純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『スライム・寄生』 > 柔軟剤『ブラックレイン』

※今作は排尿描写がございます。閲覧は自己責任でお願いします。


 あれから――

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 私たちは放課後、五人で商店街を探索します。

「今日はどこいこっか?」
「スイーツ!」
「とりあえず、百均か、ホームセンターで時間過ごすのはどう?」
「へえ、初女そんなところ行くんだ」
「たまにはね」
「スイーツ」
「あそこなら 家電、インテリア、生活雑貨、キッチン用品、パーティグッズ、便利グッズまでそろってるし、いい時間潰しになると思うわ」
「そんなにいっぱいあるんだ。歩くの大変そう」
「すいーつ・・・」 
「見ていれば時間なんてあっという間に過ぎていくでしょう?」
「見るだけじゃなくて、せっかくなら買って遊びましょうよ!そう言うのもあるんでしょう?」
「もちろん! 」
「じゃあ、決定!」
「スイーツは!?」
「その後で食べにいけば良いんでしょう?分かってるわよ」
「よかったぁ!無視されているのかと思って切なくなっていたよ」
「大丈夫よ。私だってスイーツ食べたいもん」
「(だから、無視してたのに・・・)」
「(だから無視してたのに・・・)」
「(痩せる努力しないのかしら・・・)」

 私たちはみんなで楽しく時間を過ごしていた。
 本当に楽しい時間だ。生きてきた中で今までで一番そう思う。

 阿吽の呼吸?シンクロ?

 あまり多く語らなくたって皆が繋がっている。

 アイコンタクト?手話?会話?

 そんなものなくたって大丈夫。だって、私たちは”仲間”なんだ。

「うぐぅ――!」
「あっ」
「えっ?」 
「ちょっと、孝子でしょう!」
「正解。ちょっと悪戯したくなったの」

 買い物を終え、スイーツを食べている時に買い物の商品の電源を入れたのだ。途端に皆が私と同じように股間を抑えていた。
 顔を真っ赤にしている皆。誰が一番この振動に耐えられるのか我慢くらべしてるみたい。

「ねえ、この振動誰かに聞かれてない?」
「さあ・・・。小さい音ですから、分からないと思うけど・・・」 
「ひゃぅっ!」
「シー!!店員さんやまわりの男子に聞かれちゃうよ?」 
「ごめん・・・」
「ぅぅ・・・でも、私もちょっとヤバいかも・・。孝子。お願いだから、そろそろやめてよ・・」
「えー。どうしようかなぁ?」

 皆の我慢な表情を見ながら、どこか私を非難している視線が痛い。
 言われたように電源のスイッチを消して、私は皆に小さく頭を下げた。

「もぅ、孝子ったらぁ」
「シーツ濡らしちゃった。シミになったらどうしよう・・・」
「良いじゃない。誰も気付かないって」
「そういう問題じゃないのに~」

 蕗子が顔を隠している。机の下は目も開けられない状況なのだろう。 

「大丈夫だって。もうすぐきっと・・・雨が降るから」

 店内から見る夜の商店街。雲は広がり、今にも雨が降ってきそうだった。
 寒いこの季節。雪ではなく、雨が降る。 
 黒い、暗い、雨が降る・・・。


 
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「孝子ぉ!みんなが・・・みんながおかしくなっちゃったよぉ!」
「分かってる!今は警察に連絡して、なにが起こったのか調べてもらうの」

 走りながら私は急いで玄関口までひた走る。
 一人じゃなく、二人で。香奈を連れて急いで逃げることがまず先決。その後でみんなが元に戻ることを考えれば良い。
 今は一人でも多く、『スライム』に取り込まれていない人を助けたい。でも、外見じゃ分からない『スライム』の支配下は、私たちを不審感と疑惑を募らせる。

