純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『入れ替わり』 > 粉薬『青空』

 部屋の中は男性特有の匂いで充満していた。
 これが男性の部屋というものなのか。それとも、この男性の生活臭からくる匂いなのか。
 酷い臭いだ。夏の暑さと相まって、一日中敷かれている布団の白いシーツは男性から流れ落ちる汗を吸って黄色く汗ばんでしまっている。木造のボロいアパートの一室は、ワンカップのお酒やカップ麺の残骸が至る所に転がっており、ゴキブリが這っていてもおかしくない。また、洗濯籠に溜まりにたまった洗濯物からも、男性の匂いが発散されて部屋に陰気くさい香りを漂わせる。
 40歳後半の身体からかおる加齢臭。脇のしたに溜まった汗からも酸っぱい臭いが籠ってきていた。
 最低な身体。最悪な環境。こんなところに住む人間がいるのだろうか。

「・・・・・・あ、それは私か」

 自分が自分だと認識できない。身体の所有者だと認められない。出来るはずがない。
 だって、私――綾辻晴夏は、ほんの少し前まで40歳した中年のおじさんではなく、女子高生をしていた女の子だったのだから。
 この身体――武居惟とひょんなことから身体を入れ替えさせられた私は、身体だけじゃなく、生活そのものを奪われた。綾辻晴夏という女子高生のカラダにはいま、武居惟という男性が使っている。そういう『粉薬』が世に出回っているらしく、私はすべてを奪われ、生きる希望すら見出せないでいた。
 惟の住んでいるアパートに戻ってからは誰とも接触を避け、食事もままならず、一日が過ぎるのを死んだような目で眺めていた。
 その結果が部屋中にかおってくる匂いだった。生活臭というより腐敗臭。もともと惟という男性の鼻が利くのだろうか、私が何もしないで一日が終わるに連れて、身体から出てくる体臭がきつくなっていくのを感じていた。
 お風呂もはいっていないのだ。エアコンのない熱い部屋の中で、二十四時間布団の上を転がっていれば布団だって汚れるに決まっている。
 人は綺麗にするのが普通だけど、私の汚れはもう落ちることはないと分かってしまっている――私は綾辻晴夏を汚してしまった日から、精神が汚染れてしまったのだ。
 だから、どうなってもいい。誰からも心配されず、誰からも煙たがれ、誰からも愛されず死んでいく――武居惟として生活するしか選択肢がないのだから。
 頭の中で考えても仕方がない。決定した事実を覆すことはできないのだから、絶望の中で死んだような目で生きていく。
 私の中で二度と晴れることのない暗雲。どんなに毎日が猛暑日で快晴の青空だとしても、私はそれを見ることはできないのだから。 

 ――ピンポーン

 誰かがやってきた。武居惟のもとへ初めて誰かがやってきた。

 ――ピンポーン 

 もう一度呼び鈴が鳴る。居留守を使っても問題なかったけど、私は来客を無碍にできるほどお人好しじゃなかった。久々に布団から身を起こし、重い足取りで玄関まで歩いていく。
 本当に重い。気だるい。巨体の体重を支えるのも辛かくて、足場に転がるペットボトルを踏んで転んでしまった。

「イタタ・・・」

 泣きそうになりながらも、再三と呼び鈴を鳴らす相手のもとへ行かないといけない。私を呼ぶ相手が一体誰なのか知りたかった。玄関までやってきて鍵を開けた私は、扉の前に立つ人物の顔を見て瞳を大きく見開いてしまった。

「――ゆ、友雪・・・」

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 私は声を詰まらせた。私の目の前には、親友の斎藤友雪―さいとうゆき―が立っていたのだ。
 なんで・・・どうして・・・嘘っ・・・困惑する頭の中で、今の自分の姿を見せたくないという想いが強くて扉を一度締めてしまう。

「あっ!待って――!」

 ガシっと、私が扉を閉める前に友雪がドアノブを掴んで扉が締め切るのを防いでいた。
 親友同士でありながら面会を拒絶する私を友雪は必死につなぎとめようとしているみたいだった。

「どうして・・・!アナタ、誰ですか?人違いですよっ!」

 友雪に扉越しに語り掛ける。友雪と惟は面識がないのだから、友雪が惟の家に来ること自体間違っているのだ。晴夏―私―を探しに来た、という自分勝手な見解はありえないと自ら否定し、友雪に対して非情な言葉を投げかける。

「帰って下さい!・・・帰ってよ!!帰れ!!!」

 言葉を強めて友雪を拒絶する。ドアノブから力が緩まり、扉が重い音を立てて締まる。友雪と顔を合わせることもないまま、私は扉を隔ててすれ違った・・・。
 扉の前で友雪が帰っていくまでしばらく待ち続けた。

「・・・・・・晴夏ちゃん」

 それでも、友雪は扉の前に立っていた。それどころか、いま友雪はダレの名を呼んだ?

