純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『洗脳』 > 水晶『crystal』

 少女の家を案内された夾は内心穏やかじゃなかった。
 会って間もない少女に案内される。一応、エムシー販売店という従業員であるらしいが、それでもいったい、どんな家なのか、家庭環境はどんななのか、気にならないわけがない。

(宇宙人だしな・・・ひょっとしたら誰かの家に寄生してるんじゃないだろうか・・・)

「ありうるっ!?」
「はい?」

 急に声をあげた夾を見て笑う少女だ。どうやら緊張しているのは夾だけであり、少女は成人男性を家に案内していることに全く気にもしていなかった。

(ひょっとしたら見かけによらず婆ぁなのかもしれないな。宇宙年齢120歳の超高齢者・・・)

「ありうるっ!?」
「はい?」
「おまえ、本当は何歳だ?」
「年齢なんか気にしてるのかい?きみは自ら上は何歳まで、下は何歳までと上限を付けちゃう人かい?見かけより立派な人もいれば年取っても子供の人もいるのに?」
「いやぁ・・・そう言われると・・・、なんかわりぃ・・・」

 少女に尤もなことを言われてぐうの音も出ない。
 生まれた年が違うだけで気の合う上司や後輩だっている。昨今、年の差カップルなんて話題になる。
 それが良いも悪いもない。二人が良ければそれでいい。

(そりゃあそうだよな?好奇心とは言え、見た目だけは女性だもんな。女性に年齢を聞くのは失礼なものか)

 夾もまだ子供である。そんな夾を慰めるように少女はにっこりほほ笑む。見た目では良い大人が子供に慰められている図であるが、何故か夾には大人の女性に慰められているように思えた。

「ボクの年齢はきみ達の年齢に合わせると10歳くらいだ。それで満足か?」

 きみ―にんげん―達の年齢。その言葉に夾は心打たれた。

(やっぱりこいつは俺たち―にんげん―とは違う存在なのか・・・)

 人間とは違うなら、未知の生物、未確認動物、通称UMA。
 村崎色が未来から連れてきたとされる宇宙人の存在。
 本当にいるのか、という疑問を抱くことを許さない、居るのならば存在するという物的証拠が目の前にいるのだ。
 だから、きっと夾が疑問に思うのは、宇宙人の存在の有無ではない。
 村崎色が先に見た未来と言う視野―ビジョン―。何故少女だけを連れてきたのかという絶望感じる不安材料。

(いったい、俺たちが宇宙人と接触できるのは何年後の話なのだろうか?宇宙人の存在により俺たちの生活が一体どのように変化するのだろうか?――)


 『水晶』を通しても見ることが出来ない。現在と言う空間にいる俺たちは、未来と言う空間を思い通りにすることはできない。
 未来を現在に塗りつぶすことしかできないのだから。


(――いったい、俺たちの未来は、どのような世界になっているのだろうか?)


 村崎色の見た未来を、変えることができる世界になっているのだろうか・・・


「さあ、着いたよ?」

 いつの間にか到着した少女の家。それを見た俺は目を疑った。

「な、なんじゃりゃああああああああああ!!!???」

 それは円盤型した家で、地面にめり込んでいた。
 とても大きな傷を負っており、またこの円盤が空を飛ぶことはこのご時世ではないだろう。

「って、おかしいだろう?!これって、いわゆる・・・未確認飛行物体で、通称UFO――」
「未確認ってことはないだろう?現にきみは見ている。確認済飛行物体、IFOだ!」

 そんなDVD内のインフォメーション(情報)ファイルのような名前を付けてたところで冗談に付き合ってやれるほど夾の心境は穏やかじゃない。

「いつからあったんだよ!」
「もう三カ月近くになるよ?」
「その間、誰にも見つからなかったのかよ?」
「誰にも来られないようにしてるからね。実際、きみだってこの山の存在を忘れていたでしょう?」
「あっ、ああ・・・」

