純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

タグ:クラスメイト

 まるかの異変に気付いた俺は、片鱗を見せた際に脳裏に浮かんだ人物を呼び出していた。
 彼女は夜も更けた時間だというのに学校に残っていた。そして、逆に俺を待ち侘びていたように月夜の学園の風景を壊さないように静かに対峙していたのだった。

「君だったんだね――倉田さん」

      ラスボス感

 彼女、倉田彩夏は静かに頷いていた。それはまるで、今まで自分がしてきたことを――俺が思っている疑惑をすべて受け入れるかのように落ち着いていた。

「私に『飲み薬』のことを教えてくれたのは本庄さんの方だからね」
「いったい、どういうこと?」

『飲み薬』とは一体なんだということを含めて、倉田さんがまるかに一体何をしたというのだろうか。

「彼女が私の記憶を読みこんだとき、私の方も本庄さんの記憶が流れてきたの。彼女の好きな趣向とか、西永くんのこととか、逆に教えてもらっちゃった♪」
「記憶・・・読む・・・?アハハ・・・倉田さん、なにを・・・」
「それが分かったら後は簡単だったよ。私が本庄さんの本心を強く引き出してあげればいいだけ。愛があるからいじめたくなっちゃうなんて、彼女も可愛いところあるよね?フフフ・・・」

 倉田さんの言っていることの半分も理解できなかった。美貌的な彼女が発するオーラが今やまるかとは別の狂気を与えていた。

「何故だ・・・倉田さんがそんなことをする必要があったのか?本庄さんの気持ちは本庄さんのものだろ?倉田さんが後押ししてメリットがどこにある?」

 まるかの人格を変えたのが倉田さんだとするなら、一体どこに接点があったのか分からない。まるかが彩夏の身体を使ったことに対して怒りを覚えていたとしても、仕返しするには人格を変えてしまうのはやりすぎだったのではないか。まるかが俺を好いてくれていたのも倉田さんによって作られたのだとすれば、素直に喜べるはずがないだろう。

「あれ?本庄さんから教えてもらわなかったかな?」
「えっ?」

 その答えを俺は知っていた。まるかが俺に告白していたことを俺もすっかり忘れていた。

「私、西永君のこと好きだったんだよ?」

 倉田さんの口から俺は告白された。その言葉に俺は頭が真っ白になった。

「俺を・・・本当に・・・」
「でもね、今はダメ。私、誰とも付き合う気がなくなっちゃったから」

 そして、その気持ちはものの十秒で消滅した。告白のキャンセルを喰らって天国から地獄に堕ちる想いだ。そうさせた理由こそ俺は思う意味深の単語だった。倉田さんはもう、別の楽しみを知ってしまったから。

「だって、『飲み薬』があれば色んな人の色んな恋愛を体験することが出来るんだよ?それぞれ物語があって、別々の感動がそこにはあるんだよ。私はこれからそれを体験していくの」
「倉田さん・・・っ!」
「学校の先生になりたい、youtuberにもなりたいし、ケーキ屋さんにもなりたい。お金持ちになって大人買いをやってみたいな・・・!あぁぁ・・・人生がやり直せたらいいのに。そしたら私違う町で生まれて、違う生活を励んで、違う仕事を営んで・・・違う人生を楽しんでいく」

 それが、いま倉田さんの抱く夢だった。他人の幸せを倉田さんも共有したいために『飲み薬』を通じて恋愛を楽しんでいく。VRでも、ADVでもない『飲み薬』で実体験してくるんだという・・・。

「幸せは一つじゃないよ。その時その時に違った幸せがあって、一口に同じで語れるものじゃないと思うの。たとえ世界の人口が私だけになったとしても、私は一人一人別々の幸せを感じると思う」
「・・・倉田さんの言っていることが分からない。それじゃあ、いまの倉田さんは幸せじゃないのか!」
「まっさか!いまの私も幸せだよ。そして、これからも私は幸せになると思う。私はもう二度と失敗なんかしないから」

 失敗しない人生なんかない・・・でも、浮き沈みのない人生がもし本当に可能ならば、それはどんだけ幸せな人生なんだと俺は思う。
 そんな方法を教えてしまったのはまるかであり、俺であり、倉田さんに『飲み薬』を教えてしまったのは――俺なんだ。


「ありがとう、西永君。私はあなたのおかげで幸せになりました」

 
 幸せから漏れる微笑みに、俺は無性に悲しくなった。彼女の笑みとは対象に俺の目からは涙が込み上げていた。

「これからきみは何回人生を繰り返すつもりなんだい?そんなことを楽しむより、自分の人生を謳歌しろよ!・・・なんでだよ、なんで倉田さんはそんな風に笑うんだよ。なんで周りのことばっかり考えるんだよ!俺がこんなことに巻き込まなかったら、こんなくだらないことを真面目に加担しなくて済んだのに。許さないよ、こんなの・・・」

 俺が不幸だったからなのか。まるかが幸せだったからなのか。
 みんながみんな幸せで、平和で明るく楽しく過ごせていたらよかったのに・・・そんな希望を抱いて忙しいを過ごしている日常が当たり前だと思えたら、誰も苦しまなくて済むのに・・・。

「いつだってそうだ。俺を気遣ってくれて自己犠牲してくれて・・・」
「それは違うよ」
「えっ」

 倉田さんは俺に首を振って否定する。倉田さんの決意は誰のものではなく、自分の意志だという強く示していた。

「私はこれから誰よりも幸せになるんだよ。いっぱい多くの人から幸せを知って、世界で一番幸せになるの」

『幸せは一つじゃない』、『一人一人別々の幸せを感じると思う』と言っている通り、倉田さんの欲は深い。その中で一番幸せになるために旅立とうとしている。
 小さな身体を脱して、大きな世界で幸せを模索する。その時間は果たしてどれくらいかかるのだろうか。俺には想像できない膨大な時間をかけてでも、自分が一番幸福者になりたいと自己顕示力を認めてもらいたいという。
 倉田さんはやっぱり普通の女の子だよ。

「今度西永君と再会した時が楽しみだね」

 いつまでも俺は倉田さんが戻ってくるのを待っている。
 倉田さんが無事自分の幸せを見つめることを祈らずにはいられなかった。続きを読む

 その日の放課後・・・
 俺はまたまるか達女子生徒にいじめられていた。復讐してやりたいという気持ちもなく、ペットとして服従を誓ってから俺はまるかに対して諦めという気持ちが強くなっていった。
 俺を助けようとしてくれた倉田さんに『飲み薬』を使って憑依してくるような常識で語れない方法を使ってくるやつだ。
 良心がないやつに説得しても無意味なんだと、俺はまるかという人間に対して何かを抱くという気持ちはすでになかった。これ以上誰かに迷惑がかかるくらいなら、俺が耐えてまるかのやりたい様にさせてやるのが一番いい解決策だと思っていた。
 俺はまるかと違い、心までは自由でありたかった。

「てゆーか、よくこれだけまるかに言われているのに学校来れるよね」
「普通ここは気を利かせて退学するところじゃないの?」
「ほんと、どういう神経してんのかしら?」

 グリグリグリと、ズボンの上から足で踏まれ、玉袋ごと逸物を震わせていた。

「ぐ・・・ぎ、ぎゃああぁぁぁ!!た、玉が潰れるぅぅぅ!!」
「ふんっ。どうせあんたの汚いモノなんて一生使うことないんだからセーフでしょう?」
「ふふ、人間諦めて家畜にでも相手してもらったらどう?」

 好き勝手言いやがって・・・日に日にいじめの強さもあがっていっているせいか、まるかは俺のズボンを下ろして勃起した逸物を取り出していた。
 それを見て狂気的な悲鳴を上げる女子たち。

「うわっ、見てよ。ズボンの上からでも分かるくらい勃起してるんじゃない?マジ、ドM?」

 面白おかしく笑う女子たちに何も出来ない俺。羞恥心と背徳心の精神攻撃を受けてノックアウト寸前だ。男子生徒の性器を公に見せびらかすことをなんとも思わないように躾けたまるかの親を見てみたいものだ。そこまでして俺を貶めて面白いのかよ、こいつらは・・・。
 つうか、こんなことがこれから年単位で続くと思うと本当に億劫だった。


