純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『立場変換』 > 名刺+水晶『偽物の役者』

「カット。じゃあ次のシーン行くよ」
「愚民ども、準備して」
『イーーー!!』

 一つのシーンが終わり、緊迫感から解放されてようやく一息つく。

「やれやれ、ようやくか……ん?」

 雑用の俺がふと目を向けると、今日休んでいたはずの田中重信がひっそりと顔を出した。その後ろに――

「な、なんだとうう!!?」

 ――五人の来未を引き連れて。
 会場がざわつき始める。そんな中で重信が叫ぶ。 

「そんなので満足しているのか?ダメだダメだ!全然なってない!特に一ノ瀬来未の動きなんて妥協でしかない!それなら我らミクレンジャーの方がよっぽど良い動きをする。――主役をかけて本物偽物関係なく、勝負しろ!いや、役者全員総とっかえで勝負だ!!」
「な――」

『にーーーーーーー!!!?』と皆が声を揃えて叫んだ。

「シゲ!なにバカなこと言ってる!ほら、謝れ。監督や役者の皆さんに」
「触るな!!俺はもう止められない」
「止まれバカ!すみません、監督。こいつ昔からバカなこと言いだすから――」

 監督が呆れてものも言えないと思い、怒っているようにも見えた。だが、監督はしばらくして顔をあげると、

「承認」

 とだけ呟いた。えっ、それって、つまり、認めちゃうってこと?

「ありがとうございます」

『え~~~~~!!!』と会場がどよめく。重信が五人のクルミに声をかけた。

「いくぞ、ミクレンジャー!」

 襲い掛かるクルミたち、慌てる一ノ瀬来未だが、それをカバーする仲間達。

「監督がそう言うなら、私たちも立ち向かおう」
「み、みんな!」

 それぞれ散っていくメンバー。激しい戦いが今、始まる。 


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

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「えいっ、はっ」

 ソフィが懐から爆弾を投げる。不意打ちを喰らった紫来未が尻もちをつく。

「きゃあ、いたああい」

 口で言いながらも手応えなさそうな表情。まだ紫来未は本気じゃなかった。

「私に手を出したら、『後』が怖いわよ?」
「あとなんかないわよ!これでトドメよ!!八方大火輪――」

 ソフィが大爆弾を放つ前に――

「『あと』……?違うわよ。『うしろ』よ、うしろ」

 紫来未がそう呟いた。はっとソフィが背後に振り向いた先、集められた愚民達が列を成して群がっていた。

「クルミちゃんに手を出すんじゃない!!!」
「ちょっとあなた達!!?」
「問答無用、イーーーーーーーーーーー!!!」

 妙な奇声と供に襲い掛かる愚民たち。

「いやあああ!!」

 ソフィは波にさらわれてしまった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

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「みんなを助けなきゃ。僕が守らなきゃ」

 ウルドが目の前に立つ翠来未を睨みつける。姿は来未そのものだけど、ウルドは敵だと思って必死に自分を奮い立たせ、素早く魔法をとなえる。

「無理しなくて良いのに。キミ、黒魔道士でしょう?逆に守ってもらわないとやられちゃうよ?」
「なんで、僕のことを――」

 翠来未が大きく息を吸い込んだ。

「みんな、助けてえ!!」

 翠来未が悲鳴を上げる。その声に、
 ――ザッ

「イーーーーーーーーーーー!!!」

 愚民どもが終結した。
 ウルドは息を呑んだ。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 マヤが拳を振るう中、蒼来未が必死に防御する。繰り出される重い一撃も、蒼来未は見事に受け流していた。

