純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

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「葉!やっと見つけたぞ」

 廊下でようやく見つけた葉に敏史が声をかける。トイレで5回も逝っていた葉の身体はフラフラでどこかおぼつかない足取りだった。そんな葉が振り返った瞬間、敏史は今まで見たこともない色っぽさを持った葉の表情に心臓を高ぶらせた。
 だが、そんな気持ちに負けちゃいけない。敏史はぐっと我慢する。

「おまえ、藍花に謝れよ」
「……どうして?」
「今日のおまえ、なんか変だぞ?授業はさぼるわ、俺たちを困らすわ。そんな奴じゃなかっただろう?」

 ふふふ…と笑う葉。まるで敏史の知らない部分を知っているかのような笑みだった。

「私は隠すことをしなくなったの。本当はこんな人間よ?今の私はどういう風に見えているかしら?本当の私を敏史は受け入れてくれるかしら?」

 話しながら抱きついてくる葉に敏史は高揚する。柔らかい女性の身体、シャンプーの臭いが香る髪の毛がかかり、耳元に囁く葉――

「敏史。一緒に気持ち良くならない?」
「――バッ!?」

 たまらずに敏史は葉から離れてしまった。完全に遊ばれている。葉はそんな奴じゃない!

「……くす、なんてね。やだよ。私の一番は彼って絶対決めてるんだもん!敏史なんかに処女はあげない!」
「しょ――!!?」

 次々と出てくる爆弾発言。

「敏史も知らなかったでしょう?私、処女なんだよ?羨ましい?ヤりたい?」
「――――」

 人が変わってしまったかのような葉の態度に、遂に敏史はなにも言えなくなってしまった。

「でも、絶対にあげない。あははははは……」
「どこ行くんだよ!?よう!!?」

 目を逸らした瞬間、背をむいて階段を上って消えていく葉。なぜか敏史は負えなかったことに対して悔しさを滲ませていた。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 そう、葉ちゃんのことを全て知り尽くした修一だ。階段を駆け上がり、屋上にある自分の身体までひた走る。

(今こそ告るしかない!)

 2階、3階を飛び越え、扉を開けて再び晴天の下、屋上へと戻ってくる。人気のない場所で、タンクの裏へ隠した自分の身体を引きづり出すと、葉の唇で塞いで元の自分の身体へと戻っていった。
 寒いはずの自分の身体が、告白すると決めていたからか、燃えるぐらいの体温になっていた。 
 そして、意識を失った葉が起きるその時まで静かに待つ。
 長い時間であった。

「うん……」

 葉の目がゆっくりと動く。目を覚まして修一の顔が目の前にあったことに驚きながらも、話を聞いていたときに急に気を失ってしまってバツが悪そうにしていた。

「……ごめんね、話の途中に――気分が悪くなっちゃったのかな?」

 申し訳なさそうに謝る葉。意識が失っていたときにまさか藍花にいたずらしてたり、身体を慰めていたなどとは夢にも思っていないだろう。
 修一が目を輝かしていた。

「僕、葉ちゃんのこといっぱい知ったよ」
「えっ?」
「昨日の夜なに食べたのかとか、スリーサイズが上から78、52、70だとか、性感帯がうなじだったりとか、誕生日が――」

 イキイキと話す修一とは裏腹に、聞いていた葉はさらに顔色を青くしていた。

「なんで…………………」

 ようやく絞り出した声がたった三文字。その表情は凄いというよりむしろ怖いという表現が正しい。
 修一はそれでも気づかない。

「僕は葉ちゃんのことで知らないことはないよ!、だから僕と付き合って!!」
「い、いやああああああああああああああ!!!!」

 葉が叫んで後ずさりした。修一が歩みだすと葉はさらに一歩下がった。

「来ないで!あっち行ってよ、気持ちが悪い!!」
「……気持ちがわるい?」
「プライベートまで知ってて、あなた、ストーカー!?私に近寄らないで!!来ないで!!!」

 葉が怒り狂っているが、修一にはその理由が分からない。
 知りたいから知っただけなのに、人の踏み込んではいけない域まで踏み込んでしまった修一に、葉との修復は不可能だった。
 だが、それすら気付けない。
 だからこそ修一は探す。なにがいけないのか、なにが足りないのか、

