純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『体内変化』 > 粘土『遠隔操作と皮試着after』

 ――ピンポーン。

「はい?――――謙信ちゃん!こんな時間にどうしたの?」

 夜番に訪れた謙信に驚く顔を見せる亜衣子。その制止を押し切って問答無用で玄関から上がり込む。

「まぁまぁ、ちょっと寄らせてもらうわね」

 謙信、もとい俺に強引さにも亜衣子は部屋へ通してくれる。二人で部屋に入ったのを見定めてすかさず亜衣子の唇を奪った。

「んんぅ!?」

 謙信にキスを奪われた亜衣子はさらに目を丸くしていた。普段の謙信とは違う、想像していなかった展開に驚く亜衣子は、思わず唇を放してしまった。

「やめて!謙信ちゃん!」
「んあ?・・・どうして私を拒否するの?私は亜衣子のことをいつだって守ってきたじゃない」
「それは・・・・・・」
「それなのに、亜衣子は私よりもあいつを・・・あいつと付き合い始めたじゃない!」

 正雄と付き合い始めたことに正直な気持ちをぶつける謙信。そう言わせているのは俺自身だが、それによって亜衣子の本音も聞きだそうとしていた。
 亜衣子にとって正雄に抱く気持ちは捏造。偽りであり、俺自身が亜衣子に植え付けたものだ。それを本人は自覚していないし、自分の気持ちと思って今日まで付き合ってきた。
 困惑しながら俺と付き合い、混乱しながら俺に振り回されてきた亜衣子にとって、それは果たして幸せなのだろうか――

「・・・でも、謙信ちゃんは、こ、こんなことする人じゃないよね?私たち友達だし、親友だし・・・」
「それ以上にはなれないの?」

 所詮同性の亜衣子と謙信では友達以上恋人未満の関係止まり。それを亜衣子の口から聞かされると、心の何処かがとても痛かった。

「それ以上って・・・・・・」
「見て!」

 亜衣子の目の前で謙信は制服を脱ぎ始める。引き締まった身体付きを亜衣子に見せながら、抜群のプロポーションを月明かりの下に曝した。

「謙信ちゃんやめて!」
「次は亜衣子の番だよ」

 強引に、それでいて決断を迫って亜衣子にバトンを渡す。
”こっち”側にいくか、それとも留まるか。亜衣子の気持ちを自分自身に問いかけて、答えをだす。

「・・・謙信ちゃんがそれを求めるなら・・・・・・」

 ゆっくりと、亜衣子は自分の私服を脱ぎ始める。その動作はまるで息をすることを忘れるほど遅く、時が止まったのように静かに・・・

「私はそれに応えたい」

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 ズボンもゆっくり下ろしていき、上下お揃いの下着姿になった亜衣子の姿は息を呑むほどに美しかった。

「脱いだよ」

 全裸になった亜衣子に謙信も同じようにスローモーションで近づいていく。その場の空気を壊さないように細心の注意を払いながら、雰囲気を持たせつつ亜衣子の肌に触れていく。

「・・・っ!」

 ちょっとでも強く触れれば崩れてしまいそうな小さな身体で、その恐怖に震えそうになるのを耐え忍んでいる。
 緊張している身体のせいか、胸の中心に突起する二つの乳首も硬くなっていた。
 謙信は亜衣子の乳首に吸い付くように唇で咥えこんだ。甘く噛んだ乳首を舌で舐め転がしながら唾液を含ませていく。

「あっ・・・んっ・・・」
「レロレロ・・・亜衣子の乳首大きくなってる。こうされるの気持ちいいの?」
「そんなの!・・・わかんないよ!」
「及川にも触らせたことないものね。んぅ・・・チュパ・・・チュパ・・・」

 亜衣子の感度は良く、少し弄っただけですぐに濡れてきた。亜衣子をベッドに倒しながら全身を舐めつつ股を開かせ、大事な場所もクンニしていく。

「うわぁ~こんなに溢れてきてる。私におま〇こ舐められて感じてくれてるんだ」
「んあっ!やめっ!そんな場所・・・汚いから舐めないで!」
「大丈夫だよ、亜衣子の汚物は私が吸い取ってあげるから。じゅるるるるぅ!」
「ひゃあぅ!」

 引くつかせ無意識に浮かび上がらせた腰がすとんと落ちる。ベッドの上で息を絶え絶えにして脱力する亜衣子を見て、軽くイったのだと察した。溢れるばかりの愛液が謙信の口の中に入ってきては飲み干していった。

