純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > コピーキャット『VSマウスピース』

 授業が終わるとすぐに奈多妓は千恵美へと駆け寄った。

「有賀さん。ちょっとお話があります」
「はい?」

 教室に入ってくるなり大股で近づく奈多妓に恐れる。今日の奈多妓には『近寄るな』と『動くな』の二つのオーラが垣間見えた。そして、

「一体どういうつもりですか!?私に、なんの恨みがあってあのような醜態を!!」

 千恵美にガンガンと言葉をぶつける。当然、千恵美本人は全く身に覚えがない。知るはずがない。

「えっ、ちょっと!?何の話!?ぜんぜん分からないんだけど……きゃあああああ!!」

 押されるままに下がった千恵美がつまずき転ぶ。それでも奈多妓の腹の虫は収まらない。足で踏みつけるかのように足を上げていく。

「まあまあそう怒るなよ、樋渡さん」

 そこに救いの神、柏木剣参上。名前に負けない登場に剣自身が惚れ惚れしていた。

「柏木さん……馴れ馴れしくしないで!!だいたい、あなたとも今朝から顔を合わせて、とっても不愉快なのよ!」

 怒りの矛先が変わっただけであった。しかも、理由になってないほどのとばっちりである。

「ひっでぇ!!毎朝顔を合わすだろう!!」
「目に入れたくないわ!このゴミクズ!!」

 剣に対する態度が露骨に嫌がっているのだと、剣が気付いてしまった。

「カッチーン!」

 口に出てしまうくらい、剣の中で何かが切れた。

「てめえは俺を怒らせた。ちょっと、来いやー!!」
「ちょ、ちょっとー!!」

 物凄い力で奈多妓を引っ張っていく剣。千恵美は未だ目がテンの状態で固まっていた。 


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 体育館裏まで奈多妓を引っ張り連れてきた剣。

「放して!」

 そこでようやく奈多妓は剣の手を解いた。信じられないというように完全に怒りが見えている。

「あなたといい有賀さんといい、人気のない場所が本当に好きね。おかげ様で私は嫌いになりました。今度から多くの人ともっと交流していきたいと思います」
「それは殊勝な心がけだな」

 怒りと怒りの状態では会話も一触即発である。ここで剣が言う。

「じゃあ、まずは俺と交流を深めようじゃないか」
「はぁ、冗談でしょう?」

 どちらかといえば敵である。交流も何もあったものではないのである。子供のような剣なんかよりは大人の付き合いをしたいというのが奈多妓の思いだ。
 だからと言って、奈多妓の目の前で天を仰ぎながら腕を絡ませている男のような人も絶対イヤだ。剣の行動が全部嫌なのである。

「神に誓ってもらおうか。『わたし、樋渡奈多妓は柏木剣の雌奴隷であり、これから毎朝おはようございますから、夜のおやすみなさいまで尽くすことを誓います』とな」

 しゃべる言葉も嫌である。気持ち悪すぎると表情が物語っている。

「………馬鹿じゃないの?誰がそんな下劣な言葉を言うもんですか」
「サン、ハイ――!」


わたし、樋渡奈多妓は柏木剣の雌奴隷であり、これから毎朝おはようございますから、夜のおやすみなさいまで尽くすことを誓います


 今までの怒りをなくすほどの静けさが、奈多妓の全身を駆け巡った。
 
「な、なによ、いまの……?」

 自分が発したとは思えないのだが、いま、奈多妓が口ずさんだのは、剣が発した言葉そのものだった。
 剣が目の前で音楽プレイヤー『Iチュン』を取り出してイヤホンを耳に当てていた。
 剣が頷き、奈多妓の声をばっちり確認していた。

「テープ録音完了。裁判でも使える物的証拠だな」
「ふ、ふざけないで!それを渡しなさい!」

 襲いかかりプレイヤーを取りあげようとする奈多妓。剣は楽々避ける。

「冗談を言わない方が良いぞ。おまえの身体はもう俺のものなんだぞ?」

 剣が指を鳴らす。すると、再び勝手に奈多妓の口が動き出す。

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わたしの身体、好きに使って下さい……あ、そんなぁ……」

 剣の言うとおりであることがはっきりとわかった。何の力か分からないが、奈多妓は自分の口が剣に奪われているのだということが分かってしまい、地面に膝をついた。
 逆に剣は悪役のように高笑いで奈多妓を見下していた。完全勝利であった。

「これから奈多妓の声が録音されていくのか。いったいどんな声が入るんだろう。楽しみだなぁ」

 これから起こる奈多妓の恐怖は、剣にとって歓喜以外の何物でもなかった。

 
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ありがとな、勉」

 放課後が終わり、一日の締めくくりを勉の家で迎える剣。『コピーキャット』を夜遅くまで借りてしまったが、勉はそれほど怒っていなく、むしろ剣の仕返しの方が上手くいったかどうかが気になっていたようだ。

「これで満足か?」
「おう、バッチリ」

 Iチュンを手に再生ボタンを押す。

剣くん、朝だよ。目を開けて……
剣くん、たまご焼きと目玉焼き、どっちが好き?
……おまん、じゅう!