「その身体でよく鍛えられている」

 敵ながら敬意を表する。

「力だけじゃない。バネのしなやかさ、そして若さこそ強さの秘訣だ」
「……面白い」

 マヤが懐から剣を抜いた。鞘に入っていたとは思えないとてつもなくでかい剣だ。人並では重くて振ることすら出来なさそうなのに、マヤは片手で担ぎあげた。

「魔剣レーヴァテイン。貴様にこの一撃耐えられるか?」

 それを見て蒼来未も『剣』を抜く。その姿にマヤは驚いた。

「なんだ、それは――?」

 ――剣なのに刃はなく、剣なのに滑らかさがなく、
    剣なのに柄はなく、剣なのに長さに際限がなかった。

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「秘剣如意棒。棒だからと侮るな。天地を貫き、世界を真っ二つに両断する剣だ」

 蒼来未が先に跳んだ。振りあげられた如意棒は地平線まで轟いていた。

「――刮目せよ!この身に刻め!であああああああ!!!」
 

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「皆だらしないの。回復が追い付かないじゃない」

 愚痴をこぼして安全場所へ避難するリディアに朱来未が追い付く。

「そうやって楽してきて、あんた何様なの?」

 朱来未がリディアを殴った。赤く腫れる頬。リディアは目に涙を溜めていた。

「……殴ったわね!マネージャーにもぶたれたことないのに!」

 それを聞いて朱来未はブチ切れる。我儘で傲慢なリディアに、手を震えていた。

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「だからあなたは甘いのよ!――あなただけには、負けるわけにはいかないんだからあああ!!!」



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 久しぶりにクルミと二人きりになる。
 テレビを見て本物の来未を見ている彼女は今、なにを思うのだろう。
 ――と、急にクルミが立ち上がり俺を外に連れ出した。
 ずっと着ている橙色の戦闘服。すっかり定着して今では脱ぐこともしないくらい肌についている。

「カントクに出会えて、いろんな私を見てきた」

 今まで表立つことも出来なかった様々なクルミ。同じ姿であっても、決してみんな違った個性を持っていた。本当に濃い。皆が一つに合わさるからそれが現場の色なのだろう。

「クルミはどんなキャラになりたい?いや、どんなキャラになったところで、クルミであることに変わりはない」

 俺の言葉を聞いてクルミは微笑んでくれた。

「――可能性は無限大だ。怖がらず前に進めば道は出来る」

 くさい台詞だ。だけど、生涯で一度は言ってみたかった台詞だ。俺なんかが教えられる立場にないことは分かっているし、雑用がお似合いだっていうのも知っている。だけど、俺が磨いた舞台の上を踊ってくれるのなら、俺は喜んでクルミに道を譲ろう。

「カントクに出会って良かった。例え私がもう舞台に上がらなくてもね」
「…………えっ?」

 俺は拍子ぬけた声を漏らしてしまった。笑顔のまま今までの努力をすべて流してしまおうしているのか?一体どうしたと言うんだ。

「カントク。わたし、偽物なんだよね?」
「!?どうして――」
 最初にテレビで出ている来未は身代わりだと言っていたのに――

「あっ、やっぱりそうなんだ。じゃあテレビで出ているのが、本当の来未なんだね?」

 俺はまんまとクルミに鎌をかけられた。そうだ。俺の目の前にいるクルミは『名刺』から生み出した来未の偽物。俺が独りよがりで生み出した、表立つことのない来未なんだ。

「ごめんな、クルミ。俺のせいで迷惑をかけた」
「どうして?私は気にしてないよ。逆に良い思い出が出来たと思ってるよ。本人が聞いたらきっと羨ましがるような体験を、カントクのおかげで私はいっぱい味わったよ。だから、なにも後悔してないよ。――いつか消えることになったとしても」

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 笑顔がふっと曇り始めた。俺は見るに堪えなくなり、来未の小さな身体をぎゅっと抱きしめた。

