純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 鏡+水晶『裏切りの告白、現れるドッペル』

「あれえ、奈々子が二人いる。変なの」

 寛子の言うとおり、水瀬奈々子がこの場に二人いた。制服姿の奈々子が私の元に寄ってくる。

「奈々子。ただいま。元気してた?」
「なにをしてきたのよ?」
「彼氏を振ってきたよ。ウザいって切り捨てちゃった。これであんたも一人だ。友達もいなくなった!」

 笑顔で言う奈々子(邦広)に私はどうすることも出来ず、私は最後の抵抗だった涙を流した。

「ひどい・・・」
「自業自得でしょう?悪口しか語れない友達なんてウザいだけじゃん。でもいいよね?これでようやくきみは俺と対等になれたんだ。一人身になって晴れ晴れしてるでしょう?」
「・・・サイテイ」

 どんなにいじられようと、いじめられても、私の友達にあることは変わらないはずだったのに、全て邦広に持って行かれた。美玲も、寛子も、蒔絵も――
 邦広なんかと全然違う 。私の方がきっと絶望している。
 一人で大丈夫な人と、独りじゃ淋しい人は必ずいる。わたしは後者だ。だから邦広とは全然違うはずだった。
 そんな抵抗を悦んでか、奈々子(邦広)は私に顔を近づけると、唇を重ね合った。


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 黒板に書き出した文字を途中で切ると、先生はようやく口を開く。

「水瀬さん。その、授業中にゲームをするのはどうかと思います」

 悲しそうな目で先生は奈々子を見つめるが、当の本人はゲーム画面に夢中になっていた。

「いいの。私に授業なんかいらないの。テストもやりたくないし、通知表1でも構いませんからほっといて下さい」
「……私の授業の、何がいけなかったんでしょうか……」

 先生が教室から飛び出してしまった。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

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「ごめんなさい。やっぱりあんたのこと嫌いだったの」
「なんでだよ、意味分かんねえよ」
「あんたじゃツマンナイもの」

 健二が頭を抱える。奈々子はパット顔を明るくした。

「それに比べて今、邦広と付き合ってるの。彼、すっごく面白くてユーモアがあって、格好良いの!わたし、邦広のこと大好き!!」
「あんな奴に負けるとかマジねえよ。奈々子、マジでどうしたんだよ?」

 すがりつく健二の手を奈々子は簡単に払いのけた。

「触らないで!!ちょーキモイ」
「……わかった。さよなら」

 教室から消えていく健二。今、一つのカップルが別れた。
 それを見た蒔絵が奈々子を廊下に連れ出した。 

「奈々子。どうしたのよ!?あんたが好きだって言ってた健二くんを振っちゃうなんて」
「うざいんだよ。格好つけて図々しい態度取って騒ぎやがって」
「奈々子。その口調」

 蒔絵が奈々子の正体を見破ると、奈々子(邦広)が嘲笑った。

「おまえも良い様に美玲に遊ばれてろよ。俺も好き勝手にさせてもらうからさ」

 話は一方的に終わらされた。「寛子ー!」と言って駆け出していった奈々子(邦広)の背を見て、蒔絵は悔しさでいっぱいだった。


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「ごめんください」

 奈々子が玄関で立っていた。

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 ようやく主役が登場した。待っていた時間が本当に長かったよ。

 俺は笑顔で奈々子を部屋に迎え入れた。
 部屋には誰も来ておらず、奈々子はまわりを見渡していた。

「あれ?みんなはまだなの?」
「今日は来ないよ」
「どういうこと?……わたしを騙したの!?」

 俺の表情を見て奈々子がこわばった。

「奈々子だけ呼べればそれでよかったんだ。今日は二人だけのパーティーだ」

 手に持つスタンガンを奈々子に押しつけると、奈々子は一瞬で気を失い、俺にもたれかかってきた。
 彼女をある部屋に案内し、着々と準備を進めた。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 私が目を覚ますと、不気味な置物や被りものがある異質な空間だった。ここが何処で、いったい何が起こったのか分からない。
 一刻も早く抜け出そうとしたが、私の身体は全く動かなかった。むしろ私の身体は動けないように両手両足に枷をされていて、制服も脱ぎ棄てられた様に床に散らばっており、変わりに今まで一度も来たことがないボンテージ服に包まれていた。

