純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『悪堕ち』 > 塗り薬『エイリアンの塗薬、成分は黒虹箱』

「ふぅん。なるほどね」

 少女は報告を受けた後、そっけなく返事をした。

「他人に意識を残すこともできるけど、シンクロしているわけじゃないんだ。そこ、なんとかならないかな?」

 営業をしながら初めて品質の開発にも携わる少女。手を抜くことをしない厳しい意見が浴びせられる。
 一人だけじゃなく、多重に乗っ取る。一度に大勢の人間の身体を支配することを視野に入れることも予想する。

「ふぅ……、『塗り薬』じゃここが限界なのかな。『飲み薬』の方にも携わってみようかな……」

 意識を乗っ取り身体を奪った『宇宙人』。今は少女の隔離された部屋に保管されていた。
 報告が終わればそれで終わりではない。そこからまた新たなる良質なモノへの開発が始まる。

「じゃあ次の実験を始めようか、『アプリコット』。・・・準備できた、『アレクサンドラ』?」

 少女が語りかける、莉子は差し出されたモノを手に取った。
 ディルドー。男性の性器のカタチをしたシリコン製の遊具である。決して本物ではない玩具を持ってきた『アレクサンドラ』は、そのうちの一つを『アプリコット』に手渡した。

「使い方は分かるね?おま〇こに刺して子宮口にまで届かせるんだよ?」

 少女に言われなくても二人の『宇宙人』はディルドーを予備知識から取り扱い、乗っ取った子供たちの性器に玩具を咥えこんでいった。

「う…ひぃっ…!?あっ…」
「こんな、大きいの……痛くて、入りづらいよ」
「きみ達が選んだ肉体でしょう?もう少ししたら痛みから解放されるよ、フフフ」

 二人が少女に言われた様にディルドーを咥えこんだ。ご丁寧に穿かされていた腰パンは、ディルドーを放しても落ちないようにする専用パンツでもあった。

「はぁ…はぁ…」
「ぅぅ…あぁ…」

 二人はなんとかディルドーを性器に咥えこむと、大きく荒い息を吐いた。まだ身体的にも小さい二人の身体では無謀とも思える実験を強行する少女。股間を引き裂く痛みは少女たちに襲いかかる。
 しかし、その痛みが次第に疼きとなって変化していく。

「あっ……あふぅ……んっ…あっ」
「なに、これ……ひゃあっ!」

 まえるで玩具であるはずのディルドーが脈を打っているように熱くなっていた。『アプリコット』がディルドーに触れると、飛び上がりそうなほどに驚いた声を発した。

「こ、これ……ふああっ……この、感覚……」
「本当におち〇ちんがついているみたいでしょう?」

 少女が言うように、玩具のディルドーは今や身体の一体となったようにしっかりくっつき感じるようになっていた。

「『塗り薬』を塗っておいたんだ。これでその玩具はきみ達の身体の一部だ。お汁も出すことができるし、脈を打つことだってできる。勃起して大きくなることは出来ないけど、男性独特の快感をその身で味わうことが出来るようになったはずだ」
「あ…ああ……んあ……」

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 ディルドーを触ったまま固まってしまった『アプリコット』。それはまるで、オナニーを覚えたばかりの少年が、初めて味わう快感に震えているようである。
 少しずつ、快感に慣れるように、竿から亀頭に向け扱き始めていくと、少女の甘い声で喘ぎ声を響かせていった。

「あぁ…おち〇ちん…気持ち良いよぉ……んふぅ…ああっ、はぁっ…」
「そのままイってもいいんだよ?もの凄い射精の快感だって得られるんだ、ふふ」
「私たちが……射精できるなんて……くふぅっ」
「くぅ……はぁ…はぁ……んんっ!」

 二人が少女の誘惑にのって激しくディルドーを扱き始めた。快感の虜となり、表情を蕩けさせて射精感を味わおうとする。

「ふああっ……男性の、おち〇ちん……はぁ…こんなに、気持ち、いいんだぁ!」
「ひあぁぁっ……ボクも、イっちゃう…イクゥ!ひ、やああああーーーー!!!」

 二人はディルドーから本当に射精した。
 びゅるびゅる、ドピュ…ドクドク……と、白濁の液が、吐き出されたのだ。
 腰を引いて快感に痺れる二人。女性の身体で味わう男性の射精感に病みつきになっていた。

「ふあ…はぁ……あぁん……き、きもちいいよぉ…」
「ひぃ…ぅぅっ…こんな、すごいの…たえられない……」

 一回逝っただけで息を荒げる二人。しかし、少女は更に要望を求めていた。

「なに言ってるの?一回逝っただけで満足してもらっては困るんだからね。せめてきみ達の持つ膨大な知識を忘れるほどにバカになってもらわないと。…最後まで快感に震えていてね」

 そう言って用意したのは、『アプリコット』と『アレクサンドラ』が連れてきた二人の女性だった。
 母親だろうか、成人を優に過ぎていながらも見事なボディバランスを維持している二つの肉体を揃えた。

「莉子ぉ!!」
「お母さぁん…」

 のり子が叫ぶ。現状を受け入れられないのり子が莉子を正気に戻す様に騒ぎ立てていた。
 どこかも分からない部屋に連れてこられ、娘が男性の性器を付けられているのを見て、『宇宙人』に改造されたのと何が違いがあるのだろうか。

