純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

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「・・・なにをやってるんだ、俺は・・・・・・」


 茜音(貴明)は授業が終わり、茜音の部屋にまっすぐ戻ってきてしまったことを後悔した。
 学校では体育の後疲れてしまい、そのまま睡眠学習に突入してしまい、起きたら放課後になっていたのだ。

「なんで起こしてくれなかったあぁぁ!!」
「だって、あまりに気持ちよさそうだったから・・・」

 体育での活躍を皆知っているせいか、眠っている茜音を起こさないようにしようとクラスが団結して起こさなかったのだという。

「余計なお世話だよぉぉぉ!!オオォォォン!!」

 一人残った義也に連れられて学校を去る。その時間になると既に陽が傾いていた。

「もうこの時間で暗いね。一年早いね」

 雪の到来を告げる冬。5時でも夕暮れは落ちて辺りは暗くなっていた。貴明(茜音)の姿はそこにはなかった。義也も帰ったというだけでそれ以外何も知らなかったようだ。

「なんてこったい・・・俺はまだ何もしてないぞ・・・・・・」

『飲み薬』を使って復讐すると言っていながら、茜音の株を挙げることしかしていない。むしろ義也が見た茜音(貴明)の行動は、どこか復讐に本気を出している素振りが見えない。
 そう思ったのは、眞熊達樹の告白を義也も聞いたいたからだ。

「ねえ、貴明。本当に茜音さんに復讐するつもりだったの?」
「ったりめーだ!この身体を使って、トラウマをだな——」
「ふーん。なんか口だけなんだよな」

 義也にしては珍しく茜音(貴明)に食いつくので、売り言葉を買ってしまう。

「馬鹿言え!俺がやろうと思えば車の前に飛び出して一生残る傷を作ってやる——」
「貴明が車の前に飛び出すなんて出来ないよ~」
「言ったな!いいんだな!じゃあ、見てろよ!今から茜音の身体で本気で飛び出してやるからな!」

 言い切った茜音(貴明)が何を思ったのか、道路に飛び出し走ってくる車に向かっていった。

「貴明!?」

 言い過ぎたと本気で後悔した義也。茜音の身体が車に跳ねられると思ったが、時速30km制限の道路で飛び出した茜音に気付いて車はブレーキを踏んで停止した。そして飛び乗った茜音(貴明)は、思い通りにならなくて一瞬思考停止したが、

「えい!えい!」

 突然、拳を振り下ろしてフロントガラスを叩き始めた。しかし、茜音の手の力でフロントガラスを叩いたところで全然ガラスにダメージはなく、コン、コンと音を立てるだけで割れる心配など全くなさそうだ。

「お嬢ちゃん。なにやってるんだい、早くおりてくれよ」
「ごめんなさい!すぐおりますから!」

 義也に引きずられて慌てて車から降ろされる。運転手は怒り心頭だった。

「次やったら学校に連絡するよ。まったく、危ないじゃないか」
「本当にごめんなさい。気を付けます!ハイ!」

 歩道に戻りながら全力で頭を下げる義也に運転手は車を走らせて消えていく。姿が見えなくなったあと、義也が変わりに謝罪したことに対する怒りを倍にして茜音(貴明)を睨みつけていた。
 茜音(貴明)も計画通り進まなかったことで調子がくるっているのか、義也から視線を逸らすように横を向いた。

「・・・・・・ってなわけよ」
「謝って」

 馬鹿なことをしていると、義也は深々とため息を吐いた。

「本当に飛び出すなんてどうかしてるよ。死んだらどうするつもりだったんだよ」
「安心しろ。異世界が俺を待っている!」

 ブチッと、義也の怒りが冷める前に燃料がさらに追加され、茜音(貴明)の身体をぐいぐいと車道へと押し込んでいった。

「いっぺん死んで来い!!」
「やめろ!茜音の身体だぞ!茜音の帰る身体がなくなるぞ!!」
「ほらぁ。やっぱり死ぬつもりなんて毛頭なかったじゃないか!」

 貴明の言っていることとやっていることが噛みあっていない。
 復習したいといいながら、どう復讐していいのか分からないと、逆に縛られているように思えてしまう。
 それも今日、貴明が本音を発したあの一言に尽きた。

「貴明。眞熊くんに告白されてたよね?」

 義也が達樹に告白されたことを教えると、茜音(貴明)は動揺していた。思いを伝えるとき誰にも知られないよう陰で告白するものだ。達樹もそのために体育館裏に茜音(貴明)を呼び出していた。にもかかわらず、義也がその告白を見ていたなんて思いもしないだろう。

「な、なんでそれを知ってる!?」
「聞いてたもの」
「あ・・・あ・・・」
「その時貴明、言ったよね?」

『茜音の幸せは俺が決める。どんなにおまえが茜音のために最善を選ばせようが、俺が決める幸せが茜音の一番の幸せだ、バカヤロウ!!!』

 一字一句間違えないくらい、茜音(貴明)が言った言葉を覚えている。それくらい印象に残った台詞だったのだ。義也だけじゃなく、貴明(茜音)にも残っていたはずだということはあえて義也は告げなかった。

「それってつまり、貴明がやりたかったことって茜音さんを困らせたかっただけでしょ?好きな子に虐めたいみたいな」

 貴明の本心を突く一撃をさり気無く発する。貴明がもし自分の気持ちに気付いていないなら、意識させるように持って行きたかったのだ。
 義也は貴明の親友だから幸せになってもらいたいから。

「冗談じゃない。俺は茜音にごめんなさいさせるんだ。俺と同じ苦しみを味あわせるためにな!」

 ひょうい部を廃部にさせた茜音に苦しみを味あわせるために『飲み薬』を使ったのだ。貴明が発足し、行動し、部員を集め、生徒会長に直談判した。人一倍想い入れのある部活動なのだ。
 部活にならなかったとしても、廃部になったとしても、他校の女子生徒に憑依して遊んだ記憶は義也も貴明も忘れられない思い出だ。
 だからこそ、何時までも続けていたいと思う貴明。面白い遊びを捨てて勉強に励むことを拒む。
 だからこそ、勉強に励むことができると思う義也。これからどんな辛いことが待っていても、部活で培った思い出がある限り前を進んで歩んでいける。

「貴明・・・・・・」

 二人の意見は一日で交わることは出来なかった。それぞれ家路に向かい放れていった。
 部活に縛られている貴明にとって、幽霊部に取り憑かれてしまった貴明をどうすれば目覚めさせることが出来るのか義也には分からなかった。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 茜音として部屋に戻ってきた貴明。幼馴染とは言え貴明が茜音の部屋に入ったことは子供のときから一度もない。逆に茜音が貴明の部屋に入ったことがあるのは、基本誘っているのが千村家の方だったからだ。
 始めて入る茜音の部屋。無断で侵入しているような感覚に警戒が解けない。今すぐにでも茜音が現れて、「なに勝手に入ってんのよ、この常識知らず~!」と殴られるのではないかと思えてしまうほどだ。
 しかし、ここには貴明しかいない。たった1人だけだ。通学鞄を置き、部屋一面を見渡した。
 年相応の女の子らしい部屋の模様になっており、女の子の部屋特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。可愛いデザインのベッドや机は少し値段が張りそうだ。そして本棚には集めている雑誌が綺麗に発売順に収められており、几帳面さが垣間見える。
 パソコン関連も持っていないため、コードやコンセントが少ない印象だ。その分クローゼットにかけられている服の多さに驚くほどだ。貴明が見ている茜音の服はせいぜい制服のみだったこともあり、茜音がこれほど衣服にお金を掛けているとは思っていなかった。

「そんなことよりも——!」

 茜音は姿見の前に移動して自分の姿を覗いてみた。
 そこに映るのは高橋茜音の姿だ。千村貴明はそこにはなく、変わりに幼馴染の茜音が映っているのだ。いや、この場合は逆かもしれない。茜音の部屋で茜音が映っているのはなにもおかしくない。しかし、貴明の意志で茜音を動かすことが出来るのである。

「今の俺は茜音だぞ。俺が下手なことすれば茜音が罪を被るんだ。ざまあみろ!」

 誰かを脅す様な口振りで高笑いを見せる。聞いているのは茜音(貴明)以外誰もいないが、満足そうに微笑んだ後で物色を開始する。

「茜音の人生を潰すために手っ取り早いっていったらネット!炎上商法だ!!ネットに茜音の恥ずかしい画像を載せれば萌えあがるだろ。頼むぞ、突撃兵たちよ!」

 貴明は近くにあった箪笥の中を勝手に開いて、下着が収納された棚を発見する。色気のない白が多い中で、水玉やピンクなどのカラフルが数点ある。下着を揃える年齢でもないとはいえ、その種類は他の女子よりも多いのではないだろうか。

「色々あんじゃん。へー」

 柄だけではなく、カップのデザインも豊富だ。フルカップブラ、ボリューム感を出すハーフカップブラ、締めつけが少なく着け心地がよく、とにかくラクなイメージの強いノンワイヤーブラと、バリエーション豊富になっている。
 茜音は物を捨てられない性格で奥にはサイズがもう合わないようなものまで残っていた。貴明が見つけたのは、中学時代に使用していたスク水が出てきたのだ。

「懐かしい。スク水じゃん。まだ取っておいたのかよ。捨てとけよ」

 ポリエステル素材のスク水は穿かれなくなっても昔と同じくその存在感に遜色がない。
 やけに小さいイメージがあるのは、貴明の記憶しているサイズと茜音のサイズに差があるせいだ。

「大事に取っておいたんなら、俺が着てやるよ。お前の身体でな」

 スッ——と、制服を脱ぎ捨てた茜音(貴明)はスク水を穿いていく。
 スレンダーな身体にスクール水着が良く似合う。スタイルも崩れているわけではなく、1年ぶりに着たであろうスク水を身に付けることが出来たのだった。

「こんな感じで着方合ってるか?女物のスク水なんて生まれて初めて着替えたけど、この身体にぴったりフィットする感じがたまんないんだよな。へぇ~。わりと入るもんだな。ちょっとキツイ・・・食い込みが」

 ひょうい部で培ってきた経験が蘇る。やはり女物の衣服に包まれる感じは男性では味わうことのできない楽しみの一つだと再認識される。胸や股間が食い込んでいるのもまた、茜音が成長した証拠であることを知る機会であり、食い込みを直してハイレグにならないようにちょくちょく手を入れていく。

「サイズがちっさくなってる?違うか、身体が大きくなってるのか。ハイレグ・・・処理が甘いところ見えるんじゃないか」

 鏡で、そして茜音-じぶん-の目でスク水に包まれた身体を見ながら感嘆の息を吐いた。

「素晴らしい。スク水が栄えるな!」

      jkがスク水に着替えたら・・・

 レースクイーンが取るようなポーズを取りながら、大胆に身体を突き出すと、胸の膨らみがスク水を押し上げて美しいボディラインを見せていた。貴明が興奮し、鼻息を荒くしていくにつれ、茜音の身体が反応を見せ始めた。

「あっ、乳首が浮き上がってボッチ作ってる・・・。うわあっ・・・」

 スク水の上から浮き上がった乳首を恐る恐る摘まんでみる。

「んぅっ!いたっ・・・」

 スク水の中で弄るには狭すぎるのか、乳首が敏感すぎて痛みを覚えるほどだ。窮屈なのは貴明も嫌で、火照り始める前にスク水を脱ぎ始めた。

「・・・まあ、スク水は幼稚だったかな」

 そう言いながら、クロッチの部分が少し濡れてしまっていた。貴明は隠すようにそのまま箪笥の奥に戻してしまった。そして、先ほどから気になっていた大人っぽいデザインの下着を取り出すと、それを今度は身に付けていった。

「一度ブラってやつを着けてみたかったんだよな。えっと——」

 ハーフカップブラを乳房に宛がい、背中に腕を回してフックにかける。後ろで留めようと鏡の前で背中を向いて悪戦苦闘する。

「・・・う~~ん?なんだこれ?む、難しいって、いてて・・・・・・」

 もっと簡単なやり方があるのに貴明は付け方を知らなかった。茜音の柔軟さがなければブラを付けることは難しそうだ。

「おっ、はまった」

 なんとかフックがかかりブラが付いた。

「おお~お、おおお~~いつもより大人っぽい・・・・・・」

 姿見の前に立つと情熱の赤い下着を身につけた茜音が鏡の向こうに立っていた。これが茜音の勝負下着だろう。

「谷間が出来てる・・・。すげえ・・・」

 ムニュリと寄せあげられた胸の谷間とその谷間を強調するようにオープンになっている胸元に思わず視線が向いてしまいそうだった。そのまま視線を下げていくと、ブラとお揃いのデザインのパンツが茜音の大事な部分を覆い隠していた。
 スク水よりもきわどいV字ラインがイヤらしい。えっちな割れ目を隠す赤い布のシルエットにドキドキしてしまう。色気のない下着と違い、生地はシルクを使っており、スベスベしていて肌触りがいい。トランクスともボクサーパンツとも違う履き心地になんとも言えない柔らかさを感じてしまった。
 かなりお値段も高そうな下着である。

「それにしても、茜音はこういう背伸びしたデザインが似合うな・・・」

      ピンクのブラ

 これが初めて使ったわけではなさそうである。もしかしたら普段からも身に付けていたのだろうか。これを身に付けて誰に見せようとしているのかすごく気になるところだ。
 下着姿の茜音を見つめていると、自然と鼓動が高鳴った。

