純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

タグ:コスプレイヤー

 妻を早くに亡くし片親で娘を育てた俺、戸松良児―こまつりょうじ―は寝ても覚めても仕事に明け暮れる毎日を送っていた。
 大手企業に就職していたこともあり融通も効いてくれる会社で、昼は自分の仕事を片付けて、夜には禁止されているバイトまで大目に見てもらい、昼夜問わずに働いていた。
 これもただ一人の娘のため――――最愛の嫁が託した最優な娘に辛い思いをさせないために頑張ってお父さんは働いていた。
 ・・・・・・・・・だと、いうのに・・・・・・

      遠方に味方艦ハケーン

「あっ、おかえりー」

 くたくたになって帰ってきた俺の目に飛び込んできたのは、今朝から一歩もベッドの上から出ない娘の七海―ななみ―の姿だった。

「七海。学校行ったか?」
「んにゃ?んんぅ~~~」
「行ったか行かなかったかを聞いているんだ?」
「行かなくても別にいいじゃん。私、勉強できるから」
「そういうことを言っているんじゃない。子供が学校に行くことが義務だ」
「義務とかよくわかんない~」

 勉強できるって言ってなかったか?途端に掌返しとは良い度胸している。中学生にもなって学校に行かずに引き籠りになってしまって、お父さんは悲しくなるじゃないか。

「とにかく、ベッドの上から出なさい。ゲームもほどほどにしなさい」
「・・・うん」

 七海がベッドから身体を起こす。そう言えば家に帰ってきてもベッドの上、会えば眠っていることがほとんどの七海が身体を起こすのは久しぶりに見るな・・・・・・。

      悪堕ちしたのかな?

「――――――」

 年甲斐もなくドキッとしてしまう。妻の面影を残す七海はスタイルが良い。しかし、俺は妻がなくなるまで仕事に没頭し、娘と喋ることもなく、今更になって会話をしたところで、「家族」らしい会話などしたことはなかった。ただ一言、二言話して、それで終わりだ。
 七海とは未だに距離感が掴めずにいた。どうにも俺に似て無口で不愛想な子に育ってしまったようで俺――お父さんのことをどう思っているのかもいま一つ分からなかった。
 それでも、七海は俺のいう事は聞いてくれているだけ親としての威厳はあるのだろうか。
 少し踏み入った話をするのも億劫だが、家族だから話をしなければいけない会話もある。腰を下ろして胡坐をかき、七海の本心を聞きだすことにする。

「学校、行きたくないのか?」
「行ったって・・・・・・面白くない」
「そうか・・・・・・」

 所謂、いじめだろうか。俺の目の届かないところで七海も虐められているのかもしれないと勘ぐってしまう。片親として育てられていることを馬鹿にされても仕方がない。そうさせてしまったのは父親として謝罪してもし足りない。俺が背負うべき罰を七海にまで背負わせるわけにはいかないのだ。
 学校が行きたくないなら無理強いに行かせることはしない。かと言って七海に家に居て遊んで一日が終わっていくような生活は送ってほしくはない。
 となれば、俺が思いつく提案は一つしかない・・・・・・。

「仕事、してみるか?」

 俺の重い口から発した言葉に七海の背中がビクンと伸びた。

「仕事・・・・・・?」
「そうだ。お父さんみたいに働いて、社会に一歩踏み出してみるというのはどうだ?」

 勿論、仕事となれば立場や年齢なんか関係ない。常に”できる”か”できない”かを迫られる実力主義。守ってもらえる者など一人もいない弱肉強食の世界――そんな場所に身を投じるくらいなら、俺がもっと働き七海を守ってあげなければならないと思っているが・・・・・・それも決して長くはもたないだろう。

