純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『スライム・寄生』 > 柔軟剤『反抗期』

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 ベッドの上で繰り広げられる母親たちの愛撫。
 今まで味わったことのない快感の波に、克也は成すがままにされていた。

「はむ…んぐぅ…じゅるじゅる、ちゅぱっ……どお、克也?きもひいい?」
「う、うん……はぅっ!」
「んもぅ、こんなにおち〇ち〇ガッチガチにして、立派な男の子になってお母さん、嬉しいわ」
「でも、克也はまだ私にとって子供よねえ?んふふ、おっぱい欲しいでしょ?…舐めていいわよ?お母さんの乳首好きにして」

 どの女性も克也のためにあの手この手を使って快感をのし上げる。
 女性の身体に触れるだけでこんなに気持ちいいこと、自分の下半身が素直すぎて性欲が抑えられないこと、克也にとって新鮮であり、刺激的であり、女性が男性に従僕する行為がこんなに素晴らしいことだったなんて知らなかった。

「(ああ、これがきっと、『前菜』っていう奴なんだ。セックスの前にする、大人の遊び……)」

 大人たちが病みつきになる、セックスの前哨戦。男性も女性も快感を高めて気持ち良くイクための下準備。
 克也だってそのくらいの知識を聞いたことがある。そうやって生まれたことも克也はクラスメイト達の話から聞いたことがあった。 
 でも実際、本当に行われていたのか知らなかったために、女性たち三人が自分の身体を弄りながら戯れる光景を見て、驚きと愕きの入り混じった表情を拭えなかった。

「(だって、僕は……こんなこと、望んでいなかった……)」

 大人になりたかったわけじゃない。家出をしたのは、絢子から指図を受けたくなかったから。
 ゲームをしたかったから。
 自分の時間に邪魔が入ってほしくなかったから。
 セックスを知りたかったわけじゃない。今まで味わったことのない快感を知って、ゲームなんかよりも堕落するものを、克也は知ってしまった。

「(この快感は、人を堕落する――っ!)」

 そしてそれは、今まで心地良かったもの全てを否定する。
 ゲームをしている自分にとっての至福の時間――RPGによるキャラクターになりきって敵を倒すその快感、自分が強くなったと勘違いするその惰性――俺最強、という過度な自信と怠惰な現実。

「(僕、ようやくわかった……お母さんの言っていること。――僕は子供だった)」

 我慢するところは我慢する。それが絢子の言っていたことだ。
 ゲームはゲーム。食事は食事。その割り切りが出来なければ何時までたっても食事が片付かないと絢子は最初から言っていた。
 物事は終わらなければいけない。克也の家出だって 必 ず 終 わ ら な け れ ば な ら な い 。
 絢子は今でも食事を終わらせることができずに家で待っている。克也の家出―ゲーム―が終わらなければ片付けることだってできないのだ。 

「(早く帰らないと。お母さんは……僕のお母さんは、たった一人だ!!)」

 克也は大好きなお母さんのもとへ帰る。間違いを経験してわかる親の苦労。
 絢子だって我慢してきたのだ。女手一つで克也を育ててくれた苦労に、いったいどれだけの我慢をしてきたのか測り知れないから。

「(ごめんなさい、ごめんなさい……お母さん。僕は……ぼくは――!)」

 『スライム』によって浸食された『母親』たちからの解放を望む克也。
 自ら作り出した『母親―りそう―』は、理想に還らなければならない。理想は幻想。――絶対に理想通りの母親がこの世にいるわけがないのだから。
 だからこれは、一夜限りの幻想遊戯。克也が作り出した理想に、現実とはいかにツマラナイことかと知る実体験。
 絶望と羨望を飲まされながら、それでも事実を知って予定調和の器に収まることに対する幸福を味わう。
 過度な希望はいらない。母親が可愛くなくても、すぐに怒って怖い性格ても……自分を産んだ母親であることに誇りに思おう。


