純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『幽体離脱・透明』 > 漂白剤『気付かれない男』

 人気のない道を通って家へと帰りつく。
 長く家を留守にしていた俺の家だが、やはり自分の家は他とは比べ物にならないほどに落ち着く。
 誰かの目を気にしなくていいからか、それとも家にいることで気兼ねなく自由でいられるからか。

「・・・なんだ・・・。俺は別に『透明』にならなくても求めていたものは最初からココにあったんだ」

 自殺をしなくても、家にいるだけで落ちつくじゃないか。
 生きていけるじゃないか。
 帰ってきて分かる家にいることの安心感――。

「ん・・・・・・」

 リラックスしていると、俺は改めて椛の身体をジロジロと見始めた。アイドルの月下椛の身体だ。『漂白剤』によって完璧にまで変装した俺の身体だ。つまり、椛の身体を俺が好きに触っていいということだ。
 誰にも気付かれることなく、誰にも言われることなく――
 つまり、オナニーだ。
 月下椛のオナニーを始めよう。

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 裸になって服を脱いだ俺の身体には、豊満な胸備わっていた。感度も本人と一緒だ。感じるままにゆっくりとその胸に触ってみると、男子では味わうことのできない柔らかさを体験できる。

「ん・・あっ・・あっ、あん・・・・あぁ、やわらかい!」

 乳房を下から掬うように持ち上げて全体をほぐしながら揉んでいると、波打つ乳房に揺られてたゆたう感覚が心地良さを誘ってくる。
 右だけじゃなく、左の胸も。同じように揉んでいくと、椛の胸は左右で微妙に感度が違うのか、左の方が感度が弱かったので強めに揉んでみた。

「ふああぁ・・あっ、あんっ!・・・びっくりした、急に感度があがったぞ」

 揉まれていく度に乳房は感じ始め、乳首も勃ち始めた。

「すごい・・・ちくび、イヤらしい・・・」

 存在感を見せる乳首を摘まむと、鋭い電流が身体を駆け巡った。乳房とはまた種類が違う刺激だ。乳首を摘まむと、忽ちジンジンとした疼きが襲い、初めは鋭くてびっくりしてしまった。しかし、乳房と同じように何度も乳首をいじり身体を慣れさせればその疼きが甘いものへと変わってきた。摘まんでいる時が一番強く、鋭かった刺激が、手を放せば今度は弱くて長い微弱電流となって身体の内側に流れこむ。
 二つの刺激どちらも気持ち良く、どちらも心地良い。

「これが、椛の味わっている快感なんだ・・・・・・」

 椛の味わう快感を俺が味わうことのできる。椛の喘ぐ声を俺が喘ぐことが出来る。
 『変身』は最高だ。興奮は高ぶり収まらない。
 俺は徐に手をゆっくり秘部へと触り始めた。そしてさわさわとクリ〇リスを頻りにまさぐる。赤く熟れた椛の秘裂は、俺の動きに合わせて小刻みに震えていた。

「はっ・・・んっ・・ぅっ・・・うんっ・・・」

 ちゅびくちゅ――

 既に椛の陰部が濡れてきていた。粘性のある透明色の潤滑油が指を伝い、水滴を生み出しつつあった。指先は依然としてクリ〇リスを責め続け、ときたまに中指を膣へとまさぐり挿入れたりしてイヤらしい手つきになりはじめていた。

「はぁ・・・椛も、こうやって、いじってるのかな・・・はぁ・・・」

 クチクチと音を立てて中指から人差し指までを一緒に挿入する。椛の陰部は自身の指の太さをあっさり飲み込んでいった。ちゅくちゅく、とゆっくちとしたリズムを刻みながら、指の動きを徐々に加速させていった。

「あっ・・はっ・・・いい・・・はぁぁ・・・うぅん・・!」

 甘い吐息を洩らしながら、淫猥な声へと変わっていく。
 普段聞いている声よりもさらにトーンが高い、椛のほんとうの声――。

 秘裂に指を突っ込みかき回す椛の姿。指先から伝って来た愛液が水滴となり、張力に耐えきれなくなった塊が地面へ落ちていった。椛の愛液を吸いこんだシーツは、シミを作り出していた。

「ほんとうのわたしは・・・こんなに、えっちなんですぅぅ・・・んっ、んんっ・・・はずかしぃ・・・」

 艶を帯びた声は悲鳴に近いようにすら感じる。指を第二関節までズブリと入り込み、はいってくる指の感触と襲ってくる快感の波に身体を大きく震わせた。

「んあぁぁっ、はぁっ、んぅぅっ・・あっ、あっ、い、イキそう・・・はぁっ、んああっ!」

 耳に届く水音。溢れんばかりの椛の愛液。絶頂間近の椛の喘ぎ声。脳がぷつんと発信が切れた瞬間、全身を硬直して小刻みに震えた。

「んあぁぁぁぁあ、あぁ・・・あああああ・・・あっ・・・んあああああーーーーーっ!!!」

      
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「――――はぁ・・はぁ・・・ん・・・はぁ・・・はっ・・・あっ・・・」
 
 イったんだと俺は思った。力が入らず、膝が震える今にも倒れそうだった。激しく肩を揺らして、余韻に浸る。

「これが・・・椛の絶頂・・・・・・」

 知ってはいけない秘密をしってしまったように、俺は椛の身体を抱きしめた。
 そして俺は『透明』の時間が続く限り椛の身体を弄り、何度も絶頂を味わい続けていた。



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――『透明』になるって誰にも気付かれないことだって、ボクはちゃんと説明したよね?

