純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『他者変身』 > 人形『忘れ物には要注意』

 世の中、なにが起こるかわからないものだ。
 独身貴族まっしぐらに突っ走っていたボクが、何の因果かもう一度高校生活をやり直すことができるなんてよ。
 しかも、ボクがただ若返って17の子供たちに混ざってワイワイするわけじゃない。
 女子高生だ。
 ボクは隣の家の横内ちまたになっている。それは彼女が自分でしでかしたミスからよるものだ。

 彼女は自分で『人形』を置き忘れた。彼女の『人形』を触った途端、視界が普段より小さくなっていたのだ。そして、鏡の前では俺の姿がちまたちゃんになっていたのだ。

「うひひ・・・。ボクがちまたちゃんだなんて・・・はぁ」

 両親の寝静まった夜。
 幼い身体を弄りながら、成長途中の乳房をわし掴む。乱暴に揉んでいる内にピリッと刺激が身体の内から感じ、全身にじわりと広がるとちまたの身体もその刺激に火照り始めていた。

「うはっ。幼くてももう感じることが出来るんだな。うひひ、いいなぁ。あん、あんっ」

      573fdde0.jpg

 ちまたの声で喘ぐだけでボクはちまたちゃんになっていることに興奮する。その興奮がちまたちゃんの身体を高揚させ、快感をさらに増幅させる。ボクの動きにちまたちゃんの身体が感じ、触れば触る程熱くなっていく。
 おま〇こから愛液が滴り、鏡に映して自分を見れば、今まで見た中で一番艶っぽいちまたちゃんがイヤらしい目で自分をみていた。

「あーん・・・ちゅばっ・・・くちっ・・・ふぅん・・・」

 口に含んでみるとちょっとしょっぱい女の子の味がした。これがちまたちゃんの味なんだ。ボクの知らないところでちゃんと女の子になっていたんだねと、自分の姿をみてそう思う。

 クリ〇リスを弄れば、今まで触っていた場所の中で一番強い刺激が身体中を襲ってきた。ソコを触れば触るほど快感が蓄積されていき、全身の毛が逆立ち、身震いを起こしてしまう。

「ひやあ!!キモチイイ~!クリトリス、すごい敏感~」

 クニクニとクリ〇リスをひたすら愛撫し、指の肉に擦りつける。擦られたクリトリスが赤く腫れて、一皮剥けて大きくなった。

「あはぁ、このかんじ・・まちがいない・・・・・・イクぅ――――っ!」

 喜びながら初めて女性の感覚を味わう。ちまたちゃんが逝ったのだ。鏡の中でちまたが息を絶え絶えにベッドの上で肩を大きく揺らしていた。
 不敵に微笑む彼女の笑顔は、まさしくボクが彼女の表情で作っている笑顔そのものだった。


続きを読む

「うぅ・・・」

 守男は泣いていた。
 家に引き籠って一週間が経つ。その間、誰とも会っていない。カーテンが引かれた窓の向こう、夜が来るのが本当にイヤ。

 家の隣はちまたの家だった。もと自分の家だった。

 あれからちまたはいつまでも奏人でいるわけにはいかず、ちまた(守男)が置いていった自分の『人形』で守男に変身することでファンの集団から逃げ切ることが出来た。
 だからと言って、自分の姿に戻ることはできず、しかたなく守男の家に帰ることになった。隣の家だからと迷うことなく帰ることが出来た守男(ちまた)であったが、殺風景とした家では家族団欒の暖かさなど一切ない。淋しさとみずぼらしい体型が精神的ダメージを募らせ、守男(ちまた)を蝕む。

「ぐすっ・・・・・・ねよう・・・」

 少し寝た守男(ちまた)が目を覚ましたら、陽はすっかり暗くなり、夜がすっかり更けていたのであった。
 時刻は夜10時。昨日までならすっかり眠っている守男(ちまた)である。ふと、視線をあげてちまたの家を眺める。
 そこにあるちまたの部屋の電気だけが、明かりが灯っていた。
 なにをしているのかと、守男(ちまた)は窓越しに部屋の中を覗きこむと、ちまた(守男)は自分の身体を慰めているところだった。
 全裸になって、大事なところを弄りながら、顔を真っ赤にして快感を得ていたのである。
 声は聞こえなかったにしても、小さく開いた口からは、喘ぎ声を発していたとしても不思議ではなかった。