 都会でなければ山は見られる。しかし、俺たちの町、陣保市に山が出てきたことは一度もなかった。当然、山はあったのだ。でも、誰もが忘れていた。目視できないようにさせ、近寄らないようにした。
 この少女がだ。
 『UFO―自分の家―』を見つけられないように。

「まったく、すげえ力だな。『水晶』という能力が安っぽく思える」
「そうでもないよ。人の目は時に『見えないものを見える』ようにする力がある。ボクの能力はその応用に過ぎない。『見えるものを見えない』ようにする力が解明された時、ボクの家の存在も見つかってしまうだろう」

 「応急処置だよ」と淋しそうに少女は言った。
 少女に取って全てが闇に隠れてしまっていた方が幸せなのかもしれない。解明できない能力は時に人を引き付ける要素を持つ。それを科学の力で真実を明るみに曝したところで、得られるのは科学の凄さとそれに携わった者の使命感を満たす満足感だ。
 しかし、それで暴かれてしまった者の運命はどうなる?
 嘘ツキ、偽モノ、ペテン師、詐欺――

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 しかし、少女にはそれしか方法がなかった。
 全てを闇に隠し、『宇宙凄い』と感銘を受けさせることでしか感動を得られない。
 誰かが疑問に思えば研究室に入れられ、解剖されることだってありうる。

 ――人は闇を暴くことに使命感を持つのだから。ウソが嫌いだから。

 少女の存在が知られれば、必ず追手がくるだろう。

 そんな中で、どうして少女は笑っていられるのだろうか。
 山から下り、エムシー販売店の従業員として働き、人間と接触することを選んだのだろう。
 村崎色に連れてこられたから仕方なくなのか、
 それとも別の理由があってのものなのか、 
 どうして――

「ん?」
「どうして、俺をここに連れてきた?」

 少女の許しがなければ夾は山を忘れたままの生活を過ごしていた。少女と秘密を共有することで、夾に利点があるのと少女に不利があるのとどっちが大きいと言えば、少女に不利がある点だ。
 それなのに、どうして夾に心を許し、少女は自分の家の存在を明かしたのだろうか。

「きみは全く・・・、自分でボクを呼んだくせに。そうしたいと先に言ったのはきみじゃないか」
「確かにキスをしたいと言ったけど・・・、ここまで大きくなるとは思わなかった!あの時の俺はどうかしてた。きみのことを考えなしに、軽はずみなことを言った」

 嘘をつくのを嫌いながら、他人には平気で傷つける。
 知られたくない真実を全て暴いておきながら、俺は少女を通じて『水晶』の怖さをマジマジと見せつけられた。

「すまない!俺は・・・本当に救えないクズ野郎だ!」
「・・・・・・」

 謝る夾。
 誰にも言わないことを心に誓いながら、誠意を持って頭を下げる。
 少女はなにも言わない。怒っているのか蔑んでいるのか分からない。でも、面と向かって顔を合わせられない。

(軽いよな、俺って・・・。信頼ないよな・・・)

 少女が重い口を開ける。なにを言われても受け入れるつもりだ。秘密を暴いてしまった夾が少女にできる罪滅ぼしだ。

「合格」
「・・・へっ?」

 夾が顔をあげる。少女は笑っていた。その真意が夾には分からなかった。

「きみは『レンズ』でこれまでにない説明をしてくれた。今までは自由に遊ぶだけでその危険性を誰も解いては来なかった。――商品はただの道具だ。それを使う人の能力が道具を凶器に変えるんだよ」

 少女にとって夾に課していたのは、商品の説明を果たすことだけだった。今までと同じように終わるだけの夾―代理人―が、商品の危険性を訴えてきたのは初めてだった。

「『レンズ』はその空間にいる人を催眠状態にすることが出来る。それをどう使うかはきみたち次第だ。お遊びの中にもいつも危険が付き纏っていることを再認識すればきっと道具を楽しく使ってくれると信じているよ」
「あ、ああっ・・・」