「晴夏ちゃんでしょ?」

 もう一度友雪は優しく語り掛ける。友雪はこのアパートで誰に会いに来た?
 惟ではなく、晴夏に会いに来てくれた。誰も来ないアパートに住む私に、親友は会いに来てくれたんだ。惟が手に入れられなかった唯一無二の親友が、私に会いに来てくれた。
 そう思ったら、居てもたっても居られなかった。扉を開けた私は、友雪の細い身体を愛おしむ様に抱きしめた。

「ごめんね・・・ごめんねっ!ウソついて・・・ごめんね!ふえええええぇぇん!!」
「いいよ。全てわかってるから、晴夏ちゃん」
 
 晴夏は私を最初から受け入れてくれていた。身体が『入れ替わり』、男性の身体になった私でも、付き合い方を変えずに惟を晴夏として見てくれていた。
 それは本当に幸せなことだった。皆が私の醜悪な姿を見て対応を変えてしまったにも拘わらず、友雪だけは今まで通りの付き合いでいてくれたのだ。親友以上の絆でつながっていると確信した。私はこんなにも友雪を愛おしんだことはなかった。
 急いで部屋を片付けて友雪を部屋に招き入れたけれど、 そのにおいは簡単に落ちるものじゃなかった。友雪が怪訝な顔をしかめていた。こんなことなら最初から部屋を片付けておけばよかったと後悔する。

「どうしてここに来たの?どうやってここがわかったの?」
「最近、晴夏ちゃんの付き合い方が近かったから。ヘンだと思っていたんだ」

 あれから、晴夏として生活し始めた惟は、その立場を利用して友雪に色々なちょっかいをしてきたのだという。女子同士の悪戯感覚で胸を触ったり手を繋いだり、積極的に友雪との関係を持ち始めたのだという。

「それで、昨日は強引にホテルに連れていかれて。『こんなの、女の子同士でおかしいよ』って尋ねたら、『こんなこと全然普通だよ。みんなやってることだよ』って言うことを平然と言ってきたの。私、なんだか晴夏ちゃんが怖くなって・・・全然別人になっちゃったみたいに感じて・・・急いでその場を離れたの」
「あいつ!私に成りすましてなんてことしてくれるのよ!!」
 
 友雪の告白により、晴夏に成りすました惟は好き勝手なことを振りまいているらしかった。危うく友雪を犯すところだったと思うと、頭の中が熱くなって、怒りで自分を忘れてしまいそうになっていた。

「絶対にあいつを許さないんだから!!私は身体を取り戻してみせるっ!」

 友雪を危機に瀕し、これ以上私に成りすまして許せるはずがない。私が後悔して何も行動しなかった毎日を恥じ、友雪を守るためにこれからの生活を過ごす。一日でも早く私の身体を取り戻し、友雪と再び笑って学校を過ごせるようにする。猶予はない。怠けているのは今日で終わりにしよう。夏の暑さに負けないくらい、私の身体は久しぶりに滾っていた。

「友雪。危険な目に合わせてごめんね。私頑張るから、絶対に――えっ?」

 ふと私の視線から友雪が消えた。視線を落とすと、友雪が穿いているズボンの上から、逸物をなぞっている姿が見えた。

「本当に熱そう。晴夏ちゃん、とっても苦しそう・・・」
「ちょっと、友雪・・・なにしてるの!?」
「私にまかせて・・・」
「まかせてってなに?なにしようとしてるの!?」

 友雪の思わない行動に私は困惑していた。友雪の手がズボンを下ろして、逸物を外気に曝しだす。

「ほんとう、滾ってるね。おち〇ち〇硬くなってる」 
「これは・・・ちが――あっ!」

 勃起と、男性の逸物に抜くということをしてこなかった私だ。友雪の手が触れると、逸物は喜ぶようにすぐに硬く反応を示す。 握りやすそうに硬くなった逸物を、友雪の手が筒を作る様に掌で丸を作って、逸物を上下に扱いていく。

「これって、勃起って言うんだよね?晴夏ちゃん、痛くない?」
「ぁ・・・なにしてるの、友雪・・・?やめて・・・」
「ううん、やめないよ。私、晴夏ちゃんが苦しんでいる姿は見たくないから。だから、私が、晴夏ちゃんを気持ちよくさせてあげる・・・」

 ドクンと、心臓が高鳴るのを感じた。逸物がピンと直立に伸びて、友雪の扱きを悦ぶように震えていた。
 友雪が私の逸物を扱いている、そんなことに興奮を覚えたらいけないと、女性としての理性を必死につなぎとめようと私は抵抗を示す。

「ダメ・・・友雪・・・私の今の姿を見てわからないの?おじさんだよ?こんなキモいおじさんなんだよ・・・」
「ううん、晴夏ちゃんがどんな姿になっても、晴夏ちゃんは晴夏ちゃんだよ。私の大好きな晴夏ちゃんでしょう?」
「――っ!でも、でも、汚いし、臭いし、キモいし・・・」
「私は我慢できるよ・・・晴夏ちゃんのしてほしいことをシテあげる・・・」

