純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『憑依・乗っ取り』 > 飲み薬『ブラック・カフェラテ』

 突然やってきた尾張にお茶を出す。しかし、お茶を差し出す星来の手は震えていて、今にも湯呑み茶碗が落ちそうになっていた。

「ど、どうぞ・・・」
「お気遣いなく、先生。そんな手力じゃ筆をとるのも大変でしょう」

 冗談なのか真面目に心配しているのかも分からない。それはそのはずだ。今の星来は青島尾張が憑依しているのだから。

「(あ、ありえない・・・。俺の身体は確かトイレで寝ているはずだろう?なんで今ここにやってきてるんだよ!?)」

 お茶を飲みながらゆっくりソファーにくつろいでいる、尾張の姿を覗き込みながら、星来(尾張)は内心ドキドキの状態だった。
 幽霊など信じていない尾張でも、今回ばかりは本当に幽霊の存在を信じてしまっていた。そして、悪霊に身体を乗っ取られて帰る身体を失ってしまったのではないかと本気で心配していた。
 顔面蒼白だった。泡を吹いて気を失ってもおかしくないくらい錯乱していた。

「(これからどうしよう・・・マジでこのまま古間きららとして漫画を描き続けていかなくちゃいけないのかよ、そんなのやだあぁぁぁ!!)」

 集中力もなければ漫画を描ける自信もない。それでも机の上に溜まった仕事の量を見ながら、社会に絶望してしまった星来(尾張)。机に突っ伏して首を吊るしかないと思い始めていた。

「こんなの無理だってえええーーーー!!」
「・・・・・・フッ、フハハハ!」
「・・・は?」
「なかなかいい絵が見れた。好きなことを描いている漫画家が鬱になる瞬間こそ最も絶望する瞬間だと思わないか、尾張」

 嫌味に聞こえる青島の声色から、星来(尾張)はよく知る人物像を思い描いた。

「えっ、ちょ、おま・・・白夜か?」
「ああ、そうだ。言っただろう?時間があれば遊びに行ってやるって」
「バカ野郎!マジでビビったじゃねえか~!」

 確かにそんな会話をした覚えはあったが、まさか尾張の姿でやってくるなど夢にも思っていなかったのだ。尾張の正体に胸を撫で下ろした星来(尾張)は、怒りながらもちょっかいをかけ始めていた。

「感謝しろよ、おまえの姿がいないって社内で騒いでいたから俺がお前に変わって皆の前で出てしっかり『古間先生のもとへ行ってくる』って書置きしてきてやったぞ。 爪が甘いな」
「悪かったな・・・でもよ、幽体離脱とか憑依できたら誰だってテンションあがるだろ!仕事なんて頭からなかったわ」
「遊びに行く前にやることやってからにしてもらいたいな。おまえは特に仕事が溜まってる身だからな」
「こんなもの飲ませてよく言うわ!」

 仕事は時間をかければいいものではありません。時間をかけないで仕事ができれば一番いいことです。
 常にスケジュールを管理しながら時間と心に余裕をもっておもいきり遊びたいものです。

「もちろん、おまえも来たってことはさ、やりたくて来たんだろ?そうなんだろ?なっ!なっ!?」

 星来(尾張)はどうやらオナニーだけでは飽き足らず、セックスをしたいと視線を尾張(白夜)のズボンに隠れた逸物に向けていた。

「いいぜぇ~。俺は来る前からすっかり出来上がってるから、いつでもち〇ぽを受け入れる準備万端だ!みろよ、このムチムチボディ!たまんないだろ?こう見えて15歳の餓鬼んちょだけどよ、抱き心地は最高だぜ?本人が聞いたら絶対嫌がるだろうけど、俺とお前の好だからよ、特別に処女を奪わせてやるよ!光栄だろ?俺も自分が先生の処女を食えると思ったら最高だぜ!これこそ究極のオナニーってやつだろ?さあ、早速やろうぜ!それとも、この口調が嫌なら仕方ないから、先生の真似をしてやるぜ!・・・うっふ~ん!青島さ~ん!本当はきらら、青島さんとセックスしたかったの~~!きららの処女、もらってくださぁい!!てな!」

