純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『状態異常』 > 下剤『下剤紹介』

 身体の上に乗る摩耶。体重は善人よりも軽いとは言え、上に乗られているという圧迫感を善人は楽しんでいた。
 見上げれば、摩耶が見下ろして笑っている。夢でなければ見られない、妄想でなければ描けない様な光景が目の前に広がっていた。

「あはん。どう、善人くん?」

 摩耶の太ももに圧迫される逸物が、刺激を受けてさらに硬くなる。摩耶が身体を滑らせるように腰を振ると、摩耶のO脚部分から勃起した逸物が顔を見せたり、再び太ももの奥に消えて見せたりしていた。
 摩耶が腰を止めて、逸物をピョコンと太ももから出させる。摩耶に素股してもらった善人の逸物は、カウパー液を排出してヌルヌルに光っていた。

「善人くんの角度だと、私におち〇ち〇が生えているように見えるんじゃない?」
「はぁ・・・はぁ・・・」

 狙ってやっているという絶妙の角度である。摩耶のイヤらしい視線がさらに善人を興奮させた。

「摩耶さん・・・ほんとうに、エロい・・・」
「そう・・・これが本当のわたし・・・善人くんだけに見せてあげる」

 腰を再び動かし、今度は性器同士を擦り合わせる。

「うあっ――」
「あんっ――」

 善人の逸物が摩耶のクリトリスに触れると、摩耶が耐えきれなくなって甘い吐息を震わせた。腰を振り続け、二人の液が互いの性器を濡らしていき、油断すると逸物は膣内へとヌルンと入りそうになっていた。
 善人にしてみれば早く挿入したいのだ。焦らさせて発射してしまいそうになってる逸物の為に、摩耶におねだりを言う。

「摩耶さん・・・お願いです・・・おれ、我慢できない・・・」
「はっ、はっ、うんっ・・・」
「摩耶さんの膣内に挿入れてください」
「あっ・・・あんっ・・・・・・わかったわ・・・はぁ・・・んっ・・・」

 摩耶が身体を少し起こすと、天井へそそり立つ逸物を自分の膣口へと咥えこんでいった。
 ズブズブと、肉壁に擦られながら挿入っていった逸物は、ぬるりとぬくみで充満していた膣内へとすぐに到達した。

「うああっ・・・。こ、これ・・・すごい・・・っ!」

 生で受ける神秘の快感。ぐちゅぐちゅに煮えた膣内では蕩けるような愛液がふり注ぎ、自分のものに取り込もうと吸いついてくる触手に逸物は刺激を受ける。ただ自分の領域にのさぼる無数の触手が、侵入してきた相手を敵か味方問わずに攻撃してくるようだ。無鉄砲に、我武者羅に、ただ逸物に吸いついてくる。しかし、その攻撃は全く痛くも痒くもない。甘いのである。甘い攻撃により逸物が依存してしまい、刺激が欲しいとメロメロにされる。
 その結果、善人の身体が高揚し、耐えられなくなる。摩耶の膣内に挿入しているだけでもイキそうなのに、膣内を味わっている自分に善人は酔いそうだった。

「き、きもち、良い・・・まよさん・・・・・・はっ、はぁっ・・・」
「んふふ・・・もうちょっと頑張ってね、男の子でしょ?」

 摩耶に言われると、男として女性を気持ち良くさせなければならないという責任感が芽生えてくる。イきたいという自分の意志を堪えて、摩耶をイかせたいと奮起して腰を自ら動かし始める。

