純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

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「坂本怜夢-さかもとれいむ-ちゃんとぷぷぷ、プールデートだぁぁぁ!!」

 緑風光武-みどりかぜみつたけ-は手紙の内容に舞い上がっていた。
 JBT46の1人、坂本怜夢-さかもとれいむ-とのお忍びプールの誘いを断る男は一人もいない。
 早速準備を進めていた俺のもとに、ドアを蹴り破る勢いで開け放つ妹たちの怒声が響き渡っていた。

「その手紙がお兄ちゃんなわけないでしょう!」
「私たちの手紙勝手に覗かないでよ。失礼じゃない」

 妹の千秋-ちあき-と優海-ゆみ-が怜夢の手紙を奪い取る。どうやらその手紙は妹たちに宛てられた手紙であり、妹たちこそ怜夢ちゃんとお忍びでプールに連れてってもらえる正統者だと主張していた。

「う、う、嘘だああぁぁ!!俺は怜夢ちゃんの推しファンだぞ!それくらいのサービスあって然るべき金額をつぎ込んでるんだ」
「いくらつぎ込んだの・・・」
「お兄ちゃんはファン止まりでしょ。私は一緒に活動しているメンバー。普通この手紙私宛てだってわかるでしょう」

 何を隠そう、妹の千秋はJTB46のメンバーであり、怜夢と一緒に歌って踊っているアイドルである。千秋と怜夢は密かに交流もあり、優海も一緒に遊んでもらっている仲だった。
 怜夢と俺はプライベートでも顔を合わせたこともあるので、普通のファンより距離が近いと思っている。
 しかし、妹だからこそアイドルなんてとてもとても似つかわしくないことを知っている。「あんなガサツで横暴な妹のどこにアイドル要素があると言うのだろう」。

「優海。今からお兄ちゃんが一人なくなるけど、問題ないよね?」
「お兄ちゃんが一人なくなるというパワーワード・・・」
「はっ、しまった!うっかり口を滑らせていた!?」
「血を分けた実の妹に金を振り込まない癖に――!!!」
「ぐぎぎ!ばか、千秋!そ、その関節は、そっちのほうには曲がらな、あっ、あっ、ああああーーーー!!!」

 腕ひしぎ十字固めが完全に決まり、悲鳴をあげる。解放されたのは優海によってKO取られたあとだった。

      晴れてJBTメンバー

「お兄ちゃんは勝手についてこないでよ」
「頼む!俺も連れて行ってくれ!荷物持ちやるよ、鞄持つの大変だろ!?金!全額出してやるから!車出すから!!!」
「普段同じことで上司にいじめられて泣いてるのに・・・」
「お兄ちゃん必死過ぎ」

 妹たちに何と言われようと、怜夢ちゃんと泳ぎに行けるこの千載一遇の機会を逃してたまるか。

「男はいざとなれば足の指だって舐めることができるんだ」
「それ、男のほうがむしろご褒美で女のほうが恥ずかしいよね」
「むっ?そうなのか?じゃあどうすればいいんだ?」
「アーーーハッハッハッハ!!!」

 プライドを捨てた特攻作戦も交わされて万策が尽きたその時、千秋の高笑いがこだました。

「いいよ。連れて行ってあげようか?」
「ほ、ほんとか?」
「その代わり、一年間は私たち姉妹の言いなりだけどいい?」
「はぁ!?誰がそんな契約飲めるか、いい加減にしろ!」
「プライドが超回復してる・・・っていうヒールワード」

 すべてを捨て去った俺の頭の中に、今まで浮かれていて気づかなかった発生と原因に至る。 

「ん?・・・まてよ。あの手紙・・・・・・優海。手紙どこに置いていた?」
「私の机の上だよ」

 俺が手紙を見つけた場所は扉の下だぞ。ご丁寧に二つ折りにされて隙間に挟まるように丁寧に仕舞われていた。
 風で飛ばされたにしては明らかに不自然だ。と、いうことは、誰かが俺に知らせるためにわざと置いた可能性が出てきた。
 その人物とは、手紙の置き場所を教えた優海じゃなければ一人しかいない!

「千秋。すべてお前が企んだことか!?」
「ひどい!企んでいるなんて・・・っ。お兄ちゃんヒドイ!」

 うわ、いきなり泣き真似しやがった。滅茶苦茶あやしい。

「冷静になればお前、俺のこと普段から『お兄ちゃん』なんて呼ばねえじゃねえか!」
「・・・・・・ちッ・・・」

 アイドルが舌打ちすんな。本性あらわしたな。

「お兄が好きな怜夢ちゃんをちらつかせれば私の手駒になると思ったのにな」
「なるか!実妹を好きになる兄なんかいません」
「でも、お兄は妹属性好きなんでしょ?遊んでるゲーム全部『妹』に関係するものばかりだし。わざわざ女主人公を選んで衣装替えして遊んでいる姿どことなく優海ちゃんにそっくりだし」
「女主人公を妹そっくりにして遊ぶっていうプレイワード…変態だね!」
「妹が可愛くねえからだよ!別にいいだろ!千秋に俺の趣味をとやかく言われる筋合いない!」
「お兄が好きなゲームって最終的に妹とHな事するのが定番なんでしょ?もしかしたら・・・お兄ぃ・・・私たちのこと・・・・・・」
「お兄ちゃん。優海のことが好きだったんだっていうワード・・・怖い~」
「怖いのは想像力豊かなお前らだろ!優海、なんで俺を見て泣いてるんだ!?」
「顔がデカいもんね」
「顔はやめて!顔はいじらないで!」