「もういやぁ!!帰りましょう、莉子……もぅ、耐えられないぃ!」
「精神的に壊れてしまったような奇声をあげないでくれよ。良い大人が取り乱してみっともないなあ」

 少女がのり子に罵声をかけるも、のり子にその声は届いていなかった。
 精神的にもまいっているのり子の耳に届くのは莉子の声だけだ。

「さあ、『アプリコット』、『アレクサンドラ』。きみ達のお母さんを、きみ達の生えたおち〇ちんで犯してやるんだよ。お母さんのおま〇こ、中はねっとりしていて、挿入れたらさぞ気持ち良いだろうね……アハハ」

 少女の声に唆されて、自らの股間に生えたおち〇ちんを見つめた二人。
 目の前に用意された母親の股間を見つめると、その表情は戸惑いと期待を同時に映した。

「お母さんの、ナカに……おち〇ちん入れたいよぉ……」
「だめぇ――!」

 二人は母親の腰を持ち、男性さながらの力で重心を支えると、おち〇ちんを入口に宛がったのだった。

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 のり子が夕食を持って莉子の部屋を訪ねに行った。
 玄関から、孝四郎が来ていることは知っていたが、二人は何時まで経っても一階に下りてこなかった。

「積もる話でもあったのかしら?うふふ」

 親には言えないけど、孝四郎みたいに真ら打出来る親友になら話ができる。
 親はそっと子供の成長を見守るしかない時期だ。
 莉子にかぎってのり子に反抗を見せたことはないにしても、親が子供を裏切るわけにはいかない。
 子供が親を裏切るようなことはあっても。

「……あの子たちに限って『間違い』があるわけないわよね?」

 親ながらに子供が心配である。
 ノックをして莉子の部屋に入る。

「莉子?起きたかし―――」

 部屋に入ってのり子が直視した光景に、手に持っていたうどんが零れ堕ちた。
 愕然とした光景――莉子と孝四郎が裸になってベッドで抱き合っている姿を、のり子は目撃してしまった。 
 信じられないという思いと、信じたくないという想いが頭の中で交錯する。
 莉子も孝四郎も、未だ学生だ。
 それなのに大人のように、裸になって、抱き合って、キスを交わして……下の口も重ねて……

「あぁぁ……っ!」

      
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 のり子が荒げた悲鳴。
 二人がそれに気付いて視線だけをのり子に向けていた。

「ちゅっ…ぷちゅ……んふぅ…はぁぁ……」

 既に蕩けたような眼差しで甘い声で呼びかける莉子。聞いたこともなかった莉子の大人の声だ。

「あなた達……っ!」

 震えた声で、でも一人の大人として破廉恥な行為をしている娘に対して、しっかりと自制を保つ。

「なにしてるの、莉子!!?」

 怒鳴り、今すぐに放れて行為をやめるように促す。盛り上がっている二人に水を差し、莉子も孝四郎もあまり気分がよくなかった。

「…ダレ、この人?なんでこんなに怒ってるの?」

 莉子が言う。母親に対して冷たい態度をとる莉子に、さらに怒りが込み上げてくる。

「記憶では、莉子の母親です」
「ふうん、そうなんだ」

 『宇宙人』に乗っ取られた二人は話の筋を合わせるよう小耳に挟む。
 そして、怒っているのり子に向かって不敵に笑みを浮かべた。

「お母さん。私たちの幸福を邪魔しないでくれる?」
「なっ――!?」

 莉子に言われて衝撃を受ける。

「莉子!あなた、自分がなにしているか分かってるの!?」
「セックスでしょう?それぐらい知ってるよ!」
「人生を棒に振りたいの!?」

 強い口調ではっきり言う。学生で『もしも』のことがあったらどうするというのか?
 莉子の親だからこそ、子供には健全で安全な道を歩んでほしい。
 そう望んで今まで育ててきたはずだった。

「二十歳を超えるまで……絶対しちゃダメよ。……いったいどこで学んでいるのよ?」

 軽率の行為が後で取り返しのつかないことになることをのり子は知っているからこそ、莉子以上に衝撃を受けて涙を滲ませる。
 怒りと一緒に、自分の目の届かないところで子供が自分の身を犯してしまったことへの悔しさが込み上げていた。
 自分の愚かさを。無能さを。

「イヤだな、お母さん。お母さんだって、私をこうやって生んだんでしょう?」

 莉子はまるでのり子に見せつけるように、孝四郎の逸物を口に咥えこんだ。『宇宙人』にとって、フェラ行為自体初めてのことだが、その無数の知識にやり方は既に心得ていた。
 莉子の口を大きく開いて男性の性器を咥えこみ、亀頭にたっぷり自分の唾液を絡みつけていった。

      
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「ぅんっ・・んっ、ちゅっ・・ふんんっ・・ちゅっ・・んっ・・ちゅる・・」
「ああ、いいぞ、莉子……ぬるっとした、柔らかい舌が、俺の逸物を舐めて絡んでくるぞ」
「やめなさい!」

 孝四郎が説明してくるのを拒むように叫ぶのり子。 それでも莉子はのり子の声を無視してフェラを続けていた。

「ちゅっ・・んっ・・ふっ・・ちゅぷ・・んんっ・・ちゅっ・・ぺろっ・・」
「ねっとりした唾液が、塗られていく・・・。あったかくて、気持ち良くて、まるで莉子の膣内を味わっているみたいだ」
「んちゅっ・・ふんんっ・・んんっ・・ちゅぷ・・くちゅっ・・ふあぁ・・ぁ・・んっ・・ぺちゃ・・」
「あ、あぁぁ・・・」