 誰にも気付いてもらえず――、誰にも感じてもらえず――、
 それが良いことなのか、悪いことなのか、考え方の違いだ。きみは一人ぼっちが淋しいと思えるのかい?こんなに楽なことはないのに?淋しいって、誰に対して淋しいのさ?ボクにはその感覚が良くわからないね。
 さて、続きを説明するよ。 
 自身の存在を消し、気配を隠して、空間から見えなくする禁断症状―transparency―。それが『透明人間』という状態だ。
 そんなことできれば悪戯に最適だろうね。でも、悪戯しちゃって良いの?自分から『透明人間』だと明かしていいの?
 本当、お笑いだよ。他の『透明人間』たちに笑われるよ!・・・ああ、きみたちには別の呼び名があったね。
 『妖精―fairy―』だよ。見えない世界の住人たち。誰にも気付いてくれないけれど、きみ達の傍に必ず『居』る『見えない追跡者―invisible stalker―』だ。
 夢と御伽の世界だと思わないかい?精霊たちはちゃんと今も生き続けているんだ。
 神や魔王のように、『人間』によって創造されたんじゃない。世界と供に長い年月を生き続けていた彼らの存在に、きみも成ったと言うことだよ?

「・・・・・・・・・・・」

 ・・・・・・あれ?もっと嬉しそうな顔すると思ったんだけどな。
 妖精だよ、妖精!羽根の生えた小人だよ?ピクシー、ブラウニー、ニンフ、ドライアド、スプライト・・・聞いたことある妖精の名前が必ず一つは思い浮かぶはずだよね?嬉しくないの?

「・・・だって、俺。種族、『人間』だし。そんなに可愛くねえし、萌える方向性違うし。とにかく俺は元の生活に戻りたいんだ。『人間』として普通に生活して、みんなに姿が見えるようになりたいんだ」

 アハハ。それは困ったね。だってきみ、『透明』じゃん!
 もうしばらくは誰にも気付かれないと思うよ。だいたい『漂白剤』を一気に飲み過ぎだよ。『薬』は用法用量守って正しく御使い下さいって注意書き読まなかったの?

「・・・・・・」

 まぁ、もうしばらくするときみの姿は見えるようになるよ。安心して。・・・但し、相手はきみに気付くことはないけどね。

「姿が見えているのに気付かないって、どういうことだよ?」

 しばらくきみの存在は認知されていなかったんだ。『漂白剤』によってシミのように消されてしまったきみは、存在そのものを消されてしまっていたんだよ。でも、わが社の『漂白剤』はシミ抜きじゃなくてシミ隠し。白い液で覆い隠しているだけだから、シミはまた何度でも現れるようになる。・・・きみだって同じ所にできたシミが、まさか一週間前のシミだと思わないだろ?
 ――『一週間前のシミ』が見えているのに、『新たなシミ』だと思いこんで気付かない。
 『思いこみ』ってやつだよ。
 『思いこみ』によって人は存在を消し、また人を作る。
 『漂白剤―white canvas―』に描かれた『思いこみ』により、きみはしばらく『妖精』の能力を手に入れるんだ。
 思いこみにより『妖精』は形作られる。きみの描いた『妖精』の姿は、どんな可愛い姿をしていたのかな?

 
 ほんとうの『妖精』の姿は魔女のように恐ろしい成りをしているのにね。
 あはっはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――― 


 ――神にも魔物にも変幻自在。
 きみは森羅万象、すべてのものに成りすます、『変装の達人―a multifaced monster―』。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 そういうことか。
 どうやら葉月は俺のことを椛だと『思いこんでいる』のか。
 『漂白剤』により俺の顔や姿が変幻自在となったいま、俺の姿は思い通りに変えられる。俺が月下椛だと思えば身体が月下椛を作り込み、見事に再現させたのだ。
 まるで現代の怪盗ルパンである。その忠実な変装に我ながら惚れ惚れする出来栄えだった。自分でさえ見間違う姿に、果たして他人に変装がわかるはずがない。

「・・・大丈夫よ、葉月」

 葉月をなだめながらも、声の確認も済ませる。うん、声の再現までバッチリだ。

      
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「おねえちゃん・・・」

 姉の顔を見てほっとしていながら、男性の顔を思いだして苛立ちを見せている葉月。どこから入ってきたのか、
いったい何時忍びこんだのだの、不可解な点が浮かんでいるのだろう。
 推理小説の好きな葉月のことだ。きっと頭の中で推理を始めているに違いなかった。

