純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『スライム・寄生』 > 柔軟剤『犯行期』

「ウフフ…。下着の山、これ全部俺のモノ」

 絢子の部屋のタンスから引き出した下着の数々を見て笑みが零れる。
 コンパクトに収納された下着、男の目を惹きつけるシースルーまで用意されていて、思わず脚に通したくなる衝動が抑えられない。
 時間はたっぷりあるのだ。焦ることなく、毎日毎夜オナニー三昧のストリップショーを開催すればいい。
 観客は自分のみ。だから好きなことが出来る独り舞台。
 あんなことやこんなことを、絢子の身体に染み込ませるまで使ってやる。そして、絢子の身体に飽きてしまったらまた違う女性に乗り移ればいい。新鮮さを取り戻し、新たな快感が永遠に続く。
 人生は愉しんだモノが勝ちだ。
 快楽漬けの人生で苦痛の現実すら感じなくなれたら、真の勝利者。
 男性では永遠に味わえない、女性という神秘の体験を飲み干して、茂という人生は終着点を迎える。
 ――ここは禁断の花園。木間塚絢子という人生こそゴール。

「せっかくこのカラダになったんだし、コスチュームでも買いに出掛けようかしら。…クヒュ、着る衣装すべてが快感の礎になるなんて、女ってほんと羨ましいよな」

 スカートからコルセットまで一通りそろえ、趣味でチアガールからSM嬢、スク水まで買うのも良い。
 人生そのものが楽しくて仕方がない。明日が輝いて見えるとはまさにこのことをいうのだと絢子(茂)は思った。

 ――ピンポーン

 その時だ。家の呼び鈴が鳴ったのは。
 来客だ。克也はお風呂でも抜いてあげたためにのぼせて動けない状態だった。抜き続けた克也の逸物をさらに無理やり抜いたために、熟睡しているのか動き出す気配はない。
 絢子(茂)が客を出迎えないといけないようだった。

「どうしようかな。驚かすために裸で出るのも面白いかもな」

 そんな邪な考えが浮かんだものの、自分から荒波を立てる必要はないと、絢子の普段着を纏っていく。ジーンズにババシャツなので簡単に着替えることができる。そして玄関まで急いで駆けつける。

 ――ピンポーン

「はいはい、今開けますよ」

 木間塚家に玄関カメラは備わっていない。おまけに玄関は曇りガラスで見ることができない。呼び鈴を鳴らす相手が誰なのかは開けてみるまで誰か分からない。
 絢子(茂)が意気揚々と玄関ドアを開けると、そこから顔を覗かせたのは――

「はい、どなたですか?」
「こんにちは」
「ひっ――!?」

 そこから顔を覗かせたのは、紛れもない、かつての自分の顔、金子茂だった。

      
自分と、あ、あなたは・・・!?

「あ…あ…」

 引きつる顔。涼しげに笑う自分の顔を見て、慌てて絢子(茂)は取り乱した自分の表情を両手で隠した。

「(駄目だっ。俺が前に現れたってことは、その中身は絢子の息子―ガキ―、克也そのものしか考えられねえ。俺が入れ替わったんだから間違いねえ。つまり、目の前にいる相手は図体がでかい、俺よりも年下の子供じゃねえか!!)」

 そう、『柔軟剤』で入れ替わった身体同士なのだから、誰よりもその相手が分かっているはずだ。克也と別れた短時間で第三者が『柔軟剤』を使用し、再び『偶然』、金子茂と入れ替わる事がない限り、目の前の相手が克也以外の可能性は無い。金持ちの道楽で簡単に百万単位の遊び道具を、未来も希望もない『つまらない男―金子茂―』に使うものがいるとは絢子(茂)は到底思わなかった。

「(つまり、目の前にいる自分に臆すことはねえ――)」

 それよりも、茂(克也)の立場を考えれば、まさか茂が別れた短時間で絢子と入れ替わったなど考えるだろうか。子供の頭脳からすれば、すぐにでも母の胸に飛び込みたいという気持ちでいっぱいのはずだ。『ボク、実は克也なんです!』と、告白してきて涙ぐむ姿が簡単に想像できる。そこで茂(克也)の話を母親だからと信じるように言って聞かせて、油断させて逆に捕らえて絶望へと陥れる。『実は俺がお前の母親と入れ替わってたんだぜ!』と、言った時に浮かべる茂(克也)の表情を考えただけでも今からでも面白い。

「(相手はガキだ。……それよりも、問題は――)」

 そう――問題は、その隣。
 茂(克也)と一緒に玄関から顔を出した、出会ったこともない謎の男性。
 年齢はもう50代過ぎてる。白髪交じりの髪の毛なのに、なぜかトリートメントでビシッと固めたリーゼントが似合う。
 目つきが怖いのに笑っているのがさらに不気味だ。職務質問でもして何組の頭なのかを訪ねてみたいものだった。

「あの……いったい、うちになんの用が?」

 遂に絢子(茂)が口を開いた。扉を開けてから五秒もしない返答だった。

「ンッフッフッ。どうも、奥さん」

 口を開いたのは茂(克也)ではなく、もう一人の男性の方だった。元気はつらつとした声で絢子(茂)に訪ねた声に無言で頭を下げ返した。

「あの…あなたは?」
「すみませんね。急に押しかけちゃって。実はわたし、こういう者です」
「………っ!?けッ――――!!!」

 内ポケットから取り出される菊花紋章の入った手帳。中を開いて自分の素性を明かす。


 吟醸松梅。れっきとした警察官だった。


 心臓が高鳴る絢子(茂)。『偶然』なのか、はたまた『必然』なのか。国家権力の犬と言われる警察官がない頭脳を使い、犯罪のにおいを辿って追いかけてきたというのか、信じられないと、再び口を籠らせてしまった。

「どうしました、奥さん?」
「ゴホンっ!い、いえっ、別に。警察が家にやってきたことなんてありませんので」
「ああ、そうでしょうね。あまり関わりたくないでしょうしねぇ。アッハッハ!」

