純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ: 大人のための催眠術

 佐渡明美は自分の部屋で物思いにふけっていた。
 美津絵は本気であんなことを言っていたのだろうか。
 あんなに嫌っていた水田のことを恋人にするなどということなどありうるのだろうか。
 おかしい、絶対に何かがおかしい。このままにしておいてはいけない。
 最近何か変わったことはなかったか、徹底的に調べなくちゃ…。あ?
 真剣な考察が甘美な感覚にじゃまされて前にすすまなくなる。

「あ、ふうん…。なんで?」

 とっても気持ちがいい。
 しばらくしてやっと明美は自分が知らぬ間にオナニーをしていることに気付く。
 人差し指と中指がスカートの上から股間を摩擦する。片方の手も服の上から乳首をもてあそぶ。

「はあ、あ、あ、あん、きもちいい…。はあ、はぁ…。」

 自分が何を考えていたかも忘れてオナニーにのめりこんでいく明美。
 何故か、あっというまに高まりが訪れてしまう。

「あ、あううう、いくぅん…。」

 服の上から、こすっただけで信じられないほど気持ちよくイけてしまった。

「も、もっと…。」

 もはや快感のとりことなった明美はさらなる気持ちよさを求めて服を脱ぎ始めブラジャーとパンティーだけの姿になる。


 明美の携帯が鳴ったのは10分ほど前のことだ。
 美津絵から明美たちの電話番号を手に入れた水田はさっそく佐渡明美の携帯に電話を入れたのだった。
 明美は自分の部屋にいた。

「もしもし…?」
「あ、水田です。」
「水田さん?え?」

 突然の水田からの直接の電話に一瞬、絶句する。いろいろと聞かなければならないことはあるのだが、こういきなりでは対処の仕様がない。
 水田は彼女に答えるヒマをあたえず、赤いボタンを押すと暗示を吹き込み始める。

「あなたは水田さんと砂川さんのことを考えていましたね。二人のことを考えれば考えるほど君の身体はとても敏感になっていく。そして、手が勝手に敏感なところをまさぐってとても気持ちよくなってくる。何よりも魅惑的な感覚にあなたは心を奪われてしまう。そう、あなたはひたすら気持ちよさを追い求めるだけの女になってしまいます。感じやすくなったあなたの身体はあっというまにイってしまう。とても気持ちよくイってしまう。でもあなたはまだ物足りない。下着姿になって下着の上からおま○こや乳首を刺激してみましょう。もう信じられないくらいの気持ちよさを味わうことが出来る。もう、何もいらないというほどの快感と幸福感を味わえますよ。もう病み付きだ。そして、十分にイったら、この番号に電話します。かならずメモリーしておいてください。電話するともっと気持ちいいことが君を待っている。この電話があったことをあなたは忘れてしまう。でも今言ったことは必ずそうなる。必ずそうなる。では。」


「……はあああぅん…。また、またイクぅぅん…。」

 あれから2時間、ベッドの上でその白く豊満な身体をくねらせ明美はイきつづけていた。
 パンティーは愛液でぐしゃぐしゃになり、ブラジャーも汗でじっとりとなっていたが、下着ごしにあたえられる刺激は決して麻痺することはなく、いくらでも彼女を高みに上らせるのだった。
 十数回エクスタシーに達した後、彼女は携帯を手に取りどこかへ電話をかけた。
 意識はすでに朦朧としているのか、その目には人の意志といったものは感じられない。

「もし…もし…。」
「ああ、明美ちゃん。もう十分に楽しみましたか?」
「は…い…、でも、もっと…。」
「そう、もっと気持ちよくなりたいねえ。じゃ、もっと気持ちよさそうなものを思い浮かべながらオナニーしてみよう。」
「キモチヨサソウな…もの?」
「たとえば、そう。でっかいちん○。とっても大きなちん○をくわえている自分を想像してみて。ほらとっても気持ちよくなってきた。」

 水田の言葉に従い目を閉じ、口をおおきくあけ、ちん○をくわえ込んだ自分を想像しながらあえぎ始める明美。

「はあ、ああ、うくぅ…。」

 水田はMCフォンの赤いボタンを押すとさらにつづける。

「ちん○をくわえているところを想像しながらのオナニーは、限界を超えた気持ちよさだ。あなたはもう、毎日これなしでは耐えられなくなるぐらい気に入ってしまう。そしてくわえているうちにこれは水田さんのちん○と思えてきてしまう。なめれば、なめるほどそう思えてくる。やがてそれは確信にかわってくるよ。」
「はんも、れろ、れろ、おいひい、れろ、はうん…。きもひいい…。」

 明美の大きく開いた口の中で舌が激しく動いている。
 彼女だけにしか見えない巨大な男根を舐めることでふるえるほどの恍惚が身体全体にしみわたってくる。

「はあ、あへみ、ひあわへ、ひあわへええ…。あくぅ!」

 いままでをさらに超えるエクスタシー。身体だけでなく心ごとイく快感に打ち震える。
 水田の暗示はおわらない。

「そして、あなたは想像しているちん○が本当に水田さんのものかどうしても確かめたくなってくるよ。それにはどうしたらいいだろう。水田さんにオナニーで愛液がたっぷりしみこんだパンティーと君の香りを沢山吸ったブラジャーをプレゼントしたらきっと確かめさせてくれる、そうに違いないと君は思いつく。明日会社へいったらきっと確かめよう。もう、そうしたくてたまらない。かならずそうなる。じゃ最後にもう一回とても気持ちよくなってから元の状態に戻るよ。1,2,3!!」
「あくうううー!!!!」

 明美はベッドに倒れこんだ。
 数分後、目を覚ました明美は携帯を持ちながら下着姿で眠り込んでいたことに気付き、一人で赤面する。

「やん、私、何してたのかしら。」

 水田の電話はすでに切れていた。彼女はもちろん水田から電話があったことなどぜんぜん覚えていない。

「うわ。パンティーがびしょびしょになってる。着替えなきゃ。ブラジャーも。プレゼントしなきゃいけないから、大切にね。なにかいい箱ないかしら…。」

 明美はパンティーとブラジャーを脱いで全裸になると、脱いだ下着を丁寧におりたたむ。かわいい箱をみつけて下着を入れ、きれいにリボンがけをするとうれしそうに笑った。

「明日はこれで、ぜったい真実をつきとめてやるんだから。」

 美津絵の変化の謎の追及が水田のちん○の追求へと彼女の頭のなかですりかえられてしまった。
 友情のため、自分のため、是が非でも水田のちん○をひっぱりだし、自分の口で試さなければ。
 今、彼女は本気でそう思っている。


 次の日、大切な「プレゼント」をしっかりともって出社した明美は、美津絵が外出した隙を見計らってデスクに座っている水田に接近する。

「あの…、水田さん。」
「はい?なにかな。佐渡さん。」

 心の中では来た来たとほくそえんでいるのだがもちろん表情にはださない。

「ちょっと、美津絵…砂川さんのことで、話があるんです。私と一緒にきていただけませんか?」
「あ、ああ…。いいけど…。」

 明美にみちびかれるまま、ビルの屋上へとやってくる。この時間帯には、まず人はこない。

「で?何?話って。」
「私、どうしても確かめたくて、その、水田さんのち…。」
「え?なんだって?」
「水田さんのちん○を見せて欲しいんです。ただとはいいません。これ、差し上げます。」

 両手でさっと水田に「プレゼント」を差し出す。
 はじめて告白したときのようにドキドキと胸が鼓動する。
 水田は受け取ると箱を眺める。それだけでも何故か明美はとてもうれしくなり、心の中で「やった!」と声をあげる。
 水田は箱をあけ、しっとりと濡れたパンティーとよれよれになってしまったブラジャーをとりだす。
 
「ほお…。」

 そしてうれしそうに匂いをかいだ。
 それを見るだけで明美は胸がきゅんとなり、身体が興奮してくる。水田がそういう風に暗示をかけておいたのだ。
 水田がくんくん匂いをかぎつづけていると、明美もだんだんたまらなくなってくる。

