純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 鏡『変わる姿、変わる心』

 遥(臨)が目を覚ますと、そこにはもう園崎遥本人の姿はなかった。
 もぬけの殻。衣服もその場に残して消えた彼女を、遥(臨)は死に物狂いで探した。

「いない・・・いったい、どこに・・・・・っ!まさかっ――!?」

 遥(臨)は自分の大切にしている『鏡』に急いで向かった。『コンパクト』としてポケットに仕舞われているソレを、果たして彼女は『持ち去ってしまった』のか――?
 緊張の一瞬だった。

「・・・・・・・・・・ある」

 ジャリッと、ポケットに入っている『鏡』を手に掴む。変身できる魔法の『コンパクト』はあったのだ。
 それでは彼女は一体どこにいったのか?裸のまま外をうろつけるほど容易な社会ではない。気温だって最近は凍てつく寒さなのだ。

「この『鏡』・・・使われた形跡がある」

 遥(臨)は自分ではなく、第三者が使った指紋を見つけた。クリームのついたその手で触ったような手跡は、小さく細い指の形をくっきり残していた。
 確信を持つ、遥は『鏡』を使ったということを。

「じゃあ、彼女は誰かに変身したってこと?バカな・・・!『鏡』を置いて外に飛び出して行ったら、元の姿に戻れないんだぞ!彼女、狂ったのかよ!!?」

 消えた彼女の後を追い、締まった扉の奥を見つめる。
 園崎遥はどこにもいない。持った『鏡』を握る手に力が入る。
 ぎりっと歯を噛み締める。血が出ても構わないほど強く歯ぎしりを立てながら。

「園崎遥は・・・死んだ・・・。俺が、殺したのか・・・」

 本人はもうどこにもいない。逃げるために変身しても、時間で変身は解けるものじゃない。
 『鏡』がなく、変身も解けずに誰の手も借りれず、今までの自分を全て置き去りにしてひっそりと息を潜めて暮らしていくのだ。
 握手会すら出席しない。握手すら誰からも求められない。
 もう、園崎遥という人物はどこにもいないのだから。

「いや・・・そんなのダメだ・・・。俺、俺がいるじゃないか!園崎遥は・・・俺がなりきってみせるんだ!」

 殺したことすら隠さなければならない。騎代臨という男性を抹殺し、園崎遥というアイドルを蘇生しなければならない。
 今まで遥の取り組んできた涙ぐましい努力も夢も、すべて引き継ぎ、受け継がなければならない。
 そこはファンだ。遥が歌ってきた歌詞や振り付けは完璧に頭に記憶されている。
 姿も遥本人と完璧に映しだすことができたのなら、やってやれないことはない。

「遥さん・・・きみの人生。俺が変わりにもらい受けるよ。俺が・・・ううん、――私が今日から園崎遥だ!!!」

 遥(臨)は笑った。高音で嘲笑う遥の声が、マンション一帯に響き渡った。
 後日、遥(臨)はアイドル達と合流し、涙を流して感動の再会を演じ切った。

「遥ぅ~よかったぁ!本当に無事に帰ってきてよかったよぉ!」
「もう、どこにも行かないで!消えたりなんかしないでね!」
「うん、大丈夫・・・。もう、みんなから絶対に放れないからね・・・」

 アイドル達と抱きつきながら喜ぶ遥の表情は、今までの純粋の笑みとは違い含み笑いを浮かべたように見えた。


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 私は、遥(臨)の言うとおりにしていた。
 彼の用意したテーブルの上に仰向けになって眠り、そのまま彼の望むように私の身体にデコレーションを始めた。

「うふふ。美しく着飾ってあげるよ」

 そう言うと、遥(臨)は私の身体にホイップクリームを付け始めた。彼の手で絞られるクリームが、私の全体にクリームの泡を立てる。その上に色とりどりのフルーツを付けられる。
 ケーキの生地になったように、身体の隅々まで盛り付けられる。ひんやり冷たいフルーツとクリームが、私の熱い身体に溶けて落ちてしまいそうになっていた。