 そんなことをしていたら、呼び鈴を鳴らして怜夢が二人を呼びに来た。 

「ごめんください。千秋ちゃん!優海ちゃん!迎えに来たよー!」

 怜夢の声にプール道具一式もって姉妹たちは部屋から遠のいていく。

「今日はお兄のことなんか忘れて怜夢ちゃんと一緒に泳ごうね~♪」
「お留守番よろしくね、お兄ちゃん」

 姉妹が消えて部屋に静けさが戻っていた。しかし、逆に怒りが込み上げてきた。

「くそっ。千秋のやつ調子乗りやがって」

 このまま千秋に馬鹿にされていたんじゃ、兄としての尊厳がない。
 ここはひとつ兄としてガツンと言ってやらなくちゃいけない。そういう事ができるアイテムを俺は既に手に入れているというのに。

「千秋。お前は一つミスを犯したぜ。プールに行く事実を俺に知らせてしまったことだ!今日一日遊びに行く予定が分かってりゃ俺だって行くことが出来るんだぜ。車でな!」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 怜夢に連れて行ってもらったプールに到着する。そこは市民プールではなく都内の旅館に備え付けられている屋外プールである。人の数も少なく、アイドルとして姿を隠すにはうってつけの場所でもある。
 選ばれた者だけが入れるプールも夏の暑さだけあり人の数は多い。しかし、怜夢と遊ぶ二人の姿を見つけるのは特に苦労することはなかった。
 キャッキャッと楽しそうに笑う三人の声が特に目立っていたこともあり、流れるプール、ウォータースライダーで遊んでいる姉妹はいい意味でも悪い意味でも目立っていたのであった。

「このくらいの場所からでいいか」

 三人に見つからないよう物陰に隠れた俺は、栄養ドリングさながらの『飲み薬』を取り出し、キャップを回すと中身を流し込んだ。
 すると、しばらくして俺の幽体が身体から抜け出てきた。俺は幽体となって、眠るように床に横たわっている自分の身体が見えたのだ。『飲み薬』の効果に書いてあった通りだ。
 周りの人は眠っている俺がいるだけで特にかかわろうとする様子もなくプールに戻っていく。しかし、その傍らで宙に浮いている俺に気づく人物は一人もいなかった。

 あとは『薬』の通り、自分の身体に戻れるかどうかを試すだけだ。とりあえず戻ってみようと思い、床の上にある身体に幽体を重ねた。 
 頭がクラッとしたが、目を開けると俺の幽体の代わりに身体から見える視界に変わっていた。 身体を起こし手足が普通に動くことを確認して、簡単に普段の俺に戻ることができた。 
 
「簡単に普段の俺に戻るというパワーワードっ!」

 優海みたいなことを言ってしまったが、『飲み薬』の効能に信頼を置いたうえでいよいよ次は千秋に一石投じよう。 
 残った『飲み薬』を飲み干して、再び幽体になった俺は千秋の元まで飛んでいく。
 遊んでいる千秋が空から近づく俺に気づくことはなく、プールの足場を駆け回っていた。タイミングを見計らい、千秋への視線が逸れた一瞬の隙をつき、自分の身体に戻るように千秋の身体へ幽体を飛び込んでいった。

「んにゃああっ!?」 

 千秋はそう言って床に転ぶように倒れた。しかし、痛かろうが子供なんでダメージは残らなかった。そして、その時には千秋の視界を通じて俺が目を開いていた。
 先ほどのように自分の身体に戻ったように、 俺は急いで体勢を立て直して、スッと立ち上がった。
 明らかに視線が低く、今までとの違和感が半端ない。ほぼ同じ視線で話しかける優海が転んだ俺のことに気づいた様子だった。

「千秋ちゃん。大丈夫?」 

 千秋。明らかに優海は俺にそう言ったのだ。この視界も水着が包む身体も物語っている。俺は千秋に――憑依したんだ。

「憑依というパワーワード・・・」
「えっ?なに?」
「ううん、なんでもない。足を滑らせちゃって。やっぱり濡れた床を走っちゃダメだよね。あははは!」 

 千秋の声で笑う俺に、安堵した優海も怜夢も、プールへと戻っていった。 

 三人で遊んでいる間も千秋の身体はとても軽く、プールだけのおかげというわけでは絶対ない。

「千秋ちゃん!」
「なに?・・・うわぁ!!やったなぁ!それえ!!」
「きゃあ、もぅ~つめたい!」
「お返しだぁ!」
「キャッキャッ!」」

 考え事をしていたら水をかけられる。お返しとばかりに水をかけ返す。
 怜夢ちゃんの眩しい笑顔ときらびやかな水が反射している。かわいい水着に飛び込みたいのを我慢していると、千秋のお股が心なしか疼いてきたのを感じた。

「(ヤバい。俺の感情が千秋の身体に移ったかもしれない)」

 このまま三人で遊んでいると、どうにかなっちゃいそうだ。このままプールの中でオナニーしていいだろうか。
 一緒に遊んでいたかった俺は当初の予定を思い出し、一人プールの外に出たのだった。

「どうしたの?千秋ちゃん」
「ちょっと泳ぎ疲れたから一人休んでるね」

      ごっめ~ん!

 二人に嘘をつきこの場で別れる。ここからじゃ見えない自分の身体まで俺は急いで走っていった。
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      もり…

「なにするのよ!?」

 ぷつりと頭の奥でなにかが弾き切れた衝動で、裕次郎は千秋をベッドに押し倒ていた。

「はぁっはぁっはぁっ、言わせておけば、もう我慢できない」

 息を荒げ、目が血走り、自制が外れた裕次郎は千秋に襲い掛かる。運動着の裾を力任せにあげ、細いお腹まわりをその目に覗かせる。

「いやあ!きみって本当に屑ね!」
「千秋ちゃんが好きだったのに、千秋ちゃんが悪いんだ!」
「やっぱりそうじゃない!私たちのファンはこういうことしたかったんでしょう?普通じゃない!」

 彼女が目の前で変わっていくことに耐えられず、必死の抵抗を見せ、ファンとしての意思表示だと自己正当化して暴走を繰り返す。
 大好きな千秋を犯してでも、変わらないでいてほしかったというささやかな願いだ。昔のように環境が変わらないでいてほしいという、現実逃避。