「あ、ねえ水田さん。見せていただけますか。水田さんのち…ん○。見たいの。どうしても。お願い。」
「くんくん、ああ、いいにおい…。え?あ、そうだなあ。これに佐渡さんの体温つきパンティーがついたら見せてあげてもいいかなあ。」

 明美の顔に歓喜の表情が浮かぶ。ものすごい速さで今はいているパンティーを引きおろし水田に渡す。

「おほおお、あったかい。すりすり。いいなあ。明美くんの体温…。」
「ああん、たまんない。見せて、早くうう。」
「よしよし、ほら、どっこいしょ。」

 ズボンとパンツをおろし、その大きなイチモツを明美の目の前にさらす。
 すでに半分勃起した状態だ。

「あ、ああ…。」

 明美が感動にうちふるえる。自分が想像していたあのちん○と寸分たがわぬ水田のちん○。

「す、て、き…。」

 うっとりと目をほそめ、おそるおそる両手をさしだしさわってみる。
 口が自然に大きく開く。

「おおきい…。」

 とてもうれしそうに口いっぱいにそのちん○を吸い込んでいく。

「じゅっぽ、るろるろ、じゅっぽ…。」

 明美は首を前後に振り始める。激しい鼻息の音。

「おおおお、きもちいい。ああ、舌がからみつくうう…。」

 水田も大満足だ。
 仁王立ちになった水田の股間に明美が顔をうずめている。すでにフェラチオは口だけで行い、あいた両手は自分の乳首とクリ○リスをこすり付けている。

「はふ、はふ、はふん…。」

 かなり興奮していることが水田にもつたわってくる。
 明美は目を閉じて前後左右にくねくねと首を動かす。

「お、う、うう、で、でるう。ぴゅぴゅっ!」

 予想以上の気持ちよさに水田は瞬殺されてしまった。

「はぐ、は…。じゅ、じゅるる…。こっくん…。」

 明美はおいしそうに水田の精液を吸い取ると飲み込んでしまう。

「あ、あ、あ…。」

 自分の体の中に水田の精液が吸い込まれていく。それと同時に強烈な感動がわきあがってくる。

「うれ…しい…、しあわせぇぇ…。あ、うく、いく、う、うう、う…。はぁぁぁ…。」

 身体を何かとてもやわらかいものでつつまれたような、すーっと意識が遠のくような静かだがとても気持ちのいい絶頂に明美は身をまかせる。
 水田の精液をのみこんでオーガズムに達した後、目をあけたまま陶然としてよこたわっている明美。
 目からはうれし涙がながれている。この震えるような幸せと快感をじっくりとかみしめながら。
 水田はそのうしろにすばやくまわりこみスカートをめくりあげると、いきなり挿入する。
 水田の得意技、射精後即挿入。

「ひいいいいいー!!」

 突然の挿入の驚き。しかし、頭より先に身体があっさりとそれをうけいれてしまう。

 ぐい。と、まず大きく突き入れる。

「ひいいん。お、おっきいのが…そ、そんな奥まで、はいってるうぅ!」

 そして大きく引く。身体の中身が全部吸いだされてしまうかのようなその「引き」に明美の身体がぶるぶると震える。

「気持ち…いい…。こん、なの、はじ…めてぇ…。」

 身体がふわふわ浮いているようだと明美はおもった。そしてそんな平和を打ち砕くように規則的に、どすん、どすんと超弩級の快感が股間にうちこまれる。

 「ああ…、すごい、もっと、もっとぉー。」

 腰を自ら振って水田をもとめる自分を明美はなにも不自然だとは思っていない。
 こんなに気持ちいいことのためなら何だってしちゃう。明美の中でもうそれは当然のこととなってしまった。
 オレのちん○にモノをいわせればどんな女だって落ちるぜ-水田は明美を落としたことで完全に自信を取り戻した。
 明美の中でふたたび発射したあと、その大きなイチモツをすっぽんとひきぬいた水田は明美をそっと抱き寄せキスをする。

「もう明美はオレのものだよ。」
「う、うれしい。すきぃ。」

 明美にしがみつかれて水田もうれしくてたまらない。
 こうして二人目もやすやすと落ちた。


「マー君。はい、あーんして。」
「ぱく。うん、おいしい!」
「あはぁん。」

 いつものように水田は美津絵と昼食をとっている。
 今日からは、もうひとり-明美がそれにくわわっている。明美は美津絵と反対側にすわって何も言わずあつい視線を水田におくっている。
 やがて、そっと水田の手を両手ではさむとうっとりとした目でほおずりしはじめる。

「はあ、マサユキさんの手…。」

 手をそのままゆっくりと自分の胸元へそして、服の中へと差し込んでいく。
 ブラジャーはつけていない。「今日の分」はもう水田にプレゼントしてしまったからだ。
 水田の手が乳首の先にふれると明美は「はああああ…」とせつないため息をついて目を閉じる。
 水田は自ら手を動かすことはしていない。明美が自分でぐいぐい押し付けるのにまかせたままだ。
 そして水田は明美の、そのやわらかい乳房となんともいえない消え入りそうな、あえぎ声を楽しんでいる。
 そんな3人の様子を不安そうに眺めている美紅。
 水田は美紅に視線を向けることなく美紅の様子を観察しながら考える。
 3人目はどうやって落としてやろうか、と。




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「ねえねえ、君たち今晩、ヒマ?食べに行かない?おいしいとこ見つけたんだ。どう?」

 中堅商事会社の人事部に勤める水田正之は今日も懲りもせず同じ部につとめる3人娘に声をかけていた。

「は、はあ、わたしは、今日はちょっと用事がありますので…。」

 3人のリーダー格ともいえる砂川美津絵は一応の作り笑顔でなんとか当たり障りなくごまかそうとしている。

「あ、そう、じゃ佐渡君は?」
「わたくしもぉ、そのお…、私もちょっとぉ。今晩はお友達とパーティーの約束が…。もうしわけございません。」

 やや派手でボーイッシュな美津絵とは対照的に上品でおっとりした佐渡明美だが、嫌なものは嫌らしい。

「じゃ、真行寺君。どう?どう?普通に行けば2万円ぐらい払うところをおごるって言ってんだよ。」
「すいませーん。水田さんと私二人きりで行くのはちょっと…。先輩たちと一緒に行くなら、別にいいんですけどぉ…。」

 入社1年目の真行寺美紅は、ぽーっとした天然系。あまり前に前にとしゃしゃり出てくるタイプでもないが決して気が弱いというわけでもない。

「そっか、残念だなあ。じゃあ、また今度ね。」
「え、ええ。機会があれば。ね。」3人ともホッと胸をなでおろす。

 あまりのしつこい誘いに断りかねて、4人で一緒に食事をしたのが先月のこと。
 いやいや行ったにもかかわらず、水田一人が合コンのりでおおはしゃぎし、3人は散々な思いをしたのだが、それから味をしめたのか、ことあるごとに誘いをかけてくるようになった。
 とりあえず、なんとかここまでは断ってきたのだが、これからも続くかと思うと3人ともうんざりしてしまっている。

「ったくもう。勘弁してくれってんだよなー。」

 美津絵の気勢があがる。
 水田にさんざん誘われた気分直しに3人で飲みに来ているのだ。

「そうよねえ。義理で一回お付き合いして差し上げただけなのに、あんなに調子に乗られたんじゃねえ。だいたい顔が気持ち悪いしぃ。全体に脂ぎってるしぃ…。ああ、やあだ、ぞっとするわぁ…。」