「いいよ・・とっても綺麗になったよ、遥さん」

 まるで彼の芸術のセンスを表現した私を写真に抑えられていく。
 まさに自画自賛だ。
 なにがいいのかわからない。それでも私は、彼を分からなくてはならなかった。
 彼は私のファンだから。

      
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「そんなに・・・綺麗?」
「うん。今まで見た中で一番綺麗なショートケーキだ。白い肌と大きな柔らかいスポンジに包まれた、一流シェフも認める一品だと思うよ。早く食べちゃいたいよー」

 今までで一番無邪気に遥(臨)は楽しんでいた。目の前のご馳走を見て瞳を輝かせていた。
 まるで子供のような笑みを浮かべウキウキした表情で私を見ていた。
 それがファンなんだ。大好きなアイドルを自分のものにできて、今が一番最高の時なんだっていう感情を見せている。
 そこには良しも悪いもない。遥(臨)は純粋に幸福なんだ。
 私は彼を救えたんだ。

「・・・いいよ。私を食べて・・・」
「じゃあ、いただきます」

 私の身体に口を付ける遥(臨)。私の身体にゾクゾクとした感覚が襲いかかる。

「ふぁぁ・・んんっ、ふぅぅ・・・」

 彼の舌触りが私の肌を這いずる。クリームと供に私の身体を舐める舌が、何度も何度も掬っては舐めてを繰り返す。

「びちゃびちゃ・・ふがふが・・んぐ、んぐ・・じゅるるる!!」
「ふぁぁ・・あんっ・・んぁぁ・・・」

 私の表情も紅潮し始め、少しずつだけど息が荒くなる。お腹に飾られたフルーツを私の顔を埋めながらむしゃぶりつく彼。そんな変態的な行為ですら、私は冷ややかに見続けていた。

「おいひぃ!おいしいよ、遥さんのおへそ!スベスベな肌から流れる冷や汗をかきながら、身体が熱くなっているのが分かっちゃうよ?ウマウマ・・甘いだけじゃなく、遥さん特製の酸味も味わえるのがさらに良いよ」

 舐めるだけじゃなく、クリームを私の身体に塗りつけて、私のクリーム塗れの顔でサディスティックな表情を浮かべている。小さく開いた私の唇にクリームを持っていくと、確かに甘いはずのクリームに酸っぱい汗の酸味を感じた。
 私の感じた汗。彼によって引き出された私の酸味。

「涙も美味しそうだけど、それを味わうのは止めておくよ。一緒に同じ気持ちを味わってほしいからね。ほらっ、きみだって感じているはずでしょ?こんなに乳首勃たせてさ」

 遂に遥(臨)は私の乳房へと舌を伸ばした。クリームのついた乳房の中央に突起する二つの乳首を、啄ばむようにチュッ、チュッと突いてからカプリッと食いついた。

「ひうぅぅん!!」

 私の身体に一番の刺激が走る。遥(臨)もそれは分かっているのに、私の乳首から放れることを止めなかった。吸い付きながらしゃぶりつく。まるで私の乳首をそのまま食べるかのようにおもいきり吸いついてきた。

「ひぃっ!ちくびっ・・ちくびがとれちゃうぅぅ!!いたいの!乳首吸わないで、あぁぁ・・・!」
「ちゅぅ!ちゅるちゅるっ!ぢゅ、ぢゅるるるる~~!!」
「ふあっ!や・・・んんぅ・・・くうぅぅんっ!!」


 ビクンビクンと震える私の身体。激しい刺激に耐えられず、思わず首を傾けてお腹に力を入れてしまう。
 遥(臨)の指が私の腰からあがってきて乳首を弄りはじめる。まるで、サクランボを摘まむように両胸を寄せると、交互に口に含んで舌の上で乳首を転がしていた。
 絞り出すような喘ぎ声に、遥(臨)も感情が高ぶり、私の身体に重なる様に、自身の身体を重ねてきた。
 クリームに汚れた私と同じように、彼もまたクリームに汚れていた。

