純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

タグ:粘土

『純粋とは矛盾色』に足を運んで下さった皆さまへ。エムシー販売店総支配人の村崎色です。


 クラウドファンディングを開始してあっという間に残り一週間となりました。
 ここで一度再アップをしてご紹介したいと思います。


”グノーグレイヴ クラウドファンディングプロジェクト!!”

バナーかな

”グノーグレイヴ 紹介ページ記載”


      神保町

”グノーグレイヴ 応援プロジェクト第一弾”


      フリー素材から公式キャラへ

 グノーグレイヴの体験版(※)もブラウザで遊べる紹介ページ
 ※体験版はパソコンのみ正常に起動します。

 グノーグレイヴは二次創作も受け付けております‼

 そして、


『グノーグレイヴクラウドファンディング』は2月2日のPM23:59まで開始いたしております。


 ご支援いただける皆さまに素敵な商品グッズをご用意いたしました。

      兄妹で

 (画像をクリックすると、より細かな詳細ページへ飛びます)



pixivにて画像を公開しております!

https://www.pixiv.net/artworks/78279121



 更新が少なくて大変申し訳ございません。グッズ制作のご報告しながらお手元に届きますよう誠心誠意頑張って参ります!

『純粋とは矛盾色』に足を運んで下さった皆さまへ。エムシー販売店総支配人の村崎色です。


 元号が「平成」から「令和」に移行し、『純粋とは矛盾色』は10年の節目を迎え、今年は原点にしておりました企画を始動したいと思い募っておりました。
 1年間全力でブログ更新をしながら、1年間全力である企画を並行して進めて参りました。
 そして、2019年最後の月に間に合うことが出来ました。


 これまで多くの方のご協力を得て、多くの方に支えられて続けてこられた
『グノーグレイヴ』の本編の物語が遂に始まります。


――ご覧ください、グノーグレイヴ関連告知第三弾!!

”グノーグレイヴ クラウドファンディングプロジェクト!!”

バナーかな

”グノーグレイヴ 紹介ページ記載”


      神保町

”グノーグレイヴ 応援プロジェクト第一弾”


      フリー素材から公式キャラへ

 グノーグレイヴの体験版(※)もブラウザで遊べる紹介ページ
 ※体験版はパソコンのみ正常に起動します。

 グノーグレイヴは二次創作も受け付けております‼

 そして、


『グノーグレイヴクラウドファンディング』を本日のPM0:00より開始いたします。


 ご支援いただける皆さまに素敵な商品グッズをご用意いたしました。

      兄妹で

 (画像をクリックすると、より細かな詳細ページへ飛びます)


 今までと環境が変わり『グノーグレイヴ』は同人から全年齢に向けたすべての人に愛される作品を目指し制作して参ります。『グノーグレイヴ』は期待を裏切らないクオリティをもって今後とも活動して参ります。
 これからも変わらぬ声援をお願いしながら、『グノーグレイヴ』に興味を持つ方々に世界観を届けながら、一緒になって同人界を盛り上げていきたいと思っております!


 そして、目標であります――コミケ・・・コミティア・・・


 来年からは表舞台に立ち、制作者一同ブースにお越しくだる皆さまとお会いできることをとても楽しみにしております!

『エムシー販売店』と『グノーグレイヴ』に温かいご支援をどうぞよろしくお願い致します!


pixivにて画像を公開しております!

https://www.pixiv.net/artworks/78279121

 後日――
 俺は卒業した天使花菜を呼び出していた。
 やってきた花菜はアイドル衣装を身に付けていた。それも俺が命令したものだ。彼女は俺の命令に逆らうことをしなかった。
 しかし――

      天使ちゃん。マジ天使

「うひょう!やっぱりアイドル衣装は見栄えがいいなあ~天使ちゃん。マジ天使♡」
「まずいんですよ。卒業した私がアイドル衣装着るの。こんな姿、誰かに見られたら」

 ――命令は聞く。しかし愚痴は言う。アイドルを卒業した癖に俺の言うことには強気に噛みついて来たりするので面倒くさい。

「あ?大丈夫だって。こんな朝っぱらからアイドル衣装に身を包んだ元アイドルなんているわけないだろ。コスプレだと思って気にしないよ。そういうことで俺だってコスプレしてるわけだし」
「コスプレって言っても制服じゃないですか。アイドル衣装より楽すぎやしませんか?」
「そんなことない。制服なんて俺の歳にはキツいから。うっわ、恥ずかしい」
「・・・制服持っているだけ羨ましいです。私は持っていませんから」

 結局、花菜はアイドルを卒業した後どこの事務所にも入ることなく、静かに去ることになった。俺が聞いた『事務所移籍』とはなんだったのだろうか。ネットの中に蔓延る嘘に流されたというのは癪だったが、おかげで彼女は俺専用のオナホになった。
 呼び出せばいつでもやってくる俺専用のオナホという扱いなのに、天使ちゃんはそれを受け入れて俺に付き合う日々を送っている。
 
「じゃあ、行こうか?」
「えっ・・・この格好でどこに行くの?」

 この格好で大勢の目がある場所は歩きたくないのだろう。後ずさりする花菜に対して俺は冷たく吐き捨てる。

「おいおい、俺のいくところに指図するのか?」
「・・・はい」

 俺は花菜に釘をさすことで、彼女は黙って俺の横を歩き始めた。



続きを読む

 天使花菜の卒業ライブが終わった後、握手会が行われた。
 そこには、最後と言う事もあり、普段立つことがなかった天使花菜も初めて握手会に降り立ち、ファンと堅い握手をしている姿を見せていた。

「俺、ようやく花菜ちゃんと握手することができてほんと、幸せです!」
「貴明、泣かないで。僕まで辛くなるから」
「本当に辞めちまうのかよ、アイドル!」
「ごめんなさい。私、これからは学業に専念しようかなって」
「そっか。違う道に進んでも僕たち応援してるから!」
「うおおおお!!!頑張っでぐれ゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!」

 ぶんぶんぶんぶん!!

