純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『入れ替わり』 > 粉薬『真面目な彼氏と本気な妹』

 別れを決めた夜――お兄ちゃん、祐樹くんからの連絡が携帯から入った。
 話があるからきてほしい、と告げられた私は、再度もとの自分の家に帰ってきた。

「ごめんください」
「ごめんな。夜遅くに呼びだして」
「ううん、いいの。家に帰ってもやることがなかったから」

 リビングからお兄ちゃんが現われて私を温かく迎えてくれる。靴を脱いで玄関を上がる。お兄ちゃんの後について通された部屋に私は一人驚いていた。
 だって、そこは私の部屋だったの。

「ここ・・・っ!」

 妹の瑠璃の部屋って言おうとして、喉から出かかった言葉が出せなかった。
 どうしても、私は瑠璃を捨てることが出来なかったのだ。お兄ちゃんの妹だと言うことを捨てることが出来なかったのだ。
 ぶわっと、感極まった想いに瞳を潤し、声を出すことが出来なかったのだ。

「あ・・あぁぁ・・・」

 帰ってきた自分の部屋。とても懐かしく、とても小さく見える、私の部屋。
 ここが私の居場所で、一時の感情で捨てることが勿体ないと思える、質素な子供部屋。
 私は此処にいたい・・・。此処が好きなんだ。
 潤んだ私の瞳が見たのは、私の顔を見ながら穏やかに微笑んでくれる、お兄ちゃんの笑顔だった。


「おかえり、瑠璃」


「ふぇ・・・?・・・いま・・・なんていったの?」

 どうして、私のことが分かるの?
 私はいま、由紀さんで、瑠璃じゃない姿をしているんだよ?
 お兄ちゃんは私が入れ替わったことを知らないんだよ?
 それなのに、どうしてお兄ちゃんは私のことが瑠璃だって分かるの?
 聞き間違い?
 幻聴?
 私の本音がお兄ちゃんにそう言わせたように聞かせた、幻なの?
 ・・・ううん、違うよね?お兄ちゃん・・・

「おかえり、瑠璃」

 もう一度、私に質問に応えるように同じ言葉を繰り返す。
 今度こそ、私はお兄ちゃんの声を聞いたのだ。

「うわああぁぁぁぁぁあああぁぁぁん!!!」

 ポロポロと零れ落ちる雫。止まらない涙が由紀さんの頬を伝っていく。
 顔をくしゃくしゃにして泣き出している私に、お兄ちゃんは頭を撫でて落ち着かせてくれていた。

「おいおい、泣くなよ。流川さんの顔が台無しだぞ」

 お兄ちゃんは本当に分かってくれている。私が瑠璃だと言うことに。
 世界でただ一人血を分けた兄妹で、世界で一番、瑠璃の大好きなお兄ちゃん。
 まるで、お伽噺のように――不幸な少女が最後に幸せを手に入れるなんて童話の世界のヒロインのように、私にはお兄ちゃんが王子さまに見えた。

「どうして!?どうしてお兄ちゃんは私がわかったの!?」
「ん?それはね――」
「私が言ったからだよ!」
「うわあ!」

 背後から襲われる様に、私は自分に抱きつかれたのだ。顔をのぞかせる瑠璃。私の身体に入った、由紀さんの心のままにはしゃぐ瑠璃は、私の時以上に明るい表情をしていた。 

「実は・・・赫々云々で――私たちは入れ替わったんだよね?瑠璃ちゃん?」

 自分の声で瑠璃ちゃんって言われても頷きにくいよ・・・。でも、いま瑠璃(由紀)さんが説明してくれた通りなんだけどね。

「お兄ちゃん、信じてくれるの?」
「うん。今日の瑠璃はあまりに様子が違ったからね」
「やっぱり私のお兄ちゃんだ!瑠璃の妹は私だけって意味だね!」
「危ない一面を見せちゃったけどね」

 私が喜んでいる間にさらっと凄いことを言う瑠璃(由紀)。腹黒い表情を浮かべているのは見ないことにした。

「これ以上由紀さんに迷惑かけちゃダメだよ。早くもとに戻ってきなさい」
「うん、そうだね。そうする」

 まるで遊んだ玩具を片付けろと、お父さんに怒られているような気分だ。でも、しっぺ返しじゃないけど、私にはいい教訓になったかも。
 兄妹愛はいつまでも永遠なんだよ――


「えー。私はこのままでも構わないんだけどな~」

 全てが丸くなるかと思いっていたのに、瑠璃(由紀)さんが反対する。

「ちょっと!どうしてそうなるのよ!」
「祐樹くんをもう少し近くで見ていたいし、妹の立場なら近所とかの目も気にならないし」
「私の身体でなにするつもりよ!!」 

 不安的中だ!やっぱり由紀さんは私にとって要注意人物そのものだった。
 敵だ!改善の余地がないほど心の中はまっ黒だ!悪魔だ!そんな人と入れ替わってしまった私は馬鹿だ!

「私のことそこまで言うの酷くない?・・・えーい!」
「わ!」

 私をからかう様に、飛びかかってきた瑠璃(由紀)に思わず床に背中をつけてしまう。まるで子供のじゃれあいだ。でも、女手の由紀さんの力よりも、勢いの付いている瑠璃の力の方が勝っている事実。

「うふふ・・。逃がさないわ」

 絡め取られる様に、私の身体を両手両足で器用に捕らえた瑠璃(由紀)。そのまま唇を近づけ、キスまで奪われてしまう。

「ン゛ン゛ン゛ぅっっっ!!!?」 
「んふふふ・・・ン~~~チュッ・・はぁん・・チュパ・・ちゅぶ・・」

 キスする音まで響かせないでよ!私は瑠璃―じぶん―とキスしているんだからそれだけで信じられない。
 瑠璃―じぶん―がこんなに淫らな表情を浮かべているだなんて、信じられなかった。

「チュ~しちゃった・・・うふふ。可愛い、瑠璃ちゃん」

 驚いて固まってしまっている私を嘲笑う瑠璃(由紀)に、大人の余裕を感じてしまう。こんなことを平気でするようになるのだろうか、大人の世界は怖い。

「由紀さん。ヘンなことをさせないで」

 私だけじゃなくてお兄ちゃんまで由紀さんに困っている様子だった。兄妹だもの。妹の欲情した姿なんて見たい兄がいるわけないよね。

「あら?祐樹くんはイヤなの?『レズっ気のある妹』」
「そんな妹はイヤです」
「じゃあ・・・『Mっ気のあるクラスメイト』」
「俺基準でそういう状況を作らなくて良いよ!」

 お兄ちゃんがすかさず突っ込む。そこには一切の迷いもなく、曇りもない瞳で瑠璃(由紀)の言う性欲の塊を振り払う様に一括していた。でも、瑠璃(由紀)はそんなお兄ちゃんを嘲笑う様に、唇に手を置いてお兄ちゃんにささやく声で――

「じゃあ・・・3Pなんてどう?」

 ゴクリと、お兄ちゃんが喉を鳴らしていた。
 

 
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 俺は由紀さんとセックスしようとしている。俺も、きっと由紀さんも相愛なんだと思う。だからこそ、身体を許しているんだ。でも、俺は俺の身体だけど、今の由紀さんの身体は妹の瑠璃の身体だ。
 それって、つまり、他人から見れば近親相姦なんだよな・・・うぅ、やっぱり、心が決意しても抵抗はあるんだな。

「ねえ、早く入れてよ。私、待ってるんだよ」
「まっ、待ってよ。緊張しちゃって・・・」

 だって、心は由紀さんでも、身体は瑠璃なんだ。今まで妹としてしか意識してなかった、瑠璃なんだ。その声も、身体も瑠璃のものだ。由紀さんがいまは使っているだけで、これから返しに行かなくちゃいけないんだ。
 借りたものは綺麗に返さなくちゃいけないのはなんだってそうだよ・・・。