「あっ!なにするの、やめて・・・っ」
「ふ、ふへへ・・・こ、これが千秋ちゃんの、オマ〇コ・・・ここにチ〇コ入れたら気持ちいいんだろうな。オナニーなんかよりもずっと。も、もう我慢できないよ」
「いや、いやああっ!」

 恍惚とした表情で千秋のブルマーをずらし、小さな膣穴にいきり立った逸物を宛てつける。今までは身体を使われ、千秋に愛撫をされたことあった裕次郎だが、自分の意志のまま身体を動かし、千秋を犯すという興奮は、今まで溜まった束縛を解放したことにより歯止めが利かなくなっていた。

「ああんっ!やめてっ、これ以上はっ」
「はぁっ、はぁっ、やめられないよ」
「ふぎいいぃぃぃぃいいいいぃぃぃ!!?」

 千秋の膣に入ってくる太い異物の感覚。肉棒を呑み込んだ瞬間に捻れる膣肉の締め付けに裕次郎は感嘆の吐息をついていた。

「ああぁ~これがオマ〇コの感触・・・っ。気持ちよすぎて、で、でるぅっ」

 小さな身体の中に収まる自分の逸物に感動してはしゃぐように腰を叩きつける。前後に動けば動くほど膣がじわりと濡れてきて、ヌメリ感が増して滑りがよくなっていった。

      ベッドと思ったらマットプレイ

「こわいよぉ~だれか、助けてぇ~!」
「フ、ヒヒ・・・。嫌がっていたって抵抗が弱くなってるよ?千秋ちゃんも本当は感じてきてるんでしょ?下の口は正直になってるよ?」
「き、キモい!バカなこと言わないで!」
「キヒヒ!そらぁ!どんどん本音を出させてやる!そらっ!」

 一突きごとにピタッと止まり、衝撃を受けながらピストン運動を繰り返す。ぶちゅるっ!と、結合部から溢れる混合液が裕次郎と千秋が感じていることを示しており、千秋と繋がった裕次郎の快感は限界に押し広げられていた。

「いやあっ!中に出さないで!!」
「くぅぅ~で、射精るよ!!千秋ちゅあんんぅ!!!」

 ――ドピュドピュ、ビュッビュッ!ドクドピューーーー!!!

 泣き叫ぶ千秋の耳はもう裕次郎に届かない。限界を感じた裕次郎は一番奥まで逸物を突き挿し、彼女の子宮内に大量の精液を吐き出させていった。

「ひいぃぃん!で、でてりゅ、わたひの、なかに、せーえき、うふぅぅ・・・・・・」
「ああ~信じられない・・・ボクが千秋ちゃんにオマンコの中で射精できるなんて!」

 一度の射精感でさえ興奮が冷めやらず、逸物は未だ硬さと長さを保っていた。敏感な状態でハイテンションを維持したまま、裕次郎は一心不乱に腰を振り続けた。

「やだやだ、抜いてよ!妊娠しちゃうよ!」
「そ、そうか。生でセックスしたら妊娠させちゃうかもしれないんだよね?に、妊娠っ、ふぅぅん!」
「いやあ~~~っ!!」

 まるで千秋を妊娠させるように、さらに子宮内に二度目となる射精を吐き出した。

「あ~~~射精るぅ!!」

 千秋の中に吐き出す射精感がたまらず、身震いしながらその快楽に包まれていた。千秋の身体から噴き出す白い塊が、幼い少女を大人になった証拠を示すものとなった。

「はぁっ。はぁっ。膣内でボクの精液いっぱい出てる・・・千秋ちゃんのせいで信じられないほどたくさん出た。すごく、心臓がバクバク言ってる・・・」
「いやなのに・・・またぁ、イっちゃうぅぅ・・・・・・このカラダ、感じてちゃって、あはあぁぁん!!」

 その後も裕次郎は幾度となく千秋に射精を繰り返し、本能のままに欲望に忠実となって千秋の身体を開拓させていったのだった。

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 その後も、裕次郎は『Gypsophila』のために行動するようになっていった。
 今までは自由だと思っていたライブは強制され毎回顔を出すようになり、CD、アルバムが発売されれば指定された枚数を購入するよう義務化された。
 ATMとして心さえも無にならなければやっていけない。それはもう彼氏なんていう気分にはなれなかった。
 たとえ、性知識皆無の
『Gypsophila』の彼女たちに性教育と題して身体を交えたところでそれは同じだった。談笑トーク交えながらのオナニー観賞、ハメたまま食事をして、一緒にシャワールームで身体を洗いっこ――。ファンからすれば羨ましく思える行為さえ、裕次郎には虚無でしかなかった。身体だけ提供して、実際動かしているのは裕次郎ではなく、『Gypsophila』のアイドル達。『柔軟剤』で男性の身体を奪った後でメンバーと戯れる姿を裕次郎は黙って見ているしかなかった。それが、裕次郎の与えられた役割だった。
 三人は以前と変わっていない、アイドルとしての笑みを向けて性教育を学んでいるだけなのが本当に辛い。
 悪もなにも知らないのだ。全てはプロデューサーの意向に従っているだけなのだ。
 恋も愛もそこにはない。
やればやるほど興奮はなくなり、彼女たちのまえで射精して見せる裕次郎。いつしかファンではなく、性教育としての教材に成り果ててしまった。道具以下の境界線ができ、親衛隊としての熱意も熱気もなくなってしまった。本当ならこの場で静かに去るのがお決まりだ。アイドルに迷惑かけず、親衛隊として足並みをそろえられない裕次郎は消えていく方がいい――しかし、その選択肢すら裕次郎は持たさていなかった。
 瑞姫に束縛された裕次郎は今日もまた彼女たちのライブハウスに通うしかなかった。