「でも、本当に怖かったんだから!」
「ハイハイ」
「お姉ちゃんは見てないの、素っ裸の大きな男?熊の様な髪の毛の色していて、目をギロッとさせた悪そうなやつ!」 
「ごめんね。見てないのよ、ホホホ・・・(そんなに人相悪いのかよ・・・)」

 葉月にも特徴を捉えられるような内容は聞かれない。これなら警察に聞かれたところで周囲に警告のチラシが配られるだけで終了だろう。このまま外に逃げ切ればなんの心配もなさそうだ。

 ――このまま、外に逃げきれば――――

「・・・・・・そんなに怖かったの?」
「うんっ!すごく」
「じゃあ、お姉ちゃんが慰めてあげるね」

 顔を近づける俺に、葉月はびっくりしたのか顔を遠ざけた。恐怖が残っているのか、近づくことに対して抵抗を示す葉月をいたわりながら両手を腰にまわしてぎゅっと抱きしめた。

「えっ?お、おねえちゃん・・・・・・」

 椛(俺)が抱きついたことで少しだけその恐怖が拭えたのか、身体の震えがおさまりを見せ始め、椛(俺)の腰に両手を回して抱きついてきた。
 まるで身体を求めるように、しばらく姉妹で抱きつきあっていた。
 俺は腰にまわした手で葉月の服を捲り上げ始めると、葉月が急に驚いたように顔を放した。

「な、なにをするの?」
「大丈夫だから、おねえちゃんにまかせて」

 抱きつき合っている手で動きを封じ、二人近い距離で服を捲りあげる。葉月の白い肌がゆっくりと見え始めた。


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 俺が『透明』になって一週間は経とうとしている。
 未だに俺の存在が誰かに知られることもなく、春日姉妹との奇妙な共同生活を送っていた。
 朝は静かに寝て過ごし、夜は黙って身体を弄る。

      
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 毎日毎日――
 毎夜毎夜俺に弄ばれる姉妹の身体。感度がよくなったりもしないけれど、俺にとっては二人の違う体内の構造が飽きさせない刺激を与えてくれていた。
 その度におれは精液を吐き出し、姉妹たちを白濁色に染め上げたのもだった。

 いったいいつまでこの効果は続くのだろう――

 最初は不安だったことさえ忘れて、そんな思考が俺の中から薄れていったある日のこと。
 葉月しか部屋にいない休日にふと葉月がトイレに入ろうとしていた。愛用の小説本を持ってトイレに長く居座ることを俺に知らせていた。軽く見積もっても小一時間はトイレから出てこないだろう。

「どうして女性はトイレに籠りたいのだろうか・・・」

 俺がそんなことを許すはずもなく、葉月がトイレに入ると同時に俺も続いてトイレに入る。
 これで大丈夫。これで葉月がトイレに出るまで俺と二人きりだ。
 鍵をかけて何気なしにスカートを降ろし始める。俺の目の前ということにさえ気付かずにスカートとショーツを降ろして下半身を露出させる。白い脚と細い太もも、それに、お毛けの生えていないツルツルのおま〇こも、葉月が便座に腰を下ろしたと同時に見えてしまった。
 軽く開いた両足から見あげていくと辿り着く葉月の大事なアソコ。俺が何度も挿入しているにしても、年齢からはとてもそうは見えずに大事そうに口を閉ざしてスジを見せていた。当然、ビラビラだって見えてない。
 『俺が挿入する行為』だって気付いていないのだから、俺の起こした事柄はすべてはなかったことになっているのだろう。
 きっと・・・。
 そう思うと少し味気ないものだ。一時の楽しみを永遠に続けることは不可能だと『漂白剤』に教えられる。
 やはり、道具に頼っている間は一時の快楽に流され娯楽を味わうのがちょうどいい。
 夢から覚めるのは、道具の効果がなくなった後でいい・・・・・・。

『漂白剤』の効果がなくなった後で俺は一つだけ夢を叶えることにする。
 この一週間で気付かされたことだ。


 ――椛に告白しよう。


 俺の存在に気付いてほしい。
 俺がきみを犯しているんだと言う事を知ってほしい。
 喘いで欲しい。
 俺だけじゃなくて、椛にも俺と同じ快感を味わってほしいんだ。
 俺は初めて椛に告白するよ。俺は君が好きだ――!

 今まで誰にも言わなかったけど、正直なところ、俺は椛の彼氏じゃないんだ。
 おっかけだ。おっかけの一人だ。
 椛はきっと俺のことを知らないはずだ。彼氏ぶってたけど、実はそう言う存在なんだ・・・。
 でも、ようやく気付いたんだんだ。
 すぐ傍にいたいけど、近すぎて見えないことがいっぱいあると言うこと。
 俺は先走り過ぎていたのだ。椛しか見えていなくて、椛にも見えない場所まで距離を詰め寄り過ぎていたことに。
 だから、俺は告白する。そして、例え告白して振られても、一定の距離を保ってファンで居続ける。
 それが俺のできる椛への声援だ。
 そうすれば彼女の姿がきっと良く見える。

 彼女の歌う、最高のステージが――――。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もちろん、付き合うに越したことはないんだけどね。