「――来未!!」

 来未が息を飲んだ。俺に抱かれる感触を味わったからか。お互い様だ。俺も来未の温かさを感じているんだから。

「俺の中では、お前が本物だ。他の誰もが気付いてくれなくて良い。お前には俺がいる。俺がファン1号だ!!そして、俺の後ろには千人の『名刺―なかま―』がいるんだ!!凄いだろ!?本物にも負けねえファンサービスを考えてくれよ。――だから、来未。消えるなんて、そんなこと言わないでくれ!!」
「…………」

 俺は自然と力が入る。でも、来未は決して苦しいとは言わなかった。

「俺が生み出したってわかってる!罪を犯したかもしれないのも重々承知だ!でも、それは俺が決める!クルミが消えるのは、俺が必要としなくなった時だ!!それまで絶対消えるんじゃねえ!!これはカントク命令だ!!」

 カントクの威厳を出そうにも、涙を流しながら話す俺には全くない。俺は監督失格だ。でも、俺を監督と呼んでくれた五人のクルミだけは俺が守りたいと思った。
 そして、そんな彼女たちを作り出したクルミ、お前だけは――

「他の誰よりも来未が大好きだ」

 ――俺が絶対に幸せにすると心に誓った。

「ありがとう。カントク」


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 紫来未ならぬソフィは謎が多い女性だ。あまりテレビにも出たがらなかった彼女がどうして今回出演を承諾したのかもわからない。だが、今や紫来未として蒼来未と供に皆を引っ張っていくお姉さんキャラ的存在だ。いや、むしろ翠来未や朱来未が頼るのはソフィの方だ。癒しキャラっであり、先導できる紫来未はまさにオールラウンジに対応できるのであろう。
 で、今回。俺は紫来未と一緒に彼女の練習に付き合っていた。

「ひゅーひゅー!いいぞ!」

 カラオケでマイク片手に歌う俺。紫来未がノリよく歌わせてくれたので、一曲丸々歌いきる。

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「熱唱してしまった。なぜこんなことをしているのだろう?」
「いいじゃない。楽しくやらないといざというとき力が出ないでしょう?さ、カントク。飲んで飲んで!!」

 歌い終わった後に笑顔でお酒を勧めてくる。

「お酒は俺――」
「かわいい、かわいい、カントク飲むとこみて見たい。ハイハイハイ♪」

 なんという飲み会のノリ。これは男として飲まなければならない。ぐいっとハイボールを一気飲みする。

「ひゅー!!」

 拍手をして称える紫来未。

「さあ、次は――えっ?」

 空いたグラスの変わりになみなみ注がれたハイボールを持たせる。

「なに持ってるの!?なんで開けないの♪?」

(えええええー!!)

 紫来未、こええええええ!!!



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 朱来未―アカミクレンジャー―ならぬリディアはクルミと同じくして十代にして売れっ子アイドルである。
 出演するはヒットし、今や多忙な毎日を過ごしている。
 だが、クルミと違うところは、人気のせいで少々我儘になってしまったことである。

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「おんどりゃああ!!練習サボって何処に言ってるかと思えばああ!!」

 喫茶店のテラスでくつろいでいる赤来未を見つけた。だが、当の本人は全く聞いておらず、優雅にベノアティーを飲んでいた。

「ねえ、カントク。わたしケーキが食べたいの」
「クルミちゃんの為なら全力で買いに行く――っておい、カントクになに注文してるんだよ」
「あなた、カントクらしくないから頼み易いのよ」 

 ぐむっ、ごもっとも。

「それにわたしって有名人でしょう?マネージャーいないんだから世話しなさいよ」
「他人にすべてやらせるようじゃ碌な大人になりゃしないぞ。そうやってみんな消えていくんだ――ってこらー!人の話を聞けー!!」

 赤来未を見ながらキャーキャー騒いでいる野次に手を振るのも有名人の仕事か。とにかく俺は赤来未に振り回されていた。




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 蒼来未―アオミクレンジャー―ならぬマヤは30代後半として実力は折紙付き。特に役に入りこむ力はすさまじく、今回の、パワー系女戦士という役に打ち込もうとして鍛えた筋肉は改めて女優の凄さを目の当たりにした。
 だが、俺の求めるミクレンジャーには彼女にとってさらにペナルティを課せられた。クルミの身体というハンディキャップだ。
 元々筋肉質ではない来未の身体に蒼来未は如何に立ち向かっているのか。