「そーだ。いいこと思いついた。今日はこのままお口で遊んであげるわ!」

      本日のいじめの内容は――

「・・・・・・・・・えっ?」
「・・・・・・・・・はっ?」

 まるかの思いもよらない発言を聞いて、俺と同じく笑っていた女子たちまで同じ素っ頓狂な声をあげていた。
 聞き間違いじゃなかったのように、まるかは舌をだして、誰よりも先に俺の逸物を舌で這いずってみせたのだ。 

「うおッ!」

 思わず腰を引いてしまう俺。しかし、まるかは自ら顔を前に出して逸物から放れないように口を亀頭に吸い付いて見せたのだ。

「ほら。大人しくしなさいよ」
「・・・・・・・・・ッ?!」

 こいつ、なにしてんの?
 俺と同じ疑問を抱きながら、いつしかまるかの行動を見ながら女子たちも言葉を失っていた。

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 床に蹲りながら俺は倉田さんに踏みつけられる。それはまるで、本庄まるか率いるいじめっ子たちと同じ手口だ。

「キャハハハ~~!!」

 倉田さんがまるかと同じような笑みを浮かべながら何度も俺を蹴りつける。痛いという感情と供に、今まで助けてくれていたはずの倉田さんに裏切られた気持ちの方が強くて感情が込み上げてしまう。倉田さんは俺をいじめるような人じゃないのに、現状倉田さんにやられているのだ。
 倉田さんを信じたいと思う自分と、一種の諦めている自分の二人が心の中にいた。
 半場諦めながら倉田さんの猛攻が収まるのをただじっと待ち続ける。せめて彼女と話をするまでは我慢するしかなかった。
 それでも、俺は倉田さんを諦めきれなかった。

「西永のくせに私に指図するなんて生意気なのよ!!」

 調子に乗って軽口を叩く倉田さん。その言葉を俺は聞き逃さなかった。
 その言葉は倉田さんに言った発言じゃない。倉田さんから出てくる言葉じゃない。
 俺が対峙した相手は倉田さんじゃない!

「そ、それって・・・倉田さん、きみは・・・まさか本庄さん!?」

 俺の言葉に倉田さんはピタッと足を止めた。まるで、自分の正体を見破った俺に対して敬意を表するように嘲笑ったのだ。

「そうよ。私は本庄まるかよ。アンタと同じくらい生意気なことを言った女に憑依してやったのよ」

 倉田さん・・・いや、まるかは正体を明かした。姿は倉田さんなのに、その正体がまるかという事実に俺は自分で発言しておきながらあまりに非現実だと思い必死に状況を呑み込もうとしていた。

「憑依だって・・・!?」

 神や仏が依り代に憑くことを憑依というが、本庄まるかというクラスメイトが同じクラスメイトに憑依するほど憑依は身近な存在なのか!?もしまるかがそんな技を取得したとするならまるで神の所業だ。後ずさりどころか平伏したくなる衝動を抑えて俺は彩夏(まるか)と対峙していた。

「それにしても、重い身体ね。特にこの胸。でかけりゃいいってもんじゃないわよ。温室育ちなお嬢様だか何だか知らないけど、本当にムカつく身体つきよね」

 自分の身体じゃない、むしろ嫌いな相手だからか、難癖をつけて倉田さんの胸を揉みし抱いている。まるかの胸がないからって好きに弄っていいものじゃないだろう。倉田さんだって同性も異性も勝手に胸を触られていいもんじゃないはずだ。

「か、返せ!倉田さんの身体だろ!?本庄さんが使っていい理由にならない!」

 憑依だか何だか知らないけど、倉田さんの身体を使っていいのは倉田彩夏だけだ。人権を無視して手荒に扱っていいものじゃ決してない!
 俺は彩夏(まるか)に叫ぶが、彼女は決して耳を傾けようとしなかった。

「どうしようかな~?ねえ、どうしてほしい~?」
「はっ——!?」
「ただで返すわけないでしょう?西永の一番嫌なことしたい。そうすればアンタだって二度と逆らわなくなるでしょう?」

 彩夏(まるか)の口から紡がれる自分勝手な理屈に怒りを覚える。そんな理由のために倉田さんをぞんざいに扱っていい理由になんかならない。

「俺が憎いなら俺に憑依すればいいだろ!?なんで倉田さんなんだよ!?」
「その方が西永が嫌がるかと思ったから。現に嫌がってるでしょう?キャハハ!!」

      人質

 ああ、そうだな。どんな理屈だろうが、理由だろうが、現に俺は彩夏(まるか)の言う通り嫌がっている。倉田さんに憑依されて困っている。手を出しても傷つくのはまるかではなく倉田さんだ。それくらいまるかの術中にはまっている。それはもう、彼女に今後一切勝てないと、反骨精神の根元をぽっきりと折られたような気分だった。
 そうとわかれば、俺はもう彼女に手を出せない。怒らせれば誰かが傷つくくらいなら、今後俺はまるかのペットにでも下僕にでも成り下がろう。
 ごめんなさい・・・俺は彩夏(まるか)に土下座した。

「分かった。俺が悪かった、ごめんなさい!もう二度と逆らわないから倉田さんに身体を返してあげてよ」

 高校生活が今後まるかのペットになろうとも、倉田さんは最後まで俺を助けようとしてくれていた。
 彼女のおかげで俺は救われた。その気持ちがあれば俺は3年間くらい生きていける気がした・・・。

「10万でいいわよ」

 彩夏(まるか)は早速金銭要求を突きつける。
 夢だけ抱いていても生きていけない。資本は行動の源だ。まずは枯渇させていこうというのか、この女‐まるか‐は。

「それはっ・・・!」
「出来ないなら、今すぐ裸になって校内を駆け回っちゃうかな~」
「なに考えてるんだよ!そんなことしたら——!」
「別に私の身体がないもの!やろうと思えば出来ちゃうわよ?いいのかしら?下手したら退学かもしれないわね」

 最後の最後まで倉田さんを人質に取るのか。悪女の風格を見せる彩夏(まるか)に一瞬でも反抗しようとする。でも、少なからず絶対悪は存在するのだ。俺の想像を超える条件を見せつけて優位に立とうとする。倉田さんを人質に取られている以上、俺がまるかの言い分に勝てるはずがないのは明白だった。

「わかった。払うよ。親に借金しても、明日までに用意する。それで許してあげてよ」
「賢明な判断ね。約束だからね」

 彩夏(まるか)と約束をした後、倉田さんはふっと表情を緩めて全身の力が抜けていったのだった。

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「あははっ!」

 教室には本庄‐ほんじょう‐まるかの笑い声が木霊していた。彼女率いる女子生徒たちに壁へと押しこまれた俺、西永圭吾‐にしながけいご‐。既に彼女たちは俺を囲みこみ、男子の弱点である逸物を取り出して、滅茶苦茶に蹴り上げていた。

「いてっ、いてっ、いっっっっっっ!!」

 エロ漫画で見るような生易しい足コキレベルじゃない。まるでサッカーのボールキープのように転がしながら足を擦りつけているかと思えば、ドリブルをするように容赦なく足蹴りを喰らわす。
 女子に逸物の扱いなど分かることもなく、力いっぱいに逸物を蹴りあげるので思わず悲鳴を上げてしまう。その声がさらにまるか達を喜ばせた。

「こういうのがいいんでしょう?これ、足コキって言うんでしょう?」
「いいわけあるか!!足コキと全っっっ然、ちがう!!」
「お金じゃ払えないからって精液で払ってもらえるなんて、他の男子から見たら羨ましく思っちゃうんじゃない?」

      近い・・・

 まるかの黒のパンストに包まれた右足が容赦なく亀頭を擦りつけていた。

「ほーら。いつも通り足で扱いてやるわよ」
「あぐあぁぁ!!」

 今までの女子たちの中で唯一優しく扱っているかのような足コキに思わず唸り声を上げてしまった。その声色の違いを察して女子生徒たちはクスクスと俺を見下していた。
 まるかの足の裏がカウパー液で濡れてくる。それを察しているだろう、まるかはさらに激しく足の裏で竿まで扱きあげて濡れたパンストを逸物に擦りつけていった。
 伝線が痛いのに、どこか気持ちいい。蔑まれた視線を浴びながら、恥ずかしくて死にそうになるのに、本能だけはまるかの足の裏で悦んでいる。
 これはもう俺の感情では止められなかった。

「お願いだから。もう・・・めてっ・・・」
「ん~?まんざらでもないような顔して、説得力ないんだよなぁ~」

 まるかのパンストの裏にある素足の温かさを感じつつ、激しく踏まれる刺激が、あ、ああ・・・・・・!
 俺は思わず喘ぎ声を出してしまった。

「うっ、ああっ・・・うああああぁぁ!!」

 ドピュ、ドピュ、ビュルルルル~~!!!