「・・・・・・ぅさん・・・・・・じろうさん・・・・・・裕次郎さん」

 裕次郎が自分のことを呼ばれていることに気付いて振り返る。嫁の梨華‐すずきりか‐が裕次郎の異変に心配になったのだ。

「どうしたんだい?」
「どうしたじゃないです。・・・裕次郎さん、なんか苦しそうです。最近なにかありましたか?」

 ライブまでの時間は普通に仕事に出て働いている裕次郎。その顔がやつれてきたことに仕事が辛いのかと梨華が短い時間で会話をしにきたのだ。梨華もまた朝から看護職で働きながら晩ではバイトを入れてまで働いている。忙しい時間であるにも関わらず、梨華と会話するのも裕次郎には久し振りだと感じていた。

「大丈夫。なにもないよ」
「本当ですか?本当なら、私の目を見てください」

 じっと見つめる梨香に目を背けてしまう裕次郎。当然だ。梨華という嫁が入るにもかかわらず地下アイドルを追いかけているだけでも勘当ものなのに、最近ではもっと凄いことをやっているのだ。

「ボクが人と目を合わせるの苦手なの知ってるだろ?」
「・・・・・・そうですね」

      ヲタク、世帯主だった…普通だな。

 冗談っぽく笑う梨華に対して、隠し事をしている事実が突き刺さる。

「梨華は夜遅くまで働いて一緒に生計たててくれるし、
アイドルの追っかけを許してくれるし、ボク自身もともと顔だってよくないし、性格だって破天荒だ。なんでボクを選んでくれたのかわかんない。梨華はボクには十分すぎる幸せをくれただよ」
「私もです。内気な私に、一緒に頑張ろうって言ってくれたじゃないですか?だから、辛いことや悩みがあったら一人で抱えないで一緒に頑張って乗り越えていきましょう。不満があったら、おっしゃってください」

 梨華が裕次郎の内心を突く言葉を投げかける。裕次郎の硬く閉ざされた心が動揺し、少しずつ開きかけていった。

「梨華のおかげでボクはいま幸せだよ。その言葉に嘘はないよ。こんなに充実している日々はない」
「・・・・・・裕次郎さん・・・?」

 震える唇、潤む瞳、揺れる心。梨華に対して感謝の言葉を投げかけずにはいられなかった。アイドルの追っかけどころかATMになっていることを知れば、梨華はどういう態度をとるだろう。こんな裕次郎の正体に幻滅するだろうか。搾取されるだけの存在に成り果てた裕次郎自身、こんな姿を望んでいたわけじゃない。行き過ぎた行為を裕次郎がしていたことも認めるが、
『Gypsophila』の行為を否定しなければ、生計が破たんしてしまう。

「ボクが本当に守らなくちゃいけないものがなんなのか・・・ようやくわかった気がする」
「裕次郎さん・・・・・・はい」
「(終わらせるんだ。勿体ないと惜しんだところで、間違いは訂正しなければならない)」

 裕次郎は強く一歩踏み込んだ。
 本日をもって、鈴木裕次郎はドルヲタを卒業するために。



 

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 希美より体格的に一回りも大きい裕次郎なら幼い身体を抱きしめ包み込むことは出来るかもしれない。しかし、体内に通過し浸透することは不可能だ――そんな常識すらすり抜けて、希美の身体が裕次郎の中にすべて入ってしまった。
 目を見開き、我が目を疑った裕次郎の身体から感覚というものが希薄になっていく。意識だけを残して裕次郎は身体が動かせなくなってしまった。
 しかしその時、裕次郎の身体がびくんと動いた。それは裕次郎の意志によるものではなかった。

 首を回し、肩を回し、その場に立ち上がり、屈伸をして見せたのだ。

「(なにが起こってるんだ!?俺の身体が勝手に動くだと・・・!?)」

 止まろうと思っても身体が言うことをきかず、勝手に動き出す。さらに驚かされる理由はそれだけではなかった。

「すごーい!男性の視点ってすごくたかーい!」

 裕次郎の意志とは関係なく勝手に喋り始めたのだ。

「でも、この身体すごくおもーい。この体重で踊ったらすぐに息が続かなくなるよー」

 裕次郎の声なのに、幼女の口調で感想を呟いていく。まるでおかまみたいな仕草と相まって、裕次郎は自分が気持ち悪く見えた。

「(な、なんだこれは!?た、助けてくれ、千秋ちゃん!)」

 声にならないのに裕次郎は千秋に助けを求めてしまう。消えてしまった希美と様子があきらかに変わった裕次郎を前にしても千秋は全てを理解しているように屈託のない笑みを向けているのだ。それは彼女が見せた、初めても卑しい笑みだったのかもしれない。

「プロデューサーが言ったことは本当だったんだね。希美ちゃん」
「(希美ちゃん?どこかにいるのか?)」
「うん、そうみたい。千秋ちゃん」

 希美に語りかけた言葉に裕次郎が返事する。実際のところは裕次郎は自分が返事していたのを黙ってみているだけだった。裕次郎の身体に寄生し、同化した相手が千秋に応えて見せたのだ。
 今のやり取りで、裕次郎は察してしまう。希美ちゃんは消えたのではなく、裕次郎に同化し、身体を支配して動かしているのだと。

「鈴木さんも驚いたでしょう?いまお兄さんの身体に希美ちゃんが入って動かしてるんだよ」

 千秋が優しい声で恐ろしいことを言っている。身体の所有権を奪われて、誰かに勝手に使われ動かされて、操り人形にでもなってしまった気分だ。

「鈴木さんはちゃんと聞いてるの?返事がないから分かんないよ」
「大丈夫。意識が沈んで表に出てこれないみたいだけど、ちゃんといるのはわかるから」

 希美とは意識が共有しているのか、裕次郎の立場を談弁するように口が勝手にしゃべりだした。しかし、希美の口調で話しかけている自分を見るのは恥ずかしさを通り越して絶句してしまう。

