純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:ゲスト・リクエスト > ???『俺もお前も俺で俺』

 澤村詠美として過ごす学園生活。
 昼食では一人席に座って黙々と食べていたお弁当を、今日はあかり達と一緒に席を囲んで食べる。色彩ある彼女たちのお弁当の中身を、皆分け合いながら食べ比べた。
 食事が終われば便も出たくなる。女子トイレに入り個室の中に閉じこもり、初めて女性としての排便を体験した。
 すべてが新鮮で、すべてが未体験。興味が尽きることのない詠美としての生活に、時間が過ぎるのはあっという間だった。

「くぅ~疲れました。一日なんてあっという間だな」

 人によって時間の流れる速さはちがう。人生を謳歌し、楽しむ人ほど時間の流れはとても早いものだ。オレが男性だった時は一日が長く、何もかもツマラナカッタ。人は確固たる自分がある。例え、精神が身体から分離したとしても、オレが清原智也という記憶は忘れられない。
 肉体は本体があるから分離できる。主体さえやられなければオレ自身死ぬこともない。際限のない欲望と無責任な自信。強情な驕りの結果、導かれた最高の豪遊。
  

 だから、オレは人生を楽しむために、他人の人生を――――


「ん・・・あれ?」

 おかしい。いま何かを言おうとしたんだけど、その言葉が頭の中で靄がかかり浮かんでこなくなる。
 呆け?ど忘れ?それとも記憶障害?
 ジョークかよ。

「このままオレが男性だった時の記憶までなくなってしまえばいいのに。そうすれば、オレが詠美に成り変わってやれるのに」

 そう、今はなにも知らないオレのことだけを考えれば良い。
  深夜寝静まっている間に生まれたオレ。当然オレの本体である智也だってオレの存在を知らないだろう。クラスメイトでいながら一切誰とも口を聞いてこなかったオレに、男子なら放っておかない詠美が話しかけたらどんな対応を見せるのか。その間抜け面を拝ませて貰うとしよう。
 
「シシシ・・・自分に対するドッキリか。腹の底から笑ってやるとしよう」

 人生がつまらないなら自分から面白くしてやればいい。
 それがたとえ、他人の身体を利用することであっても構わない。 


 
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朝の支度を済ませて学校へむかう。クラスメイト、澤村詠美として――。

「確かこんな感じだよな。・・・よし、バッチリ」

 鏡を見ながら制服に着替えたオレの前には、毎日学校で会う詠美の姿がそのままあった。逆を言えば、オレは詠美の私服姿を知らないのだから、制服姿しか知らない方が服を選ぶ手間が省けた。もう一度、詠美の顔の筋肉を動かして表情を変えていく。千を数えそうなほどコロコロと表情を変えていく詠美。オレ自身さえ持っていない表情のレパートリーを形作れば、誰から見てもオレが詠美だと思うに違いなかった。

「もう、急がないと学校遅刻しちゃうよ。早く学校行かないとね」

 学校に行くのが楽しくて仕方ない、少女のような明るい声を発しながら鞄を持って部屋を後にする。

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 鏡が最後に捉えた詠美の表情が、しばらく部屋の鏡に残像として映っていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・ 

 通学路を歩いて、人影を探す。習慣づいたオレ自身の身体を探しながら、予定調和の時刻、場所に合わせてやってくる。

「・・・みつけた」 

 オレは本体である、オレ自身の身体、清原智也を発見した。眠そうな顔して、平凡な毎日に退屈したような顔をしながら欠伸を噛み殺してだらだら歩いていた。
 オレに気付いていないのか、それともオレの本体には何の支障もなかったのか、別段普段と変わった様子は見えない。それこそ、身体の一部が抜け出して澤村詠美の身体を乗っ取っているなど夢にも思っていないかのような日常的に見る通学路だった。 

「いま、この退屈な毎日を終わらせてあげる。これからは彼氏彼女としての関係が始まるのね!」

 健全な男子高校生なら憧れる、彼女との二人での通学、二人での昼食、二人での学園生活、二人での放課後――夢のような彼氏彼女の関係。勝ち組のロード。
 澤村詠美という、オレの身には申し分ない容姿を持つ彼女と歩く、カップル同士の秘日常。それがいとも簡単に可能な状況なのだ。
 声をかけたらびっくりするだろう、なんてことを考えながら、智也の元へ飛び出していこうとする。

「きよは―――!」
「あーーーー!!詠美ぃ~!!!」

 突如、朝の通学時間を切り裂くかのような大声に驚き、振り返る。
 そこには、クラスメイトの面々が揃いもそろって歩いていた。

「おはようございます」
「おはよう」
「あ・・・うん。おはよう」

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 拍子抜けしながらクラスメイトと挨拶を交わす。川上友子、池上恭子と白河あかりは一緒のグループだが、朝から一緒だとは知らなかった。三人は女子だけじゃなく男子とも仲が良く、輪の中で雑談するのをよく目にするが、オレ自身は彼女たちと話すことは一度もなかった。
 まさか、こんな形で彼女たちと初めて挨拶を交わすとは思わなかった。

「どうしたの?固まっちゃって?」
「え・・・そう?」
「朝から硬いわね。ラジオ体操でもすれば?」

 それは恭子なりのジョークなのだろうか?それともアドバイスなのだろうか。思ったことがすぐ口に出てこなくて一方的に彼女たちの雰囲気に飲み込まれている。

「・・・そういえば、誰かに声かけようとしてなかった?」

 友子の核心をつく発言に動揺してしまう。あかりが身を乗り出してオレが呼ぼうとしていた相手を探そうとするも、その相手を見つけることが出来ない。いや、見えているのだが、目に映っていないのだ。

