純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『入れ替わり』 > 粉薬『入れ替え車両』

「信じられない。自分の出したモノ飲み込むなんて・・・」

 私はそう言わずにはいられなかった。誰か知らないおじさんの精液を自分の口の中に入っているのを見るだけで吐き気を催す。普段の私だったら絶対にやらない行為を、おじさんと入れ替わったせいで真琴のイヤらしい行為を見せられている。
 自分で吐き出したせいもあるけど、この身体だって元はおじさんの身体。一概にすべて私のせいだって言えないのだから、私が悪いわけじゃない。

「お願いだからかえして。私の身体でヘンなことしないでよ」

 私は縋り付くようにおじさんにやめてもらうようにお願いした。それでも、真琴(伴典)は「イヤだ」と首を縦には振らなかった。

「言っただろ。会うのはこれで最後だって。お前の身体も人生ももう俺のものなんだよ」
「そんなぁ・・・」
「俺の人生も腐ったようなもんだけど、親のすねをかじって生きていられるし、誰とも会話しないことを苦に思わなければ楽な人生だったろうよ」
「そんなのイヤだよ!」

 私は日陰に隠れて生きていたくない。お外にだって遊びに行きたい。誰とでも会話したい。
 おじさんの言う人生に賛同なんか絶対しない。私は私の信じる人生を歩きたい。
 そのために、元の身体に戻りたい。和泉真琴に帰りたい。
 だって私は、――私が和泉真琴なのだから。
 叫んだ私をつまらなそうに見ていた真琴(伴典)は、ある結論に辿りつき、不敵に笑った。

「そうか。お前はまだこの身体に戻れるって希望を持ってるんだな。元通りに生活が戻るって願望を抱いているから楽しくないんだ」
「えっ・・・」
「まだお前は女の子だと思ってるけど・・・お前は誰がどう見ても40歳過ぎたオジサンで、越智伴典って人間ってことを忘れるな!!!」

 真琴(伴典)が私に叫んだ言葉が心臓を貫く。途端に呼吸がしずらくなり、息が上がり、心臓の音が五月蠅く聞こえる。

「・・・んふっ。だから、今夜は和泉真琴がやってきてあげたよ♪ロリロリの女の子がやってくるなんて滅多にない機会だもんね?」

 私の口調、私の仕草、私の声で真琴(伴典)は語り掛ける。普段の私と寸分変わらない、屈託ない笑顔は、先程とはあきらかに別人に見える。

「ほらっ、見てよ。今日の水着のあと。炎天下でプールやっちゃったからくっきり跡が残ってるでしょう?」

 フリフリのネグリジェを脱ぎながら焼けた肌に浮かび上がる水着の跡。しかし、私の見る視線は、真琴の小さな乳首に目移りしてしまう。
 元の自分の身体を見ながら欲情している自分がいる。荒々しく吐く息に呼吸が乱れ、悶々としてくる心境に駆られていく。

「見た目とは裏腹にロリっ娘がたまらなく好きなんだよね、オ・ジ・サ・ン・♪」

 真琴(伴典)の声は男の野生を呼び起こす。この身体に染みついた、伴典の本能が私を突き動かそうとしている。

「ちがう。私は・・・」
「だから本当は今すぐ私を襲いたいんでしょう?おじさんの目は私をどう狩ってやろうと考えてるみたいで生き生きして見えるよ♪」
「そんなことない・・・わたしは・・・」

 真琴(伴典)の言葉を否定したくて、視線を外して首を横に振る私の前で、真琴(伴典)は全裸になってベッドに腰を下ろした。そして、誰にも見せたことのない自分の秘部を、私にマジマジと見せつけたのだ。


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「ん・・・ちゅ・・・んちゅ・・・」

 私は真琴(伴典)とキスをしている。今まで自分でも見せたことのない大人びた表情で、淫靡な雰囲気を醸し出しながら、真琴がぴったりと唇を重ね合わせてきた。

「れろ・・・ちゅ・・・くちゅ・・・ちゅろ・・・ちゅ・・・んちゅる・・・くちゅ・・・」

 真琴の舌が唇を這う。濡らした唾液の感触に慣れない私を無視して、真琴(伴典)は無意識に開いた口の中に舌を侵入させてゆっくりと歯茎をなぞり始めた。

「ん、ちゅ・・・ちゅっ・・・ちゅろ・・・んちゅる・・・ちゅぅ~・・・・・・」
「ん・・・んく・・・んくぅ・・・ひゃ、ひゃめてぇ!」
「・・・あは、そんな慌てちゃって面白い」

