純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 鏡『『変身』佳奈編』

 ――――バァン!!
 けたたましいドアの開く音が部屋中に響き、そこから瞬く間に大量の人が押し寄せてくる。
 特殊警備服を身にまとい、POLICEという文字をちらつかせている者たちに『佳奈』(一秀)は目を疑った。
 そこから現れる40代の女性と、還暦間近に見える初老の男性が入ってくる。

「警察だ」

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 事態は緊迫している状況で、やけに女性の声は耳に響いた。同時に胸の内で鳴らす警報が最大音で鳴り響く。
 なぜ・・・どうしてっ!?
 警察だと!?やってくるには あ ま り に も 早 す ぎ る ! ? 

「おらぁ動くな!容疑者覚悟。被害者を守れ!!」

 男性の怒鳴り声が部屋中に響くと、そこにいた者たちが全員打ち震えた。しかし・・・と、言わんばかりに警護班が戸惑いを見せる。そこには、被害者と同じ顔した女性が二人いたのだ。
 その時、容疑者が被害者に『変身』していたのである。間違えて確保してしまえば警察の面子は保てない。

「しかし、どちらを保護すれば・・・」
「はっ?お前たちは今まで何を見てきた? 右 の 子 を 確 保 だ ! !」

 それはあまりにも当然と言わんばかりに、男性は佳奈本人に指さした。警護班は男性の言う通りに右の子を守るために駆け付ける。
 まるで、この男性には、『変身』していることが無意味であるように。
 無事佳奈を保護すると次は『佳奈』・・・一秀の逮捕へと引き続く。

「なんでだよ・・・俺がなにした!なんでおまえ達がココにやってこれたんだよ!」

 警察に逮捕?ふざけるな!俺は何も悪いことなどしていない。これは佳奈ちゃんを救う話だぞ。
 美談の物語にどうして警察が現れる?そんな要素は一つもないじゃないか!

「宮村佳奈という少女が誘拐されたと通報があった。おまえのやっていることは立派な犯罪だ」
「違う!これは誘拐じゃない。束縛からの解放だ。自由のための改革だ!」

 幸福になるためにどれだけ多くの快感を得られるか。それは若ければ若いほどいいに決まっている。
 それだけ多くの幸福に気が付けるのだから。

「それが彼女の望んだことか?」

 例えそれが、俺の心理に基づいた者であっても。しかし、それに間違いはない。正論こそ正義なのだから。

「そうだ!これが彼女の望んでいたことだ!俺は確かに聞いたんだ!」

 隣の壁の向こう側から、俺は確かに彼女の初めて感じた快感の声を聞いたその日から――。

「彼女の口から聞いたのか?」

 初心な喘ぎ声に興奮し、眠れなくなった日から――俺の計画は始まっていた。

「お前が彼女を救う理由がどこにある?」
「・・・なん、だよ・・・・・・」
「お前が彼女を守る理由がどこにある?」
「・・なん、なんだよ・・・・・・」
「お前が彼女を救いたいという理由が私には理解できない」
「なんなんだよ!お前は!五月蠅いよ!お前に俺の何が分かる!?好きになった女性の幸福を考えちゃいけないのかよ、ええええ!!?普段の生活をしていて幸せか?なんの危険も冒さない人生は面白いか?セックスしたことあんのか!?オナニーしたことあんのか!?快楽を教えてやってなにが悪い?あああん!!?」

 怒りに爆発させた佳奈(一秀)の言葉を警察が青ざめながら聞いていた。一方的なまでの愛情。これが救いと信じて疑わない独断。凶悪犯罪すら許される思考回路。

「なんなの、こいつ・・・まるで会話が成立していない」
「正義感に溺れた悪人って感じですね」
「これ以上は埒があかない。さっさと連行するぞ」

 ジリっと警察が歩みを始めた瞬間――

「俺は捕まるわけには行かない。絶対に逃げ切ってやるんだ」

 一秀にはその自信があった。なんたって、手には誰にでも変身できる『鏡』を所持しているのだから。

「しまった!」

 一瞬の光に包まれた後、一秀の姿はいなくなっていた。

「消えた・・・消えてしまいました!」
「冗談じゃないわ。私たち警察がまわりを囲んでいるんのに。逃げられたで済む問題じゃない!!」

 若い警察官までこの事態に驚き、容疑者の消えた場所になにか痕跡が残っていないかを探し回る。しかし、この部屋を隅々まで探しても、宮澤一秀という男性が見つかることはなかった。

