『エムシー販売店』から送られてきた『人形』には一体、なにも描かれていないコピーロボットのような『人形』がいる。そいつの鼻に触れた人物を『人形』にして、その人物の人形の鼻を触れたものと人形の姿を入れ替える。
 それが『人形』の効果である。
 しかし、それとは別に『人形』には既に『人形』のカタチとなった人物が付属になっている。ようは試用として鞄―ボックス―の中に数十体の『人形』が付いているのである。
 鞄の中身を見てみると、デフォルメされた『人形』たちが置かれていた。『人形』というより二頭身のキャラクターのようだ。

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「えっと・・・本当にこれが人間のカタチになるのかよ?」

 モノは試しと俺は一体鞄の中から可愛い人形を取り出す。救急箱をもった若い女性の『人形』だ。

「しかし、『人形』というより、ほんとうに人間の肌触りがして返って不気味だ・・・」

 精巧につくられた商品は精度も高く、質も良い。商品にはやはり高度な技術が必要だ。しかし、『人形』に限っては違う気がする。これほどまでに精巧につくられると、『人形』の向こう側に人間が見えてしまう。『フィギュア』として飾っておけるほどの出来栄えが『人形』にとって一番あるべき姿だ。ここまで人間そっくりに作られてしまうと、手にしたお客は逆に引いてしまうのではなかろうか。・・・俺は少し引いてしまう。

「試用品だろ?まさか、このままの姿で変身できるのだろうか・・・?そんな、まさかな・・・」

 『人形』と姿を入れ替えるとはいえ、いったいどんな姿に変えられるのかわからない。身長や体重はどうなってしまうのか、説明書に書いてあっても実際入れ替わってみないと分からないものだ。
 遂にこの時が来た――。俺は『人形』の鼻を押してみた。
 ポチッと鼻がスイッチのようになっていて、若干へこむのかと思ったが、当然鼻も骨格があるように先端だけが軽くへこんだだけだった。しかし、次の瞬間、女性の『人形』が光ると、その光は自分にまで伸びてきた。『人形』の光りに包まれた俺はどうなってしまったのか分からないまま、しばらく固まっていると、光が消えて『人形』の姿が戻ってきた。
 俺の手にしている『人形』は、先程まで俺が持っていた女性の『人形』ではなくなっており、つい先程まで俺の格好をしていた男性の『人形』に入れ替わっていた。
 彼女の『人形』がなくなってしまったのだ。俺は驚いた。そう、驚いたのは彼女の人形がなくなったからだけではない。
 俺の姿が『 人 形 』 に 奪 わ れ て い た からだ。
 どこから見ても持っている『人形』は俺の様、俺の格好、俺の容姿だ。 
 俺を『人形』にして忠実に再現したらこんな『人形』になるだろうという出来栄えだ。俺をコピーした『人形』はなにも言わずに俺の姿を奪ってしまったのだ。
 ・ ・ ・ じ ゃ あ 、 俺 の 今 の 姿 は ど う な っ て い る ん だ ・ ・ ・ ?

「――――」

 わかっているはずだ。気付いているはずだ。頭が真っ白になっても、俺は自分で説明していたじゃないか――。

 人形の鼻を触れたものと人形の姿を入れ替える。

 ――つまり、俺の今の姿こそ、消えた彼女の人形と同じ姿に変わっていたのだ。

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 まるで、ゲームキャラクターのような格好。手に持つ救急箱とナースキャップ。
 そして、彼女の持つ身体の曲線美は、この世界では美人と称するに十分に値するほどであった。
 細い手、細い足。くびれたウエストも持ちながら、今までためこんでしまった脂肪はすべて胸に凝縮させたとしか思えないほど膨らん胸乳房。それを隠すナース服も肌をピシッと締めつけているので、肌に張り付いている着心地である。乳袋が見えるその衣装を部屋に備え付けられた鏡で見ながら、俺は彼女の容姿に目を奪われていた。

「・・・・・・・・・・・かわいい・・・・・・」

 ぼそっと呟いた自分の声は、まるで声優さんに宛がわれたような綺麗な声を発していた。
 顔も髪もまるでお人形のようだ。
 『人形』が人間になったらここまで変わるのかと、俺は改めてエムシー販売店の恐ろしさを知った。

「こんな娘がそばにいたら、絶対に声をかけるよな・・・。こんな機会滅多にないよな」

 自分の発した言葉を聞いて未だ夢見心地なのだということに思わず笑ってしまう。
 他人事のようであるが、鏡に映る彼女は俺なのだ。
 俺が笑えば彼女が笑う。右手を挙げれば彼女だって右手をあげる。
 声をかけるどころか、今は彼女の身体を触り放題なのだということに気付き、鏡に映る彼女が口元を釣り上げた。
 そして、ゆっくりと衣装に張り付いた胸に自分の細い指を移動させていった。

「あンっ・・・」

 触れた瞬間に、ムチッとした柔らかさを感じてヘンな声を荒げてしまった。でも、その可愛い声で喘ぐ彼女を見て、俺はたまらずにさらに行動を大胆にさせていった。

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