「ふぅん・・。緊張しているのは私だから?それとも、瑠璃ちゃんだから?」
「究極の選択だよ」
「知ってた?瑠璃ちゃん、祐樹くんのこと好きなんだって」
「知ってる。あいつはブラコンだったから」
「愛してたんだよ?」
「え・・・」
「愛したいほどに大好きだったんだよ。セックスしたいほどに」

 瑠璃が俺を愛していた?兄妹なのに、愛してしまったのか。叶わない愛情だと知っているのに、それでも感情が止められなかったのか・・・なんて純愛なんだ。そんな妹を俺は――

「あっ」
「ふぅん・・・そっかそっか。今はやっぱり、瑠璃ちゃんの方が大事よね?」

 瑠璃(由紀)がやっぱりって顔で、ちょっぴり淋しそうに声を明るくしていた。

「大事っていうのは、つまりあいつは妹で・・・俺のただ一人の兄妹だからって意味で――」
「お兄ちゃん!」

 ベッドから瑠璃が起きあがって俺に抱きついてくる。裸同士の俺たちの体温が触れ合ってさらに発熱していた。

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「今から瑠璃とセックスしよ。お兄ちゃんの好きに瑠璃のお尻を揉んで、瑠璃のおま〇こにおち〇ぽぶちこめるんだよ!」
「る、流川さん!?ダメだよ、瑠璃の真似したって――」
「おち〇ぽガチガチに勃起して言ったって説得力無いよ。ねぇ~。だから早くラブラブの近親セックスしようよ~!」

 甘い声で絶対瑠璃が言わない言葉で語りかける瑠璃(由紀)。わかっていても、身体は正直に反応してしまうのだ。久し振りに見る瑠璃の身体は当然、昔の頃より成長しており、お尻なんてふくよかに育っている。触って良いって言うなら、ここで揉みしだく。

「あんっ!お兄ちゃん、つよい」

 無意識に力が勝手に入ってしまう。そんなの当然だ。お尻を揉んでいる相手は妹で、裸同士で抱き合っているのは兄妹同士で、二人だけの内緒という空間で、近親相姦を愉しめるとなれば、興奮しないわけがない!

「そんなこと言ったって、お前だって興奮しているんだろ?」
「そうだよ!だって、この方がお兄ちゃんのおち〇ぽおっきくなるんだもん」 

 完全に由紀さんは瑠璃に成りきっている。蕩けた表情、甘い声、潤んだ瞳すべてが初めて見る、瑠璃の顔だ。
 そこにいるのは妹の瑠璃じゃない。一人の俺を愛した、女性の瑠璃だ。

「ねえ、お兄ちゃん!私のおま〇こに種付けマーキングして!おち〇ぽぶちこんで、瑠璃のおま〇こにマーキングしてほしいの~。その方が興奮するよね?」
「マーキングっていうと、俺のモノっていう感じがさらに高まるな。い、いいのか?」
「うん!だって、由紀さんとならこれからいつだって出来るもんね!」
「お、おい///」

 そんなこと言っちゃっていいのか?由紀さんも俺のモノって自負したようなもんじゃないか。
 素直に嬉しいんだけど。
 お尻を揉みながら、おま〇こを広げる瑠璃(由紀)が俺に言う。

「さあ、もう準備できているから・・・近親相姦しよう。お兄ちゃん」

 
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「――流川さん」

 翌日、もう来ないとほのめかしていた由紀が訪ねてきたことに、祐樹はびっくりしていた。
 普段とは違い、髪の毛もボサボサの状態でだらしがない姿をしていることに慌てる祐樹が、それでもしっかりとした対応を取ろうと由紀に声をかけた。

「ど、どうしたの?連絡くれれば俺の方から足を運んだのに」
「ううん。大丈夫。ごめんね、急に訪ねてきて」
「いや、いいんだよ。それで、今日はどうしたの?」
「うん。・・・その・・・忘れ物しちゃって」
「忘れ物?」

 もちろん、由紀が帰った後に部屋の掃除を済ましていた祐樹に、由紀の忘れ物があったことを知らない。いったい何を忘れたのかは見当もつかなかった。

「えっと、なにを忘れたの?なんなら、俺が取りに行くけど?」
「いいの。自分で取りに行くから」
「そう・・・」

 由紀は玄関をあがり、二階へと歩いていく。祐樹は由紀の後ろ姿を眺めながら、由紀の忘れ物について物思いにふけっていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 あの女を二度と家に来させないと言う計画を立てておきながら、自らの首を絞める結果になってしまった。
『粉薬』で由紀さんの振りをした私が、自分の身体に帰れない状態になるだなんて夢にも思ってなかった。計画は丸潰れ。恥ずかしさと汚れを浴びながら、瑠璃―じぶん―の身体を取り戻すために、もう一度足を踏み入れてしまった。
 力んでしまい、階段を上る音がやけに大きい。こんな悔しい思いをさせた張本人に、一言物申さないと気が済まない!
 向かう場所はお兄ちゃんの部屋ではなく、瑠璃の部屋。 瑠璃として居座っている偽物を追い出すつもりで、大きな音をたてて扉を開けた。

「うわあっ、びっくりした!」 

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 ベッドで寝転びながら漫画を読んでいる瑠璃が私を見て驚いていた。

「あっれ~?お姉ちゃん、また来たんだ」
「また来たんだ、じゃないわよ!」

 部屋に入って早速怒り心頭。

「私のカラダ返しなさいよ!」
「え?なんのこと?」
「とぼけないでよ!あなたは瑠璃じゃないでしょう!?瑠璃は私だもん!」
「あはは!お姉ちゃんなに言ってるの?」

 怒りに溢れている私を見て冷静さを欠かない、むしろ、逆に冷静になっているように余裕を見せている。そして、自分を指すように手を胸に置いて、

「私が瑠璃だよ?ほらっ、この姿どう見たって星瑠璃でしょう?」
「私の真似しないでよ!・・・もう!からかわないでよ!あなたこそ、由紀さんでしょう!?」

 そう。 私は自分の中に入っている人物こそ、流川由紀であると確信している。だって、私が流川由紀に入ってしまっているのだから、私の部屋で幽体となって彷徨っていた流川由紀が、私の身体を勝手に使ったとしか考えられないのだ。

「もういいでしょう!もとの姿に戻ろうよ!」
「だから、さっきからなんのこと言ってるの?私わかんない~」

 あくまで惚ける瑠璃にまた怒りを募らせてしまう。だって、このままだと、いつまで経っても私はお兄ちゃんのもとへ帰れない!

「いい加減にしてよ!」
「由紀さん?」
「ひっ!?」

 怒鳴り声が聞こえたのか、お兄ちゃんが心配そうな表情でドアの前に立っていた。気まずくなった私はどうしたらいいのか分からなくて頭が真っ白になった。

「お兄ちゃん!お姉ちゃんが瑠璃を怒るの!」
「あっ・・」
「お、おいっ・・」

 甘えるように瑠璃がお兄ちゃんの腕の中に抱きつく。それを見てお兄ちゃんが私に困った表情を浮かべていた。

「ほんとうなの?流川さん」
「ち、ちがう・・ちがうよ。だって・・・だって!!」

 目から涙が溢れてくる。我慢したって、お兄ちゃんが好きな分だけ私の想いが込み上げて涙を零れさせるんだもん。

「瑠璃は私だもん!!私がお兄ちゃんの妹の瑠璃だもん!」
「えっ・・流川さん・・・?」
「お兄ちゃん!私が瑠璃なの!本当だもん!信じてよ、お兄ちゃん!」
「――――」

 私が泣きながら必死に訴えかける。同じ血を分けた兄妹なら、お兄ちゃんが私のこと分からないはずがないよ。私の好きな漫画に兄妹の絆を描いた作品があるけど、こんな絶望的な状況の中でお兄ちゃんに私を当ててほしいという希望を持ってしまうのが乙女心よ。お兄ちゃんならそれくらいのことを叶えて欲しいんだもん!