 友雪はそういうと、私の逸物に顔を近づけた。そして、愛おしく頬張る様にして口に含んだ。

「ん・・・・・・んんっ、んっ・・・」

 逸物が先端から順にねっとりとした熱に包まれる。逸物から生まれる快感から私は思わず腰を引いた。

「んふっ、んっ、んんっ・・・んん・・・・・・ケホッ、ケホッ」
「なにやってるの、友雪っ!?放れて!だ、ダメえぇl!!」
「んっ・・・れろっ・・・んんっ、ちゅむっ・・・んぁ」

 友雪は私の言葉を聞かず、私の逸物を口の中から放さない。むせび返すほど臭いにおいを漂わせる私の逸物を、我慢して口に頬張り続ける。口の中で舌が動くたび、逸物が友雪の唾液に濡れていく。時折えづきそうになりながらも、決して得意じゃないフェラを友雪はし続けた。

「んんぁっ・・・んちゅっ・・・はむっ・・・・・・んちゅ」
「いや、ゆきぃ・・・やめて・・・私はこんなこと望んでない・・・。友雪を穢したくないの!」

 親友の友雪が私の逸物を舐めてフェラしてくれている。私が男性だったら、どんなに誉めることだろうか。美少女で、人気がある友雪に性器を咥えさせるなんて男性だとしたら嬉しくないはずがない。
 でも、私は女の子だ。そして友雪とは彼氏じゃなく親友だ。親友がフェラをしている―間違った―行為を止めてあげなくて果たして親友と言えるだろうか?
 私は自分の快楽より、親友の幸せを願う。だから、友雪にはこれ以上はやめてほしいのだ。

「ん・・・んちゅむっ・・・じゅぶじゅぶ・・・・・・ほんなほとふぁいよ?」

 そんなことない――逸物を咥えながら言葉を発しようと口を動かす友雪に振動が震えた。 

「今まで辛かった分、気持ちよくなってほしい。私も一緒に汚れてあげる。一緒に堕ちるところまで堕ちよう?一人にしないから・・・・・・」

 身体が『入れ替わって』、人生を奪われ、華のない人生へと叩き落とされた私に、友雪が傍にいてくれるだけでどれだけ救われるだろう。一人でいるから望みは絶たれ、絶望が襲い掛かってくる。でも、隣にもう一人、誰かいてくれるだけでも絶望の重さは全然変わってくる。話し合いができる。楽しく食事ができる。 遊ぶことが出来る。悦び合うことが出来る。悲しみを分け合うことが出来る。
 救いが生まれる――私は泣きそうになった。私のことを分かってくれる、一人の親友がいれば他は何もいらない。友雪が私の傍にいてくれるなら、私はもう抵抗しないで彼女を受け入れよう。

 それがたとえ、友雪を絶望へ引きづりこむ、自分勝手な思惑だとしても構わない――。

「んじゅる・・・・・・んぁっ・・・れる・・・れろ・・・んふぅ・・・」

 口の中で舌を動かして、亀頭や裏筋を丁寧に舐めていく友雪。柔らかな唇、口内の体温が熱く、舌がくすぐったい。逸物から溢れ出る我慢汁で口を濡らしながら、懸命に私の逸物を舐めている。私の逸物に心地いい刺激が広がっていく。

「ゆきぃ・・・ゆきぃ・・・!で、でちゃいそうだよぉ・・・!」

 私は友雪の口内に発射しそうなのを我慢して告げる。友雪は口を止めて逸物をゆっくりと吐き出した。
 友雪の唾液に塗れた逸物がキラキラ照らし出され、太く大きく伸びた逸物が天井を向いて高だかくそびえ立っていた。

「これなら入りそうだね・・・」

 友雪が妖しく微笑むと、着ている制服を脱いで全裸になった。友雪の綺麗な裸体を前に私も興奮を拭えない。もともと色白の友雪の肌、ふくよかな乳房、淡い桃色の乳首がほのかに赤く染まっている。ショーツから現れた友雪の大事な秘部も、私の逸物を咥えて興奮していたのか、少し湿り気があってイヤらしかった。
 まるで美女と野獣みたいだ。友雪に目を奪われていた私に手をまわして抱き付いてくる。友雪はそのまま私を床に押し倒すと、騎乗した友雪が私を見下ろしながら逸物と私の表情を見比べていた。

「じゃあ、挿入れるね・・・」
「挿入れるって・・・・・・・・・」

 いいの?本当にいいの?
 友雪にとって私とセックスすることを厭わないの?
 後悔はない?とかもっと声をかけてあげたい言葉がいっぱいある。でも、私も言葉が出てこないほどに興奮して、酸素を取り入れることが出来ないほど緊張していた。
 私と友雪――親友同士で私たちは初めて肉体を混じり合った。




