純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『憑依・乗っ取り』 > 飲み薬『理想の妹』

「ふぅ・・これでハッピーエンドね」

 私の気持ちを知り、お姉ちゃんは満足そうに微笑んでいた。姉妹の絆が戻って、姉の笑顔が取り戻った姉をみると、私も釣られて笑顔になった。

「よかった。でも、何か忘れてる気がするんだけどな・・・」
「そうよ。あとはあなたを元の身体に戻すだけね」
「もとの身体・・・?お姉ちゃん、なにを言ってるの?私は私だよ?」

 姉と意見が食い違い始め、わたしを見て姉が冗談交じりに噴きだしていた。

「なにを言ってるの?もうそろそろ演技はやめなさいって――」
「演技って・・・おねえちゃん!私のこと今まで演技だと思ってたの!?酷いよ!」

 姉とようやく分かり合えたと思ったのに、急に心が引き離されていくみたい。
 なにを信じていいのかわからなくて、悲しくなって泣き出してしまいそう。

「・・・・・・悠一くーん?」
「悠一くんってだぁれ?私は緒紗よ」
「・・・・・・」

 姉は私の手を掴んで勢い良く掴んで部屋を飛び出していった、そしてわたしを姉の部屋へと連れて行くと、そこにはわたしのクラスメイトの武藤祐一くんがベッドの上で眠りについていた。

「きゃっ!えっ・・悠一くん・・・?なんで悠一君が家にいるの?」
「それは私が拉致したから」
「拉致って、お姉ちゃん――」
「いい?あなたは本当は武藤悠一くんなの!私の計画で緒紗の気持ちを汲んでもらえればよかったんだけど、思った以上に記憶が混同して自分を緒紗だと勘違いしているのよ!いい?このままだとあなたは本当に緒紗そのものになってしまうわよ!」
「えっ、えっ・・・そんなこと急に言われてもわかんないよ・・・」
「しまったなあ。レズなんかしちゃったのがまずかったかしら?このままだと私の緒紗まで・・・・・・」

 真剣な表情で私のことを心配してくれてるお姉ちゃん。私だって気持ちの整理がつかないけれど、今の私は目の前に寝ている悠一くんだというなら、悠一くんを目覚めさせないと大変なことになりそうだと伝わってきていた。
 私以外のもう一人の私が、消えそうになりながらも自分の身体に帰りたいって言っている。だから私は――

「・・・このまま、私の言うことを聞いてくれる緒紗の方が萌えるかも~」
「お姉ちゃん!!」

 とにかく、私は姉の言う通りに従うことにした。姉が言うには、自分の身体の感覚を思い出させれば自然に意識が戻ると言うことらしい。

「つまり――」
「そう、あなたが自分の身体を弄るのよ」
「えっ、えええ・・・!私が!?そんな、クラスメイトの悠一くんに触るなんて、なんだか抵抗あるな・・・」 

 異性でクラスメイトの悠一くん。気が弱くて、少し男の子として幼い印象もあるけれど、やる時はしっかり責任を持ってやってくれる頼もしい一面を持っている彼。
 男の顔を見せる時の彼は実は格好良くて、私も彼に密かな好意を持っていることは内緒にしている。でも、私の中に本当に悠一くんがいるとしたら、私の本音も感じ取っているのかな。そう思うと隠しごとが出来なくて、なんだかちょっと恥ずかしかった。

「うぅぅ・・・おねえちゃんのバカぁ・・・」
「ほらっ。早くやりなさい。そうしないと元の身体に戻れないわよ。今だけ緒紗を好きに使っていいって許可してるんだから、やりたいことしなさいよ!」
「お姉ちゃんがそういうこと言うんだ!!」

 ああ。なんだろう・・・。
 悠一くんだけじゃなくて、私もお姉ちゃんに監視されていると思うと、今後彼氏なんて出来ないんだろうなってつくづく思う。
 
「・・・・・・・」

 せっかくなので、裸の格好のまま私は眠っている悠一くんの傍についた。本当はただ眠っているだけで、すぐに目を開けて起き出しそうな気がするのに、今は悠一くんは目を閉じたまま完全に深い眠りについている。
 私が傍にいることに気付かないまま、静かな寝息を立てている。
 逆シンデレラだ。私が悠一くんを起こすんだって、その耳に小さく囁いてみた。