「ふぅ・・・・・・ん?」

      
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 俺が考え事をしている間にふっと葉月に顔を向けると、葉月の顔が真っ青になってこちらを見ていた。
 心なしか、俺と目が合っているような気がする。
 肩を震わせて、全身を震わせて、手に持っていた小説本を読むことさえやめて・・・『こちら』を凝視していた。

「―――――?」

 俺は後ろを振り向く。まさか、俺の他に、誰か居るんじゃないだろうな!?
 バッと振り向いてもそこは扉が締まっているので誰も立ち入ることが出来ない聖域。
 じゃあ、葉月は一体何におびえていると言うのか・・・・・・。

「―――――?」

 俺が振り向いた瞬間、葉月がビクッと全身の毛を逆立てた。
 次の瞬間、


「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 今まで聞いたことのない悲鳴をあげて、葉月は俺の姿を目視していた。

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 ――先にも伝えたように、

 俺はある日、葉月が学校の宿題をしている時に、後ろから抱きついたことがある。
 淋しくなったのだ。
 誰からも見えなくなったということは、誰からも相手されなくなったということ。話し相手もいなければ誘われたり付き合ったりというものが本当になくなったのだ。
 今まで別になにも思わなかった人付き合いが、誰からも気付いてもらえないと無性に恋しくなるものだ。俺は、所謂、『構ってちゃん』になったのだ。
 淋しくて寂しくて――、これが自分の望んでいた死後の世界だと思うと、怖くて死ぬことが出来なくなっていた。
 閻魔に甘えて良いならよろこんで逝くけど・・・閻魔が居る保証はどこにもないからね。
 俺が葉月にだきついても、葉月は俺に気付かずに、すこし勉強しずらそうな顔しながらも予習をこなすだけだ。
 俺はその温度差についていけずに、静かに葉月の部屋を出た・・・。


 ここでお気付きの人なら早く元に戻ればいいと思うだろう。『漂白剤』の効果がなくなればきっと『透明人間』ももとに戻ることができると、そう俺も思っていた。
 でも、ダメだった。全然元に戻らない。俺のことに誰も気付いてくれないのだ。
 いったいどうなっているのか、俺もわからない。誰か説明してくれよ!――俺はココにいる!
 そう、俺は『エムシー販売店』に電話をした。
 駄目もとの電話だ。俺の声すら誰も聞こえない。『俺が電話をかける』行為に気付いてくれるはずがないと、半分諦めながらも電話をかけた。
 受話器ではコール音が鳴っている。一回、また一回と何度もコール音が鳴り続く。
 誰も取らない。
 不安は最上級だった。
 保障してくれる販売元にさえ『気付かない』んじゃ、この商品は最強ではないだろうか。
 危険すぎる毒薬だ。
 俺は既に『漂白剤』を飲んだ時には死んでいて、ここにいる俺は残留思念なんだろうかと錯覚する。それならそれで早く消えていなくなりたい。……死にたい。切実に死にたい。誰でもいい、生かすも殺すも――

 俺に誰か気付いてくれればいい。


 ――ガチャ

『お電話ありがとうございます。エムシー販売店です』

 ・・・・・・・

『あれ?もしもーし?聞こえますかぁ?』

 電話越しに声が聞こえる。俺に呼び掛ける声が聞こえる。俺は電話越しに泣いてしまったほどだった。

「・・・俺に、気付いてくれたんですか?」
『はい?・・・ああ、ごめんなさい。いま人が少なくて電話対応私しかいないんです』

 『高橋由香』がそう答える。電話は鳴っていたんだ。『エムシー販売店』内ではきっとどの商品も無効化しているんだろうな。

『今日はどのような内容でお電話くださいましたか?』

 クレームにも応対にも対応できるはっきりした滑舌で由香は言った。俺は状況を説明し、『漂白剤』の効果を落としてもらうように旨を伝えた。

『かしこまりました。では後日、社員を一人派遣いたします。あとは彼女の意見を参考にしてください』

 そして俺は――


 ――――現在に戻り、俺の目の前にいる彼女に声をかけた。

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「ジーーーーー・・・・・・・・・・」
「おや、きみは――!今の見ていたのかい?」

 彼女、というには未だ幼い。少女と言った方がまだ頷ける。
 『エムシー販売店』の社員である少女であり、『透明人間』の俺も目視できる少女に声をかけた。

「随分楽しそうな事をしているね。あの泣きそうな顔した子供のような瞳が嘘のようにぎらついているね」
「盛り返すなよ。それに俺はもう子供じゃない」
「おじさんだね!」

 ……その間はないのか?

