純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ > グノー商品『アンドロイド』

 服を脱ぎ捨て裸体を見せつけるデルトエルドに、拓也は言葉を失う。
 生まれてまだ一年もたたない身体だが、拓也の知らないところで時を止めて何千年という知識を蓄えた少女の身体は、熟したものではなかったが、とても色っぽく思えてしまった。

「マスター……見てますか?」
「ああ、凄くきれいだ……」

 デルトエルドを強く、愛おしく抱きしめる。何も着ていない身体を温めるようにして抱き締めると、デルトエルドは甘く、苦しそうに息を吐いた。

「……触っていいか?」
「もう、触っています、マスター」
「それもそうだな」

 おかしく笑い合うと、拓也はデルトエルドの乳房を揉んだ。貧乳とも言えない乳房は揉んでいるのか揉んでいないのかもわからないが、拓也が触るとデルトエルドは恥ずかしそうにしながらもくすぐったそうにして笑っていた。

「あはっ、ごめんなさい……。いま、マスターの好みの大きさにしましょうか?」
「……いいよ。この形がデルトエルドのものなら、俺が優しく愛撫してやる」

 乳首を摘まんで引っ張るとデルトエルドは感じることができたのか、「んふぅ」と今までと違った声を上げ出した。そこからは乳房を揉んでもくすぐったいだけじゃなく、別の何かを感じて喘ぎ始めるようになっていった。

「ふああ!マスター、わたし、おかしいです……マスターに触られると、気持ち良くなってしまいます」
「そうか…?」
「ハイ……ますたぁ……わたしも、壊れてしまったのでしょうか?」

 会話をしながら拓也はデルトエルドのクリトリスをいじり始めると、そこは成人した女性のようにぷっくりと腫れて存在感を見せていた。おまんこからは愛液を流し、きつそうだけど決して入らないわけではなさそうだった。

「セックスしたいんだろう?じゃあなにもおかしなことはないよ?そもそも、セックスってどういうことか知ってるんだろう?」
「ハイ……お互いを感応する行為ですぅ」
「……それは何か間違っている知識だと思うぞ」
「でも、これじゃあ、わたしが一方的にきもちよく、いやんっ!……なっちゃってますぅ。ま、ますたーも、わたしと同じように、きもちよくなっているんですか?」
「まだ気持ちよくはないと思うが――」
「ああ、ごめんなさい……」

 デルトエルドが悲しそうに目を閉じるので、拓也は言って聞かせる。

「――でも、幸福だと思うぞ」
「えっ?」

 きょとんとした目で拓也を見るデルトエルド。拓也もデルトエルドと同じように服を脱ぎ始めた。

「デルトエルドもそうだろ?」
「ハイ!わたし、いま、とっても幸福です。生まれてきて、本当によかったと思います!!」

      81c6a28e.jpg


 涙を流して喜ぶデルトエルド。
 今、この瞬間も新世界は変わろうとしている。だが、もう運命は変えられない。
 限られた残りの時間の中で、デルトエルドは確かに存在していた証を、拓也は刻み始める。
続きを読む

「あった……遂に見つけた」

 新世界の果て、地平線の彼方先にあった理想郷に咲く一輪の花。
 紫露草、別名トラディスカンティア。

 千村拓也は白砂の土から掬いあげて手中に収めた。

      06b98bb2.jpg

「よかった、マスター」
「ああ。デルトエルドのおかげだ。これで俺は――道を開けることができる」

 新世界が鼓動する。
 熱い、アツイ
 皮膚を焦がし、鉄を焼く。
 
 ――カチッ、―カチッ、カチッ、カチッカチカチカチカチチチチチチ――――――!!!!!!!!!!

 灼熱の暴走エンジンが起動する。


「――時は来たれり、世界は加速する。新世界は理想に集い楽園へと姿を変える。
 根柢の渦―アカシックレコード―から生れし抑止力の集合体、ディティアレンスの生まれ故郷。その名は、『最後の楽園―トラディスカンティア―』」

 遥か先で大地震が起こり、ある場所で火山が噴火した。津波が町を呑みこみ、竜巻が家屋を吹き飛ばし、雷が車内まで焼きつくした。

 突如、天変地異が新世界を襲い始め、姿を変える為に人類にも姿を変えさせる。一つの身体にとどまるのではなく、多重世界に観賞できる、光の粒子化へ――天変地異に呑みこまれた者どもは、ディティアレンスとなって先に『最後の楽園―トラディスカンティア―』へと旅立っていった。