 腕を大きく振る間に別れの時間が訪れ、学生たちは天使ちゃんから放れていく。 
 学業だと?ネットでは既に『大手事務所に移籍』という見出しまで流れているというのに、古参を騙して感動の再会を演出するつもりなのだろうか。
 最後までファンを馬鹿にしている!
 いいさ。それが天使ちゃんのやり方だというのなら、俺はきみに真実を伝えよう――。

「次の方、どうぞ」
「こんばんは、天使ちゃん」

 ――俺の番だ。天使ちゃんと初めて握手を交わす時間。そして、これからずっと、放れられなくなる時間。

「どうも、ありがとう。私の卒業ライブに来てくれて――」
「ずっと焦らされながらファンの前で踊る気分はどうだったかな?」
「えっ・・・?え・・・と、なにを言ってるの・・・?」
「今日のライブ最高だったよ。ステージに水たまり作りながらダンスしてたからもう衣装がびしょ濡れじゃないか」
「こ・・・これは・・・・・・汗で・・・・・・」

      アイドルにオナホなんか知るわけないだろうjk

 事実を突かれて慌てて口から出任せをいう天使ちゃんもまた可愛いよ。けど見え見えも嘘は俺には通用しないよ。時間に限りもあることだし、さっさと種明かしを始めよう。

「さて、天使ちゃん。これは何でしょう?」
「・・・・・・?」

 天使ちゃんにオナホを見せても分かるはずがないよね。
 実に健気。

「これはね、天使ちゃんのおま〇こと感覚が繋がっているんだよ」
「えっ・・・」
「信じてないなら、指でオナホを責めてあげるよ。そうすれば信じてくれるだろうね」

 俺がオナホに指を近づけていく。それをジッと見ていた天使ちゃんも嫌な予感がしたのか、「ダメッ!」と悲鳴の声を荒げた。でも、もう遅かった。

「んんッ!?」

 オナホに指を挿入した瞬間、天使ちゃんが内股に閉じて身体をくねらせた。明らかに俺の指に合わせて感じたようだ。

「ほら?感じるだろ?」
「ン~~~ッ!!」

 まだ乾ききっていないオナホ(膣内)をかき混ぜられて悲痛な喘ぎ声を漏らす。
 困惑しながらも快感に蕩ける表情が見れて堪らないよ。

「ね?きみのおま〇こは俺のやりたい放題なんだよ」
「いやぁ・・・わたしのアソコが・・・・・・わけわかんないよぉ~!」

 オナホを奪おうと小さな手を伸ばしたが、その前体力が力尽きて身体のバランスを崩して俺に寄りかかってきた。
 軽い体重を簡単に抱き、荒い息遣いが聞こえる天使ちゃんに耳打ちする。

「準備が出来たら近くのホテルまで一人でおいで。待っているから」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 伝えたいことを告げた俺に時間が来て、天使ちゃんから放れていった。


続きを読む

 天使の歌声を持つ1万年に一人の生まれかわり、JBT48メンバーの1人、天使花菜‐あまつかかな‐はライブを中心に活動する地下アイドルの卵だった子だ。愛おしいパフォーマンスと歌声に魅了されたアイドルヲタが彼女を求めてライブハウスに集まり、彼女の歌声を響かせている時だけ大盛況ぶりを見せていた。
 ファンと接することのできる時間、握手会ですら決して現れない彼女は、ファンとアイドルの関係を明白にしており、触ることは決して許さない。それでもいつか彼女に触れようとしていたファンの1人、真壁徹‐まかべとおる‐もまた連日ライブハウスに訪れていた。
 つまりは彼女の魅力に取り憑かれた男だった。

 しかし、少しずつ嫌な前兆を感じていた――。天使ちゃんを追いかけていた俺の情報網に、『天使いるよ、生番組初出演決定』が飛び込んできたのだ。ファンの1人からすれば朗報なのかもしれない。しかし、仕事の嫌気を癒してくれる天使花菜を見つけてから、頻繁にライブに通うようになったし、休みになれば全国追いかけるようになったし、グッズだって揃え、彼女のために出来ることは買えるだけ買ってあげた!
 すべては彼女が喜んでくれることを願ってのこと。そのために仕事だって頑張ってきたのだ。
 いつの日か、俺の顔を認知して微笑んでくれる彼女を見られることを信じてここまで貢いできたのだ。小さな舞台で輝く大きな翼を俺は密かに楽しみにしていた。
 それなのに、これ以上のことを俺は望んでいないのに、どうして彼女は狭いライブハウスを飛び出そうとしてしまうのだろう。俺のもとから放れて生放送で知名度を稼いで古参を見捨て、地下アイドルを卒業するつもりなのだろうか。

『【朗報】天使花菜 卒業ライブ開催決定!』

 ――予感は当たっていた。突然発表された、彼女の卒業ライブが開催されることとなったのだ。これを期に地下アイドルではなく大手プロダクションと契約するつもりなのかという策士めいた思惑が垣間見えてしまった。

『天使花菜 大手事務所と移籍か!?』
『天使花菜 フェス出演決定!!』

 次々に飛び込んでくる彼女の情報。目まぐるしく移り変わる、彼女の環境。
 巣立ち旅立とうとしている彼女に俺は素直に喜ぶことなどできなかった。
 むしろ、目覚めたのはどす黒い感情。、古参を捨てて新規へ飛び立つ非道な行動に俺は我慢できなくなった。
 天使のような悪魔の笑顔を向ける彼女が生番組に出ることがあれば、握手会は愚か、二度と俺たちのライブハウスに戻ってくることはないだろう。
 結局彼女はファンのことを見てはいなかった。俺の想いは天使ちゃんに届いていなかった。