 まるか達に弄られた俺の逸物は、容赦なく精液を噴き出してしまった。
 それを見て女子たちが歓喜の悲鳴をあげる。皆がドン引きし、その視線が俺に向けられているのを感じて死にたくなった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「相変わらずの早漏ね。それにしても出し過ぎ~」

 汚い、臭いとばかりに即効でストッキングを脱いでみんなに見せつけて女子たちはキャッキャッキャッキャと逃げ惑う。まるか達は俺の精神的にも体力的にもダメージを与えてくる。
 こんなことは初めてでもない。まるか達にいじめの標的にされて以降、時々味わう屈辱だ。
 時々というのは今回以外は暴力で解決するという意味だ。
 俺が金を出せなければ、まるか達は先生たちに気付かれないように暴力と精力を根こそぎ削いでいく。既に俺の恥ずかしい姿は写メで収められているせいで、脅迫材料として俺はまるかの言いなりにされているのであった。

「はぁ・・・こんなの二度と履けないからメルカイにでも出してお金に変えといて。jkってだけでなんでも金になるんだから世の中ラクショーよね!」

 丁寧に袋にいれられてラッピングされる。それはものの数分で売り飛ばされるのであった。まるかにとって金を集める方法はいくらでもあると言わんばかりである。元々金持ちの一人娘でありながら貧乏な俺に金をせびるというのだから腹の虫がおさまらない。なんて世の中不条理なんだ。

「ち、ちくしょう・・・まるかの奴、いつも人のことゴミ扱いしやがって!」

 まるかが俺の愚痴を聞いてピクンと肩を震わせる。
 嫌な予感がすると悪寒を覚えた瞬間、まるかから笑みが消え、俺の顔に足の裏が飛んできたのだった。壁に頭を強打して割れそうだった。

「現にゴミじゃない!キャハハハ~~!!」

 ストレスを発散したまるか達が俺の元から放れていった。そして、そのまま教室へ出て行ってしまった。
 むくりと体を起こした後も頭の裏が痛い。
 これはたんこぶが出来ているに違いない。頭を撫で、蹴られた鼻を擦りながら血が出ていないか確認した。

「いっててて・・・あのヤロー・・・」

 強がりなことを言いながらも声は泣き声だった。目には涙が滲んでいて、正直まるかに対して悔しさを覚えていた。
 しかし、俺なんかがまるかに勝てるわけもなく、ただこの怒りをうちに収めるしかない。
 自分の力ではどうしようもないこともある。下手に騒げば俺が悪人扱いになってさらに状況は悪化するように仕向けられるのが関の山だ。
 ただただ、俺はため息を吐くしかなかった。
 そんな俺の元へ——教室に帰ってきた一人のクラスメイトがやってきた。

「どうしたの、その傷っ!誰かにいじめられたの?」
「倉田さん・・・」

 倉田彩夏‐くらたあやな‐は俺を見ると自分のハンカチを取り出した。
 俺に関わろうとしているのだろうか。でも、倉田さんにも迷惑がかかると思って俺は弱音を言えなかった。

「べつになんでもないよ。ちょっと転んだだけで」
「転んだだけでこんなになるわけないでしょう!いいからじっとしてて」

 俺の言い分を聞かず、強引に倉田さんは自分のハンカチを取り出して俺の鼻を拭いてきた。そして、「大丈夫?他にどこか痛くない?」と、優しい言葉をかけてくるのだった。
 やめてくれよ、そんなに優しくされたら泣いてしまいそうだ。

「一緒に保健室いこう。私も付いていってあげるから」

      泣いちゃう!!

 ズボンを拭きながら肩を貸して俺の手を回して立ち上がると、ゆっくり俺の足に合わせて保健室へと向かっていく。
 クラスメイトで特に俺と倉田さんは何の接点もない。会話なんかしたこともなかった。
 むしろ、倉田さんは他の男子にも人気のある女子生徒だ。美人で可愛い、彼女と付き合えたら誰もが『俺の彼女は世界一ぃ!!』と自慢するレベルだ。
 つまり俺が何を言いたいかと言えば、俺なんかと比べ物にならない人物だということだ。
 美女と野獣。提灯に釣鐘。猫に小判。月とすっぽん。
 だから、こうして彼女が俺に付いて保健室へきてくれることが俺には嬉しかった。

「(捨てる神がいれば拾う神もいるな)」
「どうしたの?急に笑って?」
「ううん。なんでもない」

 同じ教室に天使と悪魔がいるかのようだ。
 クラスメイトでありながらどうして対極的な態度を取る生徒がいるのだろう。
 クラスメイト全員が倉田さんみたいな天使のような性格で満たされれば、いじめなんて無くなるに違いないのに・・・・・・。

「・・・・・・・・・」

 俺が顔をあげると、目の前にはトイレから帰ってきたまるか達とすれ違ったところだった。俺の顔を見てまるかが苦虫を噛み潰したような顔を見せていた。

「どうしたの?まるか?」
「ううん。なんでもない」
「そう?」

 他の子にはばれていないだろうけど、間違いなく彼女は俺を見て不快な表情をしていたよな。
 ヤバい。なにがヤバいか分からないけど、とにかく嫌な予感がする。
 先程以上に危機感が背中を駆け巡っていた。ひしひしと感じる警告音に焦りながらも、隣には倉田さんの柔らかい笑みがすぐ傍にある。それだけで俺は生きていけそうだ。

「もう少しで保健室だから。頑張ってね」
「(は~!倉田さんって本当にいい子だな~。マジ天使。この学園で俺に優しくしてくれるのは彼女だけだ。彼女がいてくれればそれでいい・・・)」

 倉田さんの声を聞いていると心の底から甘えたいと思ってしまう。俺は警告音を無視して倉田さんと供に保健室へと向かっていった。

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 これでいいのだろうか——
 俺と陽菜は付き合ってるわけでもない。"入れ替わり"を共有する関係なだけで、陽菜が俺を何の基準で選んだのかも正直わかっていない。
 性格も似たもの同士な気もしたけど、だから好きというには勘違い甚だしい。
 性癖も似たもの同士な気もしたけど、だから好きと結びつけるには差し出がましい。
 その答えは陽菜にしかわからないし、陽菜が俺とセックスを望んでいるのなら、それに便乗していいのかもしれない。おこぼれを頂戴する生き方だっていいじゃないか。

      どっちが受け?どっちが責め?

「で、この後でどうしたらいいんだ・・・?」

 ホテルの中に入って衣服を脱ぎ始める俺たちだけど、その後はどうしたらいいのだろうか?
 やっぱりここは男である陽菜(俺)が責めるべきかもしれない。しかし、俺は童貞だ。宏(陽菜)を喜ばす術を知っているわけではないし、テクニックだってうまいのかどうかわからない。
 幸いなことに"入れ替わって"いる相手だし、自分の身体を弄るわけだから、一人慰めている時のように手コキをやればいいのだろう・・・。でも、そうなったら陽菜(俺)は自分のち〇こをフェラチオしないといけないだろうか。

「(他の男性のを舐めるより全然いいけど、自分のアレってどんな味がするんだろう・・・)」

 女性がフェラチオしている時の心境がわかる。

「(・・・怖くないか・・・?)」
「自分のカラダの気持ちいいところは全部わかってるから。河原君はベッドで横になってていいよ」
「あっ、はい」

 宏(陽菜)にそう言われると、本当に自分が女の子になってしまうみたいに頼ってしまう。言われたままにベッドに横になって宏(陽菜)の好きなように身体を差し出していく。

「んああぁっ!」

 宏(陽菜)が乳房を口に咥えて乳首を舌で愛撫する。下から持ち上げるように乳肉を集めると、それなりに陽菜(俺)の乳房はボリュームがあり、宏(陽菜)がチューチュー音を出して吸い始めると、柔らかな乳肉が鋭い円錐を形作りながら激しい刺激を押し上げてくる。

「うあっ、あっ、あっ、あはっ、あぁぁ・・・」

 おっぱいを宏(陽菜)に弄られれば弄られるほど先っぽが膨れてきていた。それなのに不思議だ・・・お互い自分のカラダが相手なのに、陽菜(俺)は宏‐じぶん‐自身に犯されているのに、まったく抵抗感はなかった。
 宏(陽菜)の言う通り、的確に感じる場所を責めてくるせいか、すごく濡れ易くなっていて、カラダが火照ってたまらなかった。宏(陽菜)の愛撫一つ一つが愛おしく感じてしまい、全身が蕩けてしまいそうだった。

