純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

タグ:着替え

「・・・なにをやってるんだ、俺は・・・・・・」


 茜音(貴明)は授業が終わり、茜音の部屋にまっすぐ戻ってきてしまったことを後悔した。
 学校では体育の後疲れてしまい、そのまま睡眠学習に突入してしまい、起きたら放課後になっていたのだ。

「なんで起こしてくれなかったあぁぁ!!」
「だって、あまりに気持ちよさそうだったから・・・」

 体育での活躍を皆知っているせいか、眠っている茜音を起こさないようにしようとクラスが団結して起こさなかったのだという。

「余計なお世話だよぉぉぉ!!オオォォォン!!」

 一人残った義也に連れられて学校を去る。その時間になると既に陽が傾いていた。

「もうこの時間で暗いね。一年早いね」

 雪の到来を告げる冬。5時でも夕暮れは落ちて辺りは暗くなっていた。貴明(茜音)の姿はそこにはなかった。義也も帰ったというだけでそれ以外何も知らなかったようだ。

「なんてこったい・・・俺はまだ何もしてないぞ・・・・・・」

『飲み薬』を使って復讐すると言っていながら、茜音の株を挙げることしかしていない。むしろ義也が見た茜音(貴明)の行動は、どこか復讐に本気を出している素振りが見えない。
 そう思ったのは、眞熊達樹の告白を義也も聞いていたからだ。

「ねえ、貴明。本当に茜音さんに復讐するつもりだったの?」
「ったりめーだ!この身体を使って、トラウマをだな——」
「ふーん。なんか口だけなんだよな」

 義也にしては珍しく茜音(貴明)に食いつくので、売り言葉を買ってしまう。

「馬鹿言え!俺がやろうと思えば車の前に飛び出して一生残る傷を作ってやる——」
「貴明が車の前に飛び出すなんて出来ないよ~」
「言ったな!いいんだな!じゃあ、見てろよ!今から茜音の身体で本気で飛び出してやるからな!」

 言い切った茜音(貴明)が何を思ったのか、道路に飛び出し走ってくる車に向かっていった。

「貴明!?」

 言い過ぎたと本気で後悔した義也。茜音の身体が車に跳ねられると思ったが、時速30km制限の道路で飛び出した茜音に気付いて車はブレーキを踏んで停止した。そして飛び乗った茜音(貴明)は、思い通りにならなくて一瞬思考停止したが、

「えい!えい!」

 突然、拳を振り下ろしてフロントガラスを叩き始めた。しかし、茜音の手の力でフロントガラスを叩いたところで全然ガラスにダメージはなく、コン、コンと音を立てるだけで割れる心配など全くなさそうだ。

「お嬢ちゃん。なにやってるんだい、早くおりてくれよ」
「ごめんなさい!すぐおりますから!」

 義也に引きずられて慌てて車から降ろされる。運転手は怒り心頭だった。

「次やったら学校に連絡するよ。まったく、危ないじゃないか」
「本当にごめんなさい。気を付けます!ハイ!」

 歩道に戻りながら全力で頭を下げる義也に運転手は車を走らせて消えていく。姿が見えなくなったあと、義也が変わりに謝罪したことに対する怒りを倍にして茜音(貴明)を睨みつけていた。
 茜音(貴明)も計画通り進まなかったことで調子がくるっているのか、義也から視線を逸らすように横を向いた。

「・・・・・・ってなわけよ」
「謝って」

 馬鹿なことをしていると、義也は深々とため息を吐いた。

「本当に飛び出すなんてどうかしてるよ。死んだらどうするつもりだったんだよ」
「安心しろ。異世界が俺を待っている!」

 ブチッと、義也の怒りが冷める前に燃料がさらに追加され、茜音(貴明)の身体をぐいぐいと車道へと押し込んでいった。

「いっぺん死んで来い!!」
「やめろ!茜音の身体だぞ!茜音の帰る身体がなくなるぞ!!」
「ほらぁ。やっぱり死ぬつもりなんて毛頭なかったじゃないか!」

 貴明の言っていることとやっていることが噛みあっていない。
 復習したいといいながら、どう復讐していいのか分からないと、逆に縛られているように思えてしまう。
 それも今日、貴明が本音を発したあの一言に尽きた。

「貴明。眞熊くんに告白されてたよね?」

 義也が達樹に告白されたことを教えると、茜音(貴明)は動揺していた。思いを伝えるとき誰にも知られないよう陰で告白するものだ。達樹もそのために体育館裏に茜音(貴明)を呼び出していた。にもかかわらず、義也がその告白を見ていたなんて思いもしないだろう。

「な、なんでそれを知ってる!?」
「聞いてたもの」
「あ・・・あ・・・」
「その時貴明、言ったよね?」

『茜音の幸せは俺が決める。どんなにおまえが茜音のために最善を選ばせようが、俺が決める幸せが茜音の一番の幸せだ、バカヤロウ!!!』

 一字一句間違えないくらい、茜音(貴明)が言った言葉を覚えている。それくらい印象に残った台詞だったのだ。義也だけじゃなく、貴明(茜音)にも残っていたはずだということはあえて義也は告げなかった。

「それってつまり、貴明がやりたかったことって茜音さんを困らせたかっただけでしょ?好きな子に虐めたいみたいな」

 貴明の本心を突く一撃をさり気無く発する。貴明がもし自分の気持ちに気付いていないなら、意識させるように持って行きたかったのだ。
 義也は貴明の親友だから幸せになってもらいたいから。

「冗談じゃない。俺は茜音にごめんなさいさせるんだ。俺と同じ苦しみを味あわせるためにな!」

 ひょうい部を廃部にさせた茜音に苦しみを味あわせるために『飲み薬』を使ったのだ。貴明が発足し、行動し、部員を集め、生徒会長に直談判した。人一倍想い入れのある部活動なのだ。
 部活にならなかったとしても、廃部になったとしても、他校の女子生徒に憑依して遊んだ記憶は義也も貴明も忘れられない思い出だ。
 だからこそ、何時までも続けていたいと思う貴明。面白い遊びを捨てて勉強に励むことを拒む。
 だからこそ、勉強に励むことができると思う義也。これからどんな辛いことが待っていても、部活で培った思い出がある限り前を進んで歩んでいける。

「貴明・・・・・・」

 二人の意見は一日で交わることは出来なかった。それぞれ家路に向かい放れていった。
 部活に縛られている貴明にとって、幽霊部に取り憑かれてしまった貴明をどうすれば目覚めさせることが出来るのか義也には分からなかった。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 茜音として部屋に戻ってきた貴明。幼馴染とは言え貴明が茜音の部屋に入ったことは子供のときから一度もない。逆に茜音が貴明の部屋に入ったことがあるのは、基本誘っているのが千村家の方だったからだ。
 始めて入る茜音の部屋。無断で侵入しているような感覚に警戒が解けない。今すぐにでも茜音が現れて、「なに勝手に入ってんのよ、この常識知らず~!」と殴られるのではないかと思えてしまうほどだ。
 しかし、ここには貴明しかいない。たった1人だけだ。通学鞄を置き、部屋一面を見渡した。
 年相応の女の子らしい部屋の模様になっており、女の子の部屋特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。可愛いデザインのベッドや机は少し値段が張りそうだ。そして本棚には集めている雑誌が綺麗に発売順に収められており、几帳面さが垣間見える。
 パソコン関連も持っていないため、コードやコンセントが少ない印象だ。その分クローゼットにかけられている服の多さに驚くほどだ。貴明が見ている茜音の服はせいぜい制服のみだったこともあり、茜音がこれほど衣服にお金を掛けているとは思っていなかった。

「そんなことよりも——!」

 茜音は姿見の前に移動して自分の姿を覗いてみた。
 そこに映るのは高橋茜音の姿だ。千村貴明はそこにはなく、変わりに幼馴染の茜音が映っているのだ。いや、この場合は逆かもしれない。茜音の部屋で茜音が映っているのはなにもおかしくない。しかし、貴明の意志で茜音を動かすことが出来るのである。

「今の俺は茜音だぞ。俺が下手なことすれば茜音が罪を被るんだ。ざまあみろ!」

 誰かを脅す様な口振りで高笑いを見せる。聞いているのは茜音(貴明)以外誰もいないが、満足そうに微笑んだ後で物色を開始する。

「茜音の人生を潰すために手っ取り早いっていったらネット!炎上商法だ!!ネットに茜音の恥ずかしい画像を載せれば萌えあがるだろ。頼むぞ、突撃兵たちよ!」

 貴明は近くにあった箪笥の中を勝手に開いて、下着が収納された棚を発見する。色気のない白が多い中で、水玉やピンクなどのカラフルが数点ある。下着を揃える年齢でもないとはいえ、その種類は他の女子よりも多いのではないだろうか。

「色々あんじゃん。へー」

 柄だけではなく、カップのデザインも豊富だ。フルカップブラ、ボリューム感を出すハーフカップブラ、締めつけが少なく着け心地がよく、とにかくラクなイメージの強いノンワイヤーブラと、バリエーション豊富になっている。
 茜音は物を捨てられない性格で奥にはサイズがもう合わないようなものまで残っていた。貴明が見つけたのは、中学時代に使用していたスク水が出てきたのだ。

「懐かしい。スク水じゃん。まだ取っておいたのかよ。捨てとけよ」

 ポリエステル素材のスク水は穿かれなくなっても昔と同じくその存在感に遜色がない。
 やけに小さいイメージがあるのは、貴明の記憶しているサイズと茜音のサイズに差があるせいだ。