 自分たちのことを自虐に笑っているのだろうか。心臓がドキドキの絢子(茂)はそれどころじゃなく笑うこともできなかった。

「(だ、大丈夫さ…。記憶も情報も、俺は完全に引き出すことができる。絢子という女性そのものになりきれるほどの知恵を持っている。ほらみろ、自然に出る言葉だって女性言葉だ。誰も俺を偽物だと見抜けはしない!)」

 絢子としてなりきり、この場をやり過ごすため、ボロが出ないようにさらに絢子としての引き出しを開けておく。昨日の夕食から克也の小学校始業式のお祝い。克也の誕生の日の記憶まで全部を引き出し読み解いていく。

「……ん?奥さん、聞いてます?」
「ハイ?えっと、すみません。ナニカ?」

 にっこりと微笑み、松梅に返す。この間に絢子としての生涯の大半は紐解いてしまった。なにを質問されてもすぐに『絢子として』返答をすることのできる自信があった。

「そうですか?じゃあ、質問しますが、あなた、木間塚絢子さんで間違いないですか?」

 最初の質問から心臓が跳ねあがる。まるで自分が木間塚絢子じゃないと知っているかのような見透かした目をしている松梅に汗がにじみ出る。

「それは……どういうことですか?」
「はっ?」
「私が木間塚絢子じゃないとしたら、ダレだというんです?」
「あっ……アッハッハ!いや、これは失敬!私もこの土地勘があるわけじゃなく、人の名前と顔がどうも一致しないんですよ。ですから、表紙の看板にかかれた名前と顔が一致するか確かめたかっただけなんですよ」
「あっ……ああ、そういうことですか!」
「何か誤解させてしまったとしたら申し訳ありません」
「いえいえ、わたしこそ、思わず深読みしてしまいまして、あはは……」
「アッハッハ!」

 それはそうだ。まさか目の前で対峙している人物が表紙にかいている人物と別人とは、警察は夢にも思わないだろう。それを信じて疑うような警察であったとしたら、それは決して『リアル』じゃない。

「絢子さん。この方御存じです?」

 改めて松梅は茂(克也)を差した。

「さあ、存じ上げませんが」

 『絢子』として初めて会う男性に首をかしげて返事をする。今の絢子(茂)にとって本当に知らないのだ。

「そうですか。……先日、公園内で小学生が如何わしい行為を強要されたという事案が持ちありましてね。付近で詳しく捜索していたところ、今日になって容疑者が一人浮上したんですよ。金子茂と言いましてね、なにを隠そうこの男性なんですよ」

 茂が以前、『柔軟剤』を使った時に被害を受けた女の子が、後日になって警察に通報したのだろう。
 恐怖で手足を縛る足枷になると思ったが、それ以上の助けを少女は求めたのか、茂が事件の最重要人物に名乗り上がっていた。
 知らない間に追い込まれているものだ。事実、金子茂は警察に連行されているのだから。

「まあ、そうなんですか……この人が……見た目ではそんな風に見えないですね」
「はい。人はなにを考えているのか分かりませんね」

 自分の顔を見ながら恐る恐る全身像を眺める。自分の姿を見ながら心の中でシメシメと嗤っていた。
 このまま茂(克也)が警察に連れていかれたら万々歳。絢子としての残りの人生を楽しく過ごすことができることだろう。
 だが、だというのに、なぜ――

「あの……それで――」
「はい?」
「何故、この人を家に連れてきたのですか?」

 そう、肝心なのはココからだ。
 絢子と一切関係のない茂が、何故警察に連れられて家に訪ねてきたのかだ。

「そうなんですよ。今日、公園内で詳しく聞き込みをしていたところ、偶然気を失っている容疑者を発見しましてね。目を覚まして事情を聞くと……。なんて言ったと思います?奥さん」
「わ、私!?」

 嫌なところでボールを投げてくるものだ。そんなの、分かりきっていることじゃないか。目を覚ました茂(克也)が言った台詞で、木間塚家と繋ぐ関係がありそうな発言は――

『僕は木間塚克也です』

「さあ。わかりません!!」

 思わず出そうになった言葉を消去して、口調強めに投げ返す。

「(あぶねえ!これは罠だ。俺からボロを誘う手口だ。少年と俺が入れ替わっていることなんか警察が知るはずもない!俺がその言葉を発した瞬間、入れ替わっていることを自分から告白するようなものじゃねえか!あっぶね!あっぶね!)」

 入れ替わりなどという非現実を自ら告白す必要はない。だからこそアンリアルに惹かれる者たちがいる。現実逃避こそが現実。だから警察には絶対理解できないもの――

「この人ねぇ、『僕は木間塚克也です』 って言ったんですよ」
「そうなんですかぁ(やっぱりぃ)」

 ドンぴしゃの大正解で思わず微笑んでしまう。そう、それでいいのだと絢子(茂)は納得した。

「理解できないでしょう?この人の名前は金子茂なんですよ?どうして全く別人の、木間塚克也なんて名前を発したのでしょう?」
「分かりませんわ。そんな異常者の考えは?」
「ですよね?私もそう思って署で話を聞こうと思ってたんですよ」

 健全者と健全者同士の会話だ。異常者は部外者だ。松梅と絢子(茂)こそが正義であり、茂(克也)こそが異端。悪は罰せられなければならない。
 警察署での尋問は拷問だと聞く。罵詈雑言で心身ともにボロボロに叩かれ、やってもいない無実の事件でも自分がやったように誘導されてしまう。認めてしまったら最後。有罪になるまで否を認めない警察官は裁判官と連結して処罰を下す。
 正義という裁きだ。この世に正義などあったものじゃない。あるとすれば、金こそ正義だ。

「でしたら、早く連れて行って下さい。そんなおぞましい人」
「すみません。驚かしちゃって。…………でも、一つ聞いていいです?」
「なにか?」
「このご自宅に、木間塚克也さんという人物は御在宅しておりますでしょうか?」