「あんっ!よしと・・・うふふ・・・」

 摩耶も腰を好きに振るい、善人の上で跳ね始めた。摩耶の乳房がブルンブルン揺れており、見ているだけでも壮観だった。

「んんっ、んっ、んはぁ・・・」

 下半身が快感でいっぱいになり、摩耶は腰が砕けそうになっていた。がくがくと膝が震えて、身体を支えるので精一杯になっていた。

「こんなに、きもち、いいんだ・・・はぁ・・・まよさんの・・・ああっ!」

 摩耶は気持ち良くなりすぎて、勝手にお尻の穴の方に力が入る。ぎゅっとお尻の穴をすぼめると、逆に膣内からはじわじわと快感が広がってきた。

「まよ・・・の・・・からだ、が・・・もとめちゃってる・・・・・んんっ!」

 もっともっと快感が欲しいと、膣奥まで逸物を迎え入れる。奥の方を先端に押しつけるように腰を前後に揺さぶりながら、子宮口がさがっていくのを感じていた。

「んああっ・・・!いま、コツンって、奥にあたった・・・!」
「んんっ・・・そこ・・・そこに・・・いっぱい噴きかけてほしい・・・」

 気持ち良くなりたいと言う感情が積極的に腰を振り、膣奥を叩くように腰を上下させる。その衝撃が胎内から背中を通り抜け、頭の先まで突き抜けていった。

「んひっ!んっ、んはっ!あっ、あっ、ああっ!はぅっ、んっ、んんっ、んああ~っ!」
「摩耶さんの、腰の動き・・・激しくて、とても、イイよ」
「あはぁんっ!あっ、あっ、ああ~~っ!」
「おれ、イきます・・・ま、まよ!」

 摩耶は身体がふわっと浮かび上がるような感覚に包まれながら昇り詰める。
 幸せの絶頂を味わえる。
 摩耶の身体で堪能する、最高のオナニーだった。

「んあああっ!!あっ、あっ・・・あひいぃいいいぃぃぃ~~~~!!!」

 胎内に注がれていく善人の精液。快感に満たされる摩耶の表情は、普段は見せることのないアヘ顔に近いものになっていた。
 快感が全身の毛を逆立たせ、肌に触れるすべての刺激を敏感に感じ取らせる。
 勃起した乳首に空気が触れる快感すらも心地良く、全身性感帯になった摩耶の身体が善人に振られた瞬間、もう一度大きな波が立って連続でイクことになった。

「あへっ・・・ひぃっ・・・うぁっ・・・」

 快感で涙を流す摩耶に声を掛けられない善人。それでも憧れの人とセックスした善人は、入院して良かったとつくづく思ったのだ。
 普段だと絶対に味わえない幸福を知る。不幸の先にこそ、幸せがある。
 そして、幸せの先にあるものは――。


 ――善人の退院は、すぐそこまで迫っていた。


 

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      でへへ

 鏡を見て茫然としている摩耶。それは自分の状況についていけないことがあげられる。
 しかし、時間が経ち状況が次第にわかっていくと、摩耶の口元が綻んでいった。普段見える笑顔とは違うイヤらしい笑みだった。

「俺が摩耶さんになっちまったのか・・・。うひょー。マジすげえ」

 ナース服で包まれた身体を触り始め、視線を落として膨らんだ胸の辺りをイヤらしく見つめていた。

「胸を上から見るってこんな感じなのかよ。うわっ、摩耶さんの胸でかい」

 服の上から擦りながらその胸の柔らかさに涎を垂らしそうになる摩耶。当然、摩耶は鏡の前でそんな態度を取らない。地下に潜っていた善人が浮かびああり、そのまま摩耶の身体にとびこんでしまったのだ。
 摩耶の意識はなく、いま善人の思うままに動かされていることに気付いていない。そのせいもあり、善人は好き勝手に摩耶の身体を弄んでいた。
 鏡の前でボタンを外して服をはだけてブラに包まれた乳房を露出させる。Dカップはあろうその形の崩れていない摩耶の乳房は、外気に曝され白く透き通っていながらも熱を帯びほんのりピンク色へと染まり出した。

「はあ・・・。摩耶さんのおっぱい・・・。すごい綺麗・・・・・・」

 その美しい身体のライン、流れる煌びやかな髪。澄んだ瞳、潤んだ唇。
 そのすべてが自分のものにできたという実感に善人はこれ以上にない興奮を覚えていた。

「海老沢さん。俺、ずっと海老沢さんのことが好きでした」

 鏡の前で摩耶に告白する摩耶(善人)。

「ほんと?・・・実は、私も前から風雅さんのことが・・・好きでした。風雅さんなら私の全てを見せても良いって思ってました。だから、私のぜんぶを見せてあげます」

 一人演技も鏡の中の摩耶が本当に喋っているように思えてくる。摩耶の承諾を得たように、興奮する手で摩耶の乳房に触ろうとした時、「海老沢さん?」という先輩の声に驚き、即座に胸元を隠した。