「ウッシッシ。イイお尻してまんな」
「おまえの方がおじさんじゃねえか!」
「いや、あんさんの方」
「俺を食おうとするな!!」

 少女に喰われようとしているのか、俺!?末恐ろしい少女だ。
 つうか、なれない京都弁使うな。アクセントが微妙に違ってニュアンスが伝わんねえ。
 見た目も全然似合ってねえ。

「・・・でも、こうして他人の家で全く関係のない二人他愛ない会話をしているんだね」
「そうだな。よくよく考えれば不思議だな。まるで、どこでも井戸端会議だ」
「どこでも、ド――」
「悪い、俺が振ってしまった」

 少女はノリがいいのは会ったその日に知っていたはずなのに、パスミスを自ら送りこんでしまった。反省。

「なんだよ。言ったっていいじゃないか?」
「普通に言えよ。なんでモノマネしてるんだよ?」
「あ、わかった?よく似てるって言われるんだよねぇ~。やっぱり、『未来から来た』シリーズは精通しているとボクは思うんだよ」

 なんだ『未来から来たシリーズ』って?おまえが生まれた時と青狸が生まれた時と時代全然違いますから!!

「水田〇さびさんか大山〇ぶ代さんのどっちかだろ?野沢〇子さんの時は生まれてないから知らん!はっ!いやいや、きみの声からすると、横山〇佐さんが一番似合っているんじゃないだろうか?うん、そうだ!そうに違いない!」
「いや、その理屈はおかしい。黄色いドラ〇もんがどこでもド〇を出した記憶がボクにはない。つまりそれはきみの幻聴だ」
「映画を見てるんじゃねえ!!」

 おまえは本当に未来から来たのかよ?むしろ『過去からやってきた来た』といった方がしっくりくるんだが。
 そうすりゃあ見た目と年齢も合致するのに。 ・・・知識的にも。

「なんだぁ・・・。ボクのモノマネ気付いてくれなかったんだね」

 肩を落としてがっくりしている少女。まるで猫のように耳としっぽがあったらクタンと萎れていると思うと、当てられなかったことにこちらが悪い気がしてくる。

「悪かったよ。で、どっちのマネだよ?」
「最近よく聞くから絶対分かると思ったのに」
「そんな大ヒントくれていいのかよ?もう正解みたいなもんじゃねえか。水田〇さびさんか!」
「ううん・・・。ジャン〇レノ」
「すまなかった!!!」

 土下座で謝る。俺はなぜ当てられなかった。声優というよりむしろ俳優。女性というよりむしろ男性――

「って、それじゃあ当てられるわけねえだろ!!全然ニュアンスが違うんだよ、男と女じゃ!」
「ジャン〇レノだけだよ!『どこでも、ドア』っていうの!今度は是非とも『地球はかいばくだん』って言ってほしいよね!?」

 間違いねえ。こいつは宇宙人だ。数ある道具の中でそれをピンポイントで選ぶところなんて怖すぎる。
 そもそも、ジャン〇レノに言わせてどうなるんだ・・・?

「『地球は、海馬くんだ』」
「すごいぞ!!格好良いぞ!!」
「『ちくッ、うはっ!海馬くんっ!?』」
「海馬くんになにをやらしているんだ!?」 
「『ちぃっ、級は下位・・・爆誕!?』」
「海馬くん!?」

 ・・・・・・おい。そのくらいにしとけ。一個たりとも『地球破壊爆弾』になってねえから。
 脱線しすぎだ。

「・・・・・・いま、ボク達の姿はきみしか見えないんだね」

 ようやくシリアス顔に戻ったな。雰囲気もようやく元に戻ったな。

「・・・それを言ったら、俺の姿はきみにしか見えないんだぞ」

 気付かれないこそ『透明』。透明同士なら気付くと言うのも変だけど、『漂白剤』が落ちるまで俺には少女がいるから少しは明るさが戻ってきていた。一人じゃないって心強いものだ。
 ・・・相手が見た目少女であっても。
 少女がまるで遠い目をしていた。遠いあの日を懐かしむ様な目でうっとりと呟く。

「こうしていると、なんだか思い出すなぁ……アニメ」
「俺じゃねええええぇぇぇ!!」

 それはあれですね、本物の方ですね。こっちの本編と関係ねえええ!!

「透明になって、幻覚見させて、次々と凌辱して・・・楽しかったなぁ・・・」
もしもーし・・・
「ゲームのように一回くらい抱いてくれると思ったら、アニメでは一回もそういうシーンはなかったなぁ・・・」
黒虹さんに怒られるからそれくらいにしてくれ、マジで
「こうなったらグノーグレイヴをアニメ化してそこで私を抱くシーンを作ればいいんだ!」
俺の話を聞けーーー!!
「よし、こうなったらもっとボクの出番を増やしてもらわないと!今まで隅に追いやられていたけど、今度からはサブストーリーでも作ってもらって確立した地位を手に入れて――!」
・・・・・・

 こいつ、夢見すぎです。聞いているこっちが恥ずかしくなるくらいに、ありえねえええ!!

「と、いうわけで・・・きみも早くやれることをしてよ」

 急に俺に話を振られても困る。俺に一体なにをやらせようとしているんだよ?

「はっ?やれること?」
「誰にも気付かれないんだよ?もっとやりたいことないの?」
「・・・・・・」

 いや、今日は十分ヤったし。
 ・・・三回だよ?三回?突いて突いて突きまくったからもう十分満足だよ?