 間違いなく奈多妓の声である。絶対言わないような台詞と甘い声が見事に録音されていた。
 奈多妓の声とは思えないくらいに可愛らしい声だ。剣を少し見直していた。

「くはあ!!奈多妓CDにして出せば売れるかも!?俺の宝物にしよう」

 声を録音して大満足の剣である。『コピーキャット』はずっとそれに付き添っていたのか。少し疲れた顔をしている気がしている。というか、きっと剣のことだからお預け状態で放置していたに違いない。『コピーキャット』の猫目が怒っているようにも見えた。

「おまえ、もっとやるべきことがあるんじゃねえのか?」
「なにさ?」
「いや、いいよ……」

 終始ご機嫌の剣には、『マウスピース』の方がお気に入りらしい。なるほど、ペットはそれぞえれ愛される主人につく方が幸せだ。
 勉には『コピーキャット』。最愛のペットだ。

「あ、そうそう。ちゃんと奈多妓に仕組んどいたんだよな?」
「あの件かニャ?大丈夫ニャ。おまえさんの言われたようにしといたニャ」
「へへ。サンキュウ、ネコ」

 剣がいなくなったあと、

「うにゃあ!!!ネズミに敗けた気分ニャ!ちっとも面白くなかったニャ」
「そういう約束だったからな。正直すまなかったと思っているよ」
「そうニャ!ご主人様に慰めてもらうニャ!今日一日の愛情を全部注ぎ込むんだニャ!!」
「そ、その気迫、おまえ絶対にネコじゃなくてウサギだろう!?うおおおお――!!!」

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 勉は剣が残した奈多妓に擬態した『コピーキャット』と供に、楽しく身体を交えるのだった。


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『コピーキャット』と仲良くなった。これはとても上手い状況だった。
 一度見れば何にでも『模倣』してしまう猫。『変身』と『模倣』の違いを今更ながらに説明するが、『模倣―コピーキャット―』は結局、変身した本人の行動を真似ているのである。『コピーキャット』が起こす行動はそのまま本人へと返っていく。
 有賀千恵美は今まで以上にエロさを全身的にアピールするようになってしまった。

「杏美。今日も陣保市に行こう。あのお店でまた買いたいものができたの」
「ちょ、ちょっと、千恵美。早すぎない?一体なにに使ってるのよ」
「うふふ、秘密~♪」

 あまりの豹変ぶりに杏美の方がたじろぐ姿を目撃する。
 まぁ、そんな千恵美は今や俺の彼女だ。当然毎夜、千恵美と一緒に楽しんでいるというのは、秘密である。
 これも『コピーキャット』の影響なのだろうか。『コピー』と名のつきながら本人をも凌駕してしまうグノー商品とは、流石である。だが、『コピーキャット』自身が自分の与える影響を理解しているのかしていないのかは分からないが、自由気ままに様々な女性の身体を遊ばせてもらえるのだから文句はない。

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「んちゅ……ぷはぁ。どうだニャ?この娘の舌使いは?ぞくぞくするニャろ?」
「ああ」

 さすがアイドルの大槻真弓ちゃんだ。水着サービスでフェラをしてもらえるなんて今後一生ありはしないだろう。しかしこんなことをして、本人も水着フェラが性癖になったらどうなるのだろうか。有名アイドル、AV界へ進出なんてことになったりしてしまうかもしれないとうのに、真弓(コピーキャット)は舐めることを止めたりはしなかった。

「早く出すニャ。精液、のましぇてぇ……ぶぶぶ……」
「く、は……出すぞ。飲み込め。うあっ」
「うぷっ……ん……ごくっ、…ごくっ……」

 真弓(コピーキャット)に精液を飲ませて大満足な俺。最後の一滴まで飲みほした真弓も、「ニャ♪」っと声をあげて悦びを噛み締めていた。
 いや、千恵美がいるのだが、もっと、高みへ行きたいじゃないか。多くの人に見せつけて鬱を与えたいじゃないか。

「う、羨ましいですね!!!!」

 剣が俺と真弓(コピーキャット)のやり取りをまじまじと見ながら悶絶していた。『コピーキャット』の存在を知った剣は『マウスピース』への愛をなくしてしまっていた。
 確かに、言葉を操るだけのネズミより、姿を変えられるネコの方が欲しいと思うだろう。ネコだけでも可愛いし。