「ん・・・い、今の感覚は・・・この身体疼いてる・・・・・・」

 貴明が茜音で欲情したことなど一度もない。それなのに自分が茜音の下着姿に欲情していることにひどく動揺していた。おま〇こから切なく訴えてくる感覚に、一度唾を飲みこんだ。
 興奮が抑えきれなくなり、一人である状況にこのまま自慰行為だってやれるのだ。茜音の身体でオナニーすることが今まで憑依してきた女子生徒たちと何が違うというのだろうか。

「わっかんねえよ・・・そんなつもりないのに・・・・・・俺が、茜音に欲情するなんてあり得ねえって言うのによ!」

 まるで、茜音に欲情することを負けだと思っているように、自分の性欲を抑えつけようと必死に抗っているのに、その欲は止まらない。
 震える手が今まさに、下の口に触れようとした時——貴明が負けを認めるように叫んだ。

「ネットにあげるのは止めだ!止め!こんな姿を見せられたら独占したくなるだろうが」

 またもお預けしてしまう。しかし、貴明はある場所へ出掛けるために適当に服を借りて茜音の部屋を出ていった。


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 学校が終わり貴明として帰宅する茜音。幼馴染だけあり家は隣に並んでおり、付き合いもあるせいで間違えることもなかった。
 義也もいなくなり貴明の部屋に一人佇む。模様替えしたといえ、子供のときにお邪魔した記憶からそれほど変わっていなかった。
 自分の部屋のようにベッドに倒れる貴明(茜音)。枕に顔を埋めて一日の疲労感を感じていた。

「はぁ・・・何時まで続くのかしら・・・」

 貴明のせいとはいえ、一日で色んなことがあった。

 水野結愛に告白された貴明と——
 眞熊達樹に告白された茜音と——

 全く同じタイミングで告白されるなんてことがあるだろうか。
 お互い入れ替わってなかったら別の道を歩んでいたのではないだろうかというほど人生の転機だったと思えて仕方がない。特に——


『断る』

 達樹が話している途中で茜音(貴明)は答えを出していた。茜音(貴明)は告白を断っていたことに義也は声を殺して悲鳴を上げていた。

『あ、あはは・・・伝わらなかったのか?何を言っているのか理解できなかったんだけど』
『茜音の幸せは俺が決める。どんなにおまえが茜音のために最善を選ばせようが、俺が決める幸せが茜音の一番の幸せだ、バカヤロウ!!!』


 達樹の告白を足蹴りした茜音(貴明)だったが、

「私だったら・・・・・・なんて応えたかな・・・・・・」

 茜音と達樹。会話はなかったけど、同じ成績、同じ価値観、同じ立場を共有していた。決して顔も悪いわけじゃない。口は強いけど、それが頼もしいと女子の間でモテると噂も聞いたことがある。

「性的に無理なわけじゃないし、決して嫌いって相手じゃなかった。達樹くんが言ってたようにきっと裕福に過ごせる将来を約束してくれたんだろうな・・・・・・」

 なんとも美味しい話。玉の輿に乗れるチャンスが巡ってきた。こんな機会は一生に二度と巡り合えないかもしれない。
 だけど・・・・・・そんな話を貴明が棒に振ったのだ。
 茜音になりすまし、茜音のことなどお構いなしに、茜音の価値感を決めつけて、貴明を押し通した結果——。

「はぁぁ~もう、サイアク。どうして私っていつもアイツに振り回されるんだろう・・・・・・」

 泣き言を言いながら目を伏せる。でも、不思議なことに涙は流れなかった。

「アイツのせいよ。こうなったのも、ぜんぶ、ぜんぶ!ぜ~んぶ!!貴明のせい!私の人生ぜんぶ貴明に滅茶苦茶にされて、怒ってるのに、めちゃくちゃムカつくのに・・・・・・!!!アーーーーハッハッハッハ!!!」

 今度は突然一人笑い出していた。
 枕を押さえつけて目を隠して、唇を横に綻ばせて思いっきり笑っていた。

「だから、私だってシてやったわ!!!」

 そう——貴明と同じ様に・・・・・・



「えっ、ほんと?・・・うん。千村くんの返事を聞かせて」

 水野結愛の告白に対して、貴明(茜音)は言ってしまった。
 不安と期待に胸膨らませている結愛。瞳を潤ませて見つめる結愛の姿はまさに恋する乙女であり、男ならイチコロの表情だろう。

「ごめんなさい。水野さんとは付き合えないよ」
「・・・・・・なんで?」

 理解できずに固まっている。しかし、結愛の目の輝きが失っていくのが分かった。

「なんでって言われても・・・うまく伝えられないけど・・・・・・ダメなんだ。ごめんなさい」

 結愛の告白に対して丁寧にお辞儀をして断りをいれる。そんな姿を見たくなかった結愛は態度を一変して憤慨していた。

「はあ!?わ、わけ分かんない!全っ然あやふやで意味不明なこと理由にされても納得できるわけないじゃない!!そんな言葉聞きたくなんかなかった!見損なったわ!意気地なし!」

 結愛は告白を断られて聞く耳を持たなかった。彼女にとって告白を受け入れていたことはあっても、告白をして、あまつさえ断られたことなど一度もなかっただろう。
 付き合うのが当たり前だと思っていたからこそ、現実を受け入れられずに駄々をこねている。その怒りの矛先は好きだった貴明に反転して襲い掛かっていた。

「バカ!変態!ばぁか~!」

 どんなに叫ぼうが貴明(茜音)の意見が覆ることはない。これ以上付き合っても負け犬の遠吠えにしかならないと分かっている。それでも貴明(茜音)が結愛の元から放れなかったのは——

「(水野さんにとってそうかもしれない。ひょっとしたら彼女は他の男子にも答えを求めてたのかな?)」

 男子から愛をもらおうとしていた結愛より先に、茜音の方が答えを手に入れたから。
 皮肉な話である。

「そんなの決まってる・・・」

 少しだけ茜音が結愛にほくそ笑んだ。

「長く付き合ったら分かるわよ!」

      カッチーン

「うるさいうるさいうるさい!童貞のくせに!付き合ったことなんかないくせに!私にえらそうに指図するんじゃないわよ!!う、うわあああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!」

 悔しそうに泣き言を漏らす結愛。それでも、顔を真っ赤にして本気で悔しがる姿に、同じ女性として痛みを分かち合いたいと思った。
 別のかたちで話が出来ていたら、きっと結愛と仲良くなれたのにと、この時茜音は思っていた。


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 その頃、体育の授業に向かっていた茜音(貴明)は、女子更衣室で女子生徒たちの着替えを楽しんでいた。

「うほぉ~。圧巻の眺め~」

 茜音(貴明)の前で制服を脱いで、可愛い下着を覗かせながら運動着に着替えていく。視ているだけでシコりたくなる衝動を抑えながら貴明はその目にクラスメイトのスタイルを焼き付けていた。

「茜音。いつまで緊張しているんだ。授業が始まるぞ」
「謙信ちゃん!うりうり~」

      余裕

「あ、茜音ちゃん?どうしたの?」

 突然胸の中に頭を埋める茜音に何か起こったのかと、上杉謙信-うえすぎけんしん-と前田亜衣子-まえだあいこ-は驚いてしまった。しかし謙信の胸を借りた茜音は、彼女の心臓の音はやけに大きいことに気付いた。表情をよく見ると強張っているように見えた。普段の彼女は表情も変えないのだが、その細かな変化に気付いたのは茜音(貴明)だけだろう。

「なんか緊張してない?」
「えっ?そうなの?謙信ちゃん・・・」
「すまない亜衣子。でも、心配するな。私は必ず勝利を掴みとろう」
「えっ?どういうこと?」

 体育の授業で負けられない戦いみたいな話が出ていることに茜音(貴明)は目を丸くしていた。

「毘沙門天-びしゃもんてん-を極めた者、なんとなくこの先、とんでもない化け物が現れる。私は、その者たちと戦うため、今まで力を溜めていた」
「なに、その超能力?」
「私は応援しかできないけど・・・頑張ってね。謙信ちゃん」

 とんでもない化け物?宇宙人の話かと思い茶化してやろうかと思ったが、謙信の顔はやけに本気モードになっていた。誤魔化したら逆に攻撃されそうなくらい、『軍神の威光-ぐんしんのいこう-』が発動していた。
 しかし、そんな彼女に臆することなく女子更衣室には高笑いをあげる者がいた。
 武田信玄-たけだしんげん-とその家臣たちである。

「オーホッホッホ!まさかあなたと共闘する日が来るなんてね」

      共同

 信玄と供に家臣まで体操服に着替え終わっていた。その格好を見て、家臣の二人がクラスメイトの真田幸₋さなださち₋と笹林紗々羅-ささばやしささら-だと気付いたのだった。

「諷₋ふう₋、倫₋りん₋。今回香山-かやま-は呼べません。二人で私たちのサポートに回りなさい」
「お任せを」
「完璧なパスをお繋ぎいたします」
「お前たちクラスメイトだったのか!?そういう仲だったのかよおぉ!!?」

 クラスで三人仲良くしてた理由が納得いってしまう。ということは、香山という家臣の正体は香山照之‐かやまてるゆき‐だと察してしまった。
 とは言え、クラス最強の武田信玄と上杉謙信を迎えて挑む今回の敵は相当手強いことが想像できる。上杉謙信が告げる『とんでもない化け物』とは一体誰のことなのか分からないが、それは授業が始まればすぐ分かるだろう。

「・・・・・・・・・ところで、今日の体育ってなにするの?」

 茜音(貴明)にとって興味なかった内容だが、思わずクラスメイトの様子を察して訪ねてしまった。身体能力の高い信玄や謙信を迎えて挑む授業内容に勝てないスポーツがあるだろうか?
 信玄は茜音(貴明)の質問に重い口を開いた。

「バスケットよ」
「・・・・・・・・・あ」

 それで茜音(貴明)も察してしまう。唯一スポーツの中で危惧するものがあるとすれば、バスケットしかない。先ほどの話――バスケットだとが変わる。うちの高校で力を入れている部活動はなかった。しかし、今年貴明たちと同じ様に新たに入学してきた5人のクラスメイトは弱小校だった女子バスケット部の存在を一躍変えてしまった。
 今も彼女たちの目を光らせるスカウトやスポンサーが連日やってくる。人気も他の部と群を抜いて高い彼女たちの存在が目の前に立ち塞がっていた。

「まさか、俺たちが戦うとんでもない化け物って・・・・・・」

 既に授業前だというのに体育館のコートの中で準備運動を済ませている。
 スポーツウェアに着替え、コートに立って相手を迎え入れる準備を済ませた女子バスケ部期待の新人の5人全員-フルメンバー-が待っていた。

「お手合わせよろしくお願いします」

 SG,チームをまとめる現キャプテン櫻井日向子‐さくらいひなこ‐が謙信に手合わせを願うと、謙信は硬く彼女の手を組んだ。
 日向子の後ろにはPF,
斎藤玲唯佳‐さいとうれいか‐、SF,小鳥遊楓子-たかなしふうこ-、C,東雲椿-しののめつばき-、PG,百鬼桃-なきりもも-が控えており試合開始の合図を待っていた。
 正真正銘のガチメンバー。バスケの超高校級の才能を持つメンバーと試合が出来るところで勝てないのは目に見えている。
 しかし、謙信も信玄も負けることは許さない性格で手を組んでガチで勝負を挑むという話だ。謙信の気合の入れ方が今までと違うのがよく分かった。
 こちらの勝算があまりにも低いのだ。一人でも欠けたら彼女たちに勝つ可能性は間違いなく零になる。亜衣子が応援に回るのも納得がいく。最強の相手に応えるためにはこちらも5人最強を選ぶしかないのだ。
 上杉謙信、武田信玄、真田幸、笹林紗々羅・・・・・・・・・。茜音(貴明)にはもう一つ引っかかることがあった。

「ん?亜衣子が観客だとすれば・・・5人目って誰だ?」

 今更・・・と言わんばかりに、謙信が茜音(貴明)を凝視していた。その視線に映る茜音の姿に、貴明は嫌な予感がしていた。

「あなたしかいないでしょう?」
「はっ?」
「まっ、仕方ありませんわね。この戦いは言い換えれば天下分け目の戦い。相手が最強である以上、こちらも最強を用意しなければいけません。校舎内で私と肩を並べるのはここにいる二人だと宣言しておきましょう」
「校内じゃなくて、クラス内だよな・・・」

 謙信だけじゃなく、信玄まで認める実力の持ち主が高橋茜音。
 ここにきてようやく茜音(貴明)は自分もまきこまれていることに気付いたのだった。

「い、いやいや、無理だって!茜音の腕じゃバスケ部どころか、お二人にも敵わないって!」
「引き受けてくれて背中から刺す様な真似はしないでくれ」
「なんてこったい・・・・・・」

 気付けば亜衣子率いる応援隊が集まっていた。バスケ部との本気の試合を見ることに多くのクラスメイトは自分たちの選択科目をそっちのけにして試合を観戦しに座り込んでいた。

 PF,上杉謙信、SG,高橋茜音、PG,真田幸、F,笹林紗々羅、C,武田信玄

 信玄と椿がジャンプボールし、試合は開始される。
 椿がボールを弾き、日向子がキャッチする。謙信と、信玄が二人で日向子を囲む。

「(なんでCがゴール下に戻らねえんだよ!)」

 茜音(貴明)が心の中で叫ぶ。しかし、女子の中でも身長がある二人に囲まれると日向子ですら抜くことも出来ない。『軍神の威光』及び謙信の威圧感は並大抵の女子生徒の戦意を喪失させるものだった。