「頼りないねえ。きみはそれでも男の子?」
「・・・・・・」

 俺を殺しに来てやがる。

「じゃあ明日はなにするの?やっぱり定番だけど、お弁当のおかずに精液をぶちまけて、女の子がなにも知らずに食べて、『美味しい~』とか言ってもらう?」

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 ・・・ああ。アニメでもあったな、そんなシーン。三人全員、吐き出してたけどね。
 でも、俺は思うんだ。
 食べ物にぶっかけるシーンって・・・誰得なんだろう?

「遠慮しておきます」
「もうきみには頼らない!この甲斐性なし!変態!死ね!」
「・・・・・・」

 ボロクソな言われよう。泣きそうです。そこまで言わなくたっていいでしょう。俺、そんなに悪いことしたかよ?
 一人にしないでくれよ。

「とりあえず妹さんのところに行く。そして自分の力で犯してみたいんだ。だから精液出して」
「タヨラナイッテイッタジャン、ケチ」 

 俺が出すのかよ。おまえは犯すだけかよ・・・よくそれで我慢できるな。
 完全なドSジャン・・・。
 おれ、そんな光景を眺めているだけかよ……イケルかなぁ?




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 初めて見る奴が出ていった。
 奴は要注意人物かもしれない。まさか俺の姿を見ることが出来るとはな。
 この『漂白剤』――自身に使うと、なんと他人には俺の姿が見えなくなるのだ。それだけじゃない。見えないだけじゃなく、やっていることさえ気付かないのだ。
 最初は冗談かと思ったが、どうもそういうことらしい。

 ある日、葉月が学校の宿題をしている時に、後ろから抱きついたことがある。
 淋しくなったのだ。
 誰からも見えなくなったということは、誰からも相手されなくなったということ。話し相手もいなければ誘われたり付き合ったりというものが本当になくなった。
 そんな俺が住み家に選んだがこの家だったわけだ。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 椛の家だ。俺と椛は恋人同士だ。アイドルになり椛がファンを盛り上げる姿に心を奪われた。何度か家まで突きとめて足を運んだこともあったが、頑なに拒んで椛は俺を中に入れてくれなかった。

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 俺を家にあげるのが恥ずかしいのか?くひゅっ、可愛い奴だ。
 しかし、ファンに俺の存在がばれて半殺しにあい、これ以上椛に近づくことが出来なくなった。俺にとって椛と出会えなくなることは死を意味していた。
 無気力状態でなにもやる気もしない毎日に、どうせ死ぬならと俺は『漂白剤』を飲んだのだ。
 するとどういうことだろう。
 俺は死なずに行き残った。
 しばらく意識を失っていたものの、特に何も変わった様子はなかった。

「死にぞこなっちまった・・・・・・」

 ゆっくりと起き上がり、また違った死に方を模索した。
 家はボロアパート二階。飛び降りたって死なずに骨折が関の山だろう。もっと高い場所から飛び降りるか、それとも焼身・・・、水没・・・、埋葬・・・車に飛び込み――――

「……ハラが減った」

 精神的には逝きたいというのに、それでも身体は生きたいという。
 ツマラナイが俺は買い出しに出かけた。
 近くのコンビニで買い出しに行った俺が、コーヒーと幕の内弁当を買ってレジに並ぶ。すでに五百円に収まるよう計算していたので五百円を財布から出してすぐに会計を済ませる態勢になっていた。

「レシートはいらない。温めなくていいです」
「・・・・・・」

 そう店員に声をかけたのにもかかわらず、店員は全く俺の言葉に反応しなかった。

「・・・はっ?」

 俺が目の前にいるにもかかわらず、後から来たお客を先にレジに通し、さらにそのお客が会計を済ませると今度はレジ内で肉まんの様子を見ていたのだ。
 こっちは客だ。こういうところで怒ると言うのも気が引けるが、さすがの俺も店員の態度にはカチンときた。

「はぁ?俺がいるだろ!?どこに目を付けてるんだよ!あっ、俺のコーヒー!」

 店員は俺の用意したコーヒーと弁当を再び棚へと戻してしまった。さらに一緒に置いていた五百円を見つけると、辺りを見回した後でポケットの中に仕舞いやがった。

「ああっ!俺の五百円!?てめえ、ネコババする気かよ、おい!!」
「・・・・・・」

 これほど叫んでいるにもかかわらず、店員は全く俺の様子を気にも留めなかった。
 無視されている状況に、まわりを見渡しても同じ状況。
 俺が一人怒っているのに、誰一人気にもしないで関心さえ示さない。

「・・・・・・なんなんだよ、この状況……」

 全く理解できない。
 俺の姿が見えてないのか?俺はココにいるんだぜ?馬鹿にするのも大概にしろよ。
 死を覚悟し、怒りに我を忘れて気力を湧く男の力は怖い。
 俺は店員の立つレジ内へと無断で入り込む。

「どうだ。客の俺がレジ内にはいっちまったぜ。それでもまだ俺を無視するのか、ええ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

 後々考えるとその行動はあまりに小さい行動で呆れるかもしれないが、ここで働く二名の店員は、呆れることもせずに黙々と、自分の仕事に精を出していた。
 ――俺を無視していた。