 トイレでゴキブリをみたような表情で明美がつぶやく。その上品な顔立ちからはちょっと想像しにくい悪態がおっとりとした口調で次々と口をついて出る。

「だよね。チビ、デブ、ハゲと3拍子そろってる上に話も「オレが」「オレが」ってつまらない自慢話ばっかし。家帰って鏡見てみなよ、って言いたいわよねえ。美紅はどうお?」
「いやですうう。イケてないにもほどがありますうう。気持ち悪いー。おもいだすだけでも鳥肌たっちゃうう。」
「おおい、お前がいちばんきついよ。」

 美津絵のつっこみに3人は笑いあう。


 彼女たちは水田をこきおろしておおいに鬱憤をはらしていたのだが、その時斜め後方にすわっている男の肩がブルブルと震えていることにはまったく気付かなかった。
 彼女たちに断られた水田がストーカーよろしく、あとをつけてきたのだが、ここまでひどく言われるとは彼も思ってはいなかったようだ。
 オレも男としてはそれなりのものだと彼は自負していた。
 風俗へ行っても女の扱いはうまい方だ。その大きなイチモツは彼の自慢でもあったしみんな驚いてくれた。
 決して男前とはいえないが、自分には女を引き寄せる力があると信じていた彼にとって3人娘の、それもとくに純真そうな美紅のひとことは強烈にこたえた。
 彼はこの3人には思い入れが強かっただけにダメージが大きい。

 学生時代、水泳で鍛えたという砂川美津絵は体育会系らしくすこしぶっきらぼうであるが水田はそんなところも結構気に入っている。
 なんといってもショートカットがよく似合う美形だし、チアリーダー張りのメリハリのある締まったボディがそそるのだ。

 佐渡明美も決して派手な美人タイプではないが、これまた捨てがたい。
 少し垂れた目とおっとりした感じが見ているだけで心が癒される。いっぺんでいいからその膝枕で眠って見たいと思わせる。
 あまり露出はしていないが、その白く長い美脚と意外にボリュームのあるバストを水田は決して見逃してはいない。

 真行寺美紅は、もう一つポイントがずれた娘だ。
 「はあー、そうなんですかぁー。」と気の抜けた返事をするたびに相手がガクっとコケてしまいそうになる。
 しかし、どんなに怒っていても彼女の前では、ほほ笑まずにはいられない。
 何よりも顔がかわいい。人形のような見事なストレートの長髪と無邪気な瞳に魅了される。
 また、こう見えて実は結構、毒をもった性格なのだが、そういったところも水田にはたまらない。
 その小柄な身体をギュッと抱きしめて見たいと何度も夢想した。

 3人のうち、誰とでもいい、つきあって出来れば結婚まで持ち込めれば…。
 30を迎えてまだ素人童貞である彼は本気で結婚のことを考え始めていたのだ。
 同僚である3人のうちの一人を落とすことは決して高いハードルではないと彼は考えていた。
 本気を出せば女なんて簡単におとせる。そんな自信がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。


 3人娘が帰ったあとでそーっと店をでて、ふらふらした足取りでなんとか家にたどり着いた。
 独身男性の一人暮らし。狭い部屋にAV機器だけはやたらと豪華なものが置いてある。
 ベッドの上に座り込むとがっくりと肩をおとす。
 もうテレビをみて気を紛らすぐらいのことしか出来はしない。とはいえ内容などはまるで頭にはいってこない。
 最近入ったばかりのケーブルテレビのチャンネルをただ替えて行くだけだ。
 数え切れないほどのチャンネルがあるので、ピッピッと画面を切り替えていくだけでも結構時間が掛かる。
 リモコンを押すのにも疲れて、ちょうど止まったところがショッピングのチャンネルだった。

「さあー、次もすごい商品が出てきますよう!!」

 真ん中にやたらと派手なスーツをきた威勢のいい中年男がひとりと左右に司会者らしき男女のタレントが映っている。
 真ん中の男が説明して両脇のタレントが驚いて見せるということになっているのだろう。

「はい!次、これ見てください。わかりますか。」
「えっと、携帯電話のようですけど。」
「そう!これが以前ご紹介して大評判だったMCフォンの新製品!!」

 おおおーっと効果音のどよめきの声があがる。

「ああ、あのMCフォンですか。あれ、オレも欲しかったんだよなあ。」
「私も電話かけたんだけど、もう売り切れちゃったって。」
「そうでしょう。このマインドコントロール社のMCフォンは作るのに非常に精密な技術を要するのでどうしても数に限りがあるんです。その代わり、機能はものすごい。」
「これって、相手に電話をかけるだけで思い通りに出来ちゃうんですよねえ。」
「そう、今回、操る能力がさらに強くなって新デザインで新発売。」
「ねえねえ、でも本当に誰でも操れるの?わたし、こんなので絶対操られないわよ。」

 女性タレントが挑発的な言葉をなげかける。まあ、台本どおりの進行なのだろうが。

「おやおや、じゃあ試して見ましょう。」案の定、挑戦を受けて立つ中年男。
「キミカさん、ちょっとスカートめくって見せてください。」
「なーに、言うんですか。そんなことできるわけないじゃない。」オーバーに女性タレントがこたえる。
「そうですよねえ。普通はたのまれてもそんなことしませんよねえ。ところが!!」
「え?」
「これを使えば、そんなこと簡単に出来ちゃう。」
「ほんとうですかああ?」うたがわしげに司会の二人が声を上げる。かなりわざとらしい。
「じゃ、これで電話をかけてみますよ。ぴ、ぴ、ぴ、と」
「あら、私の携帯が鳴ってるわ。はい、もしもし。」
「はい、この携帯からキミカさんの携帯に今つながりました。ここまでは、普通の携帯電話と同じです。もしもし、聞こえますか。」
「はい、よく聞こえます。」
「じゃ、これからさっそく操って見ますね。みなさん、この電話のここんとこ、ここをよーく見てください。カメラさん、私の手もとをアップにして。わかりますか、ここに赤いボタンがあるでしょう。」
「はい、確かに携帯の横のところに赤いボタンがあります。こんなの普通ついてませんよね。」と男性タレントが相槌を打つ。
「これが、このMCフォンの特別なところ。これを押しながらしゃべると、その言葉どおりに相手が操られちゃう。いいですか、これがMCフォンの最大の特徴!じゃ、押しながらしゃべっちゃいますよ。」

 中年男は赤いボタンをグッと親指で押すと話しはじめる。

「キミカさん、あなたはスカートをめくって私にパンツをみせたくてしょうがなくなる。私にパンツをみせるととってもうれしい。わかりましたね。」

 男は押していたボタンから手を離す。

「今、話した言葉はキミカさんの耳には入ってないんです。直接、脳のなかに入っちゃうんですね。キミカさん、私が今、何を話したか覚えてますか?」
「え、なあにい?」

 と答えた女性タレントはすでにスカートをめくりあげて男のほうを向きパンティーを見せびらかしてうれしそうにほほ笑んでいる。

「ありゃ、キミカさん、なんでパンツなんか見せてるの?」
「だあってー、見せてるとなんだかうれしくなっちゃうんだもん。だめ?」
「いや、いいですよ。やあ、なかなかいいもんだ。」大きな拍手と喚声。
「いやあ、たいしたもんだ。こりゃ、びっくりしたわ。」男性タレントが不自然なまでに驚いてみせる。
「もう、そろそろ解いてあげましょうかね。元に戻すときはさっきと同じように、赤いボタンを押しながら電話で『解除します』っていったら操りが解けちゃうんです。」男は女性タレントの暗示を解いてやる。
「あ、あらあ、私なんでパンティー見せてんの、やだああ、はずかしいい!!」笑い声の効果音。
「すごい、すごい、こりゃあ僕も一つ欲しくなっちゃったなあ。でも、お値段が、ねえ。」
「そうよねえ。こんなにすごいんだもの、ちょっとやそっとの値段じゃないわよねきっと。」