 夜の校庭、蒼来未は一人体力作りに勤しんでいた。長距離や鉄棒で汗をかきながら、一から体力を作り出す。大きい汗粒を流し、息を切らしながらも、決して二時間やめようとしない。それが彼女の課した練習量だった。

「ふう……」
「お疲れ。ほい」

 ペットボトルを渡すと、「ありがとう」と礼儀正しくお辞儀する。出来た御人だ。

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「どうだ、身体の方は?」

 水分と取りながら蒼来未は笑った。

「若いとは良いもんだな。確かに体力はないが、やってやれないことはない」

 格好良いことを言ってくれる。何故だろう、凛々しくてクルミに全く見えない。

「二時間だろ?今までの身体と違って体力もなくて大変じゃないか?」
「それは違うぞ、カントク。体力は人それぞれだ。だから練習量も人によって変わる。マヤの身体にはこのくらい、そしてクルミの身体にはこのくらいと変えていいんだ。
 みんな同じじゃなくていい。残念だが、マヤの時より練習量は格段に減ったが、それは若さで十分カバーできる。いや、今から続けていけば同じ年になる頃には私より遥かに体力がついているはずだ。見ろ、既にちょっとの腹筋でお腹が割れてきたぞ」

 お腹を見せると、本当に少しだけ割れていた。

「すげええ」
「カントクも汗を流さないか?気持ちいいぞ。特に今日は涼しくて絶好の運動日和だ」

 「遠慮します」と即答だった。つまらなそうな顔をした蒼来未だが、再び休憩を終えて第二ラウンドへと始め出した。



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 まず俺が最初に手潮をかけるのは、翠来未―クミドレンジャー―ならぬウルドくん。

 そう、彼は唯一の男性なのである。つうか、ショタキャラ……。監督がどうしてウルドくんを採用したかは定かではないが(推測するに、時代のニーズ)、そんな彼が来未の中に入ったらどうなるのかすごい期待していた。

 だが、五人の中で一番最初に家を飛び出していったのも彼である。尤も興味あると同時に最も悩みを抱えていそうだったので、俺は翠来未を追いかけた。
 すると、近くの公園で緑来未を発見する。噴水のあがる綺麗な公園で一人、項垂れていたのだ。

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「ハァ、どうしてボクがこんなことに……」

 来未がボク口調で話している。うう、萌え。

「どうした?なにしょげてるんだい、若者よ?」
「カントク……」

 俺は翠来未の隣に座る。悩んでいる姿は来未で見てきたが、それ以上に深いと思ってしまった。

「ボク、これからどうなるんですか?」
「どうなるとは、どういうことだい?きみらしさを見せてくれれば俺は嬉しいんだがね」
 「そうなんですが……」と、翠来未が胸の内を明かす。
「男の子なのに、みんなを引っ張っていかなくちゃいけないのに、顔向けできないじゃないですか?」

 メンバーには、来未や心愛という年齢が近い子供たちがいる。その中で同じ年代の男の子として、引っ張っていかなくちゃいけないという使命感がある、ということらしい。
 そういうことか。それならば俺は応えよう。

「小さいなあ!若者よ」

 翠来未が俺に振り向いた。

「男が引っ張るだとか、女が付いてくるとか、俺の役者にそんなもの必要ない!みんなクルミだ!みんな弱い女の子だ」

 出演者には一ノ瀬来未しかいない。それが未来戦隊ミクレンジャーだ。

「ボクも、ですか?」
「翠来未も女の子だ!だから悩むときはもっと大きなことで悩め!もし小さなことで悩む様なら――俺に言え!!」

 ――演技が上手く出来ない、
 ――関係がうまく作れない、
 悩み、結構じゃないか?独りで悩まず、男の俺がドンと答えてやる!
 正しいか正しくないかは分からんが、感想、意見は述べてやれるからあとは自分なりに考えて噛み砕いてくれ。

