純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『常識改変』 > 眼鏡『園長がかける色眼鏡』

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 野村動物園。昨日より今日、今日より明日と、それぞれの頑張りもありお客様の数は着実に増えていった。

「園長のおかげで、動物園に大勢のお客が戻ってきましたね」

 こころが大喜びではしゃいでいる。動物たちを見に来る人たちの笑顔にこころも救われているのだ。

「俺だけじゃない。皆の力あっての動物園だ。これからもみんな力を合わせて頑張っていこうじゃないか!!」

 何事も仕事はチームプレイだ。ここおろ、姫子、鳴海、風鷺。皆がいるから真も動物園を経営できる。手を挙げて供に頑張る仲間たちに激励を飛ばすと、

『はい!!!」

 四人はそれぞれ笑顔で真と同じように手を高く空に向かって掲げた。
 
 そんなとき、五人の耳にお昼のニュースが流れ始める。


「えー。ジャイアントパンダの比力(ビーリー)と仙女(シエンニュ)が昨夜、上の動物園に到着しました。「中国から来たパンダ2頭が日中関係に新たな期待をもたらした」と報じる一方で、中国メディアの環球時報は「パンダ外交が効果を発揮」と報じました(笑)。
 上の動物園付近では、「パンダたちによる集客増によって収益は増え、レンタル費用を大きく上回るだろう」との声もあがっている(嘲笑)。神原外相は「人気者になって、たくさんの方に見ていただくことで、対中印象が良くなることを期待する」とコメントを……(云々。」


「な――」

 テレビに食いついた真が一気にテレビに食いつきわなわなと震えあがった。

『なんじゃこりゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!』



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「ねえ、私をここから出してよ」

 檻の中できみが僕に喋りかける。

「どうして?」
「私は自由になりたいの。檻の中にいたくないの。あなたはいいわよね、外で大きく翼を広げられて、さぞ気持ち良いでしょうね?」

 初めて会った僕ときみ。僕の第一印象で、きみはとても不機嫌そうにしていたね。

「自由だと思う?」
「ええ、とっても」
「……それは間違ってるよ。僕は全然自由じゃない。法だ、権利だ、戒律だ、上下関係だ、――――縛られるものばかりだ」

 拘束が人生だ。生きることが束縛だ。
 きみはそんな僕の発言で、初めて意外そうな一面を見せてくれた。

「僕から見たらきみが檻の外なんだ。僕の方が檻の中にいるんだよ?よく見てよ、――きみは自由だ」

 僕の想いが伝わったのか、きみはフッと微笑んでくれた。

「そう、なんだ。私の方が、自由なんだ」

 一度笑った顔はとてもおかしく、きみはお腹を抱えて笑い転げた。
 そんなに笑ってくれると、僕の想いも馬鹿みたいで可笑しくなって、きみにつられて僕も笑った。

「あはは……こんなちっぽけな檻の中に、大空はあったんだ」

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 きみが見つけた大空。僕が教えてくれたからか、きみは頭を下げて一礼をくれた。

「だから、僕の分まで君は翼を広げて飛び立ってよ。人々の願いを、この大空に叶えてくれ」
「きみは何を願うの?この檻の中なら、私でもひょっとしたら叶えられるかもしれないよ?」
「じゃあ、僕の願いは――」

 考えながら頭上を見上げる。
 見上げた空は青く、僕はなんてちっぽけな存在だろうか。

 それでも、きみと別れた後、僅かな時間だけでも――

 きみからもらった優しさの言葉を持ってまた歩き出す。




 題:『飛べない鳥』




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 空の動物園は一風変わった作りになっており、崖の上に建てられている。
 そこからだと鷹や鷲、隼など、大翼を広げて飛ぶ鳥たちの生き生きしている様を間に当たりに出来るのだと、指揮をとる三浦風鷺―みうらふうろ―は言う。

「知ってます?アホウドリって翼を広げると全長は二倍近くになるんですよ?でも、陸ではとてもにぶくて、簡単に捕まえることができるから阿呆鳥って名付けられたんですよ?私はそれが可愛くて溺愛しています。阿呆じゃなくて天然鳥にしましょう!天然記念物みたいで人気急上昇です。国を象徴する鳥に認定しましょう!――国鳥、天然鳥!きゃああ!!イイ!!」
「飛躍しすぎだ。阿呆鳥が国の象徴になったら――――」