 操られたショックからあっさりと立ち直った女性タレントがしらじらしく不安そうな顔で値段の心配をする。

「いえいえ。いいですか、このすごい機能のMCフォンと携帯ケース、そしてこの素敵なストラップまでついて、なんと、よく聞いてくださいよ、なんと98万8千円!!」
「やすいわ!!」「やすい!!」くちぐちに「やすい、やすい」とささやき声の聞こえる効果音。
「そんなに安いんだったら僕、いますぐ買っちゃいます。それ、ください。」
「まあまあ、そんなにあせらないの。もうしわけないんだけど、さっきも言った通り、数に限りがあります。応募が多いときは抽選になりますんでね。お申し込みはお早めに。今から受け付けます。画面に出てる番号に電話してね。」

 気が付くと水田は受話器を取り上げてその番号をプッシュしていた。


 果たして本当に多数の応募があり抽選があったのかどうかはわからないが、ともかく水田はMCフォンを手に入れることが出来た。
 不思議なことだがもういちどあのショッピングチャンネルをみようといくらチャンネルを探してもみつからない。番組表にもそんな番組はのってはいない。
 まあ、MCフォンが実際に自分のところに届いたのだから水田にとって、そんなことはもうどうでもよかった。
 なけなしの貯金をはたいて買ったMCフォン、手に入れたら早速試したくなるのが人情だ。
 箱からとりだして携帯の電源を入れる水田。さあ、かけるぞと意気込んで、自分は女の子の電話番号など一つも知らないということに気が付いた。
 とりあえず、電話番号をあつめるところから地道にはじめなければならない。


 かけるあては今のところはないのだが、水田はMCフォンを持って出社する。
 人事部に勤める身なのだから、社員の電話番号ぐらい簡単にわかりそうなものだが、プライバシー重視の昨今はそういった情報に関するガードは固く人事部員といえどもなかなか知ることは出来ない。
 無理をすれば見られないこともないが、バレれば間違いなく首が飛ぶ。そこまでのリスクを犯すつもりもない。
 何かいい方法はないものかとぼんやり職場をながめる。
 書類を持って忙しく動き回る男性社員や、電話の応対にいそがしい女子社員たち。

「あ、そうか。その手があった。」

 欲が絡むと知恵が出る。
 この人事部では直接外からかかってきた電話は女子社員がとることになっている。
 そしてそのほとんどはあの3人娘のうちだれかがとっている。
 外線からかければ彼女たちのうちの一人が出てくるというわけだ。
 とりあえずだれでも一人釣り上げればあとは芋づる式に手に入る。
 自分の思いつきにひとりニヤつく水田。
 そっと席をぬけだすと、トイレに入りMCフォンで人事部直通の番号をプッシュする。

「はい、毎度ありがとうございます。南西商事人事部の砂川でございます。」
「もしもし、水田だけど。」

 その声を聞いたとたん、美津絵はイヤそうに眉をひそめる。

「え?水田さん?なんで水田さんがで…。」

 水田は間髪をいれずMCフォンの赤いボタンを押し、暗示を吹き込み始める。

「君は僕が電話していることを不思議に思わない。そして電話を切ると君は自分の携帯番号を書いたメモを僕の机の上においておく。おいてしまうと君はそのことを忘れてしまう。これからは僕を見ても、僕に話しかけられてもイヤな感じはしなくなる。それどころかなんだかうれしくなってしまうよ。僕にとっても好意をもってしまう。」

 と、こんどは赤いボタンを離してしゃべりかける。

「やあ、ごめんごめん、なんか間違えちゃったみたい。いそがしいのに、悪いね。」
「いいえ、いいんですよ。うふ。それより早く席に戻ってきてくださいね。」

 さっきとはうってかわって美津絵はやさしい声でうれしそうに受け答えをする。
 美津絵は電話が切られると、たのしそうに鼻歌をうたいながらメモに何かをさらさらっと書いたかとおもうと水田のデスクの上に置く。
 再び自分の机に戻ると何事もなかったかのように、仕事をつづける。
 水田が部屋にもどってくると、美津絵がにっこり笑って他の人に気づかれぬよう小さく手を振ってくる。
 水田が会釈を返すとうれしそうにはにかんだ。
 昨日までは自分に対し一番冷たく当たっていた美津絵の変貌に水田は正直舌を巻き、MCフォンの威力に感心する。
 机の上のメモを確認すると手帳にはさむ。
 これで美津絵は手に入れたも同然だ。ゆっくりと料理の仕方を考えてから電話をしてやろう。
 そう考えるとおもわずニヤリと笑みが漏れてしまう。
 ニヤニヤ笑いながら座っている水田を明美や美紅たちは気味悪そうに横目で見ている。


 帰宅した水田は部屋でくつろぎながら、美津絵をどう操るかをあれこれ考えたすえ、MCフォンを手にした。
 あらかじめ登録した美津絵の番号を選択して電話をかける。
 5回ほどのコール音のあと美津絵が出る。

「もしもし?」
「あ、もしもし、水田ですけど。」

 水田が何故自分のところに電話することができたのか美津絵にはわからなかったが、水田から電話がかかってきたこと自体は悪い気分ではなく、あかるく答える。

「あら、水田さん。うふふ。あれ、でも水田さんに番号教えてましたっけ?」
「まあ、いいじゃないか、それより…。」

 水田は赤いボタンをおす。

「あなたは、僕にお弁当をつくってあげたくてしかたなくなる。とっても自分の作ったお弁当を水田さんに食べて欲しい。そしてその弁当を僕が食べるととってもうれしくなります。僕が一口食べるごとに、もっともっとうれしくなってエクスタシーを感じてくる。必ずそうなります。電話を切ると電話があったことは忘れてしまう。そしてすぐにお弁当を作る用意をはじめます。それでは。」

 水田が電話を切る。とりあえず今回はこれだけだが、ゆっくりじわじわと落としていく計画だ。
 一方美津絵はボーっとした顔で携帯を切る。
 はっと我に返ると、

「あん、いそがなくっちゃ。まず材料の買出しね。」

 いそいそと弁当作りの用意をはじめるのだった。



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 高校2年生、山中悟郎は夜遅くまで勉強していた。思えば今年は何ひとついいことがなかった。2年間思いつめてやっと告白した女には、あっさりと振られてしまうし、不況の影響か何かはしらないが小遣いも減らされ買ってもらえるはずだった携帯電話も成績がよくならなければだめだということになってしまった。

「ああ、だめだ、頭に入らないよう。」

 普段から勉強などということはあまりしない悟郎は机にすわって教科書を広げるだけで頭が痛くなる。無論、ケイタイを手に入れるためにイヤイヤながら勉強をしているのだ。
 彼女はもちろん友達もそう多くない悟郎がケイタイを手に入れたからといって何が変わるわけでもないのだが本人はケイタイさえあれば明るい未来が開けると信じている。女の子とナンバー交換して、メールを送ったり送られたり…ああ、夢のような日々。夢想家の常で、悟郎は、そこにいたる過程はいっさい無視をして夢だけをふくらませつづける。
 それにしても、いくら机にかじりついても勉強が身に入らない。しらずしらず眠り込んでいた。いつしか真夜中を過ぎ、ながら見するためにつけていたテレビ画面も砂の嵐に変わる。