 ダム、ダム、ダム、ダム・・・・・・

 ドリブルしながらタイミングを計る日向子。パスを回すように玲唯佳が声を出している。
 その中で日向子は呼吸を整えた。

「謙信さん、信玄さん。はじめに言わせてもらいます。私たちは第3クォーターまでに20点差をつけます」

 それは唐突な宣言だった。女子バスケ部は20点という大差をつけての勝利宣言に面喰ってしまう。

「なに?いきなり余裕をかましてるのかしら?」
「いいえ。これは余裕ではありません。あなた方二人と戦えることに対する敬意と一切の余談を許さない覚悟の意志です——」

 ダム、ダム、ダム————ポスッ。

「————え?」

 ボールが日向子の手に収まる。信玄も謙信も動きが止まった。日向子が何をしようとしているのかが分からなかったのだ。その一瞬の隙で日向子はシュートフォームを見せる。

「―—ここからは全力でやらせていただきます」

 日向子の手からボールが天高く放たれる。

「嘘!?ハーフコートからシュート₋う₋った!?」

 目の前からボールが放たれるまで、信玄も謙信も動くことが出来なかった。それほど日向子の動きは滑らかな一つの動作として繋がっていた。
 二人が振り向いた先、ボールは空中で綺麗な放物線を描いて落ちていき——、静寂に包まれた体育館の中で、パスッとボールとゴールの繊維が擦れるだけの音が響いて床にまっすぐ落ちてきた。
 ハーフコートからのロングシュート。それを鮮やかに日向子は決めて見せたのだ。

「なに、いまの流れるようなシュート。喋りながら届くの?」

      本気で殺しに行くスタイル

 日向子に対して黄色い声が上がる。ファンクラブの女子生徒たちが甲高い声を張り上げて女子バスケ部を応援し始めた。試合が始まって僅か10秒。しかし勝負を決定づける3ポイントシュートを日向子は決めて見せたのだ。
 士気があがる女子バスケ部。日向子の活躍を潰さないようチームの動きも良くなり、謙信たちに襲い掛かる。

「謙信、信玄。それぞれの能力は高いけど、バスケは5人でやるもの。チームワークが必要不可欠だよ」

 玲唯佳が言う通り、一日だけのドリームチームでは、日々積み重ねているバスケ部の信頼には敵わない。アイコンタクトもない謙信と幸のパスをカットしてそのままゴールを決めていく。

「僕たちを倒すだけの付け焼刃で覆るほどバスケは簡単なものじゃないよ?」

 椿が言う通り、やっと謙信にシュートまで運んでも、椿のブロックでリバウンドまで拾われてしまう。速攻とばかりに反撃の狼煙をあげる椿のパスは俊足の楓に届く。多彩なテクニックと変幻自在なストリートバスケを彷彿とさせる挑発、さらに楓の高速ドリブルからくる切り返しに紗々羅が足をとられて転ぶ、アンクルブレイク。さらに切り込んだ先で信玄に真っ向勝負してファウルをもらいバスカンと合わせて3点プレイをもぎ取る。

「なんだと・・・くっ!」
「過去の栄光に縋る歴史は終わったのよ。時代に評価された若者の力こそ正義だ!」

 咆哮する楓子に対して震えが止まらない幸と紗々羅。点差がどんどん開いていき、負けている時のプレッシャーが重くのしかかり、ストレスが疲労となって汗に現れる。第2クォーターが終わった時には既に大量に汗を噴き出しており、疲労の色が隠せなくなっていた。
 しかし、負けたくないという気持ちだけでコートに立ち続ける。第3クオーターで点差は18点。日向子の宣言に対してあと2点と追い詰められた状況まで来ていた。

「はぁ・・・はぁ・・・まだだ!まだぁ!!」

 謙信の足掻きに対して日向子は冷ややかな顔を見せる。それは相手に対して「よくやった」と、称賛に近いものだった。

「よく頑張りました。敵ながら賞賛を送ります。・・・でも、これは勝負であり、勝つか負けるかしかありません。私たちは負けられませんし、これからも向かってくるのでしたら手加減は出来ません」
「う・・・うおおおおぉぉぉおおおぉぉ!!!」

 日向子に抗うようにドリブルする謙信。その気合、その気迫に対して最後まで隙を見せずに日向子は謙信に喰らいつく。

「私たちは負けられない。まだ試合は終わってなんか——」
「いえ、もう・・・終わったんです」

 ドリブルしていたはずの謙信の手から、突如ボールの感触が消えた。ボールは謙信の手から放れ、百鬼桃の手に渡っていた。謙信は知らずうちに日向子に桃のいる方向へ追い込まれ、桃が隙をついてボールを奪ったのだ。
 ボールを取られたことに気付いた謙信が崩れ落ちる。百鬼桃は謙信を見ることなく、ドリブルで切り込んでいった。
 その勢いはまさに鬼人。緩急をつけてディフェンスの茜音とズレを作りそのまま抜き去り、スピンムーブで幸を騙し取り、紗々羅をギャロップステップで跳び越える。

「なんだそりゃあああぁぁ!!?」

 気付けば桃一人で4人を抜き去り、その勢いのまま最後信玄と供に跳躍する。桃はレイアップシュートを放とうとする。

「そんな低い身長からのレイアップシュート?はたき落としてやる!」
「待って!そのジャンプはゴールに対してあまりに遠い!?」

 意気込んだ信玄もジャンプと供に桃のシュートコースを塞ぐ。手でゴールの軌道を覆い隠したものの、桃の視線はゴールの遥か上を眺めていた。

「——まさか!」
「やっと気づいたか。低身長でもゴールを決められる桃の得意技、ティアドロップシュート」
「!?」

 ひょいっ。
 ブロックするより早く放たれた桃のボールは、軌道を鋭角にして高々と舞い上がっていた。はたき落とすことが出来ず空を切る信玄の手。桃のボールはゆっくり落ちていき、ゴールリングに吸い込まれるようにして落ちていった。
 館内を締める大歓声が木霊した。一番の盛り上がりを見せ、日向子の宣言していた目標の20点差に到達した。

「偉人の名を語る者たちよ。荒城の月を想い、去れ」

 第3クオーターが終了し、桃もまた勝負ありと言わんばかりに自軍コートへと戻っていった。宣言通りに勝負運びをされたバスケ部に頭が上がらない。すべてが日向子の手の中で行われていたかのような感覚に頭の中が真っ白になっていた。

「・・・本当に強いな」

 完膚なきまでの敗北。笑いですら出なかった。

「足りないスペックは味方がフォローし、技術でカバーしている」
「こっちは喰らいつくだけで精いっぱい」
「信玄様にパスが出せない・・・くっ」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 圧倒的大差で負けるのかという、プライドを崩壊させるほどに徹底的に瓦解される様に信玄たちも謙信も声をかけられない。敗北色が濃厚。第4クォーターを待たずして負けを認める方が面目が保たれるとすら思える。
 残り10分。観客も、選手も、誰もが試合の結果は決まったと、諦める中――。
 誰も立ち上がれないベンチで一人、それでも諦めず、最後まで足掻くことを決めた選手がいた。
 高橋茜音(貴明)だった。

「しゃーねーな。本当はしゃしゃり出てくるのはフェアじゃないと思ったんだけどよ・・・」
「茜音?」
「お前たちがガチで負けるなんて予想してなかったし、このまま負けるのは癪じゃねーか。もういい。本当によく頑張った。あとは俺に任せてくれ」

 茜音(貴明)はようやく身体が温まってきたといわんばかりに屈伸をし、身体をさらに柔らかくほぐしていく。まるで自分の身体の限界についてこさせるかのように、現段階でもっているものすべてを吐き出そうとしているみたいだ。

「高橋茜音。まだそんな体力が残っているのか?」
「うっし。それじゃあ始めるか」

 アキレス腱を伸ばしながらコートに戻る茜音(貴明)を筆頭に、全員が重い腰を上げる。それを見て、まだ勝負を諦めていないのかと困惑する表情を浮かべるバスケ部。

「・・・分かりました。最後まで諦めない雄姿は見事です。私たちもそれに応えましょう」
『おおぅ!!』

 気合を入れ直し、バスケ部もコートに戻ってきた。第4クォーターが始まり、ラスト10分間の試合が始まる。
 今まで謙信を筆頭に動いていたが、最後にポジションを入れ替え茜音を筆頭にする。それだけの変更で特にメンバーを変えたり、付く相手を入れ替えたわけではない。
 つまり、日向子に茜音をぶつけてきたという強気な作戦だ。無謀とも思える相手の作戦に日向子は警戒しながら茜音に付く。しかしながら高橋茜音と上杉謙信ならステータスは謙信の方が高い。相手のデータを把握している女子バスケ部に隙はなく、普通にやれば茜音が日向子を抜くことはあり得ないと踏んでいた。
 しかし、茜音はここで予想外の展開をする。シュートコースを塞いだ日向子は8割パスで来ると読んでいた守りをしていたが、視線を泳がせパス相手を探す茜音につられて日向子がボールから視線を外した一瞬をついて反対方向へドリブルを切り日向子を抜きに出たのだ。

「なっ!?」
「ミスディレクション!?うまい!」

 ドリブルでフリースローラインまで切り込んでいく茜音。そこまで来るのは久しぶりだった。椿と日向子を相手に飛んだ茜音がシュートを狙う。

「レイアップ!?させないよ!!」

 椿がジャンプをしてレイアップシュートの軌道を塞いだ。しかし、茜音は一度シュートモーションに入った手を下げ、逆の手に持ち替えた。

「ダブルクラッチ!?」

 日向子が叫ぶ。そして、椿の横から放たれた茜音のシュートはゴールの上でバウンドしたものの、リングの中に吸い込まれるように入っていった。

「ふぅ~あぶねえ、あぶねえ」

 茜音が隠していた高等テクニックに日向子は動揺する。今までパスを回していたのはこの時のための布石だったとでも思えるほどだ。

「大丈夫かい、日向子?」
「ありがとう。今度は抜かせない」

 日向子にとって計算外があろうが、それを即座に修正する。茜音がドリブルで切り込んでくるのなら、さらに距離を取ってパスとドリブルを警戒すればいい。

 さ す が に 茜 音 に シ ュ ー ト は な い だ ろ う 。

 そんな茜音に再びボールが回ってくる。日向子が腰を落とした瞬間、茜音は身体を起こしてそのまま3Pライン外からシュート体勢をとった。

「放-う-つのか!?」
「スリーポイント!?」

 シュ…

「はいったぁぁぁ!!」

 日向子-てき-も謙信-みかた-の声を聞くまでもなく放った茜音のシュートはゴールリング目指して飛んでいき、そのままリングをくぐったのだ。茜音一人で第4クォーター開始1分で5点も取り返していた。
 茜音に対する歓声があがる。この場で初めて女子生徒からの声援だった。

「どういうこと?茜音さんにここまでのスキルなかったはずなのに!」

 まるでデータが当てにならない。こんなこと女子バスケ部で初めてのことだ。

「ハワイで親父に教わったんだ」
「どういう意味?」

 茜音(貴明)にとって本気でも、女子バスケ部にとっては挑発に取られてしまったのか、日向子だけではなく、楓子が茜音を止めにかかる。

「マジでいく。こっちもバスケで馬鹿にされたら溜まったもんじゃないわ」

 楓子と日向子がポジションを変わりタイマン勝負に持って行く。圧倒的な手数の前に錯乱させる作戦の楓子も、茜音の眼光はその一瞬を見抜いてボールを弾いた。

「あっ・・・えっ・・・!」

 楓子自身ですらボールをカットされた記憶は久しくない。ましてや女子になど一度もなかった。冗談で一度男子混合で試合した時に、千村貴明にボールを取られた時以来になる。
 その時の記憶が一瞬重なるも、楓子は記憶を振り払い試合に集中した。

「ふざけるな!たった一人に何度も決めさせてたまるかあぁぁ!!」

 楓子が高速で茜音の前に立ち塞がる。その時茜音はシュート体勢に入っていた。

「!!」

 楓子がやってくることは予想済みとばかりに、身体を後ろに倒しながら放つことで軌道を確保していた。

「フェイダウェイ!!?」

 茜音のシュートが決まり、さらに点差は縮まる。それだけじゃない。

「身長が足りないことを知って・・・私じゃ止められない・・・」

 楓子に傷をつける決定的なシュート。楓子が唇を噛みしめていた。日向子、椿、楓子の三人が茜音にやられることで、士気が下がるだけじゃない。茜音の活躍で休めた謙信、信玄たちの疲労を軽減し、同時に士気をあげて見せたのだ。
 そのままの勢いでもう一本スリーポイントを決める。女子バスケ部でも茜音の勢いが止まらなかった。