 口内を舐めまわされて、未知の快感に背筋がざわついて身動きが取れなかった。大人の知識を私だって知ってる。これが大人のキスの感触。柔らかい唇の温もりが残る自分の唇をなぞり、相手の唾液に濡れている唇が、これが夢ではないことを教えてくれる。
 私のファーストキス。それを奪ったのは他でもない、和泉真琴なんだ。

「もとが自分とはいえ、やっぱりどこか女の子っぽいな。仕草と言い態度がまだ幼いっつうか・・・こういうことに慣れていないっていうのがはっきりわかるんだよね」

 そんなの当たり前。今日まで私は中学生だったんだ。男性のことも自分のことも知らない、無垢な女の子だったんだ。
 でも、何も知らないからこそ、下腹部から盛り上がり、ズボンの奥でテントを張っている異変の正体にすぐに気付いた。

「えええ。なにこれぇ!?」
「キスだけでこんなに大きくしてるなんてよ。ち〇ぽ勃起させて感じてたんだな」
「な、なにするの、いやぁ!」

 真琴(伴典)が寝巻のズボンを乱暴に剥す。男性用の下着から覗いて見せたのは、男性しかついていない、勃起したおち〇ち〇だった。直立しているおち〇ち〇は、触っていないのに既に熱く硬くなっていた。

「これが俺のち〇ぽかよ。俺の目の前にあるなんてよ・・・・・・へぇ~。裏筋こんなんなってるのかぁ」

 顔を近づけておち〇ち〇に興味を示す真琴(伴典)。勃起したおち〇ち〇のイカ臭い香りと皮の先っぽから見える亀頭部分を見つめている自分の高揚した表情。
 まるで、本当に私がおち〇ち〇を欲している顔をしているみたいだ。

「女が平気で男のブツを咥えることができるか分かった気がするぜ。こんな立派なモノ見せられたら、咥えたくなるな」
「え、なに言ってるの?」

 真琴(伴典)が私に目を合わせてニンマリと嗤う。小さな口を大きく開けて、喉仏の奥まで見せつける。

「この口でフェラしてやろうか?」
「なな、なに言ってるのよ!いやよ、そんなの。絶対、いや!」

 私は真琴(伴典)の案を認めない。自分の身体を心配して、どこの誰かも知らない中年のおち〇ち〇なんか絶対咥えたくなんかないから。

「私のお口に、そんな汚いモノ入れないでよ!」
「汚い・・・?」
「あっ・・・」

 感情が先走り、思わずついた言葉に真琴(伴典)は眉間の皺を寄せる。しかし、怒りを抑えながら平然と私に笑みを浮かべていた。黒い笑みだった。

「へえ、それもそうかもね。でもね――」
「んあっ!」
「触られただけでビクンって跳ねるち〇ぽがどこまで我慢できるだろうね?」

 おち〇ち〇に触れただけで背筋が伸びて、足の先までピンと跳ねるくらい味わったことのない刺激が突き抜ける。おち〇ち〇は男性の性器だって知ってるけど、こんなに感じるなんて思わなかった。
 真琴の手が私の性器を両手でしっかり掴んで上下に扱き始める。皮が捲れて見える亀頭がぷくりと顔を見せては鈴口を気持ちよさそうに広げていた。

「ち〇ぽ弄ったことなんかないんだろ?それじゃあ気持ちよさなんか知るはずないよな?」
「あっ、あっ、これ、やめてぇ」
「んふふ・・・。ふぅ~♪」
「ひぃぃ!!?」

 捲れた亀頭に突然息を吹きかけられて、思わずヘンな声を上げてしまった。ぞわりと背筋が震える。これが、男の子の性器なんだ。女の子と違って、外にはみ出している性器は、快感に敏感で、弄られるとどんどんおち〇ち〇が気持ちよくなって勃起しちゃうのが丸見えになっていた。
 戸惑いながらも徐々におち〇ち〇に血が巡っていくのが分かった。

