純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『時間停止』 > 時計『倍杯返しのコレクター』

 数日後――

 学校に来なくなった山田三四の友達、文月佳乃―ふみづきかの―が山田家までやってきた。

「みよちゃ~ん!」

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  朝から大声で三四を呼ぶ佳乃の声が響き渡る。一二三はそれを聞き取り、一目散に玄関ドアを開けて佳乃の元へとやってきた。

「あっ、おはようございます」

 一二三に対して態度を変えないのは佳乃くらいである。以前、三四が一二三のことを、

『近寄らない方がいいわよ、あいつ、キモヲタ だから』

 と非難したことがあったが、佳乃は、

『えー。三四のお兄さん格好良いね』 
『ブヒイィィ!!』

 なんて言ってくれたことがあるのを思い出した。
 佳乃がやってきたのは当然だ。山田家へ連絡を入れても、既に一二三は母親も気分のコレクションにしていたのだ。
 妹だけじゃなく、母親まで時を停止しているのだから、山田家で動いているのは一二三だけなのだ。一二三が電話に出なければ完全に外部が連絡を取る術がなかったのだ。

「やあ、佳乃ちゃん。おはようでござる」
「お兄さん。 三四ちゃんはいったいどうかしたんですか?」

 佳乃がなんの疑惑もない視線で一二三を見つめる。愛くるしい、澄んだ眼差しで一二三を見てくるので、一二三は我慢できなくなっていた。

「それはね、佳乃ちゃん・・・ストップ!!」

 佳乃に対して、『時計』を使用する。

「なんです――――」

  ピタリと、佳乃の動きが一瞬で停止する。三四の時と全く同じである。玄関前で停止している佳乃。他の住民たちは何不自由なく動いている。 佳乃だけが止まったのだ。

「ぐふふ、佳乃ちゃん。きみもまたコレクションにしてあげるからね」

 佳乃を連れて部屋へと連れ込む。一人一二三の味方でいてくれた佳乃もまた、自分のコレクションに仕立てあげてしまったのだった。



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 俺の名前は山田一二三―やまだひふみ―。半年前にキモヲタと言われて苛められて不登校になったのでござる。
 そんなある日、ネットで時を止める『時計』を手に入れたのである。

「ふむふむ。本当にこれが効力あるのか、早速試してみるでござるっ!あーとと、とは言うものの、誰で試せばいいか・・・」

 考えている時、俺の部屋をけたたましく叩く音がした。

「お兄ちゃん!まだくたばってないの!早く出てきてご飯食べなさいよ!」
「むぅ!!そ、その声は・・・三四―みよ―!」 
 
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 バタンと扉を開けて入ってきたのは、妹の三四。学校でもばれたことが妹にばれていない訳もなく、一年以上前から兄に対してこんな態度でござる。

「ありがとうございます、ありがとうございます。こんな油、大蒜増し増しのラーメンを用意してもらって」
「お兄ちゃんには豚飯が一番似合ってるわ!ブーブー言いながら大量に添えられたもやしを食い続けてればいいんだわ!」
「〇郎系ラーメンは何度でも食べたくなる味なんだ!!!」

 そもそもラーメンを食べるのに栄養バランスなんか考えちゃダメだ。汁の一滴まで飲み込んで感謝の意を示すのが客の醍醐味だ。うーん、美味い。〇郎系ラーメンを『GOLD EXPERIENCE』聞きながら食べるのが最高の贅沢だ。

「ブヒィ。御馳走さまでした」
「うっぷ。すごい大蒜くさい。絶対近くに来ないで。っていうかまた引き籠ってて。正月も絶対出てこないでよ!」
「兄に対してなんでござるかその口のきき方はあああああ!!!」
「くさいいいぃぃ!!!」
 
 すぐにでも部屋から出ていこうとする三四。お椀を片付ける三四を見ながら、

「ぶためし――あっ、そうだ忘れてた」

 思い出したように、『時計』を手に取る。せっかく目の前に絶好の標的がいる。
 第一実験者として、妹の三四の『時間』を止めて見よう。

「三四!!」
「なにぃ!」
「ストップぅぅ!!!」
「な――っ!!?」 

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 俺がボタンを押した瞬間、いったい何が起こったのか分からなかった。未だに曲は鳴り続けているし、これといった変化はなにも起こっていない。

「ん・・?あれ?おいかしいな?何か変わったかな?んん~?」

 あたりが静かになると思ったら無音になることはなかった。家の外では車が走っているし、近所の犬の鳴き声まで聞こえてくる。
 外の世界はこれといった変化が起きなかったのだ。 

「世界を支配する能力にはならないでござるか・・・三四・・?」

 俺はふと思い出したように三四を見る。時を止める『時計』なので、世界全体の時が止まると思ったらそうじゃない。でも、俺は三四に強く時が止まるように宣言していた。第一実験者として格好の標的として、俺の目の前に居る三四を狙って『時計』を押した。

 ――三四は止まっていた。何処に目を向けるわけでもなく、俺がいた場所に視線を向けたまま、何時までも同じ態勢で固まっていた。

「ちがう・・止まってるんだ。『時』が。三四の時間だけが止まってるんだ」

 俺が恐る恐る三四に近づく。そして、三四の身体にタッチする。
 それだけで普段の三四なら拒絶反応を示す様にバシッと手を払いのけるだろう。

 サワサワ――

 触らしてもらえた。服の上から感じる三四の体温。身体のラインを撫でるように、頭からつま先までスッと指を走らせてみる。

「・・・・・・できちゃった・・・」
 
 三四の全身を触っちゃった。身体のラインをなぞって指が滑り下りてきちゃった。 嫌な顔せず、驚いた表情のまま動かなくなってしまった。

「うひょおおおぅぅ!!!すごいでござる!!完全に三四が止まったでござる~!!」

 一人興奮する俺。今まで触らせてくれなかった三四の身体をまんべんなく触ることにする。

「固まったフリじゃないでござるな?固まったフリじゃないでござるな?

 頬を引っ張りながらこれが三四の冗談じゃないことを確かめる。・・・柔らかいけど全く動かない三四。まるで、生きた人形そのものだ。
 ゴクリと喉を鳴らす。お腹一杯で食欲を満たされたなら、次は性欲を満たして貰いたい。
 そんなことが脳裏によぎる。

「三四!お兄ちゃんの食べた食器片付けなさい。まだ一二三ラーメン食べ終わってないの?」

 一階から母親の呼ぶ声が聞こえてドキッとした。 そうだ。三四以外は全員何事もなく『動いているのだ』。
 俺は三四の変わりに部屋を出て食器を片づける。

「あらっ、一二三じゃない。部屋を出てくるなんて珍しいわね」
「んんぅ、珍しいことがそのうち当たり前になるようにするよ!」
「まぁ!前向きな発言におかあさん嬉しいわ」

 久しぶりと母上と会話する。そして俺はこれ以上邪魔が入らないようにすべてのことを済ませて三四と供に三四の部屋へと移動した。



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