「ぐおー、ぐぉー、んぐ、んぐ、ん??」

 机にうつぶせになって眠り込んでいた悟郎がふと目を覚ます。

「ん?今何時?」
 寝ぼけなまこで時計をさがす悟郎。その瞬間、砂の嵐だったテレビ画面に突如番組タイトルが表示され音楽が流れ始める。

「特選!!お茶の間ショッピング!!」
「ふわ?なんだなんだ。」

起き抜けの悟郎はまだ状況が理解できていない。それにかまわずテレビ画面に登場した二人の司会者は番組を進めていく。

「さあ、選ばれたあなただけに、選ばれた一流品だけをお送りする、特選お茶の間ショッピング。今日もとってもステキな商品が届きました。」

 悟郎も次第に頭がはっきりしてくる。

「ふわあ?テレビショッピングか、え?でも今何時だ。朝の4時?こんな時間にこんな番組するか?」

 とはいえ、他にすることもなく、なんとなく悟郎はテレビに見入ってしまう。

「では、今日最初の商品。なんでしょうね。」

司会は男性一人とアシスタントらしい女性が一人だ。

「はい、商品番号001番。理想の歯ブラシセットですぅ。」
「え?歯ブラシですか?」
「はい、これなんですけど。」
「ほう、これは普通の歯ブラシとどう違うんですか。」
「はい、このブラシ部分を見てください。毛先が球と先細、全体は山切りカットになっていて、小さなヘッドと曲がったアームで奥歯の歯垢までしっかり落とす。その上、先端部分が高速回転して超音波とマイナスイオンで歯の表面をピカピカに仕上げてくれるというスグレモノなんですねぇ。」
「ほう、それはすごいですね。」
「今回は、この理想の歯ブラシ4本セットに、備長炭入り歯磨き1年分をお付けして、たったの19800円!!」
「おお、それは安い。ご希望の方はいますぐ電話、0120-○○○○-○○○○。数に限りがございますので急いでお電話ください。」

 こんな調子でわけのわからない商品がつぎつぎと紹介されていく。

「なんじゃ、こりゃ。くだらねえ。やっぱり寝ようかなあっと…。」

 悟郎が手を伸ばしテレビのスイッチを切ろうとしたその時。

「はい、では本日最後の商品です。これはすごいですよ。」男性司会者が今までよりいっそう大きな声でさけぶ。
「えー、いったい何なんですかあ?」女がおおげさに問い返す。
「これです。」
「え?ただの携帯電話にみえるんですけど。」

 携帯電話と聞いて悟郎の手がとまった。

「そう、みえますか?でも、これはただの携帯電話ではないんですよ。」
「というと?」
「実は、これはあのマインドコントロール社がその技術を結集して開発した新製品、『MCフォン』なんです。」
「えええ?あのマインドコントロール社がですかあ?ということは…。」

 そういわれても悟郎はそんな会社の名前は聞いたことがない。

「そう、これを使えば人を操ることが出来るんですねえ。」

 なんだ?人を操るって?どういうことだ。悟郎にはなんのことだかよくわからない。
 
「でも、本当に人を操ったりできるんですかあ?」わざとらしい口調で女がきく。
「では、試して見ましょう。ピピピと…。」女の携帯電話が鳴る。
「あら?」
「今、このケイタイからかけてるんですよ。とってみてください。」
「ピ。はい。もしもし。」
「もしもし。聞こえますか。」
「はい、とてもよく聞こえます。」
「あなたはその場でくるくる回りたくなります。」

 一瞬の沈黙のあと、

「あら、なんだか回りたくなってきたわ。」

 と説明じみたセリフをはきながら女はくるくる回り始めた。

「ふしぎだわ。私、なんで回っているのかしら。」
「それが、この電話で操られたということなんですよ。」
「へええ、すごいわ。でも私、いつまで回っていればいいのかしら。」
「はい、もういいですよ。とまってください。」

男が再びケイタイに話しかけると女は回るのをやめた。

「本当に人を操れるんですねえ…。」

 しみじみと女が言うのを聞いて悟郎は馬鹿馬鹿しくなってしまった。

「なんだかインチキくさいよなあ。こんなもんを信じるやつがいるんだろうか。」

 女はしれっとした顔で話をつづけている。
 
「どういう仕組みになっているんですか。」
「はい。この小さな携帯電話の中に、音声を加工して特殊な超音波を発生させる装置がはいっているんです。電話をとった相手は、この超音波によって操られてしまうんですね。」
「はあ、なるほど。」何が『なるほど』だと悟郎はさらにあきれる。
「もちろんこの電話は普通の携帯としても使うことができますし、メールも送れるんですね。それに、このおしゃれなデザインは是非もってみたい1台ですよねえ。」
「ほんと、ステキなデザイン。」

 こういうものはどうせろくなデザインではない。それにバカ高い値段がつくに決まっている。やっぱり寝るか、と悟郎は思ったのだが。

「で、気になるお値段ですが。おどろかないでくださいよ。今回は新製品ということで特別にモニター価格。1年間の基本使用料、通話料込みでなんと9800円!!!9800円ですよ!!」
「ええええ!!??いいんですか?」
「はい、これもこの番組だから出来る事。ただし、これは1台限り。1台限りです。早いもの勝ちですよ。電話はいますぐ…。」

 悟郎は電話まで飛んでいって必死でメモした番号を押す。なんでもいい。ケイタイが手に入るなら9800円ぐらいの金は払える。しかも1年間の通話料もついているというのはどう考えても安い。
 奇跡的に電話はすぐつながった。あわてながらも電話口でオペレータに必要事項を言ってなんとか手続きを終える。

「はああ…。」

 悟郎はなんだか疲れてしまった。まるで取り付かれたように申し込んでしまったが…。まあいい。
 悟郎はもう寝ることにした。

 翌朝起きたとき、うますぎる話に悟郎は何か寝ぼけたのかと思っていたのだが2日後には携帯電話が届いて、あのテレビショッピングが決して夢の中の出来事ではなかったことを知らされる。
 とどいた携帯電話は番号のセットもしてあり、すぐにでも使えるようになっていた。ひととおり説明書を読んでみる。
 普通の携帯電話としての説明も一応はあるのだが、なんだかおざなりだ。その代わりMC機能-番組で言っていた人を操る機能ということだが-についてはやたら丁寧な説明がついている。
 説明を読むうちに悟郎もだんだんとその気になってくる。人の心が操れるなら、これほど面白いことはない。これは一度試して見なくては、と。
 
 
 悟郎は学校では決して目立つ方ではない。というよりもとことん目立たないといった方がいいだろう。少し人見知りをする彼は、男友達もあまりいないし、女子としゃべることはほとんどといってない。
 とくにとりえがあるわけでもない。スポーツも勉強も人並み以下である。オタクというほど何かに打ち込んでいるわけでもない。
 低いレベルでバランスの取れた生徒である。
 2カ月ほど前にフラれた女というのは同じ高校に通う同級生だ。いままでつきあっていた男と別れたといううわさを聞いて、彼としては死んでもいいほどの決意でラブレターを送るがものの見事にシカトされてしまった。
 その彼女、井沢美也子は、ほどなく新しい彼氏をみつけて付き合い始めた。それがたまたま悟郎がフラれた時期と重なったため、悟郎はその男と天秤にかけられてフラれたと思い込んでいるのだが、まるで相手にされていなかったというのが実際のところだ。
 おそらく彼女はいまだに悟郎の名前を聞いてもすぐには顔を思い浮かべることはできないであろう。
 学校内でカレシといちゃつく美也子をみては悟郎は激しく落ち込んでいた。たった一度の失恋をひきずるだけひきずっているのだ。
 結局、悟郎の思いつくターゲットは彼女しかないのだった。


 悟郎は井沢美也子にMCフォンをかけることにした。とはいえ彼女のケイタイ番号など知る由もない。
 以前、なんとか自宅の電話番号を調べてかけたことがあるのだが父親がでてきたのですぐに切ってしまった。
 かけるとすればこの番号しかない。また父親がでてくればどうしようか。でも、もしこれが本当にMCフォンならたとえ父親が出てこようと問題はないはずなのである。
 ただ、試して見るだけだから…。そう自分に言い聞かせて悟郎はボタンを押した。何回かの呼び出し音のあと相手は受話器を上げた。

「もしもし。」今回も電話を取ったのは父親だった。低い、ドスの効いた声。
「もしもし、あの…。」
「だれ?だれですか?」
「あの、井沢さん、いや美也子さんの同じクラスの山中というものですけど…。」
「はあ?その山中がなんのようだ。」