「10点差あああぁぁぁあぁあああ!!!」

 茜音一人で差を半分まで追い詰めた。観客の声援、相手に対するプレッシャーも十分与えている。追いかけるには最高の舞台だ。

「みんな、ここは絶対止めるぞ!」
「ここが責め時!頂上決戦ゾ!」

 謙信がラスト5分『軍神の威光』を発動する。さらに信玄も『風林火山陰雷-ふうりんかざんいんらい-』を発動する

「分かってる。動くこと雷霆(らいてい)の如し!楓、倫!」

 信玄の声に家臣もフル稼働。全能力を一定時間上昇する。

「疾きこと風の如く!」
「キレのあるドライブ!?」

 幸が疾風の如く駆け出しドリブルをする、今まで抜けなかった玲唯佳を遂に抜いた。そして、その後に待つ桃に向かって突っ込んでいく。しかし、それも紗々羅が対応する。

「徐(しず)かなること林の如く」
「スイッチ!!」

 桃に身体を張って立ち塞がる紗々羅。一歩間違えればブロッキングをとられてしまう行為だが、ファールと紙一重のプレイを辞さない覚悟で桃を食い止める。椿とスイッチして負けじに幸に喰らいつこうとする桃に、幸は背後から駆け出してくる味方の足音を聞いていた。

「背後を見ずにパス!?」

 シュートではなくパスを選んだ幸。その先に誰がいるのか確認した桃の瞳には、ボールを手にしたノーマークの信玄がシュートを構えていた。

「侵掠(しんりゃく)すること火の如し!レイアップシューート!!」

 ぶわっと地面を蹴った信玄がゴールリングに置いてくる——

 げし…

 力が強かった。

「あーーしまったーーーーっ!」

 信玄が叫び、リバウンドを取るために桃が構える。しかし、そのボールは落ちる前に飛んでいた謙信の手によって掴み、

「はいれええぇぇ!!!」

 気合でリングを揺らしてそのままダンクシュートへと繋がった。

「きゃああ――っ!8点差あああぁぁ!!!」

 観客が騒ぎ立てる。謙信たちの猛追に感化されているようだ。

「お前だけじゃ役不足だ」
「謙信!!?こいつぅぅ!!!」

 悪口、嫌味を言いながらも去っていく二人に対して女子バスケ部が追い込まれていく。点差では勝っているはずなのにまるで負けているかのような気分は決して許されるものじゃない。再び2桁以上の差を貰わなければ納得いくものではない。
 日向子はパスを繋ぎながら綻びを探す。所詮付け焼刃のメンバー選びは時間をかければ焦って自爆する。30秒ギリギリまで使うことで相手を焦らせる手を使い、コートめいいっぱい使ってパス回しを始めた。
 日向子、椿、桃の三人でパスを回し、謙信が一人追いかける。他の四人はフリースローラインに固まり内側からの侵入を警戒しているようだ。日向子の計画通り、やがて謙信の体力が尽きればそこからシュートチャンスがやってくるはずだった。
 しかし、ふと日向子はあることを思い出す。謙信たちは適当に守っているはずだと思っていたフォーメーションの中で該当するものが一つだけあったのだ。

「これは・・・1-3-1のゾーンディフェンス!」

 謙信への補助を特化させた日本バスケットの中では珍しいフォーメーションだ。しかし、『軍神の威光』を発揮している謙信の威圧感はまさに獣。シュートするという意志を見せれば即座に襲い掛かるという警告がビリビリ伝わってくる。
 だから誰も打てない。謙信一人でシューター三人が抑え込まれていた。パス回しをしていると思っていたのではなく、パス回しをさせられているのだ。玲唯佳も楓子も3Pシューターじゃない。切り込むためにパスを待っているが、そうなれば4人で守備を固めていく。
 この第4クォーターで謙信たちは難攻不落の城を築きあげていた。

「なんなのよ・・・今までと戦っている相手が違うよう・・・・・・」

 第4クォーターから何かが変わったと感じざるを得ない。日向子の想定を超えることが続いている。
 誰だ・・・
 誰が変えている・・・
 このコートの支配者は・・・・・・高橋茜音!?

「あなたは・・・・・・何者だというの!?」

 日向子がよろめいた隙を見逃さず、謙信がボールをカットする。
 その瞬間、茜音は駆け出していた。
 誰よりも早く、俊敏に、機敏に、相手のゴール目指して——

「(不思議だ、茜音の身体は本当に軽い。それでいて、しなやかで柔らかく、まるで——浮いているみたいだ)」

 茜音の身体と貴明のバスケセンス。男性の脚力と、跳躍力を手に入れた茜音の身体は疲れを知らず、駆けているのにまるで浮き上がっていくよう——。

「フリースローラインから!!?」
「跳んだぁ!?」

 ——それはまるで、目に見えない階段を昇っているような光景だった。

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 日向子も茜音を追いかけて同時に飛んでいた。しかし、その跳躍力は茜音を残して先に落ちていったのだった。

「ウソでしょ・・・後に飛んだ私の方が先に落ちてるなんて・・・・・・」

 必死に伸ばす日向子の手も茜音には届かず落ちていく。茜音の身体は浮いたままゴールリングに勢いそのままに向かっていく。そしてボールを置いていく。

「これって・・・まさか・・・・・・エアウォーク!!?」

 豪快なダンクシュートをかまして地面におりてくる茜音。しばらくの間ゴールリングが激しく揺れていた。

「すごいすごい!茜音ってダンク出来たのか!」
「しかもフリースローラインから飛んで届くなんて凄すぎる・・・!」
「聞こえる?あなたへの歓声が!茜音コールが!!」

 興奮冷めやらないチームが一瞬でも冷静になろうと観客の声を届かせる。茜音の耳に聞こえてくる音に、ようやく仲間以外の声が聞こえてきた。

『アカネ!茜音!あかね!あっ!かっ!ね!!』

 茜音と一体感になる観客たち。その声が届いた時、心臓の音が張り裂けそうになっていた。

「ゴホッ、ゴホッ」と咽返る茜音に慌てる謙信たち。大量のドーパミンが噴き出していたらしく、その疲労は茜音の身体の限界を超えていたものだった。
 次の瞬間、試合終了の鐘が鳴り響く。正常に戻った時に見えたスコアを確認し、あと6点届かなかったことに気付く。

「負け・・・そうか・・・・・・敗けたのか、俺たち・・・」

 敗北に気付いた茜音(貴明)が汗を噴き出しながら床に寝そべった。10分間全力で試合してしまっただけでしばらく動けそうもなかった。

「追いつけなかったのかぁぁ!」

 悔しいが負けは負け。茜音(貴明)なんかより謙信や信玄の方が悔しいに決まっている。しかし、謙信と信玄、二人が茜音の肩をそれぞれ担いで動けない茜音を起こして立たせた。

「整列よ。最後まで胸を張りましょう」

 謙信は最後まで顔に出さない。凛々しく戦い全てを出し尽した表情をしていた。そして、謙信の変わりに信玄が言う。

「勘違いするな。私たちはやり切った。見事な結果に私は満足している」

 それは第3クオーターとは別人の表情をしていた。家臣たちも十分に結果に納得した表情をしていた。謙信も決して表情を変えてはいないが、心もと綻んでいるように見えた。亜衣子が精一杯の拍手を送っていた。

「おめでとう。女子バスケ部の勝利だ。強いな、きみ達は」

 女子バスケ部にエールを送った。しかし、女子バスケ部は無言で首を横に振った。

「いえ、私たちの完敗です」

      敗北けたのか・・・

「あんなプレイ見せられて、試合で勝っても嬉しくありませんから」
「私たちとの試合中に魅せプレイするだなんて。まだまだ凄い奴はいっぱいいるもんね」
「か、感動し・・・・・・。ほんと、すごくて・・・・・・ぐすっ」
「ほんと信じられない。是非僕達と一緒にバスケ部に入ってくれよ」

 各々、相手に対して称賛のエールを送っていた。試合が終われば友達。クラスメイトの柔らかな笑顔が待っており、桃が涙を零して泣いている姿をこの時全員はじめて見たのだった。
 特に茜音に対して興味が尽きない女子バスケ部は5人で囲んで茜音を部活へ勧誘を始めたのだ。

「いやいや、今回だけ!もう二度と出来ないって!」
「帰宅部にしておくのは勿体ない!是非一緒に全国目指しましょう!」
「運動したらもっと劇的に変わりますって!今からでも遅くないから部活入ってください!監督でもいいですからぁ~!!」
「勘弁してくれ!俺はもう運動はコリゴリでござる~!!」

 この試合を通じて、茜音に対して女子バスケ部の人気が上がったのは言うまでもない・・・。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 そんな試合を女子たちと供に見ていた貴明(茜音)と義也。体育館の扉の裏にくっついて試合で暴れる茜音(貴明)の姿を酷評していた。

「あいつ!!私の身体でなにしてくれるのよ!!きゃあぁぁ!!私そんなこと出来るわけないでしょう!これからどうするのよ、ふえええぇぇん!!ヘンな噂が出たらどうするつもりよ!!!」
「高橋さんってどんなスペックの高さだよ」

      カナリヤ。泣く

 泣きたい声をあげながら暴れる貴明(茜音)を抑えながらつい本音が出てしまう。しかし、今は静かにした方がいいかもしれないと二人はアイコンタクトで語っていた。二人の間にはもう一人、この試合を静かに見守っていたメイドさんがやってきていたのだ。

「うぅ・・・椿ちゃん・・・カナリアがユニフォームを洗い忘れたばっかりに本調子で試合に臨めなくて申し訳ありません。このような面白い試合になるなど夢にも思っていなくて・・・」
「誰だよ、このメイド・・・」

 一人おいおいと声を荒げて涙を流すメイドと供に、体育の終わる時間を待ち続けていた。



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「うわあ。貴明ったらなに考えてるんだよ!」

 教室から消えた茜音(貴明)に対して取り残された貴明(茜音)と義也。
 特に部活動の『飲み薬』を使った挙句、身体を許可なく入れ替えた貴明に対して弁明の余地はなかった。間違いなく茜音は怒っているだろうが、身体を持ち逃げした状態で解決手段がない義也はただただ土下座で謝り倒すしか許しを請う方法がなかった。

「ご、ごめんなさい高橋さん!貴明だって悪気があるわけじゃないんだよ。きっとあいつなりに僕との部活を楽しみにしていたせいで、部活を続けたかった想いが爆発しちゃったんだよ、きっと!感情のまま動いちゃったけど、高橋さんにも分かってもらいたくて、仕方なく・・・」

 言えば言うほどドツボにはまる。苦しい言い訳に言葉がどもる義也に対して、貴明(茜音)の下した判決は思いのほか軽いものだった。

「別にいいわよ。そんなこと言ったってなにも変わらないもの」
「そんなことって・・・」

 身体を入れ替えられたというのに、茜音は思っている以上にショックを受けてはいなかった。むしろ、堂々と受け入れている貴明の姿は、他の誰よりも貫禄があった。と、言っても義也たちが見ていた女子たちはだいたい憑依していたせいで意識を眠らされていた。幽体になって入れ替わった経緯まで覚えているせいか、そして、入れ替わった相手が貴明であることが間違いないせいか―—。

「でも、貴明のことだから茜音さんの身体を使って貶めるようなことするんじゃないかな?」
「しないわよ。ああ見えて臆病だもの」

 はっきりと貴明に対して断言する茜音。幼馴染だから貴明のことをよく分かっていると言わんばかりである。

「私に直接言えないのに、他の子に手を出せるわけないじゃない!」
「出してるんだよなぁ~」

      何故言い切れる?

 貴明が今までしてきたことを知らない茜音だからなのか―—とはいうものの貴明だって元々悪い人間ではない。人一倍温情があり、まじめな熱血漢と言える性格だ。その分、悪に染まれば悪に染まってしまうような人間だ。悪ノリが過ぎてしまうのは貴明の悪い一面ではあるが、茜音に見せている貴明の姿は決して悪人には見えていない。そんな姿を見ていればひょっとして——

「茜音さんって・・・もしかして・・・・・・」

 前を歩く貴明(茜音)を見つめていると、突然貴明(茜音)が立ち止まったのだ。何事かと思い布施も止まると、横を向けば男子トイレがあった。

「ねえ、そんなことより布施くん・・・・・・」
「えっ?なに?」

 急にしおらしく義也に語りかける貴明(茜音)。

「あのね。本当にごめんね。私、男の子のことよく分かってないから聞くんだけど」
「うん」
「男の子って、どうやってお手洗いするの?」
「・・・・・・・・・へ?」

 貴明(茜音)はどうやらお手洗いに行きたかったみたいで、男子トイレに初めて連れていった。入ることもないと思っていた男子トイレ。女性には馴染みのない小便器が並ぶ。

「男子のトイレって狭いわね」
「そうなの?」

 手洗い場は同じだが、女性トイレは個室が6個あるのに対して、男子トイレは小便器が4、大便器が2個で構成されている。茜音がそう思うのは最もである。貴明(茜音)は義也に連れられて小便器の前に立った。

「じゃあ、チャック下げて」
「えっ、このくらいの距離でいいの?」
「そこから!!?」

 立ちションが出来ない女性にとって男子の距離感が分からないのは仕方なかった。義也が距離を見ながらなるべく想定通りの放物線を描いて、尿はねを回避する距離感を見定めて貴明(茜音)を立たせた。