 ――ドクンっ!
 警察の笑い声が、一切なくなった気がした。そして低い声で、克也を呼んでいるのだ。
 合わせていいものかどうか疑う。今は大人しい茂(克也)が自分の姿を合わせた瞬間に襲いかかる可能性だってあるのだ。
 それはとてもマズイ。身体がボロボロの状態の克也(絢子)が、何かの拍子で記憶を取り戻したら、すべてが気泡に消える。

「ええ。いますけど」
「今日はもうご帰宅なさっていますか?」
「いえ、まだ……」
「ほぉ……」

 松梅が子供用の靴を見ていた。しまったと絢子(茂)はすぐに発言を撤回した。

「いますけど!帰ってきたばっかで眠ってしまってますの」
「起こしてもらう訳にはいかないでしょうか?」
「息子には関係ないでしょう!いったいなんの権限があるんですか!!?」

 警察とはいえ、息子を起こす権利はあるはずがない!むしろ警察が質問している内容だって応えるのは自由のはずだ。黙秘権だって適用されるのだ。

「警察とはいえ、好き勝手なことされたら逆に訴えますよ街の安全のためと言って、わたし達の暮らしを脅かさないでください!」
「いやはや、これは失礼。……ですがね、絢子さん。息子さんに変わった様子はありませんでしたか?」

 今やすっかり変わってしまっている克也に何が変わったかなんて逆に分からない。ナニを聞きたいのか分からない。

「会ってないので分かりません」
「会ってない?いま息子さん、眠っていらっしゃるんですよね?」
「ですから、帰ってきてすぐ寝てしまったので、変わったところなんか分かりません!!」
「………ちなみに、息子さんが帰ったのって、何時くらいです?」
「学校から帰ってなんで、3時ちょっと――――っ!!!?」

 しまった。今や時刻は7時前。眠っている計算だとしても3時間半は眠っていることになる。遊び盛りの子供が3時から7時まで眠るわけがない。それよりも――

「ご夕食、なにか作られてます?」

 7時前だというのに、食卓のにおいが香らない玄関に、警察官としての鋭い洞察力が見えていた。
 マズイ。これ以上、なにか勘ぐられると、本当に何もかも見透かされてしまいそうだ。

「帰ってください!!もう十分じゃないですか!!いったいなんの真似です!?私と彼と、なんの接点があるんですか!!?」
「絢子さんではなくて息子さんの克也くんに一言聞きたいんですがね」
「帰って!何も言うことはありません!!」

 無理やりにでも帰らせようと玄関で男の胸を押し倒す。少しずつでも玄関から外に出ようとする二つの巨体が、遂に観念するように、「わかりました」と言った。

「わかりました。今日はもう遅いのでこれでお暇します」
「もう二度と来ないでください!」
「あっ!それじゃあ、最後に……これで最後です。質問させてください」
「……どうぞ」

 これで最後。
 その言葉に気を緩めたせいか、絢子(茂)の手が力なく松梅の背から滑り落ちていった。


「――あなた。……本当に木間塚絢子さん?」


 頭からつま先まで、全身に寒気が駆け抜ける。それはきっと、疑惑ではなく、核心を付いた蒼い瞳。

「ええ、そうです。私以外のどこに木間塚絢子がいるんですか?なんなら生年月日も応えましょうか?最近あった嬉しいエピソードでも語ってあげましょうか!?」
「ンー。それはそれで助かるんですが、身元が分かる証明証を見たいわけじゃないんですよ?別に私は機械じゃありません。私がずっと『見張って』いたのは、あなたのその表情ですよ。途切れ途切れに見せる素の表情はどこかあやふや。まるで本性を隠しているようにしか私には見えないんですよ」

「(この男……最悪だ。絢子の持つ記憶や知識なんかはじめから関係なかった。――こいつには『嘘』も『真実』も通用しない!)」

 絢子(茂)が引き出しを開けて読み解いていった情報、記憶が、実は松梅にとって自分が偽物だということを知らせていることを教えてしまった。
 会話の中じゃなく、目、口、舌、耳、鼻、手、仕草。その人の癖や嘘を付いた時の逃げようとする人の心理を逆手に取る鋭い眼球。鍛え抜かれた洞察力で、『真相解明』に逸早く到達する。
 機械ではなく、人間の会話。健全者だから故の最強の能力――

「木間塚絢子さん。ちょっと署まで御同行ねがいま――」
「くっ!」

 踵を返し、リビングへと走り去る。近づくとマズイ、ただ距離を取りたいがために放れた考え無しの行動。
 捕まるという恐れから後退してしまった、自分の不甲斐なさ。

「(バレタ?何故だ!?俺の成りすましは完璧だったはずだ!!?ありえない!こんな……バカな話が――)」
「ありえるかああああああ!!!」
「追いかけろ、明日香!!」
「(とりあえず、逃げる。今は逃げる。この家の外に出ればいい。『柔軟剤』さえあれば姿をくらますことなど容易い。玄関が封じられたら、裏口からでも構わない。
 警察を侮っていた。まさか追ってくるだなんて思わなかった。『柔軟剤』をもっている俺が捕まるなんて思ってもみなかった)」

 絢子の足でも、リビングまではそう時間はかからない。外に抜け出す窓も多く、裏口もある。追いつかれる前に逃げ出せる。敵は背後。出口は目前だった。

「ハッ、ハッ、ハッ、ハハハ……!ウハハハア!」

 残念だったな、警察もここまで。
 逃げられるのが昨今の警察の活躍だ。情けない、後一歩のところまできて脱走される。それがもう拭えないところまで来ている。
 一般的な認識。だらしない。それがお前ら警察のなれの果てだああああああ!!!