「ここ気持ちいいでしょ?」
「ふあ!あっ、ああ・・・キモチイイよ・・・」

 宏(陽菜)の指でおま〇こを弄られると、あっという間にクチュクチュとイヤらしい音を響かせていた。そのままクンニされ舌を差し入れられる。宏(陽菜)に舐められるとどんどんお汁が溢れてきた。
  宏(陽菜)のペースで濡らしているけれど、陽菜(俺)だって陽菜を感じさせてやりたい。そう思ったら陽菜(俺)は宏(陽菜)の逸物をつかんでいた。勃起した逸物は既に熱くなっていた。

「お・・・俺も・・・外西さんを感じさせたい・・・・・・ちゅむ・・・ちゅぱちゅぱ・・・」
「あ・・・!うう・・・ッ!」

 陽菜(俺)がフェラチオを始めると、宏(陽菜)の口から苦しそうなうめき声を荒げた。

「ちゅっ、ちゅくっ・・・レロレロ・・・ちゅぶぶぶぅ・・・ちゅぱ」
「~~~~ッ!!」

 亀頭を舌で絡みつきながら、カリ首を刺激するように顔を上下に動かして逸物を飲み込んだり吐き出したりしてやると、ビクンビクンと宏(陽菜)が激しく身体を身震いさせていた。あの、取っつき難かった陽菜がこんなに感じているんだから、フェラチオって相当気持ちいいんだな。

「んっく・・・ふ・・・んっぷ・・・んんぅ・・・!」

 うわっ、先端から先走り汁が出てきた。ちょっと、苦い・・・それに、なんとも言えない、変な味がする。これを毎回女の子は飲むのか・・・。
 興奮すればするほど溢れてくる先走り汁。そして勃起してくる逸物が準備を整えたことを告げていた。これが女の子に出たり入ったりするんだと思うと、興奮が最高潮に達していた。

「んああ・・・ッ!」

 そんなことを考えながらフェラチオをやっていたら、宏(陽菜)も負けじにクンニを続けていた。シックスナインでお互いの性器を舐め合う俺たち。似たもの同士が相手を気持ちよくさせようと同じことをやりあっているのって、滑稽だけど・・・陽菜がなんだかすごく可愛く見えた。

「お互い十分濡れたみたいだし、そろそろ挿入れてみていい?」
「あ、うん・・・」

 宏(陽菜)の言葉で体制を変え、ベッドに沈んで正常位で受け入れようとする。そういえば、いつの間にか自然に陽菜と話をしているけど、これって・・・本当にあの外西さんだよな?
 なんだかすごく頼もしく見えた・・・。

「ふふ、なんだかおかしいね。お互い好きでも何でもないのに。エッチってこんなに気持ちいいのね」
「・・・・・・うん。そうだね・・・」

 一瞬くぎを刺された気がした。
 俺たちはただクラスメイトで、彼女でも彼氏でもない。陽菜は俺のこと・・・好きでも何でもないだろう。俺だって・・・別に好きじゃないはずなのに・・・。なんだろう。この気持ちは・・・。

「ん˝ん˝・・・!いった!」

 オナニーの時も思ったけど、陽菜の膣内はとても狭かった。そこに宏の逸物が入ったら傷ついてしまうのがわかるようなものだ。痛みを如何に軽減するか、そのためにお互い濡らしてきたんだ。

 ズ・・・ズブズブッ・・・ズブブッ

 少しずつ愛液を潤滑油のようにして逸物を呑み込んでいく。カラダの奥から逸物を咥えこんでいるという感覚があって、入ってくるたびに気持ちよさを少しずつ覚えていった。

「ゆっくり動くね」
「あっ・・・んっ・・・んあっ・・・うんっ・・・」

  宏(陽菜)の腰が動き始め、陽菜(俺)の膣内を抉っていく。膣肉を削り、まっすぐ子宮口まで届いてくる逸物が出たり入ったりしてくる度に声にならない快感が全身を駆け巡っていた。カラダが熱を帯び、蕩けてしまいそう。宏(陽菜)のように陽菜(俺)も全身がビクンビクンと小刻みに震えて止まらなかった。

      蕩れー

「ん˝あ˝あ˝!挿入ってくる・・・!ぜんぶ・・・ッ!!あっ!外西さ——!!」

 宏(陽菜)のピストン運動で膣肉がほぐされ、子宮口に鬼頭が擦りつけられる。膣の奥でビリビリする刺激が気持ちよくて、また欲しくて疼きが絶えず激しく生み出されていた。

「ん˝・・・ん˝ん˝!!!」

 いつの間にか逸物は陽菜(俺)の中に全部咥えこむほどに侵入し、腰がぶつかり空気が破裂する音が響いていた。

「んはああ!!はぁ、ぜ・・・ぜんぶ・・・ッ!挿入ってる!!はぁ・・・!外西さんのッ!ん˝ん˝ぅ˝!!」

 宏(陽菜)も息を絶え絶えに吐き出しながら、必死に腰を動かし続けていた。宏(陽菜)も快感に我慢ができなくなり、より激しく腰を振り続けていた。

「あ・・・あ・・・もう、ダメぇ・・・外西さん・・・!」

 陽菜(俺)が涙を流しながら快感をその身に受ける。小さな絶頂が身体を襲い、濡れてくる度に逸物を締め付けていく。
 キモチイイという気持ち以外、俺たちにはなかった。

「う・・・あ・・・!!イッ・・・クぅッ!!」
「あ・・・!まっ・・・!なかに・・・でちゃ・・・ッ!!」

 宏(陽菜)のカラダが震え、嗚咽が聞こえた。急いで抜かなくちゃいけないと思っても、カラダはココロに反するように身動きできず、宏(陽菜)の射精感を受け入れるしかなかった。
 そして——、

 ドビュ、ドビュ、ジュブブブブ!!!ビュッ!ビュルルル~~~!!

「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝——————♡♡♡」

 ——大量の精液を受け入れた瞬間、カラダが抑えきれなくなって絶頂に達してしまった。
 声を喘ぎ、涙を浮かべてカラダが喜んでいく。快感で満たされる想いに浸っていた。
 ヌプリッ、と逸物を抜いた瞬間、溢れんばかりの混合液がベッドシーツを濡らしていた。これだけ精液を受け入れられる陽菜の膣内は本当に広いのだろう。

「はぁ、はぁ、はー・・・」

 セックスって体力使うもんだな。体力がない陽菜(俺)だったら果たして宏(陽菜)を満足させてやれたかどうかわからない。女々しい話だが、"入れ替わって"よかったと思ってしまった。
 と、突然宏(陽菜)がクスクスと小さく肩を揺らして笑っていた。セックスをした事実と、自分自身を犯した痕跡が流れる部分を見つめて笑う宏(陽菜)に一瞬ドキッとしてしまった。

「え・・・?なに?」
「ううん。ちょっと・・・血が付いてるの」

 陽菜(俺)の秘部から流れる赤い血栓に気づいたのだ。陽菜にとって大事な処女膜を破られたという感覚を味わうことができなかったことを悲観的には思っていないようだ。

「自分で処女膜破っちゃったんだなって。セックスで血が出るとは思ってなかったの」

 そう言って、宏(陽菜)はしばらく面白そうに笑っていた。陽菜がこんなに笑う場面を俺は見たことがなかった。彼女も笑うんだなって、その顔を見てみたくて——俺は変わりに陽菜の表情で同じように笑った。

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 成績優秀、品行方正。それが外西陽菜に対する先生や友達、世間の評価だった。
 俺だってそう思っていた。そう思われていることが誇らしいと思っていた。
 でも、皆は知らない。陽菜の本音を・・・。

 彼女の携帯からSNSを開いてアカウントをのぞいてみると、そこには学園に対する不満や苛立ちが書き綴られていた。本当の彼女がそこにいた。綺麗な言葉でなんか書かれていない、本音をぶちまけていた。
 それだけではなく——、

"ザーメン直接見てみたいな。見せてくれる人リプ待ってまぁーす(`・ω・´)"
"汚れたいな。どなたかザーメンかけてもらえませんか(♡ >ω< ♡)"
"私、本当に汚されちゃうよぉ♥もっと、私を汚してっ♥ぐちゃぐちゃに汚していいよ♥"