「(だから、ごめん!私はもう香奈しか救えない・・・)」

 この学園の生徒たちすべてを救うことは出来ない。先生だって信じちゃ駄目。
 走る私たちに気付き、金子恵先生が声をかける。

「あらっ、前嶋さん。ちょうど良いところにいたわ。先生、前嶋さんに話があるんだけど――」
「ごめんなさい!先生!」
「えっ?まえじまさん~!?」

 私は目をつぶりながら恵先生の脇を通り抜けていった。

「ちょっと、いいの!?先生なら、相談に乗ってくれるはずだよ?」
「ダメよ!先生じゃなくて、警察にして!」
「孝子・・・」

 香奈はまだすべてを知っているわけじゃない。同じクラスの友達の、蕗子と未代が『取り込まれただけ』だと思っている。でも、事態はそう軽いものじゃない。もう既に、この学校すべてが取り込まれている可能性だってある!

「孝子。必死すぎない!誰か相談できる人がいないの?」
「い・・ないよ・・・いるわけないよ!」
「そんなことないよ!警察に行く前に、誰かに話を聞いてみようよ。私、あまり警察って好きじゃないし」
「好きとか嫌いじゃなくて、もうこれは事件なのよ!蕗子も未代ももう、戻るかどうか分からないじゃない!」
「そ、そうだけど・・・・・・」
「お願いだから、香奈。今は私だけを信じて。もうすぐ、悪夢は終わるから」

 玄関口まであと少し、 後ろから追ってきている足音ももう届かない。学校を飛び出せば、警察所までは近い。

「でも、警察は信じられるの?」 
「・・・えっ・・・・・・?」

 香奈の疑問が私の頭を一瞬よぎる。私は勝手に、『スライム』の恐怖はこの学園内だけだと思っていた。
 でも、もし学園の外にも拡大しているとすれば――私は、この世界全てを疑わなくちゃいけなくなる・・・。
 途方もない世界の人口すべてを犠牲にして、一人で戦い抜く自信は――――ない。

「あっ―――!」
「――――っ!」 

 そんな私の前に、最悪のタイミングで現れた初女。
 なんで、彼女が学園に戻ってきたの?
 なんで、彼女が学園にいるの?

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「遅いよ、香奈。みんな遅すぎるよ。だから、私も学校に戻ってきちゃった」
「初女ぇ~!!」
「あっ――!」

 私の手を解き、香奈が初女に走っていく。私がしっかり握っていなくちゃいけなかった香奈の手を、緩めてしまったのが原因だ。

「行っちゃ駄目ぇ!!」

 ――香奈の身体が揺れ、廊下に倒れこむ。初女の手に持つ、スタンガン。服の上からでも強力な電流を流された香奈は、あっという間に失神してしまったのだ。

「・・・どうして最後まで抵抗するの?やっと私、あなた達の”仲間”になれたと思ったのに・・・」

 香奈には見せない悪魔のような表情。私の友達にスタンガンを当てる初女を、友達なんて言えるはずがない。

「あなたは友達に入れてあげない。あなたのやろうとしていることは、友達じゃなくて増殖じゃない!」
「いいえ。これはすべてこの子の思っていることよ?やっぱり一人は淋しかったんでしょうね。この子だってあなた達の仲間に入りたかったと言うのは、紛れもない事実なのよ?」

 初女の想い・・・?初女は私たちのグループを見ながら、いったい何を思って学園生活を送っていたのだろう?

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 一人でいることが楽しいはずがない。私たち、きっとどちらかが声をかけてあげられれば、仲良く友達でいられたはずなのに・・・。こんなに悲しいことはないね・・・。

「だから、俺が背中を押してやったんだよ!初女の想いに応えるために、こうして声をかけて”仲間”としてみんな受け入れてくれた!・・・なのに、何故あなたは私を拒むのよ!!孝子!!!」

 初女の想いを爆発し、秀作が怒り狂う。記憶が混同し、自身を初女として思い込んでいる彼にとって、もう、初女という少女はこの世にいないことを理解した。

「・・ごめんね、初女・・・。あなたの辛さを分かってあげられなくてごめんね・・・でも、私はもう初女と友達になれないよ。だって、あなたは初女じゃないじゃない!!初女に取り憑き、初女の人生を奪ったあなたとなんか、友達どころか知人だって吐き気がする!――私はあなたに屈しない!!絶対に最後まで戦い続ける!!」