 ――なにが修一は葉のことを知らないのか。

「…………そうか。まだ知らない部分があったね。葉ちゃんが怒るのは、僕がまだ葉ちゃんの全部を知らないからだよね?せっかくだから取っておこうと思ったけど、止めるよ。僕は葉ちゃんのすべてを知ることにした。だから、きみの処女を僕がいただくことにするよ」

 早歩きで駆け寄り葉の手をつかむ。顔を正面に向き直し、修一は唇を近づけた。

「こないでえええええ!!!--――んんっ!」

 暴れる葉が唇を押しつけられる度に少しずつ大人しくなっていく。唇を放した瞬間、修一の身体は再びコンクリートに倒れこんだ。
 太陽のように見下ろす葉は、修一の寝顔を見て笑っていた。

「ぷはあ。じゃあ、いただきます。葉ちゃんの処女膜」

 服を脱ぎ捨て、最後の葉の情報を修一はいただこうとしていた。続きを読む

「ハァ……ハァ……」

 記憶が混乱している。
 毅の中に紗里奈という存在が入り込もうとしている。約束の8時間。このままじゃ、私は本当に紗里奈になっちゃう。
 
 医院に戻ってくると、本日の営業は終了しましたという看板が出ていた。血の気が引いた。明日まで待っていたら、本当に毅としての人生が終わっちゃう。

「すいません!誰かいませんか!!すいません!」

 扉を叩いて貴美子さんを呼び出そうとする。すると、扉は押すと開いていた。鍵がかかっていなかったらしく、私は急いで中に入った。
 貴美子さんがカウンター内で忙しそうに働いている。私が呼びかけてようやく存在に気付いたようだった。

「申し訳ありませんが、今日の診察時間は終了しました」
「貴美子さん。……俺です」
「………………ああ。毅くんね。こちらへどうぞ」

 診察室へと案内され、八時間ぶりに自分の身体と対面した。布団をかぶって温かそうにしているが、微動だにせずに目を閉じて眠っていた。

「で、どうだったかしら?」

 貴美子さんが問いかける。

「…………生きるって、苦しいですね」

 自由になりたかった。自由になれると思っていた人は、この世の一番、束縛されていた。

「そうよ。あなただけじゃない。もっと苦しんでいる人はいるの」
「痴漢しか楽しみを見つけられない少女とか――」
「……?そんな人がいるの?」
「…………」

 そんな不審な目で見ないでほしい。あなたの目の前にいるんですから。

「恐怖が自由に繋がることなんてない。恐怖は自分が悪いと思っているから怖いんだ。恐怖に縛られて、自由はない。俺、彼女に教えないといけない。もっと楽しいことがあるんだって、教えてあげたいんだ」

 痴漢は犯罪です。そんな当り前なことを誰かが伝えなくちゃいけないんだから。

「じゃあ、早くリハビリを続けよう」

 貴美子さんが促すように背中を押した。でも、私はそれを申し訳なく断った。

「貴美子さん。一旦、席をはずしていただきますか?」

 何かを考えるようなしぐさを取った後で貴美子さんは頷いた。

「早くしてね。時間は待ってくれないから」

 言われたように席をはずしてくれる貴美子さん。残されたのは私と自分の身体だけになった。続きを読む

 少女、相内紗里奈は一日中電車の中にいた。一時間で一周するように作られている電車線は乗っていても全然飽きることがなく、また降りなければ乗車券分以外にお金もかかることはない。こうして紗里奈は一日中電車の中で乗っていることが日課だった。
 ニートだった。記憶を読んでいくと分かってきたことだが、自由にあこがれた毅に紗里奈は馴染む身体だった。
 そして、さまざまな人間を観察し、男女問わず機会があれば痴漢行為に走る。
 毅は紗里奈の記憶を見様見真似に実行すると、本当に成功してしまった。一度成功すると、二度目の実行にはさほど時間がかからなかった。
 そして、電車が5周するまでには成功した回数は二桁を超えていた。

 紗里奈が提示した自由を噛み締める毅。
 ――本当に苦しくてにがい、白濁の自由だった。

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「あん…あ…………ハァ」

 あまりの気持ちよさに潤が失禁してしまう。
 その瞬間、毅の視界は真っ暗になってしまった。

「(うわっ、なんだ!?)」

 突然のことで困惑したが、おそらく失禁とともに毅自身も流れ出てしまったのだろう。

「(早く戻らないと……でも、何も見えない)」

 手探りのように潤の身体を探すが、何も感じないというのは非常に困るものだ。潤の体温すら感じないのだから。

「(きっとすぐ近くにあるだから、飛び込んでみればいいんだ。てやっ!)」

 手当たり次第に飛び込み台からプールに飛び込むように(イメージ)跳ねては落ちる。すると、ようやく視界が戻った。
 目の前には息を切らして失神していた潤がいた。

「………………あれっ?」

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 潤のつもりだったのに、目の前には潤がいる。毅は芹香の中に入ってしまったのだった。
 ゆっくり起き上がって鏡の前に、ツインテールを揺らした少女が映っていた。