「じゃあな、警察―サツ―!俺には輝く未来が待ってるんだッ――!!」

 裏口の扉を開けて、はだしのまま駈け出す。がちゃりとドアが開いて道が開けると、目の前に突如現れた少女と相対した瞬間、視界が一瞬で真っ黒に染まった。
 輝く未来は、瞬く間に黒に塗りつぶされた。
 

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「ハァ……ハァ…!」

 もとは自分の顔、自分の姿。
 それがどんどん遠くなっていく。
 記憶も、情報も、知識も、全部なくなって空っぽになっていく。
 ただ、僕の意志のまま、お母さんを愛しているから自分の色に染め上げたい。
 そんな欲求が濃くなっていく。

「鼻息が荒くなっているぞ。もう堕ちるところまで堕ちたみたいだな」

 絢子が侮蔑に嘲笑う。男の子としての自我が芽生え、克也として絢子を見る目を憐れんでいる。
 近親相姦にとり憑かれた少年。叶わない恋をだと知りながら、敢えて一時の泡沫の夢を見させるように、絢子は僕に背をむけて、四つん這いになって大事な場所を見せつけていた。

      
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「さあ、仕上げよ。ここにあなたのおち〇ち〇を挿入れるのよ」

 花弁を広げて、イヤらしく艶めく穴の奥を見せつける絢子。既に絢子の園は濡れていて、それでも年甲斐よりも淡いピンク色しているヒダを広げて僕に大事なところを覗かせる。グロテスクで生々しくて、自分でもそんなイヤらしい格好したことないのに……、僕はとっても興奮した。
 見たこともない女性―じぶん―の秘部。こうなっているんだと感心するほど見せつけられて、つい僕の性器は興奮を抑えきれなかった。
 何度果ててもお母さんには敵わない。何度でも復活してはお母さんを僕の色に染め上げたい。

「っ!だ、だめ……!なのに、こんな……わ、たし……!!」

 絢子としての自我が抵抗する。絶対に挿入してはいけないと、頭の中で訴えかけて僕を苦しめる。
 でも――かなしいかな……克也の若さと、愛情と、性欲が抑えきれないし、なにより――

「克也!あなたのおち〇ち〇を私にちょうだい!克也で私の空いた心の隙間を埋め尽くしてええ!!」
「お、かあ・・・さん・・・・・・っ!」

 絢子に訴えかけられると身体が制御できない。
 それが克也の強く望んだことなのだと、私はこの時ようやく気付いたのだ。


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「え、ええ!?克也?克也、なの?」

 一瞬だけ見えた第三の男の声。息子とは違う、野太い声を私は聞いたような気がした。でも、それは幻聴よ。だって、克也でも私の知らない男でも、喋る声は私の喋る女性の声で響いてくるのだから。だから、私は男の行方を眩まされて捕まえることが出来ず、逆に私は捕まってしまったのだ。

「ウフッ。違うでしょう?克也はあなたでしょう?」
「ち、ちがうわ!私は絢子よ!」
「絢子は私でしょう?いまあなたが外を飛び出しても、誰一人あなたが絢子だって分かってくれる人はいないわよ?」
「――――っ!?」

 見た目で言えば私は克也。小学生の男の子。身分証に中身なんか関係ない。外見しか映らないのであれば、私は木間塚克也としてしか映らない。
 私が絢子と叫んだところで、『木間塚さん家の克也くんがおかしくなった』と近所の噂にされてしまう。
 それだけは絶対にさせてはいけない。

「そんな心配しなくても、もうすぐあなたが克也になるんだから心配しなくていいわよ?」
「そ、その口調……」
「だって、私がもうすぐであなたのお母さんになるんだから」

 私の身体に染まってしまっている。本当に私の目の前にいるのが自分であるほどにそっくりな口調になってきている。
 どんどん私の情報が移っていっているんだと怖くなる。早く元に戻らないと取り返しのつかないことになるのに、子供の力しかない今の私にとってあまりに非力だった。

「やめなさい!」
「一回イったばっかりなのに、もうおち〇ち〇こんなに硬くしてるのね。ウフ、とっても美味しそう。……ちゅば」
「ひぅっ!!?」

      
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 私の口が、克也のおち〇ち〇を咥えた瞬間、腰がビリビリと砕けるような強い刺激が駆け抜けた。これが男性の感じるフェラチオの味。女性のお口に性器が咥えられた瞬間、ねっとりとした温かさと、湿り気が包み込んで亀頭の先端を濡らしてくれる。
 それだけじゃなくて、女性が男性を見つめる表情、美味しそうにおち〇ち〇を咥えてイヤらしい音を出しながら顔を前後に振る姿がとても興奮して、舐められているおち〇ち〇が敏感になってカウパー液を溢れだす。

「ちゅ…ちゅぶぶ……つばっ…ンっ……あぁ、イヤらしい味が出てきた。先走り汁我慢できなかったのかしら?」

 耐久力も弱い克也の身体じゃ、絢子の行為を受け止められるほどの体力はない。もともと私も…エロい女の一人だったのだから。

「じゅるじゅる……はぁん…!おいひぃ。久し振りの男の人の味……たまんないわぁ」
「あっ…あっ…、ダメ……おかしくなっちゃうぅう!!」
「ン……じゅるるる……じゃぶじゃぶ……ぱぁ…。ン……お母さん、久し振りに熱くなってきちゃったわ」

 身動きできない私を寝かせて、そのまま舌で竿から掬いあげるように舐めとる。顔があがる私の顔が一瞬だけ見えるのがとても恥ずかしい。私が、私の性器を舐めているような感覚に陥り、まるで私は自分とのセックスをしているみたいだ。
 どうすれば私が気持ち良くなれるのかを熟知していて、私の弱い部分を狙い撃ちしてくる。克也のおち〇ち〇なのに、すっかり感じてしまった私に染まって、まるで成人男性のような亀頭を真っ赤に膨らませて硬くなった先端から、ドクドクと先走り汁を垂れ零していた。
 そんな私に、絢子は次の行動を開始した。私の身体を使って、大きな乳房を下から持ち上げて、乳肉を左右から寄せて挟むように、克也のおち〇ち〇を優しく包みこんだ。
 ――パイズリだった。

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 私は身体を奪われた。自分の身体を誰か知らない人が使っていて、私の身体でオナニーをされてしまった。
 空中で見ていた私の声は誰も聞こえることがなく、誰かに知らせないといけないのに、空中を泳ぐことのできない私ではどうすることもできなかった。