「あははっ!ひぃぃだって!か・わ・い・い・~♪」

 真琴(伴典)が笑いながら私を侮辱する。
 私の顔で、私を馬鹿にする。おち〇ん〇を扱く真琴の手が止まらない。小さな手の平で包まれ、イヤらしい動きで上下に扱く自分に、吐き気を覚えながらも、身体は素直に反応してしまっていた。

「うわっ、見て。こんなに大きくなってきた」
「はぁ・・・はぁ・・・こんなに大きくなるんだ・・・」
「自分の勃起したち〇ぽこんなに大きかったかな?それとも俺が縮んだせいかな?」

 伴典本人も見たこともないおち〇ち〇の勃起をまるで私が異常に興奮しているせいだと暗に促しているように聞こえた。捲りあがった皮の間に見える白いカスを扱きながら掬い取る。

「皮の間に溜まったお汁と、カスが一気に見えてきて・・・すんすん・・・くっさいたらありゃしない」
「私のせいじゃないもん・・・」
「あーくっさい。男のチ〇カスって臭くて汚い。すんすん」

 そう言いながら、指先で、カリ首のあたりについた白いカスを取っては自分の顔に近づけて匂いを嗅いでいた。罵倒しながらも匂いを嗅ぐ真琴の表情は、さらに赤く染まっていった。

「なんか、嗅いでいると癖になりそう」
「ヘンなことしないでよ・・・変態!」
「そう言いながらも私を見てすっかり勃起してる変態はお前じゃないか。手の中で熱く滾って、思わず火傷しそうなくらい火照らしているのはダレだ?」

 私が罵ると、さらに輪をかけた罵倒が言われる。すっかり根負けしている私は、真琴(伴典)の良い様に弄ばれる。自分の身体を使って、私を弄ぶ。自分が自分じゃないみたいになりそうで怖い気持ちでいっぱいだ。

「あれ?まだ濡れが足りないかな?・・・・・・んあ~・・・・・・」
「ひゃぅっ!?」

 戸惑う私を置いて、おち〇ち〇の先っぽに唾が垂れ零れる。空気に触れてひんやりとした唾がおち〇ち〇に垂れてきて、思わず腰が跳ねてしまう。

「そんな、き、きたないよ」
「んぅ~?自分の綺麗な唾でしょう?これでちょっと強めに擦っても大丈夫。綺麗にち〇ぽ洗ってあげるからね」

 自分の唾で濡れたおち〇ち〇を亀頭の先から白いカスを拭いていくように扱いていく。ぷっくり膨らんだ亀頭から皮の奥まで捲り、チ〇カスを掃除するような手つきで何度も擦っていく。

「あ・・・うぅ・・・ふぁぁ・・・・・・」

 一番敏感な部分に触れられているせいで、イヤでも声が出てしまう。

「ふふ、気持ち良いんだ。ち〇ぽどんどん大きくなってきてる。汚い童貞ち〇ぽ掃除されて、興奮してるんだ?アハハ、はずかしー!」
「やだ、やだ、言わないで!」
「40歳過ぎた男が、12歳の女の子にち〇ぽのお世話されて、しかも気持ちよくなって・・・」
「ひぅっ――――!」
「ほんと、変態みたいだねぇ~」

 まるで赤ちゃんのように、下の世話をされている私を他の人が見たらどういう姿に映るだろう。
 そう、きっと変態にしか見えないのだろう。
 真琴の手は擦るだけじゃなく、おち〇ち〇を絡めて刺激する動きもし始めている。恥ずかしさがあっても、その刺激は気持ちよくて、一気におち〇ち〇が硬さを増していく。

「あはっ♪まだち〇ぽ大きくなるんだ。綺麗にしてあげていただけなのにね、おかしいねぇ~?」

 笑い声をあげながらも目は私を蔑んでいる真琴(伴典)。初めて男の子の快感を知ってしまった私を誑かすように、唾と先走り汁で濡れた指先のツボを突いた刺激を加えながら上下に優しくおち〇ち〇を扱いていった。
 先端からとろとろと溢れだす先走り汁。他の誰でもない、私が溢れさせた男の子のお汁。既に感じて亀頭を真っ赤に充血しており、先走りは止まらない。

「(あ、あ、このまま、いっちゃう・・・いかされちゃう・・・っ!) 