 すでに険悪な雰囲気だ。悟郎もこわかったが、こうなれば開き直るしかない。
 
「あなたは僕の声を聞いてなんだか気分がいい。」おそるおそる声に出して見た。
「んん?山中くん…ていったかな。美也子の友達かね。」

 声のトーンが柔らかくなった。効いているのだろうか。続けてみる。

「あなたは僕のことをとても気に入ってしまう。僕はまれに見る好青年で誰からも好かれるりっぱな高校生。」
「おお、山中君。君みたいな人から電話をもらえるとはうれしいな。美也子を呼んでくればいいのかな。」

 すっかりゴキゲン声になってしまった美也子パパ。

「はい、美也子さんをお願いします。」
「よしよし、待ってなさい。今すぐ呼んであげるから。おーい、ミヤコー、ヤマナカ君から電話だぞー。」

 美也子は自分の部屋で父親の呼ぶ大声を聞く。

「なによ。そんなおっきい声で言わなくでも聞こえるわよ。え?ヤマナカ?えーと、ヤマナカって…。」

 首をかしげながら階段を下りてくる。「こら、早くせんか。」父親が叱責する。

「わかったわよ。ヤマナカって誰?」
「お前の同級生の山中君だ。ほら、くれぐれも失礼のないようにするんだぞ。」そう言って父親が受話器を渡す。
「はあ、ヤマナカっていったらアイツしかいないよなあ。あ、もしもし。」
「あ、あの、ヤマナカ、山中悟郎です。」
「やっぱりお前かよ。なんなのよ、家に電話なんかかけてきて。」これまた不機嫌な声だ。
「君は僕に電話をもらってとってもうれしい。」
「え?あ、ああ…。山中君、電話くれてありがとう。うれしいわ。」

 一瞬にして顔の表情も和らぎ、とてもやさしい声に変わってしまう。どうやらこのMCフォンは本物だ。悟郎は次第に興奮してくる。
 
「で、なにかしら?」
「これから僕のケイタイ番号を言うからこの電話を切ったら君のケイタイからかけてくれ。わかったね。じゃ、いうよ、ゼロハチゼロ…。」
「うん、はい、はい、じゃ、くりかえすね、ゼロハチ…。」素直に悟郎の言うことをきいて美也子はメモを取る。
「じゃ、たのんだよ。」

 悟郎が電話を切ると美也子はいそいそと自分の部屋にもどり携帯電話を取り出すとメモをみながらダイヤルする。

「もしもし、あ、山中君。私。え、と何だっけ。」

 とりあえず彼女のケイタイナンバーは手に入れた。ただ電話をかけることだけを指示したので彼女が少し戸惑っている。悟郎はさらにこのMCフォンの威力をたしかめようと思った。

「君は最近カレシとうまくいってなくて悩んでいる。そして彼とつきあうまえにフってしまった僕のことを思い出して、やっぱり僕とつきあえばよかったと後悔しはじめた。そう思い始めるとどんどん僕への想いがつのって、もうたまらなくなって今の彼と別れて僕と付き合うことを決心した。そして今日、僕に告白の電話をかけたんだ。」

 悟郎にもうまくいく自信はなかった。彼女の頭の中をまったく変えてしまうことなんてできるんだろうか。

「あ、あ、山中君、その、私ね、最近、健太とうまくいってなくて、その、それで、やっぱりね、あの時山中君とつきあっとけばって思ったら、なんだか自分がとめられなくなっちゃって。好きなの。好きでたまらないの。ねえ、私とつきあってくれないかな。そう、告白しようと思って電話したんだ、ワタシ。ダメ…かな?」

 やった。うまくいった。うまくいきすぎだ。悟郎は彼女からの告白にどぎまぎしつつなんとか答える。

「あ、ああ、いいよ。僕も君のことが好きだし…。」そして次の一言をつけくわえるのも忘れない。
「君は僕の答えを聞いてとても嬉しい。天にものぼるほどうれしくてたまらない。」
「あ、あああ、ありがとう。うれしい…。美也子、うれしい…、ウッ、ウッ、ウッ、グス。ごめんなさい。こんなにうれしいこと生まれて始めてだから…。」

 美也子が自分のために泣きじゃくっている。悟郎の興奮は頂点に達する。そしてその瞬間、普段の悟郎では考えられないほどのひらめきがつぎつぎと頭のなかで連鎖反応のようにはじけた。

 「い、井沢さん…。僕とつきあえるのがうれしくてたまらない君は、すぐに今のカレシに別れの電話をして別れ話をする。そして友達にもかたっぱしから僕と付き合うことを報告するんだ。もし二人の交際に反対のヤツがいたらすぐ僕に連絡して。それから、君のお父さんとお母さんにも電話をかわってもらえるかな…。」

 はたして何をたくらむのか、悟郎。
 知らぬ間に井沢美也子の元カレとなってしまった高橋健太が部屋でくつろいでいると、彼のケイタイが聞き慣れたメロディを奏でた。
 美也子からの電話だけは別のメロディに設定してあるのだ。

「あ、もしもし、美也子?なに?」
「あ、ケンタ。あの、ごめんね。私たち、もう終わりにしよ。」
「え?え?何いってるんだ!おい、変な冗談はやめてくれよ。今日も二人の愛は永遠ねとか言ってたのに。」
「でも、だめなの。ケンタとはもうつきあえない。それにとても好きな人ができちゃったし。」
「おい、誰だ、誰なんだよ。」
「同じクラスの山中君。今日、告白してつきあってもらえることになったの。私、とっても嬉しいの…。あ、ごめんね。」
「わけ、わかんねえよ。なんであんなやつにお前が告白すんだよ!!俺をからかってんだろ、なあ。冗談にもほどがあるぞ。」
「ごめん、ほんとにごめんね。じゃ。」美也子が電話をきる。健太は呆然とする。
「なんだってんだ。俺がなにしたってんだ。」どう考えても思い当たる節はない。少し落ち着いてからもう一度美也子に確認しようとケイタイを手にしたその時、誰かから電話がかかってきた。
「ん?誰だこりゃ。もしもし?」
「もしもし、僕。山中です。」
「やーまなかぁー?なんでお前が俺のケイタイ知ってんだよ。おい、お前、美也子に何かしただろ。こら、ただじゃおかないからなぁ。てめー。」
「僕は君に一目おかれる存在。君は僕を男として尊敬さえしている。」悟郎が健太にMCフォンで語りかける。
「あ、ああ、うう。すまん、どなったりして。お前ほどの男がそんな卑怯なまねするわけないよな。」

ふたたび健太は肩をおとす。
 
「なあ、山中。相談にのってくれよ。おれ何で美也子にフラれたのかわからないんだよ。」
「君は最近、少し美也子に飽き始めていた。僕は誰からも好かれるとってもいいヤツなので美也子がつきあいたいと思うのはあたりまえだ。僕とつきあうなら君も納得してあきらめられる。美也子は僕とつきあうのが一番ただしいことなのだとさえ思う。心から祝福したくなる…。」
「そうだよなあ。俺、最近ちょっとアイツに冷たかったかもな。美也子はこんな俺なんかとつきあうより、絶対お前とつきあったほうがお似合いだし、きっとしあわせだよな。よし、俺も男だ。心から二人を祝福するぜ。山中、あいつを幸せにしてくれよ。」
「うん、ありがとう。君は美也子を僕に譲ったことでとっても誇らしく、さわやかな気分になる。」
「俺、フラれたのになんだか、すっきりしていい気分だよ。やっぱり美也子とは別れてよかったんだなあ。がんばれよ山中。」
「うん、高橋君もがんばってね。じゃ。」
「おお。」

 電話を切ってからも何故かうれしくてにこにこしてしまう高橋健太だった。

 健太に電話した後も美也子はつぎつぎと友達に電話をかけつづけた。たいがいの友人はおどろいて絶句してしまうのだが美也子自身はあんな素晴らしい人とつきあうということにみんなが驚いていると思い込んでいる。
 本人が大喜びでつきあうと言っているのであえてやめろとは言えない友人がほとんどだったが一番の友人である竹下朋恵は血相をかえて反対した。