 秀作という女子高生好きの男性がこの学園すべてを飲み込もうとしているのなら、私がその事実を警察に知らせる!
 『死んだ人間は二度と生き返らない』――その事実を突き付ければ、この悪夢は終わるんだ!
 私たちが、平穏な世界に戻るために。
 初女と一緒にやり直すために―― 。

「かっこいい・・・格好良いよ、孝子。夢を諦めないって本当に美しいよ。・・・でも、現実を知ろうよ。――夢は叶わないって!!!」
「―――――――はっっっ!!」

 突如、私の背後から強力な催涙スプレーを噴きつけられた。視界を奪われ、涙が止まらない。

「いやぁ!ダレか・・・誰かぁ!!」
「クスクス・・・視界を奪われて抵抗なんかしちゃダメだよ」
「そんな動きじゃ、私だって避けられるよ」
「足下がお留守よ」
「あっ―――!」

 廊下に転ばされる私。足を硬いコンクリートに打ち、抵抗を弱まり、涙が止まらない。その涙は、催涙スプレーよりもさらに強い感情で零れ落ちていた。縄で手足を縛られ、身動きが取れなくなると、私を担いで歩きだしていた。

「ぅぅぅっ・・・ぃゃぁ・・・」
「戻りましょうか、孝子 。そこでみんな”仲間”にしてあげるわ」

 
 
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 香奈たちが孝子より一足先に商店街へやってきた。ファミレスで軽く食事しながら談笑するつもりが、突然香奈の後ろから未代の抑揚のない悲鳴があがった。

「あぁ。ごっめん!忘れ物しちゃった~」
「ええっ!ここまで来ないと忘れ物に気付かないの!?」

 学校から20分かけてきたというのに、また引き返して忘れ物にとりに行くつもりなのだろうか、香奈にとっては今から学校へ戻るより、忘れ物は明日で良いじゃんという意志の方が強い。

「でも、明日テストじゃない。少しでもやっておかないと赤点だよ?」
「付け焼刃の知識じゃ点数なんて変わんないよ」

 そう言いながら香奈より未代の方が頭がいい。勉強しなくても生きていけるというのに、何をそんな必死に勉強するのか香奈にはよく分からない。

      
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「ごめんね。できれば孝子たちと一緒に来るよ」
「・・・そう言ってる間にはやく取りに行けばいいじゃん!未代なんか知らない!」
「怒らないで。あとでパフェ奢ってあげるから」
「一番高いの頼んで待ってるよ!」

 香奈と初女を置いて来た道を引き返していく。初女と二人きりになることがなかった香奈はどう接していいのか分からず、とりあえずゲームセンターに寄って時間稼ぎをしていた。

「つまんないの・・・」

 香奈は初女を置いて一人ゲームに没頭し、初女はゲームをせず、ただゲームの機種を見て回るだけだった。まるで初めてゲームセンターに入ったように興味深そうにしている初女に、ゲームを共同でやっても100円を無駄にするだけである。

「(早く誰か来ないかな・・・)」

 香奈もまたゲームが大してうまくない。すぐに100円を消費してしまい、再び100円を投下するとしたら、皆が来る前にあといくら使うのか分からない。
 時間も進んでいなく、苛立ちにゲームの面白さが半減してしまう。それだったら初女を置いて未代と一緒に学校に戻った方がまだ会話ができた気がした。

「えっ!どこ行くの!?」

 一人ゲームセンターを出て行こうとする香奈に初女が慌ててやってくる。一人きりにするのは忍びないと思いながら、香奈もまた初女とは馬が合わなかった。

「先に一人、ファミレスに行ってて。私がみんなを連れてくるから!」
「ちょっとっ!どうして私を置いていくのよ!なんでぇ!?」

 初女を見捨てて香奈はひた走る。
 喧嘩をしても、口論をしても、傷を合わせてもいい。それが絆を強くする。
 意見を合わせるだけで自分の意志を持たない初女より、孝子や未代と一緒にいたいと思うのが香奈の心情だった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 学校に戻った香奈。道中未代たちとすれ違わなかったので今もまだ学校にいるはずだと確信していた香奈は、教室に顔をだす。