「なにしていらっしゃるの?」
「い、いえ。ちょっと、胸が苦しくて・・・・なんて・・・」

 苦笑いを浮かべながらすませると、先輩は溜め息をついて後輩のサボりを嘆いていた。

「みんな仕事してるんだから、しっかりしなさい。もう海老沢さんだって後輩がいるんだから」
「は、はい」

 逃げるように退散して給湯室からナースセンター前に飛び出す。
 看護師以外入ることのできない場所に立っている摩耶(善人)。摩耶の前を見て声をかけてくれる老若男女の患者たち。
 海老沢麻世と言う女性でしか味わえることのできない感覚を善人は四方から浴びていた。脚光に浴びて元気を取り戻した様に、摩耶(善人)は廊下に出て巡回をしに歩く。行く先々で声をかけれてて適当に返事を返した。

「うふん。胸って結構重いな。歩いていると皮膚が引っ張られる感じがするよ」

 一歩ずつ足を進める摩耶の胸が、ブラの中で上下に揺れて肩下の皮膚が引っ張られる。自分の体では感じたことの無い感覚。人がまばらになったところでこっそり両手を下から乳房をすくい上げて揺らしてみると、掌で踊る乳房の柔らかいと重量感に指がめり込んだ。
 善人が自分の手で触るより、摩耶と一つになった状態で乳房と掌の両方から感じる方が柔らかさがあると思った。彼女の細い手、綺麗な指、しなやかな動きが自分が女性になったと感じる要因の一つだ。
 善人が興奮すれば摩耶が興奮する。荒い吐息は甘い吐息に変わり、「はぁ、はぁ・・・」と喘ぐ摩耶の声がさらに心臓を高ぶらせる。

「うん・・・、乳首も勃ってる気がするよ。・・・そうだ。このまま自分の身体に会いに行こう!いっそのこと誘惑して襲わせるのも良いかもしれないな」

 摩耶(善人)はそう決めると、自分の病室へと足を向かわせた。浮かれる摩耶はこれから彼氏に会いに行くような様子を見せており、心躍らせる気持ちでいっぱいだった。

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「お薬、こちらにおいておきますね」
「あっ、はい・・・」

 あれから摩耶と善人の関係はぎくしゃくしていた。
 摩耶の中で話が片づけられていたので、大事になることはなかったものの、善人はナースコールを押さなければ外出すら許されなくなっていた。
 摩耶が出てくるときもあれば、担当の違う美祢や早弥が出てくるときもある。

「・・・そうか。摩耶さんはひょっとして俺にあまり会いたくないのかもしれないな」

 それもそうだ。誰が危険な人物と知っていながら傍にいたいと思うだろうか。俺だって逃げ出すだろう。それを誰にも言わずに自分の中に押し込んで仕事をしている摩耶は立派だと思う。
 善人の威厳が保たれているのも摩耶のおかげである。だからこそ、善人は摩耶に会いたかった。
 でも、どうやって・・・

「――――」

 渡された薬に目を向ける。
 普段と同じ栄養剤と、『下剤』が入っていた。もう一度地下に行く機会が与えられていた。
 善人は居ても経ってもいられなく、考えるよりも先に手が行動していた。ナースコールを押して美祢を呼ぶと、

「すみません。トイレに連れて行って下さい」

 そう呼びかけた。美祢が一緒にトイレまで案内し、男性トイレの前で待っていた。

「終わったら出てきてください」

 外で待つ美祢に返事を返しながらも、その手に持つ『下剤』に戦慄く。

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 もう一度地下に降りてどうするか、なんて後回し。今はただ摩耶に会うために地下に降りよう。

 そう考えれば、善人はトイレに籠ってお尻に下剤を打つことなんか恥ずかしいことではなかった!

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 一度地上に戻ろうと善人は地下から顔を出す。
 前回、巧美に犯されながらも、ただ巧美のテクニックに流されていただけという自分の愚かさに物申したいという意志の表れからだ。

「しかし、これ、どうやって戻ったらいいんだ!?」
 
 真上にいるのが分かっていながら、地上に戻ることが出来ない。これでは本当に困ってしまう。
 地下から這い上がるために、真横ではなく真上に飛んだ。
 上下左右という感覚がない地下で、一体どこまで飛び上がったのかもわからない。またまた本当に飛んでいるのかもわからない、無重力に近い感覚で、方向感覚を失い真下に堕ちているのではないかと言う恐怖も感じる。
 風雅善人という人柱を頼りに、ただ闇雲に目を閉じて飛び跳ねた。すると・・・