「大事に取っておいたんなら、俺が着てやるよ。お前の身体でな」

 スッ——と、制服を脱ぎ捨てた茜音(貴明)はスク水を穿いていく。
 スレンダーな身体にスクール水着が良く似合う。スタイルも崩れているわけではなく、1年ぶりに着たであろうスク水を身に付けることが出来たのだった。

「こんな感じで着方合ってるか?女物のスク水なんて生まれて初めて着替えたけど、この身体にぴったりフィットする感じがたまんないんだよな。へぇ~。わりと入るもんだな。ちょっとキツイ・・・食い込みが」

 ひょうい部で培ってきた経験が蘇る。やはり女物の衣服に包まれる感じは男性では味わうことのできない楽しみの一つだと再認識される。胸や股間が食い込んでいるのもまた、茜音が成長した証拠であることを知る機会であり、食い込みを直してハイレグにならないようにちょくちょく手を入れていく。

「サイズがちっさくなってる?違うか、身体が大きくなってるのか。ハイレグ・・・処理が甘いところ見えるんじゃないか」

 鏡で、そして茜音-じぶん-の目でスク水に包まれた身体を見ながら感嘆の息を吐いた。

「素晴らしい。スク水が栄えるな!」

      jkがスク水に着替えたら・・・

 レースクイーンが取るようなポーズを取りながら、大胆に身体を突き出すと、胸の膨らみがスク水を押し上げて美しいボディラインを見せていた。貴明が興奮し、鼻息を荒くしていくにつれ、茜音の身体が反応を見せ始めた。

「あっ、乳首が浮き上がってボッチ作ってる・・・。うわあっ・・・」

 スク水の上から浮き上がった乳首を恐る恐る摘まんでみる。

「んぅっ!いたっ・・・」

 スク水の中で弄るには狭すぎるのか、乳首が敏感すぎて痛みを覚えるほどだ。窮屈なのは貴明も嫌で、火照り始める前にスク水を脱ぎ始めた。

「・・・まあ、スク水は幼稚だったかな」

 そう言いながら、クロッチの部分が少し濡れてしまっていた。貴明は隠すようにそのまま箪笥の奥に戻してしまった。そして、先ほどから気になっていた大人っぽいデザインの下着を取り出すと、それを今度は身に付けていった。

「一度ブラってやつを着けてみたかったんだよな。えっと——」

 ハーフカップブラを乳房に宛がい、背中に腕を回してフックにかける。後ろで留めようと鏡の前で背中を向いて悪戦苦闘する。

「・・・う~~ん?なんだこれ?む、難しいって、いてて・・・・・・」

 もっと簡単なやり方があるのに貴明は付け方を知らなかった。茜音の柔軟さがなければブラを付けることは難しそうだ。

「おっ、はまった」

 なんとかフックがかかりブラが付いた。

「おお~お、おおお~~いつもより大人っぽい・・・・・・」

 姿見の前に立つと情熱の赤い下着を身につけた茜音が鏡の向こうに立っていた。これが茜音の勝負下着だろう。

「谷間が出来てる・・・。すげえ・・・」

 ムニュリと寄せあげられた胸の谷間とその谷間を強調するようにオープンになっている胸元に思わず視線が向いてしまいそうだった。そのまま視線を下げていくと、ブラとお揃いのデザインのパンツが茜音の大事な部分を覆い隠していた。
 スク水よりもきわどいV字ラインがイヤらしい。えっちな割れ目を隠す赤い布のシルエットにドキドキしてしまう。色気のない下着と違い、生地はシルクを使っており、スベスベしていて肌触りがいい。トランクスともボクサーパンツとも違う履き心地になんとも言えない柔らかさを感じてしまった。
 かなりお値段も高そうな下着である。

「それにしても、茜音はこういう背伸びしたデザインが似合うな・・・」

      ピンクのブラ

 これが初めて使ったわけではなさそうである。もしかしたら普段からも身に付けていたのだろうか。これを身に付けて誰に見せようとしているのかすごく気になるところだ。
 下着姿の茜音を見つめていると、自然と鼓動が高鳴った。

「ん・・・い、今の感覚は・・・この身体疼いてる・・・・・・」

 貴明が茜音で欲情したことなど一度もない。それなのに自分が茜音の下着姿に欲情していることにひどく動揺していた。おま〇こから切なく訴えてくる感覚に、一度唾を飲みこんだ。
 興奮が抑えきれなくなり、一人である状況にこのまま自慰行為だってやれるのだ。茜音の身体でオナニーすることが今まで憑依してきた女子生徒たちと何が違うというのだろうか。

「わっかんねえよ・・・そんなつもりないのに・・・・・・俺が、茜音に欲情するなんてあり得ねえって言うのによ!」

 まるで、茜音に欲情することを負けだと思っているように、自分の性欲を抑えつけようと必死に抗っているのに、その欲は止まらない。
 震える手が今まさに、下の口に触れようとした時——貴明が負けを認めるように叫んだ。

「ネットにあげるのは止めだ!止め!こんな姿を見せられたら独占したくなるだろうが」

 またもお預けしてしまう。しかし、貴明はある場所へ出掛けるために適当に服を借りて茜音の部屋を出ていった。


続きを読む

「おはようございます!」
『おはようございます』
「皆さん。声が小さいわよ。おはようございます!」
『おはようございます!!』

 風紀委員長の水橋哀‐みずはしあい‐を筆頭に、校門の前で風紀委員が挨拶週間の時期に合わせて登校してきた生徒に対して全員で挨拶をしていく。
 寝ぼけ眼でだるそうな生徒たちも、あまりにも威圧的な挨拶に思わず「おはようございます」と挨拶を返して校舎へ入っていく。それでも、

「おはよう・・・」

 一定数、空気を読まずに哀に対して気だるげな様子で欠伸を噛んで返事をする生徒もいる。脳に空気が届かず状況を理解せずに返事をする男子生徒の挑戦的にも挑発的にも取れる態度に、哀は眉間に皺を寄せていた。

「・・・なんですか?今の挨拶は!声が小さい。やり直し!」
「うへ・・・委員長は手厳しいなぁ」
「もう一度。おはようございます!」
「ごきげんよう!」
「ふざけないで!あっ、こらぁ~!」

 麗しくも高貴な威厳を持つ哀をからかう生徒を見ながら、俺、内山将平‐うちやましょうへい‐も適当に校舎の中に入ろうとする。

「おはようございます」
「ういーっす」
「はぁ~。これだから男子って・・・。どうして挨拶の一つくらいまともに出来ないの?」

 哀は頭を抱えながらも、嫌気が差したように校舎へ入るよう促した。
 しかし、校舎に入ってからも風紀委員の生徒たちが出張っており、普段誰とも挨拶をしない俺に向かって「おはようございます」と挨拶をしてきたのだ。その度に適当に返事を返しながらも、挨拶はやっぱりいいものだという感慨に耽るのだった。

「おはよう、内山君」

      再登場です

 そう言って声をかけてきたのは、風紀委員会をまとめる指導員で担任の松村杏‐まつむらあん‐だった。

「おはようございます」

 俺は風紀委員と同じ挨拶ではいけないと、ちゃんと先生に対しては真面目に挨拶をしたつもりだった。しかし、松村先生は怪訝な顔を見せていた。

「私との挨拶はそうじゃないでしょう?」
「・・・へっ?」

 すっ呆ける俺にあきれて先生は手をつかんで人気のいない教室へと入っていく。
 誰もいないことを綿密に見極めて、先生は俺の目の前で
手を器用に使いタイトスカートに忍ばせ、ショーツに隠れている秘部を撫で始めた。

「あっ、ああんっ・・・い、いいわね・・・このくらい濡れていれば・・・・・・」
「せ、先生!?」

 驚愕する俺の前で先生は象徴する白いタイトスカートを捲りあげて、ストッキングと供にショーツを下ろしていった。
 そして、教壇に腰を着き、自らの濡れている女性器を覗かせてきたのだ。

「さあ・・・今日も私のおま〇こに内山君のチ〇ポを入れるのよ」

 はっきりと松村先生はそう言った。真面目な先生が言うには明らかにキャラが崩壊していることに、俺は戦慄を覚えると同時に寝ぼけていた脳が活性化すると一緒に本能が目覚めていくのを感じていた。


続きを読む

()()憑依()する(しょく)人物(ぎょうを決める時に浩平が思ったことは、人の人生を左右することは絶対に避けることだった。
 先の失敗を反省し、”先生”と呼ばれる職業、政治家、茶道、華道、書道、医者、学者、薬剤師――等と後に問題になりそうな職業になることは諦めていた。

「先生、と呼ばれるのは心地よかったのにな・・・むしろ、そう考えれば教師って案外楽な職業だったんじゃゲホンゲホン」

 憑依出来るとはいえ、作法を知っていても教えることのできない浩平には、人の上に立つことは出来ないと学習する。それならばいっそ、一般的な職業に就職する現実的な憑依にしようと考えた。
 営業、接客、総務、経理、管理、装置オペレーター――数ある職種の中で自分に一番合った職種を選び、なりたい職業を決める。40年近くやり続けることになる職業で、飽きが来ない、苦労しない、危険がない、定時で帰れる、休みが多い等と要望を出し合った結果、自分の職業を決めることは決して間違っていない。
 それこそが一般人である田上浩平の職業選びとして最も近いものではないだろうか。そして、それこそが追い求めた理想の職業(じんぶつ)ではないだろうか。

「休みは多いに越したことないし、完全週休2日がいいよな。その方が遊びにだって行けるしな。あとは俺は人付き合いが好きだから接客業が向いてるんじゃないか?責任だって取りたくないし、ゲームしたいし、疲れて家に帰りたくないし、鬱になるなんてまっぴら御免だ」

 そう考えているときが一番幸せに違いない。
 誰だって仕事選びは大変だ。働かなければ生活できないために、自由を引き換えにしなければいけない。犠牲を減らせば職業は引く手数多だ。しかし、欲を持てば犠牲は大きくなる。
 拘束時間、企業努力、責任は大きくなる代償に、給料は増えていき、将来の安定は得られる。しかし、それが幸せ――?本当に――?

