純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 鏡『あまの神殿』

 パルティアが洞窟に閉じ込められて数日が過ぎた。シリルガレンの元へ『スライム』が帰ってきたのだった。偽カディルとしてシリルガレンに跪く姿に、シリルガレンは興奮を覚えていた。

「おお。戻ってきたか、『シェイプシフター』」
「・・・・・・シェイプシフター?」

 『スライム』にとって聞いたことのない名だった。それは名前なのだろうか?
 誰の・・・?
 誰に・・・・・・?
 名づけられた・・・・・・・?

「おまえの名前だ。数多の『スライム』から俺様はおまえを生み出した。そしておまえは俺様の命じた通り、さらに強くなって帰ってきた」

 いちごから魔力を手に入れ、レスカから体力を手に入れ、カディルから××を手に入れて帰ってきた――

「魔道具から魔族を作れるのは魔を統べる俺様しかいない。 おまえの誕生こそが次の新たなる魔族を生み出す糧となる!最強、最恐、最凶。こんな小さな化物に恐るべしパワーを持たせるとは末恐ろしい。これで再び世界は混沌の世界へ戻る。世界の終末がすぐそこまで来ている!」

 シリルガレンの恐るべき計画。終末を齎す魔道具の魔物の製造の成功。
 変身、略奪、強姦などその計画の一つに過ぎない。
 いずれは強制操作による心の破壊。肉体―うつわ―のみが残り精神の入れ替えを可能にし、望まない結婚を強要する。
 目に見える幸福と不幸の確立。――格差。一方的な幸福。そして不条理な平等。
 目に見えない曖昧さによって救われていた部分がある。
 目で見てしまうと自分がいかに不幸であると思い知らされた。
 知らないことで、世界は平和に見えた。見たくなかった現実を見てはじめて思い知らされる、そこにある罪を。

「ディルは!?」

 パルティアが叫んだ。『シェイプシフター』が答えた。

「・・・死んだ。俺が殺した」
「・・・・・・う・・・ううぅぅ・・・」

 目の前が真っ暗になった。洞窟の中よりも深いどん底にパルティア姫は落ちた。
 その目に涙を滲ませ、霞む景色を拭い取ることができなかった。パルティアはそれでも否定したくて偽カディルを見ていた。彼が死んだことを否定したくて、偽カディルに姿を重ねて救いを求めている姿が痛々しい。

「そんな悲しそうな目で俺を見るなよ、姫」

 偽カディルに冷たくあしらわれたパルティアはその辛い真実を受け入れるしかなかった。
 その現実を見るしかなかった。
 そこにある罪を知るしかなかった。
 世界は平和じゃない。嘘なのだ。

 その嘘の中で、パルティアを救おうとしたカディルを一掃した。
 仲間たちを一閃した。
 殺した。
 コロした。
 コロシタ。
 ダマシタ。
 ナリスマシタ。
 リョウジョクシタ。
 ウバッタ――――。
 ノウリョクヲ。
 サイノウヲ。
 イノチヲ。
 カケガエノナイモノヲ。 

 ――――ウソだ。
 『シェイプシフター』がココに居る意味。
 幸福と不幸が確立された世界――――ウソだ。
 幸福を奪った――――俺―つみ―。
 命令通りに動き、任務のために遂行し、実行してきた。それが幸福・・・・・・自分の存在価値?
 ・・・ホントウに?

「俺はダレだ。何の為に生きている?」
「おまえは世界を混沌の世界にするために生まれてきた」

 シェイプシフターの初めての疑問に答えを出すシリルガレン。その絶望的な事実を突きつける。
 生まれることが他人を不幸にするという存在意義。
 混沌―カオス―の存在。罪そのもの。

「殺すことは誰にでもできる。しかし、生み出すことは俺様にしかできない。まさに魔族の勝利だ」

 誰も生んでほしいと頼んだわけじゃない。
 生きることが罪なのか。
 生まれたことが間違いなのか。
 自分という存在に意味はない。自分という存在に価値はない。
 他人がいくら誉め称えようと、自分の生が恥る存在と思うなら、生きる必要があるのだろうか。