 テンションが高い星来(尾張)がすぐさま裸になって尾張(白夜)を誘惑する。猫なで声を出しながら、お茶をすする尾張(白夜)のズボンを撫で上げる。


「・・・そうだな、光栄にも先生とやらせてもらうとするか」
「嬉しい~!ン~~~チュッ!」

 唇に何度もキスをして舌を絡ませあう二人。星来(尾張)の方が積極的に舌を伸ばして唾液を交換しようとするが、尾張(白夜)の方が唇を拒むように歯を開けようとしない。視線を上げて、「どうしたの?」と聞くように首をかしげる。

「そのまま服を脱がしてくれよ、唇をつけたままな」
「・・・ン?・・んン、わかったわ」

 尾張(白夜)の衣服を脱がしながら、星来の舌で全身を舐めあげていく。硬い胸板に唾液の線路を描きながら、胸板から突起している二つの乳首に舌で叩きながら吸い付きあげる。

「れろ、れる・・・ちゅぶ、ちゅば、んちゅ・・・ぢゅ・・ぢゅるるるっ・・ぢゅぶちゅる・・・はぁん・・」

 右を舐めれば左を舐める。左右に平等に快感を加えながら、男性の乳首を刺激する。

「おまえは乳首感じやすいな。そういうプレイが好きなのか?」
「ふるふぁい・・・れる・・甘噛みするぞ!」
「やればいい。所詮お前の身体だからな」
「ぐっ(こいつに俺の身体を渡したのは間違いだった!?)」

 気づけば良いように弄ばれている気がする。責め立てているのも星来(尾張)だけだ。憑依しているというのに、自らの身体を人質にされて主導権を取れない星来(尾張)は敗北感を覚えていた。
 敗北感に溺れていた。

「ほらっ、早く舐めろよ、こいつが欲しんだろ?」

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 ようやくズボンを脱がした星来(尾張)が見たのは、星来の全身舐めをしたにもかかわらず、勃起していない自らの逸物の使えさだった。ふにゃふにゃのち〇ぽだ。全然気持ちよくなさそうだった。

「白夜てめえ、わざと我慢してるんじゃないか!?」
「おまえの頑張りが足りないだけだ。嫌なら別に良いんだが?」
「くっそぉぉぉ!!わあったよ!やればいいんだろ!?」

 星来(尾張)だって分かっているのだ。セックスして得するのは尾張だけだ。処女を奪えて処女を破られる快感を得られるのも、全部尾張だ。白夜にメリットは少ない。百も承知だ。白夜がNoと言ってしまえば尾張の計画は無駄になる。そんなことは絶対に避けなければならないと、白夜に対して最善の注意を心掛けなければいけないのは知っている。だが――、尾張(白夜)の態度が気に入らない!

「(くっそぉぉぉ!!!性格でここまで表情が違うもんなのかよ。俺は一度だって相手に卑下した表情浮かべたことねえぞ!俺を見下したようなあの顔、気に入らねえぇぇ!!)・・じゅぶじゅる・・れろ・・はぅ・・ん・・んぅ・・じゅじゅぶ・・・」
「どうした?自分のムスコだろう?どこが気持ちいいかくらいわかるだろ?もっと大事に舐めて責め立てろよ」
「(ちっくしょおおおお!!!)じゅぷじゅぷ・・!はぁ、チロチロ、れろん・・ぢゅっぷ、ぢゅっぷ!」

  自らの逸物に刺激を咥えるように、視覚と聴覚にも刺激を与えるように、唾液を含ませながら、裏筋からカリ首の部分を舐めあげながら亀頭を咥えこむ。暖かな口の中で逸物をとろけさせるように、口をつぼめて激しく首を振っていた。