 私は真琴―わたし―にいかされちゃう。そう思った時、真琴の手がぱっと放れ、勃起したおち〇ち〇はぶらりと重力に垂れさがる。包み込んでいた真琴の手の体温から離れ、急に寒さを覚える。もう少しでイケるはずのおち〇ち〇が、我慢できずに訴えかける。
 ビクンビクンと、自分の呼吸に合わせて跳ねる。それは、まるで本当の私の心の声を代弁しているみたいだった。

「あっ・・・あっ・・・」
「それで、この後どうしたいのかな?」

 真琴(伴典)はここで初めて私にイニシアチブを譲り渡す。
 ずるい、このタイミングで。
 否定をしたい私の気持ちよりも、感情が勝ってしまう状態で私に主導権を与えるのだから。
 全部、彼の言う通り。彼の望む通りにしか私はもう動けない。悔しい。悔しいけど――

「わ、私の勃起したおち〇ち〇を、お口で咥えてほしい!」

 私は自ら、真琴にフェラを要求したのだ。


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 私が目を覚ますと――なにかヘンな声が聞こえてきた。

「・・・・・・ぅ、んぅ」

 布地の擦れる音。ポリエステルの生地を擦る音と微かな女の子の漏れる声が耳を撫でる。どこかで聞き覚えのある少女の声。それはとても近くから聞こえてきた。

「ぁぅ・・・あんっ」

 なんだろう。どんどん鮮明に聞こえる少女の声。私の意識がしっかりしてくると、ゆっくりを目を開けてなにが起こっているのかを見たくなってくる。そこに映った景色。電車内で繰り広げられていた景観は。それは、スク水姿の女の子が電車内で椅子に座り、自分の胸を弄っている様子だった。
 ただ一人占拠した椅子の上で、片脚をつき、右手を自分の胸へと伸ばしてこねくり回している。その仕草、その動作はまるで、夜に電気を消した部屋の中で、人目を忍んでオナニーをするのと同じだった。ただ今回違うのは、その動作が行われているのは夜ではなく昼。人目を忍ぶ部屋の中ではなく、人目を憚らず公共の電車内で平然と自慰行為に耽っているのだ。信じられないことをする少女。私ですらデリカシーがない人だと、その人に忠告してしまうかもしれない。
 でも、私はその忠告をあげる声が出なかった。あまりにもびっくりして、声が出てこなかったから。 
 だって、私の目の前で、公共の場で人目を気にせずオナニーをしている少女というのは、紛れもなく私、和泉真琴だったのだから。

「ふぁ・・・っ!あぁん!」

 スク水を着て電車に乗っている少女というだけで、かなり少女を特定できるはずだ。この時刻にそんな格好で電車に乗っていたのは、私以外誰もいないだろう。つまり、目の前に映っているのは紛れもなく和泉真琴で、でも、私も和泉真琴で――どういうことなのかわからないよ!!

 くちゅくちゅくちゅ・・・・・・

 少女の左手がスク水の股の部分を擦っている。すると、ぷにぷにと押される恥丘の形にお汁が染み出し、スク水を濃く変色させていく。私の身体は濡れているみたいだ。感じている声を張り上げてしまうほど、気持ちよくなっているのだ。
 私の脳が現実に追いつかない間に、私の身体がどこか行ってしまう――それだけは守らなければいけない。

「ちょっと、やめてよ!」

 私が声を張り上げる。すると、普段聞くことのない野太い声が私の言葉を奏でていた。声を張り上げた私もそうだが、オナニーに耽っていた私の身体もようやくその手をいったん止めた。

「ようやく目が覚めたんだ」

 私に向かって私がしゃべりかける。自分の耳から聞こえる声と違う声色で私が話しかける。
 まるで別人のような喋り口調だ。

「あなた、ダレ・・・?」
「私は真琴。和泉真琴。中学1年生の12歳」

 私の身体は私に聞かせるように自分の名前を二回繰り返した。聞いてもいないのに自分の年齢を言うことで、さらに私に自分が和泉真琴で間違いないことを諭した。
 電車の中に私に似た同姓同名がいる以外、こんな現象起こるはずがない。でも、そんな仮説こそ馬鹿げた話なので、自分の頭で論外する。だから、おかしいのだ。私がもう一人いるなんてこと――