「んぐっ――!!?」

 克也の目が見開いた。ドクドクと、いつの間にか自分の下半身からは大量の精液が滴り零れていたのだから


「あらあら。こんなにいっぱい出して。身体は正直ね」
「美味しそう。ぢゅ、ぢゅるぢゅる……ぢゅるるるるる~!!」
「ふぐぅ!!ん、んぐぐぅぅ!!!?」
「ああん、暴れないで。乳首が歯に擦られちゃう~!」

 とはいえ、子供の克也。
 恥ずかしい話ではあるが、克也はこの後もうしばらく、この快感からは脱出できなかったのだ。
 格好良いことを思っていながら、自ら作り出した理想に勝てるほどの強靭な精神も体力も持ち合わせていない。
 三人の母親が克也の精液を最後の一滴まで啜りとった後、寝静まったのを見届けてからこっそり逃げる様に家に帰ったのだった。
 ――やり逃げである。

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 スパを出た三人。家出中ということを旨を伝えた克也に、

「あらっ、じゃあ家に来なさいよ」

 笑顔で克也を家に案内する麻衣。

「いいのよ。だって克也は私の子供のようなものだから」
「あらっ、子供なんていらなかったんじゃないかしら?」

 克也と出会ってから考えが180度変わっている麻衣を指摘する敦美。子供がいるのも満更でもなさそうな表情で微笑む麻衣。

「私も子供がいたらこんな感じになっているのかしら?」

 母性愛に満ち溢れている麻衣。克也の手を握って歩いているのが微笑ましく、時々ぐいぐい引っ張って家に強制的に連れていく。
 克也にとって逆に怖くなっていた。

「ここが私たちのお家よ。ただいま~」
「おじゃましますー」

 麻衣だけじゃなく、敦美まで玄関を上がっていく。まるで二人きりにしないように監視されているみたいだ。

「どうして敦美まで家に入ってくるの?」
「どうしてって、そんな無碍にしなくたっていいじゃない。私たち親友でしょう?」

 親友よりも家族を優先する麻衣。あまり気が進まないも、早速克也のために料理を作り始めた。
 一人暮らしだけあって料理はお手の物。すぐに簡単な惣菜を作っては克也の前に並べていった。

「遠慮しないで、どんどん食べていいのよ。いまお味噌汁も作ってあげるからね」
「信じられないわ。麻衣ってこんなに料理が上手だったんだ」

 敦美ですら感心する麻衣の手料理。普段やらないだけでいざとなれば料理が出来ることを証明している。
 味噌汁だけではなく、焼き魚まで拵えてお皿に並べた麻衣は、一息つくようにして椅子に座った。

「あらっ、食べなくて待っていてくれたの?」

      
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 麻衣が横に座り、緊張している克也に寄り添うと、さらに克也は身を強張らせた。
 びっくりしているというよりも――、『柔軟剤』で、本当に克也のことを子供同然のように扱う女性たちに逆に戸惑ってしまっていた。
 『自分の理想の母親像』を飲み込み、忠実に再現する二人の女性。
 子供に対して怒らず、優しく手となり足となってなんでもやってこなすスーパーマザー。

「克也くん。はい、アーン」

 箸でご飯を口に運んでいく敦美。そんなこと自分で出来るのに、克也は言われるままに口を開けてご飯をもらっていた。
 まるで、人間性を失っていくようだ。
 なんでもやってくれるのは、それは楽かもしれない。自分はただ何もしないで待っているだけで、全てを済ませてくれるのだから。
 だが、それが克也本来のあるべき姿じゃない。
 ゲームをしたいし、ご飯も自分で食べれる。家を飛び出してのだって、『なにもしない』ためじゃなく、『なにかしたい』ためだから。