「んむっ・・・どぉ?気持ちひい?」
「ああ・・・すごくいいぞ」
「良かった・・・ゴキュ・・ゴキュ・・ふぅ、ふぅ」

 ほのかに口の中から香る先走り汁の味を呑み込みながら、フェラをし続ける星来(尾張)。ようやく尾張(白夜)の方から「もういいぞ」と声をかけられ、身体を抱きしめられた。

「あっ!」

 口から離れた逸物はものすごく勃起しており、天高く聳えたっている様子にようやく念願だった挿入ができる。
 抱きしめられたまま尾張(白夜)が耳元で「自分で挿入してみろ」という。
 そこまでやらすのかよ、という不満を呑み込んで、星来(尾張)はおま〇こに逸物を合わせるように腰を動かしていった。


 
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 漫画家の古間きらら(本名星来)に憑依した尾張は、その豊満な胸を自分のものにして好き勝手に揉んでいた。

「おっ、おっ、おふっ。くぅ、いいなあ、この揉み心地。俺の腕の中で形が変わってやがるぜ」

 女性であれば抵抗するだろう自分の胸を、手加減なく力いっぱい揉みほぐす。ぶにゅぐにゅと、暖かな肉乳の柔らかさを堪能しながら、女体の快感を楽しんでいく。

「あふっ、んっ・・・あんっ・・・ちっ、これ邪魔!」

 せっかく着た角と翼を無造作に取り去ってしまう。壊れたら後で直してもらえばいいと、頭の片隅に追いやって星来の快感を味わっていく。

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「あ~いい・・・。やっぱりエッチなこと好きじゃなきゃこんな漫画家にならねえよな。いったい何時頃から知ったんだか、完全に出来上がってやがるぜ」

 独り言をつぶやきながら、弾む胸元を覗き込む。ブラをどけて突起した乳首を眺めると、鼻息のかかった荒々しい雄叫びをあげる。

「若さもあっていいよな、このモチモチの肌、うわ~っ」

 ビキニブラを外して直接乳房を触る星来(尾張)。星来の手の動きに合わせて星来の巨乳が弾むように揺れた。

「信じられないけど本物のおっぱいだよな・・・ちゃんと感触もあって、柔らけえ」

 子供とは思えない乳房から感じる刺激。揉む度に熱くなる身体とじわりと滲む愛液の感触に、ときめきそうになる。これが女性の感じ方なんだと、星来(尾張)は表情を蕩けさせて甘い息を吐いた。

「し、下はどうなってるんだろう・・・」

 緊張と期待の入り混じった声で、ゆっくりと星来のマンスジを触る。男性だったらあるはずの逸物の感覚は当然無くなっている。代わりに柔らかい、盛り上がった土手筋に指を添わせる。

「ふああぁぁ!」

 ビクビクと、身体を震わせて喘ぎ声を漏らしてしまった。無意識に声を荒げるほど気持ちが良かったのだ。

「うああ・・・思わず腰をあげちゃったよ・・・。ココの感覚気持ちいいな。ち〇ぽがないから、気持ちいいところを擦ればいいんだよな」

 女性のオナニーを思い出しながら、ビキニの上から星来の感じるところを指でこすり続ける。

「あ、これヤバイ・・・あんっ、はぅ・・・ん・・・コリコリした、クリトリスが・・ああん」

 グニグニと指を押し付けてビキニからくっきりスジの跡がわかるくらい愛液を染みつける。空いている左手で勃起した乳首をつまみながら、硬くしこった乳首をコリコリ押し潰す。

「んあっ!さっきより敏感だ・・・あぁぁ、気持ちいい・・・気持ちいいけど物足りない。股間の奥が疼いてダメだ」

 尾張は星来のスジだけを弄るだけじゃ満たされないことに気付く。直接、穴の中を弄りたいという欲求が星来(尾張)を掻き立てる。ビキニも外して全裸になった星来(尾張)は、ベッドに寝ながら中指を自らの膣内へと挿入していった。