「悠一くん・・。起きて・・・。私だよ。緒紗だよ」
「すぅーすぅー」
「起きないの?起きないと大変なことになっちゃうよ?いいの・・・?私と一緒になるんだよ?」
「すぅーすぅー」
「私は別にかまわないけど・・・困る人がいるから、頑張って悠一くんを起こすよ。だから、しっかり私を感じてね・・・」

 眠っている悠一くんの唇に私の唇を重ねる。私よりも冷たい唇が、今まで一人でいた彼の寂しさを知らせてくれる。私のぬくもりを味わうと彼の唇が温まる。私がさらに唇を重ねて彼の体温を高めていった。

「ちゅっ、んむ・・・ん、はぁ・・はぁ・・」

 欲情にまかせて舌を絡めるキス。男の人とキスをするのは初めてなので、私もまた悠一くんの唇を感じて熱を帯び始めた。
 私を感じて、私だけを味わって・・・
 なにも言わなくて良い。今は私だけを受け入れてほしい・・・
 そう思いながらキスを深くして舌を伸ばしていくと、彼の唇は少し開いているので、舌を絡め取ることが出来た。そして、私は一人悠一くんの舌に絡みついてチューチュー吸いついて味わった。
 彼の唾液と私の唾液が混ざり合い、何とも言えない味わいが口の中で蕩けていった。

「んん・・・、はぁ・・ん・・・ちゅむ・・ちゅぶ・・ちゅっ、ちゅく・・・んふぅ・・」

 舌を解いて唇を放すと、私と彼の唇に、唾液のかけ橋がかけられた。粘りついたそのかけ橋は、重みに耐えきれずに崩れ落ちて彼のTシャツに落ちていった。
 私は悠一くんのズボンを下ろし、おもむろに左手を逸物の隠れているパンツ越しに撫で始める。本能にまかせて擦りあげている逸物は、私の愛撫に素直に反応し、ズボン越しでも分かるくらいにギンギンに硬くなっていた。

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「嬉しい・・・私を感じておっきしてくれたんですね・・・悠一くん・・」

 私の手の動きは嬉しさと合わせてどんどんはげしくなっていき、パンツの中で抑圧されている逸物は、堪え切れず亀頭をのぞかせていた。

「うわっ、おち〇ち〇が凄く膨れ上がってる・・・こんなになって、いたくないのかな・・・」
「大丈夫よ、緒紗。男の子はみんなこれくらいおおきくなるものよ」
「そうなの?じゃあ・・・」

 初めて見る男性の逸物。私はそれに目を奪われて思わず抑制してしまう。でも、姉に言われてさらに行為をおし進めていく。
 パンツを下ろして逸物を取り出すと、想像通りに勃起した逸物は、天高く聳えるように垂直に建っていた。私の手でここまで大きくしたことに、抑え切れない情欲が自制心を上回る。今度は直接逸物に手を添え、予備知識を呼び起こして上下にしごいた。

「――っ!――っ!」

 ビクビクって震える悠一くん。初めて反応した刺激に、きもちよさを伝えてくる。

「すごい・・。一気に熱くなって来た・・・悠一くん・・・」

 シコシコ・・・

 私の手の動きだけを感じるんじゃなくて、目を開けて私のあるがままの姿を見てほしい。
 わたし、悠一くんの前で裸になってるんだよ。
 悠一くんの逸物を扱きながら、乳首を勃起させてアソコもヌルヌルにさせてる変態なんだよ?
 そこまで言ったら私のことを変態だと思うかもしれないけど、悠一くんはそんなこと言わないよね・・?
 ・・・好きだよ、悠一くん。だから、目を開けて・・・

「ちゅ・・んちゅ・・・はぁ・・んっ、はぁん・・・」

 逸物を擦るだけじゃなく、悠一くんの顔や首筋までも舌を這わせる。そうすると、さらに気持ち良さそうに悠一くんの身体がビクンビクンと震えていた。
 気持ちよさ以上に興奮を覚えている悠一くんの身体は、我慢できずにいつ射精してもおかしくないところまで大きくなっていた。

「んっ、ちゅ・・んん・・・んふぅ・・」

 気持ち良いよ・・・悠一くんとキスしてると、私の身体も熱くなってきちゃう。
 ヌルヌルのアソコを自分で弄りながら、悠一くんと一緒にいきたいという思いで私は絶頂へと昇りつめる。
 そして――

「あっ・・あっ・・・いい・・・いきそう・・・そこ・・いい・・きもち、いい・・・ああぁっ!ふあぁぁぁ―――!!」

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 逸物が痺れを感じた瞬間、身体の奥から弾ける射精感が私の身体を白に染め上げる。

 ――びゅるびゅる!びゅるる!ドク、ドク・・・ぶびゅるるる!!

