「あん…あ…………ハァ」

 あまりの気持ちよさに潤が失禁してしまう。
 その瞬間、毅の視界は真っ暗になってしまった。

「(うわっ、なんだ!?)」

 突然のことで困惑したが、おそらく失禁とともに毅自身も流れ出てしまったのだろう。

「(早く戻らないと……でも、何も見えない)」

 手探りのように潤の身体を探すが、何も感じないというのは非常に困るものだ。潤の体温すら感じないのだから。

「(きっとすぐ近くにあるだから、飛び込んでみればいいんだ。てやっ!)」

 手当たり次第に飛び込み台からプールに飛び込むように(イメージ)跳ねては落ちる。すると、ようやく視界が戻った。
 目の前には息を切らして失神していた潤がいた。

「………………あれっ?」

      16b476e7.jpg


 潤のつもりだったのに、目の前には潤がいる。毅は芹香の中に入ってしまったのだった。
 ゆっくり起き上がって鏡の前に、ツインテールを揺らした少女が映っていた。

「間違えたけど、彼女も気持ちよさそうにしてたしな。あんなに感じるのに性交嫌いなんて絶対損してるよ。……決めた!しばらく彼女の身体で遊ぶとしよう」

 満面の笑顔で鼻歌を交えながら服を着替え終えると、未だ眠っている潤を置いて一人ホテルを出て行こうとする。

「きっと潤もびっくりするだろうな。目が覚めたらホテルで、裸になってたら考えることは一つだもの。ごめんね、潤」

      3d0d0026.jpg


 そう思いながらも考えることは自分の体とのセックスしかない毅は笑顔で電車に乗り込んだ。知らない間に4駅先の町まで来ていた毅は戻らなくてはいけなかったのだ。
 電車に乗るのも久しぶりの毅は満員電車ではなかったが、座ることに抵抗があり、ドア前の鉄棒につかまりながら外の景色を眺めていた。

「(やっぱ景色は動いてた方が面白いな。……本当に自分の身体に戻らないといけないかな……)」

 こうして飲み薬でいろんな子に乗り移っていれば、自分の体なんかいらないんじゃないか。不自由あって過ごすよりも、何不自由ない人の体を借りて過ごした方が楽じゃないか。
 そして、その方が面白いじゃないか。

「(……いっそ、帰らないで旅にでも出ようかな…この身体で)」

 ドアに映る自分の姿を見て考えてしまう。可愛い子だ。助けてと叫べば誰かが助けてくれるような気がした。
 身体を売ればお金にもなるじゃないか。きっと何処へでも行けるような気がした。

「……」

 そんな考えがしているときにメールが届く。潤だった。

「 芹香どこにいるの?もう帰っちゃった?連絡ください 」

 ごめんなさいしている絵文字が入っている潤らしいメールである。

「(……そっか。人にはそれぞれの人生があるもんね…俺が決めちゃだめだよね……)」

 人を好き放題にできる理由はない。人生をめちゃくちゃにする権利は誰にもない。
 芹香にとって潤が必要なように、潤にとって芹香はやっぱり必要なんだ。

 ――不自由な身体だ。でも、そうやって人は過ごしているんだ。

「 急用ができたから午後から遊ぼう。連絡遅れてごめんね 」

 送信ボタンを押して潤に連絡する。
 乗り移る時間はたっぷりあるけど、現実と戦おう。
 リハビリをして自分の身体で歩けるようになろう。
 毅の身体が待っている医院へ早く戻ろう。

 電車は時間通りに動いている。

続きを読む