「お前も走れよ。そうすればひょっとしたら出会えるかもしれないぞ」
「走ったよ!昨日半日ずっと!!!」

 そう言えば途中からすっかり忘れていたな。『マウスピース』を探して剣はずっと走り続けていた。俺が、『コピーキャット』が隠し持っていた『マウスピース』を渡すと、涙を浮かべて抱きついてきたのは気持ち悪かった。

「事実を知ってれば殴りつけてたよ!!!」
「だから教えてやっただろ?『コピーキャット』の存在を」
「ええ、アリアリと見せつけてくれてますね!!鬱~~~~!!!!OTL」

 すまん。結局自慢したいだけかもしれない。ハッハッハ。
 俺の高笑いとは逆に、俯いていた剣はフッフッフ……と低い声で笑い始めた。

「勉。男同士、腹を割って話さないか?」

 今まで聞いたことのない剣の声に、俺は少し恐れる。……やばい、剣、切れちまったぜ。

「俺はお前に『マウスピース』を貸した。半日持っていたわけだろ?まさか否定するわけじゃないだろうな?」

 こいつ。『コピーキャット』が持ち逃げしたのを、飼い主の俺のせいにしやがった。いざとなれば平気で仲間を売るだろうな。
 
「だから、俺にも『コピーキャット』を半日貸せよ。俺を馬鹿にした奴をぎゃふんと言わせてやりたいんだよ」
「イヤニャ」
「ペットが否定するなよ!!!」

 『コピーキャット』は乗り気でなかったが、

「………わりぃ。付き合ってやってくれよ」
「むぅ。仕方ないニャ」

 俺の説得で渋々了承を得た。

「交渉成立だな」

 剣が悪役のように含み笑いでくっくっと肩を揺らしている。

「じゃあ今から半日な。ちゃんと朝六時に帰ってこいよ」
「分かったニャ」
「今からじゃ復讐も何も出来ねえええええ!!!!」

 話し合いの結果、『コピーキャット』を貸すのは明日の朝からになった。学校の間で良いということなので、授業が終わり次第返してもらうことになった。

「じゃあよろしくな」
「おう」

 剣が靴を履いて玄関のドアを開けた。と、「あ」っと何かを思い出したかのように剣は振り返った。

「勉は知ってるのか?」
「ん?なにをだ?」
「『コピーキャット』は、『マウスピース』に……おっと、これ以上は秘密だ」

 俺が知らないことを見つけると剣は喜ぶらしい。とんでもない変態だ。そして、こいつは俺の友達じゃない気が段々としてきた。

「なにがあったんだ、ネコ」
「卑怯者ーーーーー!!!!」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 翌日、剣は『コピーキャット』と供に登校した。もちろん、『コピーキャット』は千恵美の姿に『模倣』して歩いている。しかし、姿は一緒でも『コピーキャット』だ。スキップしながら登校する千恵美は小学生のように明るく、キャラとして幼く見えた。
 登校する低学年にも距離を取られるのを気にして、剣は『コピーキャット』を押さえながら耳打ちを始める。

「コピー。おまえは『マウスピース』に耳をかじられたよな?」
「ニャア?」
「ほらっ、俺が『マウスピース』の説明をした時、おまえが勉に化けて訪ねた時だよ」
「ニャあ。そんなこともあったニャあ」

 『コピーキャット』も思い出したかのように耳をいじる。当然今は耳に何の障りもない。しかし、『コピーキャット』が如何に模倣しようと『マウスピース』に噛まれているという事実は変わらない。

「耳をかじられると、人の声が聞こえるようになるんだ」

 マウスピースのもう一つの能力。口を操るだけじゃなく、耳をかじれば鼓膜は人の心の声まで響くようになる。ネコにとって人より耳も敏感なので、人の声が聞こえるようになったとしてもさして影響がないのかもしれない。むしろ、寝る前に声が響いて邪魔になっただけなのかもしれない。

「そうだニャア。今も聞こえてるにゃあ」
「それで俺と今日は会話する。怪しまれないように、そして、奴を確実に落とすためだ」

 テレパシー。剣は『コピーキャット』と心の声で話すことを提案した。

「お前は聞こえニャいだろう?」
「俺がサインをする。コピーが実行する。一方通行の会話だけど、一日くらい大目に見ろよ」
「むっ、仕方ニャいな」

 強引に押し切る様に決定する。
 しばらく歩くと、剣が身を強張らした。

「いたあ、あいつだ」

 剣が目の敵にする女生徒。学年トップの樋渡奈多妓―ひとなたぎ―だ。ルックスは綺麗で歩けば声をかけたくなるが、人を近寄らせないオーラが出ており、剣でさえ恐縮してしまうくらいだ。それでも、剣は奈多妓の美貌に惹かれ一度声をかけたことがある。が、それがまずがった。