 まんまじゃないか……もっとやめてくれ。
 空を覆い尽くす様々な鳥の群れに、空中水族館ならぬ空中標本館ができるのが空の動物園の売りだった。
 そういう奇抜発想なアイディア、俺は嫌いじゃないぜ。

「カラスだ、ワーイ!」

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 足元のゴミを漁っているカラスに風鷺が駈け出していく。黒一色のカラスのどこが面白いのか分からない。

「おい、おちるな、よ?」
「わあああああ!!!!」
「なあにいいいいいいいいいいいい!!!!」

 風鷺が落ちた。谷底に真っ逆さまに落ちていって、遠くで水しぶきの音が聞こえてきた。

「―――ふうろおおおおぅ!!!」

 なかなか浮かんでこない風鷺にもしやと思い身を案じる。
 こころが慌てふためいている。

「え、園長!!?どうしましょう!?」
「こころは急いで救急車を呼べ。鳴海にも協力してもらって風鷺を探し出すんだ」

 的確な指示を出しながら真も服を脱いで下着姿になる。

「はい。……で、園長?なぜ脱いでるんです?」
「時間が惜しいからだよ!!ふうろおおおぅ!!!」
「えええええ!!!?」

 真も崖から宙に消えた。こころの耳にも微かに水しぶきが聞こえてきた。

「園長!?バカア!!!」



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「そんなことがあったんですか。鳴海さんも大変でしたね」
「そうかしら?海の動物たちを知るためですから、仕方ありませんよ?」
「……で、そのための格好ですか?」
「肌にぴったりくっつき水を弾くスク水は、まるで海の動物たちの皮膚のよう。触ってもいいですよ?」

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 もともと水着にYシャツ姿だった鳴海が今度はスク水に変えていた。鳴海の身体のラインが浮き彫りになり、こころは視線を泳がせていた。

(な、鳴海さんの胸、とってもおおきい――)

 こころの鼻息が荒くなり、ゆっくりと手を伸ばしているときに、真からの館内放送が流れた。


「大変だ!海にクジラが打ち上がったぞ!!今すぐ集まってくれえ!!」

 
 どうやら慌てている様子で口調がほぼ地の喋り方になっていた。鳴海も海の動物園を管理している分、いち早く飛んでいく。

「たいへん!?」
「急ぎましょう」

 海の動物園エリアはまっすぐ進むと本当に海へ繋がっている。
 こころと鳴海は急いで駆け付けた。


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   野村動物園の三つのブロック。――海の動物園。

   水族館を始め、外に出て白クマやペンギン、そしてイルカショーまで開催していて、連日お客様が入ってくる。
 そこで指揮をとるのは、佐原鳴海―さわらなるみ―。厳しさと優しさをあわせもつブリーダーである。アザラシに餌をあげている鳴海の背中に真は声をかける。

「そこでだね、鳴海くん。どうにかして海の動物園にもお客様が入るような見世物を増やしたいんだが、何かいい案は――」
「――シッ、待て…まて!!」

 急に鳴海が張り詰めた声で制止させるので、真は口を閉ざしてしまった。一分間という長い沈黙だ。

「はい、みんな食べていいぞ。よく頑張ったね」

 アザラシたちが一斉に動き出し食事にありつく。ニコニコと笑顔で見守る鳴海が背後に何かを感じ取り、初めて真に気が付いたかのように作り笑顔を見せていた。

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「……で、何の話でしたっけ?」
「話を聞けえええ!!」

 集中するのはいいことだが、指揮官たるものは園長をもう少し尊重してほしいところである。
 もう一度同じ話をすると――

「私は私で頑張ります」

 あっさりした返答がくる。……それだけかよ。

「君たちがもっと動物たちの良さをアピールするように創作意欲を湧きあがらせないでどうする?」
「私はちゃんと言ってるじゃないですか。白クマのダイブする目線に合わせた窓作りだとか、イルカは人を溺れさせない様に泳ぐ習性を利用した遊覧だとか」
「そこで満足していてはだめだ。野村動物園では次の一手を考えるのだ。常に最前線を目指す動物園でなくてはならない!!」
「…………はぁ」