「どうなってるんだよ……こいつら、馬鹿じゃないか?」

 ならばと、俺はさらに行為を進めてくる。
 こいつらの馬鹿さ加減がどのくらいかを知りたくて、俺は黙ってレジを開けると、中に入っていた十万円もの金額を、鷲掴んで一気に持ち去った。
 強盗だ。白昼堂々とした犯罪劇だ。もはや芸術もなにもない喜劇である。
 俺は持ち逃げした金額を握りしめて、達成感を味わっていた。
 誰にもできないことをやってのけた偉業と供に、俺は一つの疑惑が確信に変わったことに震えていた。


「――俺のことを誰も気付いていない……」


 俺には以前と何も変わらなく見える姿を、他の誰も見えていないのだ。
 俺の着ている服も見えないのか、しかし、服が見えなくなることはない。つまり、この現象は俺に関わるすべてのことが他の誰にも気付かない、ということのようだ。
 服で例えるのなら、これがただの服なら皆気付くであろう。『俺が着ている』服、だからこそ誰も気づかないのだ。
 見えているけど、気付かない。道に転がっている小石と同じ。意識は出来ても気付かない。それが、『透明』という証だ。

「店長。お金がありません」
「はやく補充してきなさい」
「はーい」

 持ち去った10万円すら、『俺が持ち去った』ことで気付かない。これこそ完全犯罪。事件が『起』きなければ何も始まらないのだから。

「そうか・・・・・・そういうことなのか―――!」

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 ばっと俺は服を脱いで素っ裸になった。しかし、堂々と猥褻物公然陳列罪に当てはまる俺の行為も、誰にも気付かれなければ犯罪ではない。
 とても気持ちいい。清々しい気分だ。今まで生きてきた中でこんなに晴れ晴れとした気持ちはなかった。
 包み隠さずに堂々と陽に当たることの素晴らしさを感じながら歩きはじめる。
 皆に見られていると一人興奮しながら、それでも心の底から湧き上がる安心感に救われながら家に帰ってきた。結局、買い出しを忘れてしまったものの、それ以上の力を手に入れたのだった。
 誰にも気付かれずにそんなことが出来るなら――
 俺はある場所に向かって歩きだしていた。


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 えっと・・・こうやって、私の家に招待するの、なんだか恥ずかしいんだけど。
 でも、せっかくあなたが来たいって言うから・・・勇気を出して私、案内します。
 こっちです。
 でも、初めてだな。誰かが私の家にあがるの。・・・小学生の頃はあったけど、高校生になってからはあんまり人を呼ばなくなったかな。
 だって、高校でみんなバラバラだし、クラスで知っている人全然いなくなっちゃったし。また新しい友達ができても、家に呼ぶのって、なんだか恥ずかしいし。お部屋、片づけてないもの。
 初めてだよ、こんなに積極的に家に来たいって言った人。
 なにもないよ?特に変わった造りのないマンションだよ?
 強いて言うなら、アイドルのお姉ちゃんがいるだけだよ?
 ・・・えっ?それだけでもスゴイって?自慢になってるって?……うふふ。だって、自慢のお姉ちゃんだもん。
 私にとって大事なお姉ちゃん。アイドル業もこなすお姉ちゃん。汚れを付けた人がいたら、私だけじゃなくて、お姉ちゃんのファンの人だって黙ってないんだから、あまり怒らせない方がいいよ?
 ……うん。おねえちゃんに近寄らない方がいいかもね。
 だったら、私の部屋で一緒にDVDでも見よう。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 ここが私の住むマンション。大きいって?そんなことないよ?家賃?うーん・・・言っていいのかな?……70万円。
 桁が1ケタ違う?そうなの?……7万円?・・・・・・うーん、そうだったかな?わかんない。
 5階だよ。・・・そう、503号室。……うん、ここ。

「ただいま」
「おかえり~~~!!!」

      
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 私、春日葉月―かすがはづき―が帰ってくると、私の姉、月下椛―つきしたもみじ―がリビングから飛び出してきた。白い衣装を着て、さらさらの金髪のロングヘアーを靡かせる椛の姿は、コンサート会場で脚光を浴びて活躍する人気アイドルの格好そのものであった。

「お姉ちゃん。どうしたのその格好?」
「またコンサートがあるから、先に完成した一着を着てみたんだ。どうかしら?」
「うん。良いと思うよ……」

 相槌を打ちながらも、お姉ちゃんの衣装から飛び出る胸を気にした。あまりに大きく飛び出しいて、露出すぎていないか心配になる。

「なによ、その目は?ははぁん……。さては私のこの胸に釘づけになったな?」

 お姉ちゃんがあなたに話しかけている。初めてあったはずなのに会話慣れしているせいか、まったく臆することなく話しかける。あなたも緊張しているけどなんとかお姉ちゃんと話をしているね。
 でも、最初の一言がそれはマズイと思う。あなたの顔が真っ赤になってるよ。
 私のお客さんなのに・・・
 