「あと一歩前へ・・・・・・この辺でいいと思うよ」
「うん・・・」

 貴明(茜音)がズボンのチャックを下ろしていく。だんだんと貴明(茜音)が無言になっていく。

「で、そこから手を差し入れて、パンツから取り出して」

 説明したことを履行するように、下ろしたチャックの中に手を差し伸べて貴明の逸物を取り出すためにゆっくりと握る。
 ぶるっと、貴明(茜音)が突如震えた。

「うひゃあ~!ふにゃふにゃあ~。なにこれ、気持ち悪い~」
「貴明、可哀想に・・・」

 ここにはいない貴明に思わず憐みすら感じてしまう義也。入れ替わったことで男性の尊厳が削られているような気がするのは義也の気のせいだろうか。

「いやあぁぁ!なんか出た!ズボンから子袋とフランクフルトが顔出してきて、いやあぁああああ!!!」
「自分で出したんだよなぁ~」

 茜音が一人ではしゃいでいる。なんともレアな光景であり、付き合っている義也の方が恥ずかしくなってきていた。

「静かにしてよ。僕まで恥ずかしくなるじゃん」
「ご、ごめんなさい。つい・・・」

 男子トイレで騒ぐのは勘弁してくれよと、義也が咎めるとようやく貴明(茜音)が狙いを定めた。

「しっかり構えて。下半身に力を入れていけば出てくるはずだから」
「えっ、えっ、どこ狙えばいいのかわかんない~?」
「そんなこと考えたことないよ。いっそのこと目を瞑ってシたらいいんじゃないかな?出来れば下を向けて底に落とせば尿はねしなくて済むと思うよ」
「わかった」

 本当に幼児がする初めてのお手洗いみたいに、言われた通りに目を閉じて小便を始めた。
 ジョロロロロ・・・
 ピッピッ。

「はぁ・・・へぇ~~~」

 茜音が初めて男子として用を済ませた。結果、感慨深いため息を吐いた。

「飛び散らなくて、いいわね」

 男子の場合はホースを操作しているように尿が放物線を描いてやり易い。女子のように落ちて出てくるわけじゃないので確かに楽だろう。時に男子は普段と違う放物線を描いたり、二股放出、トリッキーな動きをする場合もあるが、義也がそこまで茜音に教える必要はなかった。

「左に曲がるのね♪」
「もういいよ」

 男子の小便でここまで盛り上がるなんて義也ですら想定していなかった。
 むしろ、茜音が男子の身体付きに食いつくのが意外過ぎた。茜音も年甲斐の女の子。異性の身体に興味あるのは男子だけとは限らないということを義也は改めて痛感した。

「茜音さんがボロを出すのってなんか新鮮なんだけど・・・」
「コレを擦っていけば白い液が出てくるなんて、男の子って不思議な身体してんのね」




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 授業が終わり、千村貴明₋ちむらたかあき₋は布施義也₋ふせよしや₋のもとを訪れていた。

「義也。どこの学校でDOする?」
「DOするって?」
「俺と一緒にトゥゲザーしようぜ!」
「英語と日本語が混じってお茶目な言い方してるけど、それ重語だよ。なんだよ、それ?なにがいいたいの?」
「わかんねえかな?あれだよ、あれ。もっと分かりやすく言ってやるよ」

 貴明が義也の耳元で囁いた。

「今日はひょいする?」
「どんな略語!?可愛く言っても分かんない」
「HIする?」
「短すぎてわけがわからないよ!?」
「あぁん!ひょうい部副部長がわかんないなんて意識が足りてないんじゃないか?」

 ひょうい部副部長も忘れていたひょうい部活動。それもそのはず、部活動したくても高額の『飲み薬』を購入できず、部費も底を尽きていたため自粛していたのである。義也にとって貴明から部活動をするという発言を聞くのは久しぶりのことだった。
 他の部員が幽霊部員になってしまっても、貴明と義也が立ち上げた”ひょうい部”は永遠の部活として名を残すのである。
 しかし、義也の表情はどこか暗い。貴明にとって『飲み薬』が手に入って部活動を始められそうではあるのだが、義也が危惧しているのは別の件だ。

「貴明・・・でも、僕たち・・・・・・」
「いい加減にしなさい貴明!」

 義也では貴明にガツンと言えないせいか、変わりに貴明に対抗できる人物が二人の元に駆け付けていた。

「げ、その声は高橋茜音!?」

 ひょうい部の部員でもない、千村貴明の幼馴染の高橋茜音‐たかはしあかね‐が険しい表情で貴明を睨みつけていた。まるでひょうい部の活動を遮るように立ち塞がっているのである。

「生徒会長にも認可されてない部活動でしょ。所詮同好会どまりでしょ」

 かつて生徒会長に直談判してひょうい部は正式な部活動として仲間入りしたはずである。そして何度も部員と供に部活をやっていたはずだ。今更ひょうい部が部活じゃないなどあり得ない話だ。

「そ、そんなはずはない!ひょうい部は向陽陣大高校に認知された正当な部活動の一つのはずだ」
「認められません」

 貴明の主張を一掃する一声が木霊した。教室には生徒会長の伊澤裕香―いざわゆうか―が訪れていた。

「なに、生徒会長!?何故ここに!?」
「茜音さんに頼まれました。千村さんの目を覚まさせるように」

 眼鏡をクイッとあげて生徒会の見解を伝えるために現れたのだ。
 貴明に現実を突きつけるためだ。

「千村さんのすることは勉強です。学園で許可されていない部活動で遊ぶよりも大事なことがあるはずです。将来のことを考えて勉強をした方が有意義な時間を過ごせますよ。今まで無駄に遊んだ時間はもう二度と戻ってこないのですから、もっと時間を大事にしてください」
「無駄・・・無駄だとぉぉぉ!!」

 貴明の手がプルプルと震えている。今にも襲い掛かりそうな貴明を茜音が察する。

「貴明、聞いて。みんなあなたのことを想って言ってることなのよ」
「・・・僕もそう思う」

 貴明の背後に立つ義也ですら表情を伏せながら告げる。

「義也、裏切ったな」

      熱血馬鹿

「他人の芝生が青く見えるなら、もっと自分の芝生を青々と生い茂らせた方がいいと思うんだ。伸びた芝生を駆って、揃えて、ちゃんと整えるだけでも時間は十分必要だよ。そうやって貴明の知識を豊富にしていこうよ」
「いやあぁ!聞きたくない!」
「聞いて貴明!みんなやってることなのよ。貴明一人を苦しめていってるわけじゃないの」
「俺はそんなに強くない!みんなが平気で跳び越えるハードルを俺は跳べないんだぁぁぁ!!」
「跳び越えてるわけじゃなくて跳ばされてるの。待ってはくれないのよ。大学行かないでいいの?」
「知らない、知らない。将来のことなんか俺には関係ないんだ!」
「・・・貴明」

 貴明は全員を残して一人走り去ってしまった。ひょうい部として遊んでいたいことと、それでも自分の将来を考えることは全く相反することだ。簡単に、「はい、そうですか」なんて答えで片付けられるようなものではない。ひょうい部副部長なのだ。義也にも貴明の辛さは痛いほどわかっていた。

「馬鹿貴明!もう知らない!」

 茜音にとってはただ子供のように駄々をこねる貴明の姿を見て呆れている様子だった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 ひょうい部で一騒動あった翌日、茜音は風邪を引いたのか、咳が止まらなくなっていた。

「ケホンッ、ケホンッ」

 クラスメイトに心配されながら「大丈夫」と、席に座って突っ伏している。どこか表情が青い茜音の姿を貴明と義也は眺めていた。

「具合悪そうだね」
「へっ。風邪ひいてるとか体調管理が出来てねえ証拠じゃねえか。色々文句言うならまずは自分を見つめ直してから言えって――イったぁ!!」

 貴明の頭に茜音の上履きがクリーンヒットする。具合が悪そうなだけで剛速球で上履きを投げる力があれば心配はいらないだろう。

「馬鹿は良いわね。ウイルスの存在にすら気付かないんだから。絶対貴明に移されたのよ私。それしか考えられないわ」
「なんだと!」
「なによ!」
「ああ、また始まったよ・・・」

 貴明と茜音の一悶着にため息を吐く義也だが、今回は珍しく貴明の方がすぐに折れたのだった。

「ふん。まあいいだろう。こう見えて俺は優しい人間だからよ。茜音のためにちゃんと『飲み薬』を用意してるんだよ」

「えっ」と驚く茜音。貴明のまさかのサプライズにときめいたのか、顔がほのかに赤く染まっていた。

「・・・珍しい気が利くじゃない。貴明の癖に」
「最近、とてもよく効く『飲み薬』が手に入ったもんでな」
「ン・・・『飲み薬』・・・・・・?」

 義也の頭になにか引っかかるものがある。
 ソレ、ホントウニ”カゼグスリ”ナノダロウカ?

「そうなんだ。賞味期限は大丈夫?何か入ってるんじゃない?」
「一言多いんだよ、おまえは。仕方ねえな。俺も飲んでやるからよ。一緒に風邪を撲滅しようじゃないか!」
「はいはい。気休めにはなるかな」
「おら、いいから飲めよ。乾杯!」
「貴明!それって――!!」

 二人は貴明が用意した『飲み薬』を同じ様に傾けてゴクリと喉を鳴らしていた。休み時間のせいで、二人は一気に『飲み薬』を飲み干していった。

「ぷはぁ~。ふぁいと一ぱつぅ~~~」
「にがぃ・・・ほんとに効くの・・・たかあ・・・・・・」

 バタリと、同じタイミングで二人は倒れてしまった。
「やっぱり」と、義也は危惧していたことが現実に起こったことに一人慌てふためいていた。貴明と茜音の身体を必死に揺さぶり起こそうとしても、あまり意味がないことを義也は知っていた。
 でも、そうせずにはいられなかった。

『飲み薬』を飲んで幽体離脱した二人は、義也の動きを上から見下ろして眺めていた。

『なによ、これ!なんで私宙に浮いてるの?』

 茜音にとって初めての幽体離脱。自分の身体が眠っている姿を眺めるもう一人の自分に発狂していた。その様子を貴明は一人ほくそ笑んでいた。

『気が付いたようだな』
『私になに渡したのよ!?』
『ワーハッハッハ!あの『飲み薬』はただの風邪薬なんかじゃない!幽体離脱を可能にする『飲み薬』だったのだ!』
『なんですって!!』

 貴明に知らされる幽体状態の身体は思うように移動することが出来ない。放っておくと風船のようにただ上昇していってしまう。誰にも気付かれないし、誰にも声が届かない状態で茜音は自分の身体に戻るために必死に宙を掻き分けていた。体力がある茜音といえど地上に行きたいのに下へ泳いでもその距離は縮まらない。まるで見えない波に逆らって泳いでいるようだった。

『だめ、うまく泳げない』
『スポーツ万能の茜音でさえ感覚がつかめないようだな!こうやるんだよ、こう!』

 そこで貴明が手本を見せてやる。茜音と違って何度も幽体離脱している貴明にとって、宙を泳ぐ感覚は慣れてしまっている。自分の身体に触れて、続いて茜音のもとへ近づいてドヤ顔するのが茜音にとって闘争心を燃やした。

『くっ!なんでこんな面倒なことに巻き込まれてるのよ・・・後で覚えてなさいよ』

 しかし、一回の幽体離脱で泳ぎが完璧にマスターできるはずもない。茜音は苦み潰した顔で貴明に恨み節を吐き捨てていく。しかし、ここで貴明は思わぬ反撃に出た。

『おっと。茜音にはただで自分の身体に戻ってもらうと困るんだよ。今時暴力女の設定は人気が出ないんだよ』
『いきなりなんの話!?誰が暴力女よ!!』

 幽体離脱した者同士の身体は触れることが出来ることを確認した貴明。茜音の幽体を掴んで自分の身体の前に連れていく。

『こっちはあなたの身体じゃない。私は向こうの・・・』
『だからさ、こういうことだよ!!』

 ――ドンッ。
 とどめに突き飛ばした茜音の幽体は貴明の身体にむかって発射される。止めることも出来ない茜音は貴明の身体に触れる。

『貴明!?なに・・・・・・いや、吸い込まれる!!』

 身体と幽体がぶつかった瞬間、茜音の幽体は貴明の身体の中に入っていった。茜音が消えたことで歪んだ笑みを浮かべた貴明は、悠々と茜音の身体に近づき身体の中に幽体を重ねていく。

『じゃあ俺は茜音の・・・お前の身体を頂くぜ!』

 茜音の身体に覆い被さった貴明の幽体は吸い込まれるように消えていった。


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 なんとか一成の家に戻ってきた春菜。
 身体も入れ替わったせいでこれから春菜は久遠一成として人生を歩まなければならなかった。
 社会から自ら閉ざし、引き籠って仕事もしていない。母親である麻理子もいない家は春菜にとってとても暗く、今までの生活と比べてもとっても辛いものだった。

「お母さん・・・お父さん・・・・・・私、どうしたらいいの・・・・・・?」

 明るい家庭、信頼する友達、華やかな大学生活を過ごしていた春菜。そんな生活とは無縁な一成の人生は春菜にとって真逆なものであった。

「誰とも会わないなんて信じられない・・・会話したいのに誰とも会話できない・・・辛い・・・・・・辛すぎるわ」

 一日・・・一日・・・・・・
 日が昇っては沈んでいく間。誰もやってこないし、誰とも会わない日が続く。
 自分が腐っていくことに気付く。布団を被って動かない身体はまるで肉塊になってしまったかのように重くなっていくのを感じる。
 それだけじゃない――次第に精神が一成に浸食されていく。お腹が減れば適当に冷蔵庫の中から物色して冷凍食品を食べて帰り、暇を持て余せばPCを開いてオナニー動画を始めてしまう。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・右手が、ますますコレを強く握って擦っちゃうのぉ!イヤなのに、ダメなのに――っ!」