「くそ!くそ!ふざけんなよ!」

 アイドルなら一番にファンのことを考えてくれるものだと思っていたのに、思い通りになってはくれない。それなら俺だって同じことを天使ちゃんにやり返してやる。



続きを読む

「はぁ・・・」

 公園で珊瑚はブランコに揺られて黄昏ていた。小さく揺れるブランコに乗る珊瑚の背中をタラバは優しく押していく。

「一週間会わなかったね・・・」

 あれから何度も宮藤姉妹とコンタクトを取っているにも関わらず、ののかと桃花の対応は忙しいの一点張りだった。
 最初は本当に忙しいと思っていたが、三日連続断られる頃に疑問を抱き、五日連続で断られる時に確信に変わり、一週間経ったら音信不通になってしまった。
 せっかく友達以上恋人未満の唯一無二の親友になれたと思った矢先にこれだ。
 怒りを越えて悲しみを越えてまた怒りが湧いてくる。

「なんだよ。付き合い悪いぞ、宮藤姉妹」
「私たちとセックスしたくないのかな?」
「自分たちだけおち〇ち〇を独占するなー!ずるいぞー!」

      魂の叫び

 その揺れは振り子のようにどんどん大きくなっていった。
 まるで注挿する動きのように激しくブランコを後ろに引き、激しくブランコを突き出すと、傾度135度までいったブランコはまるで山から見る地上の景色のような景観を覗かせていた。そこで珊瑚はやまびこのように大きく叫ぶ。

「うーーー私たちだってやらせろーーー!!!」
「珊瑚ちゃん、言い方!」

 もう一度、珊瑚が激しくブランコをこぎ、地上を見渡せる景色に到達する。すると――、

「むむッ!」

 そこから珊瑚はブランコから飛び降り、柵を越えてジャングルジムを越えて鮮やかに着地した。そして、全速力で公園を出ていってしまった。

「珊瑚ちゃん!?」

 何事かと思ったタラバは置いてけぼりをくらい、慌てて追いかける。公園から出た先、一直線で駆け出す珊瑚の前に見覚えのある制服を着た女の子がいた。
 珊瑚はまるで、その子に狙いを定めるように地面を蹴った。

「そこかあ!!」
「うわあああぁぁぁ!!!?」

 背後から抱飛びついた相手は長い髪の女だった。タラバがそれを指摘すると、珊瑚はハッと気づいたように――

「ごめん、間違えた」
「なにが間違いですか!?」
「制服以外」
「そこしか見えてない?」

 少女から突っ込み満載である。不審者を越えて逆に興味が湧いてきたのか、少女は珊瑚とタラバの顔を見比べていた。見覚えのない制服だけど、同じ年くらいの女の子達は偶然にも惹かれ合うものである。

「でも、確かに同じ制服だよね?もしかして、宮藤ののかさんってご存知ない?」

 突然、お尋ね者を探すようにぐいっと顔を近づけて、少女はびくッと身体を震わせていた。
 怖かったのだろうか、既にその瞳は潤んで涙目である。

「ありゃ、こりゃあ駄目だ。まあ知らないよな」
「ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!」
「なんであなたが謝るのよ?」
「・・・・・・知ってる」
「知ってるの!?」
「ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!」
「なんであなたが謝るのよ?」
「ごめ――」
「もういい!」

 何度も頭を下げる少女にため息をついてしまう。しかし、ののかの知人と言うので二人は無碍には出来なかった。少女と親密になるために、珊瑚は悪戯心を抱いた顔で少女と肩を組んでいた。

「宮藤さんを知ってるんでしょう。へへ・・・ちなみに、彼女の秘密教えてあげようか」

 まるで仕返しと言わんばかりに、小声で囁く珊瑚が少女に耳打ちしてその秘密を暴露する。

「実は彼女、ふたなりなんだよ」
「・・・・・・・・・へえ」
「普通!!」

 思わぬ反応の薄さに逆にびっくりしてしまう。少女なのにおち〇ち〇付いてるのってびっくりしないの?社会的性別の自由によってふたなりも一般家庭にまで浸透しているのだろうか。

「ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!」
「なんで謝るのよって言ってるでしょう!」
「普通でごめんなさい」
「私たちが特別みたいに言わないでくれる?私たちの方が普通よ」
「じゃあ、なんでふたなりで驚かないんだよ」
「私もふたなりだから」
『見せて、見せて!!』
「ひいいぃぃぃぃ―――――!!!!」

 少女のスカートの中に飛び込む二人を必死になって食い止めようとするも、一人で二人のパワーを抑えきれるはずもなく、スカートを捲らされて、パンツを伸ばして性器を確認されてしまう。
 しかし、別段少女の身体におち〇ち〇が付いていることはなかった。

「あり?無くない?」
「無いね・・・うん、間違いなく、無い」
「人の性器見てマジマジ言わないでください!!」
「じゃあ、なんで嘘言ったのよ?」
「ウソじゃなくて・・・なったことがあるってだけだよ!」
「なんで!なんで!ふたなりになれるの!私もなりたい!」

 日々木姉妹の執念を理解するように、少女は鞄からあるものを取り出した。
 スティックのりにも見えたそれは、瞬間接着剤と似て非なるモノだった。

「『接着剤』――これで相手とくっつきます」
「これって・・・桃花お姉さんが言ってた、あの『接着剤』!?」
「本物じゃん!あなたもまさか・・・買ってたの!?」
「彼氏にもらったんですけど・・・」

      懐かしい面子がまた一人

 少女が初めて珊瑚たちの前で微笑んでいた。
『接着剤』を使えばののか達と合体できる――。
 ふたなりになって男子の快感を味わいたいと、珊瑚たちの期待が高まっていく。
 早速使おうとするが、珊瑚たちは肝心なことを忘れている。

「あ・・・でも、私たちってののかに近づくこと出来ないんだった」

 宮藤姉妹は珊瑚とタラバを避けているのは明白だった。距離感が近すぎたと過ちに気付いた時にはもう遅い。放れてしまった二人に『くっつく』ことは、思っている以上に難儀だった。 