「いいの・・・・・・?」

 しかし、七海の返答は思いの外プラスだった。仕事に関してあまり考えたこともないはずの娘が、仕事をやりたいという意欲はある言葉を聞くと、親なりにほっとする。

「もちろんだ。どんな職をやってみたいんだ?」
「え・・・・・・でも・・・・・・」
「お父さん、七海のためにうまく上に取り入ってやろう。事務仕事か?総務?経理?営業は辞めときなさい。・・・・・・七海はどんなことがやりたいんだ?」
「じゃあねぇ・・・・・・・・・・・・コスプレイヤー?」

 前言撤回しよう。やっぱり仕事に関して甘く見ている娘のようだ。
 俺の娘なのに恥ずかしい。一体どこでそんな夢見がちな娘に育ってしまったんだ・・・・・・。
 コスプレイヤー・・・・・・うちの会社でも年数回用意されている大規模な展示会で発注するコンパニオンの子達だろうか。果たして上司に取り入って雇ってもらうことなど可能だろうか・・・
 そもそも何故コスプレイヤーなんだ。モデルじゃダメなのか?容姿に自信がないのか?カメラ小僧にちやほやされたいのか?それは本当に職業としてやっていけるのか?
 なんなんだ、コスプレイヤーって・・・・・・。

「お父さん。私の言う事を取り入ってくれるんでしょう?本当に出来るの?」
「あ、あああ・・・・・・」

 言った・・・言ってしまった・・・・・・まさか俺の想定を180度超える返答が来るとは考えもしていなかった。
 今更ながら無理と言ってしまっていいだろうか・・・。
 俺自ら七海を悲しませてしまっていいものだろうか・・・・・・。
 と・・・・・・今日入った営業のお相手から貰った『名刺』が、ポケットの中に入っていることを思い出した。

      二次元と三次元

『うちの名刺を消してもろうてもかまへんよ。うち本当は営業やない。押しつけられたんや。その『名刺』で”営業”語れば、みんなうちのこと”営業”と思ってくれる。そういう道具なんや』

 なんか、そんなこと言っていたな。名前は確か――川上晴子と、言っていたな。
 彼女の『名刺』を取り出すと、なんと水溶性マジックで描かれた彼女の名前があった。営業の時には立派に見えた『名刺』が、今や乾いた笑いしか出てこない。これじゃあ水に濡れたら彼女の名前は愚か、『名刺』は白紙になってしまうだろう。
 ・・・・・・・・・・・・。

「お父さん・・・?」
「七海。今日からこの『名刺』を持ちなさい。そして、翌日にあるフェスのコスプレショーにエントリーしてみなさい」
「ええ!急にそんなこと言われても・・・」

 勿論、そんなこと百も承知だ。自分がやりたい夢を仕事にするなら、早く現実を知ることも大切だ。失敗したら次に繋げればいい。とにかくコスプレイヤーというものがどういうものなのかを七海もすれば考えは変わるだろう。
 ・・・・・・その言葉は俺自身にも返ってきているような気がするが。

「これが私の『名刺』なのね・・・・・・へぇ~」

 手渡された『名刺』には七海の名前と職業が描かれていただけのシンプルなものだ。
 しかし、『名刺』を持つことで自分の立場を確認したのか、始めて七海が笑った顔を俺は見たのだった。


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()()憑依()する(しょく)人物(ぎょうを決める時に浩平が思ったことは、人の人生を左右することは絶対に避けることだった。
 先の失敗を反省し、”先生”と呼ばれる職業、政治家、茶道、華道、書道、医者、学者、薬剤師――等と後に問題になりそうな職業になることは諦めていた。

「先生、と呼ばれるのは心地よかったのにな・・・むしろ、そう考えれば教師って案外楽な職業だったんじゃゲホンゲホン」

 憑依出来るとはいえ、作法を知っていても教えることのできない浩平には、人の上に立つことは出来ないと学習する。それならばいっそ、一般的な職業に就職する現実的な憑依にしようと考えた。
 営業、接客、総務、経理、管理、装置オペレーター――数ある職種の中で自分に一番合った職種を選び、なりたい職業を決める。40年近くやり続けることになる職業で、飽きが来ない、苦労しない、危険がない、定時で帰れる、休みが多い等と要望を出し合った結果、自分の職業を決めることは決して間違っていない。
 それこそが一般人である田上浩平の職業選びとして最も近いものではないだろうか。そして、それこそが追い求めた理想の職業(じんぶつ)ではないだろうか。