「あいつ、俺をガキだって馬鹿にしやがってえ!!!気付くのに半年もかかったわあ!!!!」
「はぁ、馬鹿ニャ」

 とにかく、ナンパに失敗した腹いせだ。それにしても千恵美とは別のベクトルにいる彼女に『コピーキャット』も興味があった。剣の声を無視し、『コピーキャット』は一人飛び出していった。

「お、おい!」

 跳躍した千恵美(コピーキャット)が一瞬で奈多妓の横に並んだ。急に表れた千恵美にも動じない奈多妓は笑みを浮かべながら千恵美に話しかけた。

「あらっ、おはよう。千恵美さん。今日も頑張りま――――」

 奈多妓の顔に影がおちる。千恵美(コピーキャット)は顔を近づけ、奈多妓の唇を一方的に奪ったのだ。奈多妓が珍しく凍っている。千恵美の唇の柔らかさに触れても朝のテンションでは固まってしまって動けないでいた。

「ちゅうううう………ぱぁ。おまえ、キスが下手だニャ」

 歯の隅々まで舐めた千恵美(コピーキャット)が感想を述べた。唇の周りが涎でてかっても、奈多妓は拭こうとせずにわなわなと震えているだけだった。

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「な、な、なな、なにをしたの……っ!!」
「ご挨拶ニャ。今日も一日頑張ろうニャ。ニャハハ」

 再び掛けて行ってしまう千恵美(コピーキャット)。慌てて追う剣は、朝から波乱万丈な一日を予感していた。


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 千恵美の身体で逝った『コピーキャット』は、俺のベッドの上で大量の愛液を垂れ流していた。
 布団どうこうではなく、千恵美が俺のベッドで恥ずかしげに笑っているのを見て、俺は心臓の音が高まった。

「あはっ、気持ち良かったニャ……このカラダは、敏感だニャ」

 ベッドから立ち上がり、今着ている衣服を惜しげもなく脱ぎ捨てる。
 『コピーキャット』にしてみればただ濡れた衣服が気持ち悪いから脱ぐというだけかもしれない。だが、俺にとって、幼馴染の千恵美の裸体が目の前に広がる。
 高校生になり、成長期を迎えた俺たちにとって、男女で発育の違うが明瞭になる。
 乳房も大きく実ってきた千恵美の身体は、俺の逸物を膨らませるには十分すぎるスタイルをしていた。

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「ニャ?どうした、人間?」
「は、早く服を着ろよ。なければ俺のを貸してやるよ」
「ふぅん……この身体に合う服があるかニャ?」

 タンスから衣服を漁る『コピーキャット』。そんなことしなくても――

「また俺になれば良いじゃねえか。別に服には困らないぞ」
「えー。この身体は気に入ったニャ。今日一日ぐらいはこの格好でいてあげるニャ」
「なんで上から目線なんだよ」
「ご主人さま~。なんなりと申しつけくださいニャ~」
「や、やめろ!!」

 色々な意味で危ない!欲求不満なのか、俺は!?
 千恵美が甘えてきたことなんかないからか。メイドのように呼ばれたら逆に照れくさい。

「そうかそうか。ご主人さまはそういうのがお好きかニャ?」
「な、なにがだ?」

「エッチしたいニャ」




 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 有賀千恵美は如月杏美―きさらぎあみ―と一緒にベッドで座って慰めてもらっていた。杏美は陸上部に所属していながらもクラスのムードメーカーであり、その明るさから男子にも人気がある子である。千恵美とは小学校からの知り合いであり、転入してきた杏美を一番に受け入れてくれたのが千恵美だった。
 枕クッションを抱きしめて顔を隠すようにしながら、今日持っていた鞄をじっと見つめ続けていた。
 中に見える参考資料。歴史は勉の好きな教科であり、千恵美は歴史書を持って勉の家を訪ねる予定だったのだ。そして一日中勉と歴史のお勉強をと考えていたのだが、あいにく勉は予定があって外出してしまったところだった。
 一人帰って親友の杏美との作戦会議。そして反省点。
 当然、この作戦を考え付いたのは杏美の方だったりする。疑いもせず実行してしまう千恵美である。

「どうしてうまくいかないかなあ?」

 呼び鈴を鳴らして後は押しかけるだけで成功するはず(杏美談)の作戦が失敗するとは思わなかった分、ショックも大きかった。

「あいつは真面目な朴念仁だからねえ。興味ないんじゃないの?」

 杏美と勉は中学からの付き合いである。勉の印象は剣と絡んでいる以外は勉強しているところしか見たことがないである。
 
「ぅぅ……わたし、そんなに魅力ない?」
「わあ!ちがうちがう!!その、恋だとか、エッチぃだとか」
「うう!!わたし、そんなに魅力ない?」
「じゃあ朴念仁なの!鈍感なの!!幼馴染だから気付かないの!?」
「うわああん!!幼馴染じゃなければよかった!!」