「よし、次に憑依するのはプライベートを充実しながら接客業をやりくりしている人にしよう」

 それが、浩平の追い求める職業だった。プライベートと仕事の両立。それが確立している人物にこそ、将来的に浩平の役立つ管理能力があるはずだと、浩平は人物を思い馳せた。
 すると――

「キタ。この、吸い込まれる感覚――」

 前回同様、幽体がなにかに吸い込まれるように勝手に飛び出していく。学習能力を得た浩平は焦ることはせず、一件の家の二階に一気に突っ込んでいく。窓を通過し、ベッドで腰かけて携帯を弄っている女性。目標はこの娘に違いないと、胸の中にダイブする浩平の視界が、次の瞬間には一気に開いたのだった。

「・・・・・・・・・・・・」

 ベッドに腰掛けて携帯を見ている自分。イベントのサイトを開いていた状態で硬直していた身体を起こし、辺りを見渡した。
 今時の有名ロックバンドのポスターが貼ってある。それに、某アニメのコスチュームが掛かっていたり、ラケットやランニングシューズとスポーツ用品が置かれていたり、部屋を見て察するように、アウトドア派の多趣味の子だと分かった。

「今時、こんな子いるんだな」

 自分の発する甲高い声も、この部屋の住人の声に変わっている。浩平はどういう娘になっているのか、鏡で映して確認しようと向かっていく。さっき見下ろした時と同様に、髪の毛がふわりと甘い香りとともに絡みついていくる。それだけでこの子から良い匂いがした。

「か、かわいい・・・」

 自分と同じ背丈のお姉さん像。20歳から25歳までと推定される仕事優先より遊び盛りの活発な子に見えた。整った顔立ち。吸い込まれそうな大きな瞳、筋がしっかりと通った高い鼻、ぷっくりとした小さな唇。目の前の鏡に絵に描いたような美女が映し出されていた。

「・・・すげえ、これが俺か・・・」

 浩平がつぶやいた言葉を美女が喋る。憑依したことを十分に実感してしまう浩平。試しに浩平が笑みを浮かべ、怒り顔を繕うと、目の前の美女をどんな表情でも浮かべることができる。自分がちょっと表情を変えてやるだけで、美女が表情をコロコロ変えるのが面白かった。そして、そのことで浩平が彼女の身体を支配している実感が沸きあがり、興奮を高めていった。

「ああ、この子に対してすげえ興味出てくるな。そろそろ記憶覗いてもいいかな」

 浩平が彼女に対して知れば知るほど、浩平は彼女になってしまう。それは少し悲しいことだった。

「・・・
松下架(まつしたか)(すみ)。22歳ってことは今年大学卒業したばかりの新卒者・・・って、違う。この子・・・ウソ・・・アルバイト!?有名ブランドの新卒枠を蹴ってお気に入りの喫茶店で働いているだなんて・・・!」

 浩平が驚くも、昨今珍しい話でもない。大学で遊んで過ごしていた架純にとって、もう少し遊んでいたかったという想いが強く、アルバイトとして働く代わりにプライベートの時間を増やした結果である。実は趣味だったコスプレイヤーとして成功しており、副業で稼いでいる架純にとってアルバイトとして働いた方が気兼ねなく生活できるのである。

「こんな生き方があるなんて、ちょっと羨ましい・・・」

 人生ですら選択肢が多様化している現代。有名ブランドで一生身を粉にして働くより、自分を資本に売り出す方法で成功しているのなら自由の幅が大きくなるだろう。しかし、健康管理、体重管理だけではなく、精神面での苦労は増えるにちがいない。自分のやりたいことをすることに対しての理想と現実。一長一短の選択において、なにを重要視するかもまた、誰でもなく自分の責任が問われる。

「今日は一日オフだったんだ。だから暇を持て余してライブに行こうとしていたんだ」

 架純が携帯を見ていたところまで記憶を読んだ浩平。つまりは架純になりきることに成功し、仕草から口調まで女性口調に変わっていた。
 休みと分かった浩平は、架純の代わりに一日弄ぶためになにをするかを模索する。すると、架純
の目は自然に下の方に向かっていた。背丈は浩平と同じくらいだが、肩幅は優に一回りは小さな身体になっている。その下に服を押し上げる綺麗な乳房のかたち。
 下半身にはラフなパンツを穿いており、腿は見えなかったが、そこから覗いている足も普段とは比較にならないほど小さかった。
 コスプレイヤーと言うだけあり、小さな身体と整った顔。何を着ても似合いそうなのは間違いない。
 架純の喉が一度大きくなった。

「あーあ。今日は暇だなぁ。なにしようかな~」

 まるで、架純本人が言っているように独り言をつぶやく。

「そういえば来週の長期休みにイベントがあるんだった。その服のお披露目会でもしてみようかな~」

 ハンガーにかけられたままクローゼットから出されたコスチューム。あれがイベント用に架純が手作りしたものだった。
 自分で作り、自分で着るのもまたコスプレイヤーとしての楽しみ。架純は手に取ると、早速着替え始めた。パンツを脱ぎ、スカートに足を通す。架純の生太腿は想像通りの綺麗な美脚だった。お腹まわりはコルセットを締めて中のシャツをきつめにしてボタンをかう。そうすることで身体のラインが細く、胸まわりの下乳を強調するシルエットを際立たせることができる。今回のコスプレ衣装は露出が少ない分、清楚感を多くするコンセプトになっている。架純お気に入りのデザインに仕上がっている一品だ。

      a03bec65.jpg

 架純が着替え終わり、鏡を通す。まるでノンフィクションのキャラが具現化したような完成度にご満悦の様子だった。先程よりもさらに可愛く、萌えという擬音が聞こえてきそうな出来栄えだった。

「うーん。スカートを穿くと足がすぅすぅして、なんだか落ち着かないわ」

 鏡の前で一回転する度にスカートが舞う。小っ恥ずかしさを覚えながらも他人に見せたい、自分だから似合うという自己アピール、自己顕示力を感じるには、それなりの自信があるからだ。
 架純の生まれ持った素質と、体系の維持。そして持続力。架純ほどの容姿があればコスプレイヤーになりたいという憧れは最もである。スマホでコスプレ姿を何枚か写真に納める架純。それは無意識に浩平が架純のコスプレ姿を保存する動作と、架純のコスプレ姿を確信する動作が一致した行動だった。

「お腹が結構苦しいな。コスプレイヤーも大変だわ」

 浩平にはコスプレイヤーの気持ちが分からず、不平を言いたくなる。苦労して得るものが少ない。まさにコスプレが好きな人がなる職業である。衣装を着たままオナニーをしたかったけれど、さすがの浩平ではその苦しさに一刻も早く脱ぎたくなっていた。

「・・・ふぅ。まあいいわ。今度は違うコスプレに着替えて・・・ん?」

 これからという時に架純の電話が鳴る。本日休みを取っていたバイト先の喫茶店からだった。

「はい。もしもし?」
『あっ、松下さん。ごめんね。いま大丈夫?』
「ええ。どうしたんですか?」

 相手は店長からだった。この声を聞くと、身体が無意識に震えが立つことに、浩平は気付くことはなかった。


『本当に申し訳ないんだけど、今日出勤できる?』

続きを読む

 綾瀬侑―あやせすすむ―は予約いっぱいで販売停止と謳われていた『飲み薬』を手に入れることが出来た。
 この『飲み薬』を飲めば幽体離脱が可能になり、 肉体から放れて幽体で飛ぶことが出来るようになる。自由を手に入れることが出来るという謳い文句が『飲み薬』だが、その真の意味は、他人を支配できるようになるということだ。
 幽体離脱した者が帰るべき肉体は別に自分の肉体じゃなくてもよい。他人の肉体でも構わないのである。自分の幽体を他人の身体に入り込ませる――憑依。 それを可能になるのが『飲み薬』である。
 侑は『飲み薬』を飲みほし、肉体から放れ幽体となって宙を彷徨いはじめた。初めての幽体離脱だけでも心躍り、空中をプールのように泳いでいるだけでも楽しいもの。はじめての幽体離脱に心躍る侑が、次に行おうとしたのが憑依だった。
 侑には雛乃という妹がいた。幽体の状態で雛乃の部屋に入ると、ベッドから小さな寝息が聞こえてきた。布団の隙間から見える雛乃の寝顔。すぅすぅと規則正しく眠ってい様子を見て、憑依するなら今しかないと、幽体を雛乃に飛び込ませた。

「ん・・・ぅ・・・」 

 侑の幽体が雛乃の身体の中に消えていくにつれ、雛乃が身体を小刻みに震わせていた。眉間に皺を寄せて苦しそうな表情を浮かべていた雛乃が、ふっと表情を緩めた瞬間、眠っていた瞳を大きく開いて覚醒したのだった。
 バッと布団をあげて身体を起こす。布団から立ち上がった視線がいつもと低いと感じた侑が、はやる気持ちを抑えながら電気をつけて部屋の一角にそびえる鏡の前にその姿を映し込んだ。
 鏡に映るのは妹の雛乃だった。パジャマを着て眠る格好をしている雛乃が驚いた表情で立っていたのだ。本当なら映っていなければならないのは侑である。しかし、侑のいるべき場所に立っているのは妹の雛乃だった。それはつまり、憑依は成功して雛乃の身体を自由に支配していいということを示していた。