「あっ、あつぃ・・・悠一くんの・・せいえき・・・こんなにいっぱい出てる・・・はぁぁ~」

 私の身体に染まる精液を塗りたくり、悠一くんを感じる私。満たされる幸福感。満足感に溢れる私の表情が快感を生み出していた。
 たくさん浴びた精液の量が物語るように、悠一くんをイかせた私の功績を称えて意識がゆっくりと失われていった。
 私の中から悠一くんの意識が少しずつ離れていくのが感じられた。

「(今度は・・・ちゃんと悠一くんと、セックスをしたいなぁ・・・)」

 私が意識が失う瞬間、悠一くんとのその後を想像しながら、私は夢のような出来事から醒めていくのだった。



 
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 僕は緒紗さんの身体で絶頂を味わった。
 初めて女性の感覚を味わい、男性とは違う快楽に酔いしれていた。

「んふぅ。緒紗も成長したのね。それに、そうやってオナニーしていくんだ。」

 同性としてオナニーして絶頂する瞬間を見たいのだろうか。なんだか僕にとっては弱みを握られた様な気がして怖かった。

「あの・・お姉ちゃん・・・。そんなにじっと見ないでほしいんだけど・・・」
「あっ、ごめんね。・・・うふふ。でも、どうかしら?女性として初めてイった感想は?」
「なんだか、よくわからなかった・・。快感が溢れて爆発したと思ったら、目の前が真っ白になって弾けて・・・イッたっていう快感が込み上げてきて・・・・・・気持ちよかった・・・。お姉ちゃんだけじゃなくて、他の女性も、そうなのかな・・・?」

 柄紗さんに言われるままに感想を述べる。緒紗さんの身体は今も火照って疼き続けている。

 快感が持続して、今も敏感になっている肌が触ってほしいと言っているみたいだ。乳首だって勃起しているし、膨らんだ胸だって今は色っぽく艶やかに思えてくる。
 イった瞬間の女性が色っぽく見える様に、 今の僕もまた艶やかに映っているのだろうか・・・。

「・・・・・・で、アンタ本当に悠一くんよね?」

 柄紗さんが僕を見て不思議そうな表情をしていた。いったい何が起こったか分からない。まるで僕を見ているのか緒紗さんを見ているのか分からないと言うように疑っていた。

「えっ?そうだけど・・・?いったいどうしたの、お姉ちゃん」
「お姉ちゃんって、アンタね・・・」

 僕だと分かると柄紗さんは大きくため息をついた。なんだか僕は、僕の変化に気付いていないみたいだった。

「私はアンタのお姉ちゃん!?」
「ちがうけど・・・!えっ、私、お姉ちゃんのことお姉ちゃんなんて言ってた?」
「言ってるじゃないの!まぁ、そうなるのは仕方がないことだけどね」
「?」

 なんだか頭の中がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられて混乱しているみたいだ。柄紗さんが俺に諭すようにベッドに座り込んだ。

「アンタが緒紗でオナニーした時に、身体の快感を覚えてしまったまではいいわね」
「うん」
「つまりアンタは緒紗しか知らない快感を覚えたわけよ。そのせいでアンタは緒紗と深く繋がり、記憶や仕草も取り込んで無意識に緒紗に成りつつあるのよ」
「えっ、えっ!私が緒紗さんに・・・あっ!」
「ほらっ、その喋り方!アンタ、男のくせに私なんて使ってたの?!」

 慌てる僕の仕草もまた、女性っぽくなっていることに気付く。なんだか、僕が動けば動くほど、緒紗さんの仕草が入り込んでくるみたいだった。頭の中で思ったことを口にすると、無意識に女性言葉になってしまう僕がいた。なんとか自分を保とうと懸命に言葉を選んで発する。

「そういえば、オナニーして頭の中が真っ白になった時、僕以外の記憶が流れてきた気がした・・・。あれって、ひょっとして、緒紗さんの記憶ってことなのかな・・・ぅぅっ、自分のことを『僕』っていうのになんだか抵抗を覚えてきちゃった」

 この身体は緒紗さんのものだから、僕が勝手に使っているとしたら、それはやっぱり僕は緒紗さんの身体を借りているってことになる。だとしたら、このまま僕が緒紗さんの身体を使い続ければ、僕と言う存在は消滅して緒紗さんに成りきってしまうのではないか。
 そう思った瞬間、顔がみるみる青ざめていった。