 一瞬、光りが遮った。

「うっ・・・」

 その眩しさに、目がやられる。光はこんなに眩しく温かいものだったとは思わなかった。

「・・・ううっ・・・・・・はっ、俺は・・・」

 目を開けて自分の姿を確認する。ベッドの上で病院指定の男性用パジャマを着こんだ身体は、紛れもないもとの自分の姿であった。

「・・・・・・地上に戻れたぁ!!」

 暗い地下の世界は居るだけで心細くなるものだ。思わず自分の身体を抱きしめてしまう善人。

「・・・って、感動に浸っている場合じゃねえ!!」

 一瞬で暗黒面に陥る善人。地下から見ていた自分の情けなさを嘆いて地下から這い上がってきたのだ。
 今度こそ、善人自らの意志で女性を犯すつもりである。
 その為の準備も地下で済ませてある。

「っしゃあ。いくか」

 ベッドから起き上がりある病室へと向かう。身体の重さを感じながらも、いつの間にか生き生きとした自分の動きに、病人だと言う事を忘れて歩き始めていた。

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 地下では心の声が響き、地上ではその声を押し殺す。
 言いたいことも言えない、喘ぎ声も荒げない。
 一体どちらが地上でどちらが地下かも分からない。
 そんな闇雲の地下で、善人は新たな能力を発見したのだ。
 地下にいる地上と繋がった住民たち。
 善人を見ることができない地上の住人達が、接触できるのは地下に住む住人達のみ。
 意志も持たず、ただ地上の人たちと同じ動きをする彼らだが、どうやら善人の声を聞くことが出来るらしく、口調を強めて語りかけることで地上の住人との接触を切り離して単独行動することが出来るのである。
 善人が目を付けたのは、祖父の容体を見に来た人妻であった。
 帰ろうと病院から出ていこうとする彼女を、地下から呼びとめる。

「待て!」

 ガッと彼女の腕を掴んでいると、地下で善人が影響を及ぼした結果、地上で彼女と行動が切り離される。病院から出ていく彼女だが、地下では善人に捕まった彼女の像が取り残されていた。
 彼女は本体と切り離されてしまい、自分では何も行動しなくなる。しかし、なにも行動しないからと言って死んでしまったわけではない。

「俺の声が聞こえるか?」

 善人が彼女に問いかけると、彼女の目が次第に光を取り戻し、善人を初めて目に映していた。
 善人もまた地下で初めて瞳に映された。

「ハイ」

 彼女が応えた。善人はニヤリと笑った。

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「きみは本人と同じ記憶、同じ情報を共有している」
「ハイ」
「名前は?」
「・・・宮沢巧美―みやざわたくみ―」
「年齢は?」
「・・・35歳」
「結婚してるのか?」
「はい。夫と、3歳の長男と今年生まれた長女の四人家族です」

 彼女、巧美の情報を聞きだしていく。聞かれた質問に嘘偽りなく応える。おそらく暗証番号やパスワードまで簡単に喋ってしまうだろう。人が大事にかかえ込んでいる秘密まで暴露いてしまう。地下に隠し事はできない。

「これから用事があるのか?」
「いいえ、特に。・・・帰って洗濯物を取り込まないとと思っていました。

 抑揚のない声で語る巧美。しかし、予定がないのだったら少しばかり時間がありいそうだ。善人は巧美に対して更なる命令をつきつける。

「病院に帰ってこい」

 それは、地下の巧美に命令しながら地上の巧美に対して発した言葉だった。

「ハイ。かしこまりました。病院に帰ります・・・」

 地下の巧美が善人の命令を聞き入れると、地上で車に乗り込もうとしていた巧美に変化が現れた。エンジンをかけた車を再びおり、なにも思ったのか、病院内へと再び戻ってきたのだ。

『・・・・・・はっ』

 意識を取り戻したように巧美は辺りを見渡す。病院の入り口でキョロキョロと不審な動きをしている巧美が滑稽である。

『あれ・・・?私、どうしてまた病院へ戻ってきたのかしら?』

 首をかしげて再び病院の外へと出ようとする巧美。善人は面白がりさらに命令を送る。

「俺の部屋に連れてくるんだ。部屋番号は512号室の風雅善人だ」
「ハイ。512号室の風雅善人さんの元へむかいます」

 地下で発した声は心の声となり、地上の本人にも影響を及ぼす。

『私、風雅さんの病室に行かないといけないわ』

 踵を返し病院内へと戻った巧美は、エレベータに乗って5階へと向かった。5階に到着すると、その足で512号室の病室へ向かい、扉を開けた。
 部屋の中には風雅善人が何食わぬ顔してベッドの上でリンゴを食べていた。
 そして、突然の巧美の来客に驚いた様子を見せていた。