「いたっ。未代―――えっ・・・?」

 ドア窓から覗き込み、未代を見つけた香奈はドアに手を掛けて開けようとした。しかし、夕陽の当たる教室で、未代の影になっていたもう一人の人物を見て、香奈はその手を止めてしまった。
 蕗子だ。未代の前で裸になって、自らの女体を曝け出していた。香奈よりも女性らしいラインをしている蕗子が夕日を浴びて輝いている。香奈は驚き口から声を出すこともできず、その窓から中を覗きこんでいた。

「なに・・・してるの・・・?」

 未代の前で蕗子は目を細めて顔を近づけている。そして蕗子は未代に口づけをしているように見えた。

「ン・・チュ・・・ちゅむっ・・・ふぅ・・・ン・・・んんっ・・れろっ・・ちゅくっ・・・」

 蕗子に口づけされるたび、未代の身体が震えていく。女性同士のキスを見たこともなかった香奈は衝撃を覚え、蕗子と未代が何をしているのか未だによく分かっていなかった。
 勉強すれば二人がなにしてるのか分かるのかと、香奈はこれほどべんきょぷを疎かにしたことを後悔したことはない。しかし、蕗子のキスで未代が何故身体を身震いさせているのかわからなかった。キスで親睦を深めるなら、なにか未代は言ってもいい。でも、未代は無言で、気を失っているように力を抜いており、まるで、蕗子の一方的なキスを延々と責められているようにも見えた。それよりも香奈が気になったのは、未代から唇を放した一瞬に、蕗子の口から出てきた変な固体液だった。

「なに、あれ―――?」

 蕗子から吐き出された『スライム』状の液体。それが未代の唇から零れ堕ちる。だが、それはまるで意志があるかのように重力に逆らい未代の唇の中へ這いあがって喉の奥へと流れていった。
 少しずつ、少しずつ蕗子が未代の身体に『スライム』を流し込む。その度に未代がビクン、ビクンと身を強張らせていた。
 
      
未代に変化が

「ヒィッッ―――――!!」

 香奈が後ずさりする。未代が蕗子にナニカをされていた。ナニカが香奈には分からない恐怖に思わず悲鳴をあげてしまった。

 ――ガタンッ!!

 廊下にある生徒用のロッカーにぶつかってしまう。普段何気なく設置されているロッカーなど気にも留めないため、思いきりぶつかった香奈は金属質の大きな音を立ててしまった。
 視線を落としてロッカーの存在に気付いた香奈が再び顔をあげる。すると、香奈の目の前には先程までキスをしていた蕗子が立っていた。
 香奈が声をあげる前に教室の中へと引きづり込み、教室のドアを勢いよく締めてしまった。


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「いや・・・いやあ!!」

 蕗子が私を押し倒す。とても乱暴で、とても横暴に私の制服を脱がしにかかる。

「一緒になろうよ、孝子。みんな一緒だから」
「いやよ!!初女も、梓颯先輩も、蕗子も、全部あなたのせいでおかしくなったのよ!」
「ええ、そうよ。そして、あなたもそれを一度受け入れた」
「――っ!?」

 梓颯先輩とヤったのも、先輩に無理やり押し倒されたから。
 先輩が望んでいると、そう思ったから。

「私が悪いんじゃない!全部あなたが悪いのよ!」
「・・・強情だねぇ。ニヒヒ、その方が虐め甲斐があるけどね」

 蕗子が私に唇を重ねようとしてくる。蕗子の口から出てきた『スライム』を思い出すと、私はとっさにキスを拒絶した。

「あれれ?どうしてキスを拒むのかな?先輩とはレズしたのに?」
「やりたくてしたわけじゃない!」
「親友同士なら、キスぐらいしてもおかしくないんじゃない?」
「誰がっ!!あなたなんか親友じゃない!」
「・・・ぐすっ・・・ひどい、孝子」
「えっ・・あっ、・・・蕗子なの?」
「そうだよ。私、孝子のこと、親友だと思っていたのに・・・」
「そうじゃなくて、ち、ちがくて・・・あっ、あああっ―――!!!」

 うわああああああああああぁぁぁ――――――!!!