「なにしてるの!私の身体で!?」

 窓越しとはいえ、ちまたのオナニーをばっちり見える場所を確保している守男の家。もしかしたら自分もこうやって守男に見られていたかと思うと怖くて仕方がない。しかし、声が届かない家の中で、ちまたのオナニーを見られると言うのは、一種の盗撮をしているのと変わらなかった。
 もと自分の身体がオナニーをしている。次第に守男の呼吸も荒くなっていた。

「・・・わたし、あんなに激しくいじったことない・・・!」

 ちまた(守男)の手の動きにビクンと身体を震わせるちまたの身体。若い身体に激しい刺激が襲っているのか、部屋の明るさもあってちまたの乳首がビンビンに硬くなっているのが分かった。ソレを弄って表情を蕩けるちまたを見ていると、守男の手も自ずと自分の逸物を擦っていく。

「はぁ・・・はぁ・・・」

 おま〇こからあ愛液が流れているのか、指で掬って舐める仕草をするちまた。そしてさらに涎で濡れた指を膣内へと挿入して、快感を掘り出す様に指の出し入れを繰り返している。

「あん・・・あん・・・」

 そんな声が今にも聞こえてきそうだ。ちまたの声の喘ぎ声を自分で想像するだけで、守男の逸物ははち切れんばかりに隆起しているのだ。

「あうっ・・・。おち〇ち〇がイタイ・・・」

 撫でれば撫でるだけ、さらに逸物は容赦なく膨らんでいく。守男(ちまた)が感じたことのない男性のオナニーである。妄想でも空想でもなく、目の前にあるちまたのオナニー―おかず―を見て立派なオナニーをしていたのである。

「はっ、はっ・・・なにか、でちゃう・・・くる、くる・・・!」

 逸物を擦るスピードを速め、フィニッシュへとひた走る。ちまたもまた天を仰いで声を荒げていた。

「いくうううううぅぅぅ――――!!!」

 ベッドに倒れこむちまたを見て、向こうもイったのだということが伺える。カーテンに出した自分の精液を拭くこともせず、その姿をじっと見つめていた守男(ちまた)が、ガラス越しに視線を合わせた。ちまた(守男)も守男(ちまた)に気付いたのか、ニヤリと不敵に笑って見せた瞬間、守男(ちまた)は我に帰って急いでその場を離れて風呂場へと向かったのだった。

 自分―ちまた―をおかずにしてオナニーをしてしまったことへの罪悪感。守男の思考そのものになってしまいそうな恐怖感は、風呂場で拭うことはできなかった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「うぅ・・・」

 守男は泣いていた。
 家に引き籠って一週間が経つ。その間、誰とも会っていない。
 一週間たっても、この醜い姿のままで生きてしまったのだ。
 早く元の姿に戻りたい。
 そう思った守男(ちまた)は、ちまた(守男)に会う決心を付けた。

「いよぅ!」

 その矢先、家のベルも鳴らすことなく、誰かが家の中に入ってきたのだ。その聞き覚えのある声に守男(ちまた)は顔をあげた。

 ちまた(守男)だった。学校帰りの制服姿の格好で、守男(ちまた)に会いに来たのである。

      b8ed4e52.jpg

「久し振り。元気してた?」
「あ、あなた・・・ゴホッ、ゴホッ」
「誰とも喋らないと、急に言葉は出てこないよね?そういう生活も楽じゃないよねー」

 楽しそうに話すちまた(守男)。いや、楽しくて仕方ないのだろう。

「素晴らしい女子高生ライフ。おじさん、回春しちゃったよ・・・て、いま本当に高校生に戻っちゃってるのか、アハハ・・・。誰もちまたちゃんの中身がおじさんだと気付かないから、おじさんが後ろから抱きついても、悪ふざけと思って笑ってすませてくれるしね!ほんとう、女の子は得だよね!」