続きを読む

 時刻も分からない深夜刻。気持ちよく寝ているツキヒメに向かい、

「(起きなさい!!!)」

 怒鳴り声が脳に響き、たまらずに目を覚ますツキヒメ。リリスが強制的に起こすのだ。自分の声なのに雰囲気も全く違う様子にツキヒメは寝惚けていながら困惑していた。

「(練習するわよ、練習!!早くあなたには私になってもらわないと困るんだから)」
「……なりたくないー」

 そう駄々をこねてはっとする。リリスの怒っている顔が目をつぶれば浮かんで見えた。

「(私を生みだしたくせに私を否定するなんて本当に良い度胸してるわ。私じゃなかったら永眠にしてやる!……いえ、いっそ永眠させれば私が成り変われるかしら)」
「怖いこと言わないで!」

 逃げ場なし。ツキヒメは仕方なくリリスの言われるとおりにする。

「(あなたが強くならなきゃ私は僅かな時間しか活動できないの。でも、せっかくこうやってあなたと話せるようになったんなら、有効活用しない手はないわ。私があなたを強くする)」
「どうして私が私に鍛えられなきゃいけないのよ?」
「(あんたが弱いからでしょう?)」
「ぐぬぬぬ……」

 どうして同じ自分なのに他人みたいに貶すのだろう。気にしていることをはっきり言うのでぐうの音も出ない。
 と、ようやく本題に戻ろう。
 リリスの試練として起こされたツキヒメだが、自分がリリスの姿をしていることに気付く。

「どうして私がこんな格好してるの?」

      eb83949f.jpg

「(当然でしょう?あんなフリフリのモエモエの格好じゃ強くなれないでしょう?だから私の身体に馴染んでもらうわ。どう?そのボンテージ?身体を締めつけて快感になってくるでしょう?)」
「……きつい」
「(それがいいのよ!まったくあんたって本当にお子様ね)」
「…………」
「(大人の身体にはこの位の締め付けがちょうど良いのよ。特に胸のあたりなんて――)」
「もう良いの!!」

 自分の姿に目を背ける。ツキヒメはまだ子供でいたいのにリリスが絶対に逃さない。

「(聞きなさい。……これからみっちり私の身体でオナニーしなさい)」
「えええっ!?どうして?」
「(『たゆたう快楽の睡眠薬―ジ・エンド・オブ・ホワイト・アルバム―』には多くの快楽が必要なの。いつもは他人の夢の中で欲求を満たすんだけど、一番手っ取り早いのが誰の手も汚さない一人プレイでしょう?私じゃこの身体に馴染んじゃってお腹一杯にならないけど、あなたなら話は別よ。きっと初心なあなたのことだから初心に帰った気持ちで感じることが出来ると思うわ。――さあ、私の身体をいじめなさい!!)」
「…………」

 ツキヒメは思った。快楽の女王は究極のドMだと。

「(更に言うならあなたがこの身体に馴染む為の特訓も兼ねてるのよ。この身体に馴染んだら私の力はあなたのものよ。そうしたら本物の力が手に入るわ)」
「……その頃には私の身体も淫乱になってるのね」
「(そう。マスターを魅了する素敵な女性になってるわよ)」
「…………」

 素直に微笑むリリスの顔が目に浮かぶ。マスターの為を思っての特訓なのだ。

続きを読む

「あ、たま……いたい!頭が痛い!!」

 頭痛がやまない。直接攻撃を加える一撃はぐにゃりと脳を陥没させて視界を歪ませ、気分を悪くする。
 頭痛を生む攻撃はハンマーでもなければ剣でもない。声だった。直接脳に響きかける声。その正体は――

「だれだ!?私を呼ぶのは――!!」
「私よ」

 眼を見開くと、カンナビの前に一人の女性が立っていた。ポリスリオンだった。此処はポリスリオンが生み出した精神世界。逃げ場なき断崖絶壁の場だった。

「お前が私の邪魔をするなら、私はあなたを倒す!」

 ポリスリオンが作り出したフィールドは逆にカンナビに有利だった。逃げる場所がないのに鉄球を避けられなければ致命的。受け止めることなどポリスリオンには不可能なのだから。
 拳を振り上げ――

「無駄よ」

 ――振り下ろす直前にポリスリオンが呟いた。ポリスリオンの自信の通り、カンナビはポリスリオンの顔面に拳を打ち込んだ。
 すると、カンナビは顔面に拳を打ち込まれ、跳ね返される様に地面に叩きつけられた。

