入れ替わる相手で本当に恐ろしいのは、男性なんかじゃなく、女性の方なのかもしれない――。


 せっかく手に入れた『粉薬』で意中の神谷先輩と身体を入れ替わろうと思っていたのに、私のドジで転んで割ってしまったのだ。その際に不運にも、たまたま通りがかったクラスメイトの魚谷ありさと、身体が入れ替わってしまった。

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「アハハハ!ばっかじゃないの! 」

 私、花園咲―はなぞのさき―の身体になったありさが爆笑していた。入れ替わった時は混乱して半狂乱していた彼女だけど、時間が落ち着きを取り戻して、わたしの話を聞くくらいはできるようになっていた。
 元々彼女は不良ぶっている黒ギャルで私なんかと疎遠の存在だ。だから、事実を打ち明けたら殴られるのではないかと思っていた。

「そんな不思議な薬使ってどうするつもりだよ?人生を一からやり直したいのかよ?」
「そ、そんなつもりじゃなくて、先輩に振り向いてほしくて――」
「いや、やり直した方がいいかもしれないな。こんな薬を割っちまうほどのドジな女なんて先輩もウザいだけだし」
「そ、そんなぁ・・・」

 ぶっちゃける咲(ありさ)に私は深く傷つく。でも、確かにありさの言うことは当たってる。先輩と入れ替わった後のことは考えていたけれど、他人と入れ替わった後のことは考えていなかったのだ。
 つまり私は、先輩の人生を奪いたかった。先輩になりたかったのだから――。愛しているからすべてが欲しい。人生そのものが欲しくなってしまった。先輩という人間が欲しかった。
 先輩の尊厳を無視した愚かな行為を、この薬を手に入れてから思いついてしまったのだから。

「あの、ありささん。お願いだから、私の身体返してくれませんか?」
「あん?」
「ありささんだって、自分の身体に戻りたいって思いますよね?だったら、もう一つ『粉薬』の瓶がありますから、それを使ってお互い元の身体に戻りましょう。ねっ?そうしませんか?」

 計画が実行できなかったら即中止。振り出しに戻って一から計画を立て直さなければいけない。ありさと入れ替わった身体を元に戻すことのために、一本『粉薬』を無駄に使うことになるのだけれど、不注意による事故の犠牲として元の身体に戻るためなら安いもの。
 私はありさを説得して下手に出ながら様子を伺っていた。

「・・・は?別にいいし」
「・・・・・・・・・えっ?」

 私はありさの言ったことの意味が分からなかった。何がいいの?どういうこと?きょとんとしている私の顔に、ありさは分かりやすくもう一度伝えてくる。

「この身体で私は構わないし」
「え・・・ええええぇぇぇ!!?」

 なに言ってるの?ありさは自分の身体を捨てるの?
 私の身体に居座ろうとしてるの?
 なんで?意味わかんない。

「ど、どうして!? 」
「人生を一からやり直したいから」

 ありさははっきり言った。先程私に言った言葉を自分に言って聞かせた。

「ギャルも良かったけど学園の評判悪いし、成績も悪いし、何かあったら私が一番に呼び出しくらうし、悪い噂しかたたない」
「でも、でも!本当のことじゃないの!?」

 ありさが成績悪いのも、援助交際しているという噂が出ているのも知っている。煙のないところに火は立たないのだから、実際それを目撃した人がいるから先生に呼び出しを受けたのではないのだろうか。

「ちげぇし。あれ、うちの彼氏だし。高校生なんだけど背も高いから大学生に見えるけど、一個違いなんだけど」
「・・・そうなんだ」
「それなのに私たちを見かけた連中がセンコーにチクって親を呼び出される始末。勘違いだって先生たちも認めてくれたけど、私の身なりや普段の素行が噂を作ったとかほざきやがった。まぢ、むかつく」 
「・・・・・・」
「だから、本当に私が身なりをまともにして、普段の学園生活に溶け込めれば、私たちの付き合いは許してくれるのか確かめたかったんだ」

 ありさは彼女なりに、元に戻ることを望んでいた。歪んだ理想を私たちはお互い持っていた。

「・・・だからって、なんでそうなるのよ。そんなの、自分の身体でやればいいじゃん!!」

 ありさはギャルをやめようとしていた。その為に、私 と の 『 入 れ 替 わ り 』 を 利 用 し よ う と し て い た 。ギャルではなく、普通の中学生に戻るために、花園咲の人生を奪おうとしていた。

「今更私の肌が白く戻ると思ってるの?髪の色も抜いて金髪にしたし、肌も週四焼いてそこまで黒く染めたのよ。 それに、もう処女膜もないし」
「・・・ぅ」

 汚れているありさの身体に嫌悪感抱いてしまう。今までと全く違う私の視界、私の体重、身長。それに慣れろということは恐らくできない。だって私は花園咲だから。

「イヤよ。私は元の身体に戻りたいの!こんな汚い身体絶対イヤよ!!!」
「汚い?」

 ピクッと、私が発した失言にありさの眉間に皺が寄った。口を閉ざしたところで遅かった。ありさは私の顔でにこやかに笑うと、突然スカートを脱ぎ初めたのだ。

「なにしてるの?やめてよ!」

 ありさは私の忠告に聞く耳を持たず、スカートを落としてショーツをのぞかせる。

「はっ!今時白のショーツ穿いてるなんてダサすぎ。もう少し大人っぽくなってもいいんじゃねえか?」
 
 ショーツをなぞりながら私の身体を弄るありさは、一体何をしようとしているのかわからない。でも、ありさが次に発した言葉は私を驚愕させた。

「オナニーしてる?」
「お、おなっ?!」
「ああ、ごめんなさい。聞き方が直球だったわね。オナニーしってる?」

 全然直球のままだ。私が顔を赤らめると、それが答えだというように表情を歪める。

「よかった。そこまで初心だったらどうしようかと思った。 みんなオナニーやってるってことだな」
「私の口で変なこと言わないで!」
「やってくれよ、今この場で。私を慰めてくれよ」
「それって・・・どういうこと?」

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「毎日やってるんだろ? どこが弱くてどこを弄れば気持ちよくなれるか自分が一番よく知ってるだろ?だからさ、私を気持ちよくしてくれよ」
「そんなこと出来るわけないじゃない!!!」

 私は思わず大声を出してしまった。誰が来るかわからない教室で、自分で自分の身体を弄る行為なんて、人目があるのに出来るはずがない。それに私は両親が眠りについて、布団の中で隠れてするタイプの人間なの。夕暮れ時になんてやったことがない。

「イヤなら仕方ない。この格好のまま廊下に飛び出して誰でもいいから抱いてもらうだけだ。オナニーなんかじゃ比べ物にならないセックスの快感をこの身体に焼き付けてやるよ。処女を失う痛みを味わえないけど、それはある意味幸せなことかもな」

 そんな私の想いなど関係なく、ありさは私に強要する。机の上に腰掛けて、椅子に足を持ち上げて私を待つその姿勢は、男のように威厳があって、格好良いくらいに怖かった。

「酷い・・・どうしてそんなことするの・・・」

 私は声を震わせてありさに近寄った。せめて誰かに見られないように、ありさが脱いだスカートをもう一度足に通していった。


 
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