「ミヤコォ、やめなよ。健太とわかれてあんなやつとつきあうなんて頭どうかしてんだよ。」
「ふうん。トモは祝福してくれるとおもったのにな。」
「山中のいったいどこがいいんだよ。いつもすみっこのほうでイジイジしてるだけのつまんない男じゃん。金もってるわけでもないしさ、あのイジけた顔みてるとワタシなんかケリいれたくなっちゃうよ、まったく。どこがよくてあのゴキブリと付き合おうなんて思うのよ。」
「トモはそういうふうに見てるんだ。かわいそうな人だね。」
「どうしちゃったのよ。ミヤコ。ね、明日ゆっくり話そ。健太にはまだ言ってないんでしょ。」
「ううん。さっきお別れの電話した。」
「あーあ。だめだこりゃ。ねえ、山中のどこがよくてつきあおうなんて思うわけ?」
「どこって…。あの人に何かよくないところがある?あれだけ完璧で素晴らしい人は日本中さがしてもいないと思うけど。」
「いったい…。あんたの頭がどうかしてんのか私の頭がイカれちゃったのかどっちかだろうね。いまから健太さそってあんたんとこ行くから待ってんのよ。ほんとにもう。」

 朋恵が電話を切ると美也子は指令どおり悟郎に電話で報告を入れる。
 
「ふん、そうか。わかった。じゃ、彼女の番号だけ教えて…。」

 悟郎はすぐに朋恵に電話をかける。朋恵はすぐに応答した。

「もしもし。」

 間髪をいれず、いきなり本題へ入る。

「あ、山中だけど。えーとね。君はずーっと僕のことが好きだった。」

 朋恵は悟郎の声をきいているが半分以上は聞こえていない。直接頭の中に届いてしまうのがこのMCフォンの機能なのだ。

「あ、私…。すき…だった。山中君のこと…。」
「そう、だから美也子から僕とつきあうと聞いて、とりみだしてしまってどうしていいかわからず反対してしまった。
でもよく考えて見ると美也子と僕はとってもお似合いのカップルで自分なんかが入り込む余地はないことに気づく。」

 朋恵はただただ聞いている。彼女の頭の中に悟郎のつくった架空の設定がどんどん入り込んでいく。

「君は考え直して僕のことはあきらめる。美也子に僕をゆずることに決めた君は美也子に電話して改めてあやまる。そして二人を心から祝福する。そして自己犠牲をはらった自分に酔いしれる。私はなんていいやつだって…。僕が電話を切ると僕から電話をもらったことは忘れてしまうよ。じゃ、バイバイ。」

「ばい、ばい…。」

 少しうつろな声で朋恵がこたえる。悟郎が電話をきるとハっと我に返ったように朋恵は普通の表情に戻った。

「はあ、切ないなあ…。でも、美也子に電話しなくちゃ…。ピ、ピ、ピ、と…。あ、もしもし美也子?」
「ああ、トモ?」
「さっきはごめんね。実はさ、わたし山中君のこと前からずーっと好きだったんだ。」
「え?そうだったの。全然わからなかった。そうだよね、彼、素敵だもんね。」
「うん、だからさ、美也子から山中君とつきあうって聞いてパニくっちゃってさ、あんなこと言っちゃたんだ。ごめんね。」
「ううん、いいよ。私もなんかおかしいなって思ってたんだ。そうか、トモもか…。」
「だけどね、落ち着いて考え直して見ると、山中君にいちばんお似合いなのはやっぱり美也子だなあって。美也子を一番輝かせることができるのは山中君なんだよね。私なんかやっぱ無理無理。たかのぞみしすぎてたんだよ。だから私、美也子におめでとうっていうことにした。おめでとう、美也子。幸せになってね。」
「うれしい…。朋恵にそういってもらうとうれしくって泣けてきちゃう。でも、いいの?朋恵。」
「いいよ、いいよ。美也子が彼を好きだっていう気持ち、一番理解できるのは私だと思うよ。がんばんなよ、美也子。」
「ありがとう、きっと幸せになるから。本当にありがとうね、朋恵。」「うん、じゃ、ばいばい。」「バイバイ。また明日ね。」

 電話を切る美也子。
 電話が切れてからも、朋恵は少し涙ぐんで感傷にひたっている。

「私って、いいやつ…。」

 悟郎はこうして美也子とつきあうにあたっての障害をこまかくつぶしていった。
 一つのカップルが別れてあたらしいカップルができる。そしてそれぞれの回りで色々な波紋が広がっていく。
 よくある話ではある。ただ、これは一から十まで悟郎が一人で作り上げた状況なのだ。

「ああ、何てことだろう。美也子と付き合うことができるなんて。ああ、夢みたい…。ふうう、なんだか興奮がおさまらない。」

 高まった気持ちを静めるため、何度もオナニーをする悟郎だった。
 翌朝。美也子が悟郎を迎えにくる。二人で仲良く登校だ。

「山中君。おはよう。うふん。」

 美也子は悟郎にしなだれかかるようにして、うっとりした目で悟郎の顔だけをみつめながら歩く。

「昨日はあんまり眠れなかった。山中君とつきあえるなんて、夢をみてるんじゃないかしら。うふ、顔が自然にニヤけちゃう。うふふ。」

 悟郎は女の子との会話などには慣れていない。どぎまぎするだけでまともに受け返すことすらおぼつかない。

「あ、う、うう。僕も。その。井沢さん、かわいい…ね。」
「あうん、うれしいい。ねえ、美也子って呼んでいいのよ。美也子ってよんでみて。」
「ああ、う、うん。みや…美也子。あのさ、きょ、今日の放課後、君の家にいってもい、い、い、いいかな。」

 と、どもりながらも悟郎はあつかましく要求をする。

「ええん?山中君来てくれるの?うれしいーん。来て、来て。わあーい。」美也子はもうトロトロ状態だ。

 MCフォンて何てすごいんだろうと悟郎は心の中で舌を巻く。だが今は目の前の美也子のことでせいいっぱいでこれを使ってどれだけすごいことができるかというところまでは考えが及ばない。

「よお、おはよう。」

 悟郎は突然肩をたたかれる。高橋健太だ。

「お似合いじゃないか。二人とも、おめでとう。」

 美也子がうれしそうにこたえる。

「うん、ありがとう健太。健太も早くいい彼女みつけなさいよお。」
「ああ、お前らに負けないくらい幸せになってやる。」
「それは、どうかな。今の私以上に幸せなんてあーりえなーい!」

 おどけてこたえる美也子。

「こいつう。おう、山中。お前、こいつをきっと幸せにしてやるんだぞ。信じてるからな。」

 といって高橋は悟郎の両手をぐっとつかんだ。
 自分で仕組んだこととはいえ、この青春ドラマみたいななりゆきに少々やりすぎたかなと悟郎は少し反省する。
 遠くの方で朋恵と何人かの女友達が手をふっている。

「みーやこー!おーめでとーう!!」
「あーりがとーおー!!」

 美也子は満面の笑みで大きく手を振りかえす。悟郎は顔を真っ赤にしながら歩いている。


 その日は授業中も美也子の目は悟郎にそそがれっぱなしで、悟郎がときどき目配せしてやると本当に嬉しそうな顔をする。
 1日中そんな調子であっというまに放課後が来る。

「山中くん、かーえろ。」

 授業終了のチャイムが鳴り終わるのももどかしく美也子が悟郎のところへ駆け寄ってくる。

「う、うん。いこうか。」

 二人は腕を組んで仲むつまじく歩いていく。ひと時も離れない二人の行く先は美也子の家の方角だ。
 どうやら悟郎は自分の家に立ち寄ることなく直接、彼女に家に向かっているようである。