 自分の娘が男性の逸物をフェラしている。ペチャペチャとイヤらしい音を立てながら、美味しそうに逸物を咥える莉子を止めることができなくなっていた。
 目の前で繰り広げられる衝撃のでかさ。今まで信じていた自分の育て方を、まるで全否定されたかのような光景に動く気力も湧かなかった。

「ああ、莉子・・・おれ、またイクぞ・・・。莉子の口の中に吐き出すから、全部受け取ってくれ」
「コク…コク…」

 上目遣いで合図しながら、頷いて見せる莉子。宣言通り、孝四郎の腰が震えて莉子の口内に大量の精液を吐き出す。
 莉子もまた硬直しながら、精液を喉の奥に流し込んでいった。

「ぢゅ・・・ぢゅるぢゅる・・・つぺっ……じゅるるるるーーー!!ぢゅる…んっ…んくぅ……」

 小さな莉子の口内に瞬く間にたまる精液。孝四郎の精液を飲み込むことのできなかった合間に口内に溢れた白濁色の液が口の隙間から出て床に零れ堕ちた。

「んふぅ…コクッ……コクッ……んっ…」

 それでも、少しずつ、喉を鳴らして飲み込んでいく莉子。しばらくして莉子が孝四郎の逸物を口から吐き出した。

       
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 涎と精液、どちらか分からない液が莉子の口と孝四郎の逸物を繋ぐように橋をかけていた。
 目を閉じていた莉子がゆっくりと目を開けて、自分の口の中に少量でも残った精液を拭うように指を入れて掻き混ぜていた。

「……にがい…それに、口の中にもカスが残って、ヘンな感じ……」

 莉子の口からは普段とはかけ離れた言葉が飛び交う。
 決して聞きたくなかった精液の味。
 莉子が孝四郎とフェラをした事実は、忘れることなくのり子の記憶に焼きつくだろう。

「あ、あなたたち……なんてことを……」

 孝四郎の果てない逸物を横目で見ながら、幼い身体でも勃起している莉子の乳首を見ながら、のり子は自分の身体も疼き始めていることに気付いた。
 父親がいなく、遠くかけ離れていた男性の裸体を懐かしむように、のり子は信じられないほど身体が熱くなっていた。
 まるで、盛り始めた女性のようだ。莉子を羨むように呆然と見ていたのり子に、莉子は即座に感づいた。

「お母さん。お母さんだって、ヤりたいんでしょう?」
「―――っ!?」

 娘に指摘されたのり子が我に返る様に身体を抱きかかえる。

「親をからかうんじゃありません!」
「からかってなんかないよ!お母さんだって素直になればいいのに。無意識に見せたお母さんの姿が物語っていたんだよ?」
「ち、ちがう……わたしは――!」
「安心しろよ、のり子おばさん。俺がすぐ気持ち良くしてやるからよ」

 ベッドから近づいてくる二人がのり子を巻き込むように手を伸ばしてきた。
 掴まれた右手に勢いよく引っ張られ、のり子もまたベッドに倒れこんでしまった。


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 学校が終わり、莉子を見舞いにきた孝四郎が部屋を訪れる。のり子は家にいなかったが、何度も家を上がっている孝四郎はドアを開けて莉子の容体を気にかけた。

「元気か、莉子?」

 布団に包まったまま顔を見せない莉子を気にすることなく、床に座り込んで近くにいる。眠っているのかと思った孝四郎だが、時折、もぞもぞと仕切りに動く莉子に眠っているのではないと分かる。
 莉子のことだから話せばきっと顔を向けるのだと、孝四郎は思っていた。

「本当なら、美凪のやつも来る予定だったんだぞ。でも、今日はお母さんと家にいることにしたんだと。『先輩には申し訳ありません』って頭を下げていたけど、気にするなって俺が言っちまった。ほんと、家族思いだよな、美凪って」

 孝四郎しか見舞いに来ない、そう理解した莉子が顔を向けた。眠っていたのか、疲れが見える表情で孝四郎に頬笑みかける莉子は健気だ。

「孝四郎くん」
「なんだ?」

 莉子がまるで孝四郎に握っていてほしいように布団から手を出した。細くて小さい莉子の手を孝四郎は軽く握りしめた。

「……あついな。熱でもあるんじゃないのか?」
「そう思う?」
「ああ。これは明日も休んだ方がいいな。いいなぁ、俺も学校休みてぇよ」
「……一緒に休もう?」

 潤んだ瞳で孝四郎に語りかける莉子。風邪をひくと精神的にも弱くなるという。今の莉子は気持ち的にも沈んでいるのかもしれないと、孝四郎はもっと優しくするように莉子の頭を撫でた。

「一緒に……いたい……」

 莉子が顔を近づける。それはまるで孝四郎にキスを迫るかのようで、孝四郎は戸惑いながらもその身体を抱きかかえた。顔を伸ばしたせいで莉子の身体がベッドから落ちる。そして、孝四郎は初めて、その時莉子がなにも着ていないことを知った。

「えっ――――」

 裸だったのだ。ベッドの中で布団にくるまりながらも、裸では熱の体温は一向に温まらない。
 それを知っていながら莉子は裸で身体が火照るほど、いったいナニをしていたというのか――


