純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 鏡+鏡『心重ねて合わせ鏡』

 感度を生奈と共有していた雲雀だ。見ているだけでも十分に発情していた。動きたくても動けなかった身体。その封印を解き放つ。

「雲雀は動くことが出来るようになった」

 俺の声で雲雀は身体が動かせるようになった。そして、完全に火照った身体を静めるために、指をおま〇こに入れてかき回す。

「ハァ……ハァ……!」

 いやらしい水音が響く中で、雲雀は初めて俺の存在に気付いた。目の前に立つ男性。誰だかわからない素姓の知らない人物であるにもかかわらず、雲雀の瞳は俺に訴えかけた。

「熱いの……身体の奥が、燃えるようなの。……アナタに…静めてほしい」

 雲雀の瞳がそのまま声を出すかのように、俺に向けて身体を捧げる。

「ああ、いいとも」

 俺は雲雀の誘いをうけることにした。

 ………
 ……
 …

「ふわあ、キモチイイ」

 雲雀のモチモチでタプタプの巨乳に包まれた俺の逸物が、声を吐き出させる。パイズリなんて夢のようだ。優しい挟む雲雀の乳房に逸物はすっぽり包まれてしまった。谷間は深く、俺の逸物の亀頭部分だけが顔を覗かせる光景を見る。隠れた竿の部分全部が喜んでいるようだった。

「乳首……カリの部分に押し付けると………んんっ!」
「うはあ!」

 乳首で亀頭をなぞられると、身体中ゾクゾクして感度が高まる。
 雲雀は何度も乳首を擦りつけるように逸物に擦りつけ、互いに感じ合う声をあげていた。
 涎を垂らして亀頭を濡らしながら、自身の乳房にも流れ落ちて濡れていく様を見て思わず喉を鳴らしてしまう。
 涎を石けんに、乳房をスポンジに見立てて逸物を洗うかのように転がしていく。それがたまらなく気持ちいい。
 ヌルヌルで擦れた逸物に亀頭は赤く火照っていた。ギンギンに勃起した俺の逸物を、雲雀は大きく口を開いて咥えこむ。

「ふぅん…、ちゅっ…ちゅるっ…ぅんんっ、ぢゅっ…ぢゅるっ…くちゅ…ぺろっ、ぢゅるり…ちゅっ、ちゅぷっ……!」

 生奈にも咥えられた逸物は、今度は雲雀の口の中で泳ぎ始める。口内という不思議な空間に酔いしれ、ただひたすらに快感だけを味わう。

「ぺろびちゃっ……ちゅぶっ……じゅるじゅる……ぐぼ…、ぅえっ……!じゅぶっ…んぐっ……ごく…ごく……」

 イマラチオで奥まで咥えこんだせいか一度咽る雲雀だったが、口内では涎がさらに蔓延し、大量の唾液が塗りつけられていく。口の隙間から涎が垂れて床にこぼれたことにも雲雀は気付いていない。温かく湿った雲雀の唾液や吐息が、逸物を優しく包み込んでくれる。

「ああ、いいよ……すごく、いい……ひばり……」
「じゅぼじゅぼ……むぐ…レロ……はぁん……ごく、ぺろ……ぢゅるっ、ぢゅるり……」

 口から出たかと思えば亀頭の下からそっと舌をなぞらせて、睾丸を口に含んで玉を舌で刺激してくる。こんなところいじられたことがなかったので、それだけで絶頂に達してしまいそうだった。
 
「ぐっ……雲雀……もう、我慢できない!」

 ベッドに寝かせた雲雀の身体を俺は逸物を手に持っておま〇こに宛がう。毛の生えたアソコにも関わらずじとりと年甲斐もなく濡れている。俺のを咥えたいのを今かと待ちわびているようだ。
 その要望に応えるように、俺は腰を押し込んだ。ぐちゅりと、簡単に挿入でき、生奈よりも広く温かな空間に快感の波が押し寄せる。

「あっ、はあん!入ってくるわあ!……アツイ」

 雲雀が歓喜する。俺に手を伸ばしてぐっと抱きしめ身を寄せると、逸物は奥へと進んでいく。途中、つっかえることもなく、適度に膣壁に触れて小波が立つと、俺と雲雀は同時に身体を震わせ合う。

「はっ、はあっ……ひ、ひばり……さ……」
「あんん!!うぅ……くうぅ」
「あ、……ぐあああ――!」

 雲雀が力をこめると、膣内がぎゅっと縮まったかのように逸物を締めつけてくる。先程とは違い精液を絞り取ろうとしているかのようで、我慢して振り切ろうとするも声を荒げてしまう。
 さすが雲雀だ。自分の身体を使いこなせるお年になっているようだ。ならばお返しとばかりに俺の方からも腰を引いて逸物を一気に奥まで突き上げる。すると雲雀の身体に激震が走り、天を仰いで喘ぎ声をあげた。