「困ったね。接近しても相手が聞く耳を持たないと説得することもできないよ・・・」

 困りかけた二人。すると――、
 
「大丈夫?」

 見るからに優しそうなお姉さんが二人に声をかけてくれたのだ。

      カルテット・・・

「お姉さんは?」
「困っていた声が聞こえたから助けてあげたいと思って。きみ達、これ使ってみない?」

 彼女が渡してきたそれは、いささか怪し気なオーラを放つ真っ黒な塊だった。硬い感触が感じられながら、まわりを『スライム』のようにブヨブヨとした材質で包まれているみたいで、まるで人肌を触っているみたいだった。

「なにこれ?」
「これ、『粘土』なんだよ」
「『粘土』!?」
「『粘土』・・・これが・・・・・・?」
「・・・お姉さん、まさか・・・・・・」

 少女が彼女の正体に気付いたその時――

「亜衣子!」
加賀莉ちゃん

 ――突如、どこからともなく少女とお姉さんの名を呼ぶ二人の怒声が公園内に響き渡った。

      立ち塞がる強大な壁‐てき‐(懐かしい)

 巫女装束の少女だった。年齢は少女、加賀莉と言われた子と同じ年くらいの容姿だった。

「それを使わせるわけにはいかないわ。『接着剤』のせいで私たちがどれだけの目にあったか覚えてないの!?」

 少女が隠すように『接着剤』を視界から遠ざけた。しかし、それは遅かった。

「詩緒ちゃん!そんなことないよ。私たち、小太郎くんの彼氏でしょう?」
「それが普通じゃないのよ!歪められた記憶なのよ!あの時の影響がまだ引っ張っているみたいね」

 巫女装束の少女、詩緒は加賀莉を説得しようとしているが、二人の話はどこか食い違い平行線をたどっていた。
 そして、それはもう一人の方も同じだ――。

「謙信ちゃん!」
その『粘土』が危険だって、何度言っても分からないみたいね!」
「これがあったから私は正雄くんと付き合うことが出来たんだもの!謙信ちゃんが思ってるほど悪い道具じゃないよ!」
「亜衣子はそう見ていたかもしれないけど、私には悪意の塊にしか見えなかったのよ!」

 同じ制服を着た女性、謙信は『粘土』に憎しみを抱いているようだ。それは、人助けの道具として使おうとしていた彼女、亜衣子とはまったく別の感情だった。

「私の言うことが分かってくれないなら、――その道具を破壊する!」
「私の言うことが分からないなら――、その道具を破壊する!」

 二人が『道具』に対する敵意は凄まじい。
加賀莉も亜衣子も二人の悪鬼に後退している様子だった。
 札と刀を持った少女たちが、まるで悪霊を対峙するように同時詠唱を始めていた。

「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前――悪霊退散!」

「オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカーー『刀八毘沙門天』!」
「やめてえぇぇぇ!!」
「きゃああぁぁぁ!!」

 加賀莉と亜衣子はどうすることもできずに目を閉じていた。
 しかし、いつまで経っても何も起こらない。手に持っている道具はしっかり握り締め、壊されることはなかった。
 ゆっくりと目を開ける二人。すると、

「・・・く・・・ぁぁ・・・・・・」
「はぁ・・・ぅ・・・・・・ぅぅっ・・・・・・」

 先程まで攻撃しようとしていた二人が突然、身を丸めて震えていたのだ。
 攻撃どころではない。悶え、苦んでいる様子は、逆に悪霊に意識を沈められているかのように封印されていくようだった。
「はあぁぁ!!」と、二人が一回大きく喘いだ後、ガクンと力が抜ける。眠ってしまったように目を閉じた二人が、次の瞬間パチリと大きく目を見開いた。
 辺りを見渡し、首を回して、肩を回して、関節の動きを確認するように身体を動かしていく二人の様子は今までとはなにか様子がおかしかった。

「詩緒ちゃん・・・?」
「謙信ちゃん・・・?」

 加賀莉と亜衣子が恐る恐る尋ねる。二人はその返事に答えることなく、まるで独り言のようにぼそっとつぶやいていた。

「まったく、お二人さん。なに勝手に暴走してるんだよ」
「これでは落ち着いて話も出来ませんね」

 それは独り言ではない、まるで自分自身に話しかけているような口調だ。
 雰囲気が変わった二人――それは当然だ。何故なら、この二人の身体を操っているのは別人なのだから。
 
      同化して一体化していくスタイル

 意識を奥底に沈められても、精神力‐スピリチュアル‐が強い詩緒と謙信は自身に起きたことに気が付いていた。いつの間にかベンチで眠っている珊瑚とタラバが、詩緒と謙信の身体を乗っ取ったのだ。操ろうとしている少女たちの幽体に驚き、意識を混在させながらも動揺を隠せないでいた。

「(わ、私の身体に憑依した――!?)」
「(あなた達は一体――!?)」

 彼女たちもまた、『飲み薬』を使って欲求を満たそうと奮闘していたのだった。


続きを読む

 ――ピンポーン。

「はい?――――謙信ちゃん!こんな時間にどうしたの?」

 夜番に訪れた謙信に驚く顔を見せる亜衣子。その制止を押し切って問答無用で玄関から上がり込む。

「まぁまぁ、ちょっと寄らせてもらうわね」

 謙信、もとい俺に強引さにも亜衣子は部屋へ通してくれる。二人で部屋に入ったのを見定めてすかさず亜衣子の唇を奪った。

「んんぅ!?」

 謙信にキスを奪われた亜衣子はさらに目を丸くしていた。普段の謙信とは違う、想像していなかった展開に驚く亜衣子は、思わず唇を放してしまった。

「やめて!謙信ちゃん!」
「んあ?・・・どうして私を拒否するの?私は亜衣子のことをいつだって守ってきたじゃない」
「それは・・・・・・」
「それなのに、亜衣子は私よりもあいつを・・・あいつと付き合い始めたじゃない!」

 正雄と付き合い始めたことに正直な気持ちをぶつける謙信。そう言わせているのは俺自身だが、それによって亜衣子の本音も聞きだそうとしていた。
 亜衣子にとって正雄に抱く気持ちは捏造。偽りであり、俺自身が亜衣子に植え付けたものだ。それを本人は自覚していないし、自分の気持ちと思って今日まで付き合ってきた。
 困惑しながら俺と付き合い、混乱しながら俺に振り回されてきた亜衣子にとって、それは果たして幸せなのだろうか――