 心の底から出る不安と恐怖。
 信頼や絆を全て溶かして不幸のどん底へ叩き落とされる。
 何を信じていいの?何を疑えばいいの?
 相手のことを傷つければいいの?自分のことを守ればいいの?
 本当に、本当に大事にしなければいけないモノは――――

「孝子・・・」

 目を伏せて絶望していた私の手をどける。そこに蕗子の顔が覗きこむ。

「蕗子・・・」
「もう安心して。一人にしないから」

 ・・・その言葉を信じていいの?一人で戦うことをやめてもいいの?

「・・・みんなが待っているから」

 蕗子からの愛が欲しい。すべてが欲しい。
 蕗子の言葉がとても気持ちよくて、考えることをやめてしまってもいいと思えてくる。

「ひぅっ!」

 蕗子の手が私のスカートの中へ忍びこむ。そして、私の大事なところを優しくなぞり上げてくるのだ。
 足を閉じても蕗子の手が私の秘部を弄ってる。その手付きのイヤらしさに、私は顔を真っ赤にしてしまう。

「やだ、だめ・・・だめだって・・・」
「やめていいの?ほんとうに・・・?」
「っ!」

 息を飲んで蕗子を見る。
 私の気持ちを全て分かっているように、ニコッと笑って私を受け入れている。

「私、思うんだ。性行為は親友同士が一番キモチイイと思うんだ。同性だから秘部の弄り方をよくわかってるし、強弱の付け方だってよくしってるよ?」
「ひぃうぅぅっ!」

 ショーツの上からクリ〇リスをなぞられて、ゾクゾクと身体が震える。私よりも蕗子の方が上手、それとも、誰かにしてもらうから気持ちよく思えるのかな・・・?

「・・・ね?もっと気持ち良くなりたいでしょう?」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「私がシテあげるよ。孝子の親友の私が」
「・・・ゴクッ。・・・はぁ・・・蕗子が・・・」

 蕗子と親友よりもさらに進んだ関係になれる。
 今の私にとって、誰よりも失ったら寂しいのは蕗子だから。
 安心できる存在は、彼女だけ。
 そうか。だから私は――――あの時、泣いたんだ。

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 初女のオナニーを目撃して、梓颯先輩と身体を交えてしまった私は、少しずつ学校での環境が変わり始めていることに気が付き始めていた。
 初女が私たちの輪の中に混じり一週間経った。私以外のみんなと一緒に恋の話に華を咲かせていた。初女は男子に一目置かれる位人気があった。いつも一人でいたのは、男子が見てくる視線が怖かったことと、女子が男子の視線を一人占めする嫉妬心からだった。

「一回違うグループに仲間に入れてって話したことあるよ。でも、『男子と仲良くやればいいじゃん』って突っ返されたことがあるの。・・・それ以来、話をすることが怖かったの」

 初女は常に一人でいることの寂しさと怖さを抱えて学校を過ごしていた。それを聞いた香奈が「ヒドイ!」と席を立ちあがり、初女に賛同を促していた。

「せっかく友達になろうって話しかけたの、そんなの辛すぎるよ!私たちがずっと一緒にいてあげる。守ってあげるよ!」
「ありがとう」

 初女が涙ぐみながら香奈を抱きしめた。すっかり輪の中に溶け込んでいる初女。

「でも、せっかく男子から人気あるんだから、一人や二人と付き合いたいって思わないの?」

 未代が初女の容姿を褒めなが内心を聞いて見た。初女はなんていうこともなく――、

「――だって、男子より女子の方が興味あるから」

 異性よりも同性と一緒にいる方が楽しいってことなのだろうか・・・。私には、含み笑いを浮かべながら告げる初女の声に、別の意味合いがあるのではないかと勘ぐってしまっていた。
 最初に見た初女のオナニーは、まるでただ学校でオナニーをしたいという性癖より、女性の身体を確かめながら触っていたように見えたから。

