「坂本怜夢-さかもとれいむ-ちゃんとぷぷぷ、プールデートだぁぁぁ!!」

 緑風光武-みどりかぜみつたけ-は手紙の内容に舞い上がっていた。
 JBT46の1人、坂本怜夢-さかもとれいむ-とのお忍びプールの誘いを断る男は一人もいない。
 早速準備を進めていた俺のもとに、ドアを蹴り破る勢いで開け放つ妹たちの怒声が響き渡っていた。

「その手紙がお兄ちゃんなわけないでしょう!」
「私たちの手紙勝手に覗かないでよ。失礼じゃない」

 妹の千秋-ちあき-と優海-ゆみ-が怜夢の手紙を奪い取る。どうやらその手紙は妹たちに宛てられた手紙であり、妹たちこそ怜夢ちゃんとお忍びでプールに連れてってもらえる正統者だと主張していた。

「う、う、嘘だああぁぁ!!俺は怜夢ちゃんの推しファンだぞ!それくらいのサービスあって然るべき金額をつぎ込んでるんだ」
「いくらつぎ込んだの・・・」
「お兄ちゃんはファン止まりでしょ。私は一緒に活動しているメンバー。普通この手紙私宛てだってわかるでしょう」

 何を隠そう、妹の千秋はJTB46のメンバーであり、怜夢と一緒に歌って踊っているアイドルである。千秋と怜夢は密かに交流もあり、優海も一緒に遊んでもらっている仲だった。
 怜夢と俺はプライベートでも顔を合わせたこともあるので、普通のファンより距離が近いと思っている。
 しかし、妹だからこそアイドルなんてとてもとても似つかわしくないことを知っている。「あんなガサツで横暴な妹のどこにアイドル要素があると言うのだろう」。

「優海。今からお兄ちゃんが一人なくなるけど、問題ないよね?」
「お兄ちゃんが一人なくなるというパワーワード・・・」
「はっ、しまった!うっかり口を滑らせていた!?」
「血を分けた実の妹に金を振り込まない癖に――!!!」
「ぐぎぎ!ばか、千秋!そ、その関節は、そっちのほうには曲がらな、あっ、あっ、ああああーーーー!!!」

 腕ひしぎ十字固めが完全に決まり、悲鳴をあげる。解放されたのは優海によってKO取られたあとだった。

      晴れてJBTメンバー

「お兄ちゃんは勝手についてこないでよ」
「頼む!俺も連れて行ってくれ!荷物持ちやるよ、鞄持つの大変だろ!?金!全額出してやるから!車出すから!!!」
「普段同じことで上司にいじめられて泣いてるのに・・・」
「お兄ちゃん必死過ぎ」

 妹たちに何と言われようと、怜夢ちゃんと泳ぎに行けるこの千載一遇の機会を逃してたまるか。

「男はいざとなれば足の指だって舐めることができるんだ」
「それ、男のほうがむしろご褒美で女のほうが恥ずかしいよね」
「むっ?そうなのか?じゃあどうすればいいんだ?」
「アーーーハッハッハッハ!!!」

 プライドを捨てた特攻作戦も交わされて万策が尽きたその時、千秋の高笑いがこだました。

「いいよ。連れて行ってあげようか?」
「ほ、ほんとか?」
「その代わり、一年間は私たち姉妹の言いなりだけどいい?」
「はぁ!?誰がそんな契約飲めるか、いい加減にしろ!」
「プライドが超回復してる・・・っていうヒールワード」

 すべてを捨て去った俺の頭の中に、今まで浮かれていて気づかなかった発生と原因に至る。 

「ん?・・・まてよ。あの手紙・・・・・・優海。手紙どこに置いていた?」
「私の机の上だよ」

 俺が手紙を見つけた場所は扉の下だぞ。ご丁寧に二つ折りにされて隙間に挟まるように丁寧に仕舞われていた。
 風で飛ばされたにしては明らかに不自然だ。と、いうことは、誰かが俺に知らせるためにわざと置いた可能性が出てきた。
 その人物とは、手紙の置き場所を教えた優海じゃなければ一人しかいない!

「千秋。すべてお前が企んだことか!?」
「ひどい!企んでいるなんて・・・っ。お兄ちゃんヒドイ!」

 うわ、いきなり泣き真似しやがった。滅茶苦茶あやしい。

「冷静になればお前、俺のこと普段から『お兄ちゃん』なんて呼ばねえじゃねえか!」
「・・・・・・ちッ・・・」

 アイドルが舌打ちすんな。本性あらわしたな。

「お兄が好きな怜夢ちゃんをちらつかせれば私の手駒になると思ったのにな」
「なるか!実妹を好きになる兄なんかいません」
「でも、お兄は妹属性好きなんでしょ?遊んでるゲーム全部『妹』に関係するものばかりだし。わざわざ女主人公を選んで衣装替えして遊んでいる姿どことなく優海ちゃんにそっくりだし」
「女主人公を妹そっくりにして遊ぶっていうプレイワード…変態だね!」
「妹が可愛くねえからだよ!別にいいだろ!千秋に俺の趣味をとやかく言われる筋合いない!」
「お兄が好きなゲームって最終的に妹とHな事するのが定番なんでしょ?もしかしたら・・・お兄ぃ・・・私たちのこと・・・・・・」
「お兄ちゃん。優海のことが好きだったんだっていうワード・・・怖い~」
「怖いのは想像力豊かなお前らだろ!優海、なんで俺を見て泣いてるんだ!?」
「顔がデカいもんね」
「顔はやめて!顔はいじらないで!」