「うふふ・・・このまま綺麗にあげようと思ったけど、せっかく同じ身体だもの。ねえ、同じ二つの身体に挟まれたフルーツ達を見てると、まるでフルーツサンドみたいだと思わない?」

 園崎遥に挟まれたクリームとフルーツが、私の身体同士に押し潰されて外にはみ出しそうになっていた。また、しっかり挟まったフルーツは身体同士に押し潰されて果汁を染みださせていた。ツブツブの感覚やクリームが合わさる感覚すべてが新鮮で刺激的だった。

「・・・ゃっ・・。そんなこと言わないで・・・」
「どうして?せっかくならこのまま楽しもうよ?同じ身体同士なんだからさ」

 私の身体の上で上下に動き始める遥(臨)。その度にクリームが擦れてニチャニチャって音が響き、果汁が染み出て小股から溢れでてくる。
 恥ずかしがる私と、楽しむ遥(臨)。
 私の唇を強引に奪い、私の口の中の味まで確かめていた。

「うむぅ・・・むっ・・んぅぅ・・ちゅぱっ・・・・ちゅばっ・・・ちゅぅ・・・」
「ちゅぱちゅぱ・・・ん・・れろ・・・・ちゅむ・・ちゅるるるぅ!!」

 私を襲う私の顔。舌を強引に絡ませて私の動きを静止させる。
 甘い舌使いに私の動きも次第に鈍っていき、私もまた彼の舌を自ずと受け入れ始めていた。

「うふふふ・・・そう・・・。もっと味わいましょう。私はあなたなんだから」

 そう言う彼は、私の身体の上を180度反転させた。私と全く同じお尻を向けながら、男性の性器を覗かせていた。

「さあ、シックスナインよ。私のおち〇ぽをしゃぶりなさいよ。そうしたらあなたの果汁も飲み干してあげる」

 腰をあげて私の唇に狙いを定める様に、遥(臨)は一気におち〇ち〇を埋めた。

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 お手洗いから出てきた遥(臨)に私の目は釘づけになった。

「えっ・・?やっ、やぁ・・・」
「うふふ。おまたせ、遥さん。続きをしようか」

 私を縛っていたロープを外し、自由にさせた遥(臨)に対し、身動きすることができなかった。私の声で、私の裸姿を見せつけながら、彼は、自分の分身を私の身体に生やしていた。私の身体に聳え立つ、男性の性器。
 一箇所だけ黒光りするソレは、私の身体に付けられたことをまるで喜ぶかのように元気にそそり立っていた。

「どう、これ?俺の逸物~。んふっ、立派なもんでしょう?」
「ぁっ・・・ゃっ・・・」

 言葉を失い、しどろもどろになっている。自分の身体に生えた男性の性器に、目をそらすことができない。

「びっくりした?『鏡』は別に実在する本人に変身するとは限らない。望み通りの姿にその身を変えさせる。だから、きみの身体に俺の逸物を備えることだってできる。もちろん、感度や感触はきみ自身のものだから、きみがクリト〇リスを弄る感覚を増大させたと思ってくれれば良いよ。・・・んああ!!」

 私の目の前で自らの分身を握り、前後に手のひらを擦り始めた。

「はぁ・・はぁ・・。わかるかい?いま俺はきみの手で、俺の逸物を握ってもらっているんだ。こんなに激しくきみの手でシコることだって、簡単なんだ。くひゅっ、こんなシーンが動画にあがったら、ファンが悩殺するだろうね。それとも、きみだって誰かのを握ったことがあるんじゃないのか?」
「知らない!」
「おや、その反応はひょっとして初心だねぇ!嬉しいなあ、きみはやっぱり誰のモノにもなってないんだ。・・・だったら、きみが握る逸物は俺が最初ってこと?だったら、もっと激しく擦りつけてあげないとな!」

 シュッシュッと音が聞こえるくらい激しく腕を動かす遥(臨)。女性じゃなく、男性だって素早く動かすのは大変だろう。私は見ていられなくて目を閉じた。でも、遥(臨)は嬉々とした表情と鼻息を荒くしながら自らの分身に快感を与え続けている奇声に、目を閉じても情景が浮かんで見えた。