「んくっ・・・あ、あ゛あ゛ッ!!」

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 初めて挿入した指は、膣内の感触を捉える。熱くて蕩けた膣は誰も挿入させたこともないので締まっており、自らの指肉に膣の生々しい肉質を感じる。奥に入れれば入れるほど指が膣を広げていき、そこからおびただしいほどの粘液が分泌していく。

「ひん・・ひぅ・・・はっ・・・あぁぁ・・・」

 膣を広げるたびに襲い掛かる快感の連鎖。痛みや痺れとは違う、気持ちよさが身体を支配し、ゾクゾクと激しく身を揺さぶる。男性の時とは似て非なる女性の快感。いや、男性のオナニーより全然気持ちいい。

「いっ、イきそう・・・イクかも。頭、なにも考えられなくなってきた・・・はぁ、はぁ」

 思考が停止する。しかし、指の動きだけは止まらない。
 はやくイきたいという欲望のままに、星来の絶頂を味わうために最後まで指を必死に動かし続けた。

「んっ、くぅ・・ん・・・ん゛ん゛ん゛ぅ゛ぅぅ~~~!!!」

 指で掻き立てていた膣から大量の愛液が吹き出す。潮噴きというものだ。
 激しく絶頂を迎えた星来(尾張)はベッドからカーペットまで自らの愛液をしみこませていた。



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「・・・んん?」

 尾張は様子がおかしかった。身体の調子が悪くなるというのは仕事する者であれば誰もが管理しなければいけないことだ。尾張もまた、自分のせいで多くの関係者に迷惑をかけるわけにはいかないと、体調管理には十分気を付けている方である。なのに、この体調不良は急にやってきて、原因が分からない不明な具合の悪さだった。

「なんだよ、いったい・・・」

 眠気、吐き気、頭痛が同時に襲い掛かってきて気を失いそうなほどだ。顔色が真っ青になり、キーボードの打つ手が止まる。
 まるで、何かが身体の中で離れようとしており、飛び出てくることを自らが無理に引き留めているかのような気持ち悪さだ。

「・・あいつ、俺になにを飲ませやがった・・・」

 原因不明な症状だが、根源の原因は分かっている。黒星白夜がくれた、謎の『飲み薬』に違いなかった。あれ以外特に口から摂取したものはなく、あれを飲んで以降具合が悪くなったのだから間違いない。会社の中でも仲がいいと思っていたからか、特に疑うことなく口をつけてしまったことに後悔した。
 あれは、『薬』だったのだと。

「やべえ、意識が朦朧とする・・・」

 尾張が具合が悪くなり、トイレに向かう。個室トイレに籠り、便座に座り込んでからの意識がぷつりと切れてなくなっていた。
 ・・・・・ただ、意識は切れても、意志は持っていた。
 次に尾張が見た光景は、空中から自分を見下す不思議な光景だった。自分の頭の先を自分が観測できることはない。それが可能ということは、自分の意識が外に飛び出すしか他にない。尾張は幽体となって彷徨っていたのだ。

「(はっ・・・?なんだよ、これ?)」

  不思議と具合の悪さも体調不良もなくなっていた。身体と幽体に切り放されたせいなのか、すこぶる快調になった尾張はうまく幽体を宙に泳がせて自分の身体に舞い戻ってきた。

「(・・・眠っているだけなのか、寝息は聞こえるけど死んでいないのか)」

 規則正しい息継ぎが聞こえてほっとしながら、幽体になってしまった自分に驚く。壁をすり抜けて鏡を覗き込んでも誰も映っていない。トイレに入ってきた上司も尾張に気付くことなく出て行ってしまった。

