純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ: グノーグレイヴ

幸せとは何かを探していた。
最高の幸せを追求し、自らの幸せを探求し続けた。 
人と同じことをすれば腹が立ち、人と違うことをすれば角が立つ。
特別になろうと私欲に働けば、抑止を以って常人の行動なのだと気づかされる。
故に、自らを幸せにすることに意味はなく、他人を幸せにすることに意義を見つけ出す。

他人に乗り移る呪い事は自らの存在を薄め、描いた作品を腐らせる。
幾千にして腐敗。誰かに恨まれる人生でも構わない。
キャラを殺し、自分を殺し、最悪の結末で物語が終わろうと、
己の私欲をかけた場所を守り続ける。


私には、正義としての素質があったのだ。


『純粋とは矛盾色 村崎色の手記より抜粋 Necronomicon rule book』 

 『グノー』を手に入れれば何でも願いが叶う。
 願いとは大きく二つに分類できる。
 自分の為に願うか、人の為に願うかである。
 『グノー』はこの二つを叶えられるのである。よって、なんでも願うを叶えることが出来るのである。
 総次朗は願いを叶えてもらった。
 巨額の富と心の至福。この二つが手に入ることは、世界を手にすることと同じ。
 自分の描く小さな世界を買う事が出来るのある。

 ――自分の世界に生きるもの全てを支配できる。

 そのせいで、総次朗はおかしくなった。
 昔と別人のよう。恥ずかしさを隠すような初々しさはどこにもない。
 隠すことをしない。ありのままに醜態をさらけ出す。それが許される世界であり、非日常の十人であり、常軌を逸しており、常人とは逸脱した存在と呼ぶのなら、まさに総次朗はこう呼ばれるのではなかろうか。

 ――――王様と。

「……そんなの、ダメ!!」

 遥は最後の決戦に足を運ぶ。『失われた財産』を盗みにきた。
 『グノー』によって奪われた、頭領総次朗そのものを取り戻すために。


 中庭に降り立った遥を迎えたのは、吟醸が告げたように万全の態勢で足並みを揃えた警備の軍勢だった。

「なによ。本当に多いじゃない!」
「いたぞ!ツインテールだ!」

 警備員がツインテールを見つけて一声にかけ出す。ツインテールは跳躍力を生かして警備員を飛び越えていく。華奢な身体を大きく動かし、警備員との距離を放していき、前に立ち塞ごうとするのなら身体を細めて間を縫ってすり抜けていく。

「くそっ、追うんだ!」

 遥は懸命に廊下を走り続ける。大勢で迫りくる警備員の動きを止める為に、貴賓室の一室へ駆け込んだ。

「はっ、その部屋は――!?」
「おいこめええええ!!!」

 警備員が部屋の中へ押し込み。ツインテールを囲い込む。しかし、部屋に入った警備員の表情が一変する。
 その目に飛び込んできたのは、ツインテールが『時計』を握りしめた光景だったのだから。

「ゲッ――!!」

 ツインテールが勝機を見出したように微笑んだ。

「お勤めごくろうさまでした!――警備員、一時停止!」

 カチッと『時計』を押した瞬間、空気が凍りついたように、空間全体から音が消えた。警備員全員の動きが一斉に停止し、微動だにする者はいなかった。
 『時間停止』による危険回避。ツインテールにも息を整える時間が出来た。だが、

 ――コツッ、コツッ

 扉の奥で、靴音を鳴らしながら近づく影にツインテールの身が強張る。空間を支配して時間を停止しているはずなのに、ツインテール以外に動ける者がいるというのだ。
 驚きと供に整えたはずの息があがる。

(いったい、ダレ……?)

 ツインテールは影の正体が現れるまでその場でじっと待ち続けた。そして、影は現れた。

「時間停止も同じ『空間支配』だったね。でも、それは俺のつけている『眼鏡』と同じ。『時計』と『眼鏡』じゃランクも俺の方が上なんだよ。だから、俺には効かない。俺だけは動けるように空間を歪めておいたから」

 『眼鏡』をかけた総次朗が警備員をかき分けながら前に出た。遥を見る総次朗の目は憐れみも怒りも期待も見えない、ただ無関心と言うような、興味を示さない、冷えた視線であった。

「総次朗くん」
「ようこそ俺の城へ。歓迎するよ、ツインテール。『もう脱出することはできない』」

 総次朗の声に空間が震えた。今の一瞬で、遥が家から逃げようと中庭へ引き返そうとしても、廊下は無限回路となってしまい何時までたっても中庭へ引き返すことも、ましてや玄関に辿り着くことすらできなくなっていた。
 窓の外も然り。つまり遥は総次朗の『眼鏡』を奪わない限り逃げだすことが出来なくなった。
 怪盗が逃げられないことを意味するもの、それは、逮捕と言う二文字だ。

「っ!」
「きみはもう翼をもがれた鳥と同じということを理解した方がいいよ」
「お生憎さま。そんな似合わない眼鏡なんかつけてバカみたい」

 逃げられないと知っていても強気に喋るツインテールを見て可笑しく思う総次朗。

「そうだな。おまえもそんなフリフリの服は似合わない。脱いだ方がいっそ楽じゃないか?」

 総次朗が命じる。空間を従わせる『眼鏡』の催眠。貴賓室そのものを浴室に変えるように、『この場に服を着てはいけない』という指令を出す。

「『服を脱げ、ツインテール』」
「あっ・・・、くっ……」

 遥が自らコスチュームを脱ぎだす。白いグローブから外し、黒のタイツ、緑のスカートを外していく。一着一着脱いでいくにつれ、ツインテールの正体が浮かんでくる。
 総次朗は先日突きつけた。本人も認めた。それでも目の前に現れている間、ツインテールは綾波遥と別人であった。別と割り切ることで楽しみを一つ増やしていた。 
 正体を知らせないことで期待を膨らませていた。
 そして、その期待が高まった箱を開けたのだツインテールは総次朗の目の前で、綾波遥かの姿に戻ったのだった。

「……これが真実か。『怪盗ツインテール』は……『嘘の根源』は、お前だったのか、遥?」

 変えることの出来ない真実。総次朗の救いはどこにもなかった。面白味はどこにもなかった。でも、総次朗は思う。

「――それでいい。それが俺の望みだった」

 遥以外が怪盗であったら、ここまで追いかけることをしなかっただろう。
 『グノー』で追いつめ、吟醸に身柄を譲り渡していただろう。
 総次朗は思う。『嘘の根源ー怪盗ツインテールー』を憎みながら、ツインテールを追い求めていた自分がいたのだと。


「――楽しかったよ、遥」


 総次朗は優しく目を閉じた。現実から覚めて、夢の住人へと再び舞い戻る。
 『眼鏡』をかけ直すと、部屋の空間が蠢いた。
 裸になって未だ遥は総次朗に睨みつけていた。その鋭さは強がりではなく本物の強さを示しているようだった。

「総次朗くんになら、見られたって恥ずかしくない」

 男なら飛び上がるほど喜びそうな言葉を、総次朗は冷ややかに受け取った。そう、遥と総次朗は今や恋人同士ではない。敵同士なのだ。色気も茶目っ気もいらないのである。

「嘘だと思いたいだけでしょう?でもね、総次朗くん。これが真実よ。もう、遊びの時間は終わったんだよ。……だから、もう戻ってこようよ、私たちの世界へ。『グノー』のない、――素晴らしい世界へ」

 夢から覚めて現実と闘えるように――
 総次朗も吟醸に殴られて垣間見えた素晴らしい世界。未だ子供なのだと知らせてくれた吟醸の一撃は、総次朗の思い描く世界を歪めるほどの一撃を与えていた。
 修正、修復にも時間がかかった。そして総次朗は夢に生きた。

「世界が素晴らしいのは願いが叶うからだ!この世界ではすべての夢がかなう!全ての願いが成就する!裏切りも横取りもされない、皆が自分の好きなように生きられる世界だ!遥!おまえが怪盗をやれるのも、『グノー』のおかげだと言う事に何故気付かない!?」

 現実から覚めて夢に逃げられるように――
 人でありながら常人以上の跳躍力を持ち、吟醸含めた警備を赤子のようにねじ伏せてみせた。それは、総次朗と絡んだ遥に『グノー』が知らずうちに力を授けていたに他ならない。
 知らずうちに『グノー』の恩恵を受けていたにもかかわらず、遥は現実に生きた。

 二人の生き方は元は一つだった。しかし、すれ違っていってしまったのだ。
 どこからすれ違ったとすれば、それは――

「影響を与えている、人がより進化するために、道具に身を預ける。それで良い。それこそ道具に価値がある。自分の身では限界がある。でも道具は無限大だ!」

 どんなに頑張って努力しても、叶わない願いがある。挫折も徒労も人だからする。だけど『グノー』にはない!『グノー』に頼れば願いは全て叶う。
 ――そんな理想論を遥が首を振った。

「総次朗くんが縋る世界じゃ、私の願いは叶わなかった」
「ウソだ!『グノー』は全ての願いを叶えてくれるんだぞ!」

 全ての願いが叶う世界で、遥は涙を浮かべた。

「ほんとうなんだよ……私の願い……」

 『グノー』ですら叶えられない遥の願い――



「総次朗くんは……帰ってきてくれなかった」



 そんな、簡単な願いは叶わなかった……。

「っ!」
「『グノー』は道具のフリをして、善悪の区別がつくんだよ。総次朗くんの都合の良い世界を見せて誘惑した。

 右は『グノー』を信じる強き敗者。
 左は『グノー』を拒む弱気敗者。
 ――笑うは『グノー』を生みだす社長のみの愚能社会。
 狂言を好み、快楽を舌鼓し、惨劇を愉しむ『グノー』の力。