「ただいまー。おかあさん、ほら山中君よ。」
「あ、あの、どうも、こんにちは。」
「まあまあ、よく来てくれました。なるほどねえ。美也子の言うとおり男前だわー。」

 美也子の両親はすでに前の日にMCフォンで洗脳済みである。

「自分の家だと思ってくつろいでね。さ、あがって、あがって。」

 せきたてるように、上にあげられると応接間に通される。

「何もありませんけど、よければこれを食べて」

 飲み物となにやら高そうなケーキなどが机に並べられる。

「あ、あの、お気遣いなく。」

 遠慮する悟郎。

「そうよ、早くふたりきりにしてよ。」
「はいはい、わかりました。」

 美也子に追い出されるように母親が部屋を出て行った。

「やまなか…くん。」

 悟郎の手をしっかりとにぎって熱く潤んだ瞳で美也子がみつめている。やがてその瞳がすっと閉じられ、美也子の顔が悟郎の顔に近づいてくる。
 これはもしかして、いや、もしかしなくてもキスをせまられているのだ。悟郎の胸が高鳴る、動悸が激しくなる。
 悟郎も目を閉じ少しずつ美也子に近づいていき、唇の先がそっとふれあう。ちょうどその瞬間、母親の大声に悟郎はビクっと首をすくめてしまう。

「みやこー!!お父さんかえってきたわよ。ちょっと早いけど晩御飯にするわよー!」


「やあ、よく来てくれた。山中君。うれしいよ。」
「は、はあ。恐縮です。」
「美也子にこんないい彼氏ができるとはな。いやあうちの娘にはもったいないぐらいだ。ははは。」

 食卓には美也子と彼女の両親、それに悟郎だけだ。美也子には兄がいるが大学に入ってから家を出て下宿生活をおくっている。
 友好的な雰囲気の中、悟郎をたたえる宴はつづいた。これだけほめそやされると悟郎もだんだんとその気になって次第に態度もおおきくなる。

「いえいえ、美也子は、いや美也子さんはすばらしい女性だと思いますよ。おつきあいできて光栄に思ってます」
「そういっていただけると私も嬉しい。さ、飲んで飲んで…といっても君は未成年か。ま、そのオレンジジュースでもグッとあけて。ところでその、山中君。」
「は?」
「もう、うちの娘はいただいてもらえたのかな?」
「え?」
「もう、食っちまったかって聞いてるんだ。」
「やだ、お父さんたら、はずかしい。」

 美也子が顔をあからめる。

「何いってるんだ美也子。これは真面目な話だぞ。」
「そうですよ。ふたりにとっても私たちにとっても大事なお話よ。で、どうなの?」
「あ、あの、ま、まだ、その…。」
「そうか。まだか。ううん、そうだ。よければ今夜うちに泊って美也子を、そのなんと言うか、君のものにしてやってくれんかな。私たちは1階で寝て、君たちの邪魔はせんようにするから。そうだ、そうしよう。いいね、かあさん。」
「ええ、いいですとも。そうしていただければ私もうれしいわ。ぜひ、そうなさい。美也子はどう?」
「やあだあ、恥ずかしいわよう。」

 美也子は真っ赤になって恥ずかしがるがまんざらでもなさそうだ。
 勝手に進む話に悟郎は目を白黒させていたが、もとよりことわる理由など何もない。

「僕はかまいません。ありがたく美也子さんを、その、いただきます。」
「ようし、話は決まった。さあ、山中君、これも食べてくれ。おいしいぞ。ははは、めでたい、めでたい。」
「本当にねえ。お母さんもうれしいわ。」

 母親は少し涙ぐんでいる。情景としては感動的なほど幸せな一家の団欒なのだが。
 

 やがて食事も終わり、二人は2階の美也子の部屋へとあがっていく。悟郎はしっかりと美也子の肩を抱いている。仲むつまじくみつめあいながら階段をのぼる二人。
 そしてその夜、悟郎は童貞を失った。


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 OL皆瀬早織には最近カレシが出来た。
 しかし、早織は何故その男と付き合うようになったのかまったくわからない。
 好みのタイプでもない、強引に交際をせまられたわけでもない。
 以前、過労からか、変な言葉が口をついて出てしまう病気になったとき親切にしてくれたのがきっかけで、つい関係をもってしまい
 それがだらだらとつづいている。
 実は早織のカレシ-佐伯洋治は催眠術を巧みに使って早織を彼女にしてしまったのだが早織自身はうまく誘導されてそのことには気づいていない。
 彼女自身も何かがおかしいとは思っているのだが。
 一度関係をもってしまったことは仕方がない。でも、好きでもない相手と付き合うのは、やはりやめよう、と決意して別れを告げるために佐伯のところへ行く。
 
「佐伯君。あの…。」
「ん?どうしたの。早織ちゃん。」

 それがクセなのか佐伯はよく指を鳴らす。
 パチッパチッ。一瞬クラッとするような感覚。
 でも決めたことだ、物怖じしてはいけない。言わなきゃ。
 思い切って口に出す。
 
「今晩、ひま?もう三日も佐伯くんとシてないから、体がほてっちゃって。今日、泊りに言ってもいい?」

 会社で回りの目があるというのに、こういう露骨なことを堂々と大声で言ってしまう。
 本人は別れ話をしているつもりなのだが口が勝手に動き、言葉どおりに本当に佐伯が欲しくてしかたなくなり、股をすりあわせて身体をよじらせてしまう。

「OK。いいよ」

 とややめいわくそうに佐伯が返事をする。

「わあ。うれしーい。」

 とびはねたいぐらい嬉しいという感情が体の中で沸き起こる。
 るんるん気分で自分の席に帰り、座ってから自分のしたことに気づく。

 「あれ?なんで?ああ、まただ。どうしてうまく自分の気持ちを伝えられないんだろう。」

 気持ちをつたえる以前の問題なのだが催眠状態の早織は気づかない。
 というわけで早織はつきあいたくもない佐伯とずるずる男女関係にあると思っているのだが第三者からはそうは見えない。
 たしかに、常にデートにさそうのも早織のほうだし、どう見ても早織の方が積極的で佐伯はただ早織の言うまま、仕方なく付き合っているように見える。
 本当は全く逆なのに。


 早織は催眠で佐伯に、いいように心と体をもてあそばれている。
 好きでもなんでもない佐伯なのだが、彼の手にふれられるだけで早織は体中の血が沸騰し体もとろけるようになって理性を失ってしまう。

「なあ、いいだろ。」
「いやよ。今日はそんな気分じゃ、あ…。」

 手を握られるだけで、もうだめだ。その瞬間に脳に甘い感覚がはしり股間がジュンとする。
 そして、がまんしきれず自分から彼のほうへ崩れ落ちてしまう。
 コトが始まってしまうともう、めくるめく快感のアリ地獄だ。より強い快感をもとめて自分からどんどん進んで変態的なプレーをしてしまう。

「はあん、だめえん、もっと、突いてええ、あん、お尻の穴にも入れて、はあっ、はあっ…。」

 その激しい求めかたに催眠をかけた佐伯でさえ、たじたじとするぐらいだ。
 無論、彼も十分に楽しんでいるのではあるが。
 行為の最中はとにかく夢中で何もかも忘れて快楽を追い求めてしまう早織だが自分の部屋に帰って一人になると激しい自己嫌悪と疑問の嵐に襲われる。

「あん、くそう。またやっちゃった。なんでこうなっちゃうのよ。もう!!」

 今日、みずからしてしまった、あんなことやこんなことに赤面してしまう。

「彼のちん〇をしゃぶりながら、自分でクチュクチュして2回もイっちゃった。は、はずかしー!!」

 そしていつも佐伯と別れようと決意する。そんなことの繰り返し。

「でも、なんだかんだいっても、彼のことが好きなの…かなあ。」

 しかし自分のどこをどう探してもそういう感情が見当たらない。
 なんだか理不尽だが誰にも相談しようもない。別れたい別れたいと思いながら現実にはセックスをねだってばかりいるのだから。

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