『えっ、あっ、えっと、・・・どちら様で?』

 善人は初対面である。今日初めて会った人の突然の来訪。そしてそれは巧美も同じである。

『と、突然お訪ねてして申し訳ございません』
『いえいえ。どうぞ、お構いなさらずに』

 お互い笑いあって場を和ませようとするのに必死である。地下で聞いている善人は失笑ものであった。

「巧美。性的な欲求を満たしてくれ」
「かしこまりました。善人さんに性的行為を起こします」

 地下で繰り広げる妖しい取引に、地上で影響を及ぼされる。

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 海老原摩耶についていく善人。地下にいるから摩耶の姿を見失うことはない。
 摩耶もまた善人についてこられているとは夢にも思わないだろう。
 向かった先は、不治の病と診断されていた楠木柚子―くすのきゆず―の病室だった。既にベッドから降りることのない彼女は、部屋から窓の外を眺めていた。それでも、来客には笑顔で迎える。
 柚子の顔を見た摩耶は安心の表情を浮かべた。

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『今日は体調大丈夫かしら?』
『はい。普段より元気です』
『そう。それはよかったわ』

 外は良い天気。青空から靡く爽やかな風を、窓を開けて取り入れる。

『本当に気持ちの良い風ですね』
『そうね。それはきっと、楠木さんが部屋に籠って辛気臭くなっているからだと私は思うの』
『・・・そうですね』
『でしょう。そこで、楠木さんもまた気持ち良くなりたいと思ってね。タオルで汗を拭いてあげるわ』
『はい』

 パジャマを脱ぎ始める柚子。看護師が女性の肌を触るのは本来は禁止であるが、柚子と摩耶の間では内緒でこうして汗を拭いてもらっているのだ。
 成人女性にしては貧相な身体になってしまっているが、柚子はまるで摩耶を母親のように思いながら話し相手として一日を過ごしていた。

「へえ。楠木柚子なんて人初めて見た」

 その様子を地下で見ていた善人。当然病室が違えば出会いもない。柚子は部屋から引き籠っているので、普段ならば知るはずのない相手である。地下には部屋と言う概念がない。全てが覗けるのである。

「俺と同じ年くらいか。本当に3つ下のように思える・・・」

 善人が柚子に触る。ひんやりとした冷たい感触が、善人の手の平から込み上げてくる。

「あ・・・」

 柚子が声をあげたような気がした。

『えっ?何か言った?』
『い、いえっ、なにも・・・』
『そう?』

 摩耶は自分が変に触ってしまったのかと思ったが、気のせいだと納得して再び身体を拭き始める。

「あれ?俺にも聞こえたんだけどな?」

 善人が触った柚子から聞こえてきた。もう一度触ると、柚子の口からか弱い「あっ・・・」という声が聞こえてきた。
 声がでた。地下の住人の中で声をあげる人物がいることに初めて気付いた。

「これが彼女の喘ぎ声ってやつなのか。なんだか声が小さいけど、お腹に力が入らないのかな?」

 しかし、声が出るだけでも十分。今まで触っていても声がない、反応は外から聞こえてくるだけという善人にはまるで舞台裏で作業している黒子のような役目でしかなかった。
 それが今回ようやく相手が反応を示したのだ。今まで以上に、まるで柚子を彼女のように愛撫する善人。肌蹴た乳房に直接触ると、彼女の乳首もほんのりピンク色に染まって勃起してくる。

「なんだか・・・胸がくすぐったい・・・」
「それは俺が触っているからだよ?」
「摩耶さんに触られて感じちゃってるのかな?」
「・・・んーーーー?」

 何かがおかしいと、善人は愛撫を中断した。
 目の前にいるはずの善人を柚子はまるで見ていない。地下から聞こえる声は、まるで地上にいる摩耶を見ている声そのもの。

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『そうしたの?胸ばっかり見て?』
『いえ。ちょっと気になることがあって』
『胸で気になる・・・まさか、しこり?』
『違いますよ』
『ですよね~』