「私の舌でイったんだね。亜衣子のおま〇こひくひく動いてる」
「はぁ・・・はぁ・・・私、イってなんか・・・」
「強がらなくてもいいわ。亜衣子は私が守るから」

 濡れた亜衣子の秘部に謙信は自分の秘部を合わせて腰を動かして擦りつけ始めた。貝合わせというやつだ。

「たとえ、どんな害悪な男が亜衣子に近づいて来ようと、私が亜衣子を一番に想っている。これはそういう契りだ!」

 謙信の叫びと供に腰の動きに合わせてニチャニチャとイヤらしい音が漏れだす。一番に亜衣子を感じさせることに悦びを求める謙信に亜衣子は受けとめ、行為を受け止める。

「ひっ・・・くあっ・・・はっ・・・はぁっ」
「亜衣子も感じているのだろう?腰の動きが早くなっているぞ。いいぞ。私が受け止めてやるぞ。好きに擦りつけてこい」
「ちがっ・・・くひんっ!んんぅ・・・けんしんちゃん・・・けんしんちゃん・・・!」
「またイきそうなんだな。私も供にイこう。一緒に、イこう!」
「はぅっ!あっ・・・あぅぅっ!はぁん!」

 ベッドの上で跳ねながら擦り合わせた秘部同士からは愛汁に濡れてぐちゅぐちゅと音が響き合う。体力が違う二人の疲労度は歴然だが、謙信は亜衣子に合わせるように自分の感じる場所を的確に突くように亜衣子の柔肉に擦りつけ合わせながら絶頂まで到達する。

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「ふあ、あ、あああ、ふあぁぁぁぁ―――――ん!!!」
「ひぃ!だ、ダメ!!ひゃあぁぁぁ―――――ぅん!!!」

 貝合わせによって一度イった二人の声が部屋中に響いた。
 びしょびしょに濡れたベッドシーツの上で沈む亜衣子の身体を慰めるように優しく撫でる謙信。

「・・・ごめんなさい。私の一方的な感情に付き合わせてしまって。・・・でも、これできっと本人も納得いくはず。だって――俺に乗っ取られた人はどんな行動だとしても自分の意志でやったって認識するから。亜衣子に奇襲して貝合わせしたのだって、全部私がしたくてやったことになるんだから」

 謙信はきっと激しく後悔するだろう。例え俺が勝手にやった行為だとしても、亜衣子を襲った謙信という自覚がある以上は今まで通りに入り浸ることができないだろう。もしも亜衣子が受け入れたとしても、上杉謙信という性格は自分が納得するまではしばらく亜衣子の傍に近寄ることもしないに違いない。その間に亜衣子と俺の仲を深める時間はあるはずだ。
 謙信を受け入れた亜衣子なのだから、彼氏である俺を受け入れないはずはないのだから。
 とは、いうものの――

「謙信ちゃん・・・」

 ――それでも謙信を信じて受け入れた亜衣子の寛大さに驚かされたのは、俺の方だったみたいだ。

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 俺は悩んでいた。
 色物の話になってしまうが、俺には前田亜衣子という彼女がいる。クラスメイトであり彼女なのだから・・・・・・少しは大人の階段を登っていいと思うんだ。

「なあ、前田」

 放課後、俺は人気のない廊下に亜衣子を連れ出した。

「なんですか、正雄くん」
「俺さ、ずっと前から・・・前田の・・・、触れてみたかったんだ」
「え、ええええっ!?」

 大声を荒げた亜衣子を負いこむように、壁ドンのポーズで黙らせる。効果あったようで、亜衣子は顔を真っ赤にして声を押し殺した。

「なあ、いいじゃん。ちょっとだけだから・・・」

 耳に息を吹きかけて小声で喋るとさらに顔を真っ赤にする。

「そんな・・・恥ずかしいです・・・」
「大丈夫だって。誰にも言わないから」
「でも、きっとばれちゃう・・・ダメです・・・」
「ダメでももう、俺・・・我慢できねえ」
「正雄くん、きゃ・・・・・・んむぅっ!」

 彼氏なんだから少しくらい強引な方法を取る俺の耳に聞こえてくる微かな風の鼓動。
 静かな殺意を感じて零れる一筋の冷汗が熱い・・・・・・。
 喉が、乾く。
 ヤバい。奴がくる。

『刀八毘沙門天』」

 ――ドーーーーーン!!!