 そんな社会を両断するには、総次朗は人を信じることを思い出すしかないのだ。
 この世界に生まれた人は皆、尊い。
 誰も無闇に傷つけてはいけない。
 傷つけて良い権利なんか誰にも無い。
 当然、『グノー』にも――

「……ねえ、総次朗くん。私はもう何も持ってない。なにも着てないよ?これでもまだ疑うの?」

 名前のない『あす』を『未来』と名付けてはしゃいだあの頃、
 名を残した『きのう』を『過去』と名付けて敬意を表したあの頃、

 『きょう』という『現在』に縛られて、それ以外を信じられなくなったのは総次朗本人だった。
 だから総次朗は簡単に奪われた。『グノー』に心を奪われ、他人を傷つけることに関心を示さなくなった。
 すでに『グノー』の虜。常連客。『グノー』だけを信じる愚か者になり下がったのだ。

「疑っているんじゃない!」
「縋っているんだよね?自分の都合の良い夢に」
「こいつ――!」

 遥がすかさず前に出る。無防備に一歩前に出ると、総次朗を包み込むように手を広げていた。

「一度浸かったら抜け出すのは大変かもしれない。でも、総次朗くんならきっと抜け出せる。苦労を知って初めて生を実感して、苦痛を知って初めて人に優しく出来るから。……私待ってる。総次朗くんを、ずっと待っているから」

 遥が優しく諭す。夢の住人が夢から覚めたらなにが待っているだろうか?儚く消える存在かもしれない夢うつつな身体が、つらい現実に耐えることが出来るだろうか?
 『グノー』の蜜を啜った総次朗も然り。遥はそれでも待っていると言うのだ。
 総次朗にとって最後の、遥が救いの手を差し伸べているような状況だ。ここで手を掴まなければ、総次朗は孤独な王として生きることになる。
 社会に生きつらい現実と闘うか、それとも孤独に生き夢と快楽に生きるか―― 
 総次朗の答えは固まっていた。

「おまえの言う事は嘘っぱちだ」

 遥の手がぴたっと止まる。
 遥を拒絶する総次朗の声。遥が総次朗をどんなに想っても、その声は本人に届かない。『嘘』と思っている限り、真面目に聞いたら馬鹿を見るからだ。

「だけど、『グノー』は違う!俺との信頼がある。人の夢を叶えられる実績がある!」

 社会とは数字。社会とは繋がり。――ほらっ、総次朗は『社会』に生きている。
 苦労なんかしなくても、楽に生きられる社会が存在するのなら、誰だって後者を選ぶだろう。
 賢い生き方をする総次朗。対して過去を美化する遥。
 だからこそ総次朗は語る。

「旅立とうじゃないか!夢の世界に――」

 現実と背いて夢に生きる疑似世界。総次朗はもう片道切符を手にしていた。遥が行かせないように強くひきとめる。夢の世界、その響きのベールに隠れたいんの姿を遥が引き剥がす。

「願いはそんなに叶うものじゃない、だから夢は尊い!総次朗くんは夢が叶いすぎて、幸せの重さを忘れてしまっているだけだよ。そんな、偽りの世界に浸っているんだよ!」
「あっ……」

 夢の世界。総次朗が縋っている世界の真の姿は、『グノー』の謳い文句に聴き惚れた理想郷を連想させ、現実とはかけ離れた偽りの姿を想像させる。
 総次朗は現実を見ていない。全て総次朗の言葉は一歩先の不安定な『グレー』から話をしていた。
 希望的観測、憶測。それが総次朗の弱さ。だから総次朗は『グノー』と言う夢に縋ってしまった。

「うそつき呼ばわりしているのに、一番のうそつきは、総次朗くんじゃない!!」

 二人の生き方は元は一つだった。しかし、すれ違っていってしまったのだ。
 どこからすれ違ったとすれば、それは――

 遥と総次朗が対峙しているということは、どちらかが『ウソ』を言っているから。現実を直視できないのだから『ウソ』を言うしかないのである。

 そう、遥と総次朗がすれ違ったのは――総次朗が現実を『ウソ』をつき通し、遥を拒み始めたからだ。遥と付き合うのが面倒になり、『グノー』というものに縋って逃げて、遥に全ての罪を着せてしまった。
 こうして、『嘘の根源―怪盗ツインテール―』は誕生した……。
 それが事の発端。総次朗は罪よって怪盗ツインテールに襲われるという処罰、遥が現実に実行していたから救われていたのだ。
 もし、遥がいなければ、とっくに総次朗は壊れてしまっていただろう。
 罪と罰によって殺されていただろう。
 延命処置とも思える遥の付き合いが、総次朗の目に光を取り戻させる。

「…………そうか、君は始めから真実を言っていたんだね、遥」
「そう、じろう……くん……」

 総次朗が遥に微笑む。遥が久しぶりに見た総次朗の笑みは、付き合っていた頃と変わらない屈託のない笑みであった。
 総次朗が戻ってきたと遥は今すぐにでも駆けつけたかった。でも、遥にはできなかった。――総次朗の手に、『グノー』がある限り。

「俺と供にグノーに誓おう。供に幸せになろうと」

 ――俺を欲するのなら、『グノー』に願おう。と、

 総次朗には『グノー』によって夢を叶えられる力がある。

 自分の為に願う夢と誰かの為に願う夢、その両方が叶えられるのなら、それはすべての願いが叶えられると同じ。だから『グノー』に叶えられない願いはないのだ。

「―――――」

 遥に強要する総次朗。『グノー』は怪しく輝き始める。遥の願いを聞き入れようと、力をそれぞれ解放しているのだ。

 『鏡』は人への変身を――『人形』は人への宿しを――
 『手帳』は人へ呼びかけを――『電話』は人へ声かけを――
 『時計』は人を差し止め――『粘土』は人を引き留め――
 『石』は人を操り――『眼鏡』は人を動かす――

「……そうね。じゃあ、私は『グノー』に一つ願いを託そうかしら」

 8色の輝きを照らす『グノー』に、遥はなにを願う――総次朗も遥の答えをしかと聞き入っていた。
 遥は告げる。遥の願い。遥の一番叶えたい夢――


「わたしは、『グノー』が生まれる前に戻って、『グノー』そのものを消し去りたい」


 ――グノーが生まれる前まで、何気なくあった日常の幸せを、皆が気付いていた時間を取り戻したい。



 それが、遥の理想だった。総次朗は血相を変えた。

「遥!おまえは――自分の為じゃなく、誰かの為に自分の夢を叶えるのか?そんな願いが叶うとすれば、それは願いを叶える、『グノー』に対する冒涜!偽善だ!!」

 時空干渉というレベルじゃない。『グノー』で築いた社会を崩壊させる願いであり、これから一世代を築くであろう『グノー』をなかったことにしようという、『グノーキャンセラー』。
 そんなことが許されたら、『グノー』に喜ぶ者達が黙っていない。本物の犯罪者だ。

「偽善者でも犯罪者でもいい。私は怪盗。奪うことしかできないなら、人を不幸にしてきた『グノー』を奪い去りたい。ウソッパチと呼ばれても、嘘を真実に変える理想郷へ導いてあげたい」


 誰もが生まれてきて良かったと思えるような社会を作りたい、今はできないけど、有言実行で将来きっと遥は自らの力で理想郷を作り出す。
 たとえ嘘に騙されようと、たとえ偽りに馬鹿にされようと、
 人生を素直に生きる人々が笑える未来が訪れますように――。
 誰も、『グノー』に頼ることのない世界へ――

 『グノー』が一段と光り輝く。遥が脱いだはずのツインテールのコスチュームにドレスアップしていた。
 総次朗が遥に駆け寄る。


「私が全ての罪を受け持つ。皆にはいつも笑っていてほしい。――さあ、叶えて!グノー・グレイヴ!!」


 『グノー』が弾けた。空間は光りに包まれた。

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 吟醸は教会を訪ねていた。
 一度だけ訪ねたことのある教会に再び足を向けたのは、ツインテールの予告状の暗号を解いたからに他ならない。

「『GtoG』。これは外人が使う常用区。『吟醸警部へ』。つまりこの文章は一度英語にする必要がある」

 今宵、『奪われた財産』+αを取り戻しに参上します。

 これを英語に直すと――、

I come to see you to steal
 gknow + a(lpha) tonight.

 この文章で必要な部分、つまり『時間』と『場所』を読み解くヒントが隠されているはずである。
 そこでもう一度、キーワードとなる言葉、『GtoG』に戻るとしよう。
 『GtoG』。……この文章で頭文字『G』が使われているのは、『Gknow(グノー)』のみである。ここからもう一つの『G』までに答えが隠されているのである。
 もう一つの『G』。それはきっと『Goal』。終わりまでという意味だ。つまり、この文章で必要な個所を抜き取るとすれば、

 ――gknow + a(lpha) tonight.