「(今の俺は誰にも気づかれないのか)」

 肉体ではなく幽体の身であることを実感する。幽体離脱したのだと尾張は事実を受け入れると、口元を釣り上げて小さく笑みを浮かべ始めた。

「(フッ、フフフ・・・。なるほど、幽体離脱か。小説でも読んだことあるぞ。そんなオカルト信じてなかったけど、実際起こってしまったなら受け入れるしかない。そうか・・・これが幽体離脱か)」

 誰にも気づかれないけど誰にも触れない。幽体となった自分は現世に留まることが出来ないのだ。しかし、幽体となったからこそ出来ることがあると、とある小説から知識を得ていた。
 憑依が出来るのである。他人の身体に乗り移り、行動を支配するトランス現象。神だ悪魔だ、狐だの言われるその能力が、人間に備わることが出来たら最も恐ろしいものはない。

「(面白くなってきやがった。このままきららのもとへ飛んで行ってやる)」

 欲望渦巻き一気に上気する。会社をすり抜けて文字通り、飛んでいく尾張。あっという間に担当していた古間きららの家へとやってきていた。二階の窓からきららの部屋の様子を伺うと、相変わらずブルマと運動着姿で漫画を描き続けている。集中しているように漫画に没頭しており、休む暇もないくらい机の上には資料が山のようにたまっていた。

「(やってるな。俺にも気づいてねえな)」

 と、その時、ちらりと窓を見たきららが尾張と目が合った。思い切り見られたことで言葉をなくした尾張だったが、きららは表情を変えることなく、再び視線をネームに落としてしまった。そして再び絵を描き始めた。

「(・・・そうじゃん。俺は幽体だった。きららが俺を見るわけねえじゃん)」

 安堵の息を吐きだす。きららはたまたま窓から外の景色を見ただけだ。尾張がいるだなど予想もしていないだろう。
 尾張は窓をすり抜けてきららの部屋へと入っていく。宙を舞いながらしばらく様子を見るもきららは気付かない。調子に乗ってネームを覗きこんだり、背後で大声を出して叫んでもきららはやはり尾張のことに気付いていなかった。

「(・・・よし、ここまでやって気付かれなかったんだ。大丈夫だろう)」

 ふん、ふんと、指をボキボキ鳴らしながら十分に柔軟体操を始める。どうやら憑依を始めるつもりらしい。助走をつけて宙をたゆたい、きららのがら空きの背後へぶつかる様に飛び込んでいく。

「(きららさん、失礼しまーす)」

 ズブブブ・・と、尾張の幽体がきららの肉体へ埋まっていく。

「ひぅ!」

 びっくりしたきららが身体の異変に気付くも、その時には終わりの幽体は半分近くきららの肉体へ沈んでいた。暴れ沈んでいく尾張にきららはどうすることも出来ず、うめき声をあげながら意識を失っていった。
 尾張の幽体がきららの肉体に全部入り込むと、尾張の目に久しぶりの光が差し込んだ。
 ・・・意識が戻ったのだ。

「・・・・・・あれ?俺、いったいどうしたんだっけ?」

 記憶が錯乱し、頭を抱える尾張だが、その状態、その光景に違和感を覚えたのだ。

「・・・なんで、俺、体操着なんか着てるんだ?それに声だっておかしいし・・・えっ、こ、ここって・・・」

 体操服姿で長い髪の毛をかき上げながら、瞳に映る部屋の間取りや模様から、ある人物を思い浮かべる。机に置かれているネームの用紙を見ながら、自分が古間きららなんじゃないかと思い、慌てて部屋に置いてある鏡
を覗いてみた。

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「き、きらら先生になってらぁ。あっ、あはは・・・」

 やっぱり、意識はなくても意志疎通の出来事は夢物語ではなかったのだ。思い出した尾張は、古間きららに憑依したのだと実感し、彼女の表情をコロコロと変え始めた。
 笑った顔から怒った顔、困った顔へ表情豊かに変わっていく。それがすべて尾張がきららの表情を使ってやらせているのだと思うと面白く、彼女の表情で口元を釣り上げて「くくく・・・」とにやけ始めたのだ。