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 全身が強張った。

「こ、ここはいったい!?」
「誰も来ない隠し部屋だよ」

 只一人、状況を知る邦広が現われ、私の姿を見て満足気に喜んでいた。

「こんな仕打ちして、あんた、どうなるかわかってるの?」

 脅しのつもりで発した言葉を、邦広はあっさりと聞き流した。

「なにも変わらないよ。これから俺は奈々子として生きていく。きみの人生は俺がもらうことにしたよ」
「なに言ってるんの?そんなこと出来るわけ――」


「出来るんだよ、俺にはな!!」


 私の言葉を遮り、邦広は自信満々に答えた。
 すると、一枚の『鏡』を私の前に立てる。ボンテージ姿になった自分の憐れな姿を映されると恥ずかしかった。

「……『鏡』?」
「その姿に着替えさせるの大変だったんだ。でも、結構似合ってると思わないか?その姿になれると思ったら興奮してくるよ」

 喋りながら邦広は自分の服を脱ぎ始めた。真っ裸になったので、直立に勃起した逸物まで見せつけられる。

「なに脱いでるのよ!?」
「この姿がどう変わるか見てほしのさ」

 邦広はニヤニヤ顔で私を見ると、そのまま『鏡』の中へ消えていった。
 『鏡』の中に入るという行為すら私を驚かせたが、その後の出来事が私を更に恐怖させた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 時間にして十秒ほどだろうか?邦広が『鏡』の中から出てくる。だが、その姿は邦広ではなく、私と同じ格好した、ボンテージ姿に身を包んだ水瀬奈々子そのものだった。

「ウソでしょ……」
「あーあー。わたしは水瀬奈々子。あーあーうん……」

 私の声で二三回喋り終わった後、「あははははは……」と高笑いでこの部屋全体を覆いこんだ。

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「見てよ。どこから見ても水瀬奈々子にしか見えないよね?最高だよ」

 奈々子(邦広)のご機嫌とは正反対に私は言葉を失った。手枷をした部分は見えないからか、両手両足は見事に解放されており、私の身体を好き放題に触り続ける。
 わたしと同じ大きさの乳房を弄び、何度も上下に揺らしていると、乳首がプクッと突起していくのがわかった。
 先程膨らませた逸物が無くなった為か、既に下半身からは厭らしいお汁が足の付け根から垂れ落ちていた。それを気にもせずに奈々子(邦広)は次の行動に移った。

「じゃあ制服を着るかな」

 今まで着ていたボンテージを脱ぎ始め、素っ裸になると、床に散らばった制服を掴み始めた。

「それ、私の服――」
「そうだね。だから着れるでしょう?でも、まずは下着から穿かないとね……。小さいショーツだよね?あっ、まだ温もりがある。これが奈々子が付けていたショーツだと思うとまた濡れて来ちゃうよ」

 ショーツを堪能してから足を通すと、簡単に上にあがってお尻を隠した。
 奈々子(邦広)が穿いたショーツは私が分かるくらい濡れていた。そして、ブラも制服も元通りに着ていくと、制服姿の奈々子(邦広)が私の前に出来あがった。