「大変だ・・お姉ちゃん!お願いだから私を元に戻してよ!こんなことしている間に私が緒紗さんになっちゃったらどうするのよ!」

 泣いて縋りつく僕。緒紗さんの身体で必死に柄紗さんに詰め寄る僕を見て、柄紗さんは表情を穏やかにしていた。

「・・・私に泣いて縋りつく緒紗ちゃん、萌え~」

 久しぶりに姉の助けを呼ぶ緒紗を見て、柄紗さんは別の意味で表情を蕩けさせていた。柄紗さんからもらった『飲み薬』で僕は緒紗さんに憑依している。だから、柄紗さんにしか僕の幽体を元に戻すことは出来なかった。

「安心しなさい!ちゃんと私が責任をもってアンタを処理してあげるから」
「怖いですって!身体の方じゃないですよね!」
「Shut up!落ち着きなさい。その前にアンタにはしっかり私の約束を守ってもらわないと」
「約束?」

 柄紗さんと交わした約束を思い出そうとする。でも、僕の頭には緒紗さんの記憶と混合してしまって、深い思いだそうとすると緒紗さんの記憶まで取り込んでしまっていく。プライベートまで盗み見るのは気が引けるせいでなるべく控えたいのに、このままじゃ僕が緒紗さんになってしまうのを自ら進めてしまっていた。

「私と協力して、緒紗の真意を確かめてほしい」
「あっ・・・」

 思い出した。そうだ、僕は緒紗さんが柄紗さんに対する気持ちを伝える義務があったんだ。血のつながった姉妹として、姉に対する妹の評価をしっかり告げる責務がある。柄紗さんが緒紗さんの気持ちを汲んであげる為に、そして、なにも出来ずを助けてあげられない姉の気持ちを救うために。――僕はこの為に緒紗さんの記憶を取り込んだんだ。

「えっと・・・。緒紗さんが柄紗さんをどう思っているかっていうのはですね・・・」
「ちょい待ち!そんな管理職みたいに感情無く伝えないでよ!しっかり緒紗に成りきって私に告白しなさい!」
「・・・・・・・」

 このひと、本当に僕を緒紗さんの身体から出す気がないんじゃないのか・・・?
 本当にそう思った。
 緒紗さんの記憶を少しずつ引き出しながら、柄紗さんに対する素直な感想を述べる。
 僕の仕草は演じているのではなく、本当に緒紗さんに成りきってしまっている。柄紗さんもまた僕に対する表情が穏やかなものへと変わっていった。

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「ん・・・。僕はいったい・・・」

 あれからどうなったんだろう。緒紗さんの身体に沈んだはずの僕は、出ることも出来ない地底深くまで溺れたと思っていた。でも、今はこうして光の通った部屋で机に座って、確かに生きていた。
 まるで夢だったみたいな感覚。身体の芯まで冷えていた幽体体験は嘘で、今はこうして温かいセーターとワンピースに包まれている。
 そしてなにより、今まで感じたことのない違和感を耳のあたりに感じていたのだ。

「・・・・・・めがね?どうして僕が眼鏡なんかかけているんだ・・・?」

 眼鏡を外すと、僕の視界が再びぼやけてなにも見えなくなってしまった。その瞬間、僕の思考は蘇ってきた。
 眼鏡を外すと視界が見えない。それは、決して寝惚けているのではなく、本当に目が見えないのだ。今までそんなことなかった。急に目が見えなくなるなんてありえない。
 僕の身体とは思えない――。
 静かに眼鏡をかけ直し、視界が戻ったところで自分の身体を見渡した。黒のセーターもワンピースも、僕が着ていたものじゃない。そのサイズや肩幅の小ささ、そしてなにより、ワンピースなんて、女ものの衣服じゃないか!?
 男の僕が着るものじゃない――。

「えっ、はっ・・・この声、この部屋も・・・まさか・・・僕はまさか・・・!」

 慌てて机に置いてある鏡をとる。そして、夢にまで見た状況は、ある一人の人物の姿と明らかに類似していた。消えたその人物と僕の身に起こった変化はまるで、あり得ない一つの可能性を告知していた。鏡を見て僕はその事実を知った。その人物は僕の変わりに表情を取り繕っていた。

「・・・・・・緒紗さん・・・。やっぱり僕、緒紗さんになっちゃったんだ・・・」

 信じられないことに、今の僕は何処から見ても、篠ノ井緒紗になっていた。短くボリュームのある黒い髪の毛を束ねて、落ちついた感じを見せるその雰囲気。僕の身体と違って清潔さを見せながら、小動物のような顔で目をクリクリしながら首をかしげて、いまの状況に疑問を見せているようだった。

