「あー、セックスしてえ!」

 休み時間に大声で公言した藤森宏一―ふじもりこういち―、そのグループは宏一を笑いながら楽しく会話をしていた。

「おまえ、その顔じゃムリじゃね?」
「言えてる、言えてる!」
『アハハハハ!』
「・・・顔なんだぁ」

 休み時間に大声で喋る男子たちに、女子たちのグループはドン引きであった。その中の一人、曽根原晶子―そねはらあきこ―率いる女子グループが馬鹿話をしている男子に突っかかった。

「ちょっと、男子静かにしてよ!」
「あっ?」
「変態」
「最低」
「休み時間だろ?俺たちが何を言おうと勝手だろ?」
「休み時間だからって、みんなのいるところで、性行為の話をする男子って・・・(ボソ」
「なんだと!」
「なによ!」
「よし、なら一からやり直そう」

 いがみ合いながらも宏一は妥協案をだす。珍しく引き下がった男子に良い心掛けをしたと晶子も褒めようとした。

「あー、〇ックスしてえ!」
「ちょっと待って!変わってないじゃない!」
「変わったじゃないか!」
「どこが!」
「〇がはいったから、なんの会話をしているか分かんないだろ?」
「筒抜けじゃない!」
「バカめ、俺たちはサックスの話をしているんだ!(ドヤァ」
「っ!?」

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 宏一の策士にまんまと嵌った晶子が拳をわなわなと震わせていた。怒りを向けようと視線を釣りあげる彼女に、さらに男子たちは侮蔑する。

「セックスだと思った?変態なのはどうやら女子の方だな」
「さっきの会話が頭に残っていたからでしょう。どちらにしても最低よ!」
「なんとでも言え。・・・あー、サックスしてえ」
「おまえ、その顔じゃムリじゃね?」
「言えてる、言えてる!」
『アハハハハ!』 
「・・・顔なんだぁ・・・・・・」

 楽しい会話を弾ませているはずの宏一の表情が一瞬曇る。晶子が示唆し、一矢報いるかの如く宏一を嘲笑った。

「顔がねえ・・・」
「ごめん・・・、これ以上、顔に関して言うのは禁止」

 決してイケメンではない宏一にとって、サックスもセックスも顔で出来ないと仲間内から笑われたことに対して傷ついているのだった。自分で抉った傷でありながら、他人に指摘されると痛みは倍増する。
 男子グループとしては勝ったはずの会話でありながら、晶子と宏一の間では何故か負けた気分であった。
 完全勝利だけを望む宏一にとって、晶子の放った言葉はこれまでにない屈辱であった。

「晶子。てめえは俺を怒らせた!」
「私はずっと怒ってるんだけど!!」
「いたーーーい!!!」

 晶子に殴られ、泣きっ面に蜂の宏一。気分良く帰っていく晶子に、宏一の心身はボロボロだった。残された宏一は、緒方剛史―おがたつよし―に傷を舐めさせようとしていた。

「ズタボロだ。ボロ雑巾だ!」
「そこまでダメージ受けてないだろう?どんだけの『グラスハート』だ」
「受wけwるww草w生wえwるwww」
「・・・おまえ、グラスってスペル間違ってるだろ?」 
「許さん・・許すまじ、晶子ぉぉ!!!この恨み、はらさでおくべきか!!!」

 何気ない会話、ぽつりとつぶやいた一言が、恨みを募らせることがあるのです。
 授業が始まり、席についた宏一は『粉薬』をこっそりと取り出すと、自分のある部分に『粉薬』をまぶした。

「フフフ・・・新薬、『粉薬』の実力をお目見えしよう・・・。お、おおう!!」

 宏一は、自分の左手に『粉薬』をまぶすと、左手がかっと熱くなり、砂状になって視界から見えなくなってしまった。しかし、宏一にはしっかりと左手の感覚があった。左手だけが自分の身体から放れ、宙に浮遊しているのである。それはまるで、粉のように細かい粒子、『粉塵』である。
 部分的に粉塵にできる『粉薬』により、左手のみが幽体になって宙に浮いているのである。皆が授業を受けている中で彷徨う宏一の左手に誰も気付くことはない。宏一は幽体になった左手を操り、晶子の元へと送りこんだのである。

「よし、フフフ・・・」

 宏一が席で一人ニヒルに笑う。晶子に自分の左手を憑依させたことで、消えたはずの左手に温かさを覚えたのだった。
 憑依した左手は晶子の左手と融合したのだ。宏一は晶子の左手を手に入れ、思うように動かせると確信した宏一は、左手で思い切り手をあげさせた。

「あ、あれ・・・?」

 いきなり手をあげる晶子を見て、担任が晶子を指定した。

「ん?どうした、曽根原?」
「い、いえ!なんでもないです」
「?そうか、意味もなく手をあげるんじゃない」
「す、すみません・・・」

 晶子が渋々謝って席に座った。自分では手をあげるつもりは毛頭なく、勝手に左手があがっていった感覚に疑問符が残る。
 恥ずかしそうにしながら縮こまる晶子を見て、良い気味だとほくそ笑む宏一。まさか、宏一が晶子の左手を操っているなど夢にも思っていないだろう。

「(しかし、これだけじゃ済まないぜ。覚悟しろよ、晶子!)」

 まだまだ宏一の悪戯心は冷めることはない。
 『粉薬』を利用して、授業中に晶子を犯すことに決めたのだった。


 
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