「千秋ちゃーん!!」

 トテトテと近づいて抱き付こうとする裕次郎(希美)に、千秋は「ひやあああぁぁ!!」と言って悲鳴を上げて逃げ回っていた。

「どうして逃げるのよ。いつもなら私が抱きついても許してくれるのにー」
「だって、下半身露出して襲い掛かってきたから、つい怖かったんだもん」

 変質者の格好そのもので部屋内をグルグル循環する二人。場所が場所だけにそういうプレイに見えなくもない。キャッキャウフフしているアイドルの二人のうち一人でも成人男性に姿が変わってしまうと秘密の楽園が閉ざされてしまう光景を垣間見た。

「そうじゃなくて、私たちはプロデューサーに言われてたでしょう?成長するためにしなくちゃいけないことがあったじゃない」
「そうだったね。成長するためだもんね」

 希美は思い出したように裕次郎の身体で再びベッドに座りこんだ。

「(俺の身体でなにをするつもりなんだ!?)」

 そして今度は千秋が隣に寄り添い、裕次郎(希美)の顔と逸物を見比べていた。

「私たち、男性というのを知らないといけないの。大人になって相手を意識して、国民から愛されるアイドルにならないと。その為には偏った男性層じゃなくて、一般にも広く認知されるアイドルを目指さいないといけないの。一般人が当たり前のようにすることを、アイドルだって知らないといけないの。そのために、鈴木さんの身体を使って男の子の性的事情を教えてもらうの」

 それが瑞姫プロデューサーがアイドルである彼女たちに伝えた指示だった。ファン層を調べ、別のジョブ層にも応え、規模を拡大していく戦略を彼女自身にやらせること。そのためには彼女たちの持ち味すら奪っても構わない。
 歌は出来る、ダンスは出来る、しかし知識がないアイドルに、夢ではなく現実と戦わせることを厭わない。

「(だ、駄目だ、希美ちゃん!そんなことファンは望んでないよ!千秋ちゃんにもやめさせてよ!俺の身体から出ていかないと・・・これ以上は――!!)

 アイドルもファンも望んでいないこと瑞姫は強要する。アイドルはプロデューサーに従うしかない。良いことなのか悪いことなのか、そんなことはプロデューサーが考える。だからこそ、ファンの声が届かない――。


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 翌日、ライブハウスでの講演が終わり大盛況で『Gypsophila』が幕に消えていった。
 楽しみにしていた親衛隊も帰っていき、千村貴明、布施義也もライブハウスから帰っていった。
 しかし、親衛隊の中には最後まで残り、『Gypsophila』がライブハウスから出てくるのを待ち続けている男がいた。

 親衛隊No.3 鈴木裕次郎‐すずきゆうじろう‐。緑風千秋を追いかけて毎回ライブハウスに通い、遠征にも付いていってはコンサートのグッズを残ったものを全て買い占める男だ。しかし、その気前の良さとは裏腹に感情の起伏も激しく、野外フェスでは別アイドルのファンと一騒動起こしそうになった危険人物でもある。当然、大きくなったら緑風千秋ちゃんと結婚したいという願望もあり、握手会では100万近いCDを購入してその間千秋を口説き続けている。

「デュフフ・・・おはようからおやすみまで千秋ちゃんの顔を見届けるのはこのボクの務めなのである」

 そして今日もまた一人、ライブハウスから出てきた緑風千秋を電柱の影から見守る簡単なお仕事を始める。

「あぁぁ~千秋ちゃんを瞳に映すだけで、今日一日で目に入った薄汚い毒素の塊がすべて洗い流されていくであります~」

 その至福の時間をいつまでも過ごしていたいと思っていた裕次郎だったが、今日はいつもと様子が違った。

「――――」

 千秋が裕次郎を見たのだ。今まで目に映らないように避けながらライブハウスを出ていた千秋が、明らかに裕次郎を瞳に映し――笑ったのだ。今まで裕次郎に向けなかった微笑みを、初めて千秋が浮かべていたのだ。そんな些細なことに、裕次郎は心の底から救われた気持ちになっていた。

「千秋ちゃん・・・ぼ、ボクに微笑んでくれた・・・今までいっぱいCD買っても喜んでくれなかったきみが、どんな風の吹き回しなのか、ごぽぉ!!?」

 感謝の言葉を述べようとしていると、突然裕次郎の背後から強烈ななにかで殴られた衝撃が襲ってきた。倒れた裕次郎にさらに輪をかけて馬乗りになって動きを封じるように両手を縛ろうとして来る。

「うわなにをする
くぁwせdrftgyふじこlp」

 相手は手際よく手枷をつけ、目隠しをされ、口には猿轡をかまされる。突然のことで何が何だかわからない裕次郎が、自分が誘拐されたと気付くのは後のことだった。
 裕次郎を乗せると、エンジンがかかり、車が走りだす。何時間走ったか分からなくなったときに車から降ろされ、相手に引きずられながら歩かされる。この時にはもう裕次郎は声を上げず、怯えるようにしながら相手の言う事に従うように付いて歩いた。
 相手の腕に絡みつきながら、おどおどした足取りで視界ゼロの状態で歩いていく。
 相手も一切声を上げない。どんな相手に誘拐されたのか分からないが、何故か裕次郎の鼻には甘い香水の匂いと時折腕に当たる柔らかい感触が、ひょっとしたら誘拐したのは女性ではないかと予想をつけていた。
 それでも誘拐をするような相手だ。犯罪者であるには変わらない。碌な人間ではないと踏んでいた。
 やがて、相手は目的の場所に到着したのだろう。裕次郎に腰をつかせるように肩を両手で押さえつけた。腰が沈んだ裕次郎のお尻は、マットの柔らかい感触に驚いてしまった。
 両手の枷を外した相手。両手が自由になれば目隠しも猿轡も自ら取ることが出来そうだ。むしろ、それを相手が望んでいるようだ。