「間違えたけど、彼女も気持ちよさそうにしてたしな。あんなに感じるのに性交嫌いなんて絶対損してるよ。……決めた!しばらく彼女の身体で遊ぶとしよう」

 満面の笑顔で鼻歌を交えながら服を着替え終えると、未だ眠っている潤を置いて一人ホテルを出て行こうとする。

「きっと潤もびっくりするだろうな。目が覚めたらホテルで、裸になってたら考えることは一つだもの。ごめんね、潤」

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 そう思いながらも考えることは自分の体とのセックスしかない毅は笑顔で電車に乗り込んだ。知らない間に4駅先の町まで来ていた毅は戻らなくてはいけなかったのだ。
 電車に乗るのも久しぶりの毅は満員電車ではなかったが、座ることに抵抗があり、ドア前の鉄棒につかまりながら外の景色を眺めていた。

「(やっぱ景色は動いてた方が面白いな。……本当に自分の身体に戻らないといけないかな……)」

 こうして飲み薬でいろんな子に乗り移っていれば、自分の体なんかいらないんじゃないか。不自由あって過ごすよりも、何不自由ない人の体を借りて過ごした方が楽じゃないか。
 そして、その方が面白いじゃないか。

「(……いっそ、帰らないで旅にでも出ようかな…この身体で)」

 ドアに映る自分の姿を見て考えてしまう。可愛い子だ。助けてと叫べば誰かが助けてくれるような気がした。
 身体を売ればお金にもなるじゃないか。きっと何処へでも行けるような気がした。

「……」

 そんな考えがしているときにメールが届く。潤だった。

「 芹香どこにいるの?もう帰っちゃった?連絡ください 」

 ごめんなさいしている絵文字が入っている潤らしいメールである。

「(……そっか。人にはそれぞれの人生があるもんね…俺が決めちゃだめだよね……)」

 人を好き放題にできる理由はない。人生をめちゃくちゃにする権利は誰にもない。
 芹香にとって潤が必要なように、潤にとって芹香はやっぱり必要なんだ。

 ――不自由な身体だ。でも、そうやって人は過ごしているんだ。

「 急用ができたから午後から遊ぼう。連絡遅れてごめんね 」

 送信ボタンを押して潤に連絡する。
 乗り移る時間はたっぷりあるけど、現実と戦おう。
 リハビリをして自分の身体で歩けるようになろう。
 毅の身体が待っている医院へ早く戻ろう。

 電車は時間通りに動いている。

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「……ん…」

 気を失っていた芹香が目を覚ます。なぜ気を失ったか分からない芹香だが、ベッドの上に横になっている状態を見て潤が運んでくれたのだと思った。
 しかし違和感があった。両手をあげたままベッドに繋がった手錠を掛けられ固定されている。両手をおろそうにもおろせなかった。しかも自分の姿をよく見れば裸だった。先程まで来ていた衣服が綺麗にたたまれて籠の中に置かれていた。

「なに!?」

 びっくりする芹香の声に潤が顔を覗かせた。

「おはよう、芹香」

 ニコニコ顔で芹香と同じ裸で見下ろす潤。今まで見たことのない潤の表情だった。

「どうして私、こんな格好してるの?」
「自分でしたんだよ?覚えてないの?」
「えっ?覚えてないよ。これ、外してよ。どうしてこんなことするの?」
「……芹香が悪いんだよ。俺の言うことを素直に聞かないからこうするしかなかったんだ」
「ふえっ?」

 潤の口調が変わったことに芹香が驚く。

「一回芹香に乗り移って手錠を掛けさせてから元に戻ったんだ。ちなみにその時に服も全部脱がしたんだ」
「……なんの話なの?」
「うふふ……芹香。もし私が潤じゃないって言ったら信じる?」
「えっ、えっ?」
「信じられないよね。本当なら病院でベッドの上で養生している男の子が、こうして外に出て女の子に乗り移りながら芹香を縛り上げているんだって言っても、夢物語だよね?」