「ほんと、俺たちファンはなんて勝手なんだろうね。アイドルは清潔で純潔でありつづけて欲しい、彼氏を作ったら発狂し、事件を犯す覚悟でいるというのに、それでも自分だけはアイドルの彼氏になることを夢見てるんだから。純粋なのは俺たちでアイドルは汚れていることを暗示していると思わないかい?ファンはアイドルの汚れた部分そのものだから、きみは目を背けることなく俺たちを見なくちゃいけないんだ!――これが、ファンの姿なんだよ!」
「――――っ!」

 私は、目を見開いた。遥(臨)はニヤリと頬笑んでいた。

「アイドルなんて今やファンから搾取することしか考えていない。夢とか希望の歌をきみ達が歌ったところで今やなんの説得力も影響力はないんだよ!一握りの富裕層に媚びた結果が下卑たアイドルのなれの果ての姿じゃないか!だったら、もうきみだって真剣にアイドルにとりこむ必要はないはずだ。俺だけのアイドルになれ!きみが幸せになれるのは、きみになりたいと考える俺の傍だけなんだ!」

 恐ろしいほどの愛情を持ち、恐ろしいほどの事情を持ち、持論を語って私を取り込む。
 私を好きでいてくれるから、彼は私の目の前で汚れることを選び、私の変わりに汚れキャラになることを受け入れた。
 ただ一つ、私を好きで居続けるから――。
 そんな、愛情熱の暴走の果て、彼は狂気に取り込まれた。
 
「きみを愛している。色んなことをしたい。色んな場所へ行こう。一緒に、幸せになろう――」
「あ・・・あぁぁ・・・」

 本当に、まっすぐに、優し過ぎるから、彼は魔―わたし―に染まってしまった。
 ファンでいた彼に狂気に走らせたのは、私そのもの。
 これが、アイドルなのだ。一人の人間を狂わせることがいとも容易い、最凶の職業―ゆめ―。
 人が描く将来の夢。なりたい職業TOP3に必ず入る夢商売。

 
 なんて、救えない夢なのだろうと、私はこの時初めて後悔した。


「――ちなみに、きみに拒否権はないよ。さっきトイレの中で動画をとったんだ。これをネットに流せばたちまち世間が騒ぎだす。そうなればきみは終わりだ。四六時中マスコミに追われること必至だね」

『こんにちは、園崎遥です。今から、私がおしっこするところをカメラに収めたいと思います。みんなに見てもらいために、一生懸命頑張ります☆』

 私の声で彼が録音したカメラを再生する。私の淫らな姿が録画された映像が映り込んでいる。

『見えますか、私のアソコ?・・・あっ・・クリちゃん。もう膨張してる・・・。実は、さっきまでオナニーしていたので、ココは凄く敏感になってます。痛いくらいに充血していて、触るとすぐにイってしまいそうです』
「いまはクリ〇リスがないんだけど、その感覚がまだ残っているみたいだよー。敏感すぎ、こんなに逸物ビンビンだったかな?・・・・・・おっ?」


 私は、自分の意志、自分の本心で、遥(臨)の生えた逸物を触り始めたのだ。
 これ以上、彼を一人にさせたくなかった。
 いっそのこと、彼を喜ばせるために、私は自分の身体についた彼の逸物を、愛しむように舌を使って舐め始めたのだ。
 アイスキャンディーのように、ペロペロって。
 犬が水を掬って舐めるみたいにぴちゃぴちゃって。
 音を立てて小動物のように水を求めて。
 私は彼を愛した。



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 私の身体で散々オナニーした遥(臨)は、ブルッと身体を震わせた。