「あああん!!ひさしぶりの……おちんちん……からだが気持ちいい……こころが満たされるわあ……もっと、ほしいのぉ」
「ああ、ひばりさん!ああ、がはあ――!」

 繰り返す様に腰を引いておま〇こに突き刺す。膣内の締まった肉壁がえぐられ、削られるかのような攻撃に雲雀はたまらず涙がこぼれる。それでもその涙は嬉し涙だ。嬉しくて笑顔がこぼれてくる。

「ああ、イイ……奥まで突いてええ!!もっと、もっと!」
「はっ、はっ、はああ!あっ…ふんっ…うう……はっ、はあっ……」
「きゃあああ!いいわ!ソレ、あっ、ああっ……くるわ。あ、ああん!!」

 パンパンという腰を打つ音が響く。雲雀の声がさらに高音になる。逝きそうなのだ。

「ひばり……俺も、いくよ!一緒にいこう!」
「中に出してええ!あつい精液を、ちょうだい!!」
「はあっ、あ、ああああ!イク!」
「ああああああんん―――!!!イク!イクイクイク、ああああああああ―――――!!!!!」

 二人で硬直し、一気に脱力する。子宮へと排出する俺の精液。一滴のこらず絞り取ろうとする雲雀の締めつけが心地いい。
 ゆっくりと逸物を取り出すと、コポポと精液と愛液も供に流れ落ちた。

「はぁ……ああん……あっ…ふぅ……」

 女性の体力は底なしと聞く。雲雀は既に息を整えつつあった。俺と目を合わせ、もう一回戦を望むかのような視線を送っていた。
 ――本当に素晴らし―エロ―い身体だ。

「ああ、気持ちよかった。最高だったよ、雲雀さん……」

 俺は『鏡』を持ち出すと雲雀の前に差し向けた。『鏡』の中を雲雀が覗いた瞬間、悪魔の手が伸びてくると、雲雀を掴んで『鏡』の中へと連れていってしまった。

「じゃあ俺が次は雲雀さんを演じるから、鏡の中で彷徨え」

 現実に雲雀が消えた。つまりそれは、俺が雲雀に変わったということだ。
 自分の身体がどうなっているのか見ることが出来ないので、変わりに生奈に見てもらう事にしよう。
 生奈を揺すって起こすと、気絶していた生奈がゆっくり目を開けた。

「ん……にゅう……?」
「起きなさい、生奈。こんなところで眠っていたら風邪をひいてしまう」

 生奈には俺がどう見えるだろうか。
 生奈が俺を見た。そして、フッと笑顔を向けた。 

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「はい、おかあさま……」




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「ハァ……ハァ……」

 逸物から精液が飛び出して手に付着していた。それも結局は生奈と同じである。どうやら俺の動きに合わせて現実世界の生奈に修正の手は加わるらしい。俺が逸物を握れば生奈は女性の敏感なクリトリスを触ったのもそのせいだ。また、逝きそうになったところで生奈は指を膣内に挿入して扱き始めたのも、俺との感度を合わせるためだろう。
 しかし、俺が言ったことで生奈だけではなく、雲雀まで逝ったのは面白かった。『覗いてはならない禁断の鏡―ラミネイト・ミラー―』の名の通り、覗けば現実世界に俺が増えていくようなものだ。

「ようし、じゃあ雲雀を鏡の中に入れて俺と交代だ!」
「残念ながらまだ雲雀さんの意識は強いみたいですね。もう少しいじらないと変身できません」
「なんとおおお!!!」

 まだ俺が楽しむ余地があるとは嬉しい。今のは生奈から見た雲雀の絶頂だ。今度こそ俺の手で雲雀を逝かせないと気が済まない。早くあの豊満なおっぱいに触りたい。

「俺が現実世界に行って楽しんでくるぜ!」
「待って下さい!」

 急にチリに呼びとめられる。急ぐあまり前のめりになる身体を起こし、ブレーキのかかった足が踏ん張りチリへと向き直った。
 チリは笑っていた。

「どうして『禁断の』って付くか分かりますか?」
「ん?……そういえば……」

 『覗いてはならない』が重要ではなく、『禁断』という言葉が『合わせ鏡』を表す。情報を知ることでも、変身することでも、映った姿を操るのではない。

「無限へ続く『合わせ鏡』……禁断の意味はもうすぐわかります。全ては『合わせ鏡』によって入れ替わるんです!」

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(それ、答えのようなものだろう……)

 チリの決め台詞に心の中で突っ込んでしまう俺も俺だが、
 ――入れ替わる、とはどういうことなのか。俺が禁断の意味を知ることになるのは確かにすぐのことだった。
 

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 気付けば夕方になり、日も暮れかけていた。
 伊奈穂が俺の言うとおりに動くようになったので、時々しているオナニーを観賞して愉しんでいたのだ。伊奈穂を見ている内に悶々としてきたので、再びレズって愉しもうと思った矢先に、