 ここだけである。幸運にも、『GtoG』全てが入っている文章になっている。さらに暗号を解き明かしていこう。

 つまり、この文章に場所、時間が描かれていることになる。まずは場所を読み取っていこう。
 順番から行けば場所を示すものは……記号は……『+』になる。そう、プラス(Plus)という記号だ。
 何故これだけ英語表記にしなかったと言うと、もとの手紙の中で『+』記号だけが初めから半英語表記になっていた為である。つまり、この記号だけは残しておけと言う意味で使われている。
 そう考えると、『+』という記号とそれが示す場所という関連性が見えてくる。

 『+』という記号……これは地図で調べれば教会の地図記号だ。つまり、ツインテールがあらわれる場所は、町内で唯一の教会、純聖月光蝶―セントルイス―学園の教会ということになる。


 そして最後に時間である。
 当然、吟醸がひもといた方法で進めていけば、時間を表しているのは『α(lpha)』の部分ということになる。
 αは既に一字で完結している文字だけに、紐解くのが苦戦した部分である。今でも吟醸が『この時間』に教会へ訪ねたと言う確証はない。なんとなく、刑事の勘と言うもので行動しているにすぎない。

 ツインテールの予告状、それは電子メールで届けられたものだった。今までの予告状は手書きで届けられていたものが、今回に限って電子メールであった(『電話』の回の偽メールは除かれたことになっている)。
 つまり、打ち込むキーボードを眺めて見ろと言っているのではないか。alphaの順で打ちこむと、一つの数字が浮かび上がってくる。数字の『6』である。
 これは『α』は『G』から数えて『6』番目の数字であることにも一致しており、偶然なのか分からないが、印象深い数字として吟醸の胸に留まったのである。

 改めてツインテールの予告状を整理すると、

 ――夕方6時、純聖月光蝶―セントルイス―学園の教会にて『失われた財宝』を盗みに参上する。という文章が出来上がるのである。



「あらっ。刑事さん。お久し振りです」

 吟醸は30分前に訪れた。シスターの彼方が来客を出迎えた。
 既に辺りは闇に染まっており、参拝に訪れるものは一人もいない。五月蠅い社会の中でここだけ切り取られたかのような静けさに包まれており、教会と言う空間がいつ、何者かがおり立っても不思議はないと言う空気を醸し出している。

「外は寒かったでしょう。眼鏡が曇ってますよ?」
「お、おおぅ……すまんの」

 彼方が吟醸の眼鏡のくもりを拭う。

「今、暖房をつけて温めますね」
「気遣いは結構。できれば静かなままにしてほしい」
「……そうですか。わかりました。なにかありましたらお声かけください」

 彼方は吟醸を残して裏に入ってしまった。吟醸にとっては好都合。誰の目も触れずに待ち人が来るその時を迎えたかった。吟醸は待った。見張りはお手の物。音をたてないように張り込みをする自信は持ち続けていた。
 だからこそこれは我慢比べである。いつ、どちらが先に相手に根負けするかの持久戦である。


 6時。吟醸に緊張が走る。推理した時間を知らせる鐘の音が響いた。
 ――辺りの静寂を壊さぬよう、怪盗ツインテールは静かに地面に降り立った。

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「こんばんわ。グノー刑事さん」

 まるで仲の良い間柄のように気軽に声をかけるツインテール。吟醸はすっと椅子から立ち上がり、ツインテールに歩み寄った。

「とうとう追いつめたぞツインテール。観念しろ」
「あらっ、私はまだなにも盗んでないわよ?」

 未遂という言葉を知らないのだろうか。それとも今までの犯行をすべて水に流せと言おうとしているのだろうか
吟醸は素直に笑ってしまった。

「ふん。おまえが次に盗もうとしている『モノ』も既に分かっておる――」

 吟醸が勝ち誇ったようにツインテールに詰め寄る。

 ツインテールの予告状、『失われた財産』の箇所である。『財産』とはつまり、『お金』のこと。英語にすれば『money』である。この単語を使う諺がある。

 time is money――(時は金なり)

「お前が次に盗もうとしているのは、『時計』だ。既に警備も『時計』を重点においている。お前に出来ることはないぞ」

 『失われた財産』だけでは警備に人員を割くことが出来ない。さらに+αと記されればなにを目的としているかもわからない。だからこそ吟醸が紐解き、次の目当ての『グノー』を一つに絞る。
 今や頭領家の警備たちは『時計』の貴賓室に集められていた。ツインテールも室内への侵入も難しく、また出ることも簡単ではないほどだ。

「……へえ、あんな短い予告状でそこまで解いちゃったんだ。刑事さん。案外頭いいのね」

 ツインテールが敵ながらも吟醸を褒め讃える。吟醸がここまで必死になるのは、これ以上の犯行を行わせたくないと言うツインテールを想ってのことだという一面も確かにあった。
 怪盗ツインテールとしてベールを被る少女にも『動機』がある。誰も好き好んで人のものを盗もうなどと考えたりはしない。犯罪を犯すということは苦渋の決断を責められたということだ。誰かが許しを与えて入れば、少女にはもっと違った道があったのではないかと吟醸は今にして思う。

「なにがあったのか聞くつもりはない。しかし、ワシは長年の経験からしてこれだけは言える。お前が取り戻そうとしている『過去』はもう戻りはしない。足掻くように怪盗を繰り返すくらいなら、これから悔いて反省しながら未来を歩いて見せろ。そしておまえが本当の意味で前を向いて歩けるようになった時、神さまはきっとお前を見守ってくれる。だから、上を向いて生きろ」

 ツインテールが息を飲む。そして、吟醸が言うように天を仰いだ。
 ステンドグラスに映る神さまの姿が、ツインテールを優しく見守ってくれていた。
 綺麗で美しい肖像だ。心が洗われるように一粒の涙を流し、もう戻れないと頭を下げた。

 ――主よ。これから犯す罪をお許しください。

 ツインテールの口がそう呟いたような気がした。

「刑事さん。あの予告状の本当の意味を読み取ったんでしょう?ここで会うのは、刑事さんと話をしたかったから。それが終われば私はすぐにでも盗みに行く。時間も場所も記す必要なんてなかっただけ。時間は刑事さんとお話しする時間が終わり次第だったし、場所は頭領総次朗くんの家。記すのがもう飽きちゃったから省略しただけ。そんな、単純な犯行予告なの」

 吟醸が必死に解いた暗号に意味がなかったことを教える。別に会話をする時間がなくても犯行は強行される、ツインテールの強い意思。

「ワシと話をするって、いったいなんの話をするつもりだ?」

 いったい何を告げようとしているのかを訪ねると、ツインテールは今まで浮かべたこともないような笑みを見せた。

「イ・イ・コ・ト・!」

 冷たい空気に乗せた甘い声が、吟醸の耳をくすぐる。急に色気を見えるツインテールが、突然衣服を脱ぎ始めた。

「刑事さん。私の処女を奪ってほしいの」
「な、なななななな!!!!!なんだとおおおおおおおおおお!!!???」

 近づいた距離を一気に後ずさる。ツインテールの告白に吟醸は顔から湯気が出るほど慌て出した。

「い、いかんぞ!ツインテール!お、おお、おまえが、いくら若いからと言って、おじさんをそうからかうものじゃないぞ!」
「本気じゃないと思ってるの?」

 パチンと、背中にかけたブラのフックが外れた音がきこえたと思ったら、ツインテールの衣服が一気に脱げ落ち、ツインテールの裸体が吟醸の目に曝された。
 夜の月光に映えるツインテールの白い肌に、神々しささえ感じられた。

「う、うわ!うわああああああああああああ!!!」
「慣れてないの?よかったぁ。私もなの。可笑しいわね。怪盗の方がお手の物なんだから」

 ツインテールが吟醸に近づく。足が全く動かなくなり、あまりの驚きに腰が抜けたようにその場に倒れこんでしまった。ツインテールが吟醸の元まで辿り着くと、剃り残したひげをなぞる様に顎を撫でると、ゴツイ吟醸の顔に口づけを交わした。
 額に――、頬に――、まるで吟醸をすべて愛するかのように唇を交わすツインテール。そして、潤いを残したツインテールの唇が、最後に吟醸の唇に重なった。
 柔らかくて甘い口づけだった。

「……おまえ、なぜ……?」

 ツインテールの突然の申し出。物事を始めること全てに『動機』が必要であるなら、きっとツインテールの行動に説明がつかないのも無理はない。

「刑事さん。いま私が処女を奪ってほしい理由も、総次朗くんの『グノー』を奪う理由も、答えは同じかもしれない。
 ――理由なんて何もない。ただいらないものを誰かに盗んでほしかった。奪ってほしかった。そうすれば私たち、もっと別の未来があったんじゃないかって、そう信じられるから――」

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 綾波遥は誰に対しても優しく、先生に対しても可愛がられる生徒だった。
 決して敬語を使っているわけでもなく、貴賓ぶっているわけでもない。
 話はため口で構わないので苦労することなく、生徒にとっても気兼ねなく話せる生徒だった。

 息苦しい学校の中で、クラスの輪の中心にいた生徒だった。

 だから、遥が総次朗を無視できないのは、クラスの輪を取り乱す総次朗を放っておけないからだと思っていた。
 一人でも生きていける財力を持てば、クラスの輪から外れたところで痛くも痒くもない。それが強がりではなく、性分に思っていた総次朗にとって、遥が話しかけてくるのもちょっかい程度だと思っていた。
 毎日話しかけるのも――、毎朝隣を歩くのも――、

 伝えなければ総次朗にはなにも伝わらなかった。気にかけてくれるクラスメイトでいることが辛くなったのは、遥の方が先だった。


わたしと、付き合ってください


 聖女でありながら俗世を捨てられない。遥が自分を穢してでも伝えたかった想いに総次朗は必死に応えたつもりだった。
 遥の笑顔はこれまで以上に増え、総次朗にも笑顔がこぼれ始め、これから楽しくなるはずだった二人の関係。
 それが、総次朗の祖父が他界した日から一変することになった。
 そして今、総次朗の目の前で――

「はるかああああああああ――――!!!」

 総次朗が目の前の相手に叫ぶ。突きつけた現実とそれでも信じたくない空想が入り混じる視線を総次朗は遥に向けた。
 遥はなにも言わない。総次朗が出した回答を黙って聞き入れていた。総次朗はもう一度だけ聞く。

