私は萱津咲-かやつさき-といいます。
 今日は私の身のまわりに起きた出来事をお話したいと思います。


 私は水泳部に所属している高校1年生です。
 水泳は子供のころからスイミングクラブに所属していたこともあって、中学も個人で県大会に出場する実力がありました。
 高校生になってさらに筋トレのレベルがあがってキツい練習に耐えて過ごしていました。
 そんななか、クラブの頃から面倒見てもらった先輩の木更津夢子-きさらづゆめこ-は私の心の支えになってくれた人でした。私が辛くて部活を辞めたいと思った時にも親身になって励ましてくれたし、部活終わった後も私の居残り練習に嫌な顔しないで付き合ってくれたし、コンマ1秒でもタイムが縮まるとまるで自分のことのように喜んでくれたりして、可愛い先輩であり、頼もしい先輩であり、まるでお姉さんのような存在でした。

 そして、その日は特になんの変わり映えのない部活動が終わろうとした後に起こったのです。


      部活動

「お疲れ様です」

 部活動は夕暮れに差し掛かり部員たちが練習を終えてプールからあがるなか、私は今日も居残り練習をするために夢子先輩に声をかけたのです。

「先輩。今日も私の泳ぎを見てくれませんか?」
「咲ちゃん、悪いんだけど今日はどうしても外せない用事があるの」
「えっ?そうなんですか?」
「お母さんが帰り遅いの。私がご飯作らないといけないから」

 そんな用事があったのに部活動を真面目に参加する先輩も先輩だ。これから買い出ししないといけないとしたら夕食は8時を過ぎるのは間違いなさそうだ。

「わかりました。私に構わず行ってください」
「ごめんね。明日もよろしくね」
「お疲れさまでした、先輩」

 私は一人プールに飛び込み泳ぎ始める。みんな予定があるんだから練習ばっかりやっているわけにはいかない。逆に私はめいいっぱい練習に時間を要することが出来るのだから、一分一秒を大切にしよう。
 無心になってまずは2000mを泳ぎ始めた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ハァ・・・ハァ・・・」

 気付いたら何周してたかも覚えていない。10周は余裕で越えていたような気がする。
 やっぱり一人だと張り合いがないな。それに、先輩の声が聞けないことに普段よりも静けさが増している気がした。
 夕陽が沈み辺りが暗くなりかけている。今日はこのくらいにして早く帰ろうかな。

「お疲れ様、咲ちゃん」

 一瞬、私の耳が幻聴を聞いたのかと思った。私の目が幻覚を見ているのかと思った。
 目の前に夢子先輩が立っていたのだ。あれだけ忙しく帰っていった先輩が学校に戻ってくるなんて夢にも思わなかった。

「先輩!?帰ったんじゃなかったんです」
「うふふ。咲ちゃんが心配で戻ってきたのよ」
「せんぱい・・・」

 私のために・・・先輩の優しさに冷えきった身体の中から温かくなっていくのを感じていた。
 でも、今日はこれ以上はさすがに泳げないかな。夢子先輩も練習に付き合ってもらうわけにもいかないと、私はプールをあがり一緒に帰るよう提案した。

「待っててください先輩、すぐに着替えてきます」

 しかし、夢子先輩は私の提案に首を横に振った。そして、

「まだ少し時間ある?」
「時間ですか?はい、大丈夫ですけど」
「これから咲ちゃんには私と同じトレーニングをやってもらうわ」
「先輩のトレーニングですか?」
「そうよ。まだ誰にも言ってない秘密のトレーニングだから、二人だけの秘密よ」

 先輩が組んだ自主トレーニングなのだろう。それに参加できるなんて嬉しい限りの話だった。
 私は二つ返事で頷いた。
 夢子先輩は張り付いた笑顔でさらに口元を釣り上げていたことに私はこの時気付いていなかった。

「じゃあ、早速始めるわね。屋内でやるトレーニングだから先に更衣室に行っててくれない?実はもうそこで準備を済ませているのよ。私もすぐ後を追うわね」
「そうだったんですか。わかりました」

 私は先輩と分かれて言われるままに更衣室へと向かっていった。
 しかし、扉を開けた先で見た光景に私は目を疑った。
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