「ええい、まんまと逃げられたか」
「・・・・・・」

 警察をまとめる女性がなにかを思いながら、何かを告げて消えていく。そして、彼女が消えてしばらくすると、新米警官と供にやってきた佳代と一真が佳奈と再会を果たした。

「お姉ちゃん!!!」
「佳奈ぁ~!!!」

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 姉妹は抱き合ったまま無事に再会出来たことを喜ぶ。佳奈は終始姉に抱き付いたまま、ぐしゅぐしゅっと、顔を潰してただ泣き続けていた。「怖かった」と、辛かった寂しさを姉に伝え、姉はそんな妹を安心させるまで抱きしめ続けた。

「ありがとうございました。佳奈が無事で本当に良かったです」
「あなた達がすぐに事件に気付いてくれたからです。私たちは連絡がなければ動けませんので」

 自分たちのスピード解決を誇るわけではなく、異変にすぐ気づいた一真たちを称賛する女性警官。そして――

「辛かった中、助けを信じて希望を失わなかった佳奈ちゃんを私は誇りに思います。よく頑張ったね」
「ふ・・・ふええぇぇぇ・・・・・・」

 ――佳奈の頭を撫でながら優しく声をかける女性警官、小池陽乃はかつて自分もその言葉に元気をもらった言葉を佳奈に送り掛けた。

 決して事件は減ることはない。しかし、最悪の状況を回避するために迅速に解決することが警察官である者の宿命である。平和な日常を守るために戦い続けなければならない。
 一秀が逃亡している限り、事件は終わらない。しかし、ここに最悪の事態は回避できたことを誇ろう。逮捕はもう目と鼻の先にあることは変わらないのだから。


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「あっ――んん!」

 細くしなやかな指が佳奈の身体の上を這っていく。触れるか触れないかという絶妙なタッチに、くすぐったさのようなものを感じて思わず佳奈は声をあげた。

「フヒ。可愛い声。私と同じ声なんだけどね」
「ちょっと、待って」
「いいんだよ、怖がらなくて。とっても気持ちいいんだから」

 自分でも浮かべたことのない、ぞくっとするような笑みを浮かべて、『佳奈』が佳奈の身体を舐めまわすように見つめてくる。その怪しい微笑みにみつめられたせいか、それとも突然のパニックを起こしているからか、まるで身体が金縛りにあったように動かない。
 まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。
 そんなことを考えていると、すっと、細くて長い指が胸に向かって伸びてくる。

「やっ!んんっ!?」

 きゅっと乳首を摘まれて、佳奈は思わず声が飛び出す。すると、ますます嬉しそうに微笑んで、『佳奈』が掌を胸全体に押し付けてきた。

「それに、胸も可愛らしい・・・・・・ちゃんと柔らかくて、手のひらにすっぽり収まるのが好み」
「あ、あううう」

 ぐにぐにと、その手の平が胸を揉みしだく。さらには、いつの間にか股間がピタリと合わさっており、そこからお互い熱い感触が伝わってくる。

「あはっ。イヤらしい音・・・・・・んっ」

 嬉しそうにつぶやきながら、『佳奈』はすり合わせるように秘部を押し付けてきた。

「ああ、ほら・・・私のアソコと、あなたのアソコが、くちゅくちゅって、重なって・・・あ、ふあぁぁ」

 『佳奈』の言葉通り、卑猥な水音が部屋に響いていく。執拗に角度を変えたりしながら、何度も何度も佳奈の秘部に自分の秘部をすり合わせてくる。すると、次の瞬間、まるで全身が雷にでも打たれたかのような電流が走った。