「おまえが、怪盗ツインテールだったんだろ?……そうなんだろ?」
「……うん」

 遥は遂に認めた。自分が世間を賑わせる『怪盗ツインテール』であることを。

「どうしてだよ……。それほどまでに俺の邪魔をしたいのかよ!」

 『グノー』の娯楽を奪う。まるで子供のおもちゃを取り上げる母親に対して理由を問うように聞いた。勉強をするのは子供のやる気と意欲だ。おもちゃを取り上げたところで意味があると言えばあまりない。教科書ではなく子供は次に漫画に手を伸ばすだけである。
 強制と言う強要。やり方を間違えているのである。
 いったい子供にどのような育て方をしているのかを聞いているかのようだった。

「おまえは俺になにを望む?それが分かんないよ!?」

 人と人が付き合う事に理由を求める総次朗。だからこそ遥は失敗し、悲しい目を浮かべた。

「私じゃダメだった。総次朗くんを面白く出来なかったんだって、絶望してた。それはそうだよね?私に出来ることなんて、家の外に連れ出すか、家の中でセックスしてもらうかだもん」

 自分が他人にできることは限られる。『グノー』に勝てる道理はない。

「総次朗くんはどっちも望んでいなかった。魅力がない私が悪いんだけどね……。総次朗くんは遊ぶことを第一に考えていたよね?だから私は、総次朗くんと遊ぶにはこれしか方法がなかった」

 総次朗を喜ばせるため。大好きな総次朗くんに振り向いてもらうために、遥はツインテールを演じた。そしてそれは成功した。総次朗は常にツインテール―はるか―のことを想ってくれていたのだ。

 そんな遥の想いが次の瞬間、音を立てて崩れ落ちた。

「俺のため?ウソじゃないか!全部自分のためだろ?」

 遥の言葉は偽善の言葉。自分に都合よく解釈しているだけである。総次朗はツインテール―はるか―のことを想ってなど微塵も思っていないことを告げると、遥は胸が張り裂けそうな痛みに襲われた。
 だが、それこそ事実故に、受け入れなければならなかった。

「……そうだね。私、『グノー』に嫉妬してたんだと思う。私から総次朗くんを奪っちゃったことが許せなかったの」

 遥から聞こえる恨みの言葉、

 ――人じゃなくてモノに当たってたんだよ。

 そんなどうしようもない弱者をいじめる遥の真の姿。

「だから、きついお仕置きしたいの。『グノー』に私たちの関係が壊されたことへの復讐。それが、怪盗ツインテール。その為なら私は悪になる」

 遥が怪盗ツインテールとなったことと、総次朗が『グノー』で一枝や双葉を弄んだことの罪の重さは等価値だ。
 人の力で出来ることと、道具を頼ることで出来る用量の違いだ。
 『グノー』で弄ぶ陰湿な笑みを浮かべる総次朗と同じ笑みを、遥もまた総次朗に向けていた。

 人は皆が悪である。だから人は救えない――

「こんなことをしても関係は戻らないよ」

 ふと総次朗が遥にある真実を告げる。

「戻らないじゃなくて、総次朗くんが忘れているだけ。総次朗くんが昔のように戻ってくれたら私は――」
「俺は後ろを振り返らない。遥と付き合った出来事を、俺はもう思い出すことが出来ないんだ」
「――っ!」

 遥が希望に縋る過去の総次朗の姿。遥の隣で照れながら歩く総次朗とまた歩きたい。そんななんてことのない日常の風景が二度と戻らないことを告白した。

「『グノー』に出会って俺は色んな人を知った。外見だけじゃなく、中身も知った。内面性や記憶を読んで、俺は多くの人と正面から向き合ってきた。きっとそのせいだよ、俺が変わったと思うのは。――遥。俺にはもう自分と言う者がどれだか分からなくなってしまっているんだ。俺の昔の記憶はもう別人の記憶としか思えなくなってしまった。『遥と付き合っていた人』の記憶が本当に俺の記憶なのか自信が持てないんだ」
「そんな……ことって……」
「俺に残ったのは、頭領総次朗の『器』と、頭領家の財産だった。きっと遺産争いの時に、頭領総次朗は死んでしまったのかもしれない。その時俺が入れ替わって、頭領総次朗と名乗り始めたのかもしれない。かもしれないだらけだ。でも、もう俺にはそれしか残っていないんだ」

 自分の身体が実は『粘土』のように脆いものだと知っている。自分がなぜ総次朗の身体を手に入れたかなど遥か遠い彼方に置いていてしまった。一人身の大富豪の息子、頭領総次朗の身体をそう易々と手放すことが出来なくなってしまったのだ。金さえあれば夢も買えた!恋愛と言う生涯は欲の前は縛りとなって邪魔なだけである。
 総次朗は自由を求めている。ただそれだけであった。

「だから、俺の財産を狙う奴は絶対に許すことはできない」
「総次朗くん……」

 今まで見たこともない総次朗の怒り。互いに隠してきたものをすべてさらけ出した。隠すものが何もないと言う事は、殴り合いのケンカに発展してもおかしくないのだ。
 どちらかが倒れるまで。総次朗は既にヤル気に満ちていた。

「最終忠告だ。君を警察に引き渡す前に、俺から奪った『グノー』をすべて返してくれ。そうしたら罪を軽くしてやる。それが俺の、頭領総次朗のせめてもの情けだ」

 全てを忘れる機会を与える。総次朗は再び別の地に赴き、快感に溺れるであろう。やることは変わらない。何処に行っても被害者を作るだけである。

「できない・・・」

 遥の口から零れた。

「なに?」
「それは出来ない。私は、捕まる最後まで総次朗くんを『グノー』から救いたい。だから、総次朗くんの手から『グノー』を奪う!」
「…………そうか」

 総次朗が唇を噛み締める。事実を告げても諦めない意地の悪さ。真実を認められないのなら、偽りを否定することで『ツインテール』は捕まえられる。
 今度は総次朗の方が強要させるよう、遥かに真実を押し付けた。

「遥は既に警察に追われる身。屋敷に立ち入る前に捕まえることだってできるんだ」

 既に遥の家には警察が訪ねているだろう。遥が捕まるのも時間の問題だった。しかし、遥は穏やかな顔をしていた。捕まることをもろともしないように、総次朗に向かって笑顔を向けたのだ。

「それなら大丈夫。最後の予告状を既に送ってあるの」
「なに?」

 総次朗の想像を超える速さで予告状を出していた遥。イニシアチブを今回とられたのだ。

「私を捕まえるのが先かしら?それとも私が『グノー』を奪うのが先かしら?」
「くっ――」

 跳んだ誤算である。総次朗と話をしている間にひょっとしたら遥は『グノー』を盗んでいる可能性が十分にある。怪盗ツインテールが捕まっていない以上、総次朗は未だ疑心暗鬼の中を彷徨っているのだ。普段あり得ないような出来事すら頭を巡ってしまえば空想で暴れ駈け出す。
 『人形』も、『電話』も、『グノー』に関わる全てが盗まれている――
 遥の目がそう物語っていた。

「総次朗くんも、私なんかよりも『グノー』の心配をした方がいいんじゃない?」
「そんなこと、言われなくても分かってる――!」

 今この場で総次朗が出来ること。それは――


 ・遥の心配をする。
 ・『グノー』の心配をする。


 決められた選択肢の上を渡り歩くしかない。総次朗は振り返り、帰宅の道をかけだした。

「屋敷に立ち入った時、怪盗ツインテールの最後だ!覚悟することだな、遥!」
「――――」

 総次朗の影が見えなくなるまで見つめる遥。総次朗が見えなくなった瞬間、遥の瞳に大粒の涙がこぼれた。



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 吟醸が教会から放れ、彼方は残された遥を介抱する。『電話』による催眠支配。未だオナニーを辞めない遥の姿に目を塞ぎたくなる。しかし、遥を救えるのは『グノー』に関わりを持つ者のみ。彼方だけである。

「遥ちゃん」
「ぁぅ……」

 返事なのかもわからない喘ぎ声を漏らして一人自分の身体を慰め続ける遥。そんな遥に見せつけるように、生地が肌に擦れる音と供に袴が地面に落ち、彼方もその場で初々しい裸を披露した。
 遥よりも幼いその身体つきも、遥の痴態を見せつけられていた為か十分に火照っており、彼方も自分の乳房をいじり始めると、十分に感度も高まっていた。

「一人なんかで遊ばないで、私も一緒に混ぜてください」

 彼方が引き出しから取り出したのは、常に愛用しているバイブである。壁に手を置きお尻を突き出すと、彼方はおもむろにバイブを自分のお尻へ導いた。彼方の身体では男性の逸物が入るかどうかですら危うい。ましてやバイブがお尻に入るのかとにわかに信じがたい。しかし、彼方は意を決したように力を込めると、バイブを無理やりにお尻に突き刺していった。

「くうん……んんっ――!」

 狭い。苦しい。痛い。表情が苦痛にゆがむ。
 お尻が大きく裂けるかのような激痛しかない。しかし、体内に太くて長いモノが入り込んでくる感覚だけが身体をゾクゾクと震わせる。
 不思議と気持ち悪さはない。それは遥も体験したということが彼方にとって大きく影響を与えているのは言うまでもない。
 そして遂に、バイブ吸え手が彼方の小さなおしりの穴に入りきった。蓋をしているような苦しさだが、お尻の穴が膣内を押すことで愛液が零れ出していた。お尻を責められると感じてしまう。それは間違いなかった。

「あ……か……た……」

 遥の虚ろな瞳が彼方を見ているような気がした。

「はあっ……、ほらっ、これで遥ちゃんとおんなじ……あっ…」

 ずずっとお尻からバイブが出てくる。途端にバイブが擦れ、彼方の足あがガクガクと震え出す。不意打ちで強烈な刺激だった為に、愛液がさらに零れ出す。

「ハァ……ハァ……」
「ハァ……ハァ……」

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 遥と同じ喘ぎ声を出す彼方。彼方を救ってくれた親友の遥。この世で一番大好きな遥。
 そんな遥が彼方の痴態を見ていることに興奮を覚え、愛が止まらなくなってしまう。