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 目が覚めて、知らない木造アパートの天井を見上げる。
 年期が入ったシミ、お布団を敷いた畳の汚れと、足の踏み場もない週刊誌と食べた後の空いた容器とゴミの山。
 すべてをどかしたらゴキブリが出そう・・・。もし運悪く遭遇してしまったら私は果たして安心して眠ることが出来るだろうか。
 ここは片付けの出来ない人の家・・・そして、武居惟―今の私―の家。

「もう、いや・・・。どうしてこんなこんなことになったの・・・」

 身体が入れ替わった途端に犯罪者として警察に追われる身になってしまった。迂闊に外も出歩けない恐怖に私はめっきり弱くなってしまった。
 元の生活に戻りたいという願いが、現実逃避という叶わぬ夢に成り果てる。それでも私は諦めきれず、こんな家に居たくもなくて、気付けば外をふらついていた。
 行き先は限られている。平日の昼間だけあって人気は疎らといえども油断はできない。
 自分の家に・・・ 綾辻晴夏の帰る家へ目指していた。
 両親共働きで家に誰もいない時間帯で、惟―赤の他人―として家に入ることのできない身ながらも、外から眺めて何事も変わっていない平穏を眺めていたかった。

「あぁ・・お家だ・・・。私の帰る家だ・・・」

 放れてしまった家を眺めながら私は涙腺から滴がこみ上げる。大の男が家の前で泣く姿は決して見せたいものではないけれど、私はそれでも涙を流さずにはいられなかった。
 私はここにいる。だから家に居れてほしい・・・。
 閉ざされた扉のノブを軽く握り、思わず帰宅するように慣れた手つきでドアを開けようとしていた。

 ガチャっと開いた。私の涙がピタッと止まった。

「・・・・・・誰かいる」

 誰もいないはずの家に誰かいる。不用心に家の鍵を開けたまま外出するような両親ではない。だから、この時間に誰かいるとすれば、それはきっと良くないことが起ころうといているんだ。私はいてもたってもいられず、家の中に入っていった。
 心臓の音が高鳴る中、できるだけ相手に気付かれないように音を立てずに行動することを心掛ける。焦る気持ちを静めて慎重に行動を進めていく。

「・・・二階から声がする」

 人の気配がするのは二階だった。私の部屋と親の寝室が並ぶ部屋の前で私は、どこから声が聞こえるのかを聞きわけた。
 私の部屋の方だった。 扉に耳を当てて声の主の言葉を聞く。

「へへ・・・。やっぱ夏と言えば水着だよな。こんなスケスケの水着を買い込んでいるとは、いったい誰に見せようとしていたんだろうな。オジサンがビーチで晴夏ちゃんの水着姿に遭遇したらそのままベッドにダイブだよ。・・・おっと、今は俺が晴夏ちゃんなんだもんな。 この水着姿も視放題ってくらぁ!おっと、鼻血が。ふへへ・・・。ビキニの食い込みをもっと強めてみるかね」
「なっ、なっ・・・」

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 震えた声で私は勢いよく扉をあけ放つ。中にいた人物、晴夏(惟)の異常な性癖に我慢できなかったのだ。

「なにしてるのよ!」
「おやぁ?晴夏ちゃん。なんで居るんだい?」
「あんたこそなんでいるのよ! 学校は!?」
「休んだ。サボり」

 あっけらかんと、悪びれることもなく言い放つ。

「ああ、両親たちにはちゃんと学校行ったってことにしてるよ。優等生の晴夏ちゃんが学校をさぼることは親は許さないからね」
「つまり、嘘をついたのね」
「友雪ちゃんとの登校も捨てがたかったけどね。休む趣旨を伝えただけで帰りお見舞いに来てくれるそうだし。遅かれ早かれ友雪ちゃんは俺のモノになりそうだ」

 元々一目ぼれしていた相手を獲物にする下種な視線を向ける晴夏(惟)に友雪の貞操の危機を感じざるを得ない。私はわなわなと震える拳を握りしめて、怒りを抑えて声を低く言い放つ。

「友雪になにかしたら許さないから」
「おお、美しい友情だね。でも今の俺は友雪ちゃんのことなんかどうでもいいんだ。 俺はきみしか興味ない」

 あれから晴夏(惟)のストーカー癖は、友雪から相手を変更したのだ。親友としてはこの上なく嬉しいことだけど、自分のこととしては悲しい話だ。その相手は私に変更したのだから。しかも、ストーカーとして情報収集を採掘していた惟にとって、標的の身体を手に入れたということはそれだけ行為をしやすいということだ。

「今はきみのカラダでファッションショーを開催中なんだ。きみがどんな格好が好きなのか、どんなファッションを好むのかを見定めているんだ。どうだい?興奮するだろう?」
「自分の身体を勝手に使われて、良い気分なわけないじゃない!それだってあんたの趣味趣向なだけで選んでるくせに、同意を求めてこないでよ、気持ち悪い!」
「ぶっっっひゃっひゃっ!自分の身体を気持ち悪いって言うなよ。お世辞にも素体が良いんだ。突然乱入してきた観客を迎え入れてやってるんだ。エロ水着を見れて気持ちいいです、ありがとうございますくらい言ってほしいもんだぜ」
「あなたの行動が気持ち悪いって言ってるのよ!自分の醜態をさらすために学校休んで許されると思ってるの?いい加減にしてよ!」