 シコシコシコシコ・・・・・・

 久遠一成の身体が覚えた習慣に習い、Eカップ巨乳娘のハメ動画を見ながら興奮を覚えていく。

「ああぁ、ダメ、ダメぇ!み、右手だけじゃなくて、左手でも握りはじめて、んふううぅぅーーーっ!!チ〇ポ気持ちいい!!!」

 可愛い爆乳娘を見ながら脳髄を刺激して一層欲情させている状態で肉棒をシゴくと感度が倍増しているみたいで、春菜が止めたいという想いを振り払い、頭の中が悶々とエッチなことで染められていってしまう。

「き、気持ち、イイのっ!!どうにかなっちゃいそう。んぅくっ、んんんーーーっ!!」

 ますます肉棒が熱くそそり立ってピクピクと血管が脈打つ。これが男性の性器の快感なのだと春菜は思い知らされる。
 春菜自身で発している言葉でも興奮させていくのだ。

「いやぁ、ますますチ〇ポ熱くなって、ああっ、手が強く動いて・・・・・・、はああぁ~~っ、気持ちよくって、ワケわかんないよ!」

 誰かにやらされているような気分だけど、やめることも出来ない。
 チンポを扱くことが気持ちよくて、カウパー液を吐き出しながら、そろそろ金玉袋がきゅう~っと縮みだしていた。
 鬼気迫る顔をしながら射精する直前で両手を激しく扱きあげる。

「はあああ~~~っ、ダメぇ、ダメぇ!キモチイイ!イヤ!イイ!わかんないけど、あああぁ~~~っ!んんんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーっ!!!」

 ドピュッ!ドピュドピュドピュウウゥゥ~~~っ!!
 白い液体を発射させ、亀頭の尿道口からドクドクと凄い勢いで精液が溢れ出てくる。

「ああぁん~・・・いやぁん~・・・・・・はじめての経験なのに・・・・・・なんで、覚えているのかしら・・・・・・」

 春菜の衝撃的な射精感は一成の身体にとっては何千回とセンズリして白い液体を吐き出してきたものだ。春菜にとって気持ち悪い行為だと知っていながら、身についてしまった習慣は拭い取れるものではない。

「ああぁぁ~~~っ、気持ちイイぃぃっ。どうして、こんなに気持ちイイのぉ?まだまだ射精ちゃうぅぅ。止まんない、射精ちゃえば射精ちゃうほど気持ちよくてぇ!はああ~~ん、おかしくなっちゃいそぅっ!!」

 快感を覚え、ネットリとした粘っこい濃い精液を吐き出してオナニーが終わる。
 そして賢者タイムを終えた後に春菜に襲い掛かる絶望感。やりたくなくても結局やってしまった運命に抗うことは出来ないと知る。

「もう・・・もういやあああぁぁぁぁ!!!」

 一成という人間。死にたいのに生きてしまう。
 他力本願でも生きようとしていたくらい意地汚い人物だったようで、働かなくてもいい環境を甘んじて好きな時に寝て好きな時に起きていた。

「ぐぅ~っ、ぐごぉ~っ、ぐごごご~っ、がごぉ~っ」

 無様な寝顔を見せ、いびきをかいている時にその大きさから思わず起きてしまうことがあるくらいだ。さらに春菜の目には毎日布団の上からでもわかるくらい股間が盛り上がっている様子がうつっていた。夢を見ない春菜でも一成の身体は勝手に溜まっていく。そしてオナニーに使う相当な性量と体力を一日で回復していく。
 つまり、春菜が死にたいと思って居ても、一成の身体が生きようとしてしまう。毎日元気に久遠一成としての生活を過ごしていた。

「こんな・・・生活・・・・・・もう、イヤよ・・・・・・イヤ、なのに・・・・・・」

 次第に春菜としての精神も一成の意識に浸食されようとしていた。
 これ以上苦しむくらいなら、久遠一成としてこの部屋での生活を受け入れるしかないとしか思えてくる。

「もう、藍井春菜‐わたし‐の人生は終わったんだ。どんなに汚くても、臭くても、春菜‐わたし‐の心が消えれば気にならなくなるよね・・・・・・」

 どんなに嫌いな人物でも、その人物が自分であることを受け入れるために――
 藍井春菜の人生はこれで終わりになるのだった。

「次に目を覚ました時は、俺は久遠一成だ・・・・・・」

 春菜は静かに目を閉じた。

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 ――ガチャリ。
 春菜が目を閉じたすぐあと、誰かが久遠家の中に入ってきた音が聞こえた。今は何時で閉じ籠って何日経ったのかもわかっていない。
 しかし、微かに聞こえた来客の音に春菜は興味を示していた。

「・・・だ、誰だろう・・・・・・」

 久し振りに部屋を出る。一成の重い身体を引きずりながら廊下を恐る恐る覗いてみると、そこには久遠麻理子が玄関にもたれかかるように倒れていた。

「せ、先生!!」

 春菜にとって麻理子の顔を見た瞬間、居てもたってもいられなくて飛び出していた。
 そして、麻理子の元へ近づいて抱き起した。

「先生。しっかりして下さい。先生!」

 麻理子の虚ろな瞳は春菜ではなく、一成の顔を見ているようだった。愛していた息子の顔に手を添えた麻理子の目から大粒の涙が零れ堕ちていった。

「・・・・・・藍井さん、よね?」
「はい・・・・・・。先生」
「ごめんなさいね・・・・・・私の子供があなたにご迷惑をかけてしまって」

 麻理子は先生ではなく、母親の顔をしていたのだった。自分の子供が親を捨てて出ていったことを受け入れられていない状態と、先生の立場を利用され、藍井春菜という女子生徒にご迷惑をかけてしまったことにただただ意気消沈しているのが見て取れた。

「こんなことするような子じゃなかったの。昔はとってもいい子で、優しい子だったのに・・・」
「先生が悪いわけじゃないです」
「そういうわけにはいかないわ。一成は私の子供なの。そして子供はいつまでも親の子供なの。子供の罪は親のせいだって、躾が行き届かなかった私が悪いんだって、分かってるから」
「先生・・・」
「藍井さん。一成の罪を許してほしいだなんて言わないわ。私はあなたにご迷惑をおかけしてしまったことをいつまでも謝り続けるわ」

 麻理子は顔を伏せて、春菜に「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」と小さな声で繰り返し呟いていた。半世紀過ごした親が子供の罪を謝り続けている。そこに大学で指導している久遠麻理子先生の姿はなかった。そして、春菜にとって麻理子の背中があまりに小さいものだと知った。この背中で子供の罪を背負おうとしているのは無理だと、誰が見ても分かっていた。

「私も息子に捨てられた身。あの子は大学を辞めて水商売で働くそうだから私も解放されたのよ。でも、私ももう大学なんかにいられない。あの子のせいで私の人生も滅茶苦茶にされたわ」

 何時までも一成のために気を配り、気を張り、気を遣っていた麻理子が匙を投げる。
 嫌われても愛するのが親だという幻想を、麻理子は自ら破り捨てていく。

「でもね、だからこそ今は心の底から安堵しているの。ここに居るのは藍井さん、あなただから。私ではどうすることも出来なかった息子が、あなただったらこんなに安心することはないもの。・・・・・・もしよかったら、私の子供になってもらえないかしら?私ともう一度人生をやり直してほしいの」

 居場所を失った春菜と、息子を失った麻理子。
 その奇妙な関係は、別のかたちでくっつこうとしていた。

「わたし・・・・・・ここにいていいんですか・・・・・・?」

 一成の姿になっても関係ない。春菜の手をしっかり両手で包み込み、麻理子が力を込めてお願いしていた。

「あなたのことを私が守るわ。怖い想いをさせてしまって本当にごめんなさい」
「先生・・・・・・せんせぃ!!うわあああぁぁぁぁぁああぁぁん!!!」

 麻理子が春菜を抱きしめて、今までの自分と決別する。
 藍井春菜は第二の人生を受け入れて生きていく。麻理子が傍にいてくれることを約束してくれたから。


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 春菜の顔が股間におりていき、そのまま美味しそうに口の中でしゃぶりはじめたのだった。黒い長髪を揺らしながらじゅぼじゅぼと亀頭を啜る音を響かせる。

      むぎゅぅ~

「ちょ、ちょっと・・・やめて!なに考えてるの?」

 一成(春菜)が春菜(一成)に向かって叫ぶ。春菜(一成)はしゃぶるのをやめて一成(春菜)を上目遣いで見つめていた。
 元々の自分が切磋琢磨して男性の性器を愛撫している様子が映し出される。かつての春菜も男性と付き合ったらこんな顔をしていたのかと想う度に、身体の中にどす黒い感情が湧き上がっていた。

「いや、やめて・・・。私の身体でヘンなことしないで・・・・・・あああ・・・」
「ん?・・・ちゅぱちゅぱ・・・・・・ぷはぁ~。いやいや、ヘンなことじゃないって。これが本能でしょ?自分の身体で尽くされて気持ちよくなってる」
「いや・・・聞きたくない・・・・・・」
「ウソはダメだよ。どんなに踏み止まろうとしても、チ〇ポが熱く脈打って感情が抑えきれないのが分かっちゃうから」

 身体を入れ替えられ、男女の立場を入れ替え、味わったことのない快感が逸物から直接与えられてしまう。男性は外部に飛び出た性器から直接快感を与えられることができる。濡れるわけでもなく、竿に快感が蓄積していく様子に一成(春菜)は滾る快感をどう耐えて良いのか分からなかった。

「ねえ、出したくない?自分の元々の顔に精液をぶっかけてみたくない?」
「なにを言うのよ?」
「んふ。俺ときみは一度『融合』していたんだよ。切り離したといっても全部が綺麗に切り離したわけじゃないんだよ。きみの中には俺の思考が混ざっていてもおかしくないはずだよ。汚らしい不細工な男がこんな可愛い女の子にチ〇ポ舐められてるんだ。感じないはずがないじゃないか」

 一成は春菜を揺さぶりにかかる。春菜が耐えようと思っても、その身体は一成のもので、『融合』した時に一成の思考が混じり合っている。春菜の精神の中に拭いきれない一成のだらけきった思考が芽生えているのを春菜には感じることが出来た。

「・・・っ!じゃあ、この気持ちって――!」
「アハッ!やっぱり図星だったんだ!」
「しまっ——あ、あんっ!」
「いやいや言いながら気持ちよくなってたんだろ?それなら逆に感謝してもらいたいよ。こんな醜いおっさんのチ〇ポを綺麗に舐め舐めしてあげてるんだから」
「ふざけないでっ!!元はといえばあなたが・・・・・・あっ、うあああっ!!!」

 突然春菜(一成)が一成(春菜)の逸物の愛撫を強くした。

「ふざけてるのはあなたの方じゃない!こんなに硬くしたチ〇ポで私のおっぱいぐちょぐちょに濡らして。とんだ変態よ、オ・ジ・サ・ン!」

 春菜(一成)は口調を真似て罵倒を始めた。

「違うっ!これはあなたの身体が勝手に反応して――!」
「なに言ってるの?今はきみの身体でしょう。他の誰でもない、あなた自身が勃起させてるのよ。だって、私が藍井春菜だもの!!」

 指摘されるたび、罵倒されるたび、愛撫されるたび、一成の股間は熱さを滾らせていく。否定したくても根拠はなく、次第に春菜自身が逸物を勃起させていることを自覚して吐息を荒くしていった。先走り汁が迸り春菜の手を濡らしていく。他の誰でもない、一成(春菜)が感じている証拠だった。

「こんなものが、私の股間に生えているなんて・・・イヤなのに・・・」
「今後のためにもこんな立派なおっぱいがあるのに男性経験はないもんね!今後のためにも練習させてもらおうかしら。ねえ、自分のおっぱいの感触はどう?」

 改めてパイズリフェラの感度を確かめる春菜(一成)。一成(春菜)は答えられずただ耐え凌ぐだけだった。

「私の身体で・・・イヤなのにぃぃ・・・・・・あああ・・・」
「うふっ。今は自分のおっぱいを堪能しろよ。これでお別れなんだからよ。俺はこれからもこの極上おっぱい触り放題だけどな」

 唾液を落としてヌルヌルのおっぱいを亀頭に擦りつける。温かく柔らかく包み込む乳房に逸物が感じてしまい谷間で暴れていた。

「なにか出ちゃう・・・オチ〇ポからっ・・・」
「おっぱいの中でチ〇ポビクビク脈打ってる。ひょっとしてイくのか?」
「で、射精るぅ~!」

      でた☆

 一成(春菜)の視界がフラッシュバックし、亀頭の尿道口から湧き上がってきた白濁色の液を噴水のようにびゅ~~~っと噴き出したのだった。
 顔にまで届く精液は春菜に降り注ぐ。真っ赤になった亀頭が今も滾った状態で彼女の乳房に押しつぶされていた。

「んはぁぁぁ!初射精すごっ、・・・こひぃ~~~!」

 春菜(一成)はパイズリフェラだけでイってしまった元自分の身体の感度に驚いていた。しかし、今まで一人でせっせと扱いていた時とは違い、女体でパイズリフェラしてイったのだから、今まで以上に気持ちいいに違いないと確信していたのだった。