「・・・お兄ちゃん。お姉ちゃんなに言ってるんだろうね?」

 疑惑を持ちながらも私の声に耳を傾けていたお兄ちゃんに、瑠璃が嘲笑っていた。

「急にお姉ちゃんが私のフリしたってダメだよね。だって私はここにいるんだもん。瑠璃は瑠璃だよ。由紀さんが私のはずないじゃん」

 そうだ。普通に考えたら、私の言っていることは世迷言でしかない。 身体が入れ替わったことなんか、実際に体験した人以外は絶対に信じない現象なんだ。私がいくら瑠璃と叫んだところで、それは『由紀の妄言』でしか捉えられないはずなんだ。

「そ、そうだよな・・・。瑠璃のはずがないよな」
「お兄ちゃん!?」
「そうだよ、お兄ちゃん。由紀さんもこの寒さで可笑しくなっちゃったかな?あははは・・・!!」 

 なんで?なんでそんなこと言うの?
 なんでお兄ちゃんを惑わすの?
 由紀さんってどうしてそんなに意地悪なの?
 ・・・・・・本当に、由紀さんなの?
 あなたはダレなの?
 瑠璃の中に入り込んだあなたは・・・ダレなの?
 こわい・・・イヤ・・・
 私の身体を取らないで。私の人生を奪わないで!私を殺さないで!!
 殺されるくらいなら・・・私がおまえを殺す!!

「ぐ・・がぁ!!?」

 ぎりぎりと、瑠璃の首を絞める。バタバタと暴れながら、苦しさを見せながら必死に私の手を振りほどこうとしている。
 私が瑠璃を殺している。
 涙でかすんで見えなかった視界が、一瞬で開けて見えた。

「――――っ!!」
「やめてくれ、流川さん!!」

 ぱっと手を放し、苦しそうに咽る瑠璃と駆け寄るお兄ちゃんを呆然と見ていた。

 ワタシハイマナニヲシタ?
 ワタシハワタシヲコロソウトシタ・・?
 アタマニチガノボッテ・・・ナニモカンガエラレナクナッテ・・・
 モウ・・・ドウシテイイノカワカラナクナッテ・・・
 コワイ・・・イヤ・・・
 ワタシガコワイ。

 部屋から飛びだした私は、もうこの家に居られなかった。
 お兄ちゃんの前からも、瑠璃の前からも現れるわけにはいかなくなった。
 殺人という・・・絶対に許されない禁句を犯そうとしたのだ。
 ごめんで済むなら警察はいらないよね。謝罪で許されるなんて虫が良すぎるよね。
 だから私は、もう二度と帰らない。
 お兄ちゃんの元へ二度と現れない。そうした方が絶対に幸せだから。

「さようなら、お兄ちゃん・・・うわああああん!!!」

 自分の想いを殺して、 私も受け入れるべきなんだ。
 私は『流川由紀』。星祐樹くんと一緒に学級委員をしている、女子高生なんだって。

 
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 お兄ちゃんの腕の中で抱かれたい。そんな妄想を味わう私は、最高に幸せだった。
 たとえ、カラダは私じゃなくていい。祐樹は妹―るり―にとって兄であり、それ以上の関係になれないって分かっているから。
 それを望む以上、私は私―るり―でいちゃダメだから。
 だから、私は彼女―ゆき―さんでいたい。祐樹は私のことを彼女―るり―って見てくれるから。

 服を一枚一枚脱がしていくお兄ちゃんは、緊張しながらも、しっかり先導するように私のセーターを脱がしていく。セーターを脱がしたら次はスカート。ベルトを外してスカートを脱がせようとしたお兄ちゃんが、ピクリとその手が踏み止まった。
 私のお尻がベッドに沈んで脱がせないみたい。私もこわいけど、腰を浮かせてお尻を持ち上げ、お兄ちゃんの行動を受け入れるように静かに誘導していった。タイミングを合わせるようにスカートを脱がすお兄ちゃん。下着姿になった由紀さんを見て、お兄ちゃんが顔を真っ赤にしていた。

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「い、いいんだよな?」

 ここまできて、そういうこと言うの?

「妹さん、隣の部屋にいるんでしょう?」
「うっ・・・」

 一瞬、戸惑った表情を見せるお兄ちゃん。嫌な質問だったかな?・・・えへへ、困らせるのも好きだけど、今は由紀―わたし―だけを見ていてほしかった。

「好きなんでしょう?私のこと」
「・・・うん」
「私も。・・・止められない」

  大好きなお兄ちゃんと繋がれるのなら。
 一時でもいいから、お兄ちゃんと深い関係になれるのなら。
 これが夢であってもいい。私の想いを叶えてくれるなら。
 私は、由紀さんを傷つけても構わないほど、お兄ちゃんを迎え入れていた。
 私とは違い、成長した身体。大きな胸と大きなお尻を包む白の下着は、私の穿いているものとは比べ物にならないほど色っぽく見える。
  可愛いデザインの中にイヤらしく透ける大人っぽい部分が男性の性欲をかきたてるに違いない。お兄ちゃんも興奮するように一回、鼻息を吐き出していた。
 いつか、私もこういう大人っぽい下着を身につけてみたい。

「ありがとう・・俺、流川さんのこと大事にするから」

 ベッドに寝転んでいる私の股の間に移動して、剥き出しになったペ〇スを押し当てる。私を見ながら興奮したお兄ちゃんのペ〇スが、私の入り口に当たってくすぐってるよ。
 熱い感触が伝わってくる。ついに結ばれる時がきたんだと思うと、いやでもお汁が溢れ出てきちゃった。お兄ちゃんはそのお汁を絡めるようにペ〇スを割れ目に宛がって、くちゅくちゅ馴染ませていった。

「ん、んぁ・・はぁ・・はぁ・・・祐樹くん・・・?」
「いや・・・なんか、嬉しくて」
「んふ・・・私も、すごくドキドキしているよ・・・。はぁ・・はぁ・・・」

 兄妹の私たちが彼氏彼女になったことを嬉しがっているんだなんて、本当にいい兄妹だよね?
 私、お兄ちゃんの妹で本当に良かった。
 たとえ、私は彼女になれなくても、この思い出を胸に抱いてこれからも生きていけるから。

「・・・由紀さん、挿れるよ」
「うん・・・祐樹くん・・・来て」

 請う私に頷いて、お兄ちゃんは腰をゆっくり進めていった。

「ん、あぁぁ・・・ひぅ・・・んふぅ・・・」

 少し腰を進めるだけで、膣内に侵入したモノに対して、カラダが抵抗するように熱を発した。そして、すぐに先端に対して強い抵抗を示す。私の意志とは関係なく、これ以上進ませない様に侵入物を締めつけていく。
 ミシミシって、きつい、抵抗だ。

「んひぃ!!あ・・・あっくぅ!」

 それは私自身をも苦しめる。まるで体内に侵入したモノが今までなく、初めての侵入物に全力で抵抗を見せているようだ。つまり、それって・・・本当に、由紀さんは・・・処女だったんだ。