 潤の言っていることが頭に入らない。つまり今ここにいる潤は潤じゃないってことを言おうとしているのだろうと、そんな疑惑めいたことを潤は言っている。

「……う、潤じゃないの?ウソ!?だってその口調、潤のまんまじゃない!?」
「それは潤の記憶を呼んでいるからだよ。普段の喋り方がそのまま出ちゃうんだ」

 『人形』で操られたことのある芹香だから疑惑が少しずつ確信に近づいてくる。潤が操られている。親友として芹香は悔しさが込み上げてきた。

「あなた誰なの?潤はどうしたの!!潤!!潤ううう!!」
「それ以上喋るのならこの身体がどうなっても知らないよ?この格好で外に飛び出したらさぞ困るだろうね」
「……ひ、卑怯者!!」
「安心してよ。俺は本当に夢見心地なんだよ。こうして潤の気持ちを汲んで芹香とやれるんだ。今なら何だってできるよ」
「ひどい。潤の気持ちを弄んで、最低!」

 泣きだしてしまう芹香。でも、手錠で両手がふさがれているので涙をぬぐうことも出来なければ逃げることも出来なかった。

「……いいんだよ、芹香」

 しかし、突然潤の口調が元に戻る。

「う、潤!?」
「私の気持ちを押してくれた人だから、芹香も素直に私を感じて」

 潤ががっつくように芹香の乳房を掴む。あまりに乱暴な態度に彼が潤を操っているんだと思った。

「潤は操られてるんだよ?潤はこんなことするはずがない!!」

 断言して潤を突き飛ばす。すると、潤が急に静かになって芹香から身体を放した。

「芹香……ひどい……わたし、本当に潤のこと好きなのに……」

 潤が悲しそうな表情で声を震わせていた。

「う、潤なの……?」

 潤が芹香を睨みつける。

「芹香はいつも逃げる。いつも私のこと疎いっていうけど、本当のことに気付いてくれないのは、芹香の方じゃない!!」

 感情を爆発させて芹香に吐き捨てる。潤に冷たいことを言ってしまった芹香は後悔した。

「潤。やめよう。わ、私も、潤のこと大好きだけど、それは、その、親友としてで――」
「卑怯なのはどっちよ……私の気持ちを知って、親友同士でいられるはずがないじゃない」

 振り返って自分の衣装だけを持って出ていこうとする潤。涙を浮かべて去ってしまう親友の姿を見て、

「待ってええ!!いかないで、潤!!」

 芹香も泣きながら叫んでしまった。潤が足を止めた。振り返って芹香を見ると、二人同じ表情をしていた。

「彼は私の背中を押してくれただけなの……彼は決して悪くない。私が全部悪いんだよ。芹香の気持ちを無視してでも、芹香にアタックしたかったの」

 芹香に近寄ってくる潤。そして潤は親友に対して告白をした。

「私は芹香のことが大好き!親友として、一人の女性として、全てが好き」
「んんっ!!?」

 上から抱きしめるように覆いかぶさる潤。芹香と繋がった鎖がピンと張っていた。

「芹香。気持ちよくしてあげるからね」

 もう一度潤が芹香の身体に触ろうとする。だが、芹香は再び拒絶した。

「ち、ちがうの……こわいの。潤……」

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 これからやろうとしていることは一線を越えようとする行為だ。芹香はまだ心の準備が出来ていなかった。
 顔を真っ赤にして足をくねらせモジモジする芹香に潤はフッと微笑んだ。

「私はどこにも行かないよ――」

 潤が芹香のピンと勃った乳首をキュッと抓った。

「ひやあっ!うるう……」
「怖くない。怖くない」

 暗示のように、芹香をなだめる様に優しく労わる。女性独自のしなやかさが芹香をビクンと跳ねあがらせる。

「うん……あ…ああ……」
「気持ちいい?素直な感想を聞かせて」

 芹香の本心を伝えてほしいと聞いてくる。芹香は静かに――

「き、きもちいいよ……潤う」
「よかったぁ。もっと気持ちよくなってね」

 くちゅっと、潤が芹香のおまんこを触ると、既に湿った音が溢れ出ていた。指を挿し入れ膣内をかき混ぜると、芹香の身体は暴れ出した。

「ひやああ!!うる。そこ、ダメ。よわ…あああ!!」
「芹香は勿体ないよ。感じやすいんだから、もっともっと感じていいんだよ。奥手にならないで、言いたいことを言っていいんだよ」
「うるう……ご、ごめんなさい。ごめんなさい!あたし――」
「うん……」