 惟の存在自体が私にとっても親友の友雪にとっても危険な存在だと察する。一刻も早く元通りに戻らなければならない私は、惟のボロアパートに転がっていた『粉薬』をポケットから取り出した。

「今度は力づくで押さえつけてやる。もう一度私と入れ替わるのよ!」

 この悪魔を追い払うために、私は駆け出す。しかし――、水着姿の私を追いかけているうちに、今まで感じたことのない違和感を下腹部から覚えることになる。
 悶々とした感情がパンツの奥に仕舞っている性器から沸き起こっている。歩きづらくてパンツの奥で擦れる感覚に歩きづらくて、私は思わず小幅を狭めていた。 

「アハハハ!当たり前だよ。中年のおっさんが女子高生の水着姿を見てなにも感じないと思っているの?欲情してるんだよ、そのカラダは。きみの意志なんか関係なしに、俺のカラダに染みついた性癖に反応しているんだよ」
「そんな・・・そんなことって・・・」

 股間部分がむず痒く、思わず内股になって悶え始める。 晴夏(惟)を見る度に抑えきれない感情が吐き出され、既に股間に生えた逸物は勃起して痛かった。
 これが男性の興奮状態・・・。思わず味わってしまう感覚に、一瞬の隙ができる。

「ほらっ、いっそのことにおいも嗅いでいいんだぜ?」

 晴夏(惟)は逃げるのではなく、私に近づき、そのまま大きな巨体をぎゅっと抱きしめたのだ。私の身体で、おじさんの身体を抱いていた。
 シャンプーのいいにおいが香る髪の毛。水着から押し当ててくる胸の柔らかさ。白い肌細い腕から優しく抱く感度に、私は一歩も動けなくなった。

「アハッ!そんなに気持ちいいんだ。お・じ・さ・ん・っ」
「ち、がぅ・・・。私は・・・」

 喉が焼けて声が出ない。呼吸が出来ない。
 私が晴夏(惟)に抱かれている・・・。

「こんなにおち〇ち〇勃起させて、本当は私を犯したくて仕方なかったんでしょう?」
「やだぁ・・。私の真似をしないで・・・」
「私は綾辻晴夏。・・・でしょう、お・じ・さ・ん・?」

 私の顔を見上げるその顔も、その声も、その姿も、もともと私の身体だったもの。
 一番大事にしていたもの。
 一番かわいがっていたモノ。
 そして、親友の友雪よりも愛していた者。 
 そんな彼女に逸物を扱かれて、感じないわけがなかった。

「熱い。おじさんのおち〇ち〇。結構溜まってますね」

 手コキで扱かれただけで、今まで味わったことのない快感を体感する。性器が外に出ているのだから、まるで空気に触れただけで全身性感帯になってしまったみたいに気持ちいい。そして、女性の手がこんなに細くて優しくて、温かくて、柔らかくて、気持ちよくなれるだなんて知らなかった。

「カウパー液もいっぱい吐き出して・・・すぐにイっちゃいそう」
「はぁ・・あっ・・ああっ!・・・あんっ!」

 女の子みたいな声をあげて喘ぐ私に、晴夏(惟)は容赦しない。手のストロークを早めて、亀頭部分を撫でまわして透明な汁を逸物全体に塗りたくる様に弄り回した。

「や、やだぁ・・感じちゃう・・・。だめ、で、でちゃぅ!」
「じゃあ、続きはベッドでしよう?」
「ベッド・・・えっ、えっ?」

 晴夏(惟)が体重を乗せて私を倒しこんだ。ベッドの柔らかい生地に沈み、天井を見上げながら・・・ビキニをずらして秘部に逸物を挿入しようとしている晴夏(惟)の行動を、私は止められることが出来なかった。




 
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 『粉薬』で本命の子と身体を入れ替えようと企てた武居惟の間違えで、私、綾辻晴夏が身体を入れ替えされてしまった。中年のおじさんの姿のまま生活なんて死んでもしたくないので、私は晴夏(惟)を引き連れて自宅までやってきた。
 年配だけあってお金はありそうな広い一軒家で一人で生活しているようだ。リビングや和室、子供部屋まで用意してあった。

「おじさん、子供は?」
「いないよ。ここで一人で生活しているんだ」
「そうなんだ。 てっきりマンションで布団散らかしたまま眠っている駄目男かと思っちゃった」

 私が先に中に入ったのを確認しておじさんは家の鍵をかける。ガチャッと鍵が回り、玄関の扉が開かなくなって、晴夏(惟)の口元が吊り上がった。

「で、『粉薬』ってどこにあるの?」

 和室で待っていた私に追いついた晴夏(惟)は、今までとどこか雰囲気が変わっていたのを、私は感じていた。

「ないよ、そんなもの」
「・・・・・・は?」

 家に例の薬が置いてあると言っていたはずの惟を信じて、学校まで休んでやってきたというのに、嘘を教えられたっていうことに口調を強める。ふざけてるのと本気で怒ろうと思った矢先、惟は私の目の前で制服を勝手に脱ぎ始めた。