「莉子、おまえ……」

 莉子の身体から発する女性ホルモンのにおい。股間を濡らしており、渇きを知らないほど愛液で溢れていた。

「すきぃ……孝四郎くんが好きなのぉ……」

 焦点の定まらない目で莉子が告白する。その瞬間に莉子の熱はさらに燃え広がる。告白できたことに対する緊張感からの解放が、莉子をさらに自由にさせた。

「チュ…チュゥ……んふぅっ…ちゅぷ……チュッ」

 孝四郎の唇を奪い、キスをする。
 莉子に対する驚きの連続に、孝四郎は何もできなかった。
 なすがままの孝四郎の唇を、上唇と下唇で甘噛しながら唾液を飲ませる。莉子の舌使いが孝四郎の唇の中で舐め交わす。
 舌のザラザラとした感触が甘い刺激となって唾液を充満させていく。
 莉子の唇が放れていく。柔らかな莉子の唇の温かさがなくなり、名残惜しさと寒さが身体の中に残った。

「莉子……」
「孝四郎くん――――一緒に、寝よう……」

 まるで莉子が別人になったかのような積極性に、孝四郎はただ場に流されるように制服を脱がされていった。


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 ゆっくりと莉子の足が開き始めた。

「――――っ!?」

 その動きに莉子の表情が強張る。身体が勝手に動き、自らの大事な場所を見せようとしているのだ。
 慣れるものではないだろう。
 恥ずかしさ、怖さ、そのすべてを関係なく、『宇宙人』は行動する。

「大丈夫だって。誰にも見せないことを約束してあげる。オナニーってそういうものでしょう?」
「あ、あなたが見てるじゃない」
「あ、そう言えばそうだね。じゃあボクときみだけの秘密にしようか」

      
股下アングル

 視線が嫌でも下がって、自分の勃起している乳首やおへそを眺めて、土手へ下っていく。
 アンダーヘアーも生えていない幼児的な秘部。
 莉子にとって孝四郎にも見せたことのない、大事な場所。

「うわっ。きみって本当にまだ開発していないんだね。完全に閉じちゃってるじゃない」

 頭の中に響く宇宙人の驚き。
 確かに莉子は美凪を含め、他の生徒に比べて成長は遅い。それがコンプレックスとは言わないが、薄々自分でも意識し出していた頃だ。
 ブラジャーも身に付けてみたい、大人の似合う服を着てみたい。
 そんな普通の中学生が抱く淡い水色時代を過ごしている莉子だ。

「これは弄り甲斐があるよ」

 莉子の手が真っ先に動きだし、自分の秘部を弄り始める。昨夜のようにスジをなぞり、びらびらの肉襞を爪で引っ掻くようにして入口を少しずつ広げていく。

「あっ、くぅ…」

 ぴちゃぴちゃと、既に莉子の秘部は濡れていた。これからなにをされるのかを期待して、涎を垂らしてだらしなくしている秘部がとても恥ずかしい。

「あ、糸引いてる。とってもイヤらしい」

 自分の指についた愛液を見せつけるように莉子の目の前に持ってくる。指に付着した粘着性のある愛液を親指と人差し指をくっつけたり放したりしている。
 二本の指の間で、自分の愛液が糸を引いているのがよく見えた。

「や、やだぁ…こんなの、恥ずかしいよ」
「恥ずかしいって…、誰だってしてるコトなんだよ?愛液を見る人はさすがに少人数だけどね。普通のことなんだよ?きみが大人になれば男性方におま〇こを見せるんだ。恥ずかしい格好をして、恥ずかしい想いをして、こうやって足を広げてチ〇ポを挿入される。でも、それが生物の本能であり使命さ。恥ずかしさを乗り越えた後にこそ快楽と快感が保証される。名誉なことなんだ」

 自己の最大限の効用とは『幸福』であり、快楽、快感が与える刺激が人を幸福だと錯覚させる。
 子孫を残す本能的行為もまた、幸福を産む手段の一つにすぎない。だが、自分がココにいるという証拠になるから名誉なんだと『宇宙人』は言う。
 『宇宙人』には、その方法が無いのだから。――認められないから。
 幸福を知らないから。

 「別に恥ずかしがることないじゃないか。馴れてしまえばどうってことないことを、きみは恥ずかしいと言っている貴重な素材だ。ねえ、教えてよ。ナニがそんなに恥ずかしいんだい?」

 ――知っているからこそ届かないモノはあり、――知らないから気付かないモノもある。
 『宇宙人』はようやく手が届く場所まで来ていた。
 処女で無知の肉体だからこそ、純粋の想いを知る滅多にない千載一遇の好機――

「わ、わたしは……孝四郎くんに……ハジメテを捧げたい……他の人に自分の身体を見られるのは…恥ずかしくて……耐えられないよ!!」

 泣き声で叫ぶように告白した莉子の想い。彼氏と一緒に交わる青春に憧れる莉子は悔しさで涙を滲ませる。聖女となった彼女の純粋な想いを犠牲にし、涙をいっぱいに溜めた黄金の聖杯で杯を交わそう。

「そういうことか。橙理解したよ」

 『人間』の抱く理想こそ、『宇宙人』にとって最も悪害であることを――


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 相手の姿は見ることができない。でも、莉子の部屋で莉子以外の人物がいるのだ。
 莉子自身の体内に――
 寄生された身体は動かすことが出来ず、着実に莉子のもとから放れようとしていた。
 ――それがとても怖い。

「あなた、ダレ?」

 莉子が恐れながら訪ねた。すると、莉子の口が勝手に紡ぎ出す。

「ボクかい?ボクはね、宇宙人」
「う―――」

 自分の声から信じられない単語が出る。
 『信じない』だけかもしれない。

「あれ?信じてない?信じられないよね、人間ってさ?宇宙人がいるんだったら証拠を見せろっていうの?だったら、ボクが証拠として 名乗り出ようか?でも、その時にはボクは『人間』になってるだろうから、やっぱり無理なのか。アハハハ――」