 女子高生になった立場を利用して、裏の笑顔を前面に押し出して嗤うちまた(守男)。こんな下種な男の隣にいる友達の安否が気が気でない。

「わたしの友達に、変なことしてないでしょうね!」
「ううん。ボクからは何もしてないよ。ボクの方からはね」

 遠回しの口ぶりに、最悪の想像が思い描かれる。

「まさか――」
「まあ、ちょっと悪ふざけで胸を揉み続けていたら、急に顔色を変えて目を潤ませてきてさ。・・・伊代奈ちゃんだっけ?いきなりボクの唇を奪ってきたんだよ。「どうしたの?」って聞いたら、「もう、耐えられない」って言って襲いかかってきたからさ・・・、・・・・・・初めてレズを体験させてもらっちゃった!」

 血の気が真っ青になる。友達が強姦されたのを聞いたような衝撃が守男(ちまた)に襲いかかってきた。

「最低!伊代奈になんてことを!」
「おっと。これで逆に告白を断ったら、伊代奈ちゃんがもっと可愛そうじゃないか。不可抗力だよ」
「自分でそうさせておいて、よくもいけしゃあしゃあと!」

 怒りたくても今の原因を作ってしまったのは、公園のトイレで自分の『人形』を置いてきたちまた自身にあるのである。反省をこれでもかと思うくらいした守男(ちまた)である。友達にもいっぱい謝らなくちゃいけないと思う。 
 十分反省したと守男(ちまた)は自負する。

(だから、もう許してくれても良いよね、神さま?)

 と、心の中で呟いた。

「早く身体を返して!」

 一週間前と同じ台詞を投げかける。しかし、ちまた(守男)は鼻で(笑)、『人形』すらその場に出さなかった。

「そう言うなよ。今日はとっておきのゲストを呼んでいるんだからさ」
「ゲスト・・・?」

 守男の家に遊びに来るゲストは男友達でも数少ない。一体誰だというのだろうか。
続きを読む

 奏人(ちまた)が見る横内ちまたの姿。
 公衆トイレで全裸になってオナニーしている姿に驚愕させられる。

「あっ、あんっ・・・」

 目を閉じて一心不乱に自分のクリ〇リスを必要に弄っている。見られていることに気付いていないのか、涎を垂らして快感を蝕んでいるのを見て、これが自分なのだということに疑問さえ感じてしまう。
 こんな顔して普段オナニーしているのだろうか、誰かに見られたらお嫁に行けなくなってしまうのではないかと思うくらい、ちまたの表情はだらしなかった。

「やめてえええぇぇ!!!」

 ちまたに対して大声をあげる奏人(ちまた)。驚いたように顔をあげたちまたが、奏人(ちまた)に見られているのに気付いてその行為を一時中断した。

「な、なに?」
「やめて!私の身体でヘンなことしないで!」
「私の身体・・・・・・あ、ああ!」

 ちまたが奏人の正体に気付いたように納得して頷く。そして、ニヤリと笑って見せた。

「ちまたちゃんか」
「あなた誰ですか?なんで私のこと知ってるんですか?」
「家が近所だからね。・・・うひっ。でも、覚えていないって言われたからねぇ・・・」
「覚えていない?・・・・・・あ、ああ!」

 今朝のやり取りを思い出し、ちまたがその台詞を言った相手を思い出す。

「若林さん!?」
「そうだよ。ちまたちゃん。覚えてくれていたんだね」

 ちまた(守男)がニコッとほほ笑む。自分の表情が自分に向けられると、ちまたは顔が青ざめるのを感じていた。

      b0b687bc.jpg

「ちまたちゃんを追ってトイレに入ったら、洗面台にちまたちゃんそっくりの『人形』が置いてあってね。それを拾って『フィギュア』にして持ち帰ろうとして遊んでいたら、急に光りに包まれてびっくりしたよ。でもね、目を開けてみたら、ボクがちまたちゃんの『人形』と姿が入れ替わっていたんだよ。もう、ほんとびっくり!こんな『人形』が世に出回っていたんだね。ちまたちゃんもどうやって手に入れたのかな?」