「ちょっと!?」
「苦労したんだ、この身体を手に入れるのは。お嬢ちゃんの言う通り、その身体じゃ目立っちまうからね。不審者として警察に連絡されたら俺の計画は全部パーだ。だから、実行は即計画しなければならなかった。諸々不安要素はあったけど、無事に成功したようだ」

 頭から制服を脱ぎ捨て、フックで止まったスカートを足から落とす。私は、自分の下着姿を目の前で曝され、言葉を失っていた。

「何言ってるのよ・・・?私の身体は誤解なんでしょう?間違いなんでしょう?なんで成功とか言っちゃってるのよ?」
「確かにその通りさ、俺の狙いはお嬢ちゃんの身体じゃない。でも、お嬢ちゃんの身体でもさほど問題ない。むしろ、この身体を手に入れれば俺の計画は80%成功と言ってもいい。――俺の欲する身体は、斎藤友雪ちゃんだからね」

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 友雪。私の友達の名前を聞き、戦慄を覚えた。自分の身体と入れ替わっているだけでもなく、見ず知らずのオジサンから友達の名前が出てくることが気持ち悪い。
 夏なのに身体が寒い。・・・この寒さは恐怖から来ていた。

「・・・友雪になにするつもり?」
「本当なら一人になったところを狙って友雪ちゃんと入れ替わりたかったけど、今朝一人で登校していたのは不運にもきみの方だった。毎日待っていたんだ、 きみがいないで友雪ちゃんが一人でいる時をね。でも、全然その日は現れなかった。本当に仲がいいんだね、待てども待てども一向に俺にチャンスはなかった。だったら、今日を逃して次はいつ好機がある?いったい俺はあと何年待てばいい?早ければ早いほど、俺は友雪ちゃんになれるのに、待ち続けるのも飽きたんだよ。だから――」
「今日、実行したの?」

 私が惟の言葉を遮り続きを言った。友雪を気にする男性の中、電柱に身をひそめる本物のストーカーが存在したんだ。理解できない、自己中心的な追走者。身体を入れ替え、心を奪おうとするまで自分を愛してもらいたいと欲情する異常者が企てる恐ろしい計画。
 その犠牲者になってしまったのは、不運にも私だった――

「計画は失敗した。俺はきみの身体と入れ替わってしまった」

 残念とも、成功ともいえない、ツマラナイ声で彼は言った。

「そうよ!失敗したんでしょう!だったら私の身体を返して!そして、二度と友雪には近づかないで!」

 友達を守りたい、そういう意気込みを吐きつけたのに、惟はふっと表情を和らげた。憑き物が落ちたような表情をしていた。

「一片の見方をすれば失敗だけど、全体を見渡せば成功してるんだよ。俺はきみの身体を手に入れたんだ、ということはどういうことか、きみが一番よく知ってるだろう?」

 惟は私の身体を手に入れた。それはつまり、私の生活を手に入れた。私の生涯を手に入れたこと・・・。今までの生活習慣、学校の環境、友達との関係をすべて手に入れた。

「俺が友雪ちゃんの隣で微笑むことが出来る。空気になることが出来るんだよ。それは俺が友雪ちゃんになる以上に名誉なことなんだよ!キスだって出来るんだぜ、君の唇でね。ゴリ押しレズレズの酒池肉林の花園が広がるだろうよ」

 憑き物が落ちたはずなのに、惟の本性は、化け物よりも醜悪な態度だった。私に成り代わって、綾辻晴夏としての生活を奪おうとしている。そして、何も知らない友雪を手にかけようとしている。
  綾 辻 晴 夏 と し て 、 斎 藤 友 雪 を 犯 そ う と し て い る ん だ 。

「ふ、ふざけないで!そんなことさせるわけないじゃない!」

 私がやるしかない。惟の計画を止められるのは私しかいない。男性の身体を手に入れている状態なら、力で晴夏の身体に負けることはない。
 痛 い 目 に 合 わ せ て で も 、 自 分 の 身 体 を 傷 つ け て で も、
 惟を止めるしか・・・・・

「えっ?」

 私の中に抱いた疑問。それに感づいた惟がゲラゲラと高笑いを見せた。

「まだわからないの?俺は今きみの身体になっているんだよ?きみにとって一番奪われたくない人質を奪っているってことなんだよ」
「あっ!」

 どうして・・・私は自分の身体を傷つけなくちゃいけないの?という疑問。自分で自分を傷つけるなんて出来るはずがない。自分自身に甘えたくなるのが本心なのに、自分を殴らなくちゃいけないときに本気で殴りつける人なんているはずがない。
 だからつまり、私じゃ、惟の計画を止めることに甘えが出る――。