「それは私!私なの!!」

 私が叫び、存在を否定する。すると、真琴は自分でも浮かべたことのない歪んだ笑みをみせて、低い声で私に嗤った。

「くくく・・・!そりゃそうだよな。さっきまでこの身体はお前のモノだったんだからな。俺だって付け焼刃の知識じゃこの程度しか覚えてねえよ」

 急に口調が男性のものへと変わる。私の声がさらに別人の音に変わっていく。

「でも、もうこの身体は俺のモノだ。お前のモノじゃねえ」
「あなたこそ、ダレなの・・・?」
「財布に身分証明書が入ってる。それで勝手に調べろ。その財布の中身はもうお前のモノなんだからよ」

 私の質問に答えず、真琴は椅子に転がっていた古びた長財布を投げつけた。私は無言で財布を受け取り、中身から身分証明書を見つけた。
 越智伴典。仏頂面した証明写真と供に記された名前と顔。それが――今の私・・・?

「――――っ!!?」

 私はこの時になってようやく自分の今の姿を見たのだ。
 窓越しに映る男性の姿。それは、身分証明書に映っていた証明写真とほぼ同じ顔だった。仏頂面だった顔が、今にも泣きだしそうな顔をしている以外は――。

「これが・・・わたし・・・」

 私の声が、私の気持ちが、男性の声で発せられていく。震える手で自分の顔をなぞると、伸びっぱなしの無精髭がジョリジョリと硬くなって手の甲の滑りを何度もせき止めていった。そんなことをお構いなしに、私は自分の置かれている立場に気付き、絶望に打ちひしがれる気持ちに苛まれていた。
 和泉真琴と越智伴典の姿が入れ替わっていた。

「ウソよ・・・。なんで、こんなことに・・・」
「なにも知らないお前が悪いんだよ。またいつどこに来るか分からない『入れ替え車両』に乗れたらいいな、ハハハ」

 真琴(伴典)は下衆な表情で私を見下した。その表情は中学生が浮かべるものとは思えないほど冷めきっていた笑みだった。
『入れ替え車両』の噂は聞いたことがあっても、所詮噂と思って軽く聞き流していた。噂を本当に信じている人なんていない。私たちの世代なんて昔流行った百物語や七不思議なんて、そうそう信じていない。
 だからこそ、もしその噂が本当に起こったとしたら、一体だれが本気で信じてくれるというのだろうか。
 姿が変わるより、心が変わるより、真実を信じてもらえないことの方がよっぽど、怖い。

「かえして。私の身体かえして!」
「さわんじゃねえよ!この身体はもう俺のモノだって言ったろ!」

 大の男が少女に蹴り飛ばされる。乱暴にお腹を蹴られた伴典(私)の身体は、電車を転がりくの字に曲がった。そんな無様な伴典(私)を見て真琴(伴典)はニヤニヤと嘲笑っていた。

「この身体だけじゃねえ。この身体を手に入れたってことは、お前の人生を手に入れたってことなんだよ。つまり、俺はこれから美羽と咲良ってやつと一緒にプールに行くんだよな?」
「な、なんでそのことを・・・?」
「付け焼刃の知識って言ってたけどよ、『入れ替え車両』は身体だけじゃねえ、記憶だって入れ替わってるんだよ。だから、いつでも記憶を引き出せばいつ何があったかを読みだせるんだよ」
「そんな・・・」
「だからよ・・・・・・ふふっ、ごめんね。おじさん。これから私、二人の元に帰らないといけないの。だから、もうすぐお別れだね」

 急に真琴(伴典)の口調が私の普段の口調に早変わりした。仕草も先程の横暴な姿は微塵も感じさせない。屈託ない笑顔はまるで入れ替わりが起こる前の私そのものだった。
 伴典の言う通り、彼は私の人生をそのまま奪おうとしているのだと、この時確信した。唖然としている私の耳に、駅到着のアナウンスが流れ始めた。目的の神保市に到着したのだった。