「・・・でも、謙信ちゃんは、こ、こんなことする人じゃないよね?私たち友達だし、親友だし・・・」
「それ以上にはなれないの?」

 所詮同性の亜衣子と謙信では友達以上恋人未満の関係止まり。それを亜衣子の口から聞かされると、心の何処かがとても痛かった。

「それ以上って・・・・・・」
「見て!」

 亜衣子の目の前で謙信は制服を脱ぎ始める。引き締まった身体付きを亜衣子に見せながら、抜群のプロポーションを月明かりの下に曝した。

「謙信ちゃんやめて!」
「次は亜衣子の番だよ」

 強引に、それでいて決断を迫って亜衣子にバトンを渡す。
”こっち”側にいくか、それとも留まるか。亜衣子の気持ちを自分自身に問いかけて、答えをだす。

「・・・謙信ちゃんがそれを求めるなら・・・・・・」

 ゆっくりと、亜衣子は自分の私服を脱ぎ始める。その動作はまるで息をすることを忘れるほど遅く、時が止まったのように静かに・・・

「私はそれに応えたい」

      c5447c71.jpg

 ズボンもゆっくり下ろしていき、上下お揃いの下着姿になった亜衣子の姿は息を呑むほどに美しかった。

「脱いだよ」

 全裸になった亜衣子に謙信も同じようにスローモーションで近づいていく。その場の空気を壊さないように細心の注意を払いながら、雰囲気を持たせつつ亜衣子の肌に触れていく。

「・・・っ!」

 ちょっとでも強く触れれば崩れてしまいそうな小さな身体で、その恐怖に震えそうになるのを耐え忍んでいる。
 緊張している身体のせいか、胸の中心に突起する二つの乳首も硬くなっていた。
 謙信は亜衣子の乳首に吸い付くように唇で咥えこんだ。甘く噛んだ乳首を舌で舐め転がしながら唾液を含ませていく。

「あっ・・・んっ・・・」
「レロレロ・・・亜衣子の乳首大きくなってる。こうされるの気持ちいいの?」
「そんなの!・・・わかんないよ!」
「及川にも触らせたことないものね。んぅ・・・チュパ・・・チュパ・・・」

 亜衣子の感度は良く、少し弄っただけですぐに濡れてきた。亜衣子をベッドに倒しながら全身を舐めつつ股を開かせ、大事な場所もクンニしていく。

「うわぁ~こんなに溢れてきてる。私におま〇こ舐められて感じてくれてるんだ」
「んあっ!やめっ!そんな場所・・・汚いから舐めないで!」
「大丈夫だよ、亜衣子の汚物は私が吸い取ってあげるから。じゅるるるるぅ!」
「ひゃあぅ!」

 引くつかせ無意識に浮かび上がらせた腰がすとんと落ちる。ベッドの上で息を絶え絶えにして脱力する亜衣子を見て、軽くイったのだと察した。溢れるばかりの愛液が謙信の口の中に入ってきては飲み干していった。

「私の舌でイったんだね。亜衣子のおま〇こひくひく動いてる」
「はぁ・・・はぁ・・・私、イってなんか・・・」
「強がらなくてもいいわ。亜衣子は私が守るから」

 濡れた亜衣子の秘部に謙信は自分の秘部を合わせて腰を動かして擦りつけ始めた。貝合わせというやつだ。

「たとえ、どんな害悪な男が亜衣子に近づいて来ようと、私が亜衣子を一番に想っている。これはそういう契りだ!」

 謙信の叫びと供に腰の動きに合わせてニチャニチャとイヤらしい音が漏れだす。一番に亜衣子を感じさせることに悦びを求める謙信に亜衣子は受けとめ、行為を受け止める。

「ひっ・・・くあっ・・・はっ・・・はぁっ」
「亜衣子も感じているのだろう?腰の動きが早くなっているぞ。いいぞ。私が受け止めてやるぞ。好きに擦りつけてこい」
「ちがっ・・・くひんっ!んんぅ・・・けんしんちゃん・・・けんしんちゃん・・・!」
「またイきそうなんだな。私も供にイこう。一緒に、イこう!」
「はぅっ!あっ・・・あぅぅっ!はぁん!」

 ベッドの上で跳ねながら擦り合わせた秘部同士からは愛汁に濡れてぐちゅぐちゅと音が響き合う。体力が違う二人の疲労度は歴然だが、謙信は亜衣子に合わせるように自分の感じる場所を的確に突くように亜衣子の柔肉に擦りつけ合わせながら絶頂まで到達する。

      695d6cd9.jpg

「ふあ、あ、あああ、ふあぁぁぁぁ―――――ん!!!」
「ひぃ!だ、ダメ!!ひゃあぁぁぁ―――――ぅん!!!」

 貝合わせによって一度イった二人の声が部屋中に響いた。
 びしょびしょに濡れたベッドシーツの上で沈む亜衣子の身体を慰めるように優しく撫でる謙信。

「・・・ごめんなさい。私の一方的な感情に付き合わせてしまって。・・・でも、これできっと本人も納得いくはず。だって――俺に乗っ取られた人はどんな行動だとしても自分の意志でやったって認識するから。亜衣子に奇襲して貝合わせしたのだって、全部私がしたくてやったことになるんだから」

 謙信はきっと激しく後悔するだろう。例え俺が勝手にやった行為だとしても、亜衣子を襲った謙信という自覚がある以上は今まで通りに入り浸ることができないだろう。もしも亜衣子が受け入れたとしても、上杉謙信という性格は自分が納得するまではしばらく亜衣子の傍に近寄ることもしないに違いない。その間に亜衣子と俺の仲を深める時間はあるはずだ。
 謙信を受け入れた亜衣子なのだから、彼氏である俺を受け入れないはずはないのだから。
 とは、いうものの――