 駄目だこれはと杏美も千恵美の様子に白旗を上げる。でも、一途に勉を追い求める千恵美も可愛く思う。

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「勉が羨ましいわ。こんなに可愛い子がいるのに剣に走るなんて……そっちの気があるんじゃないの?……なんてねぇ……」

 笑い飛ばそうにも千恵美は顔を上げない。

「泣かないの、千恵美。また頑張れば良いじゃない。恋というのは気付いたらあっという間に燃え上がるものなの。だから諦めないこと!ネバーギブアップ!!」

 千恵美の身体を自分に寄りかからせてしっかりと押さえて安心させる。千恵美が落ちついたように泣き声を沈めていくのを感じながら、ニの腕に当たる千恵美の乳房の感触に内心喜んでいた。

(と、言いながらも私も美味しい思いしてるんだけどねえ)

 両手を回して千恵美を抱きしめると、乳房が押し返してくる。警戒心の強い千恵美を抱くことができるのは、今のところ勉か杏美のどちらかであろう。

(時々こういうお肉の柔らかさを味わいたくなるのよね。千恵美のおっぱいって柔らかくて好きよ)

 プニプニと、ゆっくりと腕を動かして千恵美の乳房を一人弄ぶ。秘儀隠し腕。杏美の隠れた特技である。
 と、千恵美が急に顔を上げた。涙目なのは変わらないが、頬は普段に比べて一層赤く染まっており、杏美の心臓も高鳴った。

「杏美ぃ」
「ど、どうしたの?」


エッチしたいニャ


 千恵美が言った。

「えっ?」
「えっ?」

 二人は一瞬キョトンとした。杏美に関しては目が点になっていた。

「ち、違うの。私の身体を抱きしめてほしいの……って、なんなの?」

 慌てる中で落ちついて可愛らしく誘う千恵美の声に、杏美の顔が真っ赤に染まっていた。

「千恵美……それ、本当?」
来て。気持ちよくさせてあげる。……あ、杏美ぃ!それは私の本音じゃ――きゃあ!!」

 千恵美の弁明も間に合わず、杏美は抱きしめていた格好のまま千恵美を押し倒した。

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 『コピーキャット』を抱えたまま家の階段を上る。腕の中で暴れる千恵美の姿をした化け猫をぐっと抑え込む。

「ニャ、にゃぜ私が模倣だと分かった!?」
「『コピーキャット』って自分で名乗っただろうが!」
「ニャあ!!?」

 自分の部屋まで担ぎこんでベッドに投げ飛ばすと、千恵美はベッドのクッションに押し返されて数回飛び上がった。おさまってベッドの上で震えている『コピーキャット』に向けて俺は指を鳴らした。

「てめえ、覚悟しろよ。俺をここまで走らせた罪を償わせてやる。そこになおれ!!」

 こいつのせいで俺は小一時間走らされたんだ。半日をランニングという時間に費やした罪を償わしてやる!
 怒りは最高潮。抑えられるわけがないが、そんな俺を『コピーキャット』は鋭い目で睨んでいた。

「そうやって、また我を好きにするのか!!」

 『コピーキャット』……模倣を意味するグノー商品。生きた売り物。

「人間なんてどいつもそうニャ!我を好きにこき使い、自分の欲望を満たすだけにしか使わないのニャ!我を道具にしか使わず、欲のために飼いならし、そして……いじめた!!!」

 生きているから!意志があるから!他のグノー商品よりも人間というグノーグレイヴを敏感に感じ取る。
 前回の飼い主は『コピーキャット』を高額で買い取った。預けられた飼い主の元に届いた『コピーキャット』は、さっそくアイドルの姿を模倣してくれと頼まれた。そして、姿を模倣し、飼い主の用意したコスチュームに着替えされられ、そして一曲歌わされた。
 全く知らない曲だった。模倣したから歌うことは簡単にできた。だけど……そのあとに悲劇は起きた。 

「前の飼い主は我をなんと言ったか……確か――『声が違う』と言ったにゃ。何の事だかよく分からなかった。だけど、そんニャ理由で我は捨てられた。分かるか、人間?道具を捨てるのも、動物を捨てるのも、人間の飽くなき理想を追い求める欲にゃんだ!にゃらば我は人間の理想になろう。声が違うのも模倣し、完璧な模倣を目指そうではにゃいか!!――我は人間の道具ニャ!!!」

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 道具と自覚していながらも捨てられたペット。改良するために背伸びをし、よりよい商品となろうと模倣する。
 『コピーキャット』。その名はまさに模範だった。しかし、それもすべて模倣にすぎない、グノー商品。
 俺は拳を震わせた。目の前にいる商品―捨て猫―は馬鹿だった。