「(だれか……誰か助けてよ……)」


 悔しさで涙が止まらない。ぐちゅぐちゅに泣いて枯れた声に、私の精神はすっかり疲れきってた。
 友達は未だにトイレの外で遊んでいるかもしれない。不審に思ってやって来てくれることにかけて、私の不穏な動きを感じ取って警察に突き出してほしかった。
 ううん、そんなドラマチックな展開は望まなくてもいい。私の身体を無事に返してくれればそれでよかった。もう、宙に浮く存在なのがイヤだった。

「ふぅん…そうか。榎津路子―えのきづろこ―ちゃんっていうのか。路子ちゃん!聞こえるかいー?おーい!?」

 スカートのポケットから生徒手帳を取り出した路子が、私に語りかける。返事が聞こえるはずがないのに、呼びかける行為に、路子はきっと私の反応がみたいのかもしれない。
 これから私の身に起ころうとしている、不吉な予感。

「きみのカラダ敏感だね。なんだかとっても気に入っちゃったよ」
「(勝手なことしないで!私の身体から出てってよ!)」
「こう見えても、俺は奪った身体を大事にする人でね。処女を差しだすような真似だけは絶対にしないから安心してね!」
「(どの口が言ってるの!早く私をもとに戻してよ!)」

 聞こえていない私と、路子の身体を奪ったおじさん(私の声なのに、口調からして絶対におじさん)の一方的な会話。永遠とも思える話の食い違いに、いつまでたっても並行線を辿る。
 私は身体を取り戻したいだけなのに、私の身体を奪ったおじさんは、身体を返したくないって言う。どうしてそんなに我が侭な大人になれるのだろう?信じられない!
 でも、おじさんが私に仕出かしたのはそれだけじゃない――。

「でも、俺は処女は絶対に守るけど、処女を奪いたいっていう願望はあるんだ。だからね……」
「(なにをするの!?)」
「ふんっ――!」

      
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 私の身体でなにかを始めるおじさん。私の身体で力を入れると、急に私の身体が、ボコッて、お腹が異常なまで膨らみ始めたのだ。

「(ヒィィ――――ッッ!!?)」

 私の身体で起こる異常事態。なにが起ころうとしているのか分からず、ただ慌てふためくことしか出来ない。

「(なに……なにをしてるの!?やめて!!!私の身体がこわれちゃう!!)」
「ぉっ……とっとっ…うぷっ……ぶふぅっ……おっ…おおぅ―――!くる……くるぞ、ハアァァ!!」

       
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 路子が気合を入れると、そこには信じられないモノが、私の身体に付いていた。
 お腹が元に戻ったのに、わ、わたしの身体には……お、おち〇ち〇が……男性の性器が、秘部から生えていたのだ。

「ホワアぁぁ!!うまくいったみたいだな。これは俺の情報を溶け込ませ、細胞を形成させて作り出した模造品だ。だけど、本物そっくりの感度を味わえるし、痛覚や神経だって繋がっている。だから、これは路子ちゃんのおち〇ち〇なんだよ。嬉しいだろう?女の子なのに男の子の感覚が味わえるなんて」

 私の身体に生えたおち〇ち〇を、私の手で擦りながら大事そうに弄っている。私は男の子のおち〇ち〇なんか触ったことがないのに、下にいる私は自分に生えたおち〇ち〇を馴れた手つきで扱き続けていた。

「くっ、あぁん!私のカラダに、おち〇ち〇がついちゃったぁ!なに、これ、とってもキモチイイ~!男の子ってみんなこうやって扱いてるんだよね?なんだかとってもえっちな気分になってきちゃって、たまらなくなっちゃったぁ~!」
「(わ、わ、私の声でヘンなこと言わないで!!)」

 エロい表情を浮かべて私は必死におち〇ち〇をセンズリしていた。扱く度にどんどん大きくなるおち〇ち〇に、どれだけ私が感じているのか一目瞭然だった。成人男性みたいに大きくなる私に生えたおち〇ち〇。女子トイレで嬉々した大声をあげながら、包み隠そうともせずオナニーをする私。今まで誰かが助けに来てくれればいいと思っていたのに、こんな私の姿を見てほしくなくて、誰もやってこないでと目と耳を塞いで強い気持ちで拒絶した。

「ハァ…ハァ…わたしの手がおち〇ち〇扱いてるぅー。小さな手でおち〇ち〇扱かれると、くぅ~たまんね!ぅぅっ!ヤバイ、でる!!――――っ!!」

 私が腰を引くと、トイレの壁に精液をぶちまけて私は絶頂を堪能していた。女性ではなく、男性のオナニーでもイってしまったみたいで、満足気に大きな深呼吸をしていた。

「(もぅ、ぃゃぁ……)」
「ふ、ハァァ――!!!いっちゃった。いっちゃった。ふひひひぃ―――!」

 私は不気味な笑い声を浮かべると、一度吐き出したおち〇ち〇を隠すように、身に付けていたショーツを再び穿き、さらにスカートで覆い隠した後、上半身も学校指定の制服を纏った。
 私をトイレに残したまま、私の身体は元通りに着替え終わった。下にいる私は個室トイレから飛び出すと、備え付けの洗面所の鏡で身なりを整えると、もう一度だけ私に呼び掛けた。

「私は榎津路子。そろそろみんなの元へ戻らないと心配させちゃうかも。……くすっ、それに私のまわりの女の子ってみんな可愛く見えたしな。もし私の誘いに反応見せてくれた子がいたら、美味しく食べてあげようっと!しししし……!」
「(待って!行かないで!私を置いていかないで――!!……あぁぁ……うわあああぁぁぁぁああぁぁあ――――!!!)」

 はしゃいでトイレから出ていく私の身体に手を伸ばしても届くことはない。
 視界から私の姿が見えなくなり。消えていった私の身体に、悲しさが込み上げてきた。枯れたはずの涙が再び込み上げて、私の体内に残った水分を全部涙に変えていった。


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 私は目を覚ます。急に意識を失った私だけど、記憶を呼び戻した最後の光景を思い出し、ゾクッとした。