「せ、成功したんだ・・・。俺が、雛乃になってるんだ」

 驚いた声でつぶやく侑の声も雛乃の声に替わっている。侑の嬉々とした表情が代わりに雛乃が見せて喜んでいた。

「すごい!雛乃になった。俺が雛乃のカラダを使ってるんだ!はぁん・・・」

 鏡の前で様々な仕草を見せる。侑のしたい行動、雛乃にさせたい動きをやらせることが出来る。 そう思ったら、男性だったら逸物が勃起し始めるはずなのに、雛乃には当然ソレは付いてなく、変わりに下腹部から疼きに似たときめきを感じていた。

「お兄ちゃん・・。大好き」

 雛乃が鏡越しに告白してくる。それは侑が言わせている芝居なのだが、まるで雛乃本人が侑に言っているように感じてしまう。普段見ている時とは比べ物にならないほど大人びた表情をみせながら、侑に告白してくる雛乃にドキッとするほど心打たれていた。
 そういうことだって出来るのだ、たとえ雛乃本人が知らないところで好きに告白することが出来るのなら、このカラダを好きに使っても怒られることはない。そう考えた侑は普段雛乃が学校で着ている制服を手に取ると、パジャマを脱いで着替え始めた。
 雛乃のカラダに着替えさせる楽しみに鼓動は高鳴り、パジャマにかかるボタンを一つずつ解いていった。緊張と焦りで手が震えながらも全部のボタンをはずし終える。そして両手でパジャマを開くと、雛乃のブラに包まれた胸が露わになった。
 色気が薄いAカップの胸だ。しかし、それでも妹であり女の胸だ。ブラもまだしてもしなくても変わらない年頃の雛乃がブラをしているのは、まわりの環境がブラをし始めたことの影響だ。未発達の胸を少しでも早く大きくするように、ブラに包まれた乳房を侑の意志で撫でまわし始めた。

「まだ気持ちよくないか。これから雛乃に憑依していって少しずつ身体を開拓していこうかな」

 鏡の前で雛乃が乳房を弄りながら、色気を出すような練習をしていた。鏡だけ見ればそれだけで侑は興奮材料が目白押しだ。妹のオナニーも今やろうと思えばいつでも出来るのだ。しかし、今は制服を着てみたいという当初の予定を思い出し、学校指定の制服にその身を通していった。侑では着ることも出来ないサイズの制服がぴったりのサイズで着付けていく。 雛乃のサイズに合った制服だから着替えられて当前だ。しかし、その当然のことが、侑は雛乃に憑依したということの実感になっていた。
 頭から上半身に制服を被り、腕を通して胸元のリボンを締める。そして、上半身と同色のスカートを穿いていき、横についているファスナーを締めてベルトで腰に締め付けた。
 朝、学校へ登校していく時の制服を着た雛乃が鏡の前に立っていた。

「確か、こうだったよな?うん、完璧じゃない?これならどう見ても雛乃に見えるでしょ」

      f1f42961.jpg

 両手を後ろに回して顔を覗き込む雛乃のあどけない表情が今はとても愛おしく見える。さらに心臓が高鳴り、下腹部がキュンと鳴ったのを感じた。

「これって・・・もしかして・・・」

 びっくりした雛乃(侑)が 慌ててスカートの中に手を忍ばせる。そして、ショーツにそっと触れてみると、雛乃の大事な部分から少し湿り気を帯びた液が垂れているのを感じた。

「濡れてる・・・。俺が興奮したせいで、雛乃の身体が反応してるんだ・・・」

 そう口に出した雛乃(侑)に身体の反応は止めどなく流れてくる。表情を蕩けさせて制服を着て楽しもうとしていた侑は、スカートを捲し上げて雛乃のショーツを鏡に映し出していた。

「隠れている場所が丸見えだ。下着姿よりも色っぽく見えるよ」

 ショーツを曝して指で雛乃の大事な部分を指の肉で押し上げる。ぷにっと膨れた感覚に酔いしれ、甘い息が弾んでしまう。

「ふぅんっ!あぁぁっ、やっぱり濡れてる・・・。雛乃の股間・・・はぁ・・・」

 ショーツの上から何度も押し上げる度にその部分が熱を持って熱くなっていく。 その熱は全体に伸びて雛乃の身体を蕩けさせていく。指を押し上げるだけじゃなく、今度は人差し指を立ててマン筋に宛がい上下に擦りつけていく。そうすると、愛液に濡れたショーツが雛乃のマンスジを浮き彫りにしていた。

「あああんっ!こんなに濡れるなんて・・・女ってすごい」

 既に雛乃の穿いているショーツは役割を果たせていないほどぐっしょり濡れている。ショーツの上からだというのに雛乃の身体は熱く火照り、疼きは決して消えることはなかった。我慢できなくなった雛乃(侑)は、ショーツの脇から指を差し込んで、直接指を前後に動かし始めたのだ。

「はああっ!すごい!こんな気持ちいいんだ・・・女って・・・んんんっ!」

 未発達でもしっかり感じることが出来る雛乃の身体。初めて味わう女性の快感に侑は段々思考が出来なくなっていき、快感を得るためだけに激しく指を動かし始めた。

「あっ!あっ!ああっ、んんっ!すごい・・・雛乃・・感じちゃう・・・!」

 鏡の前でショーツの中に指を入れてモゾモゾと前後に動かして喘ぐ姿が映っている。制服が時折邪魔してショーツを見えなくしてしまうのを嫌がり、雛乃の口でスカートの裾を咥えて快感を貪った。

「んんぅっ!んんっ!んっ、んぅぅっ!ふぅぅんっ!」

 指を動かしていると、クチュクチュとくぐもった水気の音が響いてくる。雛乃の秘部を弄っているうちに愛液が染み出してきたのだと察した侑は、その卑猥な音に聴覚が刺激され、それを発したのは他ならない雛乃だという事実を見て視覚で刺激されていた。立ち込める女の匂いに嗅覚は刺激され、甘美な刺激に触覚が刺激される。スカートを咥える口に力が入り、涎がつぅっと滴っていく。これが快感なのだと思うと、雛乃の身体に耐えられそうになかった。

「んんっ!んっあっ!ああんっ!いっちゃいそう!止めないといけないのに、止められない・・・!もぅ・・でちゃう!あっ、きちゃうっ!」

 雛乃の身体が絶頂に行こうとしている。しかし、それを止めることは既に侑にはできなかった。ショーツの中でクリ〇リスを弄りながらおま〇この入口を刺激する雛乃(侑)についに目の前が白くフラッシュバックした。

「あっ、あっ、あっ!イク!イク、イっちゃうよ!ンああああ~~っ!!」

 雛乃の声で絶頂へあがった声を発した侑。その刺激にしばらく宙に浮いた気分で居座り、気が付いたときには身体が脱力して床に愛液のシミを作っていた。激しく絶頂したからなのか、その余韻は男性より強く残り、未だに弄っていたクリ〇リスがジンジン疼く。
 微弱の電流を浴びているような快感が何度も全身を流れていく。それが気持ちいいのだということを雛乃の身体が教えてくれていた。

「はぁ・・はぁ・・はぁ。しちゃった・・・」

 ぼそりと雛乃の絶頂を味わってしまったことの背徳感と後悔を覚えた侑。しかし、それ以上に味わえた絶頂感と幸福感に満足してほくそ笑む。ペタンとその場に座り込んだまま、制服を汚してしまった雛乃の身体をどうするのか、侑はしばらく考えていた。

 
続きを読む

「・・・んん?」

 尾張は様子がおかしかった。身体の調子が悪くなるというのは仕事する者であれば誰もが管理しなければいけないことだ。尾張もまた、自分のせいで多くの関係者に迷惑をかけるわけにはいかないと、体調管理には十分気を付けている方である。なのに、この体調不良は急にやってきて、原因が分からない不明な具合の悪さだった。

「なんだよ、いったい・・・」

 眠気、吐き気、頭痛が同時に襲い掛かってきて気を失いそうなほどだ。顔色が真っ青になり、キーボードの打つ手が止まる。
 まるで、何かが身体の中で離れようとしており、飛び出てくることを自らが無理に引き留めているかのような気持ち悪さだ。

「・・あいつ、俺になにを飲ませやがった・・・」

 原因不明な症状だが、根源の原因は分かっている。黒星白夜がくれた、謎の『飲み薬』に違いなかった。あれ以外特に口から摂取したものはなく、あれを飲んで以降具合が悪くなったのだから間違いない。会社の中でも仲がいいと思っていたからか、特に疑うことなく口をつけてしまったことに後悔した。
 あれは、『薬』だったのだと。

「やべえ、意識が朦朧とする・・・」

 尾張が具合が悪くなり、トイレに向かう。個室トイレに籠り、便座に座り込んでからの意識がぷつりと切れてなくなっていた。
 ・・・・・ただ、意識は切れても、意志は持っていた。
 次に尾張が見た光景は、空中から自分を見下す不思議な光景だった。自分の頭の先を自分が観測できることはない。それが可能ということは、自分の意識が外に飛び出すしか他にない。尾張は幽体となって彷徨っていたのだ。