 ミシミシミシ・・・ブツン。

 お兄ちゃんのペ〇スが抵抗に抗うように押し進んでいく。そのせいで、由紀さんの処女膜が破けた感覚がした。

「ひぅぅっ!!」

 痛みに眉に皺を寄せる。接合部から一筋の赤い鮮血が溢れていた。

「だ、大丈夫?」
「うん・・・。大丈夫。私、いま・・とっても幸せだから。・・・はぁ、はぁ・・・一緒に、気持ちよくなろう?」

 目に涙を溜めても、本音を伝えることが出来た。最愛の人に処女を捧げることができて幸せだよ。

「由紀・・・ああ、わかった」

 お兄ちゃんが覆いかぶさり、そのまま腰を突き動かしていく。
 ずしん、ずしんって、硬くて大きなお兄ちゃんのペ〇スが、由紀さんの膣の中をぐちゅぐちゅに掻き混ぜていくよ。
 まとわりつく膣肉の感触もそれぞれ。ペ〇スが擦れる部分が毎回違うから、一回一回全部新鮮で強い刺激が私の脳を麻痺させていくよ。

「あ、んあ・・・ひあ・・・あ・・あ・・う、動いてる・・・祐樹くんの・・・っ!」
「これが・・・由紀さんの、膣内・・・っ!蕩けて、狭くて・・・すごい、きもちいいっ!」
「はぁ、はぁ・・うれしい・・・もっと、もっと、気持ちよくなって・・・んああっ、はぁ・・はぁ・・」

 腰を打ちつける度に、私の甘い喘ぎ声が漏れる。それでも、処女を喪失した痛みは引かず、動きに耐える部分も混じってしまう。 
 そんな時、お兄ちゃんがキスをしてくれる。キスだけじゃなく、おっぱいを弄り、全身で痛みを快感に変換してくれようとしていた。

「んひゃぅ!そんな、あふ・・つ、繋がってるのに・・・おっぱいも、いじっちゃ・・・んああ!!」
「はぁ、はぁ・・由紀さんの乳首、ビンビンに硬くなってる・・・おま〇こもあったかくて・・・濡れて挿入しやすくなってきていて・・・」
「い、言わなくていいよぉ」
 
 恥ずかしいけど、恥ずかしいことも気持ちよくなるから。
 お兄ちゃんを好きなことが、気持ちよくさせるから。

「好きだよ、祐樹くん」
「ああ、俺もだ。気持ちいい・・・由紀・・・っ!」

 部屋中にセックスの音が響き渡る。じゅぶじゅぶと接合部から漏れる匂いが込み上げてくる。
 私たちは快感を分かち合い、感情をぶつけ合い愛しあった。

「ああ、由紀・・お、俺もう、限界――」
「私も、もう、ダメ・・・エッチのことだけしか考えられなくて――ああんっ!お、おお、おかしくなりゅう!おち〇ち〇が、奥・・・で、当たって・・・ダメになっちゃぅ・・・あああ!!」

 奥まで届いたペ〇スが子宮口にコツンと当たる度、全身が震わされて感度が増幅していってる。何度も何度も子宮口を擦られて、目がチカチカして私の頭が白熱していく。
 もう、限界なんだ。
 自分の身体でも味わったことのない最高潮の絶頂を味わう。

「由紀、俺――このまま出す・・・膣内にっ!」
「うん、いいよ、だして!全部、受け止めりゅ。大好きな祐樹くんのせーえき、ほしいの!・・・はぁ、あああああんっ!!!」
「くぅ――――っっっ!!」

 ドピュドピュ!びゅるるるるっ!びゅっ、びゅっ、びゅっ――!

 お兄ちゃんのペ〇スが爆発し、精液が私の膣内に大量に吐き出される。満たされるお腹の中。精液の熱い鼓動が子宮の中に流れている感覚がする。
 私の絶頂と供に精液を残らず搾り取るようにペ〇スを締めつける。お兄ちゃんが苦しみと呻きに似た声をあげて、下半身をブルブル震わせていた。

「はぁ・・・・・はぁ・・・はか・・・んぁぁ・・・祐樹くん・・・」
「は・・・は・・・あ・・由紀さん・・・」

 絶頂の余韻の中で、私は甘えた声でお兄ちゃんに呼びかける。
 最高の幸せの中で、悲しみを超えた声で大好きな人に――


「これで、明日から元通りの関係になろうね」


 ――私は、これ以上ない笑顔でさようならを告げた。


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 土曜日。休みの日を兄妹仲良く昼食を取り、午後はなにをして過ごそうかと考えていた。
 もちろん、お兄ちゃんと一緒よ。両親がいない時こそ、兄妹一致団結して一日に起こるトラブル&アクシデントを回避して行かなければならない。
 兄妹の絆は一気に深まる頃には、『友達以上、恋人未満』ならぬ、『家族以上、愛人未満』の関係を築いて見せるんだ。

「お兄ちゃん。これからなにしようか?」
「え?瑠璃は予定があるんじゃないの?」
「ないよ。こう言う時だからこそ、友達との誘いを全部断ったんだよ」

 両親がいないから仕方なくお兄ちゃんといるんだよ、という名目で、お兄ちゃんとずっといたいと言う本音を隠す。大丈夫かな、ちゃんと恥ずかしがらずに言えたかな・・・。
 くすっ、お兄ちゃんが困った顔してる。むぅ・・って、難しい顔しているのが、なんだか可愛い。
 ・・・あれ?ひょっとして、私の本心気付かれちゃったかな?近すぎちゃったかな・・・?
 ・・・・・・それとも、本当に私がいない方がよかったのかな・・・?

「瑠璃がそんなに真剣に考えているだなんて思わなかった。ごめんな、瑠璃」
「えっ・・。い、いいよ。なんか予定があるなら優先しても」
「そうか」

 お兄ちゃんはこれから予定があるんだ。
 午後からお兄ちゃんと遊べないのは残念だけど、また夕方からお兄ちゃんに甘えてもいいよね。
 ・・・これから、何をしよう?

 ピンポーン。

 家のチャイムが鳴る。私がリビングから顔を出すと、玄関に待っていたのは――

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「――――!!?」

 ――お兄ちゃんと同じクラスの、同じ学級委員の、あの女だった。

「こんにちは、妹ちゃん」
「あ・・あ・・・」

 内心穏やかじゃないのが声に出てる。口が震えて言葉が出ない。 心休まるはずの休日に、どうしてお兄ちゃんの学校のクラスメイトと会わなければならないのか?!
 しかも私服だよ。制服とはまた違った衣装に、お兄ちゃんが心惹かれてしまったらどうしよう。
 ピンクのニットりタイトスカートの組み合わせは彼女の勝負服じゃないのだろうか!?へそ出しスタイルでショートスカートで絶対領域を見せていることでスタイルの細さを前面に押し出しているじゃないか。
 くやしい、でも可愛いよぉ。

「流川さん。・・・来ちゃったか」

 「あちゃぁ」と、お兄ちゃんがやってしまったかのように小声で漏らす。私と由紀さんと会わせたくなかったというのが本心なのだろう。
 正解だよぉ!!!

「どういうこと!えっ、これからの予定って、えっ?お兄ちゃん!?」

 詰め寄る私にお兄ちゃんがもっと困りかねている。

「今日も祐樹くんの部屋で学級委員の準備をさせてもらうのよ」
「あ・・そうなんだ・・・」

 よかった。デートって言ってたらその日は二人のストーカーになってデートそのものを滅茶苦茶にしてやる。
 DeepStalkerになるところだった。

「って、全然良くないよ!!おかしいよ!休みの日まで学級委員の仕事だなんて!」
「仕事が全然進まなかったんだ」
「なんで!?お兄ちゃん、excelもwordも得意じゃない!powerpointやjavaだって出来るのに、それでも仕事終わらないの!?」
「流川さんが真面目に働いてくれないから」

 あんたかい、手を引っ張っているのは!?
 むしろ、お兄ちゃん一人の方が仕事が捗るんじゃないの?この女、存在自体がマイナスじゃない!