「がはっ!?」

 確かにポリスリオンに打ち込んだ拳だったのに、カンナビが受けてしまった。しかも当のポリスリオン本人は全くの無傷だった。無敵の領域。ポリスリオンがカンナビに近寄る。

「私はあなた。あなたは私――傷つけることはできない。私が出来るのは、あなたを受け入れること。あなたがしなくちゃいけないことは、私を受け入れること」

 ポリスリオンがカンナビの乳首に吸いついた。

「あんっ」

 今まで出したことのないカンナビの高い声が耳に入った。

「この快感はわたしのもの?いいえ、あなたのもの。私の身体はあなたの身体。快感を共有できるから、痛みも共有できる」

 耳を舐め、唇を奪い、舌を入れ、おまんこの中に指を入れる。
 ポリスリオンはカンナビの感じる場所を的確に捉えて骨抜きにしていく。自分の身体こそ自分が何処が一番感じるか知っている。カンナビのクリトリスを舌で叩くと、カンナビが全身を痺れさせた。
 カンナビの力を持てばポリスリオン如き悠々払い除けることなど簡単なはずなのに、それが出来ない。ポリスリオン自体が丸で一つの鎖となってしまったのかのようにカンナビの動きを縛って身動きをとれなくしていく。

「やあ、やめ――ひぅっ」

 カンナビが愛液を垂れ流した。ポリスリオンも同じように蜜が溢れてスカートの奥のショーツをビショビショにしていた。

「追うのでもない。逃がさないでもない。快感に溺れさせてこそ『断崖絶壁の場―クォド・エラト・デーモンストランドゥム―』は完成される。これが、私とあなたの本当の力。人を幸福に導く力」
「か、かいかん……?」

 甘い吐息と供に喋るカンナビに、ポリスリオンは今まで見せたことない艶やかな表情を浮かべていた。

「頭を真っ白にさせて、真っ黒な欲を吐き出させて。グノーグレイヴに染まる世界。握出の求めた世界」

      e9c1dc49.jpg

 カンナビが目を見開く。そしてポリスリオンに賛同した。

「うん、うん!!そうなの!!これが、握出の求める快楽の世界――」

 カンナビが嬉しそうに喋るたびに愛液が溢れ出し、ポリスリオンの指を濡らして絡めて感じさせる。ポリスリオンも嬉しそうに笑っている。そうだ。一人だけ悦ぶ自己満足の世界じゃない。二人、三人、いや、皆を悦ばせる世界じゃなければ意味がない。それは性交の世界。皆が喜ぶ世界――

「こんなに……気持ちのいい世界なんだ」

 ポリスリオンの指が止まる。カンナビは知らない間に逝かされてしまっていた。ポリスリオンの身体にカンナビの愛液が飛んでいる。とても嬉しそうに微笑んで、もう一度ポリスリオンはカンナビと唇を重ねた。

「供に創りましょう。握出の求める理想郷を――私の信じる闇の世界を――」
「アハハハハハ!!それでこそ私よ!!私の最高のパートナーよ!!」

 二人の意志がようやく重なる。
 一夜の悪夢がようやく終わる。
続きを読む

 二階で悪魔と鬼が戦っている頃――
 一階に残ったセンリは握出に会いにリビングを訪れていた。電気を消して月光に照らされた中、握出はワインで一杯飲んでいた。
 手にはグラスとポリスリオンの『粘土』、今や月明かりに照らされた『粘土』はさしづめカマンベールチーズだ。
センリに気付いた握出は誘ってきたが、センリは厳しい目つきで断った。

「握出さま。『粘土』を返して下さい」
「ヤー。ポリスリオンはカンナビのままがいいの」

 子供の様にだだを捏ね、『粘土』を大事そうに抱きしめた。

「そんな理屈通りません!ポリスリオンに戻すのが道理です。カンナビを作り出したのが握出様ならなおさらです!仲間として、ポリスリオンを返して下さい」

 かつての正義の使者として、握出から取り返す為にセンリは闘う。未来日記を持ち、将来の視野を広くして、数多の可能性を全て計算し、回避に備え攻撃に転じる「千里眼―クレヤボヤンス―」で握出を討つ。


「…………仲間、ですか」


 握出が真顔で呟いた。闘うつもりはないのか、赤ワインを飲んで一息ついた。

「グノー商品『粘土』はある女性が作りだした栄誉ある商品でした。社長、私、そして彼女、三人で作り上げたエムシー販売店でしたが、彼女は企画担当の落ちこぼれ。失敗の連続、無茶難題をつきつけ、噂によるバッシングを受け続けた。逆に私の方が商品を開発し、成功への兆しを見せはた。彼女の仕事が徐々に減っていった」