 嬉々して話すちまた(守男)。自分の声なのに守男の口調で話されると雰囲気も普段と全く違って、キモい。しかし、それが今のちまたである以上、早く元に戻りたくて仕方がなかった。

「それ、わたしが忘れたものなんです。それがないとわたし、元に戻れないんです。お願いだから、返してください」

 ちまた(守男)に対して誠心誠意を込めて頭を下げる奏人(ちまた)。それを見てちまた(守男)は明らかな上から目線で言った。

「・・・ねえ、別に戻らなくても良いんじゃない?」
「えっ?」
「ボクがちまたちゃんを演じてあげれば世間は誰も気づかないでしょう?なんだったらちまたちゃんには守男―ボク―の『人形』を渡しといてあげるよ」

 ちまたの『人形』と入れ替わった守男は今や『人形』サイズとなっていた。しかし、そのたるんだお腹やだらしないシャツは『人形』の価値にしても一銭にもなりそうもない売れ残り。自ら欲しいと言う買い手はいるはずがなかった。

「イヤ!わたしは元の姿に戻りたいの!お願いですから返してください!」
「・・・分かんないかなあ?ボクはね、返したくないって言ってるの」
「っ!」
「三十歳近いブ男の身体なんかより、ピチピチの若い女の子の身体の方が興味あるに決まってるだろう?未だ股を開いてセックスしたこともないんだろう?ボクがきみの処女を奪って精いっぱいちまたちゃんの身体を堪能した後に返してあげるよ」
「そんな、ヒドい!私を『人形』のように扱わないで!」
「うひひ・・・。こんな大事なものを忘れたきみが悪いんだよ。自業自得だと思って諦めなよ」

 ちまた(守男)は再びちまたの身体を弄り始める。守男が興奮しているからか、ちまたの乳首は今まで見たこともないくらい勃起していた。誰かに全裸を見られたこともなかったちまたが、客観的に自分の全裸を見ることになるなんて夢にも思わなかった。

「あんっ・・・乳首すごい敏感・・・こんなに感じたこと一度もないよ。男の身体と女の身体はやっぱり違うね」

 小ぶりな乳房を回す様に揉むちまた(守男)の動きに合わせて、イヤらしく乳房が動いている。寄せてみせて谷間を無理やり作って見せたり、上にあげてみせて一気に落として、ぷるんと揺れる乳房を奏人(ちまた)は唖然と見ていた。

「うひっ・・・ちくび、だんだん痛くなってきた・・・あんっ、あんっ」

 切ないような声をあげるちまた(守男)。こんな声をちまたは一度も上げたことがない。守男が提案している入れ替わりの生活なんて絶対無理だと言うことが伺えた。

「ムリだよ。若林さんにわたしの真似が出来るはずがない」
「・・・・・・へぇ?」
「わたし、そんな声上げないし、そんなにエッチじゃない。絶対友達があなたの正体に気付くもん」

 伊代奈、悦美、はたまた華子でもいい。ちまたの正体がただのエロジジイであることに気付かないはずがないと奏人(ちまた)は断言できる。
 話口調も、雰囲気、目線・・・どれをとってもちまたじゃないのだから。
 それでもちまた(守男)は自分の持つ危ない雰囲気を壊さない。絶対に曲げない上から目線で奏人(ちまた)を見下していた。

「それはどうかな・・・?うひっ・・・」
「えっ?」

 ――バタンと扉を閉めて、個室トイレに奏人(ちまた)を閉じ込めて鍵をかけるちまた(守男)。一体なにをするつもりなのだろうかと思っていると、ちまた(守男)は突然、奏人(ちまた)の唇を奪ったのだった。


続きを読む

「いたいた、みんな。ししし・・・」

 奏人となったちまたは友達を見かけて呼吸を整えていた。あとは出るだけというタイミングで一呼吸落ちつかせることで、自分が西川奏人であると自己催眠のように何度もつぶやく。
 不思議と心を落ち着かせると自分が奏人としての感覚さえ芽生えてくる。ライヴで熱唱する奏人としての記憶が頭の中に浮かんでくる。
 熱唱しているのは自分で、ノルアドレナリンが巡ってハイテンションになって観客を魅了する光景が目に焼き付いて離れられない。
 それを思えば、友達の前に出てくることに何の緊張もせずにすみそうだ。