「い、いいよ……自分で食べれるよ」
「そんな強がっちゃって、んもぅ、可愛いんだから」

 なんでも笑って許す麻衣と敦美。絢子と決定的に違う要素――。

「克也……チュ」

      
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 突然、キスを迫られた克也。子供の力で振り払えるわけもなく、麻衣と唇を交わる。温かい麻衣の舌使いと甘い吐息が、克也の表情を蕩けさせる。

「んはっ……チュ……んぅ…はっ……ちゅ、ちゅぅ…ちゅるぴちゅ……くちゅ…んふぅ」

 どの食事よりも美味しく、甘い麻衣の舌の味に、たまらず克也も舌を交わらせた。動かしているのは自分なのか、それとも麻衣の舌使いに動かされているのかは定かではないが、射精を覚えたばかりの克也はまた下半身がキュッと疼き始めているのを覚えた。

「克也ったら、そんなにキスが好きなの?お顔を真っ赤にして感じてるのがバレバレよ」

 敦美にからかわれながらも、さらに二の腕に豊満な敦美の胸が押しつけられるのがわかった。両側から乳房で身体が潰されて肩身の狭い思いをしながらも、窮屈な中でも十分満足する幸せを感じていた。

「(……でも、やっぱり、何もしないのって楽だよね?)」

 堕落していく克也。
 と、その時――ピンポーンと、家の鐘が鳴る音が聞こえた。克也だけじゃなく、麻衣ですらその音に敏感に驚き、「こんな時間に誰かしら?」と玄関へと向かっていった。


 しばらくすると、小さな驚きと供に麻衣の悲鳴が聞こえてきた。


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「いいの?スミちゃんを一人にしておいて」
「あらっ、誰だって息抜きは必要よ。私だって『たまに』しか出掛けてないんだからこういうことしないと息がつまっちゃうわ」

 田中敦美―たなかあつみ―と牛山麻衣―うしやままい―は衣服を脱ぎながら会話を弾ませていた。
 親友とはいえ秘書と巫女でなかなか会う機会もなく、今回はお互いの悩みを吐き出しながらの談笑に一日を使っていた。

「お互い、苦労するわね」
「麻衣は早く結婚しなさいよ。年もギリギリなんだから」
「敦美が早すぎるのよ。スミちゃん、何歳だっけ?」

 敦美は若くして結婚して子供もいる。敦美は娘の年齢を聞かれて答える。

「15歳よ。あの頃は黙っていても男が寄って来たものよ」
「敦美はいつも男が付いて回っていたからね。巫女さん様々よね」
「今も毎日足を運ぶ男性がいるわよ!」

 裸になり、年をとっても美しいプロポーションを見せる敦美。決して若くなくても劣っていない大人の魅惑を持つことをアピールしていた。
 麻衣にしか見せない敦美のはっちゃけぶりだ。

「私はもう子供諦めてるし、いいんだもん」
「秘書やってるのにもったいない。今の社長とくっついたらいいじゃない?40歳前半の若いイケメン社長じゃない」
「えー」

 柔らかくはぐらかして誤魔化す麻衣。社長と結婚することは秘書は考えていないのか。仕事から、他人からでは想像もできない部分を視ているのだろうか。あまり乗り気ではなかった。

「社長の奥さんなんてなったらそれこそ大変よ?」
「そうかしら?お金ありそうなのにね」
「そうね……私、結婚するなら普通の生活をしている人と結婚したいわ」

 切実に、麻衣はぼそりと呟いた。
 子供は出来なくても、未だに結婚願望は持ち続けている麻衣にとって、普通の結婚がいかに難しいことかを知っている。
 仕事もそれなりの地位にいる麻衣にとって相手に臨む年収も高い。一人で生きているだけの収入を稼いでおり、結婚に対するメリットが昨今少なくなってきている。
 男性と同じだけの収入を得られるようになり、夜でもコンビニが開いて、ファミレスが開いており食事も困らない。
 家庭に入り相手のために食事を作る手間もいらない、花嫁修業なんかしなくてもいい。生きていくうえで一人暮らしが実質最強だ。
 ストレス、不満をわざわざ被って結婚する意味がない。それでも世間体として結婚をしなくちゃいけないなら、相手に求める理想は、自分の理想通りじゃなければ気が済まない。
 ――それが、今の麻衣の『普通』の結婚なのだから。