 そっけない返事である。そこで真は今までにない画期的なアイディアを取り上げてみる。

「そこでだね、海と言えば新鮮さが売りだ。活きの良いものの試食を取り入れてみてはいかがだろうか?」

 動物園での試食会である。

「動物園にいる子たちを食べるというんですか?血迷いましたか!?」

 鳴海が猛反発する。今までにない怒りを露わにしている。

「誰が動物たちを試食にするといった?試食に出すのは――きみだあ!!」
「………えっ、わたし!!?」

 指を刺して鳴海に『色眼鏡』を向ける。

「きみはマグロだ。海から仕入れた活きの良いマグロだ」
「…………」

 真が叫んだ瞬間、鳴海が反論するかと思いきや、急にその場に倒れこむと、腹筋を使って跳ね始めた。

「ピチピチ、ピチ」

 両足を上げ、腰を浮かせ、まるで海からあげられたマグロそのものである。真は鳴海を担ぎあげると、「とったどおおおおおおおおお!!!!」と、一度やってみたかったことをした。

「…………よし、台所に行こうか」

 腕の中で跳ねる鳴海を観客に見せながら、真は裏へと消えていった。


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「姫子さん可愛い可愛い。本当に猫みたい」
「うう、ひどいにゃん!ねこじゃないにゃん!」
「そのしゃべり方は反則です。ああ、布団に一緒に入って寝込みたい!!!」
「ふにゃあああん!!」

 人がいない関係上、言葉をしゃべるまでに戻した姫子だったが、猫耳と尻尾は消えることがない。いや、逆にその方が人気になっており、彼女見たさに男性客が押し寄せてきてしまっていた。
 姫子は迷惑しているようだが、こころとしては万々歳だ。


「ここは今から絶滅保護区域に指定!!絶滅動物を守れシリーズ!!」


 館内スピーカーから突然、真のタイトルコールが聞こえてきた。あまりにハイテンションなために何事かと皆が目を丸くしていた。

「なんですか、突然?この声は――園長!?」

 放送室から出てきた真に声をかける。真は不敵に笑っていた。

「今や消滅しそうになっている絶滅動物たちを救うために新たに陸の動物園で開発したパークだよ。一晩で完成させた」
「わ、わたしの管理下でにゃにするにゃ!!?」
「だまらっしゃい!!言うこと聞かない悪い子は猫娘にするぞ、ごらあ!!」

 マジで真が怖かった。

「で、絶滅動物なんて普通飼えませんよ?園長は何を仕入れたんです?トキ?コウノトリ?ニホンオオカミ?」

 期待しているのか、こころは目を輝かせながら訪ねてくる。

「絶滅動物にも多々あるのだよ。それは見てのお楽しみだ。ヒントは……人間だって動物です」

 真の物言いに、只ならぬ嫌な予感をこころは感じていた。



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  次々と売れなくなってくる苦しい現代社会。
  そしてここに、また一つ潰れそうな場所があった。

 ――野村動物園。

 動物たちの飼育をしている館長、野村真―のむらしん―は最近訪れるお客の少なさに頭を悩ませていた。

「若者の動物離れか」
「一声目からその発言では若者に嫌われますよ?」

 まったくだ。真はライオンの餌をあげに来た林檎こころ―はやしごこころ―とため息を吐いていた。

「お客様が来ないと動物たちもかわいそうです。動物は一度来たお客様を絶対に忘れません。ずっと待っているのに、一度見に来て満足するお客様は失礼です」

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「そう言うな。動物にとってはその通りだが、俺らが相手にしなくちゃいけないのは人間様だ。動物の目線でやっていてはさらにお客離れを加速させるぞ」
「ですが、館長。このままでは――」
「待て、こころ。別に俺はお前の意見が悪いと言ってるわけじゃない。要は人間に動物の気持ちを分らせればいいんだ。俺に任せておけ」

 怒るこころを置いて俺は動物園の再編に全力を注ぐ。大丈夫。俺にはこの、『色眼鏡』があるのだから。

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