 エロい無修正自撮り写真をアップしていたり、援助交際を誘っているかのようなつぶやきまで書き残していた。
 普段の姿では想像もできない、彼女の行動が見ることが出来た。果たして、世の男性は彼女を知っていたのだろうか。それなりにイイね(・∀・)が貰えているから、陽菜のSNSの更新を待っている者もいたに違いない。
 誰も気づいていなかった。誰も気づいてやれなかった。
 陽菜の覚える物足りなさ。学園生活を充実していない分だけ、なにかで満たされたいという想いをSNSに託してしまっていた事実を。その方向が間違っているのだとしたら断じて違う。陽菜はSNSで救いを求めていたのであり、学園生活でのストレスこそが陽菜の心を歪めてしまった根幹にあるのだから。つまり、陽菜を救ってやれなかった学園にいる教師、友達、生徒——宏(俺)も悪なのだ。
 先生に声をかけてくれたら満たされたかもしれない。友達に相談してくれたら本当に笑える日が来たかもしれない。誰でもいいから話をしてあげたらSNSに卑猥な画像を残さなかったかもしれない。
 でも、その結果最後に陽菜が頼ったのが宏(俺)との"入れ替わり"だったのかもしれない。
 男性に救いを求めていたのかもしれない。

"あーあ。男の子のように強くなりたいな♥そうしたら私、自分を好きになれたのに♥"

 そんなお願いを聞いてくれる人を待っているのだとしたら——

"
『この身体いつまで入れ替わってるの?』


 俺はてっきり一日だけの効果かと思っているけど、それは本当だろうか。『粉薬』の小瓶を全部使って”入れ替わった”効果の継続は果たして一日だけで済むのだろうか。

『いつまでだろうね?』
『おい。マジか』

 購入した宏(陽菜)がそんな曖昧な返事で大丈夫なのだろうか。もう”入れ替わり”は始まっているんだ。後戻りは出来ないんだぞ。急に元の身体に戻れるか心配で仕方なくなってきた。

『よくわかんないけど・・・いつまでだって私は全然かまわないよ』

 宏(陽菜)はのほほんとそんなことを言っていた。
 こいつはとんだお嬢様だ。
 もしおれがこのまま陽菜のままになったとしたら――果たして俺は、嬉しいだろうか。
"

 そういえば、あの時、宏(陽菜)は笑っていたよな。
 よっぽど嬉しかったのかもしれないな。

「あんな顔見せられたら、仕方ないよな・・・」

 不思議と陽菜(俺)は今の陽菜の状況を受け入れつつあった。
 宏(陽菜)は戻ってくるだろうかという不安よりと、このまま宏として陽菜が逃げられるのなら、それでもいいとさえ思い始めていた。一度は俺だって陽菜のカラダのままになったとしたら喜んだことは事実だ。
 新体操部の厳しい指導にもとの新体操部は辞めてしまうかもしれないが、陽菜の人生がこれ以上壊れるくらいなら、それでもいいとさえ思う。自分のカラダに戻れなくても、俺は陽菜として生きる覚悟を受け入れつつあった。

「ハァ・・・ハァ・・・ぜぇ・・・ハァ・・・」

 そうは言っても、本当に部活は辛くて死にそうだった。息を切らしてようやく初日を終わらせた陽菜(俺)は、部員の誰よりも最後まで起き上がることができなかった。身体から汗は拭きだし、目には涙をにじませて吐き気を飲み込むのが精いっぱいだった。
 部員たちは部長の練習量を案じて、声をかけることもせずに先に帰ってしまった。確かにいま声をかけられても言葉を返せる自信はなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・ぐっ」

 陽菜も同じくらい苦しんでいたのだろうか。男性(俺)でも逃げ出したいと思っているのに、女性(陽菜)だったら逃げ出す気持ちが良くわかる。
 生き方なんて一つじゃない。部活に生きなくたって、勉強に生きなくたって、なんとか生きていけるものだ。そんななあなあの人生だって有りじゃないだろうか。どうして大人は極端に一つを特化させる生き方を好むのだろう。大人の都合で子どもの人生決めんなよな・・・。

「・・・・・・・・・」

 一人転がっている陽菜(俺)の顔に影が落ちる。突然、何かが俺と天井に吊らされた水銀灯の明かりを遮ったのだ。
 鴨が葱を背負っている特大のぬいぐるみだった。河原宏(陽菜)が陽菜(俺)を見下ろしていたのだった。

「なに私の顔で泣いてるのよ?」

 淡々とした彼女の口調は俺の声色になったとしても変わっていなかった。宏(陽菜)の顔を見た瞬間、陽菜(俺)は胸の中が締め付けられる思いがした。

「これは目汗だ。泣いてない」
「私の代わりに部活出てくれたんでしょう?ありがとう。おかげで私は放課後ゆっくり過ごすことが出来たわ」

 宏は帰宅部だったし、基本一人で放課後自由にしていた。その立場で宏(陽菜)は遊びにいってリフレッシュできたらしい。

「温泉に入ったのなんて久しぶりよ。1800円かかっちゃったけど」

 結構いい温泉行ってますよね、健康〇ンド的な場所だよね?その金額はどこの財布から出てきたんですかね?

「ゲーセンなんて何年ぶりに入ったかしら」

 その後にも行ったのかよ。俺よりも充実した放課後を過ごしているな。そして、強調するように揺らすぬいぐるみである。戦利品というべきものだろう。

「8000円使っちゃった」
「ゴフッ!?」

 思わず咳込んでしまった。なにそのブルジョアなぬいぐるみ!俺ですら買ったことねえ!?一桁間違ってたって、言ってくれよ。たかっ!?高すぎるよ、その投資は!?

「・・・1000円で取れなかったら諦めてくれよ。俺の諭吉がお亡くなりになったよね・・・?」
「向こうが悪いのよ。設定が設定なのよ」
「8000円使ったら設定以外にセンスも関係するだろ。いい加減にしろよ、完全にカモじゃないか」
「私がいくら色仕掛けでお願いしても店員さんイヤな顔してた。絶対わざとよ」
「俺のカラダで店員さんに何てことしてくれたんだ。もうゲーセン行けねえよ・・・」
「あら?目汗をかいてるわよ?」
「これは涙だぁぁ!うわあぁぁぁん!俺の憩いの場だったのにぃぃぃ!!」

 泣いている陽菜(俺)を見ながらサディスティックに微笑む宏(陽菜)。前言撤回。俺のカラダ返してくれよ。もし"入れ替わり"が戻った時に金銭面で生きていけなくなる!?

「ありがとう、河原くん」

 そんな、陽菜(俺)の心を察して宏(陽菜)が感謝の言葉を投げていた。
 一瞬だけ、感情が止まった。

「本当だったら私、もうあの体育館に戻らないつもりだったの。でも、今日久しぶりに思い切り遊んで吹っ切れたわ。私、もう少し部活を頑張ってみる」

 宏(陽菜)の言葉から聞く心境の変化。そして、これからのこと——陽菜の生き方について一つの答えを出したのだ。

「それって・・・・・・」

 部活に戻ると宣言することは、陽菜にとって不本意な生き方を自ら選んだということだ。やりたくないことを我慢して、優等生を演じ続ける道を選ぶということ。
 もっと楽しい生き方があるかもしれないし、もっとやりたいことが見つかるかもしれない。
 それでも、陽菜は——

「河原くんの言おうとしていることはわかるわ。それでも私、新体操が好きなのよ。身体を動かして、演技をばっちり決めて、観客に拍手を貰っている自分が大好き」

 俺が見た外西陽菜の演技をもう一度脳裏に思い出す。大会で感動していたのは、俺だけではきっとない。観客の中で陽菜を応援する人たちがきっと大勢いたはずだ。だから陽菜は新体操部を続けられた——

「あと一年の辛抱よ。高校に行ったら新たな環境でもっとレベルの高い部活動が出来るはず。先輩のように夢が終わったわけじゃないもの、顧問が嫌だからっていう理由で自ら夢を蹴るなんてそれこそ馬鹿らしいでしょう?」

 確かに、そんな理由で夢を諦めるなんてもったいない。

「いえ、蹴ろうとしてたから馬鹿かもしれないけど・・・」
「いいの?外西さん。本当に辛いと思うよ。みんな辞めていくと思うよ?」
「辞めていきたいなら辞めればいいわ」