「もう外していいよ」

 裕次郎の耳に入ってきた相手の声は甲高い女性の声だった。女性というには幼い、声変わりする前の声だ。相手は子供・・・しかも、その子供という声の主を、裕次郎は何故か知っている気がした。
 外していいよ――その声で一刻も早く解きたかったはずなのに、一瞬だけ無意識に解くのを躊躇ってしまったくらいだ。
 しかし裕次郎は自分の仮定を確認するために、急いで目隠しを外していった。思っている以上に簡単に解けた目隠しも猿轡。それを身に付けた相手と裕次郎は対面した。
 裕次郎の目に映ったのは、
『Gypsophila』の筑紫希美と緑風千秋の二人がライブハウスの衣装のときと同じ姿で立っていたのである。


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      『Gypsophila』再登場

「みなさん。今日は私たちのライブに来てくれて本当にありがとう!」
『うおおおおお!!!』

 若手アイドルグループ『Gypsophila―ジプソフィラ―』。地下アイドルだった1〇歳の女の子グループが夏の野外フェスにゲスト出演すると、会場には大きな歓声が響き渡っていた。
 ライブハウスとは違い野外の解放感で歌う彼女たち。それと一緒に踊り歌う群がる兵の紳士たち。
 年齢が一回り若い彼女たちを応援する紳士たちの姿に、他のアイドルを見に来たファン達との境界線が其処にはあった。

「なにあれ、キモくない?」
「えーやだぁ~可愛い~」
「そう?SWAPの方がいいわ。どこのオチビちゃんかしら?」

 アイドルグループの中にも様々な層があり、飛び交う罵詈雑言がひそひそと聞こえてくる。

「みんな踊れ!いつも通り踊れって!」
「うわっ、キッツ。強制しないで」
「なんだと!」
「なによ!」

 ライブハウスから屋外へ進出したことで、井戸の中の蛙だったということがよくわかる。そこには様々なファンがいて、一体感を求めようとも決してうまくはいかなかった。むしろ事態は一触即発に。追っかけ、親衛隊、おたく。様々なファンが入り混じるが会場内でのピリピリとした空気が険悪なムードにさせ、亀裂を生む事態に発展。

      WRYYYY!!!

「あはは~ウケる~完璧な振り付けしてる~」

「やっぱり、ああいうグループにはああいう層がつくのかね」
「貴明・・・」
「関係ねえよ。俺たちの踊りを彼女たちに届けてやろうぜ!なあ、みんな!?」
『うおおおおお!咲良ちゃあああああんん!!!千秋ちゃあああああんん!!希美ちゃああああああんん!』

『Gypsophila』親衛隊を見て笑うファン。それを見ながら緑風千秋、桃井咲良、筑紫希美は自分のやるべきことを精一杯やっていた。


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 振り向いた先にいたのは、意外な人物だった。
 少女だった。
 ののと同じ年齢の女の子だろうか、同じ体操服を着ているので、ののの知り合いであることは間違いなさそうだ。
 むしろ、そうでなければ逆に不安になる。俺はその女の子のことを知らないのだから。

「こぎりちゃん?なんでこの家に来たの?」
 
 のの(満里奈)の言葉から出る友達の名前、体操服から察するに澤居こぎりという子に疑問を抱かずにはいられない。確かにそうだ、知らない人の家に勝手に入っちゃダメだってお母さんに習わなかったのか?と言いたくもなる。
 さらに状況は最悪である。ののという友達を犯した賢者タイムの時にやってきたのだから、少女からしてみれば俺はどのように映っているかなんて考えなくてもわかるだろう。
 友達を犯した犯罪者にしか見えない。これは非常にまずい事態である。
 怒っているのかどうかも怪しい表情で、こぎりは俺に近づいてくる。そして、何も言わないまま唇を奪い、舌を絡ませて少女の唾液を差し出していた。

「ん・・・んふぅ・・・・・・はむぅ・・・・・・ちゅび、ちゅぶ・・・・・・藤二君。ワタシにもして・・・・・・」
「お、おまえ・・・・・・満里奈か?」
「ん・・・・・・そうだよ」

      こげ・・・

 こぎりもまた、満里奈の精神が入った被害者だった。ののとこぎり、二人の少女を満里奈が乗っ取っている。

「こぎりちゃんも・・・・・・わたしなの?」
「ののも・・・・・・ワタシだね」
「わぁい!こぎりちゃんと一緒だね!」
「私たちお揃いだね!」
「呑気なこと言ってる場合か!?」

 満里奈のお惚けに頭が痛くなる。二人で抱き付かなくてよろしい。
 ののの友達のこぎりまで来て、一体満里奈はなにをしたいんだ。

「いったい、なにしに来たんだよ?何が目的なんだ・・・」

 いや、そんなことは聞く前から分かっている。そういう行動を促しているじゃないか。

「藤二君とセックスしたい」

 他人の身体を使って、俺とセックスすることを目的にしている。
 俺が満里奈を拒んだから、他人の身体を使ってセックスすることだけを目標にして欲望のままに行動している。
 他人の身体が傷つこうと構わないと、俺にセックス中毒へ誘わせて今日だけで3回も出しているんだ。

「無理・・・・・・無理だ」

 こぎりが悲しい顔をしていた。自分のルックスじゃ満足していないのと、そのつぶらな瞳が訴えかけていた。

「ああ、そういう意味じゃなくて・・・・・・いまヤったばかりで、休憩がほしい。少し休めば、また回復するかなって」
「なんだ、そういうことか」

 ぱあぁっと、屈託のない笑顔で元に戻ると、ののと一緒に頷きあった。

「そうだよね。藤二君の身体は一つしかないもんね。ちょっとくらい休み欲しいよね」
「じゃあ、見てて。せっかく友達同士揃ったんだし、藤二君に私たちのれずれずを見せてあげるね」

 計画していたわけじゃないのに、阿吽の呼吸を合わせるように二人は俺の前で大人の色気を見せ始めた。


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 二人でお風呂からあがり、二人で部屋に戻る。
 先に例えた風俗プレイの続きで言えば、準備が整い、ベッドで本番をするというもの。藤二の中に緊張が走る。それは、藤二の中に拭えない背徳感がまだ存在していたからだ。
 霧島ののという少女の身体を乗っ取ったまま、満里奈とセックスすることが、本当に正しいのかという疑惑が尽きない。不安や焦りが緊張を生んでいる。まともな思考をする決断を迫られる――。
 当たり前のように、いけないに決まっている。誰に相談しても、愚かしい行為を今すぐ取りやめるべきと諭されるであろう。
 つぶやけば炎上、自慢すれば通報される。
 そんなことは藤二だって分かっている――。