「……わたし…っ!そうだ。克也に変なジュースを飲まされて――?」

 その時に私は変な声を聞いた。女性の金切り声のように聞こえたその声は、どこか聞き覚えのある声でもあった。私はその声の聞こえた方に顔を向けた。すると、そこにいたのは、全裸で自分の身体を慰めている女性であった。
 でも、私は悲鳴をあげることもできなかった。悲鳴をあげたけど、声にならなかったというのが正解だった。だって、そこにいた女性は、紛れもない、私だった。
 木間塚絢子だった。私じゃない私が、自分の身体を弄って、乳房だけじゃなく、私の大事なところを手で弄って、愛液を零して悦んでいた。

「あぁん!また、いっちゃうううぅ!もう、クリ〇リスがビンビンで、痛いくらいなのに……とまらないわぁ」

 私の声で、成熟した身体を濡らしていることに、とめどない感情が押し寄せてくる。怒りにも似た声で私は自分に怒鳴りつけた。

「いい加減にして!!なにしてるの、あなた!」
「ふあっ……えっ?」
「あなた誰よ!?ふざげるのもいい加減に――――ごほっ、ごほっ」

 途中で言葉が続かなくなって口籠ってしまう。それに、なんだが私の声じゃないように聞こえる。私が目の前にいるのに、私は木間塚絢子であることになんも疑問を持たなかった。
 そのことを察して、絢子―わたし―は驚いた表情から一変、余裕を見せていた。

「わたし?わたしは木間塚絢子でしょう?見て分からないかしら?」
「ふざけないで!木間塚絢子はわた――ごほっ!ごほっ!」

 高い声が出ない。それに、この声は男性のように聞こえた。
 視線が今までよりも低い。それに、この服装、身なりが見え――冷静になってまわりを見れば見るほど、私は自分が大きな勘違いをしていることに気付き始めていた。
 まさか、わたし――今の私の姿は――

「違うでしょう?あなたは克也でしょう?」

 絢子が私にその現実を告げた。
 私は克也になっていた。

「ウソ……そんな、バカな話があるわけないじゃない……わたしが、克也になってるなんて……」
「アハハハハ!面白いこと言うのね!じゃあ、今の私はあなたが見ている夢の住人ってところかしら?……抓って見る?頬じゃなくて、ち く び を」

 私に自分の乳首を差しながら、嘲笑う絢子に愕然とする。夢であってほしいと願わずにはいられない、そんな現実。私が克也の姿になって、目の前の絢子―わたし―に嗤われている。じゃあ、私を嗤っている人物は一体ダレ……?

「………克也、なの?」
「ええっ?」
「そうなんでしょう、克也?あなた、そういえば、入れ替わりとかなんとか言ってたでしょう!?本当にわたし達入れ替わったの?だったら、早く元に戻しなさい!!」

 焦りから口調が強まってしまう。まるで、この悪夢を早く目覚めたい一心で克也に縋りつく。

「…………お母さん。なに言ってるの?」
「えっ」
「僕たち入れ替わったんだよ?それなら、お互いのことをもっとよく知る良い機会じゃないか!」
「克也、なに言ってるの!?」
「お母さんに僕の気持ちを知って欲しかったんだよ。僕、お母さんのこと大好きだよ」
「っ!!?」

 克也の本音がその言葉で一気に流れ込んでくる。克也が私のことを好きだという気持ち、克也にとって母親は一人しかいなく、本音を言えるのはやっぱり血を分けた実の母親だけだという想いが伝わってくる。
 でも、実の母だから絶対に付き合えるわけもない。人を好きになる想いと母親を好きになる想いを履き間違えてはいけない。
 克也の想いは間違ったものだということを伝えてやらなければならない。

「克也!……ハァ…っ!……あなたの、気持ちは……間違ってるのよ。おかあ、さんはね……克也の、恋人には……んっ…なれ、ないの!」
「えー?」
「あなたにはァ……っ!…ぜっ、たいにぃ……好きに、なってくれる人が現れるから……その人を、好きになってほしいの……おかあさんの、それが、ねがい……」

 想いを伝えると、克也の感情が私の脳に訴えかけてくる。克也の感情を逆なでしていることは分かっている。母親の手一つで育ててきた克也にとって、楽をしてあげたいという気持ちが痛いほど伝わってくる。でも、それはもう敵わないと私自身が分かっていた。愛していた旦那を事故で失い、空白の数年間をただ生きてきた私にとって、生きる希望が克也の将来を案ずることだった。自分の将来を克也に乗せることが私の生きる希望だった。

「だからぁ!克也には……おかあさん。幸せになってもらいたいの……私のことはいいからぁ……やりたいように生きなさい」

 克也が幸せになるなら、私は何年経っても構わない。私がおばさんになっても、克也が幸せならそれでいい。

「僕ね、いま凄い幸せだよ。だって、お母さんの身体になれたんだもん」
「ち、ちがうっ!克也!」
「お母さんのおっぱい揉み放題だし、お母さんの感じる場所、凄いよく分かる。うなじ弱いんだね?それに、Gスポット突かれるとすぐイっちゃうんだよね?お母さんの記憶から全部知っちゃった」
「私の記憶を覗かないで!」

 克也は私の宝物だから、大事に育ててきたはずだった。それなのに、克也の口から出る言葉は私の心をズタズタに切り裂いていく。裏切られたという感情より、どうしてちゃんと躾けてやれなかったという後悔の方が強かった。それはもちろん、私に克也を恨めという感情を持てということの方が無理だったから。
 それでも、克也は私の大事な子供だから。

「勘違いしないで、お母さん。……いいえ、克也。あなたはいま克也なのよ」
「――っ!?」

 釘をさすように私に語りかける口調が、どんどん絢子そのものになっていく。きっと私の記憶を読んでいるに違いない。その喋り方や抑揚はまさに私そのものだ。そんな私の身体と声を使って、再びゆっくりと克也は私の身体を擦り始めた。