「前嶋さん」
「えっ!?」

 急に私に話を振られてびくっとする。

「前嶋さんだって、男子と女子ならどっちに興味ある?」
「興味って?」
「”仲間”にしたいならどっちかなって?」

 仲間・・・?友達ではなく”仲間”と初女は言った。
 私には友達と仲間の違いも良く分からないけど、男子と女子と今どっちと多くの時間を過ごしたいか考えた時、色々と面倒になるのは嫌なので、

「私は・・・うん、女の子かな」

 ――女性―どうせい―との時間を優先した。

「だよね!」

 初女は笑みで頷く。

「男子なんて、ツマラナイもんだしね」

 ばっさりと初女は男性―いせい―を吐き捨てる。初女が何故男性を軽々切り捨てるのか分からないけど、私は初女ほど男性に絶望もしていない。だから――

「あなたと一緒にだけはしないでね」
「・・・・・・」

 ――初女が苦々しく私を睨みつけていた。私から拒絶されたことにショックを受けたのか、まるで告白する前に振られたみたいに、先程見せた涙を再び滲ませていた。
 でも、そんな初女の震えた唇から、恨めしい声が聞こえてきた。

「あなたが女子に興味あるのは重々知ってたし。だって、先輩と友達だものね。・・・性的な意味で」

 私は初女から発せられた言葉に勢いよく机をたたいた。

「なんでそれを――!!」

 初女が知るはずのない、梓颯先輩との行為をどうして知ってるの!?
 その時あなたはいなかった!
 初女は梓颯先輩と繋がりが一切ないのに、出てくるはずのない先輩との秘密をどうして知っているの!?

「孝子?どうしたの!?」

 顔を真っ赤にしている私と、表情を隠した初女が唇だけつり上がっているのを見て、蕗子が私を心配してくれる。でも、私は怒りに震えてその場を飛び出してしまった。
 誰にも言えるはずのない秘密を暴露されて黙っていることなんてできない。今、あの場に居続けたら、私は初女と喧嘩になっていたと思う。
 それが出来ない私は、みんなと放れて一人でトイレで怒りが静まるまで唸るしかない。

「・・・<ゃlぃ・・。くやしい・・・どうしてこんなにことになるの・・・」

 初女に全て見透かされている。まるで私の一挙手一投足を監視されているみたいだ。
 私の自由が初女に全て見られている。初女と一緒にいたら、私は気を休めることができなくなる。
 私が悪いんじゃない。全部、ぜんぶ初女が悪いんだ!
 だから、みんなに言おう。初女と仲良くしないでって。
 初女と仲良くできない。私のために、初女を切り捨てて。初女が男子を全員切り捨てたことがいずれ自分に帰ってくることを教えてあげよう。
 お願い、みんな・・・。

 そう思ったら、教室にみんなを残してしまったことを激しく後悔したのだった。

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 翌日――。
 私が皆の元へいくら待っても来なかったことで、香奈たちは御冠だった。

「どうしてこないのよ!」
「待ってたのに~」
「ご、ごめんね。すぐ行くつもりだったんだけど・・・」
「なにかあったの?」

 蕗子が優しく聞いてくるけど――

 言えるはずがない。誰にも言っちゃいけない――。
 初女にちらりと視線を向けるが、彼女は普段と何も変わらず一人で次の授業の準備をしていた。
 決して同じグループの仲間ではないにしても、同性で同じクラスメイトなら、誰にも言えない秘密があると私は思う。
 だから――

「なにもないよ・・・ただ、約束忘れて帰っちゃっただけなの・・・」

 ――私は一人秘密を守ることにした。
 仲間にとってそれがどんなに面白くないか、私はその時に分からなかった。

「ふうん。そうなんだ。じゃあ、いいよ。今回はそれで流してあげる」

 同じ仲間だから御咎めなしで許してくれる。私は頭を下げてありがとうと告げた。

「じゃあ、今日はどこに行く!」

 明るい蕗子の声が昨日と同じように響き渡る。皆もまた普段通り、放課後の予定を考えていた。

「じゃあ、今日はファミレスに決定っ!」

 放課後に甘いものを食べながら雑談する。そんな日常的なことが待ち遠しい。
 はやく放課後になってほしいと皆が今日の目標を持ち授業に向かう。
 そのつもりだった――。