 まるで大砲を直撃したかのような衝撃が俺を襲い、壁にめり込んだ。その衝撃は確かに存在し、俺が激突した壁の痕跡は蜘蛛の巣のように張り巡らされた糸のように螺旋を描いていた。
 例えるなら、コメディ漫画で100tハンマーを受ける某主人公のような跡が残っていた。

「おいっ!マジで具現化したのかよ!!!」

 幻影の気迫のはずの
『刀八毘沙門天』がこんな威力を与えるんじゃない。と、言いつつも、振り返れば最強の『軍神』上杉謙信が俺の目の前に鬼気迫っていた。

「つうか、今のを受けて無傷でいるなんてちょっとショックよ。主人公補正でも入ってるんじゃないの
?」
「主人公・・・うっ、頭が」

 なにか思い出したくない記憶が脳裏をかすめるが、次の瞬間には霞のように消えていた。

「ちょっと、なに言ってるかわかりませんね?」
「そんなことより、あんた!私の亜衣子に気安く触らないで!」
「誰が『私の』亜衣子だ!」

 最初から全力で本音をぶつける謙信。しかし、理想が現実に追いついていない!

「亜衣子は『俺の』亜衣子だ。間違えないでくれるかね!ダーハッハッハ!」

 亜衣子と俺は彼氏彼女。所詮同性の亜衣子と謙信では友達以上恋人未満の関係止まり。
 勝敗は既に決している。謙信の悔しがる顔が小気味良い。
 しかし、亜衣子のご厚意で献身との約束は守ってるとはいえ、その契りを破ろうとした途端に見つかっているのは詰めが甘かったかもしれない。

「及川ぁ、亜衣子になにもしてないだろうな?」
「な、ななななにもしてないよ?」
「さっき、私の手を触ろうとしました」
「亜衣子ぉ~・・・・・・ぐえぇぇ!!!」

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 もう一発、
『刀八毘沙門天』を受け壁に叩きつけられる。壁ドンって骨が軋むんですね・・・。

「ふ、不謹慎な!まだ高校生の私たちが・・・異性と、て、ててて・・・手を繋ぐだなんて!!!」
「普通のことじゃねえか!お前のせいで俺たちは恋人同士なのにキスも出来ないんだぞ!」
「き、きキキ、キスぅ~~~!!?貴様はそんな不埒な行為を企てているのかあぁ!」
「ちょ、まっ!
『刀八毘沙門天』待って!!!」

 謙信の亜衣子擁護に関しての母性愛は異常に強く、校内では触ることすら禁止されているのである。箱入り娘に対する母親のようなまでの愛情であり、恋人以上に強い友情がここにはあるのである。

「おまえは何時代の人間だよ!思考が古いんだよ!」
「なんだと!?」
「今時、高校生だってキスや手を触るくらい普通なんだよ。当然セ――」
「正雄くん。不謹慎」

 亜衣子に怒られちゃった・・・。ここで謙信は威厳あるように踏ん反り返って見せた。

「私の考えは古くないぞ。亭主関白は時代錯誤だと勉強した。時代は両親共働きの時代だとな」
「私たち女性だって働かなくちゃ生計立てられない時代ですから。ちゃんと女性が社会に進出できるように政治が動いてくれてます」
「そうだな。このご時世男性の年収600万なんて稼げるわけがない。特にこんな田舎なんて尚更な。いったい統計でどれだけ都会が平均年収を上げてると思ってるんだよ」
「今や子育てだって男性が率先してやるそうだ。仕事だけしていればいいわけではないみたいだな」
「・・・えっ?」
「ちゃんと料理や洗濯だってやってもらわないとダメです。掃除や後片付けだって協力してやってもらわないと女性が倒れちゃいます」
「・・・えっ?・・・えっ?」

 あっれぇ~おかしいぞ。なんか、風当たりが強くなってません?