「うわっ、なんだかおしっこしたくなっちゃった。女の子の身体になったら、これも楽しみの一つだよね?」

 すくっと立ちあがった彼は私を見てニヤリとする。お手洗いに行くことは生理現象で誰だって用を済まします。私だってお手洗いに行きます。そんなの当たり前のことなのに――

「ねえ、遥さんはおしっこするの?」
「はっ・・・?」

 ――遥(臨)はそんな当たり前のことを改めて問いかけていた。
 それはまるで、アイドルである私がお手洗いで用を済ますことが異常なことのように思える。

「俺たちファンはきみがおしっこするなんて思ってないからさ。だって、きみみたいな清純派アイドルがおしっこや大便するなんて想像したくないからさ。・・あっ、でも、それが一つのおかずだったりするんだよね?きみがもしおしっこする時、どんな感じでするんだろうとか、大便で踏ん張って切れ痔になることがあるのかとか。それもファンの楽しみの一つでもあるんだよ」

 アイドルはお手洗いに行かない、そんな異常な妄想のもと――、
 私の行動は一つ一つがおかずにされる。
 遥(臨)の行動は怖いくらいの妄言だった。

「あなたにとって、私はなに?あなた自身のおかずなの?」

 私の問いかけに、遥(臨)は溜め息を漏らした。彼にとって私の質問があまりに愚問なのだ。
 それくらい、彼は自分の利益しか考えない人なのだ。

「アイドルなんて、ファンのおかずでしかないだろ?それでも、俺たちはきみに投資するんだ。Win-Winの関係だろ?」
「そんな・・・そんな関係のために、私はアイドルをやっているわけじゃない!!う・・・うぅぅっ・・・!!!」

 損得のためにアイドルをやっているわけじゃない。
 アイドルなんて、実際損な役回りでしかない。苦しい踊りや歌で人を喜ばせるため、血反吐を吐くくらい努力したって、評価は低レベルなことだって当然ある。
 努力が報われないことだっていっぱいある。挫折したい時も、夢を諦めたくなる時もいっぱいある!
 でも、それでも・・・私がアイドルをやり続けているのは――――!!!!

 ――バタン。

 彼は私の話を聞くことなく、お手洗いの扉を締めてしまった。


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 信じられない光景を目の当たりにしている――。

 一人の男性が別人になろうとしている。ダイエットするわけでもなく、整形するわけでもなく、ただ呪文を唱えるだけで彼は、彼女になろうとしている。

 短い髪の毛が長くなり、また髪の質も変わってふわふわしてて、トリートメントが入っているみたいに艶までかかっている。
 胸板も膨らんでいく。胸の輪郭がはっきりするように、腰がくびれ、腕や背中回りも細くなっていく。
 身長が縮み、体重だって減っていく。足のサイズや、太股のお肉まで小さくなり、細くバランスのいい体型が出来あがっていく。全体的に小さくなった彼は、顔だって小顔になった。ニキビすらない綺麗な顔に、大きいまつ毛や整った鼻と赤く瑞々しい唇が覗かせる。
 目を開くとつぶらな瞳が、まっすぐに私を見つめていた。

「あっ・・・・・・」

 彼は大変身した。私の目の前にいた彼は、見事なまでの私、園崎遥と瓜二つになった。
 私と同じ裸の姿で、凛々しいくらいに腰に手を当ててポーズを決めていた。

「フフ・・どう?園崎遥さん?俺の姿はどう見える?」

 私の声で男性口調で語りかける。私は彼の返事に応えられないくらい絶句していた。目の前に映るもう一人の私。その完璧すぎる外見に私は恐怖すら覚えてしまう。
 もし彼が今の私の姿で外に出たら、いったい何人が騙されて声をかけるだろう。

「へえ、これがきみの身体なんだね。本当に軽くて清々しい気分だよ。うひゃあ~!ジャンプが高い高い!」

 私の体重の身軽さに喜び、その場でジャンプをする遥(臨)。ぴょんぴょんと跳ねる度に私の胸が大きく上下に揺れていた。

「あっ・・、へぇ~。胸は後からついてくるんだ。これだけ大きいと浮輪袋みたいだね。んっ、でも…柔らかくて気持ちいい」

 私の胸を揉みながら、鏡の前で鼻を伸ばしている遥(臨)。そのだらしない姿を見させられる私はたまったものじゃない。
 いますぐ駆けよって止めさせたくても、身動きが出来ないのでどうすることもできない。
 ただ彼が私の姿で始める痴態を止めてくれるのを祈るだけだった。