 楽しそうに笑う声が聞こえるが、地下では――、

「あれ?さっきまで触られていた感触が消えた・・・。変なの?気のせいかな?」

 摩耶と笑いながらも地下では自問自答している柚子の声。

「この声はひょっとして、楠木さんの心の声じゃないか?」

 善人が仮説を立てる。そしてもう一度柚子に触れる。柚子の身体がビクンと震える。

「あっ、また・・・?」
「・・・やっぱり」

 そういうことかと、善人は理解した。
 地下にいる人物の心の声が聞こえるようになったのだと。 
 先程まで小さかった柚子の喘ぎ声は、心の中で抑えなくちゃいけないと言う自制心が働いたからだろう。結局善人を見てはいないと言うことが分かったものの、それでも声が聞こえるのならと、善人はさらに柚子に悪戯を強める。



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 善人は地下からある人物を探していた。
 広大な地層から人を探すのは骨が折れそうな作業であったが、幸運なことにここは病院。病人はベッドの上におり歩いて出ていくこともない。地形を把握していれば何処に誰がいて自分が今どの地点にいるのかが把握できた。
 その中で働く看護師が多く集っている場所を見つけた。

「ここがナースステーションだから、いるはずなんだけど・・・」

 物陰に隠れていることも地下では絶対にあり得ない。看護師の中に善人の探す人物はいなかった。

「あれ?摩耶さん何処行ったんだ?」

 海老原摩耶を探しに再び探しにいく善人。闇雲に探してみると、摩耶の姿をようやく発見することが出来た。

「いた!摩耶さん!」

 摩耶は女の子と一緒だった。女の子は裸の状態で、摩耶はナース服を着てはいるものの、裸足である。目を閉じている女の子は摩耶に何かをしてもらっているように思えた。
 上から聞こえる水滴の音。そこから連想し、善人はこの上がお風呂ではないかと想像できた。

『お湯加減はどう?』
『はい。ちょうどいいです』

 蛇口を捻りシャワーを頭から浴びる女の子、木更津奈緒―きさらづなお―。彼女は盲目であり、誰かに手伝ってもらわないとお風呂に入ることもできないのである。
 今日は摩耶が当番である。シャンプーを手につけて彼女の髪の毛を丁寧に洗っていく。

『くせっ毛なのよね、奈緒ちゃんの髪の毛は』
『そうなんですか?』
『女の子は綺麗でなくちゃだめよ』
『でもわたし、目が見えないし』
『そんなの関係ないわ。心から綺麗にならないとね。だから、面倒になっちゃだめ。一度鏡の前で髪の毛を櫛でとかしてみたらどう?形だけでも女の子っぽくなれると思うわ。こんな綺麗な黒髪なんですもの』
『そうですね。やってみようかしら、うふふ・・・』

 髪の毛を洗われながらもくすぐったそうに笑う奈緒。髪の毛にシャンプーの泡が立つくらい摩耶は奈緒の髪の毛を爪を立てながら懸命に洗っていた。
 リラックスをしているが何も出来ない奈緒に標的を変更し、善人は地下から行動を開始した。

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 地下にもぐってしまった善人は唖然としながらも、これから一体どうしたらいいのかを考えていた。

「脱出方法も分かんないしな・・・」

 そもそも地上に善人はいるのだから、地下にもぐった善人はいったい何者なのか、精神体と言うものなのかということも視野に入れて考えなければならない。
 何故俺は生まれたのか――、
 ここは一体どこで――、
 いったいなにが起こるのか――、

「――うわっ!」

 一瞬、眩暈がした。暗闇の中で眩しさがで目がやられたというのは不思議な感覚だ。それでも善人は光りに慣れて身の回りを見始める。

 ――そこは既に別世界だった。

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 人がいたのだ。
 善人と同じように地下に人が現れた。しかもそれは、善人の知っている顔が多数いた。
 看護師から医者、同部屋の眼帯手術間近の女性から、お見舞いに来る女子高生まで――