「ペットだ?道具だ?おまえは動物だ。俺と同じ生物だ。模倣できるなら俺なんかを模倣せずにもっとお偉いさんの真似でもしろよ。なんで俺なんかを選んだんだよ」

 人間よりも脳が足りなかった。

「だって、必死さが滑稽だったんだもの」

 賢さよりも行動力を優先するのだから。無駄なことを好むやつなんか早々いない。時間は有効に使えと諭されるに決まっている。

「馬鹿だなあ。必死に頑張っても報われないことの方が多いぞ」
「滑稽が……面白くて、笑えて、本当に久しぶりに笑えて、あいつみたいに必死に馬鹿できる人間だったら、きっとこの世はとても面白いんじゃニャいかって思えて、模倣したくニャった。……ああ、面白かった。おまえの友達も面白かった。我は声も完璧になる方法を得た。『マウスピース』―こいつ―によって声も模倣できたのに、何故見抜かれたんだかわからにゃい」

 『コピーキャット』は問いかける。完璧な人間になれたはずなのに、見抜かれた理由が分からないと。

「教えてやろうか?それが、人だ」

 俺は千恵美(コピーキャット)に向かって倒れこんだ。



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「早弥ちゃん~。マジでどこ行ったあ!!?俺を困らせようと草むらに隠れているんじゃないか?」

 草むらを掻きわけても出てくるはずがない。

「剣!!何があったんだよー!?なんで家にいないんだよー!!?…………ハァ」

 柏木家の庭にいて不法侵入していると訴えられても困るので、勉は二度目の帰路へ向かう。
 その足取りは重く、徒労による疲労が見え隠れする。
 再びシャワーを浴びるようになるのか。さすがに天気が良くなってきたとしても風邪をひくかもしれない。

 公園に差し掛かり、勉の目の前を遮る様に飛び出してきた影。

「あ」
「ああん?」

 剣だった。やけに声が高くなり、まるで女性かと思ったくらいの美声を発した剣と、

「お、おおお……俺がいるうううう!!!?」

 剣の隣には、勉と全く同じ顔をした人が立っていた。剣も驚いており、勉と同じ顔をしていた。

「な、なんで勉が二人いるの?」
「・・・ニャは!!」

 勉(?)は変な声を上げると、高々と飛躍した。そして素早く動いて剣の手から『マウスピース』を奪い取った。

「あ」
「ニャハハハ!!俺サマを見ぬけなかった愚かな人間。この道具―ペット―で俺が真の動物の礎ににゃる!」

 今までの喋り方とはまったく違い、素を露わにした謎の人物。

「なんだ、あいつは!?」
「我が名は『コピーキャット』。グノー商品という道具―ペット―にして一つの生命!次に会うときは人間を超える動物とニャっているだろう!ニャハハハ!!!!」

 『コピーキャット』が走り去る。その速さは群を抜き、すぐに小さくなってしまった。まるで嵐が過ぎ去ったかのような時間が過ぎ、時が動き出したかのように剣も動き始める。

「あー。待ってよ、私の『マウスピース』を持ってくなあ!!」

 走って後を追う剣。そして、最後に取り残された勉も我に返り、二人の後を――

「…………また走るのかよ」

 ――走って追った。


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 家を飛び出した勉だったが、その足はすぐに止まった。

『あ』

 二人は同時に声を出す。勉の幼馴染、有賀千恵美―あるがちえみ―が歩いていたからだ。何故か歴史の参考資料を持っているのが気になるところである。
 勉の顔を見て多恵がほほ笑む。

「勉くん……これからどこかでかけるの?」
「うん。ちょっと剣の家にね」
「そうなんだ」
「千恵美もこれから何処か行くの?」
「私!?……は、うん。もう用済んじゃったからその帰りなの」
「そうか。さすが行動早いなあ、千恵美は」
「うん……」

 何処かさみしげな千恵美の声だが、勉には届かない。

「あっ、じゃあ俺、急ぐから。また月曜日な」
「うん。またねぇ」

 走って消えていく勉の姿を、千恵美は黙って見送った。

「クスクス」

 そんな一分もしないやりとりを笑う影があった。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「……クスクス……」

 部屋で一人笑う剣。傍から見れば不気味である。一刻も早く伝えたいというようにうずうずして仕方がなさそうだった。
 呼び鈴が鳴る。勉が到着したのだった。剣が玄関のドアを開けると勉が息を切らして立っていた。

「早かったな、勉」
「ハァ…ハァ……新記録だろ?」
「……なんか声おかしくないか?」
「走ってきたからな」
「まあいいや。上がれよ」

 一人しかいない家にもう一人加わるだけで明るくなる。勉は靴を脱ぎ捨てると家の中を駆け巡った。
 一階のリビングから二階の早弥の部屋まで。ノックすることなくドアを開ける勉に少しマナーがないと剣は思いながらも、その様子が面白くて勉の後を黙ってついていく。
 そして、最後に剣の部屋で早弥を探した勉だが見つけることは出来なかった。長いかくれんぼは終わったのである。