「俺はダレだ。何の為に生きている?」

 もう一度『シェイプシフターは尋ねる。シリルガレンは二度は言わなかった。
 いや、言わなかったのではなく、言えなかった。
 その言葉を紡ぐ前に、『シェイプシフター』の異変を察したからだ。カディルの姿でシリルガレンと対峙する『シェイプシフター』。剣を取り出し魔力を込めて、自らの存在を否定する。

「なにをする!?」
「実際のところ、俺自身もなにをしているのか理解できない。でも、しなくちゃいけない気がするんだ。誰の目に見えることなく、再び影として消えることを俺は望む」
「自爆する気か?何故だ!?最恐を生み出した俺様の夢が・・・っ!どうしてこんなバカなことをする!!?」
「最恐?それは勘違いだ。俺は他人に『変身』するだけの雑魚キャラだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「馬鹿物があぁぁぁぁ!!!」

 世界を混沌へ導く化物を理解できない。それは例え生みの親であっても――


「『混沌と悪魔の終焉‐Chaos Devil End‐』」


 偽りの平和と供に、世界は音を立てて崩れ落ちていった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 洞窟は崩壊した。
 しかし、 瓦礫に埋もれた僅かな空間の中で、『シェイプシフター』は目を覚ました。
 頭の下から温もりと柔らかい肉感を感じる。目を開けると、『シェイプシフター』の顔を覗き込むパルティアの姿があった。
 大粒の涙を今も流し、『シェイプシフター』の頬を濡らしていく。

「死なないで」

 パルティアはそう『シェイプシフター』に言った。

「俺を気遣っているのか?俺はお前の仲間を殺した」

 カディルの姿で告げる『シェイプシフター』にパルティアはまた苦しそうな表情を浮かべていた。

「ええ。だから私はあなたを絶対に許しません」
「・・・意味が分からない。許さない相手を死なせないのか?」

 生きる必要などない『シェイプシフター』に命など惜しくない。しかし、パルティアはその命を見殺しにさせなかった。

「――もう、ディルを失いたくない」
「・・・・。そういうことか」

 子供のようなことをいう姫に苦笑し、『シェイプシフター』は彼の代わりに、パルティアの膝枕で目を閉じた。決して『シェイプシフター』を放そうとしないパルティアに、しばらくした後身体を起こした。

「俺が帰ってきた水路を使おう。洞窟内は道が塞がれ誰も脱出できないだろうし、この地下水を通っていけば迷うことなく出られるはずだ。後はどこまで道が塞がっているか。魔力と体力が持てばいいけど・・・」
「・・・・・・・」

 きょとんと、呆然と『シェイプシフター』を見つめるパルティア。

「どうした?せっかく救われた生命をみすみす手放すつもりなのか?」
「い、いえ!」
 
 我に返ったパルティアに手を差し出し、パルティアは『シェイプシフター』の手をつかんだ。
 二人は魔力で明かりを灯し、下半身を水の中に浸かりながら、洞窟の脱出を試みていた。決して容易くない水路は問答無用で体力を奪い、いつ天井が崩れるかもわからないぎりぎりの状況を二人は足早に進んでいった。
 塞いだ岩や檻は魔力と剣さばきで突破していく。奪った仲間の能力で姫を救うとは幸運にも皮肉なものである。
 『シェイプシフター』はシリルガレンが生んだ最凶の夢。しかし、それは今や最強のパーティの力を持った頼もしいパルティアの護衛になっていたのだった。
 いつ死んでも構わない。
 いま死んでも構わない。
 そんな二人が生きようとしている。
 脱出を試みようとしている。
 何の為に生きている?
 生きて何をするつもり?
 辛い現実を生きて何になる?
 流れに身を任せれば楽に死ねるのに?