「ただいま」

 玄関から女性の声が響いた。きっと母親の声だろう。その証拠に、しばらくすると部屋に母、霧島雲雀―きりしまひばり―が顔を出し様子を見に来た。

「あら、生奈。お友達が一緒なの?」

 何故かブラは付けずにズボンも穿いていないラフスタイルだった。これが母の家の中の姿だ。この格好が楽なんだと言う。
 しかし、伊奈穂がいたことですぐに扉の裏に身を隠す。なんだかんだで伊奈穂も急いで制服を着こんだので衣服がかなり乱れていたが、雲雀は気にしていないようだった。

「もう夜遅いから。早く家に帰しなさい」
「もう少しだけ、いいでしょう?」
「ママ疲れてるの。言う事聞いてちょうだい」
「……はい、お母様」

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 雲雀が目を細くする。機嫌が悪そうだったので子供は大人に従うしかない。

(これから伊奈穂ちゃんと愉しむ予定だったのに……)

「ごめんね、伊奈穂ちゃん」
「いいよ、また明日遊ぼうね」

 玄関まで見送り伊奈穂が帰る。また会った時も伊奈穂は俺の言う事を聞いてくれるだろうか不安だが、現状で支障はなさそうなので素直に家に帰らすことにした。伊奈穂が帰り扉が閉まった。そうして俺はくっくっ……と一人で笑みをこぼしていた。

(まぁいい。さらに面白そうな女性が帰ってきたんだ。子供の身体じゃ物足りないしな。せっかくなら大人の身体で楽しむとしよう)

 雲雀の胸の大きさが今でも目に焼き付いている。胸に惹かれた俺はすぐさま雲雀に変身したいと言う衝動に駆られたが、それは何時でもできるので、まず母親の強気な性格を失わせる良い方法がないかを模索する。

「チリ」
「はい?」

 鏡の世界にいる悪魔に打開策を聞いてみる。

「お母様と楽しみたいのだけど、なにか良い案はなくって?」

 すっかり生奈の口調が身についてしまった。現実世界では俺が生奈になっているので、口調も自然と本人の口調になってしまうようだ。

「『覗いてははならない禁断の鏡―ラミネイト・ミラー―』を使いますか?」

 悪魔がほくそ笑む。『合わせ鏡』の代名詞でもあるネーミングだった。 まるで使いますかと問うているのに拒否権がないような物言いだった。

「そうですか、使いますか」

 と、言うよりチリの中ではいつの間にか俺が使うという選択をしていることになっていた。

「まだ答えていないんだけど……いいわ」
「では、鏡の世界へ戻ってきてください」

 チリに言われたとおりに鏡の世界に舞い戻る。名残惜しいが生奈の姿から再び元に戻る。

「で?なんだその、『覗いてはならない禁断の……』なんとかとは?」
「どうしてそこまで言って忘れるんですか!」

 いや、そこは怒るところじゃなくてつっこむところだろう?そんなことより早く説明をしてほしいものだ。

「『覗いてはならない禁断の鏡―ラミネイト・ミラー―』です。とにかく、『鏡』を見てください」

 現実世界と繋がる『鏡』を覗く。すると、鏡には玄関ドアが映っていた。人の目線の高さで映る景色。『鏡』で見ているはずなのに、先程まで見ていた景色そのままだった。

「あれ?この景色は……まさか」
「生奈の見ている景色です」

 チリが答える。と、いうことは、俺が鏡の世界に入ってしまったことで、現実世界で生奈が出てしまったことになる。せっかく逝かせて手に入れた被写体を易々手放したという事だ。

「じゃあ、また俺は生奈を逝かせないと生奈の姿に戻れないのか?」
「違いますよ。……あっ、そうか。この景色じゃ今、生奈がどうなっているのかよく分からないですよね?」

 チリが何かを唱えると、今度は『鏡』に生奈の姿が映し出された。間違いなく現実世界に生奈はいた。だが、何故かその目は虚ろで、意識がないようにただぼうっと立っているだけのようにも見えた。

「まるで鏡の世界の生奈だな」
「まるでじゃなくて、その通りなんですよ。いま現実世界に出ている生奈は鏡の世界の生奈です。だから、あなたが動く通りに生奈も動いてくれますよ」

 なに?と驚く俺に合わせるように、生奈がピョコンと横に動いた。虚ろな目で人間味も薄いが、俺が右手を上げると生奈も右手を挙げた。そうしてそのまま手を胸に持っていくと生奈も同じように手を胸へと持っていった。そのまま揉んでみると生奈の手も自分の乳房を揉み始める。
 面白くなって足をがに股にして腰を沈めて股割りをすると、生奈も乳房を揉みながら股割りを始めた。もし今玄関扉を開けられたら、生奈の醜態が迎えてくれる。

「おう、本当だ!こんな姿を見たら親は泣くだろうな」

 それを聞いてチリも俺と同じ笑みを浮かべていた。

「それじゃあ、私たちは鏡の世界で雲雀に会いに行きましょう?」

 これから楽しいことが始まりますよと、進行してくれるのは助かるが、一つの不安が込み上げる。

「それって、大丈夫か?生奈も付いてくるんだろ?」

 鏡の世界で俺の動きは現実世界の生奈に反映される。それが『覗いてはならない禁断の鏡―ラミネイト・ミラー―』の効果とは思えないが。今まで鏡の世界で好き勝手してきたのに、今回は現実世界で反映されてしまうことに抵抗があった。
 生奈の行動で雲雀が不信感を抱いたら楽しめるはずがない。