 そんなことをしていたら、呼び鈴を鳴らして怜夢が二人を呼びに来た。 

「ごめんください。千秋ちゃん!優海ちゃん!迎えに来たよー!」

 怜夢の声にプール道具一式もって姉妹たちは部屋から遠のいていく。

「今日はお兄のことなんか忘れて怜夢ちゃんと一緒に泳ごうね~♪」
「お留守番よろしくね、お兄ちゃん」

 姉妹が消えて部屋に静けさが戻っていた。しかし、逆に怒りが込み上げてきた。

「くそっ。千秋のやつ調子乗りやがって」

 このまま千秋に馬鹿にされていたんじゃ、兄としての尊厳がない。
 ここはひとつ兄としてガツンと言ってやらなくちゃいけない。そういう事ができるアイテムを俺は既に手に入れているというのに。

「千秋。お前は一つミスを犯したぜ。プールに行く事実を俺に知らせてしまったことだ!今日一日遊びに行く予定が分かってりゃ俺だって行くことが出来るんだぜ。車でな!」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 怜夢に連れて行ってもらったプールに到着する。そこは市民プールではなく都内の旅館に備え付けられている屋外プールである。人の数も少なく、アイドルとして姿を隠すにはうってつけの場所でもある。
 選ばれた者だけが入れるプールも夏の暑さだけあり人の数は多い。しかし、怜夢と遊ぶ二人の姿を見つけるのは特に苦労することはなかった。
 キャッキャッと楽しそうに笑う三人の声が特に目立っていたこともあり、流れるプール、ウォータースライダーで遊んでいる姉妹はいい意味でも悪い意味でも目立っていたのであった。

「このくらいの場所からでいいか」

 三人に見つからないよう物陰に隠れた俺は、栄養ドリングさながらの『飲み薬』を取り出し、キャップを回すと中身を流し込んだ。
 すると、しばらくして俺の幽体が身体から抜け出てきた。俺は幽体となって、眠るように床に横たわっている自分の身体が見えたのだ。『飲み薬』の効果に書いてあった通りだ。
 周りの人は眠っている俺がいるだけで特にかかわろうとする様子もなくプールに戻っていく。しかし、その傍らで宙に浮いている俺に気づく人物は一人もいなかった。

 あとは『薬』の通り、自分の身体に戻れるかどうかを試すだけだ。とりあえず戻ってみようと思い、床の上にある身体に幽体を重ねた。 
 頭がクラッとしたが、目を開けると俺の幽体の代わりに身体から見える視界に変わっていた。 身体を起こし手足が普通に動くことを確認して、簡単に普段の俺に戻ることができた。 
 
「簡単に普段の俺に戻るというパワーワードっ!」

 優海みたいなことを言ってしまったが、『飲み薬』の効能に信頼を置いたうえでいよいよ次は千秋に一石投じよう。 
 残った『飲み薬』を飲み干して、再び幽体になった俺は千秋の元まで飛んでいく。
 遊んでいる千秋が空から近づく俺に気づくことはなく、プールの足場を駆け回っていた。タイミングを見計らい、千秋への視線が逸れた一瞬の隙をつき、自分の身体に戻るように千秋の身体へ幽体を飛び込んでいった。

「んにゃああっ!?」 

 千秋はそう言って床に転ぶように倒れた。しかし、痛かろうが子供なんでダメージは残らなかった。そして、その時には千秋の視界を通じて俺が目を開いていた。
 先ほどのように自分の身体に戻ったように、 俺は急いで体勢を立て直して、スッと立ち上がった。
 明らかに視線が低く、今までとの違和感が半端ない。ほぼ同じ視線で話しかける優海が転んだ俺のことに気づいた様子だった。

「千秋ちゃん。大丈夫?」 

 千秋。明らかに優海は俺にそう言ったのだ。この視界も水着が包む身体も物語っている。俺は千秋に――憑依したんだ。

「憑依というパワーワード・・・」
「えっ?なに?」
「ううん、なんでもない。足を滑らせちゃって。やっぱり濡れた床を走っちゃダメだよね。あははは!」 

 千秋の声で笑う俺に、安堵した優海も怜夢も、プールへと戻っていった。 

 三人で遊んでいる間も千秋の身体はとても軽く、プールだけのおかげというわけでは絶対ない。

「千秋ちゃん!」
「なに?・・・うわぁ!!やったなぁ!それえ!!」
「きゃあ、もぅ~つめたい!」
「お返しだぁ!」
「キャッキャッ!」」

 考え事をしていたら水をかけられる。お返しとばかりに水をかけ返す。
 怜夢ちゃんの眩しい笑顔ときらびやかな水が反射している。かわいい水着に飛び込みたいのを我慢していると、千秋のお股が心なしか疼いてきたのを感じた。

「(ヤバい。俺の感情が千秋の身体に移ったかもしれない)」

 このまま三人で遊んでいると、どうにかなっちゃいそうだ。このままプールの中でオナニーしていいだろうか。
 一緒に遊んでいたかった俺は当初の予定を思い出し、一人プールの外に出たのだった。

「どうしたの?千秋ちゃん」
「ちょっと泳ぎ疲れたから一人休んでるね」

      ごっめ~ん!

 二人に嘘をつきこの場で別れる。ここからじゃ見えない自分の身体まで俺は急いで走っていった。
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