 なんともドライな意見だな。

「でも、私も同じ気持ちになったことは確かよ。部長(私)の言葉で考えを変えて引き留めてくれるのなら、応援し続けたい」

 部員の辛さもわかる陽菜。痛みを知って、他人の気持ちがわかるようになったのだから。
 立場が違えど、新体操が好きな気持ちが変わらない限り、部員一人ひとりの夢も終わらない——。

「俺も、同じくそう思うよ」

 ——そう、思わずにはいられなかった。

「その時は、また河原くんに『粉薬』使ってもいいかな?私が河原くんにしてもらったみたいに」

 辛くて困っている人を助ける道具になるのなら、入れ替わってみて自分を見つめ直すのもいいかもしれない。

「そうだね。そうだといいね」

 "入れ替わり"なんて——そんな非現実的なオカルト話に盛り上がる陽菜(俺)と宏(陽菜)は、間違いなく笑っていたのだった。
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 放課後になり、部室に部員たちがやってきた。陽菜(俺)はその中にうまく交じってレオタード姿に着替え始めたのだ。

「おおっ。うわぁ・・・」

 陽菜のレオタード姿は刺激の連続だった。体にぴったりと張り付くレオタードの締め付けは、着るだけでカラダを引き締めているみたいだ。
 衣装で心が突き動かされるということは普通にあり得る話だ。まるでレオタードを着た瞬間、人に見られるという意識がおもむろに働き、見た目を気にするようになっていた。
 レオタード姿というのは身体のラインを隠せない衣装だ。自分の容姿に自信がなければ着ることすら躊躇ってしまう。新体操部だからレオタードを着るのではない。レオタードを着るから新体操部になれるのだ。
 外西陽菜も決してレオタードを着ることに躊躇いがないわけではない。恥ずかしいという思いを持ち合わせながらも、羞恥心に勝る絶対の自信を持っているからこそ、この衣装を着られるのだということが分かった。

「外西さんってレオタード姿恥ずかしくないの?」

 こんなことを本人に尋ねるのも億劫だ。陽菜(俺)は自らレオタードを穿いた感想がその答えでいいと思った。
 でも、陽菜にとってはレオタードは着なれたものかもしれないが、俺にとって初体験の試着はまだ恥ずかしさを覚えていた。つまり――

「(まずい・・・また濡れてきちゃった・・・)」

      こいつは相当のへ――

 陽菜の食い込み部分を直しながらも、レオタード姿に包まれたカラダの奥にわずかながら疼きを覚えてしまっている。ニップルやカップはちゃんと付けているんだけどな。

「なにもたもたしてんのよ?早く練習行こうよ」

 部員たちに言われて慌てて陽菜(俺)も体育館へ向かっていく。
 新体操部で部長としてこれから俺は部活をするんだ。果たして外西陽菜として成りすませるかなんてわからない。
 先ほどまではいつ"入れ替わり"が元に戻ってもいいように、先に陽菜のカラダでオナニーしてしまったけど、いまは"入れ替わり"が元に戻ってほしいと思っている。だけどそれは虫が良すぎるよな。
 だったら俺はせめて部活だけでも、この学校にいる限りは外西陽菜として成りすまして生活することを決めていた。
 外西陽菜に成りきる覚悟はできていた。帰宅部の俺が果たして新体操なんか出来るかわからないけど、体験入部の気持ちで一日部活を励んでみたいと思った。

「それじゃあ、よーい、はじめ!」

 部活が始まって、まず部員全員で始めたのは、なんと鬼ごっこだった。
 それが何の意味があるのかわからないけど、レオタード姿の格好で部員達全員で鬼である生徒から逃げるように駆け回っていた。
 走り込みと臨機応変な対応、柔軟な逃げ等が果たして培われるのだろうか――そんな思惑を予想しながら陽菜(俺)は部員に混ざって鬼から逃げていたが――。

「タッチ」
「ひゃあぁ!?」

 おふっ。捕まってしまいました。
 ていうか、いつ鬼が増えたのか気づいていなかった。後ろから逃げていたのに前に立ち塞がっているなんて卑怯だよ。しかも・・・さりげなく胸を触ったし!

「次は陽菜の番ね」
「もぅ・・・」

 ああもう・・・。
 変なところ触るから、さっき弄っていた場所が熱くなるだろう。
 ちっとも鎮まらないよ。
 すぐ我慢できなくなってしまう。こんな中で演技をするとか、新体操部ってどうなってんの?自分のカラダを意識しないのかな?
 でも、どんなに走っても陽菜は体力があるのか全然息切れしなかった。俺よりも運動量を把握しているせいか、ペースを守ればそれほど鬼ごっこも疲れるようなものではなかった。足がつったなんてこともないだろうし、運動ってやればやるほど楽しくなるという理由がわかる気がした。カラダを動かしていれば、それだけ身体が運動に対して慣れていくのだ。そうなれば楽しくないはずがない。疲労が後に残らない身体になれば、やっぱりカラダを動かすことは気持ちがいいと思ってしまった。
 そんな、部員たちと楽しく部活を遊んでいると――

「なにやってるんだ、おまえ達!!」

 突然、体育館に響く怒声が木霊した。扉の前に目を向けると、顧問の赤木敬‐あかぎけい‐がやってきたのだった。

      この顔は女子生徒に人気ない

「今すぐここに並べ!」

 新体操部を呼ぶ先生の一声が行き届くと、部員たちはぞろぞろと先生のもとへと集まっていった。体育館の壁を背にして一列に並ぶ部員たちは、赤木先生の気迫にすでに頭を項垂れていた。続きを読む

 外西陽菜とカラダを入れ替えている俺だけど――女子トイレの鏡に映る陽菜の顔を見ながら思う。

「俺・・・本当に外西さんになってるのか・・・」

      実感が湧いてきて

 "入れ替わっ"た経緯までが早すぎて実感しなかったけど、外西陽菜をこんな近くで見たのはじめてだよな。
 クラスメイトだったけど、そこまで話す間柄じゃなかったし、意識することもないような人物だった。
 本当に俺が陽菜を意識したのは、県大会で陽菜が華々しい演技をしていた時だし。
 なんで陽菜は俺を"入れ替わ"る相手として選んだのだろう?こういってはなんだけど、表面は恥ずかしくない性格を努めていたはずだ。
 勉強も並、雰囲気イケメンで、クラスでは爽やかな印象を持たれることが多い。華々しいことは何一つない地味な印象だけど、悪い印象は持たれないから評価は良いほうだ。
 そういう意味では俺と陽菜は似ているのかもしれない。ものすごく俺にひいきが働いている評価だけど。陽菜からすれば俺と比べられるのは嫌だろうけどな。

「・・・・・・・・・」

 俺の繕う表情に陽菜が寄せてくる。俺の思い通りに陽菜の表情がコロコロ変わっている。それだけで緊張してくるな。俺が陽菜を操っているみたいだ。今まで自分の表情を変えることをこれだけ意識したことなんてあっただろうか。他人の身体、異性の身体――外西陽菜のカラダをこれ以上ないほど意識していることへの裏返しなんだろうな。
 もちろん、顔だけを意識しているわけじゃない。陽菜(俺)の視線は制服の上から陽菜の身体を見下ろしていた。
 正直に言おう。陽菜のおっぱいを感じるのだ。
 屋上でも思ったように、制服の上から胸を触りたい衝動は消えていない。今度はトイレに籠ってしまえば、個室の中で陽菜の身体を触り放題することができるだろう。

「(うはっ、それなんてエロゲ?)」

 でも――。

「あれ?陽菜いるじゃん。授業始まるよ?」
「あっ。うん」

 ふいに隣に立って手を洗うクラスメイト。決して"入れ替わって"いることがばれているわけじゃないが、下手なことして正体がばれることを今のうちから危惧していた。思ったほど俺自身大胆な行動をとることができなかったのだ。
 ここで焦って陽菜のカラダを障るわけにはいかないよな。誰が見てるかわからないし、結局いつ元の姿に戻ってしまうのかわからないしな。
 トイレで別れた宏(陽菜)は先に教室に戻っているだろうか。クラスに交じって"入れ替わって"いる境遇の中で立ち向かいながら正体を隠しているのだろうか・・・。

「・・・・・・ごめん、外西さん・・・」

 悪いと思いながら俺は教室にはいけないな。クラスに交じって授業を受ける度胸もない。俺のほうから正体がばれて宏(陽菜)に迷惑をかけるわけにもいかなかった。一人になれる場所に身を隠したかった。小心者の俺が気持ちを大きくできるようになってからじゃないと、皆の前に出ていくことができなかった。自分を陽菜だと思わないとやっぱり抵抗がものすごい。
 男性‐おれ‐がスカート穿いているって友達にばれたら失笑モンだからな。