 初期の話だろうか。誰に語るわけでもない独り言をセンリは黙って聞いていた。

「彼女が生涯かけて唯一手掛けた、それが『粘土』です。使えない人は切り捨てれば良い。それが社会です。仲良しごっこで会社をやっていくほど私は優しくなんてありませんよ?」

 人は社会で死んでいく。やりたいことをやっている人なんて誰もいない。
 金の為に人は働く。生きるためにやりたくないことをやらなくてはならない。
 ――嘘で固めた真実こそ現実。

「人は皆働いています。無意識だろうと、目的を持って動いています。握出様が考えるのでしたら、人の能力の見極めるのではなく、能力を開花させる方法ではありませんか?そんなことでは、握出さまは必ず一人になります」

 社長がいる限り自営業ではない。自分のやりたいことをして会社が成り立つはずがない。

「握出さまにとって都合のいい駒になる為に、私たちは此処にいるのではありません。握出さまが本当に好きだからこそ、私たちは此処にいるのです」

 二階で争っている二人は、握出の為に闘っている。
 ――ガツン、と二階で大きな音が響き渡った。

「自分の才能を開花させる?そんなこと自分でやってください。私は知りませんよ」

 部長が部下を無視することほど悲しいことはない。ダメなことはダメと叱るべきだ。そうしないと、家が崩れる。

「救ってあげて下さい、握出さま。――彼女を」
「――――」

      f1dd3d41.jpg

 握出が目を丸くしている。驚いていると言った方が正しいのかもしれない。センリが未来ではなく心を読めるとは思っていなかったらしく、一つの敗北感を味わっていた。

「ああ、言われちゃった。悔しいのう」

 握出がセンリを見ることなく『粘土』を背後に投げ渡す。『粘土』はセンリの腕の中にすっぽりと収まった。

「彼女に伝えといて下さい。御苦労さまと」

 センリは頭を下げて二階へ駆け上がる。一人残された握出は再び赤ワインに口をつけた。
 ポリスリオン、いや、カンナビ。再び握出の前に現れたその姿に、握出は一つの想いを巡っていた。同業者を殺した自分が今更彼女にやれることは、同じ間違いを繰り返さないことだと思っていた。
 傍に付かせ、一から基礎を教え込ませることが重要だと思っていたのに、それは昔の考えなのかもしれない。
 ポリスリオンにはポリスリオンの良さがある。本当に重要なことは、握出がポリスリオンを想うなら、間違いを正解に導かせることを教えてあげることだ。
 その為に彼女を二度殺すことになっても、――正義の名のもとに、許しを得よう。

「守屋秋奈……君に会えてよかった」

 握出の想いこそが、数多の失敗の果てにある只一つの正解なのだから。

続きを読む

「ハァ……アッ…」

 身体をぼろぼろになりながら引きずる様な形で玄関まで下りてくるセンリ。フォックステイルがカンナビを引き寄せている。気付かれないことを祈りながらツキヒメの帰りを待つ。

『ツキヒメが帰宅する』

 『必ず偶然が起こる未来日記―ア・ダイアナ・ダイアリー・ディクショナリー』に描けるのはここまでだ。もしツキヒメが遠出していたらデモンツールズは全滅だと悟る。
 二階で大きな音が聞こえる。持ち堪えるのも時間の問題だった。

「――――」

 センリが詠唱を始める。呪文が完成すると、即座に扉に向けて光沢の氷柱―アイシクル・キュート―を放つ

「ただいま」

 扉が開かれる。帰宅したツキヒメには何も分からずに光沢の氷柱が貫いた。
 気を失うツキヒメ。だが、光沢の氷柱には殺傷能力はない。体温の低下による凍傷程度のダメージだ。ツキヒメの意識を奪えれば、きっと彼女が目覚めてくれる。

「おねがい。目覚めて」

 ツキヒメの姿が闇のベールに包まれる。結んだ髪の毛が降ろされ、衣装が闇に染まり、再び目を開けたツキヒメの視線はセンリを殺してしまうのではないかという力を持っていた。
 その目がセンリを映した瞬間、フッと鼻で笑った。それはそのはず。センリは彼女に勝てない。二勝している勝者の勝気の表情。
 快楽の女王、リリスがセンリの前に現れた。