「だって、面倒じゃない」

 学級委員としてありえない反骨精神。不真面目な彼女がどうして学級委員なんてやってるのだろう。
 
「だったらなんで学級委員にはいったのよ!?」
「祐樹くんのことが好きだから」
「かぁぁぁ―――/////」
「かぁぁぁ―――/////」

 今日一発目の爆弾投下。はやいよ、はやすぎるよ、お兄ちゃんが何人いてもキリがないよ。
 初っ端からもう本音を隠さなくなった。このままじゃ、本当にお兄ちゃんが由紀さんにヤられてしまう。

「・・・うん。どうぞ、部屋でゆっくりしてくださいね」
「瑠璃・・?」

 あっさり引いた私にお兄ちゃんがなにかを感じ取った。でも、彼女はなにも気付かずに玄関を上がっていった。
 リビングでお茶の準備をする。私はこの日の為に『粉薬』を常備ポケットに仕舞い込んでいたんだ。

「あっ、お兄ちゃん!」
「なんだ?」
「お茶がないよ。買ってきてくれない?」
「お、俺に行かせるのか?」
「いいでしょう?」

 予定があるといいながらわざわざお兄ちゃんを指名して買い物に行かせて家を開けさせる。
 あ、きっと私、黒い顔している。

「ああ、いいよ・・・流川さん。申し訳ないけどひとっ走りしていってくるから、俺が帰ってくるまで部屋でくつろいでいて」
「わかったわ。いってらっしゃい」

 お兄ちゃんが上着を羽織って買い出しに行く。お兄ちゃんの部屋で模様を見ている由紀さんに声をかけて自分の部屋に案内した。
 初めて入る私の部屋に、由紀さんは興味津々で眺めていた。

「わあ。可愛い部屋。少女趣味~」
「普通の部屋です」
「ぬいぐるみも可愛い。おめめもぱっちりしてるし、愛くるしいし、瑠璃ちゃんみたい」
「・・・・・・」
「かわいい~かわいい~!」

 まるでぬいぐるみのように私を可愛いと連呼する由紀さん。白々しくてからかわれているって分かっているのに、それがきっと彼女の素なんだろう。
 扱い辛い・・・きっと、お兄ちゃんも照れ隠しを見せながら彼女とやっているんだろう。心中お察しします。
 
「流川さん。これ飲んで?」
「なに味、これ?」

 コップに入れた『粉薬』を溶かしたジュース。黄色いジュースを手に取った由紀さんは、私を信じて疑っていない様子だった。

「私と仲良くなるシルシ」
「乾杯するのね。・・・乾杯、瑠璃ちゃん」

 コップに添えた手を持ち上げ、縁に唇をつけて、水を傾けて口の中に流し込む。
 ――ゴクリ。
 由紀さんの喉がなり、『粉薬』を飲みこんだ由紀さん。

「はぁ・・。おいしい・・・・・・」

 しばらくすると、由紀さんは目をとろんとさせて目蓋を下ろしていく。眠ったように目を閉じてしまった由紀さんは、私が由紀さんの顔の前で手の平を翳しても、何も反応を示さなかった。
 意識がない。もう、このカラダには、由紀さんはいないのだとわかった。

「あはは!残念だったわね!お兄ちゃんは誰にも渡さないんだから!」

 高らかに笑いながら勝利宣言を叫ぶ私。この部屋にいるであろう由紀さんに、聞かせるように声を響かせる。
 私の本音。私の本性。腹黒い、私の正体。でも、お兄ちゃんが大好きなことに嘘はない。これが、私なんだ。

「返事が帰って来ないとつまらないね。私もそっちにいくね」

 由紀さんがいるはずの空間に私も進んでやってくる。『粉薬』を飲みほして意識を失うと、カラダから分離した精神が幽体になって浮かび上がる。空中に浮かんでいる由紀さんを見つけ、私は宙を泳いでやってくる。

「瑠璃ちゃん!?」

 私を見て驚いた顔をしている由紀さん。地上で眠っている私と由紀さんのカラダを、空中で二人が見ていた。

「びっくりしたでしょう!このジュースは飲んだ人の身体と精神を分離させる働きがあるんだって!だから、あそこにいる私たちには誰も入ってないんだよ!」
「そんなことってあるんだ・・・」

 普段余裕を見せている由紀さんも、この現象には驚いて動揺しているみたいだった。空中に浮かんでいることに動揺し、早く戻りたいと言う意思が伝わってくる。

「今の私たちって、トト〇みたい」
「・・・・・・」

 やっぱり、彼女はどこか澄ましているのかもしれない。

「でも、やっぱり今は自分のカラダに帰らないと。早くしないと祐樹くんが帰ってきちゃう。ねえ、瑠璃ちゃん。早く帰りましょう。カラダをあのままにしておくわけにはいかないでしょう?」

 空中散歩もやってみたいけど、彼女にとっては祐樹くんのほうが大事だと言う。私は歯ぎしりを立てながらも、ふっと表情を和らげて由紀さん以上に余裕を見せた。

「ダメだよ。由紀さんは帰っちゃダメ。お兄ちゃんのところに行かせたくないもん」
「えっ・・あっ」

 私は空中をもぐるように地上に降りていく。そして、眠っている私と由紀さんの顔を交互に見ながら天井にいる由紀さんを見上げた。

「さっきも言ったけど、ここにいる私たちは魂の入ってない空っぽの状態なんだ。・・・じゃあ、いま私が由紀さんの身体の中にはいったら、どうなると思う?」
「え?」

 『これを使えば、精神が身体から放れ、その身体はもぬけの殻になる。そこに別の精神が入り込めば、その身体を使えるようになる』

 博士が説明した粉薬。心と身体を入れ替える、魔法の薬――。


『じゃあ・・・その時に私がこれを飲んで相手の身体に入り込めば・・・』
『その身体はおまえが動かせるようになる』
『・・・・・・ほんとなの・・・?』

 博士が教えてくれた、たった一つの冴えた方法。
 由紀さんをお兄ちゃんに近づけさせないようにするなら、私が由紀さんになればいい。

「由紀さんのカラダ、いただいちゃうね」
「どういうこと、えっ?」

 困惑している由紀さんを置いて、私は由紀さんの口から侵入していった。『粉薬』によって具現化した私の精神は、由紀さんの口の中で変形しながら吸いこまれていった。
 私の幽体はどんどん由紀さんの中に入り込んでいき、全部入り込むと、由紀さんの身体は熱を持ったように息を吹き返した。

「――――」

 目蓋を震わせながらゆっくり目を開ける。私の身体が未だ眠るように目を閉じているのを眺めながら、ゆっくりと起こさない様に身体を起こして起ちあがった。

 普段よりも目線が高く、身長がある身体。流れるような髪の毛が顔に纏わりつきながら、一本一本から香るシャンプーのいいにおいが鼻をくすぐった。
 別人になったように身が軽い。華奢な手脚や締まったお腹はまるでアイドルになったかのような気分にさせていた。
 自分の部屋の鏡にその姿を映す。そして、鏡に映る私は、流川由紀と入れ替わっていることを確信した。

 私と同じ動きをする由紀。私は、由紀さんになった身体を見降ろし、細くて長い両手をじっと見つめると、にんまりと顔がにやけてしまった。

「あははは!やったわ!私が流川さんになったんだ!」

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 高校生の身体。高校生の生活。
 お兄ちゃんと同じ時間を手に入れた私は、部屋の中で感情を爆発させていた。