「正雄くんも対応できてます?」
「私だって対応する努力はしていくつもりだ。貴様はまさか、亜衣子を苦しめたりはしないだろうな?」
「ちょっと待て!なんでお前が亜衣子との付き合いを見定めようとしてるんだよ!小姑かよ!死ぬまで付きまとうつもりじゃないだろうな!」
「あんたが心配だからでしょう!口だけ軽い人間で実力が中途半端なのがいけないんじゃない!少しは私を安心させるような行動をしてみなさいよ!」
「イテテテテ!!!」

 何故だろう。最近誰かに同じようなことを言われた気がするのに覚えていない。

「関白宣言が俺の理想だったのに・・・お前のおかげで良い人生だったと俺が言うから、必ず言うから・・・」
「私がオバさんになっても本当に変わらない?とても心配だわ。あなたが若い子が好きだから」
「二人とも、歌詞が古いです」
「いや、もっと古風な生き様をしている奴がいる!見ろ!!」

 廊下でありながら俺が指をさす方向に二人が顔を向けると、そこには武田信玄率いるメイド&メイドガイが布団を引いて床に就いていたのだ。まるで病弱の様子の信玄を心配そうに見守るメイド&メイドガイに、生涯最後の時間を過ごしているかのような雰囲気を醸し出していた。

「いいか。家臣たちよ。我が遺言を聞け」
『御意』
「3年の間、我死たるを隠して、其の内に国をしづめ候へ」

 それは遺言。信玄が国の為に残した言葉を家臣たちに伝え息絶える。目に涙を溢れさせる諷と倫。しかし、メイドガイこと香山は一人立ち上がった。

「畏まりました。この香山・・・必ずや・・・・・・忠義を尽くし信玄さまの意志を受け継いで見せますわ」

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 香山は信玄とそっくりな姿に成り、遺言通り信玄の死を隠したことは有名な話――。


 ・・・そんな、子芝居を見せられた謙信は一人いきり立っていた。

「とにかく!私の目が黒い内は絶対に亜衣子に指一本触れさせないから!それは貴様が恋仲だろうが関係ない!」

 亜衣子を引き連れて学校から帰る謙信。あいつがいたのでは、俺と亜衣子の薔薇色の高校生活が破断してしまう。謙信の亜衣子に対する愛情を崩さなければ、粉砕骨折は免れない。

「・・・仕方ねえ。こうなればだ・・・・・・」

 俺は禁断の手段を使わせてもらう。亜衣子の愛情をゲットした『粘土』によって、謙信さえ愛情を歪ませてもらおう。
 手に持った『粘土』に謙信のイメージで捏ねあげる。すると、『粘土』は意志を受け取ったように上杉謙信そっくりの『像』を完成させた。
 後は自分の髪の毛をこの『像』に植え込めばいい。そうすれば、亜衣子の時と同じように視界は暗転するはずだ。

「さて、今回はうまくいくか?」

 自分の髪の毛を謙信の『像』に埋め込む。一般だけ違う髪の毛を呑み込んだ『像』は一瞬青白く光り、瞬間世界が一転した。

「・・・・・・でね、謙信ちゃん」

 隣にいる亜衣子の横顔を見ながら帰宅途中の通路で立ち止まる。先程まで校内だったはずなのに、振り返れば遥か遠くに校舎が見えた。
 優しい風が長髪を靡き、スカートの中を撫でていく。
 この視界。この景色。

「謙信ちゃん?謙信ちゃん・・・?」

 隣で呼びかける亜衣子の呼び方から察する通り。俺は今――上杉謙信になっているに違いない。

「う、うおおおお!!!成功したぜ!!!」

 グッとガッツポーズを決める謙信(俺)に亜衣子が唖然としていた。

「謙信ちゃん?大丈夫?」
「あっ、なんでもない。大丈夫よ」

 あははと愛想笑いを浮かべてはぐらかそうとするも、亜衣子はちょっと混乱しているみたいだ。なにかを察したのか、謙信と普段接しているせいで、微妙な変化で気付いてしまうと後々勘付かれてしまう後ろめたさがある。
 今は亜衣子と別行動することが先決と判断し、俺は一足先に帰ることにする。

「御免。亜衣子。ちょっと用事思い出したから先帰るね!」
「えっ!?け、謙信ちゃん!!?」

 ドピュ~と、脇目も振らず一目散に帰る謙信(俺)の姿を見て亜衣子は何を思うだろう。しかし、今の俺には亜衣子のことよりもまずは憎き邪魔者の身体を手に入れたことに対する仕打ちを考えることでワクワクしているのだった。