「なんでこんなことに・・・。じゃあ、緒紗さんはいったいどうなっちゃったんだろう?」

 僕の心配より緒紗さんの心配の方が大事だった。自分の身体を僕に奪われた緒紗さんが、一体どこに消えてしまったのかわからない。それより僕がなんで緒紗さんの身体に入っちゃっているのかも分からないけど、この状況になる前に起こった夢のような出来事に、緒紗さんの姉の柄紗さんが介入していることは間違いなかった。
 聞いてみるしかないと思った矢先、扉が開かれて外から柄紗さんが部屋の中にやってきた。

「いよう!緒紗、げんきぃ~?」

 なんのこともなく、僕の前にやってきた柄紗さんに、困惑しながら僕は訊ねた。

「柄紗さん!よかった。身体に戻ったんだね。・・・それはそうか、身体に戻んないとこうして会うことも出来ないんだもんね」
「あらっ、覚えているんだ。幽体だった時のこと」
「それはそうだよ、あんな体験忘れられる訳ないよ・・・・・・って、そうじゃないよ!なんで僕が緒紗さんの身体になってるのさ!緒紗さんは無事なの!僕の身体はいまどうなっちゃったの!?」

 危うくうまく丸め込まれるところだった。油断も隙もない柄紗さんだけど、柄紗さんも緒紗さんの正体が僕だと分かってちょっとだけほっとした様子をみせていた。

「安心しなさい。あなたの身体は私の部屋ですやすや眠っているわ。あなたが戻ればまたすぐに起きるでしょう」
「だったら、今すぐに僕は戻ります!こんなの緒紗さんに悪いですよ」

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 同じクラスメイトだからって身体を勝手に使うことを悪いと思ってしまう。「・・・優しい人ね」と、柄紗さんは僕を貶した。

「アンタ、もう少しやりたいことはないの?せっかく緒紗の身体になったのに、そのまま戻るなんて欲なさすぎよ。私が許さないわよ!だって、私がしてほしいことをアンタにはやってもらわないとね」
「僕にしてほしいこと・・・?」

 柄紗さんが言うことをしなければ、僕は自分の身体に戻ることも出来ない。僕を緒紗さんに憑依させたのは柄紗さんなんだから言うことを聞かなければ一生緒紗さんの身体に入ったままになってしまう可能性だってある。
 拒否権はなければ逃げることも出来ないんだ。僕は唾を飲んで柄紗さんが要求することに耳を傾けた。
 サディスティックに嗤う柄紗さんは、 僕に命令口調で言った。

「じゃあ、緒紗の身体でオナニーしなさい」

 
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「私、篠ノ井柄紗―しののいつかさ―には悩みがあります」

 それは至って普通の悩みです。
 妹の緒紗―おさ―のことなんです。私には二つ下の妹がいます。
 こないだ女子高生になったばかりだというのに、急に色気づいてきたかと思うと、私に対して反発するようになってきたんです。

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「お姉ちゃん!なに私のことジロジロ見てるのよ」
「ジロジロなんか見てないわよ」
「じぃぃっと見ないでよ。っていうか、私を見ないでよ」
「なによ、私があんたの顔見ちゃいけないっていうの!意味分かんない!」

 口を開けば喧嘩が始まる。一体私がなにをしたのか、その原因も分からない。

「それとお姉ちゃん。外でもあまり私に近づかないでね」
「どういうこと!」
「こんな金色に髪の毛染めてよく平気でいれるわね。私はお姉ちゃんみたいに不良になりたくないの!」
「見た目で判断してるってこと?アンタに嫌われる為に金色にした訳じゃない!私は自分でしたいから金色に染めたのよ!」
「ふん。金色に染めて、まわりがどういう印象を持つかなんて分かるでしょう?今時、男性だって金髪よりも黒髪のほうが受けが良いのに金色に変えてバカみたい。私にそういう不良の印象を持たせたくないの!」
「くぅぅ!分かったわよ!近づかなければいいんでしょう!近づかなければ!」

 妹が私にどういう印象を持つのか分かる。金色に巨乳なんて馬鹿と言いたいんでしょう!でもね、髪の毛は自分でに会うと思ってやったけど、私だって好きで胸が大きくなったわけじゃない。
 胸をコンプレックスにしているわけじゃないけれど、緒紗にはっきり言われると傷つく。そしてなにより、あの態度が気に入らない!
 扉を勢いよく締めて、部屋に閉じこもる。そしてしばらく一人で泣いた。

「昔はあんなんじゃなかったのに・・・」

 思い出すのは緒紗との思い出。遊園地で一緒に遊んだことや、姉を頼りに勉強を学びに来てくれたこともあった。それが今では私なんかを頼らずに、自分の名誉や尊厳のために私を邪魔者扱い。
 私は一体なんなの?緒紗になにか悪いいことしたの?