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「やっぱり制服着ると映えるわ。似合っているかしら?」

 制服姿の自分の姿をぎゅっと抱きしめた奈々子(邦広)を見ると、私の顔は青ざめる。だが、遂に奈々子は私を残して部屋を出ていこうとした。

「ちょっと!どこ行くの?」
「制服着たら行く先は学校に決まってるだろ?」
「やめてよ、そんな姿で学校行ったら――」


「お前の人生めちゃくちゃにしてやるよ」


 奈々子(邦広)が放った言葉に私は涙を流した。奈々子(邦広)が部屋を出ていく。遠ざかる足音.奈々子(邦広)の高笑いだけは私の耳にずっと鳴り響いていた。

 体育倉庫からようやく抜け出すことのできた私は、早く皆に事実を伝えなくちゃいけなかった。
 邦広が寛子の姿で狙っていると。変装というレベルではなく、寛子そのものだった邦広。
 憑依という言葉をなんかの番組で聞いたことがあるけど、その類のものだろうか。ひょっとしたら邦広は死んでいて、亡霊になって襲いかかってくるとかなんとか……。
 非現実なことが脳裏をよぎってしまう。でも、その一つに邦広は私とそっくりな偽物と一緒にいる。二人が集まれば奈々子や美玲を騙すことは簡単だと思う。
 とにかく今は仲間に危険を教えてあげることが優先だった。

「美玲!!」

 廊下を歩く美玲を見つけて私は駆け寄った。息を切らした私に慌てることなく美玲は私が何を言おうとしているのかを待っていた。

「助けて!わたし以外に私がいるの」
「……そうなの?」
「騙されちゃダメよ!逆に、私に化けている奴を見つけたら、一緒にやっつけてほしいの」

 美玲に助けを求める私に、ふっと笑いを浮かべた。

「でも、そんなの奈々子以外みんな知ってるよ?」
「……えっ?」
「知ったうえで付き合ってるの。でも、どうしても1名欠けるのは忍びないから、蒔絵は美玲の奴隷になってもらう」

 希望が絶望に変わる。駆け寄ったはずの美玲との距離を後ずさりして広げていく。

「あ、あなた……まさか」
「へえ。本物が逃げ出してきたんだ」

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 背後を振り返る。そこには山口邦広が美玲と同じ表情で立っていた。

「邦広!!?」
「馬鹿だなあ。逃げ出さなければ自由はあったのに」
「……あんな場所に縛りつけておいて何が自由よ?」

 邦広を睨みつけて拳を握ると、私は邦広に向けて駆け出した。

「一発殴らせなさいよ!」

 振り上げた拳を邦広に向けて下ろそうとした。

『やめなさい、蒔絵』

 美玲の言葉は私の行動を一瞬で冷めさせた。駆けることを止めて、拳を下ろした私は、邦広の前で呆然と立ちすくんでいた。

「なんで?」
『抱きつきなさい』

 美玲の言われたとおり、私は邦広に抱きつく。背中に腕をまわしてしっかり掴まると、我に返ったように邦広を抱いたという後悔だけが残った。

「いやあ。気持ち悪い」

 どうしてこんなことをしているのか分からない。どうして美玲の言うとおりに自分が行動してしまうの。

「ドッぺルは蒔絵の『石』を継いだんだ。お前の行動はすべてドッペルの思いのままだ」

 邦広が私から取り出した『石』。……じゃあ目の前にいる美玲はあのとき鏡から出てきたわたし?
 助けを求めるには遅すぎた。わたしは自分から二人の罠にはまってしまったのだ。
 抱きついて離れない私をそのままにして教室に入ろうとする邦広。

「じゃあこのまま皆の前に行こうな」
「い、いや!邦広と一緒の所なんか見られたら、私までいじめられる!」
「うるさいなあ」
『黙りなさい』
「あ、あ……」

 口から声が出ない。叫び声があがらない。

「普通に喋ることだけは許してあげる。でも、邦広の悪口や噂になることは言えなくなるの。そういう『石』が働くの」

 美玲から告げられる事実。わたしの行動は段々制限されていく。
 
「わかったか?蒔絵に自由はない」
「うわあああああああ!!!」

 泣き叫びたい声も笑顔にされてしまうわたしは、どこから見ても楽しそうに笑う私の姿だった。


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「どこ行ってたのよ?」

 心配してたというより行き先も伝えずに消えた二人に奈々子は不満顔だった。

「ごめんなさい」

 謝って許してもらえるのが親友だ。四人で移動教室に向かうが、寛子は蒔絵に合図を送る。蒔絵はそれを受け取った。
 相手はあと一人となった柊美玲。奈々子とは保育園からの付き合いだった。