「先生。どうですか?今の先生は俺に憑依されてるんですよ?先生のカラダを好きにすることが出来るなんて最高ですよ。俺を怒らせればこんなことだってできるんですよ」

 運動着の上から思い切ったようにきららの腕を両胸に下ろして揉みしだく。思い切り強く揉んでいるので、運動着に皺が出来るほど荒く、きららの胸は形が変わるほど大きくうねっていた。

「へえ、先生ってやっぱり胸が大きいですね。ブラをしていてもすごい波打ってて気持ちいいですよ」

 自分の胸を揉みながら他人事のように胸の柔らかさをつぶやく。今のきららには意識はなく、自分の胸を尾張に揉まれているという記憶すらないのだ。文字通り、やりたい放題だ。尾張の意志のままに胸を揉み続けるきらら。次第にその表情が高揚してくる。

「ん・・・先生も、気持ちいいですよね?これが、先生の感じ方なんですね。・・・くぅ~。胸を揉みくちゃにされるのが好きなんですね」

 今すぐにでも直接揉みたいという欲求が尾張を駆り立てるが、尾張は思い出したようにきららの身体を弄るのをやめた。

「そうだ、先生。先生って俺に絶対本名教えてくれなかったですよね。せっかくなんで、先生の本名教えてもらいますよ」

 古間きららというのは勿論、漫画家のペンネームで本名じゃない。きららは編集者の尾張にも本名を教えていなかったのだ。ここぞとばかりに尾張はきららの部屋を物色し、本名に関わるものを探し当てた。

「あった、保険証だ。ふぅん・・・。星来―せいら―っていうのか。・・・えっ、15歳!?マジかよ、ませた餓鬼じゃねえか」

 尾張は星来の身分証から年齢まで知ってしまった。彼女の秘密まで知ってしまったことで、さらに身体が興奮を覚えたのを感じた。

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「そうか、星来ちゃんっていうのか。可愛い顔しておきながら俺たちを馬鹿にしていたら、碌なことにならないぞ。まずはその身に教えてやろうか」

  眠っている本人に言い聞かせるように星来(尾張)は、再びその姿を鏡に映したのだった。

 
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 天野神奈―あまのかんな―は驚いていた。
 そうはいっても、普段から驚かないというほど神奈が表情を出さない女の子ではない。むしろ、表情に関しては豊かであり、感情をむき出しにするほど怒ったりもする。
 一挙手一投足に全身全霊を出す神奈の性格なので、神奈が驚いたところで普段から付き合いの深い、夢見凛々朱―ゆめみりりす―や宇多田詩子―うただしいこ―にとってそれほど気にするようなことじゃなかった。

「どうしたの、天野さん」

 だから、そう神奈に声をかけたのは邑輝志紀―むらきしき―だった。むしろ、表情を出さないのは彼女であり、別段誰とも付き合いの深いわけではない志紀が、今日は神奈たちのグループに放課後喫茶店に誘われたことで一緒に行動しているだけのである。神奈の性格も知らない志紀が、漫画のように足を止めて驚いた表情のまま固まっているあまりに古典的描写に思わず言葉を発してしまったのである。
 そこでようやく皆が神奈の様子に気付く。そして、神奈の震えた指が差す方向に目を向けると、皆が同じ表情に次々固まっていった。

「あ・・・あああ・・・」
「え、ウソでしょ!?なんでこんな田舎に!?」
「でも、本物?夢じゃないの?」
「・・・・・?」

 志紀も神奈たちの見る方向へ目を向けるも、そこには同じような喫茶店で優雅にフレンチトーストを食べる、男の姿があった。
 このお店は先月新しくできた、都内を活動の拠点に出店、経営しているフレンチレストランで、カフェテラスを出すお店である。神保市に出店したことは皆が知っているが、生憎中学生の神奈たちには女子力が高すぎて、足を通う機会はなかったのである。
 しかし、それが理由で声をなくすくらい驚くことなのだろうか。田舎に某コーヒーショップがやってきたところで行列ができたとしても驚いた人物はいなかった。しかも、情報に弱い志紀ではなく、情報の源である神奈たちが驚いているのである。
 つまりそれは、必然の驚きではなく、偶然による驚きなのである。