「よし、いこうっ!」

 奏人として姿を現したちまたに、友達が気付いて表情を唖然としていた。

      18c19016.jpg

「ねえっ!あれ、西川奏人じゃない?」
「そんな、ウソよ!こんな田舎町にくるわけないじゃん!」
「でも、凄いそっくりじゃん!?なんで?」

 友達がきゃあきゃあ騒いでいる。奏人(ちまた)が微笑むと友達はさらに顔を赤くしていた。

「あ、あ、あの!失礼かもしれませんが、ひょっとして・・・西川奏人ですか?」

 友達の悦美―えつみ―が勇気を出して口を開く。

「そうだけど――」

 肯定の言葉を受け取った瞬間、「きゃああああ!!!」と感動に震えた声が公園内に轟かせた。

「本物だよ、ほんものだよ、伊代奈!」
「そうだね、びっくりだね!」
「握手して下さい!」
「私も~!」

 悦美と伊代奈が揃って握手と、ちゃっかり用意していた色紙でサインを求めた。
 奏人(ちまた)はいとも簡単にサインを描いてみせた。
 一人だけ未だに唖然としている華子―はなこ―も恐る恐る奏人に近づく。それは本人の登場によりどう対応したら分からないと言った表情で、普段勝気の華子のしどろもどろする様子は貴重な一枚である。何を隠そう華子もまた西川奏人のファンであった。

「こんな場所にどうして起こしになったんですか?」
「ちまたに呼ばれたんだ」
「ちまたって・・・、じゃ、じゃあ、横内さんの話本当だったんだ!」
「明日から態度変えないとね」
「わたし、薄々ちまたの話は本当じゃないかなって思ってたんだ。横内さんって良い子ですよね~」
「あっ、こらっ、ずるい。一人だけ偽善者!」
「あはは!」

(あー。いいなあ。ファンに囲まれているってこういう気持ちなんだぁ・・・)

 ファン―友達―に好かれている奏人(ちまた)は心地良い気持ちであった。これで半信半疑だった友達が今後一切ちまたに疑いの眼差しを向けることはないだろう。
 奏人目当てにお宝をだす華子や、記念撮影だと二人っきりで携帯のカメラでポーズを決める。

(せっかくだし、良い思い出作ってあげないとね!)

「じゃあ、撮りますね。はい、チーズ・・・えっ?ええええっ!!?」

 奏人(ちまた)が伊代奈の肩を寄せてくっつきあった瞬間にシャッターは切られた。伊代奈が自分の携帯を見て悶絶していた。永久保存版である。

「あーずるい、伊代奈!ずるい!私にも一枚撮ってください!」

 華子も急いで携帯でカメラを起動させて奏人の横につくと腕を絡まして、自分の胸を押しつけていた。

「はい、チーズ・・・ちゅっ!」
(おいおい・・・)

 シャッターのタイミングに合わせて奏人の頬にキスをする。 「きゃああ~私ったらいっけない!」と、さらにテンションが上がっている華子。貴重な一枚である。
 実に有意義な時間であった。しかし、ここまで騒ぐと別の場所から西川奏人が来ていると言う噂が広がってくる。公園を包囲するかのように眼をギラギラに輝かせた女性たちが、今か今かと襲いかかってきそうだった。

「俺、もういかないと」
『え~!?もういっちゃうんですか?!』

 甘い声で鳴く子猫のように駄々をこねる友達。その息はぴったりで寸分の狂いもなかった。

「また必ず会いに来るから。ちまたのことよろしくな」
「はい。私が面倒みます」
「ダメなことはダメって躾けます」
「絶対に幸せにしてみせます」

(わたしって一体どういう目で見られてるんだろう・・・)

 薄幸少女としての立ち位置・・・あまり嬉しくないものだ。


『みなと~~~~~~!!!!!!!!!』

 ドドドドドド・・・・・・・
 足音による地鳴りと供に、大勢の女性たちが公園の中に押し寄せてきた。田舎の芸能人は都会のジャイアントパンダ並みの大ニュースである。ファンクラブの格好の女性までおり、そのあまりの人気ぶりに奏人(ちまた)まで驚いていた。