 笑いたくないのに莉子の口は笑っていた。いったい、どうなっているのか、莉子自身もまた混乱していた。
 今まで味わったことのない非日常。いったい何時寄生されたのか覚えてさえいない。身体の中に入る食品は皆と同じものを食べたのだから、食べ物関係からの規制とは考えられない。
 だとすれば、最近――孝四郎からつけてもらった、『塗薬』という薬品からの体内への直接投与。

 まさにそれだった。

「ボクはね、『塗薬』の成分として同志にバラバラに分解された。もう本体は完膚なきまでに粉々。もう復活とか再生とかいうレベルじゃない。例えるんなら一回千枚包丁でみじん切りにされた後、溶解炉で溶かされ、型に入れられ、冷却されてボクは完成した。もうどうやっても元に戻ることは出来ないよ。酷いことするよね、ボクじゃなかったら耐えられないと知りながら、ボクを実験材料に使って販売するんだと。これが成功すれば今度は『製品』とするんだって。『人間』を材料にしての本製品だって。笑っちゃうよね?高度な知能を持つボクが、仮製品として利用されるなんてさ」

 肉体を失った宇宙人。しかし、知性や知識は肉体を失っても生き続ける。
 宇宙人だからこそか、肉体を失うことへの恐怖は微塵もない口調である。
 身体は捨て駒。気に入った器が見つかればそこに住まい、さらに気に入った器が見つかれば、今までの肉体を捨て去り、新たに寄生する。

「まぁ、ボクという成分だけは溶けだしているからボクは子孫を残すことができる。繁栄できる意味では大成功と言ったところだよ。感情、過程を置いて結果だけ見ればね。まったく、アイツは合理性しか考えていないイヤな奴だよ」

 自己の効用の最大化のみを優先した結果が――『宇宙人』。
 そこに感情はなく、プログラムされたスキューズ数の中から無限の知識を使って実行する行動。
 たとえ、自己の肉体を失ったとしても、それが一番の合理性ならば躊躇なく実行するのだ。『人間』には出来ないことを軽く飛び超えて襲ってくる脅威。
 『宇宙人』に恐怖はない。恐怖こそ――『宇宙人』なのだ。

「きみは一体……」
「ん?」
「私の身体で何をしようとしているの?」

 肉体を失い、莉子の身体に寄生してまで生きながらえる理由。
 地獄の光景を目の当たりにし、地獄の苦行を味わってきた名も知らぬモノが、それほどまでに手に入れたい合理性とは一体なんなのか――

「ナニって物騒だなあ。別にボクは仮製品だ。もうボクは死んでいるも同然の身だよ?」
「ホッ」
「でもね、死んでいても結果だけは報告しなければならないんだ。ボクに与えられた使命というものがあるんだよ。きみに寄生し、身体の神経から送られる刺激や反応を報告しなくちゃいけない義務がある。――それが、ボクが認めてもらうただ一つの証拠なんだよ!」

 死んでもなお手に入れたいモノ――それは、この世に生まれてきた承認。


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 莉子が学校から帰宅する。

「ただいま」

 慌ててリビングからのり子が駆けつけてくる。

「いったいどうしたの?まさか、包丁で指を切ったの?」

 昨日と全く同じセリフで出迎えるのり子。笑みを浮かべる莉子だが、孝四郎や美凪と同じ感想をのり子も同じように抱いた。
 顔色が悪かったのだ。

「ううん、そうじゃないけど……体調が悪いから早退したの」
「そう…。具合悪いの?お医者さんいく?」
「いいよ。寝ればすぐ良くなると思うし。別に風邪ひいてるわけじゃないもの」

 この寒い時期、インフルエンザや風邪で早退することはあっても、それ以外の理由で休む理由はあまりない。

「風邪じゃないなら、いったいどうして?」

 親としてさらに深く追求すると、莉子の動きがピタリと止まった。
 何故?という疑問が理解できないように、歯車が止まったかのように笑顔もまた止まって張り付いているようだった。

「うーん。よくわからない」
「わからないじゃ困るでしょう?自分の身体でしょう?ちゃんと健康管理できてるの?」
「できてるよ!!自分の身体だけど、わかんないの!!」

 莉子が叫んだ。のり子にしても莉子が感情をむき出しにして怒るのは珍しかった。そのまま階段を上っていってしまった。

「莉子!!?」

 のり子が顔を覗かせた時にはもう莉子は部屋に閉じ籠ってしまった。今のままでは莉子はのり子の話を聞かないだろうと、莉子の言うとおりに寝かせることにした。
 ひと眠りして体調がよくなった後で、話を聞けばいいと――。
 のり子は今日の夕食は莉子の好きな讃岐うどんにしようと買い物に出かけたのだった。


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「ん?」

 朝一番に莉子の顔を見た孝四郎が疑問符を頭に浮かべていた。

「莉子、なんかおまえ疲れてない?」
「ええっ!?」

 莉子の驚きは尋常じゃなかった。
 ただ普段と比べて顔色が悪いと思っただけの孝四郎にとって、その驚きようは逆に驚かされた。

「なんだ?どうしたんだよ?いったい」
「なななな、なんでもないよ。うん、なんでもない」
「明らかに怪しい…」

 孝四郎が莉子に詰め寄る。

「おまえ、昨日の夜、いったいなにをしていた!?」
「孝四郎さん」

 そこで美凪がすかさず入る。

「孝四郎さん。デリカシーが足りません」
「何故に!?」
「私なりに、孝四郎さんを昨日から見直したんです。そして、私気付きました。孝四郎さんにはマナーが足りません」
「人格否定!!?」
「孝四郎さん、わたし、孝四郎さんはそんな人じゃないと思ってました」
「そんな冷ややかな目で見ないでくれ!?俺が一体何をしたんだ!!?」
「……ふぅ。そんなことに気付かないなんて……心底見損ないました」
「大人の世界こえええええ!!」