「舐めてっ。遥ちゃん」

 自然に零れた彼方のお願い。彼方は『電話』の主ではない彼方の声に耳を傾け、そして応えた。
 遥は彼方に近づき、下半身をペタペタとまるで生まれたての子供のように擦って愛撫すると、股の付け根の秘部へと顔を覗かせ、そして可愛い舌を伸ばした。

「ふあっ――!」

 チロチロと、舌で何度もクリ〇リスを刺激させ、溢れた愛液をこぼさないようにおま〇こに口を付ける。
 例え遥がいまなにをしているのか分かっていなかったとしても、彼方を大事にするかのような優しい扱いに彼方の胸が熱くなる。

「ペロッ。…ちゅば…じゅるじゅる……はあっ……」
「はるかちゃん!私のお汁飲んでる……とっても嬉しいよ」
「ゴクッ……むちゅる……はぁん、あっ……じゅるぴちゅ……くちゅっ…」
「はうぅっ!そこ、きもちいいよ。はるかちゃん!」

 遥が愛液を飲んでいることに性的興奮が最高潮に達する彼方は立てる状況ではなくなっていた。カクンと足が折れて遥を下敷きにしてしまうも、それほど体重が重いわけもない。遥も天井を見上げているだけで状況が著しく変わったことではなかった。彼方のビショビショに濡れたおま〇こが目の前にあった。
 そして、彼方の前にも遥のビショビショに濡れtあおま〇こが目の前にあった。
 
「私も飲む。はるかちゃんの、イヤらしいお汁……んっ……ちゅる…」
「―――ひっ!」

 シックスナインで絡みながら遥のおま〇こに口をつける彼方。遥がたまらず声を荒げた。

「ハァ……んんっ……レロレロ…はぁ、はぁ、あむっ…」
「い・・あ・・あ・・ああぁん!」

 彼方の舌使いに遥が感じている。遥の穢れのない身体に彼方が触っているのだ。
 光栄なことでありながら、遥が彼方を大事にいたわるように、彼方も遥を一番に考える。どうやったら遥が感じてくれるのかを常に考え、自分の攻め方を少しずつでも変えていくと、遥はその都度声をあげた。

 女性―はるか―のことは女性―かなた―が一番よく知っている。

 それが彼方の強みであった。

「か……なた……」

 遂に遥が自分の名を喋ったんだと彼方は思い顔をあげた。

「はるかちゃん!?」

 少しずつ光を取り戻しつつある遥かの瞳。それは、遥かの目に涙がたまっているせいかもしれない。

「きたないよ……もうやめて……」

 恥ずかしさも取り戻し、彼方に必死に留まる様に説得する。しかし、それは違うと彼方は言う。

「ううん。汚くないよ。とっても綺麗だよ。遥ちゃんの身体。だから全然平気」

 たった一つしかない、綾波遥という芸術品を大事に思いながら、彼方は遥の足を絡めて貝合わせを形作る。身体の自由がまだ効かないのか、抵抗したくてもできない遥は彼方の想いを受け止めていく。そして、彼方は自分のアソコを遥のアソコにぶつけた。

「ああっ――!」
「うああんっ!!」

 互いのクリトリスがぶつかった衝撃で擦り合わされ、甘美を体内に送り出していく。ビリビリと痺れる下半身が崩れそうに遥も、彼方が必死に繋ぎとめてくれる。顔を覗く遥と泣き顔を見下ろす彼方。二人のぶつかり合う音が響き合う。

「あうっ、くっ!んんん・・や、やぁ・・みないで・・あぁんんっ・・」
「はるかちゃんのイクところ私に見せて」
「んううぅ・・う・・くっ・・はあぁ・・あっ、うっ、うぅんんっ! んっく! あっ・・あっ!あああ――っ!」

 びくっ! びくん! ドビュビュドビュルルル!

 ぶるぶるっと遥が身体を震わせると、ぶつかり合ったアソコから液体をほとばしらせた。気持ち良かった分だけ遠くへ飛ばし彼方にも数滴遥のお汁を付着させていた。

「あ・・ぁあ・・あぁああ・・あ! あああ・・あっ! ん・・んあぁあ・・!」

 輩出した解放感、身体に込み上げる達成感に遥は声を荒げる。彼方の姿を瞳に宿し、誰にも言えない秘密を二人で共有する出来事に、急に恥ずかしさが込み上げてきた。 

「かなたぁ……わたし……」

 遥の目から涙が一筋の遂に零れた。

「おかえり、遥ちゃん」
「…………かなたぁ……!」

 遥が彼方を抱きしめるのと、彼方が遥を抱きとめるのはほぼ同時のタイミングであった。

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「はっ?撤退?」

 総次朗から吟醸に告げられたのは、『電話』の保管されている部屋内部の警備の撤退だった。ツインテールを次こそ捕まえる為、吟醸の持ち場も室内になるはずだった。

「そう。今回は好きにやらせるんだ」
「なにを言っているんですか?電話を盗む瞬間こそ、ツインテールを捕まえる絶好の機会ですぞ!それを無碍に――」
「そういう常識は通用しない。それが『グノー』だよ?」

 総次朗の言葉に不満を飲み込む。
 『グノー』の不可思議な現象を二度三度とこの目で垣間見てきた吟醸だ。常識の外れた幻し。吟醸も自分が女子高生になった記憶を生涯忘れることが出来ないだろう。
 それなのに、未だに吟醸は昔ながらのやり方で怪盗を張りこみ、逮捕しようとしている。
 時代遅れなのか……しかし、吟醸にはその方法しか犯人を捕まえる方法を知らない……。

「もうそろそろ時間だ。ツインテールが『グノー』に堕ちるその時だ」

 総次朗は優雅に時を待つ。自室で待っていればツインテールが捕まることを確信している。
 そんな楽な逮捕劇があったら、警察など必要ない……

「どちらへ行かれるんですか?」

 外に出かける吟醸に総次朗は声をかける。

「煙草を吸ってくる!」

 『人形』の時には吸えなかった煙草だ。煙を吸って身体に落とす。自分の肺が汚れていくのが分かる。しかし、だからこそ落ちつきを取り戻すのかもしれない。
 人は綺麗だから汚れを気にする。潔癖して綺麗でいることを好む。
 周りから自分がどう見られているかを気にするように、
 他人のことを気遣うように、
 この行為全てが、自分の為だと自負する偽善行為――

 吐き気がするのを飲み込んで煙を身体から吐き出した。……美味い。
 吟醸は煙草の味が好きだからやめられない。
 どんなに考えたって、どんなに強がったって、煙草の味だけは大人になっても純粋に美味いと思えるものだからである。

 しばらく時間が経った後、煙草を消して中庭に出る。新人の刑事が吟醸に挨拶をした。

「警部!お勤めごくろうさまです」
「引き続き任務に当たってくれ」
「はっ」

 何気なく通り過ぎるだけの中庭。そこで吟醸は、微かな呻き声を聞いた気がした。

「……いま、変な音が聞こえなかったか?」
「音ですか?」

 新人が耳を澄ますが、何の音も聞こえなかった。

「いいえ。私の耳には聞こえませんでしたけど」

 吟醸は首をかしげ、気のせいかと思った――が。一歩前へ踏み出し、草むらの中へと近づいた。
 頭領家の中庭も広大である。しかも草木は手入れはされているが、長い草も生えていれば太い樹木もある。足元が見えないながらも吟醸は闇雲に足を踏み出した。
 適当に歩いている。だが、確かに声の聞こえてきた方向へ――

 ガサガサ――

 吟醸が草を揺らしながら歩いた先、それは本当に突然で――

「――――はっ!」

 吟醸は遂に、声の主の元へ辿り着いた。

「ぅぅっ……はぁ…あっ、あんっ……」

      壊れた怪盗

 少女だった。警備のいる頭領家の中庭で、見ず知らずの女性が裸で〇〇〇〇をしていた。

「あぅあぅ……おしり……キモチイイよぉ……くぅん……おしり……おかしくなっちゃう……」

 吟醸のことなどお構いなしに痴態を曝している。アソコからは大量の愛液をこぼしながら、白い肌が草の擦り傷や土壌の付着で汚れてしまっていた。
 場違いな空気。凍りつく吟醸。

「なにをやってるんだ……?」

 言葉を失う。それは少女がバイブをお尻に挿入して喘いでいるからではない。少女の傍らに落ちている見覚えのある『電話』。総次朗が見せたものと全く合一の盗品。
 何故少女が持っているのか――?そんな簡単な答えを導き出すのに、しばらく時間がかかっていた。
 唖然とする吟醸。これが何を物語るのか、総次朗の罠に吟醸は先に気付いてしまったのだから。

「じゃあ……おまえが……」
「あれ?警部?」
「――っ!?」

 いつの間にか総次朗が中庭に降りていた。振り返ると遠くで手を振りながら近づいてくるのが見えた。

「なにしてるんですか?そんなところで?」
「ああ、いや……煙草を吸いにきたんだ……」

 地面に煙草を捨てたように見せかけて『電話』を拾う。総次朗は未だ少女の存在に気付いていない。吟醸が総次朗に歩み寄る。

「中庭は禁煙でお願いしてるんですけどね」
(ちっ、何故吟醸がこんな場所にいるんだ?)