「あ――」

 足を取られたパルティアの身体が濁流に流されそうになる。しかし、間一髪のところで『シェイプシフター』がパルティアの手をつかみ難を逃れた。

「大丈夫か?」

 二人ずぶ濡れの格好。否応なく寒さが体温を奪い続ける。しかし――

「はい!」

 パルティアは強く頷き歩みを進めた。

「よし。いこう――」

 ――二人は絶望のなか、希望もなく、必死に生きようとしていた。
 今はそれでいい。
 何故なら、前に進みさえすればいつか必ず光は差し込んでくるのだから――。


 
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 カディルの寝室までやってきた『偽レスカ』。ノックすると間もなくカディルが顔を出し、疑う様子もなく『偽レスカ』を招き入れた。

「カディル!」

 飛びかかった『偽レスカ』に一瞬身構えるが、カディルに唇を突き出す様子はまるで密会する恋人同士のようである。しかし、レスカの顔を両手で挟みキスを防いだカディルであった。

「ン――――」
「なにをするんだよ、いったい」
「だってぇ。カディルとキスしたいなって」
「バカ。場所が場所だろ。その・・・パルティア姫に申し訳ないだろう」

 寝室といえど城内。仲間とはいえ、いちゃついている姿を傭兵たちが見ていたらよからぬ噂が瞬く間に広がるだろう。男性としては賢明な判断で、女性としては尚早な判断だった。

「ふぅん。カディルって私とパルティア姫どっちを取るのかしら?」
「何の話だよ?」

 唇を尖らせて面白くないことを表すレスカ。

「たとえば、私とパルティア姫の二人が捉えられていて、その前に番人が見張っています。カディルはどちらか一人を助けることは出来るけど、そのあともう一人は番人に殺されてしまいます」
「なんだよ、それ」
「カディルならどっちを助ける?」

 IFストーリーを語りながらも期待せずにはいられないレスカ。ベッドに押し倒しながら尋ねるレスカに、カディルは本気で戸惑いを見せていた。

「そんなの決められるわけがないだろ」
「男らしからぬ言葉だね」

 レスカの瞳が鋭くなる。実に面白くない返答だった。

「仲間を救うか、姫を救うかなんて俺にはできない。もちろん、二人のうちどちらかを見殺しにすることも出来ない。殺されると分かっているのに、はいそうですかって言って二つの選択を強要されるのなら、俺は絶対に選択肢を選ばない。それより俺は二人を一緒に助け出す方法を考えるね」

 姫と仲間。異性と異性。好きと好き。
 勇者だからこそ女性が集まるのか、勇者の素質があるからこそ女性が集うのか。
 勇者の血を引くカディルにとってそれは正しい判断である。それが本心であり、それが願い。
 『世界』を救うか、『一人の女性』を救うか、と問われれば現代の勇者であればこう答えるだろう。どっちも救うと――。

「ふうん。そうか、さすが勇者の血を引く者の言葉だね」

 ――たとえ、『一人の女性』を傷つける結果になるとしても。

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「レスカ・・・?」

 レスカはカディルにそれ以上なにもしないまま部屋を後にする。寝ずの番をしている傭兵がいるにも関わらず、カディルの傍には誰も居ない廊下で静まり返り、異質な不気味さを醸し出していた。
 『偽レスカ』はカディルの答えを飲みこむと、化けの皮が剥がれたように歪んだ笑みを崩していた。

「本当に二人を大事にしているのか・・・?それとも、別の思惑があるのか。クスクス・・・その発言に偽りがないか証明してもらおうかな」

 レスカの姿をしていたモノが崩れていった。思い描いた人物像を強く描き、その型に自分を流し込んでいく。レスカから再びパルティア姫へと変身し、ついでに正装まで完璧にこなしていた。

「姫が自ら誘惑して来たらどんな気持ちになるだろうな?仲間と同じ答えを出せるか見物だな、クヒヒ・・・」

 体力が付き、口調が男性口調へと変貌した『スライム』。変身能力と供に進化を繰り返す怪物。

「ディルがいけないんですよ。素直に私を選んでくれなかったから――その血を奪いたくなるんですよ」

 カディルとセックスすることを望み、パルティア姫としてなりすまし再び部屋をノックする。
 記憶も身体も完璧にパルティア姫と同じ状態で、カディルの前に現れた。


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 レスカが自分の秘部から感じる甘美に目を覚ます。直前に『スリープ』を受けて眠らされたことを思い出し慌てて身体を強張らせるも、卑猥な音が響く違和感になにが起こっているのかと上体を起こす。

