友達を待って15分。おっとりしていると言っても遅すぎないだろうか?
でも、私と曽根原潤―そねはらうる―の関係は、その感覚を鈍らせている。15分。それで来れば早いと思える時間だ。
「お待たせ、潤」
「遅いよ。待ちくたびれちゃった」
といいながらも待ち人が来れば嬉しいものだ。私は潤とこれから何処に行くかを話す。
「そうねえ。なにしよっか?」
基本決まっていないのも御愛嬌。そうやってまず喫茶店でお茶を飲むのが私たちの行動だ。
でも、今日は潤の様子が違った。
「あ、あれ?」
潤がどこかに歩いていく。
「潤?ちょっと待ってよ」
私は慌てて追いかけていく。駅前から外れた一室。歓楽街が多い建物の前に一人の男性がいた。
「お?」
男性の前で潤が止まった。私も知らない初めて見る彼。なんの用があるのか、私にはわからなかった。
「えっ、これは、その――」
潤が何かを言おうとしている。何故か私は嫌な気がしたけど、その予感はあながち間違っていなかった。
「今日、空いてますか?」
潤の言葉に私は驚く。そして潤はそのまま男子と供にホテルの中へ入っていってしまった。
・・・
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潤を追いかけて一緒にホテルの中に入った私。潤は既にそのつもりなのか、服を脱いで準備を進めていた。
「どうしたの、潤?なんでこんなことしてるの?」
「うん……でも、そういう気分なんだもん」
「そういう気分っておかしいでしょう?気分でやっていいものなの?」
「わかんない……」
潤の様子がどう見てもおかしい。私は潤を連れて外に出そうとしたが、逆に潤は私の手を掴むとベッドに押し倒した。
「あ……」
「芹香も服脱いでよ」
ワンピースの服に手をかけ、脱がそうとする潤に必死に抵抗する。
「じっとしててよ」
「いやあ!!」
脇を固く締め、これ以上脱がせないようにする。潤の手はまるで男性の様に強引で力があって怖かった。
嫌い続ける私に潤は観念したのか、潤が私の髪の毛を撫でる。
「そんな嫌わなくたっていいでしょう?私たち親友でしょう?」
「でも、こんなの間違ってる……」
「そうかなあ?本で見たことあるし」
「私はそんな本知らない。女性同士で行為をするなんて信じられない」
「・・・・・・そっか」と優しく微笑む潤。しかし、ブチッと一本私の髪の毛を毟り取る。
「痛い、なに?」
私から離れて扉の前に立つ潤。そして、見計らったようにタイミングよく入ってくる先程の男性。
「抵抗するんだもん。芹香が悪いんだよ?」
「そうだな。こいつみたいに素直にしていれば事実を知らなくてすんだものを」
名前も知らない男性が私を睨みつけていた。
手にはそれぞれ『人形』を持っている変わり者。一つは黒い物体で、人の形をしているだけの人形と言えるかどうかも分からないもの。
そしてもう一体は、曽根原潤と全く同じ姿をした『人形』だった。
「そ、それ……」
「ああ。彼女の髪の毛から作った『人形』なんだ。良く出来ているだろう?そして、もう一体には――」
彼が潤から私の髪の毛を手渡される。私の髪の毛を持った彼はもう一つの黒い物体に私の髪の毛を挿しこんだ。
黒い物体はまるで意志がある様に形を変え、着色して一つの形を成していく。
それは私、浅葱芹香―あさぎせりか―とまったく同じ姿の『人形』だった。
亜想が見せた『人形』は浅葱芹香そっくりの姿に変わる。それを見て当の芹香本人は驚いていた。
「わ、わたし……?」
「そう。キミの『人形』だ。更にこの人形の凄いところは、キミを操れるってことさ?」
亜想が芹香の『人形』を操り、潤の傍まで歩かせ、潤の胸を揉ませてみる。
「えっ?ちょっと、なに?」
乳首にちょんと触れる。手の平の温かさが乳首をくすぐる。
「あん、もう、芹香」
「ごめん!潤の胸、揉みたくなっちゃったのって、あれ?」
言い訳を言う芹香を見て亜想は笑った。
「それはさっき自分でおかしな行為だって言っていたじゃないか?」
それは芹香も感じていた事だ。どういうことか芹香自身がわかっていなかった。亜想がからくりを説明する。
「いいよ。本当は行為の後にキミが勝手に思い込んだだけなんだ。はっきり言ってやるよ。俺がキミを操っているからキミは彼女の胸を揉んだんだ」
それが本当だとすると、亜想の持っている人形が芹香自身に連動しているということだ。そんな恐ろしいことを認めなくちゃいけないのだ。
「そ、そんな!!」
逃げることができない。芹香は8畳の室内で震えていた。
「お前たち二人は俺の操り人形だ」
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