「ウソ・・・ウソでしょう・・・」
「おじさんもおじさんの人生を満喫して楽しく過ごしていってね。それじゃあね~」

 身支度を整えた真琴(伴典)は電車を降り、人ごみに紛れて消えていく。私はいなくなってもらったら困ると、慌ててもとの自分を追いかけるように電車の外に飛び出した。

「いや、行かないで!」

 同じように人ごみをかき分けて進む伴典(私)。すると、改札口を出た駅前で美羽と咲良に再会した真琴(伴典)の姿を見つけたのだった。

「どこまで行ってたのよ。心配したじゃない」
「うまく合流できて良かった。あと、『入れ替え車両』に乗らなかった?」
「うん!もちろんだよ!」
「そもそも、それはあくまで噂だし、乗ったとしても入れ替わりなんて・・・・・・そんなのあるわけないじゃん!」
「・・・そっか。それならよかった」

 二人に嘘をついて入れ替わりのことを隠そうとする。このまま別れてしまったら、二人は一生真琴(伴典)に騙されてしまう。そんなことさせない――。

「待って!!!」

 私は三人の前に姿を現した。美羽と咲良は伴典(私)の姿にびっくりしていた。

「私の身体かえして!二人とも、私が真琴なの!信じて!」
「えっ、ちょっと?どういうこと?」
「真琴?」

 二人が私の言葉に真琴(伴典)に疑心暗鬼する。それすら計算内のように、真琴(伴典)はくすっと口元を釣り上げた。

「やだぁ、怖い。変態じゃない。自分と同じ名前を言うなんて・・・・・・」
「へん・・・た、い・・・?私が・・・!?」

 動揺する私。真実を告げただけの私に対して、第三者の視点でそう発したのだ。40歳を過ぎたおじさんが二回りも年下の少女を名乗る――そんな姿を他の人が見ればどのように映るというのだろうか。どういう姿に映るのだろうか。
 真琴(伴典)の声に賛同するように、美羽も咲良も伴典(私)から一歩引いた。

「そ、そうよね。近寄らない方がいいわね」
「美羽ぅ!私だよ、和泉真琴だよ!」
「私の名前まで知ってるの!?ちょっと、この人ダレ?」
「そう言えばさっき、私の鞄の中身を漁ってた人がいたんだよ。きっと、この人だよ」
「ウソ!適当なこと言わないで!」

 騒ぐ伴典(私)に咲良が勇気を出して私の袖を掴む。その顔は今まで見たこともないくらい激しい剣幕を見せていた。

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「これ以上邪魔するなら駅員呼ぶ。それで、警察に連れて行ってもらうから」
「咲良ぁ・・・・・・」
「誰か助けてぇ!ヘンな人が私たちをつけ回してるんです!」
「えぇぇ・・・っ」
「警察だ!」

 作り話、捏造で固めてくる真琴(伴典)の言葉を否定したくても証拠など何一つ無い。入れ替わりと同じなのに、信じるか信じないかはその人次第だなんて、そんな他人に投げつける真実は本当に救えない。

「私・・・違うのに・・・どうして誰も分かってくれないの!!!」

 私は警察から逃げるように三人の元を放れざるを得なかった。泣きながら帰宅する私の家は、帰る家ではなくなってしまったことにまた泣いた。


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 8月に入り本格的な暑さが到来した最中、夏休み真っ只中の私、和泉真琴―いずみまこと―は友達と一緒に神保町の大型市民プールにいく約束をしていた。

「和泉ちゃん!きたよ!」
「はーい」

 お母さんに「いってきます」と挨拶して、玄関を飛び出した。外には水泳部の渡辺美羽―わたなべみゆ―と桃井咲良―ももいさくら―が待っていた。

「おまたせ。それじゃあ行こうか!」

 三人仲良く歩き出す。駅前までしばらく歩くため、暑さを紛らわしながら夏休みから会っていなかった友達との再会に会話に華を咲かせていた。

「うわ、夏休み見ない間に焼けたね」
「お互い様だよ」
「私は部活、咲良はアイドル活動で仕方ないにしても、帰宅部で何もやっていない真琴がなんでそこまで焼けてるのよ」
「家族で海に連れてってもらったんだよ」
「いいわね。家族旅行に連れてってもらえて。私も地方から外でたいわ」

 そういう美羽は水泳部では全国出場を狙えるほどの実力者だ。将来はオリンピックの強化選手に入ることを目指して日々練習している。

「私より咲良の方が全国知ってるでしょ?コンサートで飛び回ってるんだから」
「まだそんな大きい活動してないよ。他県に行っても日帰りで飛んで戻ってきてるくらいだし、実際よくわかってないよ。遊んで観光する時間なんて滅多にないし」