「休みは多いに越したことないし、完全週休2日がいいよな。その方が遊びにだって行けるしな。あとは俺は人付き合いが好きだから接客業が向いてるんじゃないか?責任だって取りたくないし、ゲームしたいし、疲れて家に帰りたくないし、鬱になるなんてまっぴら御免だ」

 そう考えているときが一番幸せに違いない。
 誰だって仕事選びは大変だ。働かなければ生活できないために、自由を引き換えにしなければいけない。犠牲を減らせば職業は引く手数多だ。しかし、欲を持てば犠牲は大きくなる。
 拘束時間、企業努力、責任は大きくなる代償に、給料は増えていき、将来の安定は得られる。しかし、それが幸せ――?本当に――?

「よし、次に憑依するのはプライベートを充実しながら接客業をやりくりしている人にしよう」

 それが、浩平の追い求める職業だった。プライベートと仕事の両立。それが確立している人物にこそ、将来的に浩平の役立つ管理能力があるはずだと、浩平は人物を思い馳せた。
 すると――

「キタ。この、吸い込まれる感覚――」

 前回同様、幽体がなにかに吸い込まれるように勝手に飛び出していく。学習能力を得た浩平は焦ることはせず、一件の家の二階に一気に突っ込んでいく。窓を通過し、ベッドで腰かけて携帯を弄っている女性。目標はこの娘に違いないと、胸の中にダイブする浩平の視界が、次の瞬間には一気に開いたのだった。

「・・・・・・・・・・・・」

 ベッドに腰掛けて携帯を見ている自分。イベントのサイトを開いていた状態で硬直していた身体を起こし、辺りを見渡した。
 今時の有名ロックバンドのポスターが貼ってある。それに、某アニメのコスチュームが掛かっていたり、ラケットやランニングシューズとスポーツ用品が置かれていたり、部屋を見て察するように、アウトドア派の多趣味の子だと分かった。

「今時、こんな子いるんだな」

 自分の発する甲高い声も、この部屋の住人の声に変わっている。浩平はどういう娘になっているのか、鏡で映して確認しようと向かっていく。さっき見下ろした時と同様に、髪の毛がふわりと甘い香りとともに絡みついていくる。それだけでこの子から良い匂いがした。

「か、かわいい・・・」

 自分と同じ背丈のお姉さん像。20歳から25歳までと推定される仕事優先より遊び盛りの活発な子に見えた。整った顔立ち。吸い込まれそうな大きな瞳、筋がしっかりと通った高い鼻、ぷっくりとした小さな唇。目の前の鏡に絵に描いたような美女が映し出されていた。

「・・・すげえ、これが俺か・・・」

 浩平がつぶやいた言葉を美女が喋る。憑依したことを十分に実感してしまう浩平。試しに浩平が笑みを浮かべ、怒り顔を繕うと、目の前の美女をどんな表情でも浮かべることができる。自分がちょっと表情を変えてやるだけで、美女が表情をコロコロ変えるのが面白かった。そして、そのことで浩平が彼女の身体を支配している実感が沸きあがり、興奮を高めていった。

「ああ、この子に対してすげえ興味出てくるな。そろそろ記憶覗いてもいいかな」

 浩平が彼女に対して知れば知るほど、浩平は彼女になってしまう。それは少し悲しいことだった。

「・・・
松下架(まつしたか)(すみ)。22歳ってことは今年大学卒業したばかりの新卒者・・・って、違う。この子・・・ウソ・・・アルバイト!?有名ブランドの新卒枠を蹴ってお気に入りの喫茶店で働いているだなんて・・・!」

