しかし、早織は何故その男と付き合うようになったのかまったくわからない。
好みのタイプでもない、強引に交際をせまられたわけでもない。
以前、過労からか、変な言葉が口をついて出てしまう病気になったとき親切にしてくれたのがきっかけで、つい関係をもってしまいそれがだらだらとつづいている。
実は早織のカレシ-佐伯洋治は催眠術を巧みに使って早織を彼女にしてしまったのだが早織自身はうまく誘導されてそのことには気づいていない。
彼女自身も何かがおかしいとは思っているのだが、一度関係をもってしまったことに覚悟を決めなければいけないところである。しかし、好きでもない相手と付き合うのは、やはりやめよう、と決意して別れを告げるために佐伯のところへ行く。
「佐伯君。あの・・・。」
「ん?どうしたの、『僕の早織』ちゃん?」
佐伯からもらう自分の『名刺』。
事細かに記載されている『名刺』には、 早織の彼氏という欄まで設けてある。
佐伯洋治に溺愛して、仕事終わりに彼とセックスしたい。
佐伯からもらう自分の『名刺』。
事細かに記載されている『名刺』には、 早織の彼氏という欄まで設けてある。
佐伯洋治に溺愛して、仕事終わりに彼とセックスしたい。
『名刺』に記載されている情報は本人に影響を及ぼし、急に早織は股をすりあわせて身体をよじらせる。
「今晩、ひま?もう佐伯くんのことが忘れられなくて身体が火照っちゃってダメなのぉ。付き合ってくれない?」
社内で回りの目があるというのに、こういう露骨なことを堂々と言ってしまう。
本人は別れ話をするつもりだったのだが口が勝手に動き、言葉どおりに本当に佐伯が欲しくてしかたなくなる。
「OK。いいよ」
とやれやれと言いたげにため息を一回ついて佐伯が返事をする。
「やったぁ!佐伯くん大好きぃ!」
返事を聞いた途端嬉しいという感情が沸き起こり、るんるん気分で自分の席に帰り、座ってから自分のしたことに気づく。
とやれやれと言いたげにため息を一回ついて佐伯が返事をする。
「やったぁ!佐伯くん大好きぃ!」
返事を聞いた途端嬉しいという感情が沸き起こり、るんるん気分で自分の席に帰り、座ってから自分のしたことに気づく。
「なんでよ~?・・・またやっちゃった。どうしてうまく自分の気持ちを伝えられないの~」
『名刺』を受け取ったはずの早織には、自分の『名刺』の存在に気付かない。効果が発生するのは定時後なので、定時内は後悔が募っていく。
早織はつきあいたくもない佐伯とずるずる男女関係にあると思っているのだが第三者からはそうは見えない。
たしかに、常にデートに誘うのも早織のほうだ。どう見ても早織の方が積極的で佐伯はただ早織に仕方なく付き合っているように見えるのである。
真実は真逆である。それを知っているのは佐伯のみだった。
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