 アイドル活動と学生を両立している咲良は休みが取れる方が珍しい。学校が夏休みならアイドル活動の予定を入れられてしまうくらいなのだから、私たちと一緒にプールに行けることが本当に稀だ。
 咲良は咲良なみに、クラスメイトとの時間を大事にしたいと思っているのかもしれない。

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「あ、真琴ったらもう水着着てきてる!ちょっと早くない?」
「そんなことないと思うよ。着替えるの楽だし、汗かいたってへっちゃらだし」
「あんたにはデリカシーってものがないのかしらね」

 美羽がため息をつき、私は愛想笑いで誤魔化した。別にいいと思うんだけどな、誰かに迷惑かけてるわけじゃないし、学校で水泳の授業があれば家から水着を着てその上にセーラー服を着て登校するくらい普通のことだと思ってるんだけど。
 美羽はそれは反対らしい。まっ、人それぞれってことで。それが私らしいってことでもあると思うの。
 駅前にやってきた時に電車が到着したアナウンスが流れた。

「ちょうど電車来るよ」
「ま、待ってよ」

 慌てて切符を買い、ホームにかけ下りる。私たち三人が電車に乗り込んだ瞬間、扉が閉まった。

「タイミング良かったわね。今日はついてるんだよ!」

 息を切らしながら飛び乗った私たち。冷房の効いている車内の涼しさに呼吸を整える。
 それでも車内に人は多い。仕事に出るサラリーマン、OLから、妊婦、老人、私たちと同じ夏休み中の子供たち。
 飛び乗って騒いでいる私たちに視線が集まるのを気にして、美羽がすぐに私たちを静止させた。社内は静かにするように躾けられている美羽にならうように、私たちも静かに駅の到着を待った。
 その時間ですら私は楽しみが膨らんでいく。ワクワク感で心臓が高鳴り、今すぐ泳ぎだしたい衝動に駆られてしまう。

「まだかな、まだかな」
「真琴は面白いよね。言葉に出なくても何を言おうとしているのかわかっちゃうし」
「そうかな?」
「お盆に小さいライブコンサートがあるけど見に来ない?真琴ならきっと嵌っちゃうと思うよ?」
「えっ、ほんと!いくいく!咲良が出るなら絶対観に行くよー!」
「そう言ってくれると嬉しいな。私も頑張って歌って踊るよ!」

 私と咲良で会話をしていると、美羽が小さく咳ばらいをした。声が大きくなったことで注意した美羽に咲良は勘付き声を落とした。私も周りを見ると、周囲の視線がちらほら目に入った。
 その視線はやけに私に刺さるそれくらい私は車内で要注意人物として映っているのだろうか。

「・・・・・・あっ、スク水・・・」

 私は肩から見えるスク水を隠すようにキャミソールの肩紐を掛け直した。当然、それでスク水の紺色が隠れるはずがないのだけれど。
 なんだろう、この見られている感覚・・・・・・これが、恥ずかしいという感覚なのだろう。
 見せるつもりじゃないものを大勢の人に見られるというのはなんだかこそばゆい。美羽が言っていた、でりかしぃっていうものに違いない。
 穴があったら入りたい。せめて、電車の中で人の少ない場所に移動したい――――。

「あっ、真琴。どこ行くの?」
「んっ・・・ちょっと隣の車両を見てくるの」
「もうすぐ着くよ?あまり遠くに行かないでよ」
「あはは。分かったよ。すぐ戻るね」

 私は二人の傍を放れ、隣の車両へと歩き出す。私が二人と離れてしばらくすると、車内アナウンスが流れ始めた。


『お客様にご連絡いたします。当車両は次の鳴神駅を通過しますと、5両目を「入れ替え車両」に変更いたします。お客様のお間違いがないようにお願いいたします』


 途端に、人が流れるように私の車両に人が押し込んできた。狭い車内がさらに人でごった返す。もう私の目から二人の姿は見ることが出来なかった。

「入れ替え車両・・・・・・?」

 何のことだろう。そんなの初めて聞いたことだ。よくわからなかった私の視界に入ってきたのは、目の前に開けた誰も疎らにしか乗っていない車両。椅子がガランとした車内に惹かれるように、私は自然に5両目へと足を踏み入れていった。


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