「で、早弥ちゃんはどこ?どこ!?」

 息の荒い勉。狼のように今この場に早弥がいたら食われてしまうのではないかと剣は兄ながらに心配してしまう。ここは一度勉を冷静に戻さなければならない。

「早弥はいないぞ!」
「………………はっ?」

 完全棒立ちの勉。効果は抜群だった。
 剣の携帯から連絡した早弥は、電話越しにオナニーをして、そして、待っていると言っていた。しかし、いないとはどういうことなのだろうか。矛盾である。それとも、ウソなのだろうか?

「お前の携帯から電話してきただろ?」
「これだろ?」
「そう、それ……って、なんだ?剣の携帯、穴開いてるじゃねえか?」

 剣の携帯電話は不思議なことに、マイクのところに小さな穴が開いていた。中の機械盤が丸見えで少し危険にも見える携帯だが、不思議と何の支障もないように使っていた。電話もしてきたのだ。壊れていないのが不思議なくらいだ。
 そして、剣が真実を話す。

「齧られたんだよ」
「か、齧られた?なにに?」
「こいつだよ」

 剣が見せるのは、一匹の小さな白ネズミだった。丸っこいからか、足も見えないせいで雪うさぎにも見える印象だ。動物と言うより、機械に見えた。

「……ハムスター?」
「『マウスピース』っていう新種の鼠だ。こいつすげえんだぜ?」

 「何が凄いんだ?」と勉が言う前に、剣は実践して見せた。『マウスピース』を自分の喉に近づけると、『マウスピース』が剣の喉に噛みついたのだ。血は出ていないが噛んだ跡が残る二本の歯跡が痛々しい。

「おい、おま――何してるんだよ!?」

 荒々しく吐く息に勉が駆け寄ろうとするが、剣は制止させた。

「ん……大丈夫だよ」

 段々と落ち着きを取り戻してくる剣。そして、何事もなかったように勉に微笑みかけた。

心配してくれてありがとう」

 勉は驚いていた。剣の声が今まで聞いていたことないくらい高音になっていた。
 と、いうより……

「……あれ?剣、その声……」

 勉も聞いたことのある声だった。いや、先程まで電話越しに聞いていた人物の声そのものだった。

アハハ……どう?早弥の声に聞こえるだろ?こいつに噛まれるとしばらくの間、声を自由自在に変えられるんだよ。しかもちゃんと元に戻してくれるし」

 つまり、先程電話してきたのは、早弥ではなく剣だったということ。
 理解した勉は拳を震わせていた。今にも襲いかかってきそうな勉が、カッと目を見開くと――

「す、すげえ!!」

 輝かしく目を光らせていた。つまり、変幻自在の七色の声を持つことができるということ。アイドルの一之瀬来未ちゃんにあんなことやこんなことを言わせられるってこと!!
 ワクワクが止まらなかった勉である。

「勉もどう?……あっ、せっかくだからさ」

 剣が何かを思ったらしく、『マウスピース』に何かを吹き込み勉に襲わせる。身の危険を感じて逃げようとする勉だが、逃げられることはなく、『マウスピース』は勉の身体をよじ登る。そして飛び跳ねると耳にかじりついた。

「ぎゃああああ!!!耳を齧るなあ!!」

 痛さで暴れる勉。バタバタと部屋中揺れている。勉は一通り暴れ終わった後、気を失ってしまった。

「あらら……こんなことになるとはね……」

 困った剣であったが、軽く顔を二、三回たたくと勉は目を覚ます。『マウスピース』も勉から放れる。勉の耳にはピアスが止まりそうな小さな穴が開いていた。

「大丈夫か?」
「もうネズミは嫌いだ……」
「あはは……(傑作だったよ)」
「なんだと!……って、あれ?」

 勉の怒りがまた疑問に消されていく。剣はまたも含み笑いをしていた。

「ん?」
「いま、笑い声の後になんか喋ったか?」
「(しゃべったよ。この声、聞こえる?)」
「な、なんだあ!!?」

 剣の口は開いてないのに耳には剣の声が入ってくる。勉は驚いた。

「耳を齧られると、心の声が聞こえるんだ。ね?『マウスピース』って凄いだろう?」
「ん……にゃああ」

 「ああ」って言おうとしたのか、勉から変な声が出たが、剣は全く気にしていなかった。

せっかくだから外に出てみようよ。まだ『マウスピース』の面白いところ、見せてやるよ

 早弥の声で語りかける剣はまるで早弥になり切るかのように積極的に外に飛び出そうとしていた。
 勉も耳に開いた穴を気にしながらもこれから起こりそうな楽しみを考えるとワクワクせずにはいられなかった。


