純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 人形『テクノボゥ』

 一条茜―いちじょうあかね―というクラスメイトがいる。上品で気品高い、お嬢様育ちの弓道部だ。
 彼女を紹介するのにそんな言い方をするのは、些か失礼だろう。しかし、そういう言い方になってしまうほど、彼女は『お嬢様』といえるほど性格が強いのだ。
 好き嫌いがはっきりしている、嫌いと言う人物に対してはとことん嫌いな態度を見せる。
 見た目が整っている茜さんに行為を示す男性は多い。男性を選べるということは女性にとって自信になり自慢になる。断じて勘違いじゃない、彼女の性格を作り出したのは、男性そのものと言えるだろう。
 かくゆう俺も、茜さんに対して行為を持って熱意を伝えたこともあった。

「茜さん。大好きです!俺と付き合ってください!」

 学校の中庭で告白した俺に対して、茜さんは毛嫌いな表情を浮かべた。

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「好きってそういうことじゃないと思うわ。暑苦しい告白なんて迷惑よ。だってあなた、私を好きに思って心痛めたことある?」
「・・・そ、それは、ない」
「気合いでなんとかなるものじゃないの。それに・・・私、ガチムチな体型も好きじゃないの」
「ガーン!」

 ・・・見た目は本当に大事だろう。自分を鍛えてきた俺にとって筋肉は自慢であり、体型も細いよりも逞しい方になりたいと思う。 
 要は、茜さんは俺と絶対に結ばれないのだ。根本から嫌いな人間を好きになれって言ったって無理な話なのだから。
 こうして、俺の告白は終わり、悶々とした片思いのまま彼女を遠巻きに見ていた。
 クラスメイトとして一人の生徒としてであり、特別の感情を持つことはなかった。
 ――『木偶の坊』を手にするまでは。

「・・・・・・・・・」

 放課後になり、皆が各々に教室から飛び出していく。
 下校する者もいれば、部活に向かう者もいる。茜さんもまた部活動を一緒にしているクラスメイト供に弓を持って教室を後にする。
 俺も行動を開始する。彼女の後を追いかけた。一定の距離を保っており、廊下にはまだらに生徒がいたせいか、茜さんは俺のことに気付いていなかった。校内を出て放れている武道室に入る前になると、俺は『木偶の坊』を取りだした。

「よし、このタイミングだ――!」

 首筋に付いているボタンを押しながら、『木偶の坊』を茜さんに向ける。『木偶の坊』が茜さんを見ているのだと感じながらボタンを押すと、『木偶の坊』は瞬時に茜さんの姿に変身した。

「―――――っ!!!」

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 あまりに完璧な変身にほれぼれする。そこにいるのは、寸分変わらない一条茜だ。ここで声を荒げてしまったら、本人に気付かれてしまう可能性があった。
 俺は変身させた『木偶の坊』を腕の中で抱え込みながら、全速力でその場を駆け抜けた。
 御姫様だっこをしながら、茜さんを抱きかかえるなんて、まるでヒーローの様だった。
 俺は息を弾ませながら、自分の身体が熱を帯びていることに初めて気付いたのだった。
 
 
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 パソコンをやれば嫌でもやってきてしまうものがある。
 迷惑メールだ。誰かも知らない業者から、風俗の案内、当選通知、副業案内etc・・・
 身に覚えもなければ、どこからアドレスが漏れたのかさえ分からない。怖いものだ。
 俺、剛力豪―ごうりきごう―のもとにもそんな迷惑メールがやって来る。送ってくる相手がどんな奴かもわからない状態だ。目の前にいれば柔道の腕前でやっつけることもできるかもしれないが、当然、今はできるわけもない。

「パソコンは苦手なんだがな・・・」

 一通一通ゴミ箱に捨てながら、手作業で処分していく。便利になった分だけ危険も多い。どんなところにうまい話が転がっているかもわからない。だからこそ、うまい話には裏があるのだと気をつけなければならないのではないだろうか。

「・・・ん?」

 そんなことを思いながら、作業している俺の手がピタリと止まる。迷惑メールとして分類された、『エムシー販売店』という業者の広告メールを見たからだ。
 他とは一通しか送られていないその広告メール。処分する前に、やけに気を引くタイトルに、俺は思わず画面を覗きこんでしまっていた。

タイトル:「木偶の坊―テクノボゥ―販売」

本文 :
「技術の粋を集めた『人形、木偶の坊』が完成しました。
これを記念致しまして、連絡をくれたお客様の中で抽選で一名の方に、『木偶の坊』を自宅までお送りいたします。
是非手にとって性能をお試しください」

 ”

「・・・・・・」

 うまい話には裏があると、言っておきながら、早速良い例が出てきたものだ。
 新手のマルチセールスだろうか。特定の商品に置いて抽選を行うことで闘争心を煽っているのだろうか。
 それにしても、バカバカしい話である。そんな話を誰が信じると言うのだろうか・・・。
 期日は明日までか。送られてきたのが今日なのだから、一日しか余裕もない抽選にいったい何人が気付くと言うのだろうか・・・

「・・・・・・・・・・」 

 でも・・でも、もし・・・
 全国で誰が迷惑メールに目を通す?このタイミングで果たして何人が迷惑メールの処理を行っている?
 全国に果たして何人がエムシー販売店を知っている者がいる?
 『人形』の性能を知っている者がいる?
 誰が怪しすぎるうまい話を信じる者がいる?

「・・・・・・」

 ゴミ箱に送る手がピタリと止まる。 俺は深く考え、裏の表の表を読み取りながら、あるボタンをクリックした。


 
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