純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『肉体操作』 > 人形『人形初期設定』

 一日中付き纏い妹の様子を観察したわけだが、そうしている内に、彼氏の紳士的な態度をありありと見せつけられてしまっていた。
 れでぃふぁーすと、なんて俺の辞書には載っていない言葉をしてあげている彼に妹は、俺に見せたことのない笑顔で微笑み返す。一度手を突き飛ばしたからか、以降手を繋ごうともせず、強引な要求さえしてこない。紳士的な態度で接する彼に妹だけじゃなく、俺さえも溜息を洩らしてしまう。

「なんだよ、全然お似合いのカップルじゃねえか」

 どうして妹が内緒にしているのか分からない。どこから見つけてきたのか是非とも話を聞かせてもらいたい。と、彼がお手洗いに行って一瞬だけ目を放した隙だった。

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「彼女?いま暇?」

 三人でつるむ、いかにも暇してそうな男性グループが声をかけた。

「暇じゃありません」

 瑞花はあはっきりとした態度で断った。

「忙しいんだ。どう、そこの喫茶店でコーヒーでも?」
「結構です」
「いいじゃん。タイプなんだよ」
「付き合えよ。奢るからさ」
「少しの時間ぐらい持ってるんだろ?」
「放してください!」

 ナンパが少々強引になってきた。瑞花の手首を掴んで喫茶店に連れ込もうとしている。そこで、彼氏が現われ、嫌がる瑞花を見て慌てて抱きかかえた。

「なにをするんです、あなたたちは!」
「なんだよ?・・・・・・まさか、彼氏?」
「ははあん、なら好都合」

 集団が笑って顔を見合すと、突然一人が彼氏に近づき、彼の鳩尾に一発殴りこむ。彼は吹っ飛び、壁にもたれかかる。

「はっ、弱い。貧弱な体付きだねえ」

 本当に苦しそうだ。彼が咳き込んでお腹を押さえていた。彼氏はどうやら喧嘩をしたことがなさそうだし、こんな場面に出くわしたこともなさそうだった。

「卑怯者!不意打ちなんて――」
「かのじょ!そんな弱い奴より、強い奴の傍にいたいと思わねえか?」
「守ってやるぜ?」
「誰が、あんたたちなんかと一緒にいたいもんですか!」

 中央の、先程瑞花がタイプと言っていた少年がピクッと眉間に皺を寄せた。

「この・・・・・・生意気なガキが。おい」

 左右の二人がおもむろに動き出し、瑞花に近づく。瑞花も察し、一歩後退する。
 おいおい、まさか。俺の妹に手え出すつもりじゃねえだろうな。

「断り方も学ぶんだな。軟らかい姿勢でいればいいのにちょっと下手に出ればつけあがりやがって。これは俺流の教えだと思え。次回、同じ失敗しないよう身体に教え込ませてやる」

 勝手に下手にいるくせに断れば何でも頭が高いに決まってんだろうが!やっぱりただむしゃくしゃしてるDQNどもじゃねえか!どうする!兄として表に出るか?いや、内密に付いてきてる分、こんな場所で妹と出会ったら後々厄介なことになりそうだし。――どうする、俺?人形を持つ手に力が入る。

「や、やめろ。彼女に手を出すな」

 彼氏が叫ぶ。

「彼氏は何もできない無力さを感じながら黙って見てろ!――やれ!」

 子分二人が一気に襲い掛かる。まず先に手を出すのは左――、

「うおおおお!」

 左がストレートをくりだすが、瑞花は掻い潜り回避する。空を切るとはまさか思わず、左がバランスを崩し前のめりになる。
 ――そこへ、ガラ空きの下顎に向けて、瑞花の右アッパーがさく裂した。

「へっ?」
「なに?」

倒れて気絶する左子分。彼氏もボスも呆然としている。

「うりゃああああ!」

 続いて右が襲い掛かる。ジャブやワン、ツーを繰り出す右の攻撃を瑞花はツインテールを揺らしながら回避していく。女性としてあり得ない身のこなし、そしてここぞという時の戦う姿勢を見せ、逆にカウンターとなる瑞花のフックが襲い、ジャブが飛び、たまらず顔を防御した。その一瞬を見逃さず、
 ――ボディーブローが突き刺さった。

 身体がくの字に曲がって倒れる右と、未だに意識を失っている左。信じられないと言わんばかりに残る一人が後ずさりする。

「この女、やべえ!」

 捨て台詞を吐き、子分を見捨てて逃げる男。なんとか一難去って俺はほっとしていた。『人形』を使い、俺の持つ喧嘩術で瑞花を援護したが、まさか柔軟に対応してやっつけるほどの力を持つとは思わなかったな。
 どうやら『人形」で操っている間、瑞花に意思はないんだろうな。と最終チェックをここでする。