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 無駄足に終わった勉の成果に、家に帰ってきても気力がわかない。
 背中に汗をかいていたため、身体が寒くなってきていた。シャワーでも浴びて全てを洗い流すことにする。
 全裸になり風呂場で適温になったシャワーを頭から浴びる。
 
「…………なんだかなぁ……」

 期待が大きかっただけに先程の電話の意味が良く分からない。早弥ちゃんが勉をからかったというのが筋だろうが、なぜだろう、早弥ちゃん本人すら電話した記憶がなかったかのような対応。車に消えた早弥ちゃんは何故勉が柏木家に来たのかを知らなかいように思えた。

「…………あれは一体……」

 別人が電話をかけた………まさかな……。

 シャワーを止めて風呂場からあがると、頭を乾かす前に携帯電話が鳴った。
 柏木剣からだった。
 剣は柏木家に残っているはずだ。となるとこの電話のタイミングからいって、からかいの電話の可能性が高かった。

『おまえ、俺の妹に会いに来たんだってな……このロリコンがあ!!!』

 ………少し電話を取り辛い。
 とは言うものの暇な休日、誘いの電話かもしれないし、勉は電話を取った。


「……私だ」


 大塚〇夫さながらの太い声で返事をするのが剣との一種のコミュニケーションである。


『御機嫌よう、アンダーソン君』


 大塚〇忠さながらの……ではなく、なぜか深見 〇加っぽい声…って、

「あれ?なんで……?」

 男性ではなく女性。剣ではなく、電話をかけてきたのは――

『なんてね、お兄ちゃん』

 先程、車で出かけたはずの早弥ちゃんだった。

『あはは……どうしたの?いつもの調子が出てきてないよ?』

 面白そうに笑う早弥に勉は自分を取り戻す。

「それはそうだよ。……なんだ。家に帰って来たのか」
『私は家から一歩も出てないよ?』
「えっ?だって、さっき――」
『それより、勉お兄ちゃん。お願いがあるんだけど聞いてくれる?』

 勉の言葉をかき消すように早弥は声を張り上げた。

「お願い?どうしたの、俺に相談なんて?」
『うん。たいしたことじゃないんだけどね……』

 勉に対するお願いだ。お兄ちゃんとしての立場として、できることなら全力で応えようと思っていた。
 早弥は言った。

『勉お兄ちゃんに、私のオナニーを聞いてほしいの』




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 携帯電話ではなく家電にかかってきたので、親に呼ばれて受話器を渡される。
 
「もしもし?」

 家電で話をするなんて久しぶりだった。親友や会社の人なら携帯電話にかかってくるものだ。
 となれば、勧誘、広告の線が濃厚。いったい誰がかけてきているのか興味が湧く前にけだるく返事をしてしまった。

『もしもし、わたしー?』

 耳元に女性の声が聞こえて勉は驚く。しかも勉の知っている人の声だった。

『えへへ。誰だか分かる?』

 笑いながら質問をするまだ幼さの残った声。

「分かるよ。早弥ちゃんでしょう?」

 『あったり~』と電話越しに喜ぶ声が聞こえた。柏木早弥―かしわぎさや―。同級生の剣―つるぎ―の妹である。なるほど、確かに早弥ちゃんには電話番号を教えてはいなかった。

(しかし、一体早弥ちゃんが俺に家電で呼ぶほどの用事があるとは何事だろうか)

「どうしたの早弥ちゃん?何か用かな?」

 電話の奥で改まる様に早弥は口を開いた。

『ん……あのね。……勉くん、これからひま?』
「暇だけど?」
『家に来ない?これから家族みんなで出掛けるの』

 早弥から聞かされるまさかのお誘い。家を開けるということは家には早弥一人だけになある。そこに、勉自身が入って行ったら――

「早弥ちゃんを置いて!?剣は何をやってるんだよ!!?」
『私が残るって言ったの。……その意味、分かるでしょう?』

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 電話の奥で思いきった自分を隠すように甲高い声で笑っている早弥が見えるような気がした。

「さ、早弥ちゃん……マ・ジ・で?」
『待ってるよ、勉お兄ちゃん☆』

 ――プツッと電話が切れた。勉の中で燃料が投下されたように闘志が込み上げてくる。

「うおおおおおおお!!!!」

 今から出掛けて早弥のいる柏木家は15分……いや、走って10分で到着してみせる。
 服を着替え、ランニングシューズを穿いた勉はスタートラインに立つかのように玄関のノブに手をかけた。

「ちょっとこれから出掛けるから!」

(よーい……)

 ――ガチャ

(――スタート!)

 ドアを開けた瞬間、勉は一気に加速して道路を駆け抜けていった。

  
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