 つまり、必然的に――計画的に俺は陽菜の身体を触ろうとしているのだ。

 今までのは全部言い訳だ。自分の都合で授業をサボって、いつ続くかわからない陽菜との"入れ替わり"現象が解ける前に気が済むまで障っておきたいというだけだ。
 携帯を使って撮影でもしておくかな。でも、俺のスマホは向こうが持ってるし。もし俺が送った写真を宏(陽菜)に見られたら最悪だしな。
 スマホじゃなくて、カメラ買うか。ポラロイドカメラ安いやつで売ってないかな。
 ヨド〇シじゃなくて、ド〇キとかなら玩具でも高性能で売ってないかな。併せてコスプレ衣装でも買ってこようかな・・・なんて。

「ん、そもそも陽菜ってレオタード持ってたよな。コスプレ衣装買わなくても十分映える衣装持ってるじゃん。安っぽいコスプレ衣装より全然いいしな」

 陽菜は新体操部。レオタードも持ってきているだろう。新体操部の道具一式も全部用意されているだろう。それ以外に必要なものが果たしてあるだろうか。あったら買い物にいっていいかな。金使っていいかな?俺の金じゃないんだよな。減ったりしたら強盗扱いされないかな。

「金、金言うんじゃねえよ」

 思わず一人ツッコミが入ってしまう。くそ。こんなこと考えている間にも刻一刻と時間は過ぎていくわけだし。この幸運は終わりを迎えてしまうかもしれない。
 いま、最も優先しなけれればいけないことは、時間の節約じゃないだろうか。

「ん・・・待てよ・・・」

 俺はいま外西陽菜なんだ。どうどうと新体操部の部室に行けばよくないか?そうすればカメラもレオタードも置いてあるはずだよな。あわせてまだ放課後まで一時間あるし、部員がサボっていない限り誰も部室にいるはずがないんだよな。
 教室に戻る生徒たちの波に逆らって、陽菜(俺)は新体操部の部室へと向かっていった。
 新体操部の部室は体育館の中にある。他にもバスケ部やハンドボール部、バレー部、剣道部、柔道部もあるほど大きな体育館だ。
 その中で新体操部の部室は一階の並ぶ部室の手前から五番目。問題は鍵はどこにあるかと考えたけど、部長の陽菜のポケットに普通に入っていたのだった。
 至れることはできなかった未開の聖域。女子新体操部の更衣室!
 陽菜(俺)はドアノブを回し、軽く押すとゆっくりと扉は開いていった。続きを読む

      新体操部part2

 インターハイをかけた県大会。暇つぶしに新体操部を見にいったのがまずかったのか、
 それともクラスメイトの彼女の演技に魅了されたのが運命なのか・・・
 拍手を送る観客の中で呆然としている俺を、彼女は確かに見つけていた。

 外西陽菜‐とにしひな‐は一年先輩の檜森真宵‐ひもりまよい‐と肩を並べる新体操部だった。真宵の代から引き継ぎ部長となった陽菜は、一か月後に俺、河原宏‐かわらひろし‐に声をかけたのである。
 クラスメイトでありながら一切関わりのなかった。話すらまともにしたことのなかった陽菜に誘われて向かった先は、誰もいない屋上だった。
 涼しい風が吹き抜けていく屋上に出る陽菜と、その後に続く俺。いったいこの時期になんの用なのか分からなかったし、何故唐突に俺を選んだのかも分からなかった。

「・・・ねえ、河原くんて女の子の身体に興味ある?」

 陽菜が俺に初めて喋った言葉はこれである。唐突過ぎて脳が彼女の言葉を読み込んでくれなかった。

「え・・・え・・・?何を言い出すんだよ、突然」

 女の子の身体に興味あるだって?
 ”憑依”とか、”入れ替わり”とか、TS‐トランスセクシャル‐とか、そういう話をまさか、彼女が知っているのだろうか。
 そのことに驚きだった。
 ここは素直に応えるべきだろうか?
 それとも、はぐらかすべきだろうか?
 選択肢によっては俺の人生を大きく左右する返答になるだろう。
 そう彼女が言ってきたってことは、陽菜‐おんなのこ‐の身体に興味を示してたほうが喜んでくれるのではないだろうか。
 ここで逆にNOなんて言ったら、話はそこで終わってしまう気がするし。
 誰もいないところに連れて来たってことは、誰にも言えない答えを待っているってことでもあるし。
 秘密を共有したいという彼女の意志の表現を密かに暗示しているってことではないだろうか。
 ストーカー的な発想か?違う、相手の真意を掴むため、心の奥深くまで放さないようにするための常套手段。
 逃がしてたまるか、このビックウェーヴ!

「ごめん。言い方が悪かったわ。彼女いる?」

 彼女が察して修正し直した。
 ・・・・・・。あ、そういうことね。そりゃあそうだよな。女の子がTSなんて興味あるわけないか。ハハハ・・・。

「彼女なんていないよ」
「ふ~ん・・・」

      いい天気

 なにかを向こうも掴み取ろうとしているのか、自分が出した質問に対する返答に素っ気なかった。

「じゃあ、童貞なの?」

 直球過ぎない?新体操部ってそんな話をいつも誰かとしているのだろうか。
 女子って相当な変態じゃないか。ゲームで遊んでいる男子の健全さが涙ぐましい。

「そうだよ。悪いか?」
「・・・・・・」
「(って、会話はそれだけかよ!!)」

 無言は勘弁してくれよ。この季節は陽が出てきているとはいえ少し肌寒く感じるんだけど・・・。
 ・・・外西陽菜は新体操でも一人黙々と練習し、クラスでも一人黙々と勉強し、優等生という地位を確立している生徒だ。
 生徒のお手本と言われているし、誰とでも普通に会話をする子だけど・・・自分から話にいく姿を見たことはなかった。
 周りに合わせて話を振れば応えていくようなスタイルの彼女が・・・今日は俺に話を振っているというのは珍しいのではないか・・・。

「じゃあさ、河原くん――」
「・・・え?なに?」

 考え事をしていて話を聞いていなかった。顔を向けて改めて陽菜の話を聞く。

「私と・・・カラダ交換しない?」

 それは、まるで通信ゲームでもして遊ばないと、軽く言ってくることにびっくりしてしまう。
 初めて会って即『セックスしよう』とふっかけてくるよりも巡り合う確率なんて皆無だろう。
 そもそも、カラダ交換しないって、それって”入れ替わり”ってことを言っているのだろうか?つまり、”憑依”とか、”入れ替わり”とか、TS‐トランスセクシャル‐とか、そういう話をまさか、彼女が知っているのだろうか。

「河原くんて女の子の身体に興味あるんでしょう?」

 今度は間違いないと確信をもって言える。やっぱりTS知ってるじゃないか。陽菜は俺と同じように、”入れ替わりモノ”を知っているってことにさらに一段と驚いてしまっていた。

「そ、そんなことより外西さんがどうして急にカラダを入れ替わりたいなんていうのさ?」

 男性からじゃなく、女性から身体を入れ替えたいなんて願望持つだろうか。俺‐だんせい‐なんて、バカだし、単細胞出し、脳筋だし、パワーこそ正義の世界だぞ。楽しいっていうより、工夫はないし、面白いかと言われたら微妙。それ以外に何もないじゃないか。
 だったら陽菜‐じょせい‐の方は美人で衣装替えできて、化粧できて、カラダで色々できるし、やれることいっぱいあるじゃん。しかも化粧も衣装もやればやるほど残るものだ。やった分だけ得をするじゃん。最強の中学生生活を満喫できるじゃないか!はたしてすべてを捨て去ってでも不服と思う事があるのだろうか。

「・・・・・・私だって普通に過ごしてたはずなのに、部活でも勝手に部長を押しつけられて、いつの間にか優等生呼ばわりされて、先生には他の生徒の模範になるように見本にされて、このまままじめに生きてねとか言われてさ・・・、そうやっていくのに疲れる時だってあるのよ」

 なんとも贅沢な悩みだった。

「それで、その発散ってわけじゃないけど・・・私っていうか完璧ってどう見られる人のことを言うんだろうとか、世の男性ってどんな女性が好きなんだろうとか調べていったら、ヘンなサイトを見つけて、つい男性って女性のオナニー好きなんだとか、憑依好きなんだーとか思っちゃって」

 それは間違ったサイトでヘンな性癖を身につけられてるよね。欲しい情報じゃなかったよね。検索から外れてるよね。
 汚点だよね、ソレ!むしろ、染まっちゃダメなヤツだったよね!?