 ならば、黙っていればいい。

 携帯端末の復旧や情報社会の伝達速度で確かに漏れだした情報は人目に付きやすくなり、不祥事が起これば忽ちにおいを嗅ぎつけて部外者がやってきては団結して貶し始める。
 しかし、そんなものに屈することなく己を貫き臭い物に蓋をすればどうなる。これから起こるであろう少女との行為を見せつけることができる。
 妬みの声も、嫉妬の罵声も、すべては羨望の眼差しを浴びるに等しいこと。
 世界を救った英雄の扱いとなにが違おうか。
 のの(満里奈)は了承している。あとは藤二のみの決断に委ねられている。藤二さえなにも言わなければ表立たない完全犯罪。
 くすぐられる炎上行為。自己犠牲と真逆の、――自分勝手の愚かな行為。
 卑屈、体裁、評判――なにを言われてもすべてを受け入れた先に快楽がある。
 英断を――――

 藤二にはもう震えていなかった。

「あのさ・・・」
「なに?」
「なんで、服着てるの?」

 のの(満里奈)は身体を拭いた後、何故か着てきた運動着を身に付けていた。ブルマにまで足を通しており、ののの素肌を隠してしまっていた。しかし、それにはのの(満里奈)の考えがあった。 

      ドヤ顔

「この格好でしてあげるよ。藤二君って体操着好きでしょう?」

 のの(満里奈)の中でコスプレをしたいのだろう。藤二の中で現実離れした快楽が其処にはあった。

「えい!・・・藤二君!」

 ののの身体で飛び跳ね、藤二に体当たりする。二人でベッドに倒れこんだ。
 少女の身体で藤二を倒す勢いがあっても、ベッドに沈むのはほんの少しだった。軽い体重を被せられても苦しくなく、むしろ体操着の上からでも感じるほどの胸の柔らかさを味わうくらいはできた。

「藤二君・・・・・・ンン・・・・・・」

 顔を近づけ、キスを迫るのの(満里奈)。奈々の時と同じように主導権を握り藤二を快楽へ誘うつもりだった。
 しかし、ののの唇が届く前に行動を移したのは藤二の方だった。


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 話を戻して――
 神保町にある町公園には多くの住民が使用している。商店街が近い、駅に近い、学校に近い、住宅街に近い――、町の一角にある大きな公園には、赤ちゃん連れの親から小学校帰りの子供、運動目的の社会人、日向ぼっこを楽しむ日和見主義の老人まで訪れ、町公園にしては夜まで人が訪れない時間帯がないほどである。
 キャッキャッと賑わう公園では男女入り混じって学校帰りの子供たちが、運動着のままソフトボールをやっていた。ガキ大将といわんばかりの元気のいい男の子を筆頭に、柔らかいゴムボールを投げてはプラスチックのバットで打ち返しては素手で構えてボールを両手で掴み取っていく。
 運動が苦手な子や女の子もそれを見ながら応援している。学校が終わっても仲が良いのか、クラスの団結力を見せつけながら多くの生徒が公園に集まっていた。

「がんばえー!凛ちゃぁん!」

 霧島‐きりしま‐ののも、その日は公園にいた。運動が苦手な女の子だけど、友達の澤居‐さわい‐こぎりや森山凛‐もりやまりん‐が活躍するソフトボールの応援として一緒にやってきていた。
 プレイしている人たちはののの声に気付いても、ボールに集中して顔を逸らさない。応援してみているとしても、ののは他の人よりも先に集中力を切らして喉の渇きを覚えていた。

「お水飲みにいこっと」

 一人輪の中から外れて、公園に備え付けの水のみ場へ向かい、蛇口を捻って水を出した。噴水のように湧き立つ冷たい水に顔を近づけ、乾いた唇を小さく開けた。

んっく・・・こくっ・・・こくっ・・・んふ・・・・・・」

 遠慮がちに喉を鳴らしていたののだったが、水道水から口を離すと、

「・・・・・・あれ?・・・・・・あれあれ?」

 辺りをきょろきょろしながら
公園で遊ぶクラスメイトを無視して自分の身体を眺め始めた。
 学校指定のジャージに描かれた自分の名前がマジックでしっかり描かれている。過去の自分たちを思い出しながら、今度は明らかな低学生の子供の身体に入り込んでしまったことを、この時月貝満里奈は察してしまった。

      のワの

「やだぁ・・・また、やっちゃった・・・藤二君・・・いったいどうなってるの・・・?」

 ののの声で藤二に助けを求めるように、公園から慌てて飛び出していこうとする。

「ああ、やっと見つけた!のの~」
「ひぃっ!」

 ののと言われて誰のことか分からなかった満里奈だが、呼ばれた声は明らかに自分に向けられ、おまけに手まで振っている。

「だ、ダレなの、あの子たち・・・・・・この子のともだち・・・・・・?」

 人見知り恐怖症が発動し、のの(満里奈)は恐れを覚えていた。年齢は明らかに満里奈の方が上で、身長だって満里奈の方が当然大きい。しかし、その活発で健気な明るい態度がどうしても馴染めない満里奈にとって、ののを見つけてやってくる二人の女の子があまりにも怖かったのだ。涙を滲ませる始末である。

「いじめなの?これからいじめられるの?どうしよう、逃げなくちゃ・・・・・・」

 足が竦んで動けない満里奈の頭に、一筋の
情報が流れ込んでくる。

「(わたしは霧島のの。今向かってくるのはわたしの友達の澤居こぎりちゃんと森山凛ちゃん。とっても仲の良い子なの)・・・・・・ふぇぇ~ほんとぉ?」

 ののの記憶と情報が頭の中に流れ込んでくる。昨日三人で下校した時の会話内容や、今日の授業で先生が授業と全く関係ない絵の落書きを褒めてくれたことを、まるで満里奈は自分のことのように自然と思い浮かべていた。