「わわわわわ―――!!」

 走り去る様に逃げ出す奏人(ちまた)。手を振って『頑張ってください!』と見送る友達の声など聞こえるわけもなく、奏人(ちまた)はその後十分間の全力疾走をさせられることになった。
続きを読む

 横内ちまたは急いで家を飛び出した。

「遅れちゃう。約束の時間に間に合わないよ!」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 先日、ちまたはクラスメイトの女友達と――

「私、芸能人の相内里香の知り合いなんだよ」
「ええ、そうなの?意外~」
「でしょう?みんなに隠してもしょうがないけど、彼女って中学時代に男を取っ換え引っ返して遊んでたんだよー?」
「そうなの?意外~」

 どうやら友達は相内里香の中学時代のクラスメイトらしい。それほど親しくなさそうな友達ではあるが、知り合いが芸能人というだけで自分が一目置かれる存在になるのが女性同士の会話である。羨ましいと同時に嫉妬もまた生まれる。そんな中でちまたも友達に負けない自慢話を語りはじめる。

「わたし、西川奏人―にしかわみなと―の親戚なんだよ!」
『うっそだ~!!』

 友達は皆、声を揃えて言う。西川奏人は地方で音楽活
動するボーカリストだ。その歌声や顔―ビジュアル―からインディース(特に若い女性)ファンは多く、ちまたもまた奏人の大ファンであった。とは言っても好きだからという理由が親戚だからという訳ではまったくない。
 むしろ親戚でもない、ウソである。

「あ、そっか!今日はエイプリルフールだもんね!」
「違うもん!本当だよ!」
『え~?』

      0501701c.jpg

 嘘も100回言えば真になる、という願望の現れが、ちまたを焦らせていた。
 信じて貰いたくて、
 自分の言った言葉を自分が信じたくて、
 誰かに言って貰いたくて、
「親戚なんだ」と、奏人に言って貰いたくて――

「じゃあ今度の日曜日に奏人呼んできてあげるよ!」

 そんな見栄をきってしまったちまたであった。

「大丈夫、そんな約束して?」
「ウソだったら放課後、逆立ちで下校してもらうわよ」
「い、いいよ。本当に奏人を連れてきたら、みんな私にごめんなさいしてもらうからね!」
「いいわよ!ちまたごめ~ん、愛してるわって熱い抱擁して帰ってあげるわよ」
「土下座させるんだからね!!」

 冗談半分に取られるちまたは悔しくてダッシュで家に帰る。

「うわあん、悔しい!だって自慢するから、仕方なく、しかたなく・・・」

 家に帰ってすぐに取り出したのは、昨日、エムシー販売店から届いた小包であった。中身は『人形』である。サンプルとして50体近くある人形の中に、偶然にも西川奏人の『人形』が置いてあったのだ。最近、CDすら販売しなくなった奏人が何処にいたのか分からず、淋しい思いをしていただけに、『人形』でも奏人を見られたちまたは感動を覚えていた。
 しかし、ちまたが感動したのはそれだけじゃなかった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「みんな待ってるよね、はぁ・・・早く行かないと!」

 公園に待たせている友達に会いにひた走るちまた。しかし、角にさしかかったところで人影と正面衝突してしまった。

「いてて・・・」

 顔をあげると、それはちまたの家の隣に過ごす、若林守男―わかばやしもりお―であった。

「大丈夫かい?うひっ」

 痛がっているのか笑っているのか分からない表情で話しかけられる。怒るよりも近づいてはいけないと、ちまたは表情で物語っていた。

      3b094129.jpg

「怪我してないかい?」
「け、結構です。私、急いでいますから」
「あれ?きみって、ちまたちゃんだよね?隣の子の?」
「そうですけど、なにか?」
「へえ、大きくなったねぇ。覚えてない?ボク、隣の家のもり――」
「覚えてません!失礼します!」

 怒ってその場を立ち去ったちまた。守男は走り去る後ろ姿をじっと見つめていた。

続きを読む

↑このページのトップヘ