「………で、こいつ、ダレ?」

 さっきまでの和やかな雰囲気が一掃。口が悪いよ、お姉ちゃん。

「恋人?ははぁん……。葉月も隅におけないわね」
「ほっといてよ、お姉ちゃん!」
「私も恋人欲しいなぁ!」

 それはムリだよ、『アイドル』業なんだから……。
 お姉ちゃんは着替えをしに部屋に一度戻っていった。

「いまご飯作ってあげるから、ちょい待っててね」
「うん」

 ごめんね騒がしくて。お姉ちゃんって、普段もこんな感じなんだよ?幻滅したよね?テレビと映っている姿と別人みたいでしょう?
 でも、口は悪いけどとっても優しくて気配りがうまいんだよ。
 私の理想のお姉ちゃんなんだ。
 ……私もなれるって?なれるわけないよ。お姉ちゃん見たいにスタイル良くないし、内気な性格だし。人と喋るの苦手だもん。あんなにポンポン言葉が出てこないよ。すごいよね、お姉ちゃん……。
 ………………えっ?……そうだね。あなたと喋る時は緊張しないで喋られるよ。なんでだろうね?
 ……話し相手になってくれるの?ほんとうに?――うん!私、お姉ちゃんみたいに喋れるようになりたい。じゃあ部屋でいっぱい会話しよう。色々な話を聞かせて。私、いっぱい喋って感想を言うから!約束だよ。


「おまたせ!じゃあ今から夕食作るよ~」
「うん」

 お姉ちゃんが帰って来た。今度はエプロン姿だよ?テレビじゃなかなかお目にかけられないね。レアなお姉ちゃんだよ?よかったね。

「あなたも一緒に食べてくでしょう、もちろん?今日は三人前のご馳走作るよーー!」
「昨日とどの辺が違うの?」
「おかずが二品から三品になる」
「やっと一般家庭だね!」

 や、ヤダな、そんな顔しないでよ。家庭内ジョークだよ?本当はもっといっぱい出るんだよ?毎日八品料理が出てくるんだよ?揚げ物、煮物、焼き物、吸い物まである懐石料理なんだから!太っちゃって困るんだから!その割に胸が出てこないって!?余計なお世話よ!!

「あはは……珍しくよく喋るわね、葉月」
「だって……ぅぅ…、二人で私をいじめてるんだ」
「いじめてないって。からかってるんだって」
「お姉ちゃん!!」
「あはは……はぁ」

      
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 どうしたの?急に真剣な顔になって?
 えっ?お姉ちゃんの後ろにいるひと?そんな人いないよ?

「お姉ちゃん?」
「んっ・・・な、なに?」
「お姉ちゃんの傍に誰かいる?」
「あはぁっ!……は・・・なにいってるの、はづき……ここにはぁっ!・・・あっ、なたっ、と・・・わたし、…しか、いな……ひん!」

 ほらっ、誰もいないでしょう?
 もう、おかしなこと言わないでよ~。
 ……裸の男性?お姉ちゃんを突いてる……?お姉ちゃん、服着てるし……。突くって、ナニを突くの?
 お姉ちゃんが裸エプロン!?もぅ・・・やだぁ、急にえっちなこと言わないでよぉ・・・。

「んっ・・・んふぅっ・・・・んあっ・・・あぶない、わ・・・。なんだか手がおぼつか無い」

 包丁持つ手が震えている?お姉ちゃんの手際が良いからそう見えるだけだよ。心配しなくたって、お姉ちゃん、料理の才能もあるんだよ?

「ふああっ・・・!」

 喘ぎ声なんか聞こえないよ。濡れた音?水を使っているから、そんなの当然するよ。その音じゃないって、じゃあなんの音よ・・・?

 ……ねえ、なんだか会話がおかしいよ?楽しかったのに、急に会話があわなくなってきたよ。ねえ、いったい何の話をしているの?お姉ちゃんになにを見てるの?

「あんっ・・・あっ・・・あああっ・・・いくぅ……イク――!」

 ――がちゃんとお茶碗がひっくり返る音が聞こえた。私はお姉ちゃんを案じてすぐに近づくいた。突然床に倒れるお姉ちゃんに私がびっくりしてしまった。

「お姉ちゃん?どうしたの?」
「はぁ・・・な、なんでもない・・・。ごめんね。葉月」

 私のお気に入りの茶碗を割ったことでお姉ちゃんが少し沈んでいた。

「だ、大丈夫だよ。手伝うよ」
「ううん、大丈夫よ。逆に怪我しちゃいけないから、あっちに行ってて」
「お姉ちゃん・・・」

 顔を真っ赤にして、床には水滴がいくつか零れていた。

「葉月。先にお風呂入ってきなさい。その間に私が夕食の支度を済ませておくから」

 真剣な表情で私に頼みこんだおねえちゃんに、私は何も言えずにその場を離れることにした。
 ……そういうことだから、ちょっと席を外すね。ソファーでゆっくりテレビでも見ていてよ。その間に私もお風呂あがるから、一緒にご飯食べようね。


 ……私の後ろについて歩く男性なんかいないんだから!いったい誰の話をしているの!?
 あなたが一緒にお風呂入ってきたら、私だって怒るんだからね!!

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