 浩平が驚くも、昨今珍しい話でもない。大学で遊んで過ごしていた架純にとって、もう少し遊んでいたかったという想いが強く、アルバイトとして働く代わりにプライベートの時間を増やした結果である。実は趣味だったコスプレイヤーとして成功しており、副業で稼いでいる架純にとってアルバイトとして働いた方が気兼ねなく生活できるのである。

「こんな生き方があるなんて、ちょっと羨ましい・・・」

 人生ですら選択肢が多様化している現代。有名ブランドで一生身を粉にして働くより、自分を資本に売り出す方法で成功しているのなら自由の幅が大きくなるだろう。しかし、健康管理、体重管理だけではなく、精神面での苦労は増えるにちがいない。自分のやりたいことをすることに対しての理想と現実。一長一短の選択において、なにを重要視するかもまた、誰でもなく自分の責任が問われる。

「今日は一日オフだったんだ。だから暇を持て余してライブに行こうとしていたんだ」

 架純が携帯を見ていたところまで記憶を読んだ浩平。つまりは架純になりきることに成功し、仕草から口調まで女性口調に変わっていた。
 休みと分かった浩平は、架純の代わりに一日弄ぶためになにをするかを模索する。すると、架純
の目は自然に下の方に向かっていた。背丈は浩平と同じくらいだが、肩幅は優に一回りは小さな身体になっている。その下に服を押し上げる綺麗な乳房のかたち。
 下半身にはラフなパンツを穿いており、腿は見えなかったが、そこから覗いている足も普段とは比較にならないほど小さかった。
 コスプレイヤーと言うだけあり、小さな身体と整った顔。何を着ても似合いそうなのは間違いない。
 架純の喉が一度大きくなった。

「あーあ。今日は暇だなぁ。なにしようかな~」

 まるで、架純本人が言っているように独り言をつぶやく。

「そういえば来週の長期休みにイベントがあるんだった。その服のお披露目会でもしてみようかな~」

 ハンガーにかけられたままクローゼットから出されたコスチューム。あれがイベント用に架純が手作りしたものだった。
 自分で作り、自分で着るのもまたコスプレイヤーとしての楽しみ。架純は手に取ると、早速着替え始めた。パンツを脱ぎ、スカートに足を通す。架純の生太腿は想像通りの綺麗な美脚だった。お腹まわりはコルセットを締めて中のシャツをきつめにしてボタンをかう。そうすることで身体のラインが細く、胸まわりの下乳を強調するシルエットを際立たせることができる。今回のコスプレ衣装は露出が少ない分、清楚感を多くするコンセプトになっている。架純お気に入りのデザインに仕上がっている一品だ。

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 架純が着替え終わり、鏡を通す。まるでノンフィクションのキャラが具現化したような完成度にご満悦の様子だった。先程よりもさらに可愛く、萌えという擬音が聞こえてきそうな出来栄えだった。

「うーん。スカートを穿くと足がすぅすぅして、なんだか落ち着かないわ」

 鏡の前で一回転する度にスカートが舞う。小っ恥ずかしさを覚えながらも他人に見せたい、自分だから似合うという自己アピール、自己顕示力を感じるには、それなりの自信があるからだ。
 架純の生まれ持った素質と、体系の維持。そして持続力。架純ほどの容姿があればコスプレイヤーになりたいという憧れは最もである。スマホでコスプレ姿を何枚か写真に納める架純。それは無意識に浩平が架純のコスプレ姿を保存する動作と、架純のコスプレ姿を確信する動作が一致した行動だった。

「お腹が結構苦しいな。コスプレイヤーも大変だわ」

 浩平にはコスプレイヤーの気持ちが分からず、不平を言いたくなる。苦労して得るものが少ない。まさにコスプレが好きな人がなる職業である。衣装を着たままオナニーをしたかったけれど、さすがの浩平ではその苦しさに一刻も早く脱ぎたくなっていた。