「謙信ちゃん・・・」

 ――それでも謙信を信じて受け入れた亜衣子の寛大さに驚かされたのは、俺の方だったみたいだ。

続きを読む

 俺は悩んでいた。
 色物の話になってしまうが、俺には前田亜衣子という彼女がいる。クラスメイトであり彼女なのだから・・・・・・少しは大人の階段を登っていいと思うんだ。

「なあ、前田」

 放課後、俺は人気のない廊下に亜衣子を連れ出した。

「なんですか、正雄くん」
「俺さ、ずっと前から・・・前田の・・・、触れてみたかったんだ」
「え、ええええっ!?」

 大声を荒げた亜衣子を負いこむように、壁ドンのポーズで黙らせる。効果あったようで、亜衣子は顔を真っ赤にして声を押し殺した。

「なあ、いいじゃん。ちょっとだけだから・・・」

 耳に息を吹きかけて小声で喋るとさらに顔を真っ赤にする。

「そんな・・・恥ずかしいです・・・」
「大丈夫だって。誰にも言わないから」
「でも、きっとばれちゃう・・・ダメです・・・」
「ダメでももう、俺・・・我慢できねえ」
「正雄くん、きゃ・・・・・・んむぅっ!」

 彼氏なんだから少しくらい強引な方法を取る俺の耳に聞こえてくる微かな風の鼓動。
 静かな殺意を感じて零れる一筋の冷汗が熱い・・・・・・。
 喉が、乾く。
 ヤバい。奴がくる。

『刀八毘沙門天』」

 ――ドーーーーーン!!!

 まるで大砲を直撃したかのような衝撃が俺を襲い、壁にめり込んだ。その衝撃は確かに存在し、俺が激突した壁の痕跡は蜘蛛の巣のように張り巡らされた糸のように螺旋を描いていた。
 例えるなら、コメディ漫画で100tハンマーを受ける某主人公のような跡が残っていた。

「おいっ!マジで具現化したのかよ!!!」

 幻影の気迫のはずの
『刀八毘沙門天』がこんな威力を与えるんじゃない。と、言いつつも、振り返れば最強の『軍神』上杉謙信が俺の目の前に鬼気迫っていた。

「つうか、今のを受けて無傷でいるなんてちょっとショックよ。主人公補正でも入ってるんじゃないの
?」
「主人公・・・うっ、頭が」

 なにか思い出したくない記憶が脳裏をかすめるが、次の瞬間には霞のように消えていた。

「ちょっと、なに言ってるかわかりませんね?」
「そんなことより、あんた!私の亜衣子に気安く触らないで!」
「誰が『私の』亜衣子だ!」

 最初から全力で本音をぶつける謙信。しかし、理想が現実に追いついていない!

「亜衣子は『俺の』亜衣子だ。間違えないでくれるかね!ダーハッハッハ!」

 亜衣子と俺は彼氏彼女。所詮同性の亜衣子と謙信では友達以上恋人未満の関係止まり。
 勝敗は既に決している。謙信の悔しがる顔が小気味良い。
 しかし、亜衣子のご厚意で献身との約束は守ってるとはいえ、その契りを破ろうとした途端に見つかっているのは詰めが甘かったかもしれない。

「及川ぁ、亜衣子になにもしてないだろうな?」
「な、ななななにもしてないよ?」
「さっき、私の手を触ろうとしました」
「亜衣子ぉ~・・・・・・ぐえぇぇ!!!」

      55657880.jpg

 もう一発、
『刀八毘沙門天』を受け壁に叩きつけられる。壁ドンって骨が軋むんですね・・・。

「ふ、不謹慎な!まだ高校生の私たちが・・・異性と、て、ててて・・・手を繋ぐだなんて!!!」
「普通のことじゃねえか!お前のせいで俺たちは恋人同士なのにキスも出来ないんだぞ!」
「き、きキキ、キスぅ~~~!!?貴様はそんな不埒な行為を企てているのかあぁ!」
「ちょ、まっ!
『刀八毘沙門天』待って!!!」

 謙信の亜衣子擁護に関しての母性愛は異常に強く、校内では触ることすら禁止されているのである。箱入り娘に対する母親のようなまでの愛情であり、恋人以上に強い友情がここにはあるのである。

「おまえは何時代の人間だよ!思考が古いんだよ!」
「なんだと!?」
「今時、高校生だってキスや手を触るくらい普通なんだよ。当然セ――」
「正雄くん。不謹慎」

 亜衣子に怒られちゃった・・・。ここで謙信は威厳あるように踏ん反り返って見せた。

「私の考えは古くないぞ。亭主関白は時代錯誤だと勉強した。時代は両親共働きの時代だとな」
「私たち女性だって働かなくちゃ生計立てられない時代ですから。ちゃんと女性が社会に進出できるように政治が動いてくれてます」
「そうだな。このご時世男性の年収600万なんて稼げるわけがない。特にこんな田舎なんて尚更な。いったい統計でどれだけ都会が平均年収を上げてると思ってるんだよ」
「今や子育てだって男性が率先してやるそうだ。仕事だけしていればいいわけではないみたいだな」
「・・・えっ?」
「ちゃんと料理や洗濯だってやってもらわないとダメです。掃除や後片付けだって協力してやってもらわないと女性が倒れちゃいます」
「・・・えっ?・・・えっ?」

 あっれぇ~おかしいぞ。なんか、風当たりが強くなってません?