「大丈夫ですよ」

 そんな俺に対する不安を、チリは笑って済ませた。

「子供を拒絶する悪魔みたいな親なんて、いるわけないんですから」




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 生奈に攻められている伊奈穂。生奈にいじりたい衝動をずっと我慢して、ひたすらに生奈からいじられる感覚を味わい続ける。
 おま〇こ攻められるとさすがに声も我慢できず、膣内に入ってくる細い指を受け入れるように開いていく。するとにゅるんと入ってくる指の感触にたまらず声を張り上げてしまう。

(チリの奴、攻め方がうますぎる。……んあっ!やべえ、逝っちゃう……)

 俺は生奈の攻めはチリのものだと思っていたが、当の本人は知らずに責め立てているのだろう。顔を真っ赤にして伊奈穂を逝かせているという感覚に酔い痴れていた。

「伊奈穂ちゃん……いなほちゃん……!!」
「んああっ!い、ちゃう…おいな、ちゃん……!イク…!ああ、ふぁああぁぁああああ―――!!!」

 声を張り上げ逝った女性の感覚に酔いしれる。男性よりも強く長く続く痺れに全身の力が抜け落ちてしまう。
 でも、絶対にここで気を失うわけにはいかなかった。
 心配そうに顔を覗かせる生奈を安心させるように笑って答える。

「ハァ……大丈夫だよ。生奈ちゃん。生奈ちゃんが上手くて、とっても気持ちよくイケたよ……あはっ」

 ゆっくり身体を起こして生奈を抱く。

(今度はこっちの番だ!)

 意気込んで生奈を下敷きにして倒れこむと、生奈の身体がベッドに倒れこんだ。

「交代。今度は私が生奈ちゃんを逝かせてあげるね」

 伊奈穂の細い手が生奈の大事な場所に触れた。
 触れてすぐわかるくらい濡れたショーツ。生奈にとって初めて他人を逝かせたのだろう。快感を覚えてショーツもぐっしょり濡れてしまっていた。

「はぁ、はぁ~……そ、そんなぁ……いな穂ちゃ……はぁん!はぁ……あっ…んっ……」
「すごいよ生奈。ショーツが生地まで濡れてる……」
「いや……そんな、こと…言わないで……やぁん……」
「ふふ。生奈…かわいい……」

 伊奈穂の声で悪戯っぽい声で言うと、ショーツの中に手を滑り込ませた。直接生奈のアソコを弄り始めると、水気の音がクチュクチュと聞こえてきた。

「っ!!……はぁぁ……」
「声、出しすぎ……おいなっ……んんっ…」
「んううっ……んっ……んふぅぅっ」

 生奈の唇で強引に蓋をするように、舌を絡ませる。目を潤ませて必死に鼻で息をする生奈。その間も、伊奈穂の指が直接ワレメの中にある小さな豆をクニクニと弄っていた。生奈は身体を仰け反らして逃れようとするが、今度は伊奈穂が絶対に逃がさない。
 ジワジワと湧き出てくる温かい愛液が生奈が感じていることを知らせていた。

 クチュ――クチュクチュ――

 伊奈穂の右手は生奈のショーツの中でぐちょぐちょに濡れていた。そんな事は全く気にしないように、敏感になった生奈のお豆をひたすら刺激する。
 親指の腹で擦り続け、生奈が耐えきれなくなるまで擦り続ける――

「んふっ!んぅぅ……ふぅぅっ……んん~っ!」

 生奈は口で息が出来ないので、とても苦しそうだった。しかし、助けを求めるにも他に伊奈穂しかいない。伊奈穂に助けを求めるように、生奈は伊奈穂を思い切り抱きしめた。

「んううううっ! んんっ……んんっ……んぅぅぅぅ……」

 ビクン、ビクンと大きく震える。

「んふっ!……ふっ……んふっ……」

 脱力するように全身から力が抜けたのが分かる。生奈は逝ったのだ。そう受け取ると伊奈穂は生奈の唇を解放した。

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ……はっ……あぁぁ……んんん……」

 口で大きく息をする生奈。身体の力が抜けて、ぐったりして伊奈穂に全体重を預けていた。

「生奈ちゃん……逝ったんだね?」
「はぁ~~~。い……いなほちゃん……」
「苦しかったよね?…フフ、ごめんね……」
「……す、すごく……気持ちよかった……」
「それはこっちも同じだよ、生奈ちゃん……チュッ」
「イヤン」

 からかう生奈が伊奈穂から逃げるように顔を背けた。そして、床に落ちていた『鏡』に目を向けた。悪魔が微笑み生奈を捉えると、鏡の中から手を伸ばした。顔をつかんで離さないように固定すると、生奈を鏡の中へと引きずりこむ。『鏡』に浸かった生奈は助けを求めるように伊奈穂にぎゅっと力を込めるも、伊奈穂もそれを望んでいたかのように『鏡』の中に供に飛び込み姿を消した。