「自分のおっぱいこんなに精液塗れにしちゃって・・・・・・クンクン。はぁ~すごい臭いにおい。病みつきになりそう~」

 不敵に微笑む春菜(一成)。その笑みに対抗するように、吐き出したはずの一成の逸物は、今も硬さを保ち続けていた。身体の中にフツフツと浮かんでくるどす黒い感情が春菜に襲い掛かっていた。

「物足りない・・・・・・って、私はいま何を考えているの?」

 それは一成の思考なのか、それとも春菜自身の思考なのか、もうわからなくなっていた。
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(この作品は、GG『接着剤―融合熟女―』の後日談となっており、合わせてお読みいただけるとより楽しめるようになっております)



 藍井春菜-あおいはるな-と『融合』した俺、久遠一成₋くおんかずなり₋は彼女になりすまし、女子大生に成り替わることに成功した。
 母親の麻理子-まりこ-が先生であり彼女の成績を裏で操作することもでき、遊び呆けていても単位を貰うことが出来た。まあ、そんなことしなくても彼女の普段の成績が優秀なだけあり、単位を落とすこともなく大学生活を順風満帆に過ごすことが出来た。
 満たされるのは心だけじゃなく、身体でもだ・・・。


「春菜ちゃん・・・」

 春菜(俺)は親友の双山冬子-ふたつやまとうこ-と供にラブホを訪れる。大学生とは思えない幼い容姿を残した子だが、彼女が春菜のことを好いていることを察した春菜(俺)がラブホに誘うとホイホイと付いてきたのだった。そしてお互い裸になり、愛撫をしながら冬子をベッドに押し倒すと、俺の特大チ〇ポを登場させた。

「えっ!?な、なんで春菜ちゃんの身体に・・・・・・あるはずないモノが付いてるの!?」

 当然、最初見た時冬子の顔は引きつっていた。しかし、俺は優しく冬子に声をかけた。

「びっくりした?ふふ・・・私、女の子を好きになると、自分の性器を男の子みたいに膨らますことが出来るの」
「そ、そんなことできるの・・・?」
「うん。だから、これで女の子を犯すことが出来るの。冬子ちゃんもハジメテを男の人より私みたいな可愛い子に捧げた方が安心するでしょう?」
「そ、それは、まぁそうだけど・・・・・・あんっ」

 適当に話を繕っても春菜の信頼性は高いおかげで俺の言うことを簡単に信じてくれる。最初は驚いていた冬子も、まんぐり返しして女性器を開かせて逸物を突っ伏していった。

「いただきます、冬子ちゃん」

 ズブズブズブ・・・!!

      まんぐり返し

「んあああああ!!は、春菜ちゃんのが・・・挿入ってくるうぅぅ!」
「ハァ、ハァ・・・冬子ちゃん・・・私のチ〇ポ気持ちいい?」
「は、はひぃ!春菜ちゃんの・・・奥にズンズンきて、んひぃ!」

 チ〇ポを突っ込んだ瞬間雌の顔になって喘ぎ始める冬子。
 アヘアヘ言ってる姿がチ〇ポにビンビン来るものがあった。

「ん、んふ!冬子ちゃん。チ〇ポって言って」
「は、春菜ちゃんの・・・おち〇ち〇、ん゛ぎも゛ぢい゛い゛!!」
「こうやって無理やり犯してるみたいで、興奮するね!」
「んひぁああああ!!」

 それにしても、この冬子という女も感度が良すぎて突っ込まれる度にイってるみたいだ。軽くイク度にオマ〇コをギュウギュウと収縮してくるのがチ〇ポに堪えた。

「冬子の膣内、すごい締め付けてきて気持ちいいよ」
「あんっ、ああっ、私も春菜ちゃんのおち〇ち〇気持ちいいよ」
「うんっ、あはっ!この女ぁ気持ちよすぎる!」
「はぁ、はぁ、んんっ、ぁっくぅ・・・ふぁんっ・・・あんっ!んんっ、んあぁ、はあぁ」

 冬子の艶やかな吐息が、間近に感じられる。春菜(俺)も気が付けば息を荒げるくらい膣壁にチ〇ポを擦り付けていた。

「あっ、あっ・・・なんかすごっ、ひぅっ!・・・はぁんっ!だ、だんだん、何も考えられなくっ・・・なっちゃうよおぉ!
「うっ・・・ううっ!」

 春菜(俺)はとっくに何も考えられていない。予想以上の肉棒への圧迫感で、絶頂まで導かれていた。

「もう、射精そうだ」
「あっ!あっ!きちゃうっ・・・や・・・あ・・・あ・・・きちゃうううぅ―――!!!だめ、あ、だめぇえぇっ!刺激が強すぎてえぇっ!頭、真っ白にっ・・・っひあああああああぁぁぁんっ!!」
「くっ、やばッ!中に出しちまう!」

 冬子の絶頂と供に膣内へ引きずられるような感覚に、思わず春菜(俺)は腰を引いてしまう。
 その瞬間に大量の精液を発射させた。

      白に染める

 びくっ! びくん! ドビュビュドビュルルル!

「あつっ・・・・・・あ、ぁあ・・・あぁああ・・・・・・あ!・・・あああ・・・あっ!・・・ん・・・んあぁあ!」

 冬子の身体がビクビクと震えた。春菜(俺)は荒い息を吐きながら、冬子の身体を白く染め上げていた。

「はぁぁっ、はぁ・・・・・・なに、これ・・・精液?・・・・・・んんっ・・・春菜ちゃんの・・・・・・せーえき、ねとねとするぅ・・・」

 うっとり震える喘ぎ声を出しながら、俺の白濁液をすくい上げて弄んでいる。冬子も完全に春菜(俺)を受け入れていたのだ。

「春菜ちゃん。・・・だいすきぃ」
「私も好きよ・・・またやろうね、冬子ちゃん」

 軽くキスを交わしながら、冬子はベッドで寝入ってしまう。
 春菜の親友を犯し、春菜の生活を壊していること圧倒的な征服感を堪能する。この身体と美貌があればサラリーマンから援助交際でお金を稼ぐことも可能だろう。この身体でパパに甘えれば可愛い愛娘にいくらでもお金を貢がせることも可能だろう。
 大学生の身体を確かめるように胸の膨らみを冬子に押し付けてやった。サイコーの身体だぜ。

「この女の身体でもっと遊んでやるか・・・・・・」

 一人ほくそ笑む春菜(俺)の頭の中で微かに反発する声を聞く。
 まるで俺の行為を嘆く者がいるように。
 麻理子のように意識を沈めたわけではなく、意識を覚醒させたまま俺とくっついた春菜本人が間違いなく俺の行為を見ていることに気付いた。
 必死に自分の身体を取り返そうと抵抗している彼女の存在が、次第に俺にとって不要なものへと変わってきていたのだった。
 俺にとって必要なものは、春菜の身体と、彼女の環境だった。
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 これでいいのだろうか——
 俺と陽菜は付き合ってるわけでもない。"入れ替わり"を共有する関係なだけで、陽菜が俺を何の基準で選んだのかも正直わかっていない。
 性格も似たもの同士な気もしたけど、だから好きというには勘違い甚だしい。
 性癖も似たもの同士な気もしたけど、だから好きと結びつけるには差し出がましい。
 その答えは陽菜にしかわからないし、陽菜が俺とセックスを望んでいるのなら、それに便乗していいのかもしれない。おこぼれを頂戴する生き方だっていいじゃないか。

      どっちが受け?どっちが責め?

「で、この後でどうしたらいいんだ・・・?」

 ホテルの中に入って衣服を脱ぎ始める俺たちだけど、その後はどうしたらいいのだろうか?
 やっぱりここは男である陽菜(俺)が責めるべきかもしれない。しかし、俺は童貞だ。宏(陽菜)を喜ばす術を知っているわけではないし、テクニックだってうまいのかどうかわからない。
 幸いなことに"入れ替わって"いる相手だし、自分の身体を弄るわけだから、一人慰めている時のように手コキをやればいいのだろう・・・。でも、そうなったら陽菜(俺)は自分のち〇こをフェラチオしないといけないだろうか。

「(他の男性のを舐めるより全然いいけど、自分のアレってどんな味がするんだろう・・・)」

 女性がフェラチオしている時の心境がわかる。

「(・・・怖くないか・・・?)」
「自分のカラダの気持ちいいところは全部わかってるから。河原君はベッドで横になってていいよ」
「あっ、はい」

 宏(陽菜)にそう言われると、本当に自分が女の子になってしまうみたいに頼ってしまう。言われたままにベッドに横になって宏(陽菜)の好きなように身体を差し出していく。

「んああぁっ!」

 宏(陽菜)が乳房を口に咥えて乳首を舌で愛撫する。下から持ち上げるように乳肉を集めると、それなりに陽菜(俺)の乳房はボリュームがあり、宏(陽菜)がチューチュー音を出して吸い始めると、柔らかな乳肉が鋭い円錐を形作りながら激しい刺激を押し上げてくる。

「うあっ、あっ、あっ、あはっ、あぁぁ・・・」

 おっぱいを宏(陽菜)に弄られれば弄られるほど先っぽが膨れてきていた。それなのに不思議だ・・・お互い自分のカラダが相手なのに、陽菜(俺)は宏‐じぶん‐自身に犯されているのに、まったく抵抗感はなかった。
 宏(陽菜)の言う通り、的確に感じる場所を責めてくるせいか、すごく濡れ易くなっていて、カラダが火照ってたまらなかった。宏(陽菜)の愛撫一つ一つが愛おしく感じてしまい、全身が蕩けてしまいそうだった。

「ここ気持ちいいでしょ?」
「ふあ!あっ、ああ・・・キモチイイよ・・・」

 宏(陽菜)の指でおま〇こを弄られると、あっという間にクチュクチュとイヤらしい音を響かせていた。そのままクンニされ舌を差し入れられる。宏(陽菜)に舐められるとどんどんお汁が溢れてきた。
  宏(陽菜)のペースで濡らしているけれど、陽菜(俺)だって陽菜を感じさせてやりたい。そう思ったら陽菜(俺)は宏(陽菜)の逸物をつかんでいた。勃起した逸物は既に熱くなっていた。

「お・・・俺も・・・外西さんを感じさせたい・・・・・・ちゅむ・・・ちゅぱちゅぱ・・・」
「あ・・・!うう・・・ッ!」

 陽菜(俺)がフェラチオを始めると、宏(陽菜)の口から苦しそうなうめき声を荒げた。

「ちゅっ、ちゅくっ・・・レロレロ・・・ちゅぶぶぶぅ・・・ちゅぱ」
「~~~~ッ!!」

 亀頭を舌で絡みつきながら、カリ首を刺激するように顔を上下に動かして逸物を飲み込んだり吐き出したりしてやると、ビクンビクンと宏(陽菜)が激しく身体を身震いさせていた。あの、取っつき難かった陽菜がこんなに感じているんだから、フェラチオって相当気持ちいいんだな。

「んっく・・・ふ・・・んっぷ・・・んんぅ・・・!」

 うわっ、先端から先走り汁が出てきた。ちょっと、苦い・・・それに、なんとも言えない、変な味がする。これを毎回女の子は飲むのか・・・。
 興奮すればするほど溢れてくる先走り汁。そして勃起してくる逸物が準備を整えたことを告げていた。これが女の子に出たり入ったりするんだと思うと、興奮が最高潮に達していた。

「んああ・・・ッ!」

 そんなことを考えながらフェラチオをやっていたら、宏(陽菜)も負けじにクンニを続けていた。シックスナインでお互いの性器を舐め合う俺たち。似たもの同士が相手を気持ちよくさせようと同じことをやりあっているのって、滑稽だけど・・・陽菜がなんだかすごく可愛く見えた。

「お互い十分濡れたみたいだし、そろそろ挿入れてみていい?」
「あ、うん・・・」

 宏(陽菜)の言葉で体制を変え、ベッドに沈んで正常位で受け入れようとする。そういえば、いつの間にか自然に陽菜と話をしているけど、これって・・・本当にあの外西さんだよな?
 なんだかすごく頼もしく見えた・・・。

「ふふ、なんだかおかしいね。お互い好きでも何でもないのに。エッチってこんなに気持ちいいのね」
「・・・・・・うん。そうだね・・・」

 一瞬くぎを刺された気がした。
 俺たちはただクラスメイトで、彼女でも彼氏でもない。陽菜は俺のこと・・・好きでも何でもないだろう。俺だって・・・別に好きじゃないはずなのに・・・。なんだろう。この気持ちは・・・。

「ん˝ん˝・・・!いった!」

 オナニーの時も思ったけど、陽菜の膣内はとても狭かった。そこに宏の逸物が入ったら傷ついてしまうのがわかるようなものだ。痛みを如何に軽減するか、そのためにお互い濡らしてきたんだ。

 ズ・・・ズブズブッ・・・ズブブッ

 少しずつ愛液を潤滑油のようにして逸物を呑み込んでいく。カラダの奥から逸物を咥えこんでいるという感覚があって、入ってくるたびに気持ちよさを少しずつ覚えていった。

「ゆっくり動くね」
「あっ・・・んっ・・・んあっ・・・うんっ・・・」

  宏(陽菜)の腰が動き始め、陽菜(俺)の膣内を抉っていく。膣肉を削り、まっすぐ子宮口まで届いてくる逸物が出たり入ったりしてくる度に声にならない快感が全身を駆け巡っていた。カラダが熱を帯び、蕩けてしまいそう。宏(陽菜)のように陽菜(俺)も全身がビクンビクンと小刻みに震えて止まらなかった。

      蕩れー

「ん˝あ˝あ˝!挿入ってくる・・・!ぜんぶ・・・ッ!!あっ!外西さ——!!」

 宏(陽菜)のピストン運動で膣肉がほぐされ、子宮口に鬼頭が擦りつけられる。膣の奥でビリビリする刺激が気持ちよくて、また欲しくて疼きが絶えず激しく生み出されていた。

「ん˝・・・ん˝ん˝!!!」

 いつの間にか逸物は陽菜(俺)の中に全部咥えこむほどに侵入し、腰がぶつかり空気が破裂する音が響いていた。

「んはああ!!はぁ、ぜ・・・ぜんぶ・・・ッ!挿入ってる!!はぁ・・・!外西さんのッ!ん˝ん˝ぅ˝!!」

 宏(陽菜)も息を絶え絶えに吐き出しながら、必死に腰を動かし続けていた。宏(陽菜)も快感に我慢ができなくなり、より激しく腰を振り続けていた。

「あ・・・あ・・・もう、ダメぇ・・・外西さん・・・!」

 陽菜(俺)が涙を流しながら快感をその身に受ける。小さな絶頂が身体を襲い、濡れてくる度に逸物を締め付けていく。
 キモチイイという気持ち以外、俺たちにはなかった。

「う・・・あ・・・!!イッ・・・クぅッ!!」
「あ・・・!まっ・・・!なかに・・・でちゃ・・・ッ!!」

 宏(陽菜)のカラダが震え、嗚咽が聞こえた。急いで抜かなくちゃいけないと思っても、カラダはココロに反するように身動きできず、宏(陽菜)の射精感を受け入れるしかなかった。
 そして——、

 ドビュ、ドビュ、ジュブブブブ!!!ビュッ!ビュルルル~~~!!