「正雄くんも対応できてます?」
「私だって対応する努力はしていくつもりだ。貴様はまさか、亜衣子を苦しめたりはしないだろうな?」
「ちょっと待て!なんでお前が亜衣子との付き合いを見定めようとしてるんだよ!小姑かよ!死ぬまで付きまとうつもりじゃないだろうな!」
「あんたが心配だからでしょう!口だけ軽い人間で実力が中途半端なのがいけないんじゃない!少しは私を安心させるような行動をしてみなさいよ!」
「イテテテテ!!!」

 何故だろう。最近誰かに同じようなことを言われた気がするのに覚えていない。

「関白宣言が俺の理想だったのに・・・お前のおかげで良い人生だったと俺が言うから、必ず言うから・・・」
「私がオバさんになっても本当に変わらない?とても心配だわ。あなたが若い子が好きだから」
「二人とも、歌詞が古いです」
「いや、もっと古風な生き様をしている奴がいる!見ろ!!」

 廊下でありながら俺が指をさす方向に二人が顔を向けると、そこには武田信玄率いるメイド&メイドガイが布団を引いて床に就いていたのだ。まるで病弱の様子の信玄を心配そうに見守るメイド&メイドガイに、生涯最後の時間を過ごしているかのような雰囲気を醸し出していた。

「いいか。家臣たちよ。我が遺言を聞け」
『御意』
「3年の間、我死たるを隠して、其の内に国をしづめ候へ」

 それは遺言。信玄が国の為に残した言葉を家臣たちに伝え息絶える。目に涙を溢れさせる諷と倫。しかし、メイドガイこと香山は一人立ち上がった。

「畏まりました。この香山・・・必ずや・・・・・・忠義を尽くし信玄さまの意志を受け継いで見せますわ」

      3538cb5f.jpg

 香山は信玄とそっくりな姿に成り、遺言通り信玄の死を隠したことは有名な話――。


 ・・・そんな、子芝居を見せられた謙信は一人いきり立っていた。

「とにかく!私の目が黒い内は絶対に亜衣子に指一本触れさせないから!それは貴様が恋仲だろうが関係ない!」

 亜衣子を引き連れて学校から帰る謙信。あいつがいたのでは、俺と亜衣子の薔薇色の高校生活が破断してしまう。謙信の亜衣子に対する愛情を崩さなければ、粉砕骨折は免れない。

「・・・仕方ねえ。こうなればだ・・・・・・」

 俺は禁断の手段を使わせてもらう。亜衣子の愛情をゲットした『粘土』によって、謙信さえ愛情を歪ませてもらおう。
 手に持った『粘土』に謙信のイメージで捏ねあげる。すると、『粘土』は意志を受け取ったように上杉謙信そっくりの『像』を完成させた。
 後は自分の髪の毛をこの『像』に植え込めばいい。そうすれば、亜衣子の時と同じように視界は暗転するはずだ。

「さて、今回はうまくいくか?」

 自分の髪の毛を謙信の『像』に埋め込む。一般だけ違う髪の毛を呑み込んだ『像』は一瞬青白く光り、瞬間世界が一転した。

「・・・・・・でね、謙信ちゃん」

 隣にいる亜衣子の横顔を見ながら帰宅途中の通路で立ち止まる。先程まで校内だったはずなのに、振り返れば遥か遠くに校舎が見えた。
 優しい風が長髪を靡き、スカートの中を撫でていく。
 この視界。この景色。

「謙信ちゃん?謙信ちゃん・・・?」

 隣で呼びかける亜衣子の呼び方から察する通り。俺は今――上杉謙信になっているに違いない。

「う、うおおおお!!!成功したぜ!!!」

 グッとガッツポーズを決める謙信(俺)に亜衣子が唖然としていた。

「謙信ちゃん?大丈夫?」
「あっ、なんでもない。大丈夫よ」

 あははと愛想笑いを浮かべてはぐらかそうとするも、亜衣子はちょっと混乱しているみたいだ。なにかを察したのか、謙信と普段接しているせいで、微妙な変化で気付いてしまうと後々勘付かれてしまう後ろめたさがある。
 今は亜衣子と別行動することが先決と判断し、俺は一足先に帰ることにする。

「御免。亜衣子。ちょっと用事思い出したから先帰るね!」
「えっ!?け、謙信ちゃん!!?」

 ドピュ~と、脇目も振らず一目散に帰る謙信(俺)の姿を見て亜衣子は何を思うだろう。しかし、今の俺には亜衣子のことよりもまずは憎き邪魔者の身体を手に入れたことに対する仕打ちを考えることでワクワクしているのだった。



続きを読む

 ――ピンポーン。

「はい?」

 高校から帰宅した直後、及川正雄が来客の応対するために玄関を開ける。そこに待っていたのは――

「こんにちは。私、エムシー販売店で働く――」

 ――俺にとって久し振りに会う少女だ。自称宇宙人の、どこぞの会社の営業マン。

「おおぉお~~会いたかったぞ!!我が妹よ!!」
「うわあ!!!」

 急に抱き付こうとする俺を避ける少女。両手が空を斬る。

「何故だ!!お前だって俺に会いたかった癖に~!」
「はぁ?なにを言ってるんですか?」
「なにツンツンしてるんだよ、俺とお前の仲じゃないか!いいんだぞ。そろそろデレたって。商店街の一件みたいに俺に飛びついてきたっていいんだぞ~」
「あの、失礼ですが・・・頭大丈夫ですか?」
「・・・えっ?・・・えっ?」

 再会を喜ぶ俺を他所に勤めてクールに振る舞う少女。それはまるであの頃とは別人のようで、俺にとって再会を喜ぶ以前に、別人のように変わり果ててしまった少女の対応に急に心が締め付けられるようだった。

