「うひょう!アイドル萌え~!」
「エロエロでやんすねぇ~」

 千村貴明―ちむらたかあき―と本山貴一―もとやまきいち―はアイドルヲタクの名に恥じない、三次元にとどまらず二次元のアイドルをも追いかける。携帯アプリからテレビアニメまですべてを逐一チェックするほどのヲタクぶりを発揮する。
 今回は薄い本を教室で見ながら下卑た笑みを浮かべていた。

「入れ替わりモノ最高っ!」
「それはお前の性癖じゃーい!」

 貴明の頭にハリセンが振り落され、気持ちいい音が響いた。背後を振り向くと、幼馴染の高橋茜音だけじゃなく、二人を取り囲む様に女子たちの冷たい視線が向けられていた。
 四面楚歌状態。勝てる見込みのない戦いの最中、奪われた宝具をこれ見よがしにぞんざいに扱う川上友子―かわかみともこ―の姿があった。

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「男子たちってよくこういうもの平気で持ってこれるわね。気持ち悪い妄想が顔から滲み出てるわ。歩く性犯罪よね」
「ゲッ、委員長!?」
「漫画は学校に持ち込み禁止」
「それは夏休みの戦利ひ――」
「口答え禁止。没収」

 びしっと、女子代表であるかのように凛とした態度で死刑を突きつける。友子は貴明の同人誌を鞄に仕舞うとそのまま踵を返し教室を出て行ってしまった。健全たる精神は健全なる肉体に宿る。未成年を脅かす不健全な汚物を責任を以て処理するが如く、その態度は貴明に、このままでは友子に同人誌を捨てられるという危惧を抱かせた。

「ちょ!俺の宝物ぉ!!」
「委員長に奪われた一夏の想い出でやんすね、あだぁ!!」

 余計なことを言った貴一がやられた。

「俺の宝物ぉ~。本山くうぅぅん!!」
「繋げて言うな、変態!」

 貴明は既に毒されている状態である。茜音から再びハリセンが振り下ろされた。
 何度もコテンパンにされる貴明。だがしかし、同人誌の愛がある限り貴明は何度でも蘇る――『腐敗の精神―ゾンビパウダー』―。

「フッフッフ・・・委員長め、この恨み晴らさず置くべきか」
「貴明、あんた怖っ!」
 
 その笑みは、愛する者とは真逆の、憎き者に対する侮蔑の微笑みだった。貴明は既に、友子に対する秘策を手に入れていたのだった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ただいま」
「おかえり。ご飯できてるわよ。それともお風呂先に入る」
「うーん。お風呂かな」
「じゃあ早く済ませてね。後がつまるから」

 学校が終わり帰宅した友子は、リビングでテレビ見ながらくつろいでいる母親に軽く声をかけると、紺色のプリーツスカートの裾をなびかせながら階段を駆け上り、二階にある自分の部屋に入った。はぁはぁと息を荒くしながら辺りを見回し、自分の部屋の様子を伺った。

「はぁ・・はぁ・・んっ・・・・・・」

 友子は顔にまとわりつく髪の毛を手で後ろにかき上げた。洋服の箪笥の横に会った姿見にその身を映した。白と青の制服に身を通した凛々しい風貌のある友子。未だ呼吸が整わないせいで胸もとが上下に振れていた。

「はぁ・・・・・ついに俺のターンだな・・・」

 と、友子は鏡を覗き込みながら自分の顔を眺めた。そして、嬉しそうに笑顔を作ると、両手をゆっくりと胸元へ宛がっていった。
 制服のシャツに皺を作りながら柔らかい胸をてのひらで包み込んでその感触を確かめていた。鏡の前で両手で胸を弄りながら口元を緩ませている友子の表情が普段とは別人だった。

「すげえ柔らか。・・・これが委員長の胸か」

 まるで他人口調にしゃべる友子。両手で制服ごと自分の胸を中央に寄せている手つきがイヤらしかった。鏡に映る自分の姿を認識して、友子は思わず行動を中断して不敵に口元を釣り上げた。

「この胸の重み、スカートを穿いている涼しさ、まとわりつく髪の毛、発生する声、・・・そして目の前に映る委員長の姿。――これが今の俺の姿だぜ」

 友子の声で喋る、貴明の思惑。恨み辛みが重なった後に広がる相手に対する同情無しの境地へ辿り着いた。
 憑依成功。二マリと嘲笑う友子の表情は、貴明のそれと完全に一致だった。

「俺の宝具を捨てた罰だ。悪いけど委員長の身体で愉しませてもらうからな」

 絶対に許さない、という意志表示を友子本人に突きつけているようである。断りなどいらないように、再び行動を再会した友子(貴明)は、ワイシャツのボタンをはずして前屈みになると、襟を引っ張りその中を覗き込んだ。

「おぉ。青のブラを目視できるぞ!すげえ角度だな、絶対男じゃ見ること出来ねえよな」

 本人の立場にならないと視ることが出来ないブラちらに、憑依の素晴らしさを感じる貴明である。制服の中でブラに収まっている女子の胸に鼻の下を伸ばしている。谷間もくっきりと作られているのを見ると、友子の胸は見た目よりも大きそうだった。

「へへ、委員長の胸見せてもらおうかな。・・・そういえば、お風呂に入るって言ったっけ?服を脱がないとお風呂には入れないもんな、うん・・・」

 なにかを悟ったように頷いた友子(貴明)は、ブレザーのボタンを緩めて腕から外し始めた。




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