「また、いい相手が見つかったら連絡してあげるわ」
「長い目で待ってるわ」

 裸になった二人が湯船に浸かる。温泉の効用が身に浸み渡るのを感じていた。

「気持ちいい」
「でしょう?あまり知られていないのよ」
「良いところ教えてもらっちゃったわね」

 身体の芯まで温まるまで入る二人。今までの疲れや苦労が汗と一緒に洗い落とされていく気がした。
 スベスベになっていく肌。毒抜きをしに来たとはいえ、尋常じゃないほど肌がスベスベになっていった。

「…敦美。このお湯おかしくない?」

 まるで温泉ではなく、オイルのような滑り具合。肌がまるでお湯と同化していくように溶けだして言っている気がして、麻衣はお湯からあがろうとした。

「ん……?あれ、身体が動かない……っ!?敦美!!」

 麻衣が異常を訴えて敦美の名を叫ぶ。しかし、敦美は既にお湯の熱さに顔まで赤くなっていた。
 温泉から出られない。常に45℃で保たれている温泉から出ることのできない二人は、汗をドクドクと流していった。一種の脱水症状だ。

「そんな、どうなってるのよ!?ダレか…誰かいないの!!」

 摩訶不思議な現象に遭遇し、生命の危機に瀕している麻衣の叫びは、あげればあげるほど自らの体力を奪っていく。敦美の顔は真っ赤から真っ青に変わっていき、まるで体内の水分の最後の一滴まで蒸発したかのような絶望の色を浮かべたまま意識を失った。

「あつみ……うぅぅっ――!」

 必死に抵抗していた麻衣ですら、熱さと恐怖に勝てずに汗を流しては自らの水分をなくしていった。
 そして、

「うぇぇぇっ――!!」

 嗚咽をあげながら嘔吐し、水分をすべて出し切った。温泉に入りながら、干乾びる二人の姿を、温泉に混ざった『スライム』は黙って見届けていた。
 姿なき『スライム』は二人の骨と皮だけになった憐れな姿を解放し、お湯から波打たせて床に転がした。水分を失い、体重もなくなった二人の身体は、波に流されて洗い場にまで押し流されていった。
 そして、ゆうに50人は一緒に入れるであろう湯船のお湯が、一つの固まりとなって飛び出してきた。ブクブクに太った『スライム』の本体であり、お湯が流れる限り無尽蔵に増幅し続ける。
 『スライム』は二人の干乾びた身体に近づき、無意識に開いた口の中へと自らの身体を分離し押し入っていく。失った水分の代わりに、自らの水分を与えるようであった。
 二人の身体に入る『スライム』。喉を鳴らしながら胃の中に落ちていくと、二人の身体が再び元の身体へ膨らみ始めてきた。
 太ったのではなく、再生するように元の姿を取り戻していく。熱もなく、表情はまるですっきりしたように、白く瑞々しい肌持ちをしている二人は、完全に元の姿へと戻っていった。

「……」
「……」

 身体を起こした二人は、顔を見比べて互いの安否を確認する。声をかけるでもなく、ただ視線を混じらせてニヤリと笑みを浮かべる。そしてすっと立ち上がった。

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「あーあー。私は牛山麻衣。38歳独身」
「私は田中敦美。38歳。子持ちのバツイチ」

 独り言のように自己紹介を呟きながら、自らの情報を確認していく。

「……変更。一児の母親。『私は木間塚克也の母親』」
「同じく、『私も木間塚克也の母親』」

 優しく、世話好きで、子供の為に尽くす母親像を植え付ける。克也の手に入れた『柔軟剤』から作られた『スライム』には、認識を変化させる要素が含まれていた。
 そして、二人は完璧に『木間塚克也の母親』だと誤認させたことに成功すると、我に返ったように意識を取り戻した。