 総次朗もまたツインテールを中庭に探しに降りてきたのだ。『電話』により中庭に封じ込んだのだ。隠れ場所が限定されたかくれんぼ。圧倒的有利の鬼の立場。しかも時間無制限である。
 これは遊びである。総次朗がツインテールを捕まえるまでの楽しい時間のはずが、吟醸がいることで遊びが捜索という形になってしまう。むしろ吟醸が先にツインテールを見つけてしまった場合、そのまま連行。刑務所いきと言う呆気ない幕切れが待っている。
 なんという体たらく。ツマラナイ……ありえない!
 総次朗からすれば吟醸だけは早くどこかに行ってしまえと心から思っていた。

「それよりも頭領殿。あなたがこんな場所に降りてくることの方が珍しい」
「俺の家だろ?早くツインテールを捕まえてくれ」
「ワシはツインテールの姿を見てないから状況が分からないんでな」
「くっ」
(いちいち報告しなければ警察は動かないのか。社会のイヌめ」

 もし『眼鏡』を使うようなことがあれば、間違いなく吟醸を『犬』に変えようと思う総次朗である。

「『電話』が盗まれツインテールは撤退した。早く家の外に――」

「『電話』?それは、これのことですか?」

 吟醸がポケットから『電話』を見せた。総次朗が血相を変えた。

「何故お前がそれを持ってる!?」
「ありゃりゃ?これはいったいなんででしょう?中庭に落ちていたから拾っちゃったのであります」
「くっそ!」

 作り話のはずが吟醸が『電話』を持っていることになると、ツインテールの行方が完全にどこか分からなくなる。本当にいまも草むらの中にいるのかどうかも怪しい。むしろ中庭の広大さからツインテールを探し出すのが億劫になってくる。総次朗にとって既に徒労は耐えられない苦痛になっていた。
 楽に過ごすと言う結果の堕落。苛立ちが隠せない。

「ツインテールは?」

 総次朗が怒りを露わにしながら訪ねる。吟醸はしばらく考えたと、真顔で答えた。

「ワシは見ていない」
「……………………………………………」

 総次朗が壁を殴る。中庭から消え去ってしまう。
 吟醸は総次朗が消えるのを最後まで確認してから目を伏せた。


「……ワシは、刑事失格かもしれんな」


 身元不明の少女を総次朗に伝えられず、あげくの果てにツインテールを見逃すと言う失態を犯した。
 怪盗をしているツインテールと、追いかけて逮捕する刑事の吟醸。
 一時の勝負をしているう二人が、蚊帳の外で出会ってしまった場合はどうしたらいい。
 今回の吟醸は不戦敗と言う立場である。対してツインテールは不戦勝で『電話』を盗んだ。なのに、中庭で出会ってしまった二人。 ツインテールは今や総次朗の罠にかかって手出しが出来ない。いわば絶好の好機が到来している。

 ――逮捕するべき。それが警察の務めなのだ。

 感情を押し殺し、手錠をかければそれで終わる。終わるのだ……

「いくううううううう――――」

 少女が再び絶頂を迎えた。快感に喜ぶその瞳が総次朗を確かにとらえていた。

(ワシが、彼女を捕まえれば……)


 勝ち負けじゃないわよ!私には、『グノー』に狂わされた人を救わないといけないの……


 あの時、『人形』の際に聞いたツインテールの本音――。


「……おまえは、誰かを救えたか?」

 思わず吟醸が漏らした言葉に、少女は快感の表情の中で涙を零した。

「……おえがひ……」

 少女が吟醸に伝える。 

「わたしを、つれてって……」

 
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「やっぱり、予想どおりじゃない♪」

 予告時間に合わせて頭領家に出没した遥。しかし、警備の姿はこれまでで最少。ツインテールの姿を探しているがどこか頼りない警備のみなさんを横目に、屋敷の中を走り抜ける。
 あっという間に目的の部屋まで辿り着いてしまった。物足りないと思いながらも、全てが順調に事が運んでいることに遥はほっと胸をなでおろす。
 遥の無事を待っている人がいる。

「無事に帰るからね、彼方」

 遥は一息ついて部屋に侵入した。そして部屋に飾られた『電話』を見つめる。

「ここからよね……」

 今回の重要なところ。『電話』を盗むことよりも、『電話』は持っていることが既に罠だということ。
 いくら遠くに放れていても、『電話』に贈られる電波を切らない限りは逃げることができないと彼方は言った。
 だから、遥は『電話』を盗む前にまずしたことは、『電話』の電源を落とすこと。電話含め電化機器は電源が入らなければ立ちあがらない。その間は電波が送られることがないのである。

「さらに、もういっちょ!」

 念には念を入れ、遥は『電話』の受信端末を外してしまう。これで衛星が電波を送受信することはない。

「よしっ。えへへ、これで安心よね」

 電源の落ちた『電話』を手にとる。これでようやく『盗む』行動をとれるのだ。

「こうしちゃいられない。ぐずぐずしている暇はないんだった。早く屋敷を抜け出さないと――――」

 PPPPPPPPPPPPPi―――――!!!

「――――――えっ?」

 電話が鳴った。目を丸くして驚く遥。消えていた画面が一通のメールを受信したことで起き出していた。

「なんで?受信できるの……?」

 ドックン――

 恐怖よりもむしろ興味。電話を受けつけない『電話』に送りつけられたメールの差出人の名前を見たいという女性心をくすぐる興味本位。
 やめておけばよかったと後悔したところで、分かっていたことだと開き直る口癖。そしてその後の逆恨み。

「早く盗めば良かったのに――」と遥はもう一人の自分に言われた。

 言い訳を告げるには既に遅く、遥は力が抜けたようにブランと手を垂らしてしまう。
 メールの内容を見つめた視線が脳で理解するよりも早く遥を洗脳する。


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「ヤッホー。総次朗!」

 遥が登校中に見つけた頭領総次朗に後ろから抱きつく。

「遥。うわっ!」

      過去の物語

 ガバッと全体重を預けられ、思わず倒れそうになる身体をふんばり、事なきを得る。しかし、通学途中で多くの生徒がいる中で遥と総次朗の熱々ぶりを見せられたら、他の生徒の横を冷たい風が一層冷たく吹き抜けるだけである。

「やめろよ、こんなところで。見られたらどうするんだよ」
「いいじゃない。逆にみんなに見せつけてあげましょうよ」

 総次朗が恥ずかしがって遥を振り放そうとするが、遥は嬉しくて総次朗に必死にしがみつく。そんなじゃれた二人の関係は誰の目から見ても一目瞭然だった。


「わたし達が付き合ってるってところ」


 遥の嬉しそうな声。朝からバカップルぶりをかます遥に思わず噴き出しそうになる総次朗だった。
 
「バカ。この学園で過ごす生徒は清楚に清潔にが基本だろ?遥には清楚な部分が欠落してるよ」
「総次朗。今時の女の子が全員処女だなんて信じてるのかしら?(*≧m≦*)ウププッ」

 遥のコメントは清潔すら拭い去り不潔極まりなかった。さらに笑い方は下品であった。

「……まさか、遥。おまえも――」

 墓穴を掘ったのは遥の方だ。総次朗の信じられない驚きの表情を見た遥が急に恥ずかしがったのか、顔を真っ赤にした。

「違う!私は処女よ!」

 爆弾発言。投下して……自爆。一気に沈んだ遥のテンション。静まり返った遥の表情を見て、

「……ぷっ、あははっ!」

 今度は総次朗が笑った。屈託のない笑顔だった。

「なによ!」

 その笑顔がなんだか悔しくて、遥は顔を背けてしまう。本当は眩しかったのだけれどそんなことは一度自爆してしまった身だから簡単に言えない。今度もう一撃空爆を受けたら、それこそこの場でのたれ死ぬ可能性だってあった。
 笑って、焦って、驚いて、沈んで、怒って、
 そんな表情がころころ変わる遥を見ながら、総次朗は手を差し出す。
 『普段』と違う刺激をくれる遥を愛おしく思いながら、総次朗も彼氏として、遥と同じバカッ振りを見せつけたくなったのだ。

「行こうよ、遥」

 みんなに手を掴んで仲良く登校している姿を見せつけよう。

「うん!」

 そうして二人は手を組ませ、横に並んで登校した。
 だれもが羨むカップルであった。
 特に総次朗は次期頭領家の莫大な財産を所有した身。永遠の富を持った総次朗に目を付ける女性は多かったが、そんなことを知らずに土足で明るく一歩前に踏み出したのが遥である。
 遥の隠れ特技があるとしたら『イニシアチブ+1』である。なにをするにも人より先に踏み込むことが長けていた。遥の大好きな駅前の限定シュークリームを手に入れる為なら、一限目のお祈りをこっそり抜け出して二限目開始前に戻ってくることができる。
 頭よりも先に行動し、そのおかげで脳の伝達よりも先に足が早かった。
 それが今の怪盗ツインテールに生かされることになるとは、この時の遥は夢にも思わなかった。

 しかし事態は夏の終わりに急変する。総次朗の態度が一変したのだ。

「ねえ、総次朗。今日は……」
「ごめん。これから用があるんだ」

 鞄にノートを入れて帰宅の準備を始める総次朗。総次朗は遥と遊ぶことをしなくなっていた。帰りに訪れる僅かな自由時間。息苦しい学校からの解放を許されて皆がようやく一息ついている夕暮れ時間。
 遊び足りない遥は総次朗を誘っていた。しかし、総次朗は夏の始まりから急に遥の誘いを断るようになっていた。

「またなの?総次朗。この頃遊ぶ機会なくなっちゃったよね?ねえ、なにしてるの?私にも言えないことなの?」
「ごめん」

 同じ言葉を繰り返す。それが遥をどれほど苦しめているか分からないでもない。遥は総次朗に詰め寄った。

「どうして……。どうして何も言ってくれないの……?総次朗……」

 必死に訴えかける遥だが、総次朗の目は既に遥を見ていない。死んだような輝きのない瞳に、いったい何があったのかを聞きたくても総次朗は話してくれない。
 辛い時間。総次朗が急に遠くにいってしまったかのような虚無感。近くにいればいるほど、目に映れば映るほど、遥にとって苦しい時間が増えていく。
 だから遥は一人淋しく帰るしかない。大好きなシュークリームを食べる気力さえ失うほどに、遥は悲しみに病んでいた。