 中学生、大人に早くなりたいと思う反抗期。しかし、一人前の大人として見られると、ダメな点の数々が浮き彫りになる。

「言ってくれないことがこれほど怖いことだったなんて知らなかったんです。調子づいてたところが多々あったのならそれを飲みこむから、元の美凪に戻ってほしい。――俺に悪いところがあったのならすぐに直す!!さあ、なんでも言ってくれ!!俺を罵ってくれ」
「わかりました。じゃあ言います。全てです!!」
「俺全否定!!?」
「孝四郎さん。莉子さんと幼馴染だからと言って、自分の家ではないのです。あの靴の脱ぎ方はなんですか?それに、自分の家でもないのに、お箸まで自分のを確保してありましたね?さらに、勝手に人様の家の冷蔵庫を開けてましたね?テレビでくつろいで、ソファー独り占めしてましたね?お風呂にも入りましたね?洗濯――」
「やめろおおおおおおおおお!!!」

 美凪にとってドン引きだった真実の数々。孝四郎の大人げなさ全開のエピソード。間髪なき更生改革の余地なし。孝四郎の信頼度暴落。美凪の爆弾破裂した瞬間だった。

「いや、だって、俺と神原家の仲だし」
「飲み込むんじゃなかったのですか?」
「すぐに直します!!」
「……。分かればいいです、孝四郎さん」

 嵐が去ったように、フッと柔らかく笑みを浮かべる美凪。膝をつき、崩れ落ちるほどの猛攻撃。ぐぅの音も出ない孝四郎だが、一矢報いるために最後に力を振り絞る。

「……そういう美凪だって、ここ、俺たちの教室だぞ?」

 さもいて当たり前のように登場してますけど、美凪さん……おかしくない……?ぐはっ。

 倒れた孝四郎を無視して美凪が莉子の気を案じる。 

「どうしたんですか、先輩。顔色が悪いですよ?」
「なななな、なんでもないよ。うん、なんでもない」
「……。先輩。昨夜、いったいなにをしていたんですか?」
「ちょっと待ったああああ!!」

 ゾンビのように復活した孝四郎。

「お前の質問、俺と全く同じだから!!その質問、デリカシーないんじゃなかったのか!?」
「女の子は無効です」
「そう、なのか?」
「はい。だから、また床に埋まっててください」
「底が抜けるぅ!!?」

 ここは三年生に教室で三階だ。下では普通に二学年の教室が休み時間を過ごしている。

「はい。私と入れ替わって、もう一回二年生をやり直してください」
「勉強は問題ないのにーーー!!ちくしょうーーーーーーーー!!!」

 孝四郎は教室から飛び出して階段を下りていった。本当に二学年に飛び込んだようだ。下では絶叫が木霊していた。

「先輩……」
「な、なに!?」
「私でよければ、いつでも手を貸しますからね……ポッ」

 真っ赤になって莉子の力になるという美凪。いったいなんの力になろうとしているのか、莉子には分からなかった。

「うん。ありがとう。困ったら美凪に連絡するね」

 チャイムが鳴り、皆が席に着く。美凪もまた孝四郎の席に着いた。
 そこに先生が入ってくる。美凪と顔が合うと険しい顔をした。

「遠野、号令」
「……。はい。起立、礼」

 授業が普段通り始まると、下の階では先生が大声で「おまえは上の教室だろう!!」という怒声が聞こえてきた。
 慌てて入ってくる孝四郎。

「はぁっ、はぁ……先生っ!!大人のマナーはどこで教えてくれますか!!?」
「とりあえず、おまえは立ってろ!!」

 他の教室に迷惑をかけた孝四郎に戻る席はなかった。

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「お母さんー!!怪我しちゃったぁ。痛いよぉ!!」

 神原莉子―かんばるりこ―が母親ののり子の元にやってきた。料理部に所属している莉子が怪我をしたと言われてすぐに玄関に駆けつける。

「いったいどうしたの?まさか、包丁で指を切ったの?」

 料理部に入ったと聞いて、気が気ではなかったのり子。普段でものんびりとした性格だけに、包丁の使い方も家では教えてこなかったのだ。もっと大人になってから教えればいいと思っていたのり子にとって、部活動で料理部という莉子の話を聞いてからが毎日が冷や冷やしていたのだ。
 いつ、学校から連絡が来るかと思っていたが、まさか莉子本人からその連絡を聞く時が来るとは意外だった。
 玄関で泣いてる莉子を見ながら、いったいどこを怪我したのかを確認する。
 見た目では大きな怪我はない。血だらけになっていることもなく、目から涙を流して泣いている莉子に、今度は身体の内側の怪我ではないかと心配になる。
 うちみ、骨折、胃潰瘍、アキレス腱断裂。……莉子ならありうるかもしれない。