「私……大事なこと忘れてた」
「私もよ。克也もお風呂に入れないとね!」

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 二人は顔を見合わせて笑いあうと、まるで今までずっと一緒だったように温泉から出て脱衣所まで引き返した。
 そこには、克也がじっと待っていた。二人が呼びに来るのをずっと待っていた。
 二人は克也の顔を見て安堵した表情を浮かべていた。

「克也。あなたを置いていってしまってごめんなさいね」
「私たちと一緒にお風呂入りましょう。綺麗にしてあげるから」

 今まで出会ったことのない美人からお誘いを受けた克也は、すぐさま身に付けている衣服を脱いで裸になった。



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「いい加減にしなさい、克也!」

 木間塚克也―きまつかかつや―がゲームを一向にやめないことに、母絢子―あやこ―が怒鳴っていた。

「食事が片付かないでしょう!」
「あとで食う!」
「みんなで食べるのよ!どうして自分一人だけで食事しようとするの?降りてらっしゃい!」

 小学生の克也にとって、ゲームが楽しくて仕方がない。三度の飯よりゲームができればそれでいい。
 家族と食事することなんか別にどうでもよかった。
 むしろ自分の時間を奪われることの方がイヤで仕方がなかった。

「うるさいなあ。……そうだ、家を出よう」

 既に一人暮らしを計画する克也。それは、単に親の指図を受けることの苦渋から解放されることだけを望んでいる。持っていくものはとりあえずゲーム機という、プチ家出計画である。

「きっと外に出れば僕のお母さんより素敵な人がいるに違いない!あんな怖い母さんと暮らしていくなんて耐えられない」

 全財産とはいえはしたお金を持ち、リュックサックに入るだけの着替えとゲーム機を詰め込んだ。
 忘れ物がないことを確認して、克也は外に飛び出した。

「待ちなさい!」

 ドアの音を聞いて絢子が出てきたのか、克也が振り向くと「なにをしているの?」と既に怒っている表情で無言の圧力をかけていた。

「どこにくの?」

 絢子が聞く。

「僕はこれから出ていきます。探さないでください」
「独りで暮らしていく気?そんなこと出来ると思っているの?」
「できる、できないじゃない。やるか、やらないかだよ!」

 頭で考えるより行動で示そうとする。絢子は愚かだと思った。

「バカなこと言ってないで家に入りなさい」
「もう僕は決めたんだ!お母さんのいる家には住まないって」
「なっ!」
「うるさいんだよ。お母さんは自分の言うとおりにしないと怒ってみせる。僕の言うことは聞いてもくれないじゃないか」
「当たり前でしょう、親なんだから」
「ただ生まれたのが先のだけでしょう?僕が生んでほしいなんて言ったわけじゃない」
「克也!!!」

 これ以上ないほどの剣幕で克也を怒鳴りつける絢子。今すぐに我が子に手を出したいという衝動を、絢子は歯を食いしばって堪えていた。

「そんなこと言うなんて……お母さん、かなしい」

 なに不自由なく、女手一つで育ててきたつもりだった。それでも、子供はそんなことを知らずに平気で親を傷つける。苦労、努力なんて見えない。母親はまったく報われない。

「そういう風に育てたのはお母さんでしょう?僕はお母さんのいいなりにはならない。だから僕は家を出るんだ。お母さんよりも優しい人がきっといるはずなんだから」

 ――バタンと扉が閉まり、克也は夜の外へと飛び出していった。家の中の温かな食事が冷めていく。
 絢子は克也の消えていった扉をずっと見つめていた。

「……勝手にしなさい」

      
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 絢子が覇気のない親の言葉をボソッと扉の奥へと投げかけた。


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