「・・・ふぅ。まあいいわ。今度は違うコスプレに着替えて・・・ん?」

 これからという時に架純の電話が鳴る。本日休みを取っていたバイト先の喫茶店からだった。

「はい。もしもし?」
『あっ、松下さん。ごめんね。いま大丈夫?』
「ええ。どうしたんですか?」

 相手は店長からだった。この声を聞くと、身体が無意識に震えが立つことに、浩平は気付くことはなかった。


『本当に申し訳ないんだけど、今日出勤できる?』

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 有理沙の人生を手にいれた角田宇宙太は仕事をサボりある場所を目指していた。
 朝の通勤ラッシュの波に混ざることなく、登校する小学生の列と供に歩きながら通学路の道を外れて訪れたのは、とあるボロアパートの一室だった。
 鍵は不用心にも空いている。しかし、この部屋に誰かが訪ねてくることはないと知っている有理沙は、鍵が空いていることでこの中の住人も自分と同じように、着実にその住人の生活に染まっていることを確信した。
 中に侵入して、未だに眠っている大男の角田宇宙太を見つけると、思い切りカーテンを開いたのだ。

「ほらっ!起きなさい!」
「な、なに!?」

 寝耳に水の出来事に飛び起きる宇宙太(有理沙)。そして、元々の自分の姿を見るや、夢を見るかのような神妙な顔を見せていた。

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「なんで、あなたがやってきてるの?」
「お久しぶりだな、元コスプレイヤーの穂村有理沙さん。いや、今も現役のコスプレイヤーか、俺は。ヒヒヒ」

 不気味な笑みを浮かべながら宇宙太(有理沙)の元へやってきた有理沙(宇宙太)。その真意が分からないまま宇宙太(有理沙)は積年の恨みを投げつけた。

「すべてあなたのせいよ!芽理沙はどこ!?私の身体を返して!!」
「お決まりの台詞だな。むしろ、お前の方がうちに来ると思って待っていたのに、一向に姿を見せないんだからびっくりだよ。心配じゃなかったのかよ?」
「こんな姿で・・・芽理沙に会えるわけないじゃない」

 醜く臭い姿に替わってしまった芽理沙は、会いに行きたくても絶対に芽理沙に会えなかった。芽理沙に会った時に傷つくことが目に見えるのに、会いに行けるはずがない。心配で気が気じゃなくても、会いに行った方が芽理沙を不審がらせてしまうから。
 自分の心に嘘を付きながら角田宇宙太として生活するしかなかった。40代のニートの生活として、残り少ない貯金をやりくりしながら生きるしかなかったのだ。だからこそ、宇宙太(有理沙)にとって有理沙(宇宙太)がやってきたことが最後の勝機。再び入れ替わりをして自分の身体を取り戻す機会を逃すわけにはいかなかったのだ。

「大人しく機械に入りなさい。それまで私はあなたを返さない。ここから出さないわ」
「フヒヒ・・・。今すぐにでも襲い掛かりそうで怖いわ。そんなに襲いたいなら好きにしなさい」

 まるで宇宙太(有理沙)の言い分を飲んだかのように抵抗をしない有理沙(宇宙太)。丸腰を強調するように手をぶらつかせた後、スーツを脱ぎ始めていく。 

「な・・・」

 そこから現れたのは、自らの身体を強く縛る縄の姿。
 亀甲縛りを見せる有理沙の憐れな姿だった。


 
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 後日――穂村姉妹は別のイベント会場でコスプレ衣装を披露していた。

「うおおおおおお!!ほむほむ姉妹ぃぃぃ!!」

 彼女たちには多くのカメラ小僧たちが取り集まり、フラッシュを浴びて会場を沸かしていた。
 芽理沙も慣れたようにポーズを決めて写真に撮られる。初々しさはなくなったものの、芽理沙もプロのモデルのように貫録ある写真写りをみせていた。

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「あぁ^~心が(ry」
「芽理沙ちゃんのバブみ感じてえ」
「かわいい~!こっちむいてぇ!」