「やったぁ!!」と、ピョンピョン跳ねながら喜びを露わにする。それは、由紀さんの生活を奪ってでも手に入れたかった私の願望だった。

「これが女子高生なのね。こんな綺麗な身体を手に入れたら、お兄ちゃんじゃなくても男性ならイチコロよね?」

 鏡の前で鼻の下を伸ばしながらカラダを覗いている。ニットのセーターに包まれる盛り上がった胸の膨らみを両手で揉みながら、その重量感や柔らかさに心地良くなる。

「ううん・・・感度もいい・・・こんなに由紀さんのカラダってキモチイイの・・・・ん・・あん」

 鏡の前で始める痴態行為。由紀さんが悲鳴をあげているかもしれないけど、もう私の耳には由紀さんの声は聞こえない。邪魔する者は誰もいないのだ、このままだと、私は時間が許す限り由紀さんのカラダを模索していたかもしれない。


「ただいまぁ」


 ちょうど全てが完了した時、お兄ちゃんが帰ってきた声がした。

「あっ、お兄ちゃんが帰ってきた・・・。って、違うか。祐樹くんが帰ってきたわ。早く部屋に戻らないとね」

 私は由紀さんのカラダで部屋から出ていこうとする。もう見えない由紀さんの幽体。 今も宙を彷徨い閉じ込められているに違いない。
 この入れ替わりは時間稼ぎにすぎない。でも、僅かな時間でも告白する時間ができれば十分だった。

「由紀さんにはもっと素晴らしい男性がいるはずだから、私が祐樹くんに振られてきてあげるね」

 人を好きなるのは辛いこと。でも、振られることはもっと辛いことだから。
 だから、妹の私がお兄ちゃんに振られてきてあげる。

 安心して。この世で一番辛い人は、お兄ちゃんを誰よりも好きになった、妹に他ならないんだから・・・。


 
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 私のカラダが私を置いて部屋を出ていく。
 私の身体に入りこんだ瑠璃ちゃんが、私になりすまして祐樹くんに何かを企んでいた。
 どうしようと考えながらもどうすることも出来ない。だって、私はまだ状況が追い付いていないし、どうやったら瑠璃ちゃんみたいに地上に降りられるのかも分からなかった。

「困ったわね・・・これからどうしたらいいのかしら?」

 こういう危機的状況でも頭が冷静になれるのは、性分だからかしら。真面目すぎたら頭が熱暴走して逆に働かなくなる状況よね。真面目に働いている人がケチ付けられたり、怒られたりして呆然としてしまう状況と似ている気がした。私はそういう状況に陥ると、逆に可笑しくなっちゃう。
 だって、真面目に働いているのに、怒られるのよ?今までやっていた事を否定されて悲観的になるより、他人の悪いところを見つけようと荒さがしを必死でしている人を思うと、バカバカしくて可笑しく思わない?
 不真面目くらいがちょうど良いのよ。常に笑顔を絶やさなければ人が必ず寄ってくるから。
 そんなことを考えられるくらい余裕があるほど私は冷静沈着だった。そして、状況を見渡すと、

「・・・あらっ?」

 瑠璃ちゃんが部屋に残したあるモノを見つけて、私はある考えが浮かんだのだった。


 
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 夜も更けてきたPM11時。普段なら眠っている時刻にもかかわらず、私はまだ起きていた。眠さよりも興奮が強く、目を閉じても眠れる気がしないんだもん。私は学習机の椅子に腰かけて、博士からもらった怪しげな『粉薬』が入った小分けの袋を眺めながら、私は身体と精神が放れた現象を思い返していた。
 自分を客観視しているもう一人の自分。天井から見ながら、肉体を一時的に離れた私は、その怖さに身震いしてしまう。

「もし、あのまま戻ってこれなかったら・・・どうなっていたんだろう・・・」

 最悪の結末が脳裏をよぎり、私は博士と会ったことも忘れようと一回机の中に『粉薬』を仕舞った。もし、このまま忘れることができたなら、机を開けて、謎の袋を見つけていとも簡単にゴミ箱に捨てることができたのに・・・。

「・・・・・・」


これを使えば、精神が身体から放れ、その身体はもぬけの殻になる。そこに別の精神が入り込めば、その身体を使えるようになる』

 博士が説明した粉薬。心と身体を入れ替える、魔法の薬――。


『じゃあ・・・その時に私がこれを飲んで相手の身体に入り込めば・・・』
『その身体はおまえが動かせるようになる』
『・・・・・・ほんとなの・・・?』

 目覚める恐怖心よりも、芽生えた好奇心の方が強い。私は机から『粉薬』を取り出すと、コップに水を一杯持ってきて『粉薬』をかきまぜて溶け込ませた。

 水が黄色く輝いている。これを飲めば再び精神と身体が離れることができるだろう。
 そうすれ
ば、心を入れ替えることができるんだ。

「・・・本当にこれで入れ替われるのかな?」

 私は、試飲する感じにコップに口をつけた。グビッと喉に『粉薬』を溶かした水を落とし、冷たい水が口の中を潤していく。飲み干して一息ついた私は、そのまま昇天する様な勢いで頭をガクンと机に突っ伏した。

「(・・・あ・・・また・・・)」

  意識を失い、私は精神と肉体に分離する。精神の私が肉体の私を眺めている。
 そこにいる私は、死んだように眠っている。
 っていうか、死んでいるんだ。
 精神がいない肉体だから。早く肉体に帰らないと私の身体はどんどん冷たくなっていく。それこそ、命の危険が危うい状態なんだ。

「(・・・でも、それじゃあ駄目なの)」

 戻っちゃダメ。それじゃあなんの実験にもならない『 入れ替わり』が出来るなら、私の身体に戻る別の精神を探さないといけない。
 誰にしようかと考えていると、ふと脳裏によぎったのは、私の親友の日向琥珀―ひなたこはく―ちゃんだった。

「(そうだ。琥珀ちゃんならきっとこの時間眠っていると思う) 」
 
 家から歩いても琥珀ちゃんの家は距離がある。でも、障害物のない空中を遊泳しながらだったら、もののすぐに到着できそうな気がした。いや、出来る気がする・・・。



「(・・・えっ?)」

 それは一瞬だった。私の部屋の模様が変わったと思ったら、気が付けば暗闇の中にいた。

「・・・暗くて何も見えない・・・・・・。って、目を閉じてたからか」

 私は目蓋を震わせて目をうっすら開ける。部屋の中はやはり真っ暗で、一体何が起こったか分からないまま身体を起こした。
 ここがどこか分からないから、 闇雲に部屋の電気のスイッチを探す。幸い、目が暗闇に慣れて暗闇でもどこになにがあるのか感覚で分かるようになっていた。
 ぬいぐるみや学習机を見ると、ここは私と同じ年齢の女の子の部屋だと言うことが分かる。しかも、特徴のあるくまのぬいぐるみは、 琥珀ちゃんのお気に入りのぬいぐるみと同じデザインだった。

「(・・・そういえば、部屋の作りが琥珀ちゃんの部屋にそっくり。だから、なんとなくわかるんだ)」

 私はどこにもぶつかることなく部屋のスイッチを手探りで見つけ、 明かりをつけた。暗闇が掻き消され、蛍光灯の明かりが私の目もクラっとさせる。

「ぅぅ・・まぶしい・・・・・・。あっ、やっぱりだ。ここ、琥珀ちゃん家そっくり 」

 私が何度も遊びに来た琥珀ちゃんの部屋の模様そのまま。琥珀ちゃんがいない部屋に残されたぬいぐるみは、普段と何も変わらない表情で御主人の帰りを待っているように見えた。