「んぁ・・ちゅむっ・・ぴちゃぴちゃ」

 そこには誰かがレスカの秘部を舐めとっている姿が覗いて見えたのだ。股座に顔を埋めて濡れそぼったレスカの秘部に舌を這わせて上下に叩いて露を掬い取っていた。その気持ち悪さに性的な条件反射のように身体を捻った。

「なにしてるのよ!やめなさい!」

 レスカが相手の頭を押して身体から引き剥がす。 しかし、体力には自信のあるレスカが普段なら簡単に引き剥がせると思っていたのに、今回の相手は若干の抵抗を示して見せた。しかし、それはレスカが気になった程度であり、すぐに舐めることを止めた相手はレスカの股から顔を覗かせたのだ。

「・・・はっ?」

 レスカはその相手に目を丸くした。思考も止まり、行動も止まった。

「クスクス。なにを驚いているの?」

 それはレスカとまったく顔をした自分と瓜二つの『偽レスカ』だった。自分と同じ顔した者に自分の秘部を舐められていたのだ。

「あなた・・・まさか、パルティア姫だったやつ!やっぱり、『変身能力』があったのか」

 即座に戦闘態勢を取ったレスカ。お互い丸裸の肉弾戦。相手の特殊能力さえわかれば不意打ちは受けない。近接戦闘において実力さえ発揮できれば勝算は高い。相手が『偽パルティア』であれば少なからず抵抗を示しただろう。しかし、レスカにとって自分とまったく外見が同じ『偽レスカ』に変身したことは相手の誤算だった。自分に対する嫌悪感をぶつけられるのだから。

「私に『変身』したことは見誤ったね。はああぁぁ!!!」

 爆裂拳を炸裂させたレスカ。しかし、再び身体のだるさから来る違和感を覚えた。レスカの拳は『偽レスカ』に当たらず、空を切った瞬間隙を見せる。

「避けられた!?」
「まだ分からないの?私は姿を似せただけじゃないのよ」
「なっ!?いたっ!!」

 伸びきったレスカの右腕を抜群の反射神経で掴み、逆に関節技を決められる。レスカの速さについてこられる敵は少ない。単独戦闘ならレスカの前に敵はいなかった。それが今では逆にやられているのはレスカ自身信じられないことだった。
 身体から来る違和感の正体が分かり始めていた。敵の強さの秘訣は決して敵自身の能力が強いわけじゃない。

「私は『変身』した時から、あなたの自慢の体力をもコピーしているのよ」

 外見だけの未完成の『変身』ではない。内面の鍛え抜いた体力をも相手は完璧に『変身』してみせる。そのために『偽レスカ』はレスカを眠らせ、体内の情報を得ていたという。レスカが培ってきた努力も肉体も奪われている。身体から来るだるさや違和感は外見は依然と変わらなくても、内面をすべて無くしてしまった虚無感から来るものだった。

「体力を奪われたあなたは普通の女の子。私と力で勝負しようなんて考えない方がいいわよ?」
「あぐぅ!」

 力押しに壁に追いやる『偽レスカ』。現状を思い知り、偽物に全てを奪われたレスカが弱々しい声を荒げた。

「さあ、見せてもらうわよ。頑なに隠している胸の奥の感情を」

 『偽レスカ』の手がレスカの胸をまさぐる。そのイヤらしい手つきにまるで男性に犯されるかのように身震いするしかなかった。


 
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 パルティア姫を救護したカディルとレスカは一夜だけ城内で休んでいた。一民間である二人にとって名誉ある城内の宿泊に、パルティア姫と城の兵士たちの心遣いに感謝しながら休みを取る。
 そんな中、レスカのもとにパルティア姫がやってくる。

「姫様?こんな夜にどうなさったのですか?」

 夜の警備が付く前、隠れてやってきたように布団をかぶっているパルティア姫が涙目を見せて訴える。

「眠れないの」

 その顔はまるで悪夢を見て怖がっている子供のようであった。カディルと供に救出したとはいえ、シリルガレンに誘拐されてすやすや眠るほどパルティア姫は神経が図太くない。普通の少女と同じ感性なのだ。