 二人が消えしばらくすると――

「よいしょっと……」

 ザバーンと、まるでプールからあがるの音をたてて――
 霧島生稲だけが鏡の中から顔を出す様に上がってきた。

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 現実世界に戻って部屋に戻った伊奈穂を見て、生奈はほっとしたような表情を浮かべていた。

「伊奈穂ちゃんどこいってたの?急に消えたから心配したよ」
「うん。ちょっとお手洗いに」

 生奈の隣に座るとカルピスを渡す。飲んでみると牛乳が入っており、口当たりまろやかな味だった。
 軽く話をしながらもちゃんと話題についていけることに驚きながらも、話題が切れたところで伊奈穂は口を開いた。

「ねえ、生奈ちゃん」
「なに?」
「キスしよっか」

 突然言われた告白に生奈は顔を真っ赤にいた。親友の伊奈穂からキスを迫られるとは思ってもいなかった生奈は面くらい動揺していた。

「ええっ?だ、ダメだよ、そんな。私たち、女の子だし」
「いいじゃん。しようよ、キス」
「でも、お母さまから、ファーストキスはとっておけっていわれてるし」
「好きな人とすれば良いんだよ。それとも、生奈ちゃんは私のこと、キライ?」
「そそ、そんなことないよ!……でも、その好きとは違う……」

 ファーストキスの重要性をこぼす。くすりと伊奈穂が笑った。

「私は生奈ちゃんのことが大好き。だからキスしたいの」

 純粋に笑う伊奈穂の告白に生奈の心が打たれる。女の子でもときめく笑顔に恥ずかしさが込み上げながらも、嬉しいという想いが込み上げてくる。そんな伊奈穂に応えたいという想いを汲んで、生奈は言う。

「伊奈穂ちゃん……キス、だけだよね?」
「最初はね。それ以降は生奈ちゃんに任せる」

(私がしなければ、キスで終わるよね?なら……キスだけだもん……)

「わ、わかった」

 意を決して顔を近づける。目を閉じる伊奈穂に生奈は自分の顔を近づけていく。伊奈穂しかなにも見えなくなる。顔を近づける度に心臓がドクンと大きく音を鳴らしていくのが分かる。
 恥ずかしくて生奈も目を閉じる。そして、――二人は軽い口づけを交わした。
 カルピスのように甘い味が口の中に香る。今まで心臓が高鳴っていたのに、キスをした瞬間にまるで時が止まったかのように全身から力が抜けて、静かな時が流れだした。

 これがキス。二人だけの静かな空間。
 共有する温もり、合わさる鼓動、触れる唇。そのすべてが愛おしくなる。

「はい!おしまい!」

 慌てて生奈は唇を放した。これ以上キスしていたら、伊奈穂になにかを求めてしまいそうになる自分がいた。そうならないように必死に理性を奮起させ、身体を放したことで体力を使っていた。
 怯えるような姿勢。キスだけなのに二人の関係が崩れそうで、この後どうなってしまうのか不安になる。

(だいじょうぶ。これまで通り接していられる。なにも怖くない!)

 伊奈穂がこれ以上のことを望んでいたとしても、生奈は二人の関係を重要視して決めたことだ。
 これ以上のことはやらないと。

「ふふ……」

 でも、生奈の身体は――

「え、えええ!!?」

 ――自分でも驚く。無意識に着ていた衣服を脱ぎ始めていた。
 上着を外してブラを見せると、次にスカートを外し始めていた。

「どうして?私、服を脱いでるの?」
「やっぱり生奈ちゃんは私を受け入れてくれるんだね」

 伊奈穂が嬉しそうに喜ぶ。しかし、生奈の本音は反対のものだ。

「ち、ちがうの!わたしじゃない!」
「ウソ?だから、服を脱いでくれたんでしょう?私も服を脱いじゃおう」

 伊奈穂も制服を脱ぎ始める。黒の制服のの奥には白い下着で身を包んでいた伊奈穂は、それすらも外して生奈の前でなにも身につけていない姿になった。形の良い乳房や、まだ毛も生えていないあそこが見えると、生奈は声を忘れて見とれてしまっていた。

「裸を見られるって恥ずかしいね。でも生奈ちゃんなら見られても良いかな」
「伊奈穂ちゃん……えええ?」

 生奈も同じように下着を脱ぎ去る。そして同じように裸になると、誰かに押されるようにバランスを崩して、伊奈穂の元へ抱きついてしまった。
 肌と肌がぶつかり、人肌の柔らかさがまるでクッションのように気持ちがよかった。そんな気持ち良さをさらに味わうように、生奈の手は伊奈穂の乳房を揉み始めていた。

「あっ、生奈。そんなにがっつかないで」

(わ、わたし、伊奈穂ちゃんのおっぱい揉んでる……!伊奈穂ちゃんのおっぱい、すごく柔らかい……)