「きみが今まで暴力だ威圧で男勝りのことをして俺をねじ伏せているように見せかけていたが、実際男子なんて弱い存在だよ?女子高生にすら中年オヤジは勝てないんだよ。社会は世間は女性を味方する、馬鹿馬鹿しいほどに不平等な世の中で息苦しくなる。だからこそ、俺はきみからの社会的地位を抹殺するんだよ。きみに成り代わることできみの居場所を奪い、きみの存在を消す。アーハッハッハッ!!最高だよ、『入れ替わり』って!」
「やめてよ!!!」

 戦わなくても私に勝ち目はない。惟が終始、私の言うことを聞いていたのは、いつでも勝てるという勝算があったからに他ならない。私の言うことを聞いて、自宅まで帰らせてしまった時点で、私の負けは決定していたのだ。
 警察にでも連絡すればよかったのだ。誰かに助けてもらえばよかった。
 一人で、助けられると思った時点で私は敗北していだのに気付かなかった。

「拒否権はないんだよ。きみは身体を奪われた時点で俺の言いなりさ。さあ、きみの身体で俺を満足させてもらおうか、もともときみの身体だ、どこが気持ちいいのか、きみが一番よく知ってるんだろう?」

  敗北感に打ちひしがれている私に突きつけられる現実。下着すらはぎ取った惟が私の前で股を開いて大事なところを広げている光景に、絶望感が漂っていく。

「ほらっ、ここだよ。ここを舐めてくれよ」

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  私ですらまともに見たこともない、自分の秘部を、左右に広げて奥まで見せつけている。透明のお汁が滴り、ピンク色の膣壁を覗かせる光景は決して良い光景ではない。
 これが私の大事な秘部・・・。私の身体・・・。惟に使われてイヤらしく腰を浮かせて見せているのが、もとの私の身体だなんて――、

「そんなのいやあああぁぁぁぁ!!!!」

 私は身を丸くして畳に顔を突っ伏して泣き崩れた。



 
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 私、綾辻晴夏―あやつじはるか―は親友の斎藤友雪―さいとうゆき―と一緒に学校に向かう大の仲良し。成績優秀、人に優しく誰よりも愛される友達を持つ私にとって、友雪の隣で一番に居られることが誇らしかった。

「ねえ、友雪って彼氏作らないの?」

 友雪の男子人気はクラスの外からも聞こえるくらい大きく、男子からの熱視線は隣を歩く晴夏でさえ痛いくらい感じることができる。私に対して痛いほどの視線なのだから、か弱い友雪には突き刺さるほどのダメージを与えていることだ。
 女子にとって好きじゃない相手からの愛情アピールはウザい以上の何物でもない。止めてほしいのならと、私は周りの男子からも聞こえる声で本心を突く一言を友雪に声かけた。
 ・・・心なしか、視線攻撃が止んだ気がした。

「・・・今はいいよ。 彼氏作る気なんてないから」

 ――ドンガラガッシャーン。
 至る所から男子生徒が地面に倒れこんできた。

「うわあああああああああああああああ!!」
「なんでやあああああああああああ!!!」
「し、信じられない・・・。俺たちからの愛情を掻い潜り学園のアイドルとして君臨し続けるつもりか!誰にも優しいということは誰に対しても関心がないということと道理。一番になるつもりはないのか!?」

 屍者がほざく。死霊の山を払いのけるように歩く友雪は、一度立ち止まり振り返って満面の笑みを見せる。

「今の私の一番は晴夏ちゃんだから!」
「かあぁぁぁ」

 屍者を吹き飛ばす爆弾発言の投下。友雪の一番近くで聞いていた私はその言葉の真意が本当なのか、その場のごまかしなのかわからないまま、顔を真っ赤に染めていた。

「れ、レズカップル公認だとぉぉぉ!!?」
「だ、男子を差し置いて女子と愛する暴挙にでるだとぉ!?」
「だ、だが・・・それがいいぃぃ・・・ガクッ」

 屍者が日射しを浴びて灰になる。今日も暑くなりそうだ。屍者たちを退けた私たちだが、私の心臓の音が未だに高鳴っている。隣を歩いていたせいか、今までとの距離がさらに近くなったように思えるのは気のせいだろうか。
 これほどまでに隣を歩くことが息苦しいことだったなんて気が付かなかった。顔を上げられない私はいてもたっても居られなくなった。

「友雪・・・今の言葉・・・ほ、本当なの?」
「・・・・・・・」

 言ってすぐにしまったと後悔した。本人に確認をとるだなんて一番やってはいけない行為だった。友雪も顔を下げて顔を真っ赤にして黙り込んでしまったのだ。

 わかっている。私たちは親友。彼氏になることはできないし、恋人になることも出来ない。 
 友達以上の親友どまり。これが、好感度最高限度の数値・・・。
 こんな、残酷なことがあるのだろうか。
 好きだけど・・・この感情は愛にはならない。愛にしてはならない。
 私たちにとって生憎の空模様・・・。澄んだ青空が広がっている。