「ごめん、遥。言えない。どうしても言えないよ……」

 総次朗が遥の消えた廊下を瞳に映す。誰もいなくなった教室。総次朗のみになった瞬間、総次朗は瞳に光を宿すと。今まで見せたことのない歪な笑みを浮かべて高笑いをはじめた。

「こんな、面白い遊びを覚えちゃったらさ」

 鞄のそこから『グノー』を取り出す。今日もまた総次朗はウタカタの夢を堪能するのであった。


 遥は教会へ訪れていた。身も心も擦り切れそうな遥の状態は悲惨なものだった。
 心が病んでしまう。身体を傷つけられるのではなく、精神を傷つけられること姿は憂鬱。かつて元気に笑っていた遥の姿は今やどこにも無かった。
 シスター見習いの藤森彼方は遥のことを真剣に考えてくれた親友であった。そして、遥を救えるのは彼方以外他にいないと確信していた人物であった。

「遥さん。どうして総次朗さんが人が変わったようになってしまったか教えて差し上げましょうか?」

 遥がどうしても知りたい答えを知っている。遥は顔を起こすと彼方をまっすぐに見つめた。

「彼方。なにか知ってるの?教えて!総次朗は今何をしてるの?」
「総次朗さんは今――」

 彼方は説明する。
 『グノー』の存在。そして『グノー』を使って総次朗が何をしているのかを。
 正直、遥にはこの時、彼方の話した内容の半分を聞き逃していた。話の内容が常人離れしていて、彼方の説明に頭がついていけなかったからだ

(のりうつり……いれかわり……ナニイッテルノ……ナンノハナシヲシテイルノ……?)

 彼が一人でナニをしているのか、そんな話を聞いて、「そうだったの」と納得できるはずもない。

「……どうして……そんなことをしているのよ?」

 虚無感が今度は不信感へ。頭領総次朗という人物の裏の姿を知って愕然とする。
 一世代築いた頭領家の跡取り。その相続が決まったと言う事は流石の遥もこの時は既に知っていた。

「富が手に入れば次に名声が欲しくなるのが男性ですわ。総次朗さんはわたし達とは環境が違いますわ。私利私欲の光景を多く見てきた彼にとって、人間不信がどうしても拭いきれなかったのです。そんな彼が他人を信じるには、他人の身体を知る以外に方法がなかったのです。『グノー』を知ってしまった彼が嵌ってしまうのも無理ありませんわ。だって、総次朗さんが自ら望んだことですもの」

 ドロドロの人間関係。上辺面の親戚同士。遺産相続時の揉め事も総次朗は見てしまったのだろう。総次朗は巨額の富と引き換えに失ったものがあった。
 それが、人を信じることである。
 遥は信じることが出来なかった。遥と出会ってから総次朗が遥に見せた笑顔は偽りだったと言うのだろうか。
 登校途中で見せた太陽のような笑顔は、上辺面のものだったなんて信じたくなかった。

「総次朗は私と付き合っていたの……。彼が人間不信だったら、私なんかを愛してなんかいなかった!」

 総次朗は遥を愛してくれた。だから彼氏だと胸を張って言える。
 そんな夢物語に縋る遥を、彼方は目を伏せることしか出来なかった。

「……遥ちゃん。今となっては想像でしかありませんが、総次朗さんは――」

 たとえ親友を嫌われることになっても、教えてあげる―きずつける―ことが出来るのは彼方しかいないのだから。


「――遥ちゃんのことを愛してなんかいなかったのではありませんか?」


「彼方――っ!!」

 バタン――と、教会から大きな音が響き渡った。力で彼方をねじ伏せる遥だが、彼方の口を塞ぐことはできなかった。

「人間不信を克服する為に、遥ちゃんを利用していたのではありませんか!?」

 振り上げた拳より早く放たれた一撃に、遥かの動きがすべて止まった。振り上げられた拳は震えながら床に叩きつけられ、彼方の顔に大粒の涙をこぼしていく。

「う・・・あああ・・・・・・うあああああああああああああん――――!!!!」

 彼方に崩れるように遥が力尽きた。彼方は張るかを優しく抱く。まるで子供をあやす母親のように、静かに声をかけずに落ちつくまでそうしてあげる。

「わたし……それでも、総次朗くんのことが、好きなの。大好きなの!利用されていても構わない。愛してくれてなくたっていい!私は、総次朗くんの隣にいられればそれで幸せだったの……!」
「……うん…うん…」
「でも、総次朗くんがいなくなっちゃったら……私はどうしたらいいの?この学園で別の楽しみを見つけるなんて出来ないよ……できない……」

 遥の零す本音。彼方にだけ漏れる弱音。立ち直ることのできない遥の苦しみが分かってあげられるのも彼方だけ。
 『グノー』によって壊された二人の関係。総次朗が『グノー』によって被害者を作っている事実より、遥が泣いていると言う現実を救い出したいと思う。道具によって人間が弄ばれるなんて許してはいけない。
 総次朗と遥の関係を修復させる方法を示して導かせる。
 落ちついた遥を椅子に座らせると、彼方は真剣な眼差しで遥に問うた。 

「その決意。確かですか?」
「ぐすっ・・・」
「清楚で清潔な身体を汚すことはできますか?汚名として皆から嫌われても、たった一つのかけがえのない幸せの為に、全てを犠牲にすることが出来ますか?」
「…………」

 今まで明るく笑っていた彼方と同一人物とは思えないほどの低い声だった。それほど彼方は遥のことを想い真剣に向き合っている。だから、遥も真剣に彼方と向き合う。

「それで、総次朗くんが戻ってきてくれるの?私の顔見て、微笑んでくれるの?」

 もう一度、関係を取り戻す為。全てを失っても、総次朗だけを救いたいという一途な想い。

「やります。私に救いを教えてください」

 両手をがっちり組んで真剣にお祈りを始める遥。その目には決意が蘇っていた。彼方はふっと笑みを浮かべた。

「彼の玩具を取りあげてください」

 それはシスターとして供に堕ちるということを意味していた。遥の目に再び涙が溢れだしていた。

「人のものを勝手に取り上げることは、窃盗という犯罪です。しかし、もし彼が嵌っている『グノー』を全て取り上げることが出来たら、ひょっとしたら総次朗くんも目を覚ますのではありませんか?」
「でも、それは……」
「はい。ですからあなたはこれから、犯罪者と言う一生消えない罪と闘って下さい。そして今後、怖くて眠れない夜が続かない為に、私が夜の名前を差し上げることにします」

 遥の戦いが始まることを告げる名前。遥とは別の人格を生みだし、二人で罪を分かち合う名前――
 彼方はその犯罪者の名を与えた。

「怪盗ツインテール」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「遥ちゃん!」

 ある日の午後。遥の元に彼方が慌てて飛んでくる。遥の袖をひっぱりながら、授業で使ったパソコン教室の部屋へ入り込む。

「どうしたの?そんなに慌てて」
「これ見て!」

 息を整える間もなく遥に告げる。遥は言われたとおりに画面に目を向けると、

「えっ、これって!!?」

 驚くべき内容が飛び込んできていた。


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 ――シュバッと、一閃が引かれた様に、

 ツインテールに楔を打つ手錠をかける為に自ら差し出した手が、曲線を描いて空を切った。

「うおおっ!?」

 何が起こったのか戸惑った吟醸。手刀を回避するため反射的に両手を高く上げる。紙一重で避けれたものの、その手は少し軽くなっていた。

「『人形』、いただき」
「ああああ――!!!?」

 ふと吟醸が我に帰り状況を見渡すと、ツインテールに『人形』が渡っていた。一瞬で『人形』を奪ったと言うのか。油断していたとはいえ、吟醸の腕を掻い潜り『人形』を掴んですり抜けたと言う俊敏な動きは怪盗の名にふさわしいものであった。

「きさまあ!操られたフリをしていたのか?いったい、どういうことだ」

 ツインテールから毟った髪の毛は向かって左側。二つに分けられたツインテールの髪の毛を、なんと遥は片方を取り外した。

「この髪の毛、ウィッグなのよ」
「なっ!?かつら!!?」

      サイドテール!?

 『怪盗ツインテール』は実はサイドテールであったことを明かす。狐につままれた顔をしている吟醸を遥は面白そうに笑った。
 
 かつらの毛をむしったところで、遥にはなんの影響もなかった。しかし、遥はあえて『人形』に操られたフリをしていた。全ては吟醸が油断を見せる一瞬。『人形』を奪う心理戦。

「これでもう双葉を操らせはしないんだから!二人を、返してもらうから!」
「――――っ!?」

 遥の決意に吟醸が口籠る。操られた双葉と、吟醸と入れ替わった一枝を取り返すと言うのか。
 決して不可能。『グノー』を付け焼き刃で知った遥では、意気込んで『雛人形』でも『藁人形』でも触った瞬間に、『呪い』でも『身代わり』でも受けてしまう。
 気合だけでは解決できない魔力がある。それが『グノー』だ。魔力は人を虜にする。欲を増大させ、感覚を麻痺させ、快感を浴びさせる。現に吟醸がそうだ。快楽に溺れ、酔ってしまっていた。
 警察であるにもかかわらず、正常な判断が出来ないこと、それは、怪盗ツインテール以上に悪質だ。

「怪盗のくせに、一丁前の人を助けるのか……」

 『グノー』の一つ、『人形』。人間を模倣した人形を裏で糸を引かせてみせる。『雛人形』も――、『藁人形』も――、
 人間を『人形』に見立てることでお祝いしたり、呪いをかけたり、喜劇を演じたり、悲劇を魅せたりでいる。
 『人形』が繰り出す一つの物語。だが、どんなに『人形』を人間に模倣したところで、人間が『人形』を真似ることが出来ないのだ。
 それが真実。これが現実。


『もうすぐです。もうすぐツインテールを操れるんです。最高の舞台を一緒に楽しみましょうね』



 総次朗によって語られた台詞にこそ、最大のトラップが隠されていた。
 最高の舞台楽しむと伝えておきながら、会場に現れたのは吟醸ただ一人。総次朗は観客席から高みの見物。

 キャストと監督の違い。供に作る舞台において決定的に立場が違うのだ。

 三体の『人形』が怪盗ツインテールの行く手を阻む。しかし、最も操られていたのは――

『――今の世の中、苦労して勝つ主人公より、チートレベル俺最強の主人公の方が受けが良いんですよ?』

 ――こんな台詞を信じて絶望して、警察の信念を見失った愚か者は誰だ……?