「ちがう。わたしじゃ――あっ」
「ああん、おいなぁ~」

 乳房をぎゅっと握る様にすると、淡いピンク色の乳首がぷっくりと顔を出す。生奈が息を荒げたのも同じ時だった。


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 鏡の世界で相手の情報を収集し、現実世界で本人に成りすます。
『鏡』の奥で、チリがガッチリと伊奈穂を掴んで離さなかった。伊奈穂は気を失っているのか、目を閉じたまま動いていなかった。あれなら当分起きそうもなかった。
 現実世界で片山伊奈穂は消え、俺が伊奈穂の代わりとなった。
 片山伊奈穂の姿で俺は、足軽に歩いていた。

「これから友達の家に行く途中なんだね。変わりに俺が友達に会ってあげるよ。……くすっ、それにしても女の子の制服は足元がすーすーして落ち着かないや」

 制服は十年も昔に着た記憶しかない。いま、男子用の制服ではなく、女子用の制服を着ているだけで恥ずかしい。外を歩いて人とすれ違うだけでも隠れたい衝動に駆られるが、それとは逆に見てほしいという思惑もあった。
 どこからどう見ても女性の成りをしている俺。他の男子にはどう目に映っているだろうか。
 ――羨ましい、
 ――可愛い、
 ――微笑ましい、
 男子の心境を感じ取り、見られる事が快感になりそうだった。

「くぅ~。女の子はいいなぁ!…………あっ」

 見られることに意識しすぎたからか、急に尿意が襲ってきたのだ。男子のように我慢できる竿がなく、体内で溜まっていく感じが気持ち悪い。女性と男性では尿意の我慢ができるかできないか大きく差が出た。
 しかし、俺は動じなかった。出すときはトイレじゃなく外にだってしたことがある。たとえ今回、伊奈穂の姿でやろうが俺には知ったことではない。
 スカートの中に手を忍ばせてショーツを擦り下ろすと電柱の陰に隠れて立ちションを始める。
 と、それを目撃していた男子高校生がいた。目が合うと男子の動きが固まっていて面白かったので、彼らに見せつけることにした。

「特別サービス」

 ニヤリと笑ってから視線を落としてスカートを持ち上げた。スカートの奥に隠れた肌色の秘部が男子の眼に映っただろう。そこから力を少し込めただけで、黄色いお水が零れてきた。

「おい、マジかよ。あの子、立ちションしてるぞ?」
「女の子、だよな?大胆だなぁ」
「なんか、見ちゃいけないものを見ちまった気がするぜ」

 男子が騒ぐ。女性の身体で尿を出すのは初めてであり、興奮していたせいかその量は普段より多めに出ていた。

「あっれ?前に飛ばないで下に落ちるなんて予想外!!ああっ、ショーツが!!」

 気付いた時には遅く、足元に降ろしたショーツに黄金水が滝のように染み込んでしまった。どうにかしたくても逃げることはできず、ショーツのことは諦めて行為が終わるまで待つしかなかった。
 チロチロとゆっくり垂れおちる雫。おしっこは自然に止まった。

「ん……まだ中に残っている気がするんだけどな。なんかキレが悪いなぁ」

 ショーツを足から抜く。濡れてしまったので再び穿くわけにもいかない。せっかくだから軽くお尻を拭いた後でゴミ箱に捨てることにしよう。
 その間ノーパン状態である。さらにスカートの中がスースーすることになってしまった。

「ふぅ。すっきりした!」

 スカートを元に戻して肌を隠すと再び歩き始めた。
 陽射しの暑さが身にしみて、風の涼しさが肌を潤す。
 女性というのは暑さや涼しさにも敏感である。

『もしもし~?』

 『鏡』の奥から再びチリが声をかけてきた。『鏡』を覗きこんでまるで電話のように話し始めた。

「なんだよ?」
『これから行く宛てがあるのですか?』
「ちゃんと鏡の世界で聞いただろ?霧島生奈の家に行くんだろ?友達の家かぁ。楽しみだなあ」

 むふふと笑いが込み上げる。

『それくらい普通ですよ?友達いないわけじゃないでしょう?』
「………………」
『あ、ごめんなさい……』

 チリはバツが悪そうに顔をしかめた。
 しかし、それも一瞬で悪びれる様子もなく次の話題を振ってくる。そしてまた俺を悲しませる。

『シミ付きパンツを持って帰るんですね!高値で売れそうですね!』
「………………」

 人の事情というものを考えて喋ってほしいものだ。
 間違いなくこの小悪魔と出会ってしまったことは俺の不幸であった。
 鏡に向かってしゃべりながら歩くとすぐに目的の家に辿り着いた。その家のベルを鳴らすと――、

「こんにちは」
「いらっしゃい。伊奈穂ちゃん!」

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 生奈が伊奈穂を待っていたかのように扉の奥から飛び出してきた。


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決して『鏡』同士を合わせないでください。



 確かに、鏡に映るのは自分の姿であり、『鏡』ではない。『鏡』を映したところで、見えるのは、無限に続く鏡の連鎖だ。――『合わせ鏡』だ。
 …………そういえば、『合わせ鏡』には都市伝説や曰くつきの話もある。また、未来の自分が見えたり、異世界へ通じている、なんて話もある。
 一円の価値もないのに抱き合わせ商法のようにセットで付いてくる『合わせ鏡』と物語。
 ……それならば、グノー商品の『鏡』で作る『合わせ鏡』の物語を開いてみようじゃないか。
 