「…で、どこ怪我したの?」
「ココ」

 そう言って莉子が膝を差す。そこには小さな擦り傷が出来ていた。

「ごめんなさい。私が料理を持っていくように指示してしまったから……」

 同じ部員である遠野美凪がのり子に謝る。それを遠目で見る日向孝四郎。

「謝らなくていいぞ、美凪。率先して持っていくって言ったのは莉子の方だし、つまずいたのも莉子の自爆だし」

 包丁でもなく、火傷でもなく、完成した料理を運んでいる際につまずいた擦り傷。ガラスで切れた訳でもないとわかってのり子はほっと胸をなでおろした。

      
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「このくらいの傷で泣かないの、莉子。あんたももう中学生でしょう?子供じゃないんだから我慢しなさい」
「だってぇ、痛いんだもん」
「傷つくほど立派な大人になっていくのよ。もっといっぱい傷つきなさい。その分だけ人に優しくなれるから」
「うわあ、大人の言葉の言葉は重いなあ」

 孝四郎が感銘を受けていた。

「最近は怪我をしない子供が増えているらしいもんな。親もちょっと子供が怪我したくらいで発狂するし、即PTAで問題に取り上げ――」
「孝四郎さんも怪我しないですよね」
「余計な怪我を作らないように常に気を張っている証拠だ。普通に見せているようで、俺の神経は今も背後で銃弾が飛んでくることを想定しているんだぜ。だから今、美凪がパンチをしてこようとも、目を瞑って避けれるぜ」
「そんな会話をしている間に既に銃弾に撃たれていると思います」
「……」
「孝四郎さん、何かに入れ知恵させられました?取り入れた知識を見せびらかすのは大人としてだらしないですよ?」
「うがあああああああ!!!」

 孝四郎が美凪の頬を両手で引っ張る。痛いというと思っていたが、美凪は言わなかった。

「はにゃしふぇくらはひ。おんにゃのふぉにふぇをあへるにゃんふぇ、ひへまへん(放してください。女の子に手を挙げるなんて、いけません)」

 思った以上に柔らかい美凪の頬肉と、抑揚の変わらない口調でなに言ってるか分からない美凪の可愛さを見れただけで、孝四郎は一気に怒りが下がっていった。
 「ああ、平和だ」と孝四郎は思った。

「……。孝四郎さん。私、とばっちり受けましたよね?流そうとしていませんか?」
「ああ、平和だ」
「二度言いましたね?」
「しまった。一回目も口に出ていたのか!?」
「あにゃまってください……謝って下さい」
「ニヤニヤが止まらない」 

 そんなやり取りをしながら、のり子もまた笑いながら冗談を言う。

「なに言ってるのよ。こんなに甘やかして育っちゃった証拠じゃない!今度からスパルタで行こうかしらね」
「莉子先輩は今のままが一番可愛いです…」

 美凪のフォローよりも、莉子が目を丸くして涙をグッと飲み込んでいた。スパルタが嫌なのは、本人が一番よく分かっているみたいだった。

「痛くないよ!」
「そう?偉いわね、莉子」

      
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 頭を撫でて笑いあう親子。
 特に傷になにをする必要もなさそうなくらい、莉子は立ちあがって美凪と孝四郎の元へと寄ってきた。

「先輩、えらいです。私からも先輩の頭を撫でさせてください」
「おまえは莉子の母親か?」
「私は先輩の後輩です。母性愛に溢れた後輩です」
「逆だろ!?莉子も頭を撫でてもらうように頭を傾けるな!!」
「えへへ~」
「あまーーーーーーーーーーい(人生的な意味で)!!!!」

 莉子を自宅に届けて帰ろうとした孝四郎と美凪だが、のり子が二人を呼びとめる。

「せっかく来たんでしょう?家でご飯でも食べていかない?ちょっと二人で食べるには多すぎるほど作っちゃって」

 孝四郎はよく莉子の家で夕食をご馳走になる。孝四郎からすればそれが当たり前だったが、美凪にとっては抵抗があるのだろう。

「あの、私は、夜遅いとお母さんが心配しますので……」
「大丈夫だって。なんなら一本連絡入れれば済む話だろ?それにもう小学生じゃないんだから、少しくらい遅くなっても、平気だろう?」
「そうですが……」
「そうだよ。お母さんの料理とっても美味しいんだよ。一度食べていってよ」
「じゃあ、入ろうぜ。しつれいします」
「……。お世話になります」

 皆につられて美凪も莉子の家をお邪魔する。孝四郎に付いていくように後を追う美凪。

「……孝四郎さんだって、甘いです」
「ん、何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません」
「あっ。そうだ、莉子。その傷見せてみろよ」
「これ?」

 莉子が擦れた足を見せる。孝四郎はポケットから「ジャン!」と言って『塗り薬』を取り出した。

「早く良くなるように俺が塗ってやるからな。痛いの痛いの飛んでけぇ~ってな!」

 男が言う台詞に違和感を覚える美凪。それだけじゃなく、孝四郎のポケットから急に現れた『塗り薬』にもっと違和感を覚えたのだ。

「孝四郎さん、その薬、どうしたんですか?」
「美凪だってポケットから大量におこめ券取り出すだろう!?」
「……はい?」
「いや、なんでもない――」

 一回咳払いをする孝四郎。

「ほらっ、一緒に帰ってるときに少女がくれたんだよ。泣いてる子に使ってあげてって」

 美凪が莉子を引きづりながら帰宅している後ろで、孝四郎は知らない少女から『塗り薬』を貰っていたらしい。

「買う手間が省けたよな!」

 知らない人からもらった『塗り薬』を使って、果たして効き目があるのだろうか?美凪が首をかしげた。

「それ、効き目は大丈夫なんですか?」
「『塗り薬』だし、大丈夫だろう?成分はよく分からないけど」
「……孝四郎さん、甘いです!」

 今度は聞こえるように、美凪は同じセリフを二度言った。
 とはいえ、もう塗ってしまっているので仕方ない。

「ありがとう、孝四郎くん!」

 と、莉子は笑顔で孝四郎に謝っているので何も言えない。
 たかが『塗り薬』だ。被れることはあっても、それ以上に支障をきたすことはないと美凪は安心していた。

 だがこの時の美凪は――
 それ以降二人の姿を目撃することはなくなるとは、夢にも思っていなかった。


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 エムシー販売店商品開発改善委員会――

 只今、会議中にて誰も言葉を話していなかった。
 重く漂う空気、淀んだオーラが会議室を包み込み、誰かが何かを言ってくれないと話が前に進まないと分かっていながら、誰も言葉が発せられないほどの異常事態。
 時が止まっていると、フェルミは思った。