「どういうつもりかしら?私はまだ眠いのに急に起こされたら苛立っちゃうじゃない」

 爪を向けて敵意を向けるリリス。だが、センリはぐっと耐えて頭を下げる。

「おねがい……ポリスリオンを止めて。頼めるのは、リリスだけなの」

 センリの頼みにリリスは状況を呑みこめずに困っていた。だが、二階から漂う闇の空気を感じ取る。闇の正体は憎悪。悪鬼に満ちた者がいることを知りリリスは笑みを浮かべた。

「そう。私の眠りを邪魔するものが現れたのね。ふふっ、早く片付けてゆっくり眠りにつきたいわ」

 センリを黙って通り抜け二階にあがっていくリリス。場所はポリスリオンの部屋。一定のペースで廊下を歩き、扉を開ける。
 ベッドで血を垂らしたフォックステイルの上に跨る鬼がいた。
 リリスは初めてカンナビを目に映したのだった。

 カンナビが起き上がる。身長が同じせいか、似た匂いを感じ取る二人。
 リリスが大きくあくびを噛み殺した。

「あくびが出るわ。面倒なものを呼び出して」
「アハハハ!!面白いよ!!私を愉しませて!!」

      34d77840.jpg

 飛びかかるカンナビ。だが、リリスは右手を前に突きだした。

「衝動波―ノンレム―!」

 波動が部屋の物ごとカンナビを押しかえす。狭い部屋の中だ。壁に強打し背中を打つカンナビ。

「アヒャ!」

 だが、もろともせずに再び襲い掛かる。速さが先程より上がっていた。

「くっ、衝撃波―レム―」

 左手を突き出し再び返す。

「――ハッ!!」

 怯むことなく再び駆け出す。慣れてくる度、スピードがあがるカンナビ。リリスの放つ波動に何度押し返されようとも、繰り返しリリスを襲いかかる。

(おかしい。こいつの体力は底なしなの?)

 カンナビが押し返された拍子に机の角に当たり血を流している。だが、決して終わりにしようとしない。まるでリピートし続ける壊れたプレイヤーだ。
 同じことを繰り返す――

「――まさか!?」

 リリスが気付いた時には遅かった。カンナビが瞬時にリリスの地点まで到達した。

「私の力は完成してるのよ!」

 リリスの顔を掴み床に叩きつける。床板が割れるほどの衝撃だった。

続きを読む

 フォックステイルを追い詰めたカンナビ。
 扉の中に入ると、6畳の真ん中でフォックステイルが佇んでいた。入口を塞いでしまえば袋の鼠。煮るなり焼くなりカンナビの自由だった。
 だが、カンナビが現われたことでフォックステイルが不敵に笑う。

「この部屋に入ってきたの。お主、この部屋に入ってしまったのう」

      
自分との戦い

 何を言おうとしているのかはカンナビの目の前に起きている光景を見ればわかる。
 フォックステイルの隣に、カンナビの同一人物であるポリスリオンが立ち竦んでいた。

「そう……私の理想から呼んできたのね……」

 『数珠繋ぎの隠れ財宝―ワンポース・オブ・ナイン・タワーズ―』。理想郷へ到達する為の九つの試練は、まさに自分との戦いだ。扉を入ってしまったことで開始された試練の一つ、フォックステイルはカンナビとポリスリオンを戦わせようとしていた。
 ポリスリオンは剣を抜いた。カンナビも拳を鳴らした。

「でも、私は一気に駆け上がる。立ちはだかるのが自分であっても容赦しない」

続きを読む

 扉が開き、足音が聞こえる。私の前にやってくるただ一人の来客。

「……また来たの…?」

 約束したわけではない。でも、彼は毎日訪ねて来ては私に苦痛を与えに来る。そんな彼の十分間にも満たない行為を、私は心のどこかで待ち焦がれている気がした。

「……アイマスク取って下さい。そ、それがダメなら、あなたの声を聞かせて下さい」

 彼を知りたい。彼を見たい。彼の声を聞きたい。
 恨みの裏返しなのだろうか。いいえ、私が彼を恨んだ時から、一目見るまでこのままじゃ死ねないという心が生まれたのだ。
 
「――――――」

 だけど彼は私の要望を聞き入れず、再び愛撫を始める。毎日していると、段々手つきが優しくなっていくのが分かる。彼もなんだかんだで私をいたわってくれているのを感じる。

「いや!いたい!!やめて!!」

 それでも私は痛いのだ。彼の手が遂に止まった。

 ここで私の事実を言うべきだと思う。でも、言ったことでさらに彼にいじめられると言う危険性があった。いや、むしろ彼が有利になる条件を無条件で差し出してしまうようなものだ。
 普段の私なら考えられない。私の弱みを見せてしまう――
 でも――

「……わたし、絶対にイクことが出来ないの。快感が失わされているから、あなたのやっていることは、苦痛でしかないの」

 私は自分の身に起きている苦痛を明かした。
 ほんとうにバカみたい……事実を言ったことで、彼が手を休めてくれると思っているのだろうか?本当に彼がいなくなると思っているのだろうか?