「えー。誰?誰かいるの!?・・・・・・・・・清原君しかいないけど、まさかねぇ・・・」

 なんだ、その興奮が一気に冷めていくテンションの上げ下げは。オレに声をかけることを躊躇いやがって、やっぱり世の中顔なのか?顔で喋る相手を選ぶのかよ!?
 うーん、この世の中はイケメンに優しく、ブサメンに卑しくできている。平等故の不平等ですね、ま~ん(笑)

「なに、怒ってるのよ?行くわよ。歩かないと遅刻しちゃうわよ」

 とっくにオレの本体も学校へ向かってしまっている。確かに立ち止まっているような時間はない。
 秘日常に憧れるのはもう少しお預け。しばらくは詠美としての日常的な生活を楽しむのも乙かもしれない。
 オレは彼女たちに連れられ、通学路を歩き始めた。


 
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「……!?な、なん?だ、と!?」

どうしてだか分からないけど、気が付いた時にはオレ、清原智也―きよはらともや―は女になっていた。しかも、オレは全く見覚えのない部屋にいた。
 目が覚めると、陽の差す方向が違っていた。寝ぼけ眼で枕の上から頭を動かしてみて、自分の感覚に狂いがないことを確認すると同時に、部屋の様子が明らかに変わっていることに気付き、オレは一気に意識が覚めた。
 上半身を起こすと、自分でもありえないほどに身体が軽くなっていた。着たこともない可愛いパジャマを着ており、柔らかい胸肉の重みを感じ、オレは反射的にそちらを見た。

「――――っ!!?」

 それは驚きで声が裏返ったというレベルではなく、文字通り声そのものが変化していた。高音で澄んで通る――それはそう、まるで女性そのものだった。

 目の前に起こっている急展開。オレはそのパジャマをぐいと押し上げているふたつの膨らみを確かめる。フニョンとした柔らかく包み込む弾力を味わい、オレに……いや、このカラダに乳房があることを知る。

確信した。――オレはいま、他の誰かの、しかも女性になってしまっているのだ。

「ど、どういうことだ!?」

 慌てる声を荒げながらも、オレの視線は自分の胸元に向いてしまう。薄くて柔らかいパジャマの上から、そこが男性ではありえない曲線を描いているのが見て取れた。

「…勝手に見ていいのか……いいよな?誰も見ていないんだし」

 オレは勝手な理屈をつけると、白いパジャマの襟を掴んで前方にぐいと引っ張った。妙な興奮を覚えつつ、ゆっくりと胸元を開いていった。当然のように露わになるふたつの半球。可愛らしいフリルのついたブラジャーをした乳房が目の前に広がっていた。

「ふわあああ―――!ほ、本物のオッパイだ!こ、これって結構大きい?胸で足下が見えない」

 巨乳とまではいかないまでも、十分な質量をもった見事なふたつの膨らみがあった。ブラに指をかけて中を覗きこむと、淡いピンク色した乳首が覗いていた。 

「ふおおおぉぉぉ!!!お、おおおおお!!!」

 部屋の中でオレは一人興奮で言葉を失っている。自我を忘れてただ身体を覗きこんでいるオレの目の前に、はらりと長い髪の毛が纏わりついてくる。そこから昨夜の名残だろうか、甘いシャンプーの匂いが漂ってきた。これもまたいい匂いだ。
 香り、細さ、声、愛らしさからして、オレの入り込んだこのカラダは、相当若いに違いなかった。
 俺は意を決して彼女の顔を見ようとしていた。俺はいま一体誰の、どんな女の子になっているのか気になって仕方がなかった。

「鏡……あれか!」

 パジャマから手を離し、部屋の中を見回して鏡のもとへ近づく。見下ろした時と同様に、髪の毛がふわりと甘い香りとともに絡みついてきた。
 オレは鏡に向かって立ち、ゆっくりと鏡の前に自分の姿を映し出した。

「あ……さ、澤村!!?」

 鏡に映しだされたオレ、いや、オレが乗り移っている身体の持ち主は、なんとクラスメイトの澤村詠美―さわむらえいみ―だった。
 幼さの残る高校一年生で、クラスでは地味キャラの彼女を映しだしていた。オレと話したことは一度もない。しかし、馴染めないだけで女子生徒たちとは仲良さそうにしている。だから、オレがこうして詠美のことをじっくり見るのは初めてだった。

 
「クラスメイトだったのか……。だったら、すぐに気付くべきだよな」

 オレは猛省しながらも、詠美の整った顔立ちに目を奪われていた。吸い込まれそうな大きめの瞳、筋がしっかりと通った高い鼻、ぷっくりとした小さな唇。クラスメイトにこんな美少女がいたのかと思うほど見方が一変するオレがいた。

「……すげえ、これがオレ――」

 自然とオレの手が鏡の方に伸びていた。鏡の中の詠美が手を伸ばしてきたかと思うと、ひんやりとした感触がオレの手に伝わってくる。その冷たさが目の前に立っている詠美が俺自身であることを証明してくれる。
 
「清原くん。おはよう」

 詠美がオレに挨拶する。一度もされたことがなかった挨拶だとしても、まるで本当に詠美がオレに挨拶をしているように見えた。 

「清原くん。私の身体好きに使っていいから。……好きに使っていいのは、清原くんだけだからね」

 オレはうれしくなって詠美が言わないだろうという言葉を言わせてみる。そう言えば本当に詠美がオレに身体を使わせてくれるのではないかと内心安心してしまう自分がいた。その後ですっと右手をあげると、詠美の右手が当然あがる。ニッコリ笑ったりして顔の筋肉を動かしながら詠美の身体を動かしていくうちに、オレが詠美の身体を支配している、という実感が沸いてきて、オレの興奮の度合いをさらに高めてくれた。
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