「(はっ・・・?なんだよ、これ?)」

  不思議と具合の悪さも体調不良もなくなっていた。身体と幽体に切り放されたせいなのか、すこぶる快調になった尾張はうまく幽体を宙に泳がせて自分の身体に舞い戻ってきた。

「(・・・眠っているだけなのか、寝息は聞こえるけど死んでいないのか)」

 規則正しい息継ぎが聞こえてほっとしながら、幽体になってしまった自分に驚く。壁をすり抜けて鏡を覗き込んでも誰も映っていない。トイレに入ってきた上司も尾張に気付くことなく出て行ってしまった。

「(今の俺は誰にも気づかれないのか)」

 肉体ではなく幽体の身であることを実感する。幽体離脱したのだと尾張は事実を受け入れると、口元を釣り上げて小さく笑みを浮かべ始めた。

「(フッ、フフフ・・・。なるほど、幽体離脱か。小説でも読んだことあるぞ。そんなオカルト信じてなかったけど、実際起こってしまったなら受け入れるしかない。そうか・・・これが幽体離脱か)」

 誰にも気づかれないけど誰にも触れない。幽体となった自分は現世に留まることが出来ないのだ。しかし、幽体となったからこそ出来ることがあると、とある小説から知識を得ていた。
 憑依が出来るのである。他人の身体に乗り移り、行動を支配するトランス現象。神だ悪魔だ、狐だの言われるその能力が、人間に備わることが出来たら最も恐ろしいものはない。

「(面白くなってきやがった。このままきららのもとへ飛んで行ってやる)」

 欲望渦巻き一気に上気する。会社をすり抜けて文字通り、飛んでいく尾張。あっという間に担当していた古間きららの家へとやってきていた。二階の窓からきららの部屋の様子を伺うと、相変わらずブルマと運動着姿で漫画を描き続けている。集中しているように漫画に没頭しており、休む暇もないくらい机の上には資料が山のようにたまっていた。

「(やってるな。俺にも気づいてねえな)」

 と、その時、ちらりと窓を見たきららが尾張と目が合った。思い切り見られたことで言葉をなくした尾張だったが、きららは表情を変えることなく、再び視線をネームに落としてしまった。そして再び絵を描き始めた。

「(・・・そうじゃん。俺は幽体だった。きららが俺を見るわけねえじゃん)」

 安堵の息を吐きだす。きららはたまたま窓から外の景色を見ただけだ。尾張がいるだなど予想もしていないだろう。
 尾張は窓をすり抜けてきららの部屋へと入っていく。宙を舞いながらしばらく様子を見るもきららは気付かない。調子に乗ってネームを覗きこんだり、背後で大声を出して叫んでもきららはやはり尾張のことに気付いていなかった。

「(・・・よし、ここまでやって気付かれなかったんだ。大丈夫だろう)」

 ふん、ふんと、指をボキボキ鳴らしながら十分に柔軟体操を始める。どうやら憑依を始めるつもりらしい。助走をつけて宙をたゆたい、きららのがら空きの背後へぶつかる様に飛び込んでいく。

「(きららさん、失礼しまーす)」

 ズブブブ・・と、尾張の幽体がきららの肉体へ埋まっていく。

「ひぅ!」

 びっくりしたきららが身体の異変に気付くも、その時には終わりの幽体は半分近くきららの肉体へ沈んでいた。暴れ沈んでいく尾張にきららはどうすることも出来ず、うめき声をあげながら意識を失っていった。
 尾張の幽体がきららの肉体に全部入り込むと、尾張の目に久しぶりの光が差し込んだ。
 ・・・意識が戻ったのだ。

「・・・・・・あれ?俺、いったいどうしたんだっけ?」

 記憶が錯乱し、頭を抱える尾張だが、その状態、その光景に違和感を覚えたのだ。

「・・・なんで、俺、体操着なんか着てるんだ?それに声だっておかしいし・・・えっ、こ、ここって・・・」

 体操服姿で長い髪の毛をかき上げながら、瞳に映る部屋の間取りや模様から、ある人物を思い浮かべる。机に置かれているネームの用紙を見ながら、自分が古間きららなんじゃないかと思い、慌てて部屋に置いてある鏡
を覗いてみた。

      31f147fd.jpg

「き、きらら先生になってらぁ。あっ、あはは・・・」

 やっぱり、意識はなくても意志疎通の出来事は夢物語ではなかったのだ。思い出した尾張は、古間きららに憑依したのだと実感し、彼女の表情をコロコロと変え始めた。
 笑った顔から怒った顔、困った顔へ表情豊かに変わっていく。それがすべて尾張がきららの表情を使ってやらせているのだと思うと面白く、彼女の表情で口元を釣り上げて「くくく・・・」とにやけ始めたのだ。

「先生。どうですか?今の先生は俺に憑依されてるんですよ?先生のカラダを好きにすることが出来るなんて最高ですよ。俺を怒らせればこんなことだってできるんですよ」

 運動着の上から思い切ったようにきららの腕を両胸に下ろして揉みしだく。思い切り強く揉んでいるので、運動着に皺が出来るほど荒く、きららの胸は形が変わるほど大きくうねっていた。

「へえ、先生ってやっぱり胸が大きいですね。ブラをしていてもすごい波打ってて気持ちいいですよ」

 自分の胸を揉みながら他人事のように胸の柔らかさをつぶやく。今のきららには意識はなく、自分の胸を尾張に揉まれているという記憶すらないのだ。文字通り、やりたい放題だ。尾張の意志のままに胸を揉み続けるきらら。次第にその表情が高揚してくる。

「ん・・・先生も、気持ちいいですよね?これが、先生の感じ方なんですね。・・・くぅ~。胸を揉みくちゃにされるのが好きなんですね」

 今すぐにでも直接揉みたいという欲求が尾張を駆り立てるが、尾張は思い出したようにきららの身体を弄るのをやめた。

「そうだ、先生。先生って俺に絶対本名教えてくれなかったですよね。せっかくなんで、先生の本名教えてもらいますよ」

 古間きららというのは勿論、漫画家のペンネームで本名じゃない。きららは編集者の尾張にも本名を教えていなかったのだ。ここぞとばかりに尾張はきららの部屋を物色し、本名に関わるものを探し当てた。

「あった、保険証だ。ふぅん・・・。星来―せいら―っていうのか。・・・えっ、15歳!?マジかよ、ませた餓鬼じゃねえか」

 尾張は星来の身分証から年齢まで知ってしまった。彼女の秘密まで知ってしまったことで、さらに身体が興奮を覚えたのを感じた。

      d0dd05bb.jpg

「そうか、星来ちゃんっていうのか。可愛い顔しておきながら俺たちを馬鹿にしていたら、碌なことにならないぞ。まずはその身に教えてやろうか」

  眠っている本人に言い聞かせるように星来(尾張)は、再びその姿を鏡に映したのだった。

 
続きを読む

 鏡の中で映っている小柄で華奢な少女。
 今をときめくジュニアアイドル、藍田咲。 

 彼女に『寄生』した正雄。 いや、『憑依』といってもいい。眠っている彼女にとって、眠っている間に身体を乗っ取られ、正雄に使われているなど夢にも思っていないだろう。
 正雄が笑えば咲が笑顔をつくる。表情をころころ変えて遊んでいる姿は少女そのものであるが、ときおり、悪魔のような笑顔を浮かべるのであった。

「可愛い。咲ちゃん可愛いよー。えへへ・・・、嬉しいなあ、咲ちゃんになれるなんて」

 咲に『寄生』したせいか、頭の中まで幼児化したのか、普段言わない様な笑い方をしている正雄である。
 
「えへへ・・・咲も逢いたかったんだ・・・。正雄お兄ちゃん」 

 咲を妹の様な扱いである。鏡の中で瞳を潤ませ、まるで兄妹の再会のような状況を作らせていた。

「ねえ、キスしてもいい?・・・ン・・・・・・ちゅっ」

 唇を尖らせ、鏡の中の咲と唇を交わす。アイドルとキスしている自分に照れ笑いを浮かべる咲(正雄)だった。

「いまはアイドルじゃなくて、正雄お兄ちゃんの彼女だよ。わたし、ずっとお兄ちゃんのことが好きだったよ」

 アイドルに告白されるシチュエーションも、男の夢である。
 一夜限りのクリスマスプレゼントを堪能する正雄。行動も次第に大胆になる。ゆっくりと咲の身体に視線を落とした。

「服脱いでほしいの?恥ずかしいな・・・」

 照れ隠ししながら、咲(正雄)はパジャマの上着を捲っていく。白くて余分なお肉のないお腹と通り過ぎて、胸を隠すピンク色のブラジャーが顔を出す。

「(ジュニアアイドルでもブラジャーするんだな)」

 〇学生でもブラをする時代である。

「(〇学生でアイドルのブラジャーなんて最高じゃないか!)」

  それを見ただけで咲の顔が高揚していく。そして、これから外すんだと思うと、小さな心臓が昂っていくのを感じていた。ドキドキする胸に触れながら、中央で止めるフックを外すと、咲の胸がぷるんと振れた。

「・・・よいしょっと、外れた・・・。わあぁ・・・おっぱいだ・・・」

 目で見て、鏡で見て、あらゆる方向から好き放題見る。
 可愛い胸である。誰にも触られたこともない胸だろう、乳首も勃起することもしらないようにちょこんと尖っているだけで反応は示さないが、乳輪の形と言い色と言い、乳首を染める小さな淡い桃色はそれだけで綺麗という感想を受けた。

「すごい・・・プニプニしてる・・・・・・あっ、揉んでる」

 無意識に咲の胸を揉んでいた。いや、本能的に正雄の潜在意識が咲の胸を揉めといっていたに違いないのだ。それに従っただけ、従わざるを得ないだけ。
 目の前に揉みたい胸があるのに、揉まずにはいられないっ!