「ねえ」

 私は振り返る。その声の人物に私は一瞬で寒気を覚えた。
 初女だった。普段と同じ姿、ツインテールにまとめた髪の毛を揺らしながら、初めて私たちのグループに話しかけてきたのだ。

「私も一緒に行っていい?」

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「えっ・・・?」

 一体何故このタイミングで初女が私に干渉してくるのだろう。
 昨日――私が彼女の破廉恥な姿を目撃したのがばれたのかな・・?でも、それなら何故、私たちに放れるのではなく、近づいてくるの?

「いいよ!行こうよ!」
「私も賛成。一人でも大勢で行った方が楽しいと思うの」
「珍しいわね。初女が私たちに声をかけるなんて」
「それはね、みんなが放課後何処に行って遊んでるのか興味あるの」

 初女は私たちのことを一人でいるときずっと見ていたのだと言う。

「いつも一人で翌日の授業のことを考えるのって、描いていた高校生じゃないと思うの。放課後皆とあそんで、食事して、夜遅くにお家に帰って、両親に少しぐらい心配かけさせるくらいが高校生だと思うの!」

 初女が今まで親の言う通りに過ごしていたこと。早くお家に帰って家事の手伝いや宿題をすませることを優先していたこと、そのせいで全然高校生活を満喫していないことを告げる。

「高校は大学へ行くための段階に過ぎない。でも、私たちが一番輝けるのは、今この瞬間しかない。そうでしょ?」

 その為に初めて親の引いたレールを外れる。初女が自ら取る進路を誰も邪魔できない。
 私たちは、初女の手を取ることしか出来なかった。

「そうだよ!一緒に行こう!」
「少しくらい勉強しなくても、まだ私たちは一年生だからやり直しも聞くと思うの」
「うん。思い詰めるくらいなら、気分を晴らそう」

 初女の想いに賛同し、香奈も蕗子も未代も手を取る。

「・・・・・・孝子?」

 その中で私は、初女の手を一人だけ取れなかった。
 昨日の初女の姿がどうしても頭の脳裏をよぎるのだ。
 別人のような初女の姿 。それは果たして昨日だけなのか、――それとも今日も続いているのか。

 いきなり初女が親の手を返して自分のやりたいことを始めた。タイミングが合いすぎている。
 今まで親のレールを歩いてきた初女が、レールの外を歩けることができるのだろうか。
 あまりに自分勝手すぎる。両親に対する酷い裏切りだ。

「初女・・・わたしは・・・手を取れない・・」
「えー。なんで!?」

 皆が驚きの声をあげる中、初女だけは目を細めて小さく笑っていた。

「どうして急にそう思ったの?親の心配をかけさせることが高校生なんて私は思わない。両親が初女に対する想いを汲んでやることを私たち以上に幸せなことだと思いなさい。あなた、私たちが親に心配する為に帰り遅くまで遊んでいるなんて思ってるなら、私たちに謝りなさいよ!!」
「きゃっ!!?」

 私は初女の身体を押していた。初女の身体は軽い体重で簡単に床に倒れ、机の鉄棒に頭を打って痛そうにしていた。

「あっ・・」
「孝子!あんたやりすぎだよ!」
「そうだよ!初女は変わりたいって言っただけじゃん!そんな思い詰めたりなんかしてないじゃん!」
「私たちと過ごしたいことがそんなに嫌なことなの?私たちは、ダレだって受け入れるつもりです・・初女だって当然、受け入れます」
「ちがう・・ちがう!」

 私も本当は初女を受け入れたい。でも、昨日見た光景が――、初女が教室でオナニーしていた非現実じみた光景が脳裏に焼き付いて離れない!
 昨日で一変してしまった初女に対する印象。まるで汚物にしか見えなくなってしまった私の曇った瞳が、初女だけは仲間に入れてはいけないと訴えている。
 なにが正しいの?
 自分が正しいの?
 それとも、自分が嘘で、皆が正しいの?