「一緒に寝てもいい?」
「私でいいの?・・・どうぞ。私も今寝につこうとしたところだから」

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 レスカは優しく微笑みながらパルティア姫をベッドに案内する。姫が普段使っているベッドよりは小さいものの、ツインベッドの大きさは優にあり、二人で眠ったとしても落ちることはなさそうだった。
 二人はベッドの中央に寄り添い顔を合わせて目を閉じる。布団を頭まで被り眠るパルティア姫をレスカは抱きしめ、夜が明けるまで供に寝に就く。
 ・・・はずだった。

「『Bind』」

 パルティア姫の口から漏れた詠唱魔法がレスカの耳にはいる。
 途端にレスカに襲い掛かる身体の違和感。 白魔法『バインド』の効果で、身体が硬直していくのは、魔法の効果だけでは決してなかった。

「どうして・・・姫様・・・」

 口が動かず、瞳だけ動かしパルティア姫に訴える。布団を被るパルティア姫の表情は、姫という立場が浮かべるには相応しくない卑しい笑みを浮かべていたのだった。

「くくく・・・。騒がれでもしたら困りますからね。少しの間我慢してもらいますよ」
「―――っ!!?」

 レスカは格闘家。魔法耐性は無きに等しく、『バインド』ですら有効だ。パルティア姫の手が衣服を脱がしていくことを、レスカはじっと耐えているしかなかった。


 
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「ああ・・・」

 いちごが恐怖のあまりに戦慄く。パルティア姫だったはずの姿が一期の目の前で姿を変え、形を変え、別のモノになろうとしていた。
 その正体を心絵いちごが理解するのに大して時間はかからなかった。

「わたし・・・私がいるです・・・」 

 パルティア姫だったモノが自分と瓜二つの顔に変わる。衣装はパルティア姫のものそのままだったが、身長や身体のつくりが若干変化しているのを感じた。

「胸がちょっと苦しいですね。童顔の割りに大きい胸ですこと」

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 声もこころのものへと変わっており、パルティア姫の面影はなくなっていた。ここにいるのは心絵いちごが二人という状況に、いちごが悲鳴をあげようとした。
 しかし、刹那に飛び込んできた偽いちごがいちごを壁に押し付ける。頭を強く打って悶絶するいちごをそのまま床に捻じ伏せた。

「がぁっ!!」
「だまるです。誰かに呼ばれると面倒になるだけです」
「でも、侵入者をみすみす逃すわけにはいかないです」
「なら戦うですか?あなたと同じ能力をもつ私と?」

 いちごの役割分担は白魔法。回復役。
 戦闘力はなく長期戦になるのは必須だが、相手も同じ白魔法を得意とする相手だった場合、それこそ泥仕合になる。 
 しかし、いちごに勝機があるとすればそれしかない。もともとこれは勝負にならなくても良い試合なのだから。

「毒化による状態異常を狙っての長期戦しかないです。でも、その間に誰かが気付いてくれさえすれば――」

 城内にパルティアの偽者が現れたことを知らせることが最も重要なのだ。未だ本物のパルティア姫はシリルガレンともとに捕まっているに違いないのである。

「一つ勘違いしているみたいですけど、私はあなたと同じではないですよ?」
「えっ?」
「私は自分の能力にあなたの能力を付与しているです。だから、あなたと互角でもないですし、あなたに劣るはずがないです」
「そんな・・・あぐぅ!」
「そうじゃなければ、白魔法のあなたにこんな技は使えないです!」

 片手で軽々といちごを持ち上げた『偽いちご』がそのまま力任せに床に叩きつける。いちごの身体がくの字に曲がり、床を転がり壁にぶつかった。

「がふぅ・・っ!強いです・・・」

 自分と同じでありながら自分より強い存在と対峙することの難解さ。さらにいちごは丸裸にされている状態であり、体力の消耗は激しい。回復魔法が一度では間に合わないほどのダメージを受けていては、誰かが異変に気付くまでいちごの体力が持たないのでは意味がなかった。