「あっ!?んんんんっ!」
「あはっ!本人通しだから分かるのよ。あなたの気持ち良い所が。ほら、クリちゃん同士が擦れて、気持ちいいでしょう?」

 自分とまったく同じ身体の自分とまったく同じ姿の『佳奈』に犯される佳奈。自分でも弄ったことのない指使いやテクニックで佳奈の身体をどんどん昂ぶらせていく。

「これが、クリ〇リスの刺激・・・」
「ひょっとして、クリ〇リスは初めてなの?まさか、自分で弄ったこともないの?」
「そ、それは・・・・・・」
「自慰もしたことがない女の子が、私の腕の中にいるなんてね。本当に可愛いなぁ」

 だんだんと擦り合わせる動きが激しく、そしてリズミカルになって行く。最初は模索するような動きが、快感を目指して一点突破してくるような動きに変わる。

「あっ!あ、あぁっ!だ、ダメ・・・そんな、されたら!?」
「ああ。わかるよ。あなたのアソコが、ビクンビクン痙攣してるのが。気持ちいいんでしょう?だったら遠慮なんてしないで、ほら、イっちゃいなさい。ほらっ、さあ、早く」

 ぐちゅぐちゅと、水音がさらに激しさを増した。同時に下半身がガクガクと震えて、今までに感じたことのない快感に佳奈は戸惑った。まるで身体がお腹に向かって萎んでいくようだ。身体全体が弾けてしまうような快感に、全身をビクビクと震わせたのだった。

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 佳奈ちゃん・・・。
 きみを救う準備は出来た。
 きみと戦う準備は出来た。
 きみと戦う覚悟は出来た。
 きみを救う覚悟は出来た。

 きみが自由のままに生きられるために。きみが本能のままに生きられる社会のために。

 世界とは不条理で、ナニカを得ようとするためにナニカを犠牲にしなければいけない。
 ナニカを欲求すればナニカを代償にしなければならない。
 スポーツ選手であれば青春を犠牲に練習時間を――。
 商社であれば担保を犠牲に資本を――。
 命を差し出し、努力に注ぎ込む。野心が強ければその分見返りだって強い。
 無能の俺にとっては十分な覚悟を、きみを救うために全てを賭けよう。
 つまり、そういうことだ。俺はきみを救う物語に溺愛しているのだ。
 無職で無能の俺に未来などない。光の中にいるのは未来ある佳奈ちゃんなのだ。俺がきみに惚れたのは、俺に持たないモノをきみが持っているからだ。
 輝かしい未来――
 希望ある将来――
 羨む夢――
 それこそ活力。それこそ原動力。
 きみに憧れることで俺は行動できる。勇気ある行動に踏み出せる。
 その覚悟を恐れない力をきみのおかげで持つことが出来た。
 もう、ナニモ恐れない。
 きみは俺のモノ――すべては俺のモノ――

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「フヒヒ・・・おかえり、佳奈ちゃん」
「・・・えっ?」
「待ってたんだ。きみのこと」
「あの、あなたはいったい誰ですか?」
「俺はね、きみを救いに来たんだ」
「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 有森一真が学校から帰宅していると、先に帰ったはずの宮村佳代からの電話が鳴った。

「はい。もしもし」
「一真!今どこ!?」

 なにやら慌ただしい佳代の声に耳が痛い。尋常じゃない慌てぶりを察してしまう。

「な、なんだよ、いったい?」
「・・・佳奈が居ないの」
「はっ・・・?」
「家にいないのよ!玄関に佳奈の靴が片方だけ残ってて、家の中にはいないし、もしかして、誘拐されたんじゃないかって」
「・・・・・・マジ、なのかよ?」

 誘拐?この穏やかな町で誘拐事件が起こり、しかも当事者が彼女の妹だって・・・
 世間の狭さを体験するような、嘘みたいな本当の話を、電話越しに聞くことになるだなんて信じられなかった。
 夢であってほしい現実の話だ。ましてやこれが真実であるなら、佳奈ちゃんはいったいどこに連れ去られたというんだ。