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 はっとした瑞花が彼氏と目を合わすと、彼は呆然と瑞花を見ていた。慌てるように顔を赤くする妹。「ちがうの、ちがうの!」と弁明する声が遠く離れた俺の耳まで入ってくる。イメージと違う一面を見せてしまった事で、彼氏との関係にヒビが入るかもしれない。
 やべっ、やりすぎちまったかもしれない。
 一難去ってまた一難。
 
「あ、あのね、今のはなんていうか、私の中にあいつらの弱点が見えたの。そこに向かって手を出したら、簡単に倒れちゃったの。も、もともと手は出さないんだよ!ほんとよ!それだけは信じてほしいの。私は、その――」

 必死に弁明する私に、彼、浩平はようやく理解したようにふっと微笑んでくれた。

「ありがとう、永森。助かったよ」

 浩平も立ち上がるけど、どこかその表情は暗い。

「俺の方こそごめんな。弱いところ見せちゃって」

 そうだ。彼女を救えなかっただけじゃなく、逆に彼女に助けてもらった浩平の男としてのプライドはズタボロじゃないだろうか。

「ううん、気にしてないよ」

 察しても浩平は顔を背ける。そんな表情を見たくなく、私は明るくある、場所を指差した。

「ねえ、映画館行こう。いま一番いちばん甘い映画がみたい」
「・・・・・・うん。わかった」
 
 浩平が私の願いを聞き入れて、二人で駅前の映画館に足を運んだ。



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 グノー商品『人形』は電話で詳しく聞くと、女性オペレーターが優しく教えてくれた。

 確か、前回までは黒いジェル状の不定形物体が『人形』だったはずだ。
 それが今回は形を持ったのだと言う。人の形をしているとのことだ。

 それは確かに別物だと納得した。
 でも、逆を言えば、俺達から考えるとそれこそよく知る人形じゃないだろうか。

 ――人の形をしているから人形なんだ。

 俺は迷わず、操り人形を買ったのだった。


 ちなみに、電話を切る際にこの点も言われた。

「あやつり人形版には、感覚リンク機能はありません」

 
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・
 
 早速手に入れた人形を手に取る。前回より小さく、まさに人形の名にふさわしいサイズで送られてきていた。

 ・・・・・・・・・・・・真っ黒だった。

 別物と言いながら、黒い物体じゃねえか。確かにどことなく人間の形をしているようには見えるけど・・・・・・。

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 と、ここで俺は慣れた手つきで、風呂場の排水溝に残った妹の髪の毛を一本頂戴し、人形の中に入れていく。

 ズブズブと入り、人形は妹の姿へ変わろうとしていく。

(ここらへんは変わらないんだな)

 きっと制作者の拘りなんだろう。
 人形は、数秒もかからずに、妹へ姿を変えた。
 今、着衣している服装まで正確にコピーした妹が目の前に出来あがる。手の平サイズの妹の人形を持ちあげ、その感触を確かめる。
 ・・・・・・操り『人形』なんだよな、どの辺まで操れるのか確かめてみよう。

 人形をポケットに入れて、早速俺は実験しに部屋を飛び出すのだった。
 
 ドアを開けた瞬間に妹に出くわす。

「なにっ、急に出てきたらびっくりするじゃん」

 人形の姿とまったく同じ姿で瑞花が立っていた。

「なんだよ、これから出かけるのか?」
「うん。ちょっと買い物にね」

 買い物・・・・・・今、朝8時だぞ。

「・・・・・・早くないか?」
「っ!うるさい!兄ちゃんに関係ないでしょう!」

 怒鳴りながら階段を下りていく。靴を履いて玄関ドアを開けると、颯爽と出かけて行ってしまった。

 なにを怒ってるんだよ、知られちゃいけない秘密の場所に行くわけないだろう。

「・・・・・・。フッ、フフフ・・・・・・フハハハハ・・・・・・」

 思わず三段階まで笑いが出てしまったわ。
 残念だったな瑞花。あと一日早ければ、おまえの秘密の花園(←名前が変わっている)へ俺も足を踏み入れることはなかったんだが、今日はお前の後をずっとついて行くことに決めているのだ。

 お前が行動を起こせば、俺も行動を移すのだ!
 今の世の中、先手必勝ではなく後手必勝!!
 今行くぞ、瑞花あああああああ!!!!
 


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