「ウソだろ・・・俺のこと覚えてないのか?」
「覚えてます。顧客名簿に記載されてますから」
「うわああああぁぁぁ!!」

      f2387097.jpg

 一年ぶりに再会した少女は見た目が変わらず、別人のような塩対応をするようになっていた。辛い現実だった。受け入れ難い現実を否定するように少女に詰め寄る。

「そうじゃないだろ!!だって、俺とお前は色々あったじゃないか。焼きそばパンとか、アイスとか、たい焼きとか食べた仲じゃないか」
「間食する程度の仲ですか?大したことありませんね」
「畜生!!!俺が馬鹿だった!こんなことならもっと豪華な食事を奢ってあげればよかったぁぁぁ!!!」
「うぐぅ~」
「はっ!そ、その声は・・・!」
「失礼。お腹が鳴ってしまいました」
「変わったお腹の音だな!宇宙人かよ!!!」
「はい」
「そうだな。宇宙人だったな」
「うぐぅ――」
「はっ!そ、その声は・・・!」
「失礼。宇宙って言おうとしたら噛みました」
「うぐぅ」
「変な泣き声やめてくれませんか?」
「うおおおお!!!なんで忘れちまったんだよ!誰かに洗脳されたのか?それとも、記憶を消去されたのか!?俺のことが分からないのかよ!!及川正雄だ!!!また一緒にプリキュアの話しようぜ!!!」
「大声で少女アニメの話題しないで下さい」
「俺!映画観に行くから!キュアマジカル観に行くから!!!」
「私の声が堀江由〇に似ているからって映画観に行く自慢しなくても良いですから」
「自覚あるのかよ!!!」

 一人テンションが高い俺と、顧客との接待に何とか食らいつこうとしてくれる少女の温度差が辛い。一年。俺と少女が出会わなかった溝がいつの間にかこんなに深いものになっているのだとは気付きもしなかった。

「・・・・・・・・・はぁ。やり取りが昔に戻ろうとする度にそのギャップに苦しめられる。久し振りに会ったって言うのに、お前は変わっちまったんだな」
「?」
「ふっ・・・。いや、普通そうなのかもしれないよな。ただ俺が変わりたくなかっただけで、大人になりたくなかっただけで、子供のままでいたかっただけで・・・変わらないきみに会うことで無駄に過ごした一年を無かったことに出来る様な気がしただけなのかもしれない」
「・・・。人は忘れられるから生きていけるんですよ?辛く苦しい現実だと思うなら、その辛さ苦しみを忘れて一からスタートすることもまた現実なんですよ」
「きみはすっかり社会に定着したんだな。宇宙人のくせに一生懸命に働いて・・・・・・俺と違って、大人になったんだな。――おめでとう!」
「・・・・・・・・・・・・はい!」

 少女は屈託のない笑みを浮かべた。それはまるで、嘘偽りのない営業少女が見せた一点の曇りもない信念だった。

「俺も戦うよ。現実と。・・・その為に――」
「うん・・・そうだね。これが僕からの最後のお願いです。えへへ・・・。僕の最後のお願いです。僕のこと、忘れて下さい。僕なんか、最初からいなかったって、そう思ってください」

 少女にその言葉を言われた瞬間。胸が熱く、苦しく締め付けられて、涙が出そうになった。
 でも、今は泣くわけには行かない。それはきっと、少女もまた、今の俺と同じ顔をしているからだ。
 夕焼け空が少女をさらう様で、少しでも離れることが怖かった。
 だけど、最後まで笑顔であり続けよう。
 少女の姿が目の前から消えるまで。

「じゃあな。あゆううぅぅぅ~~~!!!」


 ――――ガチャン。続きを読む

 偽芽唯沙が懐から取り出したのは、別の『粘土』だった。
 それは既に準備を整えてあり、ある者の皮となっている状態だった。それを偽芽唯沙は、気を失っている芽唯沙に着させていく。

「くくく・・・。目を覚ました時には君はもう、八萬芽唯沙じゃない。芽唯沙は俺なんだ。そして、きみは、空いた席の人物にならなくちゃいけないんだ」

 芽唯沙に皮を着つけていくのは手間ではなく、気を失っているだけ想像よりはるかに楽だった。皮が伸びやすかったこともあるだろう。そして、その皮は芽唯沙よりもはるかに大きなサイズだっただけに、着付けに窮屈さを覚える場面が一度もなかった。
 今まで大輔が着ていた皮はどれも自分よりも小さいサイズのものだったから手間取らせたのかもしれない。しかし、実際この皮はサイズなど関係なく、Sサイズの子供でもLサイズの大人を着ることができるのだから、どっちが手間かは一目瞭然だ。
 偽芽唯沙がやったことは、眠っている芽唯沙の上に皮を被せ、手と足、顔をその皮に着させることだけ。
 それで後は皮の方が芽唯沙を包み、形を完成させていったのだ。 
 偽芽唯沙の前で皮が元の姿に戻っていく。その人物は他でもなく、市川大輔その人だった。芽唯沙は偽大輔となり、その姿を大男へと変身させていった。

「ああ、外見は完璧な俺だ。後はこいつを起こして――内面を確かめるだけ」

 偽芽唯沙に緊張が走る。これで、すべてが――皮同士の入れ替わりが完成する。

「起きろ!おいっ!」

 偽芽唯沙が大声で偽大輔を起こす。目を覚ました大輔は、芽唯沙に起こされて目を丸くしていた。偽大輔――本物の芽唯沙にとって、目の前に自分が居ることに疑問を抱くはずである。ここで叫ぶなり、怒鳴るなりの行動を起こすことが、芽唯沙としての正しい行動になる。
 しかし、大輔の用意した皮は特注品――自分の皮であると同時に、念入りに自分の記憶を植え付けた特別の皮である。

「俺は市川大輔。そのことに疑問を抱かない。俺は市川大輔。一生この姿で生きていく。俺は市川大輔。『粘土』に関する記憶全てを目を覚ました瞬間に忘れる・・・」

 『粘土』で出来た皮は記憶を受け継ぐ造形品。故に、その記憶を弄ることで着ている相手に認識誤認を与えることが可能になる。

 ――目を覚ました偽大輔は芽唯沙を見て目を丸くして驚いていた。

      08ea81b1.jpg

「おまえ・・・なんで裸なんだ!こ、これは・・・いったい・・・。俺はいったい、何をしていたというんだ!!?」

 芽唯沙の姿に対する疑問。そして、自分の姿に対する疑問。
 お互い裸でいることに対する疑問であり、自分のあるべき姿に対する疑問ではない。

「(成功だ・・・)」

 偽芽唯沙は口元を釣り上げた。芽唯沙は完全に、市川大輔になりきっていた。



続きを読む

↑このページのトップヘ