「そんなことを調べてたら、男の子ってどう感じるんだろうって思っちゃったの。興味本位」

 すると、陽菜のポケットから小瓶に入った『粉薬』が登場した。まさか、彼女・・・『粉薬』を――。

「それで、買っちゃったの?」
「そういうこと」

 優等生で、お嬢様かよ、こいつ。苦労知らずな世間知らずなのかもしれない。
 そんな立場を捨てて平々凡々な俺と”入れ替わり”たいって、むしろ俺からすれば好機で、逆玉の輿を狙えるんじゃないか?
 まさにそういうTSシーンだったら、お約束で――

『ぐへへ・・・。おまえの人生は俺が貰ったぜ』
『やめてええぇぇ!私の身体を返してええぇぇ!!」

 まさに王道を往くパターンだよね?
 なんで、こんなに淡々としているのだろうか。
 外西陽菜と河原宏じゃなかったらもっと濃厚な話になれたんじゃないかな。

 いや、逆に言えば――TSってこれだけ認知されてきてるってことなのかな!?

「お互いに異性のカラダに興味があるわけだし、カラダ交換するよね?」

 そう言って、俺の隣に腰掛けて、何気なしに小瓶を開けて『粉薬』を開封する。
 蓋の開いた小瓶からピンク色した『粉薬』が風に吹かれて舞い始めた。
 陽菜は俺の返事を待つこともなく、目を閉じて身体を預けていた。室外でも甘い『粉薬』の匂いが俺たちのまわりを漂っているのが分かった。
 心臓の音がバクバクするのは、決して陽菜の頭が俺の肩に乗っているだけのせいではなかった。
 これだけ心の中で騒いでいて、今更逃げるわけにもいかないと俺は心を決めたように同じように目を閉じていた。

「よろしくお願いします・・・・・・」

 俺もまた意識を閉じるかのように目を閉じていく。その時に『粉薬』は俺にはまるで桜のように見えたのだった。

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 俺の目の前で気にすることなくオナニーを続ける彩夏(勝也)。それに唆されるように、愛液を指の腹に塗り付けて襞を弄り始める。一つの部屋に二人の彩夏が別々にオナニーしている光景を、もし本人が見てしまったとしたら軽蔑どころじゃ済まないだろう。
 愛しているからと何をしても良いというのは大間違いだと分かっていながら、ばれなければ良いという悪魔のささやきに耳を傾けてしまう。それは本当に、理性や自制をいとも簡単に通り抜けて、本能に訴えかけてくる。
 彩夏の声で、彩夏の身体で、彩夏になりきってオナニーをしてしまう俺は、あれから何度もイキ続けた。

「ふふふ・・・。だいぶ良い感じに濡れてきたね」
「えっ?」

 彩夏(勝也)が俺の手を引きベッドで押し倒す。同じ顔した同一人物がそれぞれ戸惑いと侮蔑な表情を見せていた。

      二人の彩夏

「じゃあ、最後は貝合わせしようか?」
「な、そ、そんなことして・・・・・・本人にばれたら・・・・・・」
「大丈夫だって、安心しろよ。倉田さんにバレることはないって。万が一にもばれたとしたら、その時は開き直って諦めればいいんだって」
「だけど・・・・・・」
「好きな人の快感を味わえて、いい夢見れただろ?最後にとっておきの顔も見せてやるよ」

 官能的に好感を示し、積極的に濡れた同じ形の秘部通しをくっつけ合わせてくる。次第に顔を近づけて唇を重ね合わせて舌を絡ませる。
 積極的な彩夏(勝也)を見て性格が違えばこれだけ雰囲気が違うのだろうか。美乳が揺れる彼女の裸体を見上げながら、秘部と秘部をぶつけ合わせて快感を貪ることにただ酔いしれるだけだった。
 彩夏(勝也)に任せて、受けに徹する俺。クチュクチュという淫らな音と喘ぎ声が、否応なしに響き合う。

「ふふっ、かわいい。乳首もクリ〇リスもビンビン♡」
「あっ、あっ!い、言わないで!」
「責めの倉田さんと受けの倉田さん・・・・・・どっちが好みか一目で分かるね!」

 どちらも俺たちが『変身』した姿だけど、本人だとしてもきっと遜色なくイヤらしい破廉恥な姿を曝すのだろう。そう思うだけで、頭がチリチリと焼き付けそうになっていた。

「ふふ、オマン〇コとろとろになっちゃったね。こんなに熱くなって、糸ひいて、感じちゃったんだね」
「はぁああ・・・・・・っ♡」

 オマ〇コを擦りつけ、打ち付け、塗り付け、突け合わせる――。じゅわじゅわと愛液が止め処なく溢れ続け、下腹部をベチョベチョに濡らしていくだけではなく、上半身を倒してディープキスや乳首舐めまで始めてくる。
 勝也の責め方はまるでレズを経験したことがあるような動きをしている。だけど、俺の目には彩夏の動きにしか見えないのだ。
 責め手の彩夏の姿を見ることは今しかないと、虚ろな眼差しでイク瞬間まで覗き見ていた。

「あはっ、あっ・・・あ♡ん・・・♡ちゅく♡ちゅぅ♡ちゅぅぅぅ~♡♡」
「はあぁぁ!!ん・・・ンぅぅ・・・!!ンーーーーー!!」

 彩夏の身体がイきたいと叫んでいる。それを止めることはもう俺には無理で、彩夏(勝也)にイかされる快感で身体が自然と持ちあがっていった。

「(もぉ、ダメだよ・・・俺、倉田さんの身体で・・・・・・間違いない、これが――)イ、イく、イクうううぅぅぅ~~~!!!」

 ビクビクと、大きく仰け反ったまましばらく時間が経過し、やがてベッドに深く沈んだ。俺は遂に彩夏のレズ行為を経験し、そして絶頂を体験したのだ。レズ行為でも十分感じるほどに敏感な秘部に驚愕し、もし男性の性器を挿入したらどうなってしまうかなど想像がつかない。
 そんな彩夏の身体事情まで知ってしまった俺は今まで以上に深い背徳感に目覚めてしまった。

「その様子だと先にイったの?まだ私はイってないのに」

 彩夏(勝也)は俺を尻目に名残惜しそうに自分の感じるところを指でかき混ぜて愛液を滴り落とす。そして、愛液が垂れる秘部を俺の顔に載せてきたのだ。

「最後に倉田さんの愛液の味を舐めさせてあげる」
「んぐむっ!?んーーっ!んうぅぅーーー!」
「あああぁんっ♡感じる。私の舌・・・感じるでしょ?私の味」

 しょっぱくて、ヌルヌルの愛汁――倉田さんの味が口の中に入ってくる。疲労感も忘れて舌の動きだけが早く動いていくのを感じた。

「あふっ・・・ジュブッ・・・ジュルッ・・・チュプッ」
「ああっ!倉田さんの口の中熱くなってて気持ちいい。オマ〇コ吸われて、愛液持っていかれちゃうの、たまらない!!」
「んぐっ・・・んっ・・・・・・ピチャッジュプッ、チュルルッ・・・んっ、ジュルッ、ジュルジュルジュルルッ!」
「ああんっ、あああああーーーっ♡♡ダメッ、イクッ♡私も、オマ〇コ舐められて、イっちゃうううっ―――♡♡♡」

 俺に舐められ続けた彩夏(勝也)が喘ぎながら絶頂へと到達した。同じ愛液を満遍なく浴びた二人の周囲にはむせかえるような愛汁臭が充満していたのだった。

「ハァッ・・・ハァッ・・・」
「ああっ・・・あはっ。気持ちよかったでしょう?まだ続けたいよね?私のこと、全身隈なく犯したいよね?」

 さらに面妖な微笑みを向ける彩夏(勝也)。まるで俺に対して全てを許してくれるような甘い言葉を投げかける。もちろんそうだ。全てを愛したいという気持ちは俺の中に存在しているのは確かだ。彩夏のことを犯せるのなら、この狂った空間で何時までだって愛し続ける・・・。

「じゃあ、こっち来て。私のこといっぱい犯してぇ~♡」

 片想いの相手からベッドに誘われる。俺はそんな表情を向けられて――俺は次第に倉田さんに対する恋愛感情というものを失くしてしまったのだった。



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