「クロ・タイツ先生じゃない!?」
「クロ・・・タイツ・・・?」
「ウソ、知らないの?!超有名な漫画家じゃない」
「漫画・・・」

 芸能に疎い志紀が首をかしげる。喫茶店で一人くつろいでいる男性が有名な漫画家とはしゃいでいるのである。しかし、フレンチレストランで一人、上半身は黒の網タイツだけを着ている裸同然の大男がテラス席でフレンチトーストを食べているのはあまりに目立ちすぎる。あの様子なら神奈だけじゃなくても気付かれてしまうのではないだろうか。志紀は既にその漫画家を危険人物として脳内に入れておこうとしていた。
 芸能人に滅多に会える機会などなく、会える方が珍しく、神奈たちは立ち止まったまま慌てふためいていた。

「どうしよう。声かけてみる?」
「よしなよ、みっともない。きっと打ち合わせか何かでしょう?」
「そもそも別人じゃないの?他人の空似だって。私のクロ・タイツ先生はもっと格好いいって」

 キャッキャッとはしゃぐ三人が逆に怪しい人物に見えて仕方がない。漫画でもなんでも、売れれば一躍有名人である。どんな格好していても関係ないのかもしれない。

「私、行ってくる!」
「あっ、神奈!」

 居ても立っても居られないと、神奈はダッシュで大男のもとへ駆け寄っていった。女子中学生が大男に声をかける事案が発生する。

「あの!すみません、人間違いだったらごめんなさい・・・あなた、クロ・タイツ先生ですよね!?」
「・・・・・・」

 男性のトーストを食べる手が止まる。そして、サングラス越しに神奈を見ると、コクリと大きくうなずいた。

「ほ、本物ですか!!すっごい~!本物だああ!!あ、握手させてください!わたし、先生のこと、ずっとファンでした!!登場人物が全員黒タイツなのに、決め台詞がとっても格好いいし、戦うシーンも魅入られちゃうし、名言が多いし、本当に――――」
「・・・あまり強い言葉を遣うなよ」
「ゾクゾク・・・」
「弱く見えるぞ」
『きゃあああああああああああああ!!!』

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 漫画の名言をそのまま流用した先生に一同大興奮していた。その威厳と輝きこそ本物の証。圧巻される一同は一人ひとり握手を交わしていき、志紀もその流れにクロ・タイツ先生と握手を交わす。

「あなた、どこかで見たことなかった?」

 そんな中、志紀がぼそりとクロ・タイツに暴言を吐く。先生と一般人。立場の違いがあるにもかかわらず、志紀の目はクロ・タイツにも劣らない威厳を持っていた。

「さて、なんのことだか」
「・・・そう。ごめんなさい」

 たった、一言だけで二人の会話は終わった。二人の怪しい関係に神奈がすかさず首を突っ込む。

「ええ~?志紀ってもしかして、クロ・タイツ先生と関係あるの?」
「・・・・・・」
「うっそぉ~?!そうなら最初から言ってよ!それじゃあ志紀の方からクロ・タイツ先生のサインを貰ってよ~」
「本人が目の前にいるんだから直接もらえばいいじゃない!?」
「ぃゃ、そんなの、恥ずかしいじゃない・・・」
「一番に飛び込んでいったあんたが言う!?」
「神奈の基準がわからない~!!」

 サプライズな出会いを過ごした四人は、喫茶店に到着しても一日会話が途切れることはなかった。
 
 
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