 もみもみ・・・・・

「ん・・・くすくす。・・ちょっと、くすぐったいかも」

 感じるにはいかず、胸を触られてくすぐったいと言うのが本音。やはりまだジュニア。アダルトの魅力は知らない、と・・・キュッと両方の乳首を軽く摘まんでみた。

「ンン・・・」

 刹那、咲の身体にビクビクっと電流が走る。乳房はそれほどでもなかったが、乳首は感じるみたいだ。咲(正雄)は自らの両手で、親指と人差し指で円を作ると、乳首を掴んでくいくいっと引っ張ったり捻ったりして感度を高めていった。

「ああっ・・もぅ、ぃゃ・・・恥ずかしいよぉ」

 咲の声に興奮し、身体がどんどん熱くなっていく咲(正雄)。咲の身体が次第に性に芽生えるように、乳首がコリコリと固くなり、乳房が揉まれる度に柔らかくなっていく。

「はぁ・・はぁ・・、身体があついよぉ・・・。こんなに早く感じるんだ・・・しかも、気持ちよさが持続して、変な気持ちになっちゃう」

 下の口からとろりと零れる液の感覚。尿意とは違うが、足に伝う濡れた液の感触に、咲(正雄)は我慢できなくなる。先程咲が眠っていたベッドに戻ると、仰向けになってベッドに寝転んだ。
 そして、足を開いてスカートを持ち上げると、咲の秘部を惜しげもなく晒した。

      dbaa984a.jpg

 咲の花弁である。正雄が弄り、侵入した秘部は、自分からは見ること出来なくなってしまったが、ソコはじわりと粘液で濡れているのが感じ取った。
 視覚を失った代償として得られた感覚。先程まで得ることが出来なかった咲の感覚。
 気持ち悪いという心と、気持ち良いという心が半分に分かれていて、触りたいという想いと触りたくないという抵抗が半分あった。
 でも、それが咲の気持ちであるなら、そこに正雄の気持ちが入り込むことで、均衡は破られる。

「俺しか知らないアイドルの秘密・・・フヒッ!・・・触ってるんだ、咲ちゃんのアソコ・・・」

 ヌルヌルと、小さな指にまとわりつく透明なお汁含ませながら、恥丘から大陰唇へと撫でおろしていく。プニプニと、乳房よりもさらに柔らかい感触に触れると、乳首よりもさらに身体が熱くなっていく。お股のあたりがジーンと痺れて、甘い吐息を震わせる。

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・ん・・・」

 おま〇こを弄る咲(正雄)。小さくて柔らかい感触を何度も味わう。指が吸いつき、指を吸い込み、さらに卑猥な行為を進めていく。

 クニュクニュ・・、クチュクチュ・・

「あっ・・あっ。ん!・・・あぁん!」

 我慢できず、辛抱できず、咲の甘い声が自然と漏れる。咲の指だが、正雄の指テクで咲を快感へ誘っているのだ。

「(通用する!俺の指テクはアイドルにだって負けてないぞ!)」

 変なプロ意識を覚醒させる正雄である。そのまま陰核を剥いていく。

「あっ!?ああぁっ!!?」

 一際大きな声を荒げた咲。鋭くい強電流が身体を駆け巡り、咲の身体を一瞬で硬直させた後、凄まじい快感の余韻を身体に残していった。

「(フヒっ、アイドルの弱点発見!咲ちゃんの弱点は、クリ〇〇ス!)」

 正雄の指テクで咲のクリ〇リスを果敢に責める。初めての快感に咲の身体が目覚めていく。不安がっていた身体が快感の味を知ってしまうと、お汁は止めどなく溢れ出した。

 クチュクチュクチュクチュ

 ビショビショの咲の秘部。指の先が渇くことなくお汁を掻き混ぜる。ビクッ、ビクッと身体を震わせる咲は、人生初となる絶頂を味わおうとしていた。

「ハァァ!ハァァ!だ、だめぇ・・きもちよすぎて・・・なんか来てる、ああ、うそっ!こんなの初めてっ!ああっ!いっ、いっちゃうぅぅぅ!!あはぁぁ・・・ッッ」

 全身を硬直させる咲。激しい絶頂が身体を走り抜け、弄っていた秘部からさらに大量の愛液が滴りおちた。 
 
「はぁ・・はぁ・・すごい・・・まだ疼いてる・・このカラダ・・・はぁ・・・」

 咲の身体も一度覚えた絶頂はすぐには静まらない。たまった疲労感を超えるほどの快感を生みだしたことに、自ずと表情をほころばせていた。


 
続きを読む

朝の支度を済ませて学校へむかう。クラスメイト、澤村詠美として――。

「確かこんな感じだよな。・・・よし、バッチリ」

 鏡を見ながら制服に着替えたオレの前には、毎日学校で会う詠美の姿がそのままあった。逆を言えば、オレは詠美の私服姿を知らないのだから、制服姿しか知らない方が服を選ぶ手間が省けた。もう一度、詠美の顔の筋肉を動かして表情を変えていく。千を数えそうなほどコロコロと表情を変えていく詠美。オレ自身さえ持っていない表情のレパートリーを形作れば、誰から見てもオレが詠美だと思うに違いなかった。

「もう、急がないと学校遅刻しちゃうよ。早く学校行かないとね」

 学校に行くのが楽しくて仕方ない、少女のような明るい声を発しながら鞄を持って部屋を後にする。

      ebe4bcc4.jpg

 鏡が最後に捉えた詠美の表情が、しばらく部屋の鏡に残像として映っていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・ 

 通学路を歩いて、人影を探す。習慣づいたオレ自身の身体を探しながら、予定調和の時刻、場所に合わせてやってくる。

「・・・みつけた」 

 オレは本体である、オレ自身の身体、清原智也を発見した。眠そうな顔して、平凡な毎日に退屈したような顔をしながら欠伸を噛み殺してだらだら歩いていた。
 オレに気付いていないのか、それともオレの本体には何の支障もなかったのか、別段普段と変わった様子は見えない。それこそ、身体の一部が抜け出して澤村詠美の身体を乗っ取っているなど夢にも思っていないかのような日常的に見る通学路だった。 

「いま、この退屈な毎日を終わらせてあげる。これからは彼氏彼女としての関係が始まるのね!」

 健全な男子高校生なら憧れる、彼女との二人での通学、二人での昼食、二人での学園生活、二人での放課後――夢のような彼氏彼女の関係。勝ち組のロード。
 澤村詠美という、オレの身には申し分ない容姿を持つ彼女と歩く、カップル同士の秘日常。それがいとも簡単に可能な状況なのだ。
 声をかけたらびっくりするだろう、なんてことを考えながら、智也の元へ飛び出していこうとする。

「きよは―――!」
「あーーーー!!詠美ぃ~!!!」

 突如、朝の通学時間を切り裂くかのような大声に驚き、振り返る。
 そこには、クラスメイトの面々が揃いもそろって歩いていた。

「おはようございます」
「おはよう」
「あ・・・うん。おはよう」

      e32abe8f.jpg

 拍子抜けしながらクラスメイトと挨拶を交わす。川上友子、池上恭子と白河あかりは一緒のグループだが、朝から一緒だとは知らなかった。三人は女子だけじゃなく男子とも仲が良く、輪の中で雑談するのをよく目にするが、オレ自身は彼女たちと話すことは一度もなかった。
 まさか、こんな形で彼女たちと初めて挨拶を交わすとは思わなかった。

「どうしたの?固まっちゃって?」
「え・・・そう?」
「朝から硬いわね。ラジオ体操でもすれば?」

 それは恭子なりのジョークなのだろうか?それともアドバイスなのだろうか。思ったことがすぐ口に出てこなくて一方的に彼女たちの雰囲気に飲み込まれている。

「・・・そういえば、誰かに声かけようとしてなかった?」

 友子の核心をつく発言に動揺してしまう。あかりが身を乗り出してオレが呼ぼうとしていた相手を探そうとするも、その相手を見つけることが出来ない。いや、見えているのだが、目に映っていないのだ。

「えー。誰?誰かいるの!?・・・・・・・・・清原君しかいないけど、まさかねぇ・・・」

 なんだ、その興奮が一気に冷めていくテンションの上げ下げは。オレに声をかけることを躊躇いやがって、やっぱり世の中顔なのか?顔で喋る相手を選ぶのかよ!?
 うーん、この世の中はイケメンに優しく、ブサメンに卑しくできている。平等故の不平等ですね、ま~ん(笑)

「なに、怒ってるのよ?行くわよ。歩かないと遅刻しちゃうわよ」

 とっくにオレの本体も学校へ向かってしまっている。確かに立ち止まっているような時間はない。
 秘日常に憧れるのはもう少しお預け。しばらくは詠美としての日常的な生活を楽しむのも乙かもしれない。
 オレは彼女たちに連れられ、通学路を歩き始めた。


 
続きを読む

 中森一隆ーなかもりかずたかーは町の豪邸にする大金持ち。
 メイドまで雇って家事を働かせる、企業家であった。

      8c33eef6.jpg

「一隆様。失礼いたします」

 二階の自室で作業していた一隆のもとに沢渡尊ーさわたりみことーがやってくる。メイドとしての実務を完璧にこなす。ご主人様に忠実である反面、どこかアニメのキャラにも通じる口調で話す、おっとりした性格である。基本、一隆に仕えるメイドは一人であり、時間に応じてやってくるメイドを変えている。それは、メイド同士のトラブルを避けることを目的とした名目であり・・・・・・一隆の気分というのもあるのだという。