 ――まだ誰も知らなかった不思議な世界に招待しようと、

 悪魔が俺に囁いたのかもしれない。
 姿見の前に立った俺はその鏡に、グノー商品『鏡』を仕向ける。鏡の中に現れた無限の『合わせ鏡』。そこに映る無限の虚像―おれ―。
 
 俺は、『合わせ鏡』から顔を覗かせた悪魔を、この目で見てしまった。

「――――っ!?」

 逃げようとしても遅かった。俺が逃げるよりも先に、悪魔が俺を手招きし、『鏡』の世界へ招待した。
 不思議なことだが、その時の記憶は曖昧だ。
 鏡に吸い込まれた、といって信じてくれる人が果たしているだろうか。俺にだって疑わしいことだ。

 ――そんな、虚偽のような真実の物語だ。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「っ!いってぇ」

 鏡の前で気付けば倒れこんでいた俺。一体何があったのかよく分かっていない。頭をうったからか、俺の部屋なのにどこか雰囲気がいつもと違ってみえた。

「大丈夫ですか?」

 目の前の人物だって俺を気遣ってくれて――

「あんた、ダレ?」
「わたし?悪魔」

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 そんな笑顔で言われても……
 悪魔と思えないくらい、むしろ子供―エンジェル―と言った方が納得する。

「おまえか、俺を呼んだのは?」
「呼ばれたのは寧ろわたし。『合わせ鏡』作ったでしょう?」
「…………あー……」

 そう言えば作ったな。興味本位というか、面白半分でだ。

「『合わせ鏡』を作ってはいけないという禁止事項を呼んでいないんですか?おかげで願いを三つ叶えてあげなくちゃいけなくなりました」

 …………おまえのために書いたのかよ、あの意味深な文章は。

「面倒ならいいよ。別におまえに叶えて貰いたい願いなんか今ないし」
「若いのに夢がないですね。アハハ……」
「笑うんじゃねえよ!」

 悪魔が笑うと調子が狂う。いったいこいつは何者なんだ。

「ちなみにもう契約は成立してますから、いつでもお声かけてください。名前はチリと呼んでください」

 チリと名乗る少女といつの間にか契約させられているらしい。悪魔とは波長も合いそうになかった。

「おま……チリ。いつの間に俺の部屋に入ったんだよ?」
「はい?」
「俺が気絶してるのも数分のことだろう?そもそも現実世界に悪魔なんて言う方が杞憂な気がするけどな」

 俺の話を理解してどこか面白おかしく笑うチリ。なにか間違っているようなことを言っているだろうか。
 俺が部屋で倒れているとチリが現れた……。

「アベコベですよ」

 チリが教えてくれる。

「『鏡』の世界に来たのはあなたの方ですよ」

 間違っているのは俺の方だと。

「か、『鏡』の世界?」
「現実世界と繋がっているけど、曖昧な境界線。それが『鏡』の世界です」

 部屋を見渡し、いつもより綺麗に片付いているベッドや左右対称に置かれている置物を見て、部屋の雰囲気が変わったというのが理解できた。模様替えしたのではなく、部屋自体が変わっていたのだ。
 俺の部屋であり、赤の他人の部屋。そこに俺はいるのだ。

「そうか。さっきから感じていた違和感はそれだったのか……!じゃあ、俺は!?現実世界で俺はどうなってるんだよ?」

 鏡の世界に消えた俺は、現実世界ではやっぱり消えてしまっているのだろうか。

「いなくなったんですよ」

 チリが伝える。認めたくないけど本当の話だ。

「う、ウソだろ!?おい!」
「鏡の世界にわたしはいても、現実世界にわたしはいないでしょう?同じようなものですよ。むしろ鏡の世界で自我を持った人間はあなたぐらいのものですよ」
「おい、願いを叶えてくれるんだろう?俺を元の世界に戻してくれよ!」

 縋るように頼み込む俺に、チリは目を丸くしていた。

「えっ?そんな願いで良いんですか?」
「あたりまえだろう?死んじまったら意味がねえだろ!?」
「死んではいないですよ」

 はっ?と、チリに詰め寄る気力が完全停止する。すると、タイミング良く姿見に映る俺の姿があった。

「お、俺じゃねえか!」

 姿見を見ることなく足早に出掛けていく俺は、グノー商品を知らなかったいつぞやの俺のように外に飛び出していった。そんな健気な姿を、『鏡』越しに俺は見ていた。
 現実世界に俺は存在する。変わりというよりも本人そのものになっているのだろう。つまり、俺―関都の自我―だけが鏡の世界に来てしまったのだ。

「現実世界に当然あなたはいます。でも、今まで自我を持っていたあなたは今や鏡の世界の住人になったのです。あなたは鏡を覗く時以外は自由になったんですよ」

 精神と身体が放れたという表現が正しいのか、神隠しにあったというという表現が正しいのか。
 生きてはいるけど死んだというか、
 死んでいないけど生きていないというか、