 大勢の人だかりに囲まれる姉妹。しかし、カメラ小僧の中には隙をついて彼女たちの陰部を狙う者も混ざっていた。

「シャッターチャンス!」

 レンズだけを芽理沙のお尻を狙ってシャッターを切ろうとしていた。カメラを覗き込もうとせずとも、自らの瞳そのもののようにカメラのレンズの標準は芽理沙のお尻に合わせていた。

「狙った獲物は逃さない――」
「?」
「ば、バカな!俺の写輪眼に気付いただと!?」

 いままさにシャッターを押した瞬間に芽理沙が気付いてお尻を後ろに向けてしまった。男性は敗北感を味わい、苦汁を飲まされる。それどこか、カメラ小僧の暗黙のルールを抜け駆けするという危険な行為を犯した男性に刺々しい視線が突き刺さる。
 ルールを破った者は黙って去れとばかりに無言の圧力が男性に襲い掛かる。

「くっ、俺も勘が鈍ったもんだぜ」

 やったことは格好悪いが、格好良い捨て台詞を吐いて去ろうとするカメラ小僧だった。

「待ってください♪」

 そんな彼を呼び止める有理沙。これからなにかを期待させるような弾んだ声に彼は歩みを止めた。

「お楽しみはこれから始まるんですよ?いってしまっていいんですか?」
「どういうことだ?」
「クスクス。こういうことですよ」
 
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 シコシコシコシコ――
 突然、芽理沙が男性のズボンを下ろして亀頭を撫で始める。カメラ小僧は一瞬なにをされているのか理解できず、唖然とした表情をしていた。しかし、脳が遅れて状況を理解すると、突然奇声を発して雄叫びをあげていた。

「うおおおぉぉぉぉ!!!芽理沙ちゃんに手コキされてるううぅぅぅん!!!」
「ああ、てめえずるいぞ!俺にもやってくれ!やってくださいぃぃ!!お願いします、なんでもします!」
「慌てないでくださいね。これから順番に回ってあげるから」
「ふ、ふおおおおおぉぉぉぉ!!!」

 優しい口調に諭されるカメラ小僧たち。芽理沙と有理沙は次々と男性の円陣を回りながら、逸物を取り出し手コキフェラを繰り返していった。

「ちゅぶちゅぶ・・はぁん・・・れろ・・れる・・じゅぶぶぶぅ!」
「ふわあ!有理沙ちゃんの口内の生暖かさがおち〇ちんを包み込んでるぅぅ!」
「ちゅっ・・ちゅくぅ・・・れるれる・・・はぁむ・・・うふぅ・・ん、ん、んぅ・・ちゅぷちゅぷ!」
「芽理沙ちゃんの舌のザラザラ感が俺のチ〇コを絞りだしてくるぅ !」

 撮るだけだったはずの会場で、精液を搾り取ろうとしている二人の異常な行動。しかし、男性たちは幸いとばかりに群がり、彼女たちを取り囲む様に守り始めたのだ。


 
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「ひどい・・・」

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 夕夏はそうつぶやいた。
 夕夏の目の前に立つおじさんの邪推な笑み。ファンとして訪れていたとおじさんの真意を知った夕夏は、会場内で唯一悲しい表情を浮かべていた。

「そう邪見にするなよ。きみたちだって大好きなキャラを無粋な目で見てるんだろ?自分の好きなキャラになりたいと、憧れを抱きながらもコスプレしている自分をカメラに収められるのが好きで好きでたまらない。それを無粋と言わないでなんという?君たちこそがキャラを汚している最たる人間だよ」
「そんなことありません!私はキャラを尊重しているから手を抜きません。自分の好きなキャラだから汚すようなことを決してしません!だから、最もキャラを汚しているのは――キャラを尊敬している夕菜を汚した、あなたの方じゃないですか!!」

 ニィィっと、口元を釣り上げるオジサン。夕菜がオジサンからもらった首飾りには、人の精神を無意識に支配する『宝石』が使われている。夕夏はその事実を聞かされ、血相を青くしていた。