「琥珀ちゃん、どこ行っちゃったんだろうね?・・・そもそも、ここ、琥珀ちゃんの家なのかな?」

 急に何処かへ飛ばされた私は、ここがどこか分からない。琥珀ちゃんのことを思った瞬間、琥珀ちゃんの部屋そっくりの場所に飛ばされて、私だっていったいどうなったのか分からない。
 でも・・・私は、ぬいぐるみの置かれたドレッサーの鏡を見た瞬間、それこそ、見てはいけないモノを見た勢いで声にならない悲鳴をあげていた。

      
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「――――」
 
 私の目の前に、琥珀ちゃんが立っていた。
 制服姿ではない、私服姿の琥珀ちゃん が映っている。
 そういえば、さっきから私の声が普段とは違う気がしていた。でも、普段きいてる琥珀ちゃんの声とも違う気がした。
 それはそのはずだった。だって、いま、琥珀ちゃんの声で喋っているのは、私なんだから。

「琥珀ちゃん・・・私、本当に琥珀ちゃんになってるんだ・・・」

 頬に手をかざしてみる。すると、私が思った通りに琥珀ちゃんが動いている。頬に手を当てながらスリスリさせて、夢のような現実をじっくりと噛みしめている。

「ほ、本当だったんだ。私が・・・琥珀ちゃんになっちゃった!」

 遅い時間に騒いでしまったら、親が飛び起きてしまうかもしれない。でも、心が躍ってしまう。
 疑惑だった心の『入れ替わり』が本当にできたんだ。私がいま琥珀ちゃんになっているのなら、私の身体にはきっといま琥珀ちゃんが入っているに違いない。眠っている身体に眠っている精神が入ってちょうど良い。私の変わりに身体を十分休ませてあげて。
 だから、完全に目が覚めてしまった私のために、琥珀ちゃんの身体はしばらく付き合ってもらおう!

「琥珀ちゃん。私、瑠璃だよ?いま、琥珀ちゃんになってるんだよ?」

 誰に言うわけでもない。琥珀ちゃんの声で好きなことを喋れるんだ。琥珀ちゃんの身体を使っているということに、私は今まで覚えたことのない欲望を持ち始めていた。

「る、瑠璃ちゃん。や、やめてよぉ~、私の身体勝手に使わないでよ」
「えへへ・・。いいじゃない。 親友同士なんだから仲良くしましょうよ!」
「い、一方的だよぉ~」

 私は琥珀ちゃんの声で一人二役を演じていた。私がやっているんだけど、鏡の前では琥珀ちゃんが二役の喜怒哀楽を見せていた。それがなんだか面白くて、どんどん役にのめり込んぢゃう。

「えへへ・・。琥珀ちゃんの胸って私より大きいね」
「あ、いやん!・・・触らないで!」
「今は私が使ってるんだからダメ!いいなあ、私も早く大きくなりたいな」

 鏡の中で胸を揉んでいる琥珀ちゃん。温かくても薄い女の子の服では、おっぱいの柔らかさも感じることができた。胸元を開きながら服の中に隠れているピンク色のブラを覗きこんだ。

「かわいい。琥珀ちゃん、こんな可愛いブラジャーつけてるんだ」

 女の子の間でも着替えを見るシーンはあまり少ない。お泊まりに行かない限り一緒にお風呂に入ることもないので、琥珀ちゃんが身につけているブラジャーに男性みたいに興奮している私がいた。

「こ、琥珀ちゃんのおっぱい・・・すごい、お餅みたい・・・」

  琥珀ちゃんの指先でおっぱいを突く。柔らかい乳圧。そしてプニプニする弾力。キモチイイ。ずっと触っていたい。このまま直接触っていたい。
 もう一度、服の上から胸を揉んでいく。指が食い込み、おっぱいが潰れるも、変幻自在の柔らかさで手を放すとすぐに元の形に戻る。

「ふあ・・・」

 琥珀ちゃんが喘いだ・・・?違う、琥珀ちゃんの声を私が出したんだ。
 普段よりも甲高い、琥珀ちゃんの喘ぎ声を。

「ん・・はぁ・・・あっ・・・ん、んぅぅ・・・はぁ・・」

 鏡の前で胸を揉みながら、喘ぎ声を洩らしている琥珀ちゃんは、普段とは比べ物にならないほど艶っぽく見えた。
 琥珀ちゃんもオナニーしたことあるのかな・・・?
 喘ぎ声、出したことあるのかな・・・?
 誰かを好きになったことあるのかな・・・・・・?

「琥珀ちゃん・・・私のこと・・・好き?」
「えっ・・・。瑠璃ちゃんのこと・・・?」
「うん。私のこと・・・」

 私は、一人二役のことを忘れて、鏡の中で琥珀ちゃんに質問していた。

「・・・好きだよ」

 自分で言わせていることは分かっている。でも・・・

「じゃあ、琥珀ちゃんのありのままの姿を見せてもらってもいいよね――?」

 私がそう言うと、琥珀ちゃんの表情が真っ赤に染まる。でも、私は気にせずに、強引に琥珀ちゃんの着ている私服を脱がし始めた。
 恥ずかしそうにしているのは分かっている。誰かに裸を見られるのは恥ずかしいことだって、私だって抵抗があるもん。でも、それが好きな人だったら我慢するよ。
 大丈夫、安心して。

「――私も、琥珀ちゃんのこと好きだから」  
 

 
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 私、星瑠璃―ほしるり―はいま、お兄ちゃん、祐樹―ゆうき―と二人で生活しています。お兄ちゃんは学級委員としてクラスをまとめていて、クラスメイトの為に働く時のお兄ちゃんは凄く格好良いです。私は中学生で頼りないけど、両親が海外旅行でいなくて大変だけど、一週間はお兄ちゃんと頑張っていけるから淋しくないもん。
 今日も私は早く帰ってきて、夕ご飯の準備をします。鞄を置いて買い物リストのメモを持って、買い出しに出かける準備をします。

「お兄ちゃん、今日はなに食べたいかな?」

 「今日は私がご飯つくるね」って、言ってきたからきっと早く帰ってくると思う。お兄ちゃんは優しいから、私のこと心配して帰ってくると思うんだ。 だから、本音では買い出しに出かけるのはお兄ちゃんが帰って来てからにしようと思ってます。だって、お兄ちゃんと買い物に行くなんて、ちょっと恥ずかしいけど、まるで恋人みたいな気分になれるんだもの。
 お兄ちゃんの彼女だなんて、血縁は出来ないのが本当に残念。そんなことを思う私ってやっぱりお兄ちゃんっ娘なのかな?

「・・・遅いな」

 早く帰って来すぎたかな?買い物の準備ができてから30分。期待を通り越して少し不安になってくる。時刻は4時を回ってる。そろそろ買い出しにいかないと夕ご飯の時間に料理が間に合わなくなっちゃうかも・・・。
 そんな時、「ただいま」と玄関を開けるお兄ちゃんの声が聞こえた。私は不安を消してお兄ちゃんの胸に飛び込む勢いでリビングから玄関に飛んでいった。

「おかえりなさい、おにいちゃ――」

 私の弾む声が最後まで出てこなかった。お兄ちゃんの顔をみて安心したあと、その隣にいる顔の知らない女性を見たからだ。
 お兄ちゃんと同じ制服を着た女性。とても綺麗な髪の毛をしている、清楚な印象のある女性だった。

「お兄ちゃん・・・?」
「うわっ、瑠璃。いたのか」

 私に気付いてびっくりしているお兄ちゃん。女性もきょとんとした顔で私を見ていた。

「妹さん?」
「うん。瑠璃って言うんだ」

 お兄ちゃんが私を紹介している。女性がぱぁっと笑顔になった。

「こんにちは、瑠璃ちゃん。私、祐樹くんと一緒に学級委員やってる流川由紀―るかわゆき―って言います」
「おにぃ・・・兄がお世話になっております・・・」
「まぁ!御丁寧にどうも!」

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 社交辞令的な会話をしながら 由紀さんを睨みつける。彼女が現われてから香るほのかな香水の匂いが私に警告音を鳴らす。
 こいつは、――敵だと!