「とにかく、俺も急いでマンションにいく。佳代も落ち着け。大丈夫だから、まずは警察を呼んで――」

 泣きながらうん、うん、と頷く佳代を安心させるように声を掛けながらも全速力でマンションに向かう。

「無事でいてくれ、佳奈ちゃん」

 心中慌てているのも一真も同じだった。

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 彼女を救う――他人が人を救うにはどれだけの労力と時間が必要なのだろう。
 勝手に助かったり、自分で助かる方がよほど楽だ。
 助けを必要としていないというのが最も質が悪く、不変を望むことや永遠を信じることと同類の悪質さだ。
 不幸な現状を幸福と勘違いしていることの罪を認識させなければいけないために、自分を客観的に観られる状況を作り出す。そして佳奈ちゃんが救済信号を出したところで――俺が彼女を救い出す。
 それを可能にするアイテム、『鏡』という道具なのだ。
 この道具は相手のことを想い耽ると、相手に変身する道具だ。つまり、上記にあたる、自分を客観的に観られる状況を作り出す――ということが可能になるのだ。

 俺が佳奈ちゃんの『鏡』になる。それが可能になるアイテムなのだ。

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 目を開けると、『鏡』に映るのは俺の姿ではなかった。コンパクトケースについた小さな『鏡』に映る小顔で整った愛らしさのある幼女の顔。その顔は隣に住む少女、宮村佳奈の顔であり、俺が思い続けた彼女の顔である。
 顔だけじゃない、姿見を見ると、身長から体重、容姿から髪の毛まで何もかも変わっていた。
 綺麗な身体。
 微かに漂うシャンプーの香り。
 物足りなさを覚える肉感。
 細い手足。
 彼女を見て可愛いという言葉が出てくるのは人の本質ではないだろうか。小動物、愛くるしさ、動作、仕草・・・子供を見て自分に足りないモノを称賛する大人たちの感想こそ、純粋で素直な美しさを秘めている。
 子供の時に分からないことを、大人になって失ってしまう。それに気付いた時には遅すぎるため、後悔だけが残ってしまう。
 だから、彼女にはそんなことをさせてはならない。佳奈ちゃんの持つ素晴らしい才能を俺が引き出してあげなければならない。
 誰からも愛されることを武器に、誰よりも快感を得てもらいたい。
 それが彼女にとっての幸せなのだから。

「あ・・・あ・・・私は宮村佳奈。・・・・・・うん、佳奈ちゃんの声になってる」

 声だけじゃない。自分の動作すべては佳奈ちゃんの手足。自分の仕草すべては佳奈ちゃんの行動になる。
 佳奈ちゃんが学校に行っている間にまさか誰かに成りすまされているなど夢にも思わないだろう。商店街に足を向かえば佳奈ちゃんの行動として認識されてしまうのは他者変身者にとって快感ではある。危険との隣り合わせにこそ快楽はあるが、危険は常に最低限に留めておきたいと思う俺にとって、買い物は常にネット通販に任せ、人との繋がりを断つ自分の部屋こそ最低の牢獄かつ最高籠城なのである。
 誰も居ない、誰も来ない環境で佳奈ちゃんのために用意された特別な部屋。大好きな人の為に俺が用意した部屋の中で思い存分才能を開花させることが出来るはず。
 まるでAVを撮影する部屋のように用意された玩具を使って思う存分彼女を快感に落としていく。

「まずは服を着ないとね」

 そのための衣装。『鏡』を使用すれば服装もまとめて変身できるけれど、それは勿体ないと裸の状態で変身した。
 彼女に身に付ける衣装をタンスの中から引っ張ってきて、目を見張る衣装の数々の中で今日の一着を決定する。

「今日はスクール水着にしようかな~」

 当然だが、この『鏡』を手に入れてから俺が佳奈ちゃんに変身しない日はなかった。衣装を集め出し、買っては着てを繰り返し、何巡目になったかは分からない。私服から運動着、制服、メイド服、えっちな下着・・・大好きな人に買っ―プレゼントし―たものを身に付けてもらうことはとても嬉しいことだとわかった。そんな彼女は俺の着せ替え人形のように毎日違った衣装をこの部屋で着ては鏡に映して一人ファッションショーを楽しんでいた。