「さて――――」

 社長が声を出す。その目つきは真剣そのもの。皆が一斉に肩を震わせた。

「私たちの商品が起動に乗りはじめた中で、思うように業績が伸びていない商品があるようだが・・・」

 会議室で皆の目の前に置かれた商品に皆が注目する。

 ――『塗り薬』。

 様々な改善、改良を加えていく商品だが、未だ軌道に乗れずにいた。

「仕方ないですよ。TS―トランスセクシャル―もMC―マインドコントロール―も他の商品と被りやすいですから『塗り薬』はその中間をとった商品で、いわばどちらにも対応した商品ではありませんか?」

 センリ接客担当係が言う。確かに最初のコンセプトはその通り、『塗り薬』はMCよりに開発した商品である。
 催眠のことなら『塗り薬』として販売した商品が、今や『レンズ』や『電波』に敗北としている。塗る、という動作の間に広範囲に催眠が掛けられる『電波』や『レンズ』のほうが圧倒的ニーズに応えられるからだ。

「うむ…」

 その間に改良を重ねた第二段。牧村貴美子商品開発係に頼んだ新型『塗り薬』、『いたいのとんでけ』という部分入れ替えのもとに販売した商品だったが、如何せん、身体を切断するという残酷な描写を含むその商品は、一部のコアなファンには魅力的であったが、一般には受け入れられずにいた。
 社長として、多くのファンにその効果を説明している手前、残酷な描写はあまり伝えたくないのである。

「憑依の『飲み薬』、入れ替えの『粉薬』、スライム化の『柔軟剤』、透明化認識不可視の『漂白剤』、融合の『接着剤』、悪堕ちの『錠剤』、感情変化の『惚れ薬』と、他の商品には基盤となるコンセプトがあるんですけどね」

 ブリュンヒルド財務担当係がいう。そう、その通り、他の商品にはあるコンセプトが『塗り薬』には希薄だ。中間という発想が仇となり、色がなくなってしまったという窮地に叩きおとされていた。
 コンセプトん関しては他の商品だってある。

 ――『鏡』、――『人形』、――『名刺(紙)』、――『時計』、――『電話』、――『粘土』、――『レンズ』

 長きに渡り改良を加えていった商品たちもまた、ようやく軌道に乗りはじめている。
 あと一商品なのだ。『塗り薬』だけなのだ。

「ここに閃きを持つ者はいないか?」

 アイディアを求める社長。皆、口を固く閉ざす。
 正義の使者だろうと、『閃き』は後ろでただ輝くのではなく、前に出てもらわなければ意味がないのである。 
 本人を輝かせるのではなく、人間性を輝かせる『閃き』を持つ人材確保。
 それが今は急務なことだった。

「いっそのこと募集かけちゃいますか?」
「信条に反することを言うんじゃありません」
「すみません・・・」

 ブリュンヒルドに怒られ、センリがさらに口籠る。
 誰もなにも言わない重苦しい会議室。空気の入れ替えをするように、社長は窓に近づき、外の景色を眺めた。

「――『塗り薬』は廃品にするか?」

 緊急事態、異常事態。
 まさかの決議に慌てだす社員達。

「そんなの、ダメです!せっかく作った商品なのに!!あんまりです!」
「もっと中間層に幅広く働きかけましょう。値段も据え置きにして、手ごろさを売りにしましょう――」
「プッ…アハハハ――――!!」

 突如笑い声が響きだす。
 フェルミ営業担当係である。センリと同じく幼い顔したフェルミが、お腹を抱えてやりとりを嘲笑っているのだ。

「もぅ、そんなのダメだね!全然ダメ!色がないって言っているのに商品の値段を下げてどうするのさ。うちのやり方はハイリスクハイリターンでしょう?付加価値を下げちゃったら他の商品もどうせ値段が下がるだろうって買わなくなるかもしれないじゃん」
「確かに、その通りかもしれませんが…」

 フェルミが立ち上がる。禍々しい、どす黒いオーラを放つと、『塗り薬』を包みこんだ。

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「ボクにこの件を任せて貰ってもいい?『塗り薬』の成分を一から改良してまったく新しい『塗り薬』にしちゃってもいい?」

 その言葉の重さにセンリもブリュンヒルドもなにも言えなくなる。
 対抗できるのは社長のみだが、その社長は嬉しそうに眼光を鋭くしてフェルミに笑みを投げかけているようだった。

「残酷な描写はない?」

 センリがフェルミに訪ねる。violenceな描写は読者を遠ざけることをセンリは懸念する。フェルミはそんなセンリをあざ笑うかのように口元を釣り上げた。

「お望みならば・・・見せなければいいんでしょう?」

 今までよりも一層声を低くしたフェルミに、反対する者は誰もいなかった。


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