「だから、俺に最高の演技を見せろ!!」

 後ろの噴水が高く上がる。

「はい、カントク」

 悩んでいた翠来未の表情が一気に明るくなった。


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「うう、う、ううう……」

 泣いてちゃせっかく着せた服が全く生えない。
 一ノ瀬来未は延々泣き続けているので、俺は彼女が泣きやむように精一杯の誠意を尽くす。

「あのな。俺は別に楽しませてと言ったが、来未ちゃんの為を思ってのことだぞ。監督に毎回怒られているようじゃ気が参るだろ?俺はそんな姿を見たくないから、力を貸すと言ってるんだ」
「でも、テレビに私がいる」
「あっちは偽物だ!来未ちゃんがゆっくり休んでもらうために出したスケープゴートだ」
「……ふえっ、そうなの?」

 ようやく来未ちゃんの涙が止まる。

「そうだ。だから来未ちゃんは俺の指導のもとで自分なりの演技を見つけてみろと、こういうわけだよ」
「…………じゃあ、この服は?」

 それは俺の趣味だ、というのは死んでも明かせない。

「泣くことでも真剣にやっていれば着ている服など関係ないということを証明したんだ。まだ来未ちゃんはコスプレ服に恥ずかしがっているところがあるね?」
「………………うん」

 あ、やっぱりあるんだ……

「だろ?だから、それよりももっと恥ずかしい服を着せたんだぞ。もう恥ずかしくないだろう?」
「………うん」

 改めて来未は今の自分の格好を見て顔を赤くしていた。可愛いと思ってしまった。

「よし、じゃあ練習するぞ」
「はい!先生」

 来未ちゃんに先生と呼ばれるとにやけてしまう。来未は服を脱ぎ、ジャージに着替えようとしていた。
 俺は制止させる。

「あっ、ちゃんとコスプレ服があるから、これを着て練習するんだぞ」

 来未が目を丸くしていた。



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「カットカット!!」

 撮影を監督の声が一刀両断する。

「なんだ、その動きは!?だらけた動きなんかしても全く迫力が出ないんだよ!!それでも正義の戦士になりたいと思うのか!!?これで子供たちに感動を与えられると思ってんのか!?ごっこなんかに興味ないんだよ!!恥ずかしさを捨てろ!!」

 その威厳や迫力に出演者もだが、聞いている俺たちでさえもビビってしまう。

「怖いねえ、カントク」
「辞めちまうだろうなあ、特に来未はなあ」

 一ノ瀬来未―いちのせくるみ―も今回の撮影で抜擢された俳優のタマゴだ。明るい黄色い髪と色を合わせた服は見事にマッチしていた。
 太陽に下に咲く向日葵――

「可愛いんだけどねえ」
「監督とは合わないだろうなあ……ありゃあ才能を潰されちまうぞ」

 ――笑っていればそう見えるのだが、今は監督の怒りに触れて涙目だった。

「来未!やる気ないなら帰れよ!!泣いてたって使えなきゃいらないんだよ」
「す、すみません!!」

 頭を下げて謝る彼女だが、監督が去った後も自分の演技に何がいけなかったのか首をかしげて悩みふけていた。

「どうして彼女を残したんだろうな?」
「今の世の中、オタクの力が偉大だってことだろ?」
「やっぱそうだよな?じゃなきゃ監督が入れる訳ないよな」
「五月蠅いぞ、雑用!邪魔するな」
「すみません」

 俺たちは仕事に戻り、撮影はすぐに再開されるのだった。
 だが、一日中カメラをまわしても、監督が「オッケー」を言うことはなかった。
 

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