「おねがい、やめて!私の姿でヘンなことしないで!」
「ヘンなことじゃないよ。きみだって、オナニーくらいするだろ?」
「お、おな・・・」

 あまりに普通に淫語を言うから、私は言葉を詰まらせてしまった。しれっという遥(臨)の日常にモラルの低さが伺えてしまう。

「あっ、きみはオナニーなんかしないよね?アイドルだもんね。アイドルがオナニーなんて想像できないよね?・・・でもさ、俺たちにとってきみがオナニーする姿をどれだけ妄想しているか知っている?毎日だよ、毎日。角オナニーからディルドーまで使って、あんなことやこんなことしているんじゃないかって妄想を膨らませて楽しんでいるんだよ」
「へ、変態――っ!」
「それがファンだよ。思想の自由まで感情論で否定しないでほしいな。だったら遥ちゃんはどんな方法で性欲を消化するのさ?乳首派?それともクリ派?ああ、おま〇こに指を――」
「――やめてって言ってるでしょ!!」

 自分の声で聞く恥ずかしいほどの痴態。顔を真っ赤にしながら泣きなけぶ私に、遥(臨)はゲラゲラと笑って嘲笑していた。

「あーあ。やっぱり言ってくれないんだ。じゃあいいよ。自分で開拓するから。きみの弱い場所をこの手で調べることにファンとしての喜びがあるからね。やっぱり、きみを知るのは俺が一番だ。誰から教えられるわけでもなく、俺が園崎遥を知るんだ。――それはなんて幸福なことなんだ」

 ファンとして、好きになったアイドルを隅から隅まで開拓される。
 園崎遥の姿を手に入れた彼に、私自身を知られてしまうことにただならない戦慄が駆け抜けた。
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 私、園崎遙―そのざきはる―は今をときめくアイドルグループに所属しています。今日もまた、私たちのCDシングルの発売を記念して、応援下さるファンたちとの握手会に出席です。

「順番です。握手権を持ってる方は速やかに列に並んでください」
「一人時間30秒でーす」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 私たちは握手だけじゃなく、写真撮影や会話を含めて30秒という制限が設けてあります。短い時間の中ですが、ファンたちは考えていた応援のコメントや、ただ30秒間にぎりしめる方もいれば、撮影する方もいます。

      
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 ファンの方が私にいろんな形で応援メッセージを残してくれるので、私も頑張ろうって明日に勇気を頂いています。
 そう。この握手会は、ファンと私たちが綺麗に繋がる一時の空間だと私は思っていました。 この場が終わればまたファンたちと放れてしまう。お互い住む世界が変わり、別々の場所で働かなくちゃいけなくなるから。
 コンサートでもファンの声を私たちは聞くことができない。一方的に歌を届けるコンサートと違い、面と向かって思い思いのコメントを真摯に聞くことができる。握手会はそういう場所なのです。
 だから、私にとってはとても重要な会であり、私の評判も聞くことができるのです。

「遥さんの優しい笑顔に癒されます!」
「遥さんの歌声大好きです!」
「ありがとう!」

 握手をして消えていくファンたちの姿。たとえ今回これで終わりでも、私たちはきっと繋がりあえるから淋しくない。
 でも、一部のファンたちは握手会の終わりを諦めきれず、再度並んでは握手を繰り返す。

「きみ、握手権もってるの?さっき並んでたけど、あるなら見せて」
「う・・うおおおおおおお!!!」
「おい、こいつを引きずり出せ!」
「はーるさぁぁぁぁああああん!!!」
「あ・・あはは・・・・・・」

 一部のファンの行き過ぎた行動に驚かされることがある。そういうファンに好かれると、時に暴動となることもある。
 この話は、あってはならないその状況から始まります。
 好きすぎた想いは時に、私ですら信じられない行動を引き起こすのだと考えさせられました。



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