「初女・・・あなた、昨日この教室でナニをしていたの!!?」
 
 私は初女に訴えた。あなたの口から告げてくれれば、皆が私と同じ感想を持つはず。
 そうすれば、私がおかしいのではないことが証明される。初女がおかしいと立証させる。

「前嶋さん・・・うぅぅ・・ひっく・・・」

 初女が泣きだしてしまった。私の聞きたい答えを告げず、ただ口を閉ざして目から大粒の涙を流す。
 それが答えだ。それですべてが通るのだ。

「大丈夫、三國ちゃん?」
「みんな・・・」

 私を残して、みんなが初女に駆け寄った。心配して、泣き止むのをずっと待っていた。
 みんなが初女を受け入れたのだ。 私一人残して・・・。

「・・・ごめん。今日、わたし、部活でるから・・・ 。ファミレスにはみんなで行って」
「孝子っ!」

 蕗子が呼びとめようとしたが、私は教室から飛び出してしまった。
 廊下で走る私の目にも大粒の涙を流していた。
 曇った瞳に流れる涙で視界は何も見えなかった。

「ぅぅぅ・・・ふぇぇ・・ううううぅぅっっっ!!! 」

 誰も言えない秘密は、私自身を束縛している。
 喋ってしまえば楽になれるのに、わたしは誰も傷つけない方法を模索している。
 なんていう偽善行為なんだろう。それで初女は救えるかもしれないけど、私自身がボロボロになっていく。
 本当に救わないといけない人はダレなんだろう。
 正義を掲げる人のように私はなれないのだ。
 
 だから私自身を救うために、今は部活で走り込むしかないと、そう思ったのだ。


 
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 私、前嶋孝子―まえじまたかこ―は何不自由ない学園生活を送っています。勉強に、部活に、遊びに満喫する夢見た高校生活。
 高校生になって、中学校からだけじゃなく、県内の友達もできて今は四人の友達と一緒に遊んでいます。

「ねえ、今日どこにいく?」

 佐倉蕗子―さくらろこ―。男子に人気あるのに、何故か彼氏を作らないで私たちと一緒にいる中学校からの親友。

「まだ一限目も始まってないんだけど~!」

 後藤香奈―ごとうかな―。私たちのムードメーカー的な存在。背が小さいのでいじられ役。

「背が小さいのは関係ないでしょ!!?」
「ごめん。胸がないのでいじられ役」
「嫌味ね!嫌味なのね!未代~!!」
「はいはい、みんなにいじられて幸せね~」
「本当にそう思うの!!?」

 右京未代―うきょうみよ―。のんびり屋で天然娘。
 のんびりしてるから天然なのか、天然だからのんびりしてるのか直接本人に聞いてみたら、

「たぶん、頭使ってないだけだと思うよ?」
「そろそろ本気を出してよー!」

 分かっているのにのんびりしているのだから、未代の天然は筋金入りだ。
 そんな私たちは授業が始まる前から放課後のことで頭がいっぱいだった。
 でも、だからこそ、学校が毎日楽しくて、一日があっという間に終われるのだと思う。
 学校がつまらなかったら授業だって長く感じて、一日が長く感じて、退屈な毎日を過ごしてしまうから。
 そんなの苦痛でしょう?

 だから、私たちの生活はこれでいいんだ。
 なにも変わってほしくないなんて、贅沢な願いを持ちながら、一日がただ静かに過ぎることを願わずにはいられなかった。

「あ、雨・・・」

 ホームルームが始まってから雨が降った。季節外れの雨だった。雪にもならず、学校にいる間に一時的に降り続いた。
 でもその雨は、一限目の授業が終わる頃には止んでいた。だから、皆の記憶に残ることなく過ぎ去っていた。
 でも、私は・・・その季節外れの雨に嫌な予感がしてならなかったのだ。

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