「お茶が入りました。少し休んではいかがでしょう?」
「そうだな・・・この仕事を終えたら考えてやってもいいかな」
「・・・かしこまりました」

 自分の意思を伝えることはせず、持ってきた紅茶セットを置くと再び部屋の掃除を始める。
 いやな顔せず黙々と掃除する尊であった。
 まだ紅茶も冷めていない頃、急に一隆は席を立ち上がった。

「いかがいたしましたか?」
「出かけてくる」
「えっ?・・・紅茶はいかがいたしますか?」
「いらない。しっかり仕事して置けよ」
「・・・・・・はい。かしこまりました」

 急な用事で出かけることになった一隆は部屋を空けてリムジンを走らせた。一隆が消え、家の留守を任された尊は、一人席に座って冷め始めた紅茶を飲み始めた。

「ふぅ・・・」

 カップに口をつけて紅茶を喉にすする。休憩しながらも一人で飲む紅茶に気持ちを穏やかにしていく。
 企業家は実に気難しい。お金をもらっているのだから何も言わずにただ言われた事だけに専念すればいい。 メイドとは寡黙の人形である。心情や感情で動いてご主人様の迷惑をかけることはしてはいけない。それが尊の信念だ。

「でも・・だからこそ、傷つきますね・・・」

 仕事をする上で苦しみは付き物だ。我慢をしなければいけないことは必ずどの業種にもある。それでも、『メイド』でいられることの喜びを感じながら、仕事に戻っていかなければならない尊だった。
 すっと席を立ち上がった尊は、ふと窓から何者かが部屋に尋ねてくるのを目撃した。

「お客様かしら?」

 しかし、いくら待っても呼び鈴はならない。しかし、一階からは物音が聞こえてくる。ゴソゴソと物を漁る音に、尊はなにやら胸騒ぎがした。

「まさか・・・物取り?」

 そのまさかであった。二階からやってきた尊が見たのは、一階のリビングで部屋の中を漁る二人の男の姿だった。部屋にある金品を汚い布袋にいれて、次から次へとリビングの引き出しから金品を放り込んでいった。

「(いけない、警察に連絡しなくては・・・)」

 初めてのことで身体が思うように動かない。しかし、一隆が留守の間に家を守らなければならない。
 無理やり身体を動かした尊は、思わず大きな音を立ててしまった。

「んっ?」
「あっ!」

  その音を聞いて尊は強盗犯に見つかってしまった。急いで逃げようとしても、もう一人の男性が尊をはがいじめにした。

「放してください!」
「おまえはどこの自宅警備員だ!」
「違いますぜ、これはいわゆる、メイドではないでしょうか、だんな?」
「なにぃ!メイドだぁ!!?」

 強盗犯にはメイドという存在すら頭になかったようだ。お金持ちの考えることはよく分からないと言わんばかりである。

「お金持ちには二人いる。一人は溜めた金をばあっと使うやつと、溜めた金を使わずに懐に仕舞い込むやつだ。前者は実に賢いよな。金を使って無い無いっていう『普通』のやつを演じられるが、後者は既に金を溜めることを目的として『お金持ち』を演じる奴だ。俺たちはな、そう言うやつを食って生きてるんだ。前者は自分の為に金を使えるがな・・・後者は俺たちの為に金を取っといてくれるんだからよ!」
「なんて勝手なことを・・・!」

 強盗を犯す者の考えを理解することは出来ない。既に他人のモノを盗むことを目的にしているのだから、自分への苦労など知ろうとしない。我慢できないから罪を犯すのだから。
 だから、永遠に分かり合えないのだと、尊は思っていた。

「放してください!警察を呼びます!」
「そうはいかないぜ!俺たちの顔を見たんだから生かして帰さねえぜ」
「ここはあなた方の家じゃありません!」
「それはどうかな?」
「えっ?」

 強盗犯の一人がもう一人の下っ端に合図で促す。背後で何をされているのか分からない尊は、急にメイド服であるドレスのファスナーを下ろされる音を聞いた。

「きゃあっ!な、なにをするんです!」
「白い肌・・・綺麗なもんじゃねえか。それがもうすぐ・・・ふふふ」

 ファスナーを下ろされ、尊の背中ががら空きになる。
 尊は何故かもう一つ、ファスナーが下ろされる音を聞いた。

「な、なんですの・・?この音は?」

 身体からジジジ・・・と、なにかが下りていく音がする。そして、それは冷ややかな風を感じたかと思うと、急に身体に力が入らなくなってしまったのだ。
 脱力でもなく、完全に身体に力が入らない。立っていることができないほどに足に力が入らなくなってしまったのだ。それでも自分が立っていると錯覚しているのは、体重を失ってもなお身体を強盗犯に抑えられているからだった。

「へっ、美しい身体が無残な姿だぜ」
「なにをしたのです?私にいったい、なにをしたのです!?」

 強盗の主犯が皺くしゃになっている尊の姿を見ながら残念そうな表情を浮かべている。喋りづらいのは口がうまくしゃれないだけじゃなく、恐怖が尊の身体を支配してきていることもあるようだ。

「ちょっとお前さんには俺たちの隠れ蓑になってもらうぞ。俺たちは強盗だ。金品だけじゃなく、その人の人生すら奪えるんだぜ?」
「私の人生を奪う・・・?何バカなことを言っているのです!?」

 強盗犯がなにを言っているのか分からない。
 理解も出来ないから恐怖が拭えない。尊は自分の人生を奪おうという強盗犯に、今まで以上の恐怖を覚えていた。

「はじめろ」 
「へい。それじゃあ、まずは足ですぜ」

 尊はなにを言っているのか分からず、靡く身体を使って初めて背を向いてみた。すると、自分の背中が『ファスナー』を通じてばっくり開いていたのだ。まるで背中を引き裂かれた様に傷口が開いているのに、血が一滴も出ていない。しかし、中はいったいどうなっているのかなど、おぞましい光景はみたくなかった。

「きゃあああぁぁぁ!?!?!?」

 そして、自分の開いた空洞に、強盗犯は足を入れようとしていたのだ。まるで背中を蹴られるかのように勢いよく踏みつける。しかし、身体が痛みを覚えることもなく、むしろ、その蹴りの威力をそのまま吸収するかのように身体に蓄えてしまった。
 先程まで肉を失い、皮だけになっていた尊の脚が、強盗犯の右足がはいったことで元の細さに戻っていった。

「もう片方の足もいれますぜ」

 そのまま下っ端は左足を持ち上げた。そして、バランスをとりながら、尊の背中に足を差しこんだ。入っていく強盗犯の足に苦しさは何も感じない。しかし、元に戻った脚に不思議と感触がなかったのだ。

「あれ・・・どうなっているのです?」

 動かそうとしても動かない尊の両足。しかし、次の瞬間、自分の脚が急に動き始めたのだ。右脚、左脚と交互に持ち上げながら、ステップを踏むようにその場で足踏みを始める。
 尊の意志と関係なく――。

「な、なんでですの?私がやっているわけじゃありませんのに」
「ガハハハ!おい、どんな感じだ?」
「軽いですぜ。これが女の脚なんですね!」

 下っ端もまた脚は細い。しかし、毛も生えていれば美脚でもない。尊は比べ物にならないほど脚は細く、長い。その脚が強盗犯の会話通りだとすれば、下っ端が尊の脚を動かしているのである。

「ま、まさか・・・あなたが!?」
「ゲヒヒ!今更気付いてももう遅いですぜ!この脚はもう俺っちのモンですぜ!ほれえ!」

 ガバッと下っ端が尊の脚をがに股に開いてみせる。ロングスカートとは言え、尊は自分がどんな体制を取られているか分かるので、恥ずかしくて悲鳴をあげてしまった。

「やめてください!こんな破廉恥な格好しないでください!」
「ゲヒヒ!まだまだこれからですぜ!」
「お前はまだ気付いていないのなら教えてやる。お前の脚を奪ったのも、もうこれで逃げることも、警察に助けを呼ぶことも出来ないことを思い知らせるためだ」
「あっ!」

  強盗犯は尊を囲んで笑いあっていた。どうにもならない恐怖に、尊は絶望を覚えるのであった。

 
続きを読む

 今日もまた、博志(あかり)の眠る病院へ訪れる。眠ったまま時が止まった様に、目を閉じ続け目覚める様子もない。
 まるで俺はあかりの悪夢に取り憑かれているようだ。彼女が目覚めない限り、俺の悪夢も永遠に終わる気配がない。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 あかりの身体を手に入れてから博志はさらに欲望に拍車をかけるようになった。より積極的に女子に絡み、より攻撃的に男子を遠ざけ始めた。
 体育の着替えの時、まだ授業の片づけをしている男子生徒を怒鳴り散らし、教室から男子を排除していった。女子たちもあかり(博志)の声に賛同しながら、男子を一人残らず廊下へ放り出したのだ。
 同性しか残っていないと安心した表情を見せながら、制服を脱いで体操服へと着替え始める女子生徒。談笑しながらあかり(博志)は、クラスメイトの発育した身体を舐める様に眺めていた。

      6e327123.jpg

「(ひゃひゃひゃ!俺の目の前で次々と女子たちが気兼ねなく脱いでいくんだぜ?お前たちは俺に見せたいのかって思うくらいダイナミックなストリップショーだぜ!)」

 もともと明るいあかりの人柄に多くの女性が集まっていく。中にはあかりに絡んでくる女子生徒だっている。信頼も厚く、信用できる人柄を、あかりはすべてそっくり奪われたのだ。
 そうなれば、信頼や信用を逆手に人の心を弄ぶあかり(博志)。水泳部に顔を出せば、後輩の朝霧時雨に声をかけて――