「これってののちゃんの記憶なのかな?……えへへ。なんでも自分のことのように思い出せる・・・」


 なんだか、楽しくなった満里奈。子供の時に戻った気分になったようだ。

      キャッキャウフフ

「のの、またどっかいっちゃうんだもん。心配したよ・・・・・・どしたの?」
「えへへ~なんでもないよ~」
「よくわかんないけど、のの代打で指名されてるよ。打たない?」

 ツーアウト満塁の場面で指名打者。明らかに荷が重すぎる場面であり、大将の策略によるものだという事が垣間見える。
「えー。そんなの無理だよ~」。普段のののならこの場面を絶対に断る。
 しかし――満里奈は違った。

「ようし、頑張って打つゾー!」
『・・・・・・あれ?』

 こきりも凛もののの態度に違和感を覚えながらも、それ以上なにも言わずにバッターボックスに向かわせた。

「よく出てきたな。・・・でも、残念だけどここまでだな」

 ピッチャーは既に投げる前から余裕の勝利宣言である。他の守備もどこか気の抜けた構えをしており、集中力を欠けていたのは確かだ。
 しかし、それもそのはず、ののは一度もバットにボールを当てたことがないのである。常に空振りと見逃し三振で出塁すらしたことのない野球音痴である。自分が入ることでチームに迷惑が掛かると知っているから常に応援に徹していたのののことを皆が知っているので、ガキ大将はそれを利用する。

「・・・・・・・・・」

 のの(満里奈)は無言でバットを握り構えた。やる気に満ち溢れた構えにガキ大将は察し、自分も投げる動作に入った。
 投球フォームはアンダースロー。
急激に重心を下降させ、投球腕を水平を下回る角度にまで下げた後で腕をしならせて投げる独特のフォームは、低いリリースポイントから浮き上がるような軌道でボールが投球されるため、打者を幻惑する。ソフトボールといえばウィンドミル投法であり、子供なら下手投げが基本なのだが、子供のルールにアンダースロー禁止の項目はなかった。
 空振り、打ち上げ、凡打間違いなしの速球がのの(満里奈)に迫る。

『ののちゃん!頑張ってぇ!』

 声援が聞こえ、のの(満里奈)がバッドを強く握り、瞬時に振りかぶった。

「私はお姉ちゃんだからあぁぁ!!!」

 カキーーーーーーーーン!!!!

 ジャストミートしたゴムボールはぐんぐん伸び、外野守備の上を越えて公園フェンスに直撃していた。
 ホームランである。走者一掃の満塁弾を炸裂させた。
 
「やったあぁ!ののちゃん!」
「おめでとう!」
「すごぉい!ホームランなんて初めて見た!」
「ののを馬鹿にしたら、ノンノン、だよ!」

 ベースを回りホームインしたののに駆け寄る女の子たちが一緒になって喜んでいた。「そんな、バカな」とガキ大将が崩れ落ちるのを見てしっぺ返しと罵る女の子たちが生き生きしていた。

「ありがとう、みんな!」

 気分を良くしたのの(満里奈)もまた、仲間と供に喜びを分かち合う。決めるところで決めることができた満里奈は自分の威厳を保つことができたのだった。

「・・・それで、ののって私たちのお姉ちゃんだったの?」



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 まず俺が最初に手潮をかけるのは、翠来未―クミドレンジャー―ならぬウルドくん。

 そう、彼は唯一の男性なのである。つうか、ショタキャラ……。監督がどうしてウルドくんを採用したかは定かではないが(推測するに、時代のニーズ)、そんな彼が来未の中に入ったらどうなるのかすごい期待していた。

 だが、五人の中で一番最初に家を飛び出していったのも彼である。尤も興味あると同時に最も悩みを抱えていそうだったので、俺は翠来未を追いかけた。
 すると、近くの公園で緑来未を発見する。噴水のあがる綺麗な公園で一人、項垂れていたのだ。

      42814196.jpg

「ハァ、どうしてボクがこんなことに……」

 来未がボク口調で話している。うう、萌え。

「どうした?なにしょげてるんだい、若者よ?」
「カントク……」

 俺は翠来未の隣に座る。悩んでいる姿は来未で見てきたが、それ以上に深いと思ってしまった。

「ボク、これからどうなるんですか?」
「どうなるとは、どういうことだい?きみらしさを見せてくれれば俺は嬉しいんだがね」
 「そうなんですが……」と、翠来未が胸の内を明かす。
「男の子なのに、みんなを引っ張っていかなくちゃいけないのに、顔向けできないじゃないですか?」

 メンバーには、来未や心愛という年齢が近い子供たちがいる。その中で同じ年代の男の子として、引っ張っていかなくちゃいけないという使命感がある、ということらしい。
 そういうことか。それならば俺は応えよう。

「小さいなあ!若者よ」

 翠来未が俺に振り向いた。

「男が引っ張るだとか、女が付いてくるとか、俺の役者にそんなもの必要ない!みんなクルミだ!みんな弱い女の子だ」

 出演者には一ノ瀬来未しかいない。それが未来戦隊ミクレンジャーだ。

「ボクも、ですか?」
「翠来未も女の子だ!だから悩むときはもっと大きなことで悩め!もし小さなことで悩む様なら――俺に言え!!」

 ――演技が上手く出来ない、
 ――関係がうまく作れない、
 悩み、結構じゃないか?独りで悩まず、男の俺がドンと答えてやる!
 正しいか正しくないかは分からんが、感想、意見は述べてやれるからあとは自分なりに考えて噛み砕いてくれ。

「だから、俺に最高の演技を見せろ!!」

 後ろの噴水が高く上がる。

「はい、カントク」

 悩んでいた翠来未の表情が一気に明るくなった。


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