 彼がいなくなることで、本当に私は満足すると思っているのだろうか?

 今更伝えたことで状況は何も変わらないと後悔した。いや、むしろ立場はますます悪化した。
 彼は再び愛撫を再開する。

「どうして!?イヤって言ってるのに――!い、いたい……」

 クリトリスをいじられ身体が痙攣をおこす。膣に中指の第一関節まで入れられ。苦痛に苛まれる。

 私はもう壊れてしまったんだ。正常な思考すらまともにできなくなった。
 激痛と苦痛が私を修復不可能にした。
 正義の使者も痛いのは我慢できないんだ。
 だから仲間が必要だった。人との繋がりが人一倍欲しい私だからこそ、


 ――こんな私の元に通い続ける彼にだけは、弱みを見せてもいいと思ってしまったんだ。


 私は機械になりたかった。彼が現われなければ機械になれたと思う。
 私は現世に居座った。彼が私を生き残した。
 現実は苦しくて痛いものなのに、殺してくれるなら早く死にたいのに、
 それでも、人のつながりが私を留まらせる。

 死とは忘れ去られることだって誰かが言ってた。
 記憶だ、意志だ、姿に形がなくても、誰かが思い出してくれれば私は生き続けられる。
 まるで歌のよう。まるで恨みのよう。まるで彼のよう――。

 私は絶対に彼を忘れない。でも、同じように彼は私の中で生き続ける。私は彼なしでは生きていけない。


 ――死にたくない。今は死ねない。彼が死ぬまで私も死ねない。


 
続きを読む

 フォックステイルはある場所を目指していた。早く逃げなきゃいけない時、二足の不便さに苛立ちを覚えてしまう。
 どうして人は素早さを捨ててしまったのか、これでは――

「――弱肉強食の世界では絶対に勝てないわね」

 フォックステイルの言葉をつなげるよう、カンナビは背後からフォックステイルを押し倒した。

「弱くても逃げられる動物はいるのに、人間は弱ければ逃げられない。あなたは私に喰われる運命なのよ!!」

 気配を感じてもつかまっては元も子もない。フォックステイルは死を覚悟した。
 だが――、

「うっ――」

 カンナビの身体が横に薙ぎ払われる。ジャッジメンテスがカンナビに飛び蹴りをくらわしていた。

「ここは私にまかせて。はやくフォックステイルは逃げなさい」

 ジャッジメンテスの言われたとおりフォックステイルはその場を去る。カンナビが身体を起こし、ジャッジメンテスを敵と認識した。

      641a734e.jpg

「アハハハ!!単に相手が変わっただけ。先にジャッジメンテスを殴り殺しにしてやるわ」
続きを読む

 彼は何日も私のもとを訪れた。
 時間軸が狂っているせいか、何時に正確に来ているのかもわからない。
 時には彼の逸物に、時には部屋に散乱している道具を使われて、
 私は彼に愛撫される。

「ヴヴヴ……んぐっ、むぅ……」

 でも、前から言っている通り、私の身体には快感が流れない。
 彼が私をいじめることを、私は苦痛に歪んだ表情で身に受けるしか出来ない。

 涙を流す私に、彼はさらにバイヴを膣の奥へと突き刺していた。

「ぐががあああ――!!!」

(も、もうやめて……ほ、ほんとうにいたいの……)

 助ける気がないなら私の元に来ないでほしい。
 私は機械になることを望むのに、彼がいる限り私は苦痛に耐えなければならない。
 どうして、こんな惨めな気持ちにさせるの?彼がいる限り私の望みは敵わない。
 私は彼を憎んだ。ポリスリオンを憎んだ時の怒りではない。
 メタモルフォーゼの心を壊すほどの恨みだ。

 ――いったい誰なの?私をいじめるあなたは、ダレ?

続きを読む

↑このページのトップヘ