「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝——————♡♡♡」

 ——大量の精液を受け入れた瞬間、カラダが抑えきれなくなって絶頂に達してしまった。
 声を喘ぎ、涙を浮かべてカラダが喜んでいく。快感で満たされる想いに浸っていた。
 ヌプリッ、と逸物を抜いた瞬間、溢れんばかりの混合液がベッドシーツを濡らしていた。これだけ精液を受け入れられる陽菜の膣内は本当に広いのだろう。

「はぁ、はぁ、はー・・・」

 セックスって体力使うもんだな。体力がない陽菜(俺)だったら果たして宏(陽菜)を満足させてやれたかどうかわからない。女々しい話だが、"入れ替わって"よかったと思ってしまった。
 と、突然宏(陽菜)がクスクスと小さく肩を揺らして笑っていた。セックスをした事実と、自分自身を犯した痕跡が流れる部分を見つめて笑う宏(陽菜)に一瞬ドキッとしてしまった。

「え・・・?なに?」
「ううん。ちょっと・・・血が付いてるの」

 陽菜(俺)の秘部から流れる赤い血栓に気づいたのだ。陽菜にとって大事な処女膜を破られたという感覚を味わうことができなかったことを悲観的には思っていないようだ。

「自分で処女膜破っちゃったんだなって。セックスで血が出るとは思ってなかったの」

 そう言って、宏(陽菜)はしばらく面白そうに笑っていた。陽菜がこんなに笑う場面を俺は見たことがなかった。彼女も笑うんだなって、その顔を見てみたくて——俺は変わりに陽菜の表情で同じように笑った。

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 成績優秀、品行方正。それが外西陽菜に対する先生や友達、世間の評価だった。
 俺だってそう思っていた。そう思われていることが誇らしいと思っていた。
 でも、皆は知らない。陽菜の本音を・・・。

 彼女の携帯からSNSを開いてアカウントをのぞいてみると、そこには学園に対する不満や苛立ちが書き綴られていた。本当の彼女がそこにいた。綺麗な言葉でなんか書かれていない、本音をぶちまけていた。
 それだけではなく——、

"ザーメン直接見てみたいな。見せてくれる人リプ待ってまぁーす(`・ω・´)"
"汚れたいな。どなたかザーメンかけてもらえませんか(♡ >ω< ♡)"
"私、本当に汚されちゃうよぉ♥もっと、私を汚してっ♥ぐちゃぐちゃに汚していいよ♥"

 エロい無修正自撮り写真をアップしていたり、援助交際を誘っているかのようなつぶやきまで書き残していた。
 普段の姿では想像もできない、彼女の行動が見ることが出来た。果たして、世の男性は彼女を知っていたのだろうか。それなりにイイね(・∀・)が貰えているから、陽菜のSNSの更新を待っている者もいたに違いない。
 誰も気づいていなかった。誰も気づいてやれなかった。
 陽菜の覚える物足りなさ。学園生活を充実していない分だけ、なにかで満たされたいという想いをSNSに託してしまっていた事実を。その方向が間違っているのだとしたら断じて違う。陽菜はSNSで救いを求めていたのであり、学園生活でのストレスこそが陽菜の心を歪めてしまった根幹にあるのだから。つまり、陽菜を救ってやれなかった学園にいる教師、友達、生徒——宏(俺)も悪なのだ。
 先生に声をかけてくれたら満たされたかもしれない。友達に相談してくれたら本当に笑える日が来たかもしれない。誰でもいいから話をしてあげたらSNSに卑猥な画像を残さなかったかもしれない。
 でも、その結果最後に陽菜が頼ったのが宏(俺)との"入れ替わり"だったのかもしれない。
 男性に救いを求めていたのかもしれない。

"あーあ。男の子のように強くなりたいな♥そうしたら私、自分を好きになれたのに♥"

 そんなお願いを聞いてくれる人を待っているのだとしたら——

"
『この身体いつまで入れ替わってるの?』


 俺はてっきり一日だけの効果かと思っているけど、それは本当だろうか。『粉薬』の小瓶を全部使って”入れ替わった”効果の継続は果たして一日だけで済むのだろうか。

『いつまでだろうね?』
『おい。マジか』

 購入した宏(陽菜)がそんな曖昧な返事で大丈夫なのだろうか。もう”入れ替わり”は始まっているんだ。後戻りは出来ないんだぞ。急に元の身体に戻れるか心配で仕方なくなってきた。

『よくわかんないけど・・・いつまでだって私は全然かまわないよ』

 宏(陽菜)はのほほんとそんなことを言っていた。
 こいつはとんだお嬢様だ。
 もしおれがこのまま陽菜のままになったとしたら――果たして俺は、嬉しいだろうか。
"

 そういえば、あの時、宏(陽菜)は笑っていたよな。
 よっぽど嬉しかったのかもしれないな。

「あんな顔見せられたら、仕方ないよな・・・」

 不思議と陽菜(俺)は今の陽菜の状況を受け入れつつあった。
 宏(陽菜)は戻ってくるだろうかという不安よりと、このまま宏として陽菜が逃げられるのなら、それでもいいとさえ思い始めていた。一度は俺だって陽菜のカラダのままになったとしたら喜んだことは事実だ。
 新体操部の厳しい指導にもとの新体操部は辞めてしまうかもしれないが、陽菜の人生がこれ以上壊れるくらいなら、それでもいいとさえ思う。自分のカラダに戻れなくても、俺は陽菜として生きる覚悟を受け入れつつあった。

「ハァ・・・ハァ・・・ぜぇ・・・ハァ・・・」

 そうは言っても、本当に部活は辛くて死にそうだった。息を切らしてようやく初日を終わらせた陽菜(俺)は、部員の誰よりも最後まで起き上がることができなかった。身体から汗は拭きだし、目には涙をにじませて吐き気を飲み込むのが精いっぱいだった。
 部員たちは部長の練習量を案じて、声をかけることもせずに先に帰ってしまった。確かにいま声をかけられても言葉を返せる自信はなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・ぐっ」

 陽菜も同じくらい苦しんでいたのだろうか。男性(俺)でも逃げ出したいと思っているのに、女性(陽菜)だったら逃げ出す気持ちが良くわかる。
 生き方なんて一つじゃない。部活に生きなくたって、勉強に生きなくたって、なんとか生きていけるものだ。そんななあなあの人生だって有りじゃないだろうか。どうして大人は極端に一つを特化させる生き方を好むのだろう。大人の都合で子どもの人生決めんなよな・・・。

「・・・・・・・・・」

 一人転がっている陽菜(俺)の顔に影が落ちる。突然、何かが俺と天井に吊らされた水銀灯の明かりを遮ったのだ。
 鴨が葱を背負っている特大のぬいぐるみだった。河原宏(陽菜)が陽菜(俺)を見下ろしていたのだった。

「なに私の顔で泣いてるのよ?」

 淡々とした彼女の口調は俺の声色になったとしても変わっていなかった。宏(陽菜)の顔を見た瞬間、陽菜(俺)は胸の中が締め付けられる思いがした。

「これは目汗だ。泣いてない」
「私の代わりに部活出てくれたんでしょう?ありがとう。おかげで私は放課後ゆっくり過ごすことが出来たわ」

 宏は帰宅部だったし、基本一人で放課後自由にしていた。その立場で宏(陽菜)は遊びにいってリフレッシュできたらしい。

「温泉に入ったのなんて久しぶりよ。1800円かかっちゃったけど」

 結構いい温泉行ってますよね、健康〇ンド的な場所だよね?その金額はどこの財布から出てきたんですかね?

「ゲーセンなんて何年ぶりに入ったかしら」

 その後にも行ったのかよ。俺よりも充実した放課後を過ごしているな。そして、強調するように揺らすぬいぐるみである。戦利品というべきものだろう。

「8000円使っちゃった」
「ゴフッ!?」

 思わず咳込んでしまった。なにそのブルジョアなぬいぐるみ!俺ですら買ったことねえ!?一桁間違ってたって、言ってくれよ。たかっ!?高すぎるよ、その投資は!?

「・・・1000円で取れなかったら諦めてくれよ。俺の諭吉がお亡くなりになったよね・・・?」
「向こうが悪いのよ。設定が設定なのよ」
「8000円使ったら設定以外にセンスも関係するだろ。いい加減にしろよ、完全にカモじゃないか」
「私がいくら色仕掛けでお願いしても店員さんイヤな顔してた。絶対わざとよ」
「俺のカラダで店員さんに何てことしてくれたんだ。もうゲーセン行けねえよ・・・」
「あら?目汗をかいてるわよ?」
「これは涙だぁぁ!うわあぁぁぁん!俺の憩いの場だったのにぃぃぃ!!」

 泣いている陽菜(俺)を見ながらサディスティックに微笑む宏(陽菜)。前言撤回。俺のカラダ返してくれよ。もし"入れ替わり"が戻った時に金銭面で生きていけなくなる!?

「ありがとう、河原くん」

 そんな、陽菜(俺)の心を察して宏(陽菜)が感謝の言葉を投げていた。
 一瞬だけ、感情が止まった。

「本当だったら私、もうあの体育館に戻らないつもりだったの。でも、今日久しぶりに思い切り遊んで吹っ切れたわ。私、もう少し部活を頑張ってみる」

 宏(陽菜)の言葉から聞く心境の変化。そして、これからのこと——陽菜の生き方について一つの答えを出したのだ。

「それって・・・・・・」

 部活に戻ると宣言することは、陽菜にとって不本意な生き方を自ら選んだということだ。やりたくないことを我慢して、優等生を演じ続ける道を選ぶということ。
 もっと楽しい生き方があるかもしれないし、もっとやりたいことが見つかるかもしれない。
 それでも、陽菜は——

「河原くんの言おうとしていることはわかるわ。それでも私、新体操が好きなのよ。身体を動かして、演技をばっちり決めて、観客に拍手を貰っている自分が大好き」

 俺が見た外西陽菜の演技をもう一度脳裏に思い出す。大会で感動していたのは、俺だけではきっとない。観客の中で陽菜を応援する人たちがきっと大勢いたはずだ。だから陽菜は新体操部を続けられた——

「あと一年の辛抱よ。高校に行ったら新たな環境でもっとレベルの高い部活動が出来るはず。先輩のように夢が終わったわけじゃないもの、顧問が嫌だからっていう理由で自ら夢を蹴るなんてそれこそ馬鹿らしいでしょう?」

 確かに、そんな理由で夢を諦めるなんてもったいない。

「いえ、蹴ろうとしてたから馬鹿かもしれないけど・・・」
「いいの?外西さん。本当に辛いと思うよ。みんな辞めていくと思うよ?」
「辞めていきたいなら辞めればいいわ」

 なんともドライな意見だな。

「でも、私も同じ気持ちになったことは確かよ。部長(私)の言葉で考えを変えて引き留めてくれるのなら、応援し続けたい」

 部員の辛さもわかる陽菜。痛みを知って、他人の気持ちがわかるようになったのだから。
 立場が違えど、新体操が好きな気持ちが変わらない限り、部員一人ひとりの夢も終わらない——。

「俺も、同じくそう思うよ」

 ——そう、思わずにはいられなかった。

「その時は、また河原くんに『粉薬』使ってもいいかな?私が河原くんにしてもらったみたいに」

 辛くて困っている人を助ける道具になるのなら、入れ替わってみて自分を見つめ直すのもいいかもしれない。

「そうだね。そうだといいね」

 "入れ替わり"なんて——そんな非現実的なオカルト話に盛り上がる陽菜(俺)と宏(陽菜)は、間違いなく笑っていたのだった。
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