「お兄ちゃん!本当にただのクラスメイト?学級委員?・・・学級淫?」
「瑠璃!失礼なこと言うな」
「だってぇ!」

 お兄ちゃんはこういうの疎いから、ちょっと女の子に優しくされたら殺っとイっちゃうから~。だから私がしっかりしないといけないの!白馬の王子様みたいな爽やかなお兄ちゃんを、誰の手からも守らないといけないの!

「本当に兄妹仲がいいのね!」
「こいつ、ブラコンで・・・」
「可愛くていいじゃない」

 お兄ちゃんと仲良さそうに話すだけでもイヤ!学級委員でもいつもこんな風に話しているの?
 本当に学級委員だけの間柄なの?それだけで、家にやってくるっておかしいよ!?

「まさか・・・お兄ちゃん、二人は・・・つ、付き合ってないわよね!?」
「えええ!!?瑠璃、それは――」

 お兄ちゃんが慌ててる・・・いや、そんな態度取られたら、信じたくないけど頭に最悪な答えがよぎっちゃう!
 お兄ちゃんに彼女――イヤ、そんなの、絶対イヤ!

「うふふ、安心して。私たち、付き合ってるわけじゃないよ」
「ほ、ほんと?本当なの、お兄ちゃん!?」
「う、うん・・・。そうだよ」

 二人で私をなだめようとしてる。でも、どこかお兄ちゃんが気落ちしているようにも見える。

「でも、なんで家に来るの?両親が旅行にいってる時に!?」 
「学校だとうるさくて仕事がはかどらなくて――」
「うん。だから私が、星くんの家で続きをしようって」
「この人、戯れてるぅぅぅ!!」

 なんで学級委員の仕事を家で続きをさせようとしてるの?そんなの、家に来たいって言う口実じゃない!なんでお兄ちゃん、そんな女の妄言を信じてあっさり家に入れちゃうの?!

「ダメだよ、お兄ちゃん!この人男子慣れしてる!きっと他の男子で遊び慣れてる」
「こら、瑠璃!」
「うん、そうね。そうかもしれない――」

 やっぱりそうだ!私の疑惑を素直に認めた!処女なんかもとっくに卒業したヤリマ〇ビッチに違いない!こんな女にお兄ちゃんは渡さないんだから!

「――でも私、処女よ?」
「かぁぁぁ―――/////」
「かぁぁぁ―――/////」

 この女の爆弾発言に兄妹同じ表現をとっていた。

「男友達もいるけど、そう言う関係じゃないわ。信じてほしいな」
「あ・・・うん。俺は、流川さんのこと信じるよ」
「ありがとう!」

 ・・・やられた。この女に全てを持っていかれちゃう。爆弾発言で動揺している間に、流れを作ってお兄ちゃんの心を奪ってしまう。駄目、そんなことさせない!私はぎゅうぅぅってお兄ちゃんの胸に抱きついた。

「お兄ちゃんのバカ!私がここまで心配しているのに、どうして気付いてくれないの?!お兄ちゃん、このままじゃ弄ばれちゃう・・・付き合っても傷つくだけだよ・・私、そんなお兄ちゃん見たくない・・・ふぇぇ・・」
「瑠璃・・・」

 泣き顔を見せない様にお兄ちゃんの胸で顔を隠す。私の真意が心に響いたのか、お兄ちゃんがポンって頭に手を置いてくれた。

「大丈夫だよ。俺は別に付き合おうとか思ってないから」
「・・・・・・」

 ニヤリ。計画通りだ。
 誰にもお兄ちゃんは渡さないんだから!お兄ちゃんは私だけがいればいいんだから!ゴロゴロニャン。制服の生地に頬をスリスリして甘えちゃう!

「そう言うわけだから、お兄ちゃんは彼女なんていらないって!諦めてください!」

 高らかな勝利宣言をして由紀さんにはお帰り願おう。

「彼女・・・?」
「瑠璃!これは、その・・・違うんだ!こいつ、なにか勘違いしてるんだって!」
「・・・え?」 
「言っただろう?学級委員の仕事の続きをするために家に入れるんだ。だから、彼女とか、そういうつもりで呼んだわけじゃない・・・」

 ・・・なんか、お兄ちゃんが気まずそうに口籠ってる。二人は『学級委員の仕事』と割り切っているのに、私が『彼氏彼女』なんか言っちゃったから、余計なことを吹き込ませてしまった・・・?お兄ちゃんが由紀さんを意識してる・・・。私が『彼女』なんて言わなかったら、お兄ちゃんは由紀さんと『学級委員』として割り切れていたのに・・・?

「うふふ、祐樹くん。安心して。私、祐樹くんのこと好きよ」
「え・・・」
「えぇぇ!?」
「だから、今度は『彼女』として家に呼んでね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

 「失礼します」と言って玄関をあがる由紀さん。私もお兄ちゃんも、由紀さんの爆弾発言part2の投下に完全に固まってしまい、リビングに消える由紀さんを止めることが出来なかった。
 顔を真っ赤にするお兄ちゃん。顔を真っ青にする私。
 真面目すぎるお兄ちゃん。だから本当に心配になる。肉食系女子に喰われちゃう草食系男子。どうしよう、どうしよう・・・

「あっ!買い物・・・そうだ、お兄ちゃん。夕ご飯の買い出しに付き合って!(はやく、この女から一緒に逃げよう!!!)」

 ぐいぐい引っ張るようにこの場から退却する。一時撤退。陣地を開け渡しても、お兄ちゃんの命が無事ならそれでいいよ!

「夕ご飯な、もう俺と由紀さんで買ってきたから」
「あの女ァァァァ!!!」

 先を越された・・!私の買い物、私の夕ご飯を・・・今日やってきた女に譲らざるをえないなんて!!
 リビングにいったのも、買い出しした食材を置きにいったんだ。きっとお兄ちゃんのことだから、両親が旅行にいったことを告げたに違いない。

「じゃあ、今日は私がお夕飯作ってあげるね(ニンマリ!」
※一部過剰な歪曲表現が含まれております。

 私のお兄ちゃんの心を少しずつ蝕んでいくつもりなんだ!!そんな隙を与えちゃうなんて、お兄ちゃんのバカバカバカ!!!私がどんな気持ちでお兄ちゃんとの買い出しを楽しみにしていたか分かってくれないんだから!!!

「あ・・・ごめんなさい。七味唐辛子忘れてきちゃった。買い出しにいかないと」
「そうなの?それくらいなら、瑠璃。悪いけど行ってきてくれないか?」
「わ、わたし!!?」

 天然なの、それとも計算なの?!
 私までも家から追い出そうとしている・・・それもお兄ちゃんには気付かれないほど自然な流れで!
 く、食えない女・・・このままだと、私がいない間に、お兄ちゃんがこの女に喰われてるかもしれない・・・。

「いやいや!絶対イヤ!」
「じゃあ、俺が行くよ」
「それもイヤあああああ!!!」 

 お兄ちゃんと一緒がいい!あの女と一緒は死んでもイヤああ!! 
 だから・・・だから・・・

「うわああぁぁぁん!!!」

 私は玄関を飛び出して急いで七味唐辛子を買いに走った。
 急いで帰らないと、お兄ちゃんの貞操が危ないよぉぉ!!
 絶対に、絶対に・・・私がお兄ちゃんを護らないと!!


 
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