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 ――ピンポーン。

「はい?」

 高校から帰宅した直後、及川正雄が来客の応対するために玄関を開ける。そこに待っていたのは――

「こんにちは。私、エムシー販売店で働く――」

 ――俺にとって久し振りに会う少女だ。自称宇宙人の、どこぞの会社の営業マン。

「おおぉお~~会いたかったぞ!!我が妹よ!!」
「うわあ!!!」

 急に抱き付こうとする俺を避ける少女。両手が空を斬る。

「何故だ!!お前だって俺に会いたかった癖に~!」
「はぁ?なにを言ってるんですか?」
「なにツンツンしてるんだよ、俺とお前の仲じゃないか!いいんだぞ。そろそろデレたって。商店街の一件みたいに俺に飛びついてきたっていいんだぞ~」
「あの、失礼ですが・・・頭大丈夫ですか?」
「・・・えっ?・・・えっ?」

 再会を喜ぶ俺を他所に勤めてクールに振る舞う少女。それはまるであの頃とは別人のようで、俺にとって再会を喜ぶ以前に、別人のように変わり果ててしまった少女の対応に急に心が締め付けられるようだった。

「ウソだろ・・・俺のこと覚えてないのか?」
「覚えてます。顧客名簿に記載されてますから」
「うわああああぁぁぁ!!」

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 一年ぶりに再会した少女は見た目が変わらず、別人のような塩対応をするようになっていた。辛い現実だった。受け入れ難い現実を否定するように少女に詰め寄る。

「そうじゃないだろ!!だって、俺とお前は色々あったじゃないか。焼きそばパンとか、アイスとか、たい焼きとか食べた仲じゃないか」
「間食する程度の仲ですか?大したことありませんね」
「畜生!!!俺が馬鹿だった!こんなことならもっと豪華な食事を奢ってあげればよかったぁぁぁ!!!」
「うぐぅ~」
「はっ!そ、その声は・・・!」
「失礼。お腹が鳴ってしまいました」
「変わったお腹の音だな!宇宙人かよ!!!」
「はい」
「そうだな。宇宙人だったな」
「うぐぅ――」
「はっ!そ、その声は・・・!」
「失礼。宇宙って言おうとしたら噛みました」
「うぐぅ」
「変な泣き声やめてくれませんか?」
「うおおおお!!!なんで忘れちまったんだよ!誰かに洗脳されたのか?それとも、記憶を消去されたのか!?俺のことが分からないのかよ!!及川正雄だ!!!また一緒にプリキュアの話しようぜ!!!」
「大声で少女アニメの話題しないで下さい」
「俺!映画観に行くから!キュアマジカル観に行くから!!!」
「私の声が堀江由〇に似ているからって映画観に行く自慢しなくても良いですから」
「自覚あるのかよ!!!」

 一人テンションが高い俺と、顧客との接待に何とか食らいつこうとしてくれる少女の温度差が辛い。一年。俺と少女が出会わなかった溝がいつの間にかこんなに深いものになっているのだとは気付きもしなかった。

「・・・・・・・・・はぁ。やり取りが昔に戻ろうとする度にそのギャップに苦しめられる。久し振りに会ったって言うのに、お前は変わっちまったんだな」
「?」
「ふっ・・・。いや、普通そうなのかもしれないよな。ただ俺が変わりたくなかっただけで、大人になりたくなかっただけで、子供のままでいたかっただけで・・・変わらないきみに会うことで無駄に過ごした一年を無かったことに出来る様な気がしただけなのかもしれない」
「・・・。人は忘れられるから生きていけるんですよ?辛く苦しい現実だと思うなら、その辛さ苦しみを忘れて一からスタートすることもまた現実なんですよ」
「きみはすっかり社会に定着したんだな。宇宙人のくせに一生懸命に働いて・・・・・・俺と違って、大人になったんだな。――おめでとう!」
「・・・・・・・・・・・・はい!」

 少女は屈託のない笑みを浮かべた。それはまるで、嘘偽りのない営業少女が見せた一点の曇りもない信念だった。

「俺も戦うよ。現実と。・・・その為に――」
「うん・・・そうだね。これが僕からの最後のお願いです。えへへ・・・。僕の最後のお願いです。僕のこと、忘れて下さい。僕なんか、最初からいなかったって、そう思ってください」

 少女にその言葉を言われた瞬間。胸が熱く、苦しく締め付けられて、涙が出そうになった。
 でも、今は泣くわけには行かない。それはきっと、少女もまた、今の俺と同じ顔をしているからだ。
 夕焼け空が少女をさらう様で、少しでも離れることが怖かった。
 だけど、最後まで笑顔であり続けよう。
 少女の姿が目の前から消えるまで。

「じゃあな。あゆううぅぅぅ~~~!!!」


 ――――ガチャン。続きを読む

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