「ねえ、美玲。わたしと付き合ってくれない?」
「なに?」

「すぐすぐ」と言いながら蒔絵が美玲を廊下に出す。そんな二人を見て奈々子も興味を示す。

「私も行く」
「奈々子」

 寛子が後ろから奈々子に抱きつく。

「きゃあ。やだぁ寛子」

 普段からしているキャラだからか、まったく嫌悪感を示さない奈々子。結局、寛子と一緒にお手洗いに行く奈々子だった。 


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 教室に入った寛子(邦広)は即座に奈々子たちと合流する。蒔絵や美玲といういつものメンバーもお揃いだった。

「寛子。遅かったじゃない」
「ごめーん」

 寛子の口調で明るくお茶らけながら話す。どうやら邦広の正体に誰も気付いていないようだった。

「でもさ、告白してから邦広のやつ来ないじゃん?」
「どうしたんだろうね?」
「しらなーい」
「むしろいない方がせいせいするっつうの」
「…………」

 好き放題に話の種にされる苦痛。寛子(邦広)は一人笑みを見せながら苦々しげに自分を殺していた。

 一人になるタイミングを見計らい、土方蒔絵との交渉に成功した。
「なに、寛子?」
「ちょっち、付き合ってほしいの」
「ごめんね」というポーズをとって可愛く誘うと案の定、蒔絵は喜んでついてきた。

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 邦広はクラスメイトの水瀬奈々子が好きだった。クラスの中でも可愛く、男子にも人気があった。邦広は奈々子に告白しようと思い、ラブレターを忍ばせたのだ。
 放課後、一人になった時を見計らって、邦広は奈々子に声をかけた。

「水瀬さん!」
「ひゃあ!?く、邦広くん?びっくりしたあ」

 確かに邦広は奈々子が好きだったが、あまり声をかけたことがなかった。一目惚れだったのだ。

「じ、じ、じつは・・・・みなせさんのこと・・・・・・す、す!すきでした!」

 ラブレターを差し出しながら頭を下げる邦広に奈々子は目を丸くしていた。

「ぼ、ぼくと付き合ってください」

 邦広はやっとの思いで告白することができた。一秒がとても長く感じた。

「気持ちはうれしいけど、いま、付き合ってる人がいるの」

 でも、奈々子が断るのはとても早かった。申し訳なさそうに「ごめんなさい」という奈々子だったが、気持ちは嬉しかったのか、ラブレターをもらい微笑んでくれた。それだけで邦広は救われた。
 今は彼女は無理かもしれない。でも、友達からなら始められる気がした。そんな希望を奈々子は持たせてくれた。

 だが、翌日。早くもそんな希望は打ち砕かれた。
 俺が手洗いから教室に戻ろうとした時だ。

『ねえ、見てよ。これ。邦広の手紙』

 奈々子が友達に邦広のラブレターを見せつけていた。

『ええええ?キモイ!!』
『よくもらう気になったじゃん』
『だって面白そうでしょう?あの根暗の邦広の手紙だよ?何が書いてあるか興味あるでしょう?』
『何が書いてあったの?見せて見せて』
『見る?笑っちゃうよ』

(やめろ……そんなつもりで渡した手紙じゃない)

 奈々子が友達に手紙をまわし、友達が噴き出していた。

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『………うわっ、くさ~』
『邦広に言われたって嬉しくないっつうの』
『でしょ?』

『キャハハハ……』と笑いあう奈々子と仲間たち。それを聞いて俺は教室に入れず学校を飛び出してしまった。
 全て奈々子の狂言。まんまと乗せられて喜んだ俺自身を恥じる。だが、それ以上に奈々子に対する狂気が湧いてくる。
 好意が全て殺意に変わる。

「覚悟しろよ、奈々子!絶対に許さない!!」

 邦広は早速奈々子に対する報復を計画するのだった。

 

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