「先輩、今の話本当ですか・・・?」
「うん。みんなが部活動に励んでいるうちに抜け出して、二人で気持ちイイことしましょう」
「・・・はい。私、先輩となら、この身を捧げてもいいって、ずっと思ってました・・・先輩」

      73a4f4d3.jpg


 校内期待の二人が、部活を抜け出して人気の少ない倉庫内へと入っていった。そして、競泳水着のままで肌を重ねていった。

「はぁっ、はあっ、せんぱい!せんぱい!」
「はあぁん!なんでこんなに気持ちいいの!たまんな~い!」

 あかり(博志)は、時雨との激しいレズ行為を堪能していく。時雨の胸を水着越しに揉みほぐしていく。時雨はあかりの行為に何の疑いもなく自分の胸を揉まれていた。次第に息を荒くして、水着の上から乳首を隆起させて感じながら、自らもあかりの胸を揉み始めた。

「先輩も気持ちいいですか?・・・はぅ、わ、わたし、すごい、緊張して・・・うぅっ・・・」
「うん・・・わかってるよ。時雨の手、凄くイヤらしく私の胸を揉んでる・・・ん・・あんっ・・・あっ・・・」
「先輩の声、すごく可愛いです・・・私がそんな声を出させてるんですよね、せんぱい・・」
「んっ・・そ、そうよ・・・あんっ!時雨・・・もっと私を気持ちよくしてぇ」
「・・はっ、はい!先輩」

 先輩の指示に従うように、我慢できなくなった時雨があかりの水着を脱がせて、直接胸を曝け出した。さらに自分の水着も肩紐を外し、上半身まで脱いで胸を露にすると、互いの胸と胸を擦り合わせたのだった。
 二人の胸が擦れ合う感覚を堪能する。あかりの方が大きいその胸が、時雨の小振りの胸に弾かれて激しく揺らされていた。

「あっ、あん!時雨の硬い乳首が、わたしの乳首を押してる・・・ふぅぅん・・・」
「先輩・・わたし、頑張ります、ぅふん・・・からぁ・・・いっぱい感じて下さい・・・あっくぅ・・」

 身を呈して自分から快感を生んでいく時雨。先輩を気持ち良くするために、一心になって乳房をぶつけ合わせて乳首を擦っていく。唾液を垂らして二人の乳房で唾液をかき混ぜる様に谷間ですりつぶしていくと、ニチャニチャと言うイヤらしい音が響き渡り耳の粘膜を揺らしていた。

「(あぁ・・後輩を利用して気持ちよくさせてくれるなんて楽な作業だぜぇ。でも、もっと気持ちよくなりてえな)」

 時雨の頑張りに十分身体が火照ってくると、あかり(博志)が今度は時雨の身体に絡みつくように足を組んで秘部同士をくっつけ合わせた。濡れた割れ目と割れ目をぶつけ合わせてクリ〇リスから衝突の振動がそのまま快感の直撃となって身体を刺激する。

「ああんっ!」
「ふああっ!凄いです、先輩!ひやああ!強すぎるぅ・・・」
 
 時雨が今まで味わったことのない刺激に喘ぎ続ける。間髪いれずにあかりは次々に腰を振って秘部を擦りつけていくので、水着生地に擦られ、あかりの秘部を押しつけられる感覚に、時雨の股間部は乾くことのないほどにぐっしょり濡れてしまっていた。

「ああ・・ああ・・・先輩に、い、いかされるなんて・・・わたし・・・しあわせですぅ・・・せんぱい・・・ああぁ・・」
「(くっくっく・・・見ず知らぬ男にいかされることを知ったら、この女発狂してしまうんだろうな。せいぜいあがきもがき狂いまくってくれよ)」 

 あかり(博志)の表情が時雨を嘲笑う。既にいきそうになっている時雨に対して容赦なく腰を加速していった。

「あんっ・・あんっ・・・時雨ぇ!わたしも、い・・・いっくぅ・・・いくよぉ~!」
「せんぱい!わたしもぉ・・・いきますぅ~!一緒に・・いってくださいぃ!」
「わかったわ・・時雨ぇ・・・あんっ!あっ!ああんっ!ふああああぁぁぁあぁああぁぁぁ―――!!!」
「いい・・いくぅ・・いっくぅ・・・!いっくううぅぅうううぅぅぅ――――!!!」

 時雨をいかせながら、自分もまた絶頂を味わう。あかり(博志)は絶頂の余韻を堪能しながら、気持ち良さそうに寝顔を見せる時雨に対して、憐みな視線を投げ捨てた。

「えっへっへ・・・またレズ行為しようぜ、時雨ちゃん。今度はもっとアブノーマルなプレイをやろうぜー」


続きを読む

「はぁ・・・マジかぁ~」

 人は誰しも非情な現実を簡単には受け入れられないもの。
 平日の真っ昼間に公園にのブランコに乗る30歳前半の男性の違和感は、公園内にいる妻たち子どもたちの格好のヒソヒソ話の種である。

「あんなところでなにしてるのかしらね?」
「仕事サボってるんじゃないの?」
「確かあの人、向井さん家の純次―じゅんじ―くんよ?ほらっ、まだ独身の」
『ああー!』

 納得しているように頷く井戸端会議参加者たち。睨むように振り向くと、視線を寄らしてスコスコと退散していった。

「サボリ・・・そんな貧弱なもんじゃねえよ・・・」

 ぼそりとつぶやいた純次にとある言葉が脳裏をよぎっていた。
 リストラ、である。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「クビよ!」

 そう言われたのが一時間前である。お局さまであり同じ会社の部署を牛耳っていた、 萱津愛宕―かやつあたご―に姿勢の宣告を言い渡された。

      c6a410ff.jpg

「ひぃぃっ!そんな、まさか・・・俺が、信じられない!」
「そうやって、あなたが首にならない理由が見つけられないところが要因よ」
「バカな!・・・や、やあっ!考え直してくれよ、愛宕ちゃん。俺だって一生懸命やってるんだからよー」
「一生懸命やってるのはあなたが決めることじゃなく、会社が決めることよ」
「残業だってやってるじゃねえか!お前たち女子社員は定時に帰って仕事を男子に押しつけてくるじゃねえか!新人の茅野―かやの―だって楽させてるじゃんか!」
「残業やってても仕事量が見合ってないのが記録から出てるの。・・・いい?アナタ、私たちがいなくなってからサボってるってことよ!」
「ううっ・・・」
「お菓子をこっそり食べて、携帯でも弄って時間だけ浪費してお金を貰おうだなんて虫が良すぎると思わない?残業やってる人が偉いわけじゃないの。昔のように時間を無駄に使うのなら会社にいらないわ」

 愛宕が入ってから管理体制が厳しくなり、仕事がやりづらくなっていった。現状に対応できない人が次々と消えていき、純次にとって居心地の良かった職場が純次を追い出しにかかっていた。

「お前がいなければよかったんだ・・・おまえが――!」
「消えなさいな。会社は私を選びあなたを切り捨てたのよ。さようなら――」

 会社を切られた純次は、今日からニートの仲間入りである。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 人は誰しも非情な現実を簡単には受け入れられないもの。
 逃げれば逃げるほど深みに嵌り、憎悪や恨みが蓄積していく。純次もまた愛宕に対して憎しみを抱いていた。復讐したくてたまらない想いが、悪魔との出会いを決定的にさせていく。

      3a96a628.jpg


「こんにちは。今日もお寒いですね」

 急に声をかけられた純次が顔をあげると、スーツ姿の男性が前に立っていた。ニコニコとした張りついた笑顔で純次に語りかける不気味な男である。

「ひょっとしてあなた、仕事がないんですか?」 

 他人からそう言われると良い気がしない。苛立ちが募る。

「アンタ、何なんですか?」
「私はホームレスなんですよ!」
「は・・はあぁ!?ホームレスのくせにスーツ着るなよ!笑顔でいるなよ!現実見ろよ!」

 自分よりひどい境遇にいる癖に身だしなみをしっかりしている男性に驚くと同時に、自分よりも過酷な環境にいる男性を見て安心している純次がいた。

「なんだ、おまえもニートか」
「ニートというよりフリーターです。当たって砕けろの突撃部隊長です」
「は、はぁ・・・」

 つまりは失うものはなにもないといったところだろうか。 ニートは親の脛が無くなれば終わりだ。家も金も親の代から引き継げばあるのだ。ホームレスには何もない。失っていいものは何もない。
『な に も な い か ら な ん で も で き る 』 。

「どうです?私と供に復讐しません?」
「復讐・・・」
「あなたをニートに追いやった人物に、復讐ですよ。切り捨てた者の気持ちが分からない者に同じ苦しみを与えてやるのです」
「復讐・・・萱津の・・・ばばぁに!」
「萱津・・そうですか。萱津愛宕という、XO株式会社の社員ですか。 いやあ、奇遇だなあ!僕もその人知ってるんですよ!そして同じように切り捨てられたんですよ!」
「あいつ・・・アンタも首にしたのかよ・・・。そうか・・そうなのか!俺とまったく同じ境遇の奴がいるなんて思わなかったぜ!」

 がっちりと固い握手を交わす二人。会って間もなく意見を交わし、好意的に話を進めていった。

「でしたら、これを使っては如何ですか?」
「なんですか、これは?」

 ポケットから『ファスナー』を取り出した男性は、その使い方を純次に教える。そして、その話を聞いていく内に、純次は自然に顔がにやけてしまうのだった。


 
続きを読む

↑このページのトップヘ