「あんっ……克也。あなた、お母さんのオナニー見たかったんでしょう?……いいわよ。今日はじっくり見せてあげる……んっ……」

 突然私の身体でオナニーを始める克也。その光景を前にして、私は言葉を失ってしまった。


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「あ・・・あ・・・」

 下校時に関するおしらせや、町に配られる回覧板、はたまたお母さんからの話の中でもよく言われていた。
 知らない男の人には付いて行ってはダメだって――。
 私はもちろん、そんなこと当たり前で、知らない男の人がお菓子をあげようとしても付いていかないぞという強い気持ちと自信があった。
 そしてなにより、そんなことに私が引っかかるはずがないとばかり思っていた。

 でも、現実は――いま私は知らない男の人と二人きりにされている。
 場所は知っている公園で、すぐそばには私の友達が大勢遊んでいる。私も一緒になって遊んでいたけど、おトイレに行きたくなって、一瞬だけみんなと放れただけなの。
 そしたら、その人は私を誘拐するみたいに駆けこんできて、私を個室トイレに連れていくと、鍵をかけて密室にしてしまった。

 ガクガクと、震える足。言葉も出ないほどの恐怖が身体中に押し寄せてくる。
 知らない男性に付いて行ってはダメ、というのは――知らない人と二人きりになってはいけないということだったのだと私はその時になって痛感した。でも、私は子供で、男性の力に敵わない。男性に引っ張られてしまったらどうやって逃げ切ればいいのか分からなかった。

 怖い……怖い…
 目に涙がたまって視界が歪む。男性はなにも言わず、私の口を塞いだまま固まっていたけど、ふと片手をポケットに忍ばせて、栄養ドリンクのキャップを器用に開けた。

「飲め」

 男はそれだけ言った。私に飲ませようとしているのが分かっても、お菓子だってもらいたくない私は嫌々と首を振って要求を拒絶した。

「良いから飲めって言うんだよ!!!」

 男の苛立ちの声が女子トイレに響き渡った。その声に友達が気付いてくれればいいなと思っていたけど、その前に私の口の中に、栄養ドリンクの中身が流し込まれる。

「ふうぅぅ――――!!?ん――――!!ん゛ぅぅぅ―――!!!」

      
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 飲みたくない液体を身体に入れないようにと、必死に暴れて口をきつく締めて抵抗する。でも、男性が私の鼻を抑えてしまうと、息が出来なくなってたまらなくて、口を思いっきりあけてしまった。その瞬間に栄養ドリンクが私の口の中に押し込まれて、ドクドクと液体が体内に流れ込んでいった。

「ぐがぼっ!!?ごぼごぼっ!!!?……くっ……ごくっ…んぶぶぅ!?」

 マズイ…。失神するほどの強烈な味が口の中に広がっていく。胃液が込み上げてくるほどの気持ち悪さに襲われて、私は目の前が真っ白になった。

「……んっ……んぅ……ん…ごく……ごく……」

 私が意識を失う頃には、暴れていた私が態度を変えて、落ちついたようにドリンクをゴクゴクと飲みほしていった。
 そしてドリンクが空っぽになると、しおらしくなった私が眠るように目を閉じていた。
 まるで、人形のように眠る私を――客観的に見ている私がいた。

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「うふふ、ふ、ふひひひひ……」

 自分の胸を揉みながら笑いが込み上げる絢子だが、その表情は下品なものに変わっていく。
 今まで浮かべたこともない邪推な笑みは、絢子でも、絢子を大好きだと無垢で純粋な子供心をもっている克也が浮かべているものでもなかった。
 大人になって成人し、汚れた心をもってしまった第三者そのもの――

「やっぱり人妻はいいよな。おっぱいはでかいし、魅力ある。年頃の女だ、やっぱり一番栄えるよな」

 自分の顔を見ながら、ニヤニヤと感想を漏らす。たとえ、下卑た表情を浮かべようと、元が整っている絢子の表情なら、どんな表情であろうと美しくなる。
 真面目に生きていた絢子が浮かべられない表情を自分がしていると思うと身体が震えた。そんな表情を浮かべるんだと、客観的な感想を述べて気絶している克也に視線を向けた。

「奥さんがまだ美しくて嬉しいよ。俺のもとに近づいてきた子供と入れ替わった時、奥さんがいったいどんな人物か正直怖かったけど、会ってみて全然手を出せるほど見た目が衰えてなさそうだったからよかった。やっぱり、入れ替わるなら美人と入れ替わりたいからね」

 絢子の身体を手に入れた男性、金子茂―かねこしげる―。彼もまたエムシー販売店から『柔軟剤』を手に入れ、自由自在に『スライム』化になることができた。
 克也と違い、自分に人生に何の未来もない茂は自身を『スライム』化させ、他人の身体に入り込んでは意識を奪い、他人身体を弄ぶことに快感を覚えていた。
 自分の身体では味わうことのできない快感を他人で味わう満足感。特に公園で遊んでいる子供の身体から味わう快感は、繁が忘れていた新鮮さと強烈な刺激に病みつきになるほどの支配感をもらっていた。
 そんなことを繰り返していた茂だったが、子供では未だ感じ方に変動され、とある子供の場合では未だ弄ったことがないのか、まったく感じないという子供までいた。
 毎回、最高潮の絶頂を味わいたいと思うようになっていた茂が次の標的にしたのは、その子供たちを生んだ母親であった。
 子供と違い、成人した大人の身体にも興味を示し始めていた。魅惑の肉体を持つ新妻こそ次の恰好の標的だった。
 それならばと茂が考えたのは、その子供の状態で近づき、油断させている頃合いを見計らっての略奪だった。自分の子供がまさか、茂と入れ替わっているとなど夢にも思っていないだろう母親が裏切られる瞬間に見せる絶望こそ、茂の待ち望む幸福だった。

「俺と同じ絶望に落としてやる。こんな社会が全部悪いんだ!!」

 茂もまた結婚を望んだこともあった。妻をめとり、子供を作り、子供に自分の夢を乗せて毎日仲睦まじい家族で幸せに暮らしていく――。
 そんな人生設計を夢見ていた。
 でも、実際はどうだ?合コンに行けば相手と話が合わず、婚活に行けば相手の理想が高く、連戦連敗の日々が続く。そうやって自分の理想の相手を見つけるまで何度も顔を出しては負け戦。気付けば40歳の年まで足を付いていた。
 自分が売れ残りになるなんて思ってもいなかった。一人身で親からは見放されていくストレスに頭もどんどん薄くなっていく。
 なのに、同年代はどんどん結婚していく。焦りが募っていくことに居た堪れない茂にとって、独身貴族という道しか残っていなかった。
 それが自分の望んでいたものではなかった。でも、それしか道は残されていなかった。
 自分は悪くない。自分の望む相手がいない、社会が悪いとするしか生きていけなかった。
 茂もまた純粋だった。純粋だからこそ、どこまでも悪に染まった。