 唇を重ねる。舌を絡ませるディープなキス。芹香も潤を受け入れて目を閉じて甘い快楽に身を委ねる。

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 駅前に到着した祥子(毅)。だが、その表情は難しい顔をしていた。

「何気に歩いて来たけど、今まで使ったことのない道を通って駅に着いたな。しかも今の道の方が早く着いたな。きっとお母さんが使う近道なんだろうな」

 予定よりも早く着いた駅前広場は多くの人が行き交い、賑わいを見せていた。

「やっぱ外は気持ちいいなあ。病院の中じゃ面白くないしな」

 外の空気をいっぱいに吸って青空の下で可愛い子を探す。すると、一人の女の子が周りをきょろきょろしながらまるで人を探しているようにしていた。
 誰かを探していると言うことはつまり、一人。祥子はニヤリと笑って彼女に近づいた。

「あの、ごめんなさい。誰か待っているんですか?」
「え?ええ。……あるえぇ?時間間違えたかなあ?」

 頭を抱えて困り果てる彼女。喋り口調からも分かる様に結構とろそうな印象を受けた。

「なら私が見てあげましょうか?」
「ふえっ?なにをです?」
「あなたの記憶を――うっ」
「んんっ!!?――ゴクンッ」

 勢いに任せて彼女の唇と重ねる。そして毅は口と口の間を通り彼女の中に入っていった。毅を呑みこむ音が聞こえ、彼女の意識が毅という液体に押さえつけられていった。
 背筋を伸ばして真っ直ぐに立つ彼女。しばらくして我に返ると、祥子の身体が地面に転がっているのが見えた。

「お母さん、ごめんね……。俺、彼女のところへ入っちゃった」

 今回も無事に乗り移りが出来た毅。

「……そうか。飲み薬って、俺が飲み薬になるってことだったんだ。いちいち見えなくなるのが嫌だと思って唇を合わせてたけど、やり方として一番正解なのかも」

 飲み薬の取扱説明書があったら教えてもらいたい。次回までに貴美子さんに聞いておきたい毅だった。

「――っと、そうだ。やってみたいことがあったんだ」

 目を閉じて意識を集中する毅。
 毅のやろうとしていることは、記憶の発掘。祥子しか知らない近道を毅は何気なしに使っていた。それは、祥子の記憶を無意識に読んだからだ。
 だから、意識をすることで彼女の記憶を読み取れると考えたのだ。
 目を閉じて頭の中で記憶を思い返すと、毅に彼女の膨大な知識と記憶が流れてきた。

「……私は曽根原潤。今日は親友の浅葱芹香と遊ぶ約束をしてたんだけど、十時の予定なのに芹香が来ないよ~うぅ…どういうこと~?」

 毅が喋った口調は完璧に潤の喋り方になっていた。記憶を呼んだことで完全に曽根原潤として生活できるほどになってしまっていた。

「すごいよ~。これなら芹香にも絶対にばれないよ」

 ウキウキ気分で喜ぶ潤(毅)。すると、潤の元に一人の女性が訪れてきた。

「あれ、潤?早いね」

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「芹香~遅いよぅ」
「いつも遅刻してくるからじゃない。私も約束から十五分遅れが当たり前になっちゃって」
「いつもそんなに遅くないよ」

 そう言うと芹香は楽しそうに笑った。全然芹香は毅の事に気付いていない様子だった。

「ねえ、今日は何処行く?」
「どこって、いつもみたいに適当に引っ張ってくれるものだと思っていた」
「あ……」

 確かに記憶だと潤が適当にお店に入って時間を潰していた。つまり、芹香との主導権は自動的に潤が持っていることになる。

(そうなんだ……じゃあ……)

 潤が適当に歩きだすと芹香は横をついていく。毅は潤の記憶から、一度入ってみたいところに歩きだす。
 彼女たちも一度しか行っていないのだが、迷うことなくその場所に辿り着いた。駅前から外れた一室。歓楽街が多い建物の前に一人の男性が立っていた。

「えっ……?ここ――」

 芹香も思い出して怪訝そうな表情を浮かべた。

 そう、ここはラブホテル。潤と芹香は男性に連れられて中に入っていった。続きを読む

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