「切ないわ・・・実の妹にあんなこと言われて・・・・・・」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「あぁ。なるほど。言いたいことは分かりました・・・」

 そして僕、武藤悠一―むとうゆういち―は柄紗の話を部屋の中で聞いているのでした。
 縄で縛られさらし巻きにされた状態で。当然、自分でなった訳じゃない。
 学校の帰り道、僕は縄をまわしながら近寄ってくる柄紗さんに追いかけまわされ、縄で縛られて誘拐される様に柄紗さんの家まで連れてこられたのです。
 そこから話を聞かされ、クラスメイトの緒紗さんの実情を知った。学校では人当たりも良くてよく笑う子だからみんなに好かれていたんだけどな・・・。

「家では思っていたような子じゃないんですね」
「そうなのよ!・・・いえ、違うかも。今までは学校と何も変わらないようなもの静かな子だったのよ。それが、急に最近態度を家の中だけ変えたのかも・・・」
「『家の外』じゃなくてですか?それっておかしくないですか?」

 普段、外出する時は気を張っているせいもあり、人前で態度を変える人がいるとは聞く。でも家の中、リラックスするべき場所で、態度を変えると言うのはあまり聞かない話だ。家の中の自分こそが本当の自分だから、何にでも家の外の自分が別人だと人は錯覚する。でも、柄紗さんは家の中の緒紗さんが別人であると断言する。
 実に怪しい話であった。

「男ね。あの子に急に男が出来たに違いないわ。うん、そうに違いない。私に会わせたくないって意味で、私に近寄らせない様にしているはず。私に彼氏が会ってしまったら、この美しさと美貌で瞬殺されちゃうはずだもの。じゃなきゃ辻褄が合わないわ。ブツブツ・・・」

 足組みをして探偵のように柄紗さんだけど、僕には彼女の思い違いじゃないことを願いたい。どっちが正しいとは今のところは言えない。柄紗さんの話だけ鵜呑みにするわけにはいかないし、同じクラスメイトってだけだけど、緒紗さんの話だって聞いてみないと平等じゃないしね。
 とはいえ、いつも一人で静かにしている僕が、緒紗さんに話しかけて不審がられないかが心配だけど・・・。

「・・・・・・あの・・・僕は一体いつまでこんな状態にされていなくちゃ駄目なんですか?」

 放置っぱなしの僕のさらし巻きをそろそろ紐解いてほしい。いつまでも監禁されていることにビクビク状態である。
 姉が妹を気遣う理由は分かるけど、僕を巻きこむことに横暴や乱暴を加えてもいいっていう理由には当たらない。・・・でも、そんなことがあっても僕は彼女を警察に通報できない。チキンであることは認めざるを得ない。

「ああ、ごめんね。でもその前に一つ約束して。私と協力して、緒紗の真意を確かめてほしいの」

 姉に態度を変えたこと。その真実を知りたいと言う柄紗さん。
 僕はそれこそ思い違いだと思っているけど、柄紗さんを安心させるため(それよりも僕が今すぐにも安心したいため)にも、今は大きく頷くことにした。 

「そう。ありがとね」

 「ごめんね」と言いながら僕を解放してくれた柄紗さん。悪い人じゃないけれど、妹のことになると少しだけ目の色を変えてしまう怖いところもある、優しいお姉さんだ。

「じゃ、お願いね・・・・・・・」 

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 そっと――
 僕の唇に自分の唇を重ねる柄紗さん。僕は目を見開いて驚いてしまった。妹のために、自分の唇を投げ捨ててまで、初めてあった僕に唇を重ねてきたことのだ。
 僕を信頼するように、柔らかな唇が触れ合い、そして僕をなだめる様にそっと優しく肩に手を置いた。
 お姉さんなんていない僕は、これが姉の妹を思う気持ちなのかと驚いた。
 彼女のなにがそうさせたのかわからない。でも、僕はお姉さんの捨てたプライドを受け継ぐように、その想いを胸に刻むようにその温もりをいつまでも記憶の中に留めておくことにした・・・。


 
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