「どうなってるんだ・・・いったい、これは・・・」

 善人が近づいて様子を見にいく。それぞれ本人と同じ容姿をしてはいるが、人間味がなかったり、なにかを喋っているのだが、声が出ていなかったりで、何かが皆おかしかった。
 その中に、先程善人を介抱してくれた海老原摩耶の姿があった。同じように目の前で手を振ってみたりするが、皆と同様反応を示すことはなかった。
 まるで善人が見えていないように、誰かと話をしていた。
 耳をすますと微かに聞こえてくる摩耶の声。それは地上から聞こえることから、どうやら摩耶の真下に善人はいるようだ。
 地下という地平線が見える大海原で、距離感も分からない善人は、誰がどこにいるのかで自分の居場所を認識するしかないのである。トイレからいつの間にか移動していたことに、さながら瞬間移動したようなおおらかな気持ちになった。

「摩耶さん。聞こえていないのか・・・?」

 呼びかけるが返答がない。

「摩耶さん!!!」

 ならばと今度は思わず抱きついてみる。すると――、

『きゃっ!』

 上から悲鳴に似た声が響いてくる。善人は耳を澄ませて会話をきいていた。

『どうしたんですか?』
『いま、誰かに抱きつかれた様なきがして』
『誰もいませんよ?』
『そうですよね?・・・おかしいなぁ』

 気のせいのように再び患者と話し始める。

「・・・俺の行動が反映されるのか?」

 善人が地下で行ったことが地上の人物にも反映される。まさか善人がしているとは夢にも思わず、まるで透明人間に襲われたような感覚に陥るのである。


 ――この、地上にいる人たち、全員が。


 70億人以上の人々と繋がっているこのアンダーグラウンドで、善人は誰にも気付かれることなく犯すことが出来る。

「マジ、かよ・・・そんなことあるのかよ・・・」

 手がブルブル震えてくる。
 病院と言う隔離された空間でしか生活できなかった善人が選んだのは、外ではなく地下に引き籠ること。
 足が不自由だけど歩く必要のないその場所は、善人しか知ることのない隠れた穴場になった。

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「幸福に上限がないのなら、不幸も下限がないと思わない?」

 貴美子の幸福論は前回言った通りだ。幸福とは妥協点である。上限がないと言う例題に対して、足を引っ張るマイナス要素を自ら課すことで終わりのない話を『終わらせる』方向へ持っていくことが出来る。
 面白い作品に期待度がたまっている最中、ツマラナイ要点を盛り込み話全体の期待感を消失させる。
 全員を救うことはできない。最後まで残る者しか救わない――。 

「幸福と不幸はいつも平等。じゃないと不平等でしょう?プラスマイナス零の中間層の幸福が最も幸福だと私は思うわ」

 ――『普通』と呼ばれることを目指す牧村貴美子の幸福論。
 怪我をするのも、熱に寝込むのも、誰もが一度は通る道であり、誰もが一度は経験しなければならない道。風邪を引いたことがない人がいるとすれば超人であり、別人であり、異人である。
 皆が感じたことがあるから共有できる。自慢も妬みも一切なくなるのである。

「妥協点の幸福を探す為に怪我をして痛みを知る。あなたの仰ることは尤もだ」

 人には優しくなり、人に気を使える。
 病院とはそういうところだ。強い自分に病名を教え、弱体化させる。
 怠慢や傲慢、自分勝手を全て殺し、『先生』という他人に身を預けさせることを身体に教え込ませるのである。
 人は決して怖くない。恐れていたのは自分自身だという勘違いを拭い去り、一度人生を零に戻して退院させるのである。
 第二の人生の始まり。本当の幸福の始まりである。

「――では質問しましょう。誰が幸福と決め、誰が不幸と決める?」

 強いから幸福?弱いから不幸?
 全てを零に戻したところで『あたりまえ』は変わらない。幸福とは人の集団的概念が生み出す幸せの空間であり、不幸とは集団的概念が生み出す辛い空間である。
 その二つを零に戻したところで。『幸福』は『幸福』、『不幸』は『不幸』。零には成りえない。『零の幸福』なんかありはしない。『零の不幸』が存在しないのだからもし存在するとすれば矛盾が生じてしまう。
 よって牧村貴美子の幸福論は破たんする。