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 鏡に映った姿をつま先から頭までじっくりと視線を往復させた。スクール水着を着た佳奈ちゃんが部屋の姿見に映っている。

「やっぱり佳奈ちゃんはスク水が映えるね。SKって言っても通じる可愛さがあるよ」

 肌に張り付くスクール水着で身体のラインがはっきり分かる。物足りない膨らみではあるものの、女性用のスクール水着を見につける佳奈ちゃんを観賞しているだけで早くも俺は股間が疼いてくるのを感じていた。
 辛抱ならない。この可愛い佳奈ちゃんの身体でさっそく楽しませてもらうことにしよう。


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 有森一真は彼女である宮村佳代と一緒に登校している。

「うぅ~さみぃ。はやく出てきてくれよ」

 今日も寒空で佳代が出てくるのを玄関前で待っていると、ようやく扉が開いた。

「おっ?」
「有森さん。おはようございます!」

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 佳代よりも先に妹の佳奈が顔を出したのだ。佳代と同じように整った顔をしており、その屈託のない笑顔は一真の凍った表情も氷解させていく。

「元気だね、佳奈ちゃん」
「そうですか?えへへ。友達いるし、今日学校で雪投げっこするから楽しみ!」
「友達がいる・・・学校が楽しい・・・」

 そんな無垢な言葉が返ってくることに一真は衝撃を受ける。
 スマホの普及により悪知恵を身に付けたり、ソシャゲのグループ内でのマルチプレイなど、どうしても孤立を生み出しがちな現代社会で、クラス全体で雪合戦を楽しみにしている佳奈を見て死にそうな気持ちになる一真。このご時世にいったいどれだけの子供が無邪気に遊べているのだろう。

「若かりし頃の俺・・・もう、戻れない」
「馬鹿なこと言ってないで行くわよ」

 佳奈と同じように佳代もようやく一真の前に出てくる。佳代が一真と一緒に登校するように、佳奈にも友達が待っている。

「いってきます~」

 先に佳奈がマンションから飛び出していく。通学路では友達と楽しそうに話す佳奈が一真たちの前を歩いていた。

「おまえの家、佳奈に携帯持たせてないのか?」
「持たせるわけないじゃない。まだ早いわよ。私だって携帯は高校デビューなんだから」
「わからんぞ。現代―いま―なんて携帯持ってなきゃ友達からハブられるかもしれんぞ」
「・・・それは分かるわ。昨日だってそれで喧嘩になったもの」

 生まれた時代が違えば考え方も違う。急速な社会の加速の弊害が宮村家にも起こっていた。
 普段から幼く優しい顔した佳奈ちゃんが喧嘩する姿なんか想像つかない。

「へぇ。あの佳奈ちゃんがね」
「でも、私だって携帯欲しかったけど我慢してたのよ。それを佳奈の時にはもう持たせてもらうなんてずるいと思う」
「おまえな。俺の親なんか携帯なんて無かった時代だ。俺たちが携帯持っているっていう方が親からしてみたら面白くないんじゃないか」
「・・・・・・」
「まあ、俺たちが2万で買えてた携帯が今や10万越えするからな。手を出しづらいよな、あはは・・・」

 冗談で言ったつもりが佳代から返事がなかった。深刻に考え事をしながらも――

「携帯なんか持ったら、危ないじゃない・・・」

 佳代が静かに妹の身を案じた。きっとそれが本心なんだろう。携帯が欲しいと欲を出す佳奈に対して同意ではなく反対するのは、携帯電話の危険を踏まえてのことだ。
 携帯電話だけじゃない、妹に社会の危険性を教えていくの姉の仕事だ。ただ優しく甘やかしているだけでは、本当に佳奈のためにならないことを知っている。
 純粋無垢。それが宮村佳奈という少女だった。一真も佳奈と初めて会った時は、佳奈は自慰行為を知らなかったことを思い出す。


 そう、これは遠い昔――一真たち『鏡』に描いた続編の物語――



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