「さて、続きを始めるです」
「つ、つづき・・・?」

 『偽いちご』にとっていちごの体力を少しでも消費させることが狙い。そうでなければパルティアの姿を変えていちごに変身した意味がない。

「あなたの方が姫よりも性開発が進んでいるみたいだし、気持ちよさそうに喘いでいたですしね。あんっ、あんって良い声で鳴いてました」
「あっ、ぁぁ・・・」
「だから、私も気持ちよくなりたいです。あなたと同じ快感で、あなた以上にイヤらしい声で。あなたを犯してやるです」

 『偽いちご』がパルティア姫の衣装からショーツを脱がし、いちごとまったく同じ性器を露出させる。しかし、皮を被っているクリ〇リスが肥大化し、みるみるうちに男性サイズのものへと化ける。それはクリ〇リスではなく、男性の逸物に変わってしまった。心絵いちごという少女の身体におち〇ち〇が生えてしまったのだ。
 成人男性のように亀頭を剥き出しに勃起している様子は、いちご本人を今にも襲いたくて仕方ないと言わんばかりにそそり立っている。
 狂気を向ける逸物と狂喜を向ける『偽いちご』に完全に足がすくんでしまっていた。

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「ぶっつぶしてやるです!覚悟するですぅ!」 

 いちごが助けを呼ぶ前に、『偽いちご』が襲い掛かるのが先だった。


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 カディルはパルティア姫の危機を聞きつけ、すぐに仲間たちと深淵の洞窟へむかっていた。

「臭気と泥濘はいかにもシリルガレンの好きそうな場所だな。気を付けて進むぞ、みんな」
「早く姫様を救って脱出しましょう!」

 一行は敵を倒しては回復しながら確実に奥へと突き進んでいく。そして――

「皆さん!」

 一室に捕らわれていたパルティアと再会を果たしたのだった。

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「やったぁ!姫様、無事?」
「ええ。皆さんのおかげです」
「そうとわかればこんな場所からすぐに脱出しましょう」
「待て」

 脱出アイテムを使おうとする武闘家レスカにカディルが一つ腑に落ちないことを訪ねる。

「シリルガレンはいないのか?」

 パルティアを浚った宿敵、シリルガレンが姿を見せない。そんなはずがないとカディルが何かを予感する前に、レスカは先を急ぐように促した。

「いないんだからこの機会をみすみす逃すことはないわ。今は姫を安全な場所に連れていくことが先決でしょう?トイレに行っていた間に姫がいなくなったことに気付けばシリルガレンも相当焦るでしょうね!」
「フフフ・・・」
「そうなのか・・・ほんとうに・・・?」

 疑問を残したままアイテムの効果が発動し、カディル達は深淵の洞窟から消えていった。

「ンンンぅ!!!!」 
「ガーハッハッハッハッハ!!!後は任せたぞ、『偽パルティア』よ!」

 ――その隣の部屋で本物のパルティアとシリルガレンを残したまま。

 
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 パルティア姫が統べるシュガーツイス国は、今日も平和な一日を過ごしていた。
 パルティアもまた趣味のケーキを作り、兵士たちを喜ばせていた。

「そうだわ。誰かディルにケーキが出来たことを教えてあげてほしいわ。きっと彼は私の作ったケーキを喜んでくれるはずです」

 パルティアもまた姫でありながら、一人の少女。一人の少年カディルに想いを寄せる恋する乙女なのである。

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 ”――カディルへ

 お城へ遊びに来てください。ケーキを作って待っています

 パルティアより――”


 早速手紙を描き、伝書鳩に手紙を渡す。しかし、手紙を渡すはずの伝書鳩から受け取ったのは、催涙ガスだった。不意打ちを受けたパルティアはその場で意識を失い、ツイス国は暗雲に包まれた。

「ガーハッハッハッハ!!!」

 聞こえてくる闇の王の高笑い。兵士が上空を見上げると、巨大な飛空艇がお城を押し潰そうとしているところだった。



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