいわよ。 私のことは大丈夫だから」

 霞が振りむくと、貢(芽衣)の顔が目の前にあった。そのまま体当たりを受けた霞はともにベッドに倒れ込んだ。

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「芽衣・・・?」
「いやっ!」

 霞の提案を拒絶する。押し倒された芽衣に圧倒された霞は顔を赤く高揚させていた。

「帰りたくない。せっかくお外に出て霞ちゃんに会いに来たのに、そんな早く帰さないでよ!」

 外に出たことで、今まで溜まっていた憂さが爆発した。感情を制御できない貢(芽衣)が霞の唇を奪ったのだ。

「好きなの、霞ちゃんのことが――」

 一人になりたくないというはっきりと意志を伝える。
 少しの時間だけでいい。魔法の時間が切れるまで過ごしたい。
 二人で――。

 
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 帰宅した霞は、そのまま自分の部屋のベッドで泣いていた。新学期から芽衣と一緒に登校できると思っていた霞が、裏切られた気分になってしまい、つい口走ってしまった強い非難。

「どうして、あんなこと言っちゃったんだろう・・・」

 現状は変わらない。今まで通り一人で学校に登校してクラスメイトと学園生活を楽しめばいいだけの話なのだ。そこに芽衣が加わる。そうすればもっと楽しくなると、淡い期待を持ってしまったことが間違いだった。
 芽衣の努力不足・・・?それとも、霞の一方的なワガママ・・・?
 いずれにしても、霞が発した言葉で芽衣は傷ついた。一体これからどんな顔して会うことができるのだろうか。
 親友だけど、芽衣に一歩線引きをして諦めたほうが良かったのかもしれない。
 お互い気苦労せずに、干渉しなければ誰も傷つかない・・・?

 だって、仕方ないよ。普通の子じゃないんだから――

「・・・本当に、それでいいの、芽衣・・・」

 諦め半分の心境のなか、突然母親に呼ばれる声が聞こえる。

「お客さんよ」
「私に?」

 涙を拭いて部屋を出ると、玄関に待っていたのは芽衣のもとで働く使用人の貢だった。霞も何度も顔を合わせたことがあるが、こうして貢が霞の家を訪ねてくるのは初めてだった。

「どうしたんですか?まさか、芽衣になにかあったんですか?」

 芽衣のことを心配する霞が貢に詰め寄る。しかし、貢は急に大粒の涙を零してポロポロと泣き始めたのだ。

「ええっ!どうしたんですか?いったい、何があったんですか?」
「――霞ちゃん」
「えっ・・・?」 

 いま、貢はなんて言った?普段は「有坂さん」と、苗字で呼ぶはずの貢が、慣れ親しく霞のことをちゃん付けで話す。そんな風に言う人物は一人しかいない。幼馴染でずっと一緒にやってきた、ただ一人の親友の姿を思い浮かべる。

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「芽衣・・・なの?」
「うん。そうだよ」

 何故霞がそう口走ったのか分からない。姿が貢でありながら、芽衣の面影を見てしまった霞に貢は両手を広げて待っていた。
 いや、貢の両足は震えていて、少しずつバランスを前のめりに崩れかけていた。霞は慌てながら――しかし、飛び込む様に、貢の身体を強く抱きしめた。

 
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