「あ・・・ごめんね。変なこと聞いて」
「ううん・・・ごめんね。変なこと言って」

 私たちは今まで以上に静かに歩いて学校を目指していた。
 その静かさがやけに寒くて、気温の暑さと体感温度の差が異常に大きくて――翌日、友雪は夏風邪を引いて学校を欠席した。 

「わかりました。先生には私から報告しておきます」

 家で友雪の休みの連絡を聞き、私は珍しく学校を一人で通学する。
 そういえば、昨朝から友雪の声を聞いてないな。今まで隣で聞いていた友雪の声色を聞いていないなんて、まるで私は携帯電話を手放した携帯依存者みたいな症状が出ている気がする。
 一日だって我慢できないよ。
 傍に誰もいない通学路。一人だけの登校は、私にとって貴重で、珍しく、非日常だった。
 友雪の声が聞きたい。友雪の笑顔が見たい。友雪と会話がしたい。友雪と話したい。友雪と愛―はな―したい。

「そうなんだ・・・。私、友雪がいないと駄目なんだ」

 好きとか愛とかじゃなく、友雪は私の空気なんだ。いないと私はダメになる。息が詰まって苦しくなる。隣に居てほしい。私が友雪の隣にいたいのではなく、友雪の隣に私がいないとダメなんだ。
 もうそれが普通で、日常で、当たり前だから。
 誰にも友雪の隣を譲りたくない。だって、私も友雪のことが一番だから――。

 それは好きという感情なのだろうか、愛という感情なのか、私の居場所を守るために戦うと決めた感情を恥すべき行為だと罵るのなら教えにだって背きます。

「・・・そうだ!電話しよう。友雪に早く元気になってって伝えよう」

 私は携帯を取り出して画面に視線を落とした。
 だから・・・私は気付かなかった。
 携帯に没頭したあまり、背後から近づく脅威に気付くのが遅れてしまった。友雪に電話しようと思った携帯電話は私の手から放れ、地面に勢いよく叩き落とされた。

「うむぅ!!?」

 私の口と鼻を塞ぐ男性用のハンカチ。そこから染み込んでくる強烈な異臭。私が暴れてもさらに強い力でねじ伏せて陰に身をひそめる。学校の男子なの!?私にこんなことする相手は誰!?ダレなの!?

「っ!?きさま、友雪ちゃんじゃないだと」

 私と目を合った人物は全然身に覚えのない男性だった。学校の関係者じゃなく、部外者で、異常者だ。 中年太りをした40代の男性だった。
 友雪のことを知っているその人物に私は寒気を覚えた。誰か知らない人から親友の名前が出てくることがこんなに怖いことだと知らなかった。

「んーんー!んんんぅー!!」
「へっ。計画は狂ったが構うもんか。こいつは友雪ちゃんの隣を歩いていた女だったからな。大量の焼香を吸ったんだ。そろそろ出てくるはずだ」

 暴れる私はハンカチに染み込ませた異臭な焼香を嗅ぎ過ぎて、気持ちが悪くなってきていた。吐き気を催すほどの苦しさがこみ上げ、お腹が膨れ上がって私の体内から何かが吐き出しそうになっていた。

「ん゛ぅ゛ぅ゛!!?」
「おっ、来たか。へへへ・・・んああぁぁ」

 ハンカチを外され口と鼻を解放された私。そのまま、今度は男性とキスをすることになる。男性の唾液に塗れた分厚い唇を押し付けられて、私は男性の放つ口臭を味わう羽目になる。
 結局気持ち悪さは変わらない。むしろ、精神的苦痛は後者の方が圧倒的に強かった。

「(なに、この非現実じみた状況・・・私の初キス・・・私の苦痛・・・もう、なにが起こってるのかわからなくて・・・気持ち悪い・・・)」

 失神寸前の状況に白目を向いてこみ上げてくる汚物を吐き出す。

「お゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!!」

 私が吐き出すモノを男性は口移しで呑み込んでいた。喉を鳴らして、私の吐き出すモノを一滴たりとも零さないように飲み干していく。
 それは誰か見ていたら明らかに狂気じみた状況だろう。幸いにも彼の行為は私は愚か誰にも見られることはなく、私の吐き出したモノをすべて飲み干して口を放した。

「うっぷぅ・・・はぁぁ、これが彼女の味か。甘酸っぱい青春みたいな味だな。・・・おっ、早速か。さすがに魂は一つの身体に二つは入らんか。・・・じゃあな。お前の身体はもう俺のもんだ」

 男性はすぐに気絶している私の鼻を塞ぎ、再び唇を唇で塞いだ。そして、

「お゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!!」

 男性もまた私のやったように汚物を吐き出して私に飲ませていった。私は無意識に喉を鳴らして男性の汚物を飲み干して胃の中へと落としていった。
 ビクン、ビクン、と私の身体が痙攣する。でも、その感覚が次第に薄らいでいくのを私は感じていた。



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