「・・・・・・・」

 この世界に生きる人々が幸福だ、不幸だ叫んだところで例外者がいる限りこの手の話は水かけ論だ。

 生まれや育ちが違えば考え方が変わる。
 戦場でいきた子供と平和でいきた子供の価値観が違うように――

「――人によっては下層の幸福も上層の不幸もあり得るのだから」
「うふふ・・・アナタ面白いわね。その通りよ」

 牧村貴美子は賛同した。自らの幸福論を否定されたうえで笑っているのはひどく無気味であった。
 それは私との会話が終わっていないと言うことを意味していた。

「上限のない幸福も、下限のない不幸も、下層の幸福もあり得る。でもね、上限の不幸だけはあり得ないでしょう?幸福は不幸を凌駕しないのだから、不幸と幸福が逆転することはあり得ないわ。下層の幸福に落ちつく人には、どん底の不幸しかないだけのこと。中が取れれば私の幸福は成就できる」

 幸福と不幸が生まれる限り『零の幸福』は生み出せる。ひどい暴挙だ。
 価値観が違っても例外者がいると暗示させても、幸福と不幸の距離感は変わらないと言う。
 たとえそれが、最下層近くにある幸福と絶望だとしても。


「人類皆平等はあり得ない。不平等な世界だからこそ幸福も皆平等じゃないでしょう?そんな私は『零の幸福』という金字塔を建てようとしているのよ!皆が曖昧に見ている幸福を私が形作るの。素敵じゃない!?」

 そんな絶望を突きつける貴美子は、悪魔に近い存在なのかもしれない。ピンポイント射撃。ここぞと言うところを狙い撃ち、相手の逃走を固めていく。現実逃避をさせてはくれない。辛い現実から逃がさない強制労働。
 しかし、幸福が零であれば不幸も零であり、現実逃避も必要なくなる素敵な世界だと彼女は言う。

「あなたの夢は低すぎる!『零の幸福』など誰が望む?!そうやってあなたは人の幸福をただ下げているだけだ。夢も希望もないから幸福もないって、目に見える真実だけがすべてだと教えるのが看護師か?人はそんなに強くない!」

 幸福を目指すなら上を目指したいじゃないか。誰だって幸せだけは譲れないだろう。
 九死に一生を体験しろ、大怪我をしろ・・・、幸福を『下げてから上げようとする』貴美子の行動は本当に幸福なのか?
 浮き沈みのある人生と平凡の人生、いったいどちらが幸福だと言うんだ?
 何故喜劇を欲する?
 何故悲劇を欲する?
 人生はそんなドラマチックではない!

「ウフフ・・・。わたしはただ会話を楽しんでいるだけですよ?思わず最終話だから喋りすぎちゃっているかもしれないわね。良かったわね。あなたは茂木医師から『診断』されなくて」
「『診断』?」
「現実を『診断』・・・医師の言葉に逆らうことなどできやしない。会話すらなく、患者は医師の診断を受け入れるしかない・・・フフフフフ・・・!!」

 貴美子が茂木飛鳥のことをうっかり喋るくらい気分が良いらしい。
 何の話か分からないが、茂木飛鳥の『診断』はなにか不吉で、恐ろしい予感がした。それこそ、茂木接骨病院で入院する患者は全員、入院すら必要のない人々で、働く看護師は人選して集められた犠牲者のようで――、
 茂木飛鳥と牧村貴美子の用意した駒でしかないのではないか――
 寒気がした。この病院は・・・悪鬼に取り憑かれている。

「幸福を諦めたくないからって、いつまでも叶わない夢や希望に縋りついて大事にしなくちゃいけないものを見逃してしまったら可愛そうじゃないですか?」
「現実を教えることがそんなに重要か?現実は教えるものじゃない。『現実』とはただソコに在るだけの言葉だぞ!」
「あら?いつまでも叶わない夢や希望に縋りついた空想よりはよっぽど存在感あると思いません?現実はそんなに甘くないことを教えちゃいけないのですか?」
「そんなこと教えなくても人はいずれ気付く」
「早期発見は大事ですよ?何事においても・・・」


 自分が、他人よりどれほど幸福(不幸)か――
 幸福の方には際限のない、偽りのない幸福を。そして、不幸の方には――


「辛み、苦み、恨み、妬み・・・、そんなマイナス要素よりもっと下層に最高の幸せがある」

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 ――全てを零に戻しましょう。

 懐から出した最後の『薬品』。白い液体を吐き出すそれが、いったいどんな幸福を用意していると言うのだろうか?
 バッドエンド?ハッピーエンド?ハーレムエンド?トゥルーエンド?

 その全てを超えた最終話『下剤』が遂に始まる。
 
「アンダーグラウンドに眠る幸福をご招待いたしますわ」


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