「今頃、お嬢ちゃんもオナニーを終わる頃だろう。そうしたらその格好のままこの場に来るよう命令してある。『宝石』の不思議な魔力はきっとお嬢ちゃんをそうさせる」
「なんで、そんなことが出来るの・・・?」
「道具を買ったからだよ。――この会場には本当に不思議な魔力を持つ魔道具を売る店もあったってことだよ。ここは表には出回らない掘り出し物、名具も飛び出す即売会だ。ここに来ない理由はない。俺はやっと見つけたんだよ。探し求めていた、魔道具を」

 おじさんが手に入れた魔道具は二つ。『宝石』と『人形』。『宝石』は夕菜に。そして、『人形』は夕夏に、それぞれ起動する手筈は踏ませている。夕夏に触らさせた『人形』は、夕夏そっくりの人形の姿になっていた。自分と同じ格好をした『人形』を見るだけでも夕夏は顔を青ざめる。その不気味な『人形』をおじさんが持っているだけでも、気味が悪いのである。

「そ、その『人形』をどうするつもりですか?」
「きみはもう俺のモノだよ。きみたち姉妹にはこれからもう一つショーをやってもらうよ」
「ショー・・・?なんであなたの言いなりにならないといけないんですか?」
「フフフ・・・」

 疑問を抱く夕夏に侮蔑な笑みを浮かべる。そして、おじさんはゆっくりとその『人形』を弄り始めた。


 
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 半年に一回行われる、世界最大規模の同人誌即売会。
 多くの兵たちがやってきてはそこでしか買えない武器を手に入れていく。会場を盛り上げるために武器だけではなく売り子たちも多くやってくる。
 時間を費やし完成させた防具を羽織り、傷つき弱った体力を癒す役割を果たす彼女たちは、多くの兵たちの目の保養になって楽しませる。
 つまり、コスプレイヤーである。コスプレを楽しむ来栖川夕夏―ゆうか―と夕菜―ゆうな―の仲良し姉妹もまた冬の寒さに負けない防具を装備し、カメラ小僧の被写体となってカメラに収められていた。

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「夕菜ちゃ~ん!」
「夕夏さん!メイド萌えええぇぇ!!」
「こっち向いてくれえぇぇぇ!」
「奇跡の一枚をとってやるぞおおおぉぉ!!」

 二人は何度もコミケに参加していることもあり、多くのファンを確保するようになったのである。自前のドレスを作るのは夕夏にとって時間も実費もかかる大変な作業だが、こうしてファンに囲まれ写真に撮られることは名誉であり、癒しであり、努力が報われる瞬間でもあった。
 やめられなくなっていた。妹の夕菜もドレスを着て一緒に参加してくれているので、恥ずかしさも感じることは少なくなり、今後の意欲も向上させる。
 買うことを楽しむ買い物依存症の人もいれば、撮られることを止められない人もこの会場にはいるということだ。
 そして、モデル小僧の振りをして近づく変態紳士もこの会場には潜んでいるのである。

「ありがとうございました」
「サインください!」
「プレゼント持ってきてるよ。受け取って!」

 二人の時間が終わると同時に駆け寄るファンたち。ファンサービスと供に各々用意していたプレゼントを彼女たちに手渡すのもまた、貴重な時間だ。

「夕菜ちゃんにプレゼントを用意したんだ。はい、これ」
「ありがとうございます!・・・似合うかな?」
「夕夏さん、この『人形』の鼻に触ってもらえます?」
「はい、こうですね」
「・・・ありがとう」

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  二人は一人のおじさんの注文を忙しさのあまりに言われた通り受け取り、実行する。
  二人はおじさんのことを対して気に掛けることもせずに次のファンの応対を受ける。おじさんもまた二人の元を放れていく。
 しかし、おじさんの表情は目的を達成したことに喜びほくそ笑み、会場の中に消えていった。


 
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