 鏡の世界と現実の世界は深く繋がっているのだと言う事をよく理解できた。

「つまり、死んでないんだな。むしろ俺は自由を手に入れたと」
「そういうことです」

 だとすれば、辛い毎日からの脱却を素直に喜ぶべきであろう。
 悪魔に魂を売ってでも休日が欲しいという願いはサービスという形でチリから頂くことにして、
 まるで子供に戻ったかのように羽根を伸ばして部屋から外に飛び出していった。

 現実世界で飛び出した俺のように、鏡の世界でも俺は家を飛び出していた。
 右も左もあべこべで土地勘が狂いそうになるが、生憎俺は一度も迷子になったことはない。目印となる建物を見つけるも良い、長年歩いた学校への通学路なら左右が逆になっても忘れることはない。

「といっても、別に俺は行きたいところがあるわけじゃないし、ゆっくり散歩するとするか」
「はい、そうしましょう」

 チリも俺と同じペースで隣を歩く。悪魔のくせに見た目が完全に少女であるチリだ。髪の毛も肌も整っているくらいに綺麗である。女性を意識すればおそらく俺の人生で初めて隣を歩く人物である。背丈は優に俺の方がチリより大きい。世間が見ればひょっとすれば彼氏彼女に見えなくても、兄妹くらいには見えるかもしれない。なんて、頭の中で勝手に妄想を繰り広げる。
 悪魔だけど、それを忘れそうになる。

「ん?どうしたんですか?」
「ああ、いやぁ……」

 急に振り向くチリに思わず目を背けてしまう。きっと、歩いている中で愉快に妄想を繰り広げているのは俺ぐらいのものだろう。サラリーマンやOL、女子高生など多くの人物が歩いているが、どこか影を落として暗い表情をしている。いやっ、…無表情に近く、鬱になっていうのではないかと……

「チリ。鏡の世界の住人はどうしてこんなに暗い顔をしているんだ?」
「暗い顔なんかしてないですよ。これがこの人たちの普段の表情ですよ」
「なんか感じ悪いな」
「自我がありませんから、スポーツをして汗かいて楽しいことをしているわけじゃないですし、会社に行って怒られても苦痛と感じることもないですよー」
「…………」

 自我があるから感情が出せる。痛みもあるけど喜びが表現できる。鏡の世界にはそれがない。だから歩いている人物は皆死んだような目をしていた。
 その中で笑顔で歩くチリをみて、やっぱり悪魔なのだと自覚させてくれた。

「あっ。せっかくだから面白いことを教えてあげますよ」
「面白いこと?」

 チリは閃いたかのように駆け足で俺から放れると、ある一人の女性の前に立った。現実世界と通じる『鏡』を見ても彼女は同じ場所で携帯をいじっていた。

「この人に話しかけてください」

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 チリが突然こんなことを言い出した。

「大丈夫か?」

 今の御時世、声をかけたら警察が来る時代だ。黙って見ぬふりをするのが賢いとされるのだ。さらに彼女はお取り込み中。そんな状態で話しかけて大丈夫なのかという意味も込められていた。
 それでもチリは笑顔で微笑んで大丈夫であることをアピールする。せっかくなので俺は彼女に声をかけることにした。

「あー。こ、こんにちは」
「…………」

 当然返事はない。今のでよかったのだろうか少し不安である。

「なんか質問してください」

 チリがさらに要望を出す。俺は照れながらも無難な質問を出す。

「あなたの名前はなんですか?」
「……片山伊奈穂―かたやまいなほ―」

 すると、今まで一度も動かなかった彼女の口から、名前を聞き出すことが出来た。一体どういう事なのか俺には理解できず、ただ驚いていた。

「鏡の国では、現実世界と記憶も知識もリンクしてますから、質問すれば自我がない人々はウソ偽りなく答えてくれます」

 鏡の中ではウソがない。現実とは真逆の正直者の世界だ。俺はテンションが舞いあがった。

「彼氏はいるの?」
「いません」
「経験はあるの?」
「あります」
「何回?」
「……二度」
「遊びでやったんだ」
「……一回は先輩と。二回目は彼氏と……。もう、わかれました」
「そうなのか?こんなに可愛いのに……スリーサイズは?」
「上から75、51、77」
「性感帯は?」
「クリトリス」
「中学生時代の恥ずかしいエピソードを聞かせて?」
「……私が中学二年生の時、友達の生奈―おいな―ちゃんと――」

 本当に正直に言われたことに答えてくれる伊奈穂。きっと現実世界で隠していることまで俺に曝け出している。彼女の秘密を暴露していくことに一種の快感が流れ込んでくる。アドレナリンの放出、このまま伊奈穂に抱きついてしまいそうになった、

「これで彼女を一度逝かせてください。そうすれば、もっと面白いことが起こりますよ」

 チリの言葉は俺を駆り立てるには十分すぎる引き立てとなっていた。


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