「おじさん?どこか具合が悪いの?」

 気をかけてくれた子供が近づく。茂の心臓が高鳴り、『柔軟剤』を持つ手に力が入った。
 一度は子供が欲しいと思った理想に届かなかった。だからこそ、子供に復讐するという無差別の理念が生まれた。
 どんな子供だろうと、穢すことを躊躇わない。届かない理想は邪魔なだけ。自らの手で汚すことで、自分の思い描いた夢物語を見せたくないという羞恥心が茂の行動を加速させていく。
 そして茂が真面目な人生から転げ落ちていくのはあっという間だった。

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 ※この作品は、『GG『柔軟剤―反抗期―』』の番外編にあたる作品です。先にお読みいただけると楽しさもさらに増幅することでしょう。

 木間塚克也―きまつかかつや―は裸になっていた。それはもちろん、お風呂に入るためだ。服を脱いで裸になると、シャワーで水が噴き出ている音がする浴室へと忍ばせて侵入していった。
 電気がついている浴室では、シャンプーで頭を洗っているため、顔を俯いている大きな背中が正面にあった。茶髪のショートヘアーを洗いながら、日々の汚れを落とそうとゴシゴシと洗っている、母絢子―あやこ―がいた。
 克也は絢子の背後にいる。びっくりさせようというつもりらしく、未だ一言も会話を交わさない親子。
 やがて、絢子が髪の毛についた泡を落として顔を正面に向けた。水に濡れた髪の毛としっとり湿った肌は、子持ちとは思えないほど美しく見える。
 克也にとってもまた同じで、絢子の肌を見て十分立派な若づくりをしている母親を尊敬していた。
 たまらず克也は絢子の身体に抱きついた。

「きゃっ!?」

 悲鳴ともとれる絢子の叫び声。しかし、抱きついた相手が克也だと知ると、すこしばかり安堵の表情を浮かべていた。

「克也!?どうしたの、いったい?」
「お母さん。僕が身体を洗ってあげるね」

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 息子が母の身体を洗おうとスポンジに石けんを付けて泡だててから肌に擦りつける。忽ち、絢子の肌から泡がこべり付いていく。
 息子がゴシゴシと身体を洗ってくれることに対して嬉しく思う絢子の思いとは裏腹に、それでも男性が母親の身体を洗わせていいものかという、不安な気持ちを表す表情もうかがい知ることが出来た。
 マザコンになってはいけないと、敢えて絢子は克也を突き放すように冷たく言い放った。

「お母さん、克也の行為は嬉しいけど……もう大丈夫だから」
「どうして?僕がしっかり綺麗にしてあげるよ」
「いいわよ。お母さん、自分で洗えるから」
「本で読んだんだけど、女の人って、ココを洗ってもらうと喜ぶんだよね?」

 そう言って、克也がすっと正面に手を回して、絢子の秘部へ指を掻き混ぜていく。突然蠢く克也の指使いに、慌てて絢子はその手を払いのけた。

「ちょっと、克也。そんなところを触っちゃ駄目でしょう!」

 女性の大事なところを触ったことに対して、母親ではなく女性として克也を叱りつけてしまう。克也は自分の息子だ。まだ子供とはいえ、性の目覚めを覚えたばかりのはずの克也が、女性の身体に興味を持ち始める時期なのは分かる。しかし、それでもやっていいことと悪いことの区別はつけなければいけない。

「お母さんだから許されることよ。絶対に外でやっては駄目。女の子を傷つけたら男性失格よ」

 しかし、母親として言えることはそれだけだ。子供だから親の見えないところでなにをしているのかわからない。克也が最近になって急に絢子の身体を女性の身体として見始めていることに気付いてきた。まるで撮影されているかのように克也の眼が絢子の身体を舐めるように見ていることもあった。それを気持ち悪いというわけではないが、もしクラスメイトの女の子に同じようなことをしていたらと思うと叱らなければいけないことであった。
 克也が道を踏み外す前に、踏みとどめる為に叱るのだ。

「大丈夫だよ、お母さん。僕はね、お母さんにしか興味ないんだ。僕、お母さん大好きだから!」

 最近になって聞き分けのいい克也に対し、嬉しい半面怖いとも思えてしまう。
 言う事を聞かないでゲームをしていた方がまだ子供っぽさがあったと思える。反抗期をなくして、親の言う事を聞き続ける克也にとって、「それでいいの?」と疑いたくもなく親の心配もある。
 とにかく、子供の親というのはそれだけで難しいことなのである。
 一見すれば、子供が母親を慕ってくれているように捉えられるはずの言葉なのだが、行き過ぎて聞こえてしまうのだ。
 まるで本当に絢子を愛している男性のような声で告白している気がするのだ。
 親子を超えて男女の仲になることは出来ない。それが社会の鉄則だ。しかし、幼い克也にとってそれはまだ分からないことなのだ。
 いくら絢子が怒ったところで、手に入らないモノでも手に入れたいという射幸心を克也が抑えられるはずもない。

「僕、色々経験して分かったんだ。お母さんがやっぱり一番ってこと。僕のことを面倒見てくれるのはお母さんだけだよ。だから僕は、お母さんを知りたいんだ。お母さんが僕のことを分かってくれるように、僕もお母さんのことを知りたいから。お母さんに心配や迷惑をかけてきた僕だけど、親孝行として僕はお母さんの全てを知りたいんだ――そのための道具を出してよ!」

 克也は、エコーのかかった浴室で想いをぶちまけた。そして、その想いが叶えられる日が来るのだった。

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