 走って追いかけても努力はむくわれず逃がす無能刑事と、
 『グノー』の力を借りて何の苦労もなくツインテールを追いこんでしまう、頭領総次朗の『GtoG』理論……

(ああ、俺は本当に無能だ……)


「……だけど、決して愚能ではない――!」


 吟醸の瞳にやる気が戻った。
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 煙草を吸おうと身体をまさぐる吟醸。しかし、今の姿は愛着のある赤茶色のコートを着ている普段のスタイルではない。冬服の高校の制服、しかも女子用というスカートを履いている格好だ。ライターも煙草も当然ポケットから出てくるわけもない。そして、吸うにしても未成年の身体では当然害がある。
 吟醸は煙草を吸う事を諦め、部屋に逆戻りをしていった。
 
「お帰り」

 と待っていたかのように総次朗は一枝(吟醸)が帰ってくると満面の笑みを見せていた。同時に手に持つ『人形』を見せつけてフフフと嗤った。

「せっかくですから、双葉を使って楽しいことをしてあげますよ」
「楽しいこと?」

 ピクッと身体を震わせ返すと、総次朗は嬉しくうなずいた。

「女性の身体に興味あるでしょう?」

 そう言って『人形』を動かすと、傍らにいた双葉がゆっくり動きだす。そしてゆっくりと、ゾンビのように一枝(吟醸)に近づいてきた。その異様な雰囲気に気負いしてしまう。

「おい、なにをするつもりだ?やめてくれえ」
「俺が襲うよりも彼女に代弁してもらった方が気持ち的に救われるでしょう?この家に一枝をわざわざ招待したのは、警部に『グノー』に凄さを少しでも味わってもらうためですよ」
「『グノー』の凄さだと?」
「そう。異性の感覚です」

 断言して――双葉は総次朗の言動を代弁した。双葉は一枝(吟醸)に抱きつくと、ブレザーを捲りあげて一枝の乳房を外気に曝しだしたのだ。
 女子高生の乳房を下から目線で見つめる吟醸。黒の制服の奥に隠れていたモチモチと潤いのある白い肌と可愛い乳首。一瞬で顔が蒸気してしまっていた。

「おっ、おい!これはマズイでありますぞ!」
「恥ずかしがらずに。乳首が勃起してますね」
「う、うるさいわ!!!」

 照れ隠しの様に一枝(吟醸)は総次朗に怒鳴る。総次朗には恥ずかしがる一枝にしか見えない。しかし、一枝の貴重な照れ隠しの光景を目に焼きつける様にじっと見つめている。
 その視線がさらに一枝(吟醸)に見つめられているという意識を高める。

「乳首、舐めてあげますよ」
「ちろっ」

 双葉が舌を伸ばして一枝の乳首を舐め始めた。

「ふあああっ!」

      快感調教

 ゾクゾクと乳首から全身に流れる刺激にたまらず甘い声をあげる一枝(吟醸)。耳まで真っ赤になっていた。

「いいですよ。感じた時には声を荒げて喘いでくれて。俺も警部を蕩けさせてあげたいんです」
「ぺろっ、ぺろっ……チロチロ……ちゅばっ……ちゅっちゅっ・・・はむっ」

 終わりの命令が出るまで双葉は乳房を舐めることを辞めない。目を閉じてまるで子供のように一枝の乳房を舐めて味わう双葉が、吟醸には一人娘の子供のことを思い浮かべる。

「あっ、はっ、ちょっ!これは……まずいぞ、ワシには妻も子供もいるのに……ああっ!」
「へえ、お子さんがいるんですか?意外だな。妻はおろか一人身だと思ってた。じゃあ、あなたも嫁さんや娘さんがこういう顔して喘いでいる姿を想像してくださいよ」
「やめ……ろ、うおおおおお――!!」
「ちゅっ、あはっ、んっ……ぺろぺろ……ちゅぶっ……」
「むしろ、嫁さんの喘ぎ姿は毎日見ているのかな?それだったら女子高生の痩せた身体じゃ物足りないかもしれないな。でも、女子高生とやれる機会なんてそうないからね。今回は貴重な体験として噛み締めてください。いやあ、お仕事は大変ですね。警部」

 ただ『人形』を動かしながらニヤニヤ笑う総次朗。しかし、その『人形』に突き動かされて身動きが出来ない一枝(吟醸)だ。 

「おまえに、なんか……ひぅっーー!?」

 くちゅっと、スカートの奥に伸びた双葉の手が布切れを押した瞬間、水気の湿った音が響いた。一枝(吟醸)が意識してしまうと、じわっと溢れて足を伝って愛液が零れ出してきた。

「警部。ショーツびしょ濡れじゃないですか」
「言うな!くひっ!」

 再び双葉の手の動きが再開される。操られているとは思えないくらい自然で難しい動きでショーツの端から小さい手を中へと忍び入れると、一枝のアンダーヘア―をかき分けながら秘部へと導いていった。直接触ってあげrと、一枝(吟醸)は「きゃあっ!」と、喘ぎ声をたまらず漏らした。

「触られても感じ、触らなくても疼いて火照っちゃう。本当に女の子の身体って羨ましいですよね?」
「触るなあ!」
「触らなくていいんですか?」

 すっと、ショーツの中から手を浮かれ、物足りなさともの淋しさが取り残される。愛液が消えた手のぬくもりを探しに溢れだし、ショーツにシミを広げていった。

「あっ……」

 顔を真っ赤にしている一枝(吟醸)。潤んだ瞳で荒い息を吐く姿はもう完全に一枝本人にしか見えない。気を弱くして、まるで大切なナニかを天秤に掛けているかのような状況が続く。葛藤する一枝(吟醸)が、うなだれて頭を下げた。

「………………さわって……」
「はい?なんです?」

 もう一度総次朗は聞き返す。一枝は(吟醸)は叫んだ。

「触ってくれ!こ、ココを」
「ここって何処です?もう大人ですから言葉を知ってるでしょう?」
「お、おまんこ。ワシのおまんこを触ってくれ」
「警部は今女の子なんですよ?そんな口調で言われてもねぇ……」
「……触って!あたしのおまんこ!身体の奥から疼いて仕方がないのぉ………ふおおおおお――!!!」

 まるで赤子の手をひねるように、吟醸が総次朗に完敗した。

「いやいや、素晴らしい自虐ネタです。特別に、今回は触ってあげますよ。警部」

 満足したように『人形』を動かし、双葉に指令を送る。双葉は再び動き出し、ショーツを取り去ると直接おまんこを触り始めた。

「あああっ。これはすごいいい!!身体が震えてくる!!」

 歓喜する一枝(吟醸)。誰かに触られることで、次から次へと蜜が身体の奥から溢れてくる。ヌルヌルと滑る一枝の膣内に双葉の指が入り、動き出す。

「こんなに滾らせて、中はもう大洪水状態じゃないですか。かき混ぜればかき混ぜるだけ外に潮が溢れ出てきますよ」
「はっ、ぐっ、うおおお……!そんなに、指、入らない……あああ……」

 一本、二本と……、双葉は無表情で一枝の膣内に自分の指を増やして入れていく。膣内が裂けるように苦しくなる。一枝の膣も緩いほうではないのだ。

「もう一本。三本目……」
「ああああ!!!いだい、いだい!この身体が無理だって言ってりゅ!あ゛あ゛あ゛あ゛――――!!!」

 一枝(吟醸)が苦しそうに悶える。涙を浮かべ本気で痛がっている様子がよけい可愛い。そうこうしているうちに双葉の指は血を流すことなく三本目が入り終わっていた。長さの違う三本の指は、膣内で小さくまとめられ、まるでドリルの様に先端に向かって尖らしていた。

「じゃあ三本でかき混ぜてあげますよ」

 総次朗が『人形』を動かし始める。双葉のドリルが一枝の膣内を抉り削る。

「ひやあああああ!!!ああああ―――――!!いぐう゛う゛ううううう――――――!!!ああああ……」

 膣内の愛液をすべて放出するくらいの大量の潮を噴いて一枝(吟醸)は倒れ込んだ。時々ピクリと痙攣する身体が、本気で絶頂を味わったのだと教える。

「警部。大丈夫ですか、警部?」
「ああ……ああ……」

 壊れてしまったかのように同じ言葉しか言わない一枝(吟醸)。それでも快感だったと言う表現を伝えるように表情を綻ばせていた。それを見た総次朗が『人形』を床に放り投げた。

「じゃあ警部に『人形』一式を預けますね。彼女たちを使うも使わないも自由にしてください」

 目の前に転がる双葉の『人形』と一枝の『雛人形』。そして、ガラスケースに入った罠、『藁人形』。
 三体の人形がツインテールの行く手を阻む。

「もうすぐです。もうすぐツインテールをこの様に操れるんです。最高の舞台を一緒に楽しみましょうね」

 総次朗の問いかけに、吟醸は耳だけを傾け、口元を釣り上げた。

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