 『レンズ』だけじゃない、『人形』、『鏡』、『電波』、『皮』、『名刺』、『時計』・・・
 少女が託した6つの商品から、なにを望むのか。
 なにを願うのか。

「楽しみはこれから始まるんだよ?」

 少女もまた全ての道具が揃ったことを喜んでいた。
 そう、ここから始まるのだ。グノーの能力を与えられた者たちの喜劇が。



 
「――――?」

 ぐいっと夾の引っ張る少女。
 せっかく良い話で終わったはずなのに続きがあるらしい。

「まだ何か残したことがあったか?」
「なにを言っているんだい?私とヤるんだろう?」
「・・・・・・・・・あ」

 すっかり忘れていた。

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 清海は夢の中でも部活に励んでいた。
 授業が終わり早速、プールの女子更衣室に向かう。今日はなんだかとても良い記録が出そう「な気がした。
 部員のみんなと一緒に着替え始める。
 指定のロッカーを開けて鞄から競泳水着を取り出した清海は、我が目を疑った。

「なによ、これ!?」

 鞄から出てきた競泳水着。部員とおそろいの水着が、いつの間にかスケスケの白色のスク水に変えられていたのだ。
 こんなの着たら身体のラインが浮かぶだけじゃなく、丸見えになってしまう。

「いったい誰よ、こんな悪戯!?」
「はい?」

 部員たちが不思議そうに清海を見る。

「どうしたんですか、キャプテン?」
「どうって、こんなの着れないじゃない!」
「どうしてです?」

 会話が部員とかみ合わない。清海は異様な光景を目にした。
 皆が白色のスク水に足を通していくのだ。着たところでその身体は丸見えなので、裸と何も変わらない。むしろ、イヤらしさが倍増していた。

「みんな・・・。どうしちゃったの?」
「どうって?これは私たちの指定の水着じゃないですかぁ」

 『ねえ?』と皆が口を揃えて言うと、清海だけ取り残された様な気持ちになる。

「そうだったっけ?・・・あははっ、おかしいな」

(それはそうよね。夢の中だからおかしなことがあっても不思議じゃないよね)

 そう自分に言い聞かせて清海もまた白のスク水に身体を通す。ピチッとした感覚はいつもの競泳水着と同じであっただけに、穿いてみるとそう気にはならなかった。皆と同じになれたことで一致団結できたことの方が気持ち的に楽だった。

「あっ、コーチ!」

 そこに登場する男性コーチ。女子更衣室に勝手に侵入する男性コーチに何の違和感も湧かないところが夢っぽい。

「皆さん。準備は出来ましたか?」
『ハイ!』

 皆が口を揃える中で清海も言う。準備とは一体何かも分かっていない。脳は覚めているのに頭が回っていないのである。

「それでは、特別実習に入りますよ。清海くん、前に」
「ハイ」

 清海が一歩前に出る。皆と同じように裸同然の格好をしていながらも部長として正しい姿勢で立っていた。

「あの・・・、それで、いったい何をするんですか?」

 ようやく清海は疑問を投げかけた。コーチは「うむ」と頷き清海をベンチに座らせた。

「特別実習だと言っただろう?それじゃあ始めようか。清海、寝ころんでスク水を横にずらしなさい」
「えっ、いったいどうして・・・あっ」

 疑問に感じる前に清海はコーチに言われた様にスク水を横にずらして大事な場所を曝してしまった。

「なんで?わたし、こんなことしたくないのに・・・」
「皆さん。よく見ておきなさい。これが清海のおま〇こだ」

 皆が清海を囲うように集まってくる。皆に見られてすぐに隠したいのに、清海の身体はまるで石になってしまったかのように動くことが出来なかった。

「いやっ、なんでぇ・・・見ないでえ!」
「うわあ、先輩。わたし達に見られて乳首勃ってきてますよ?」
「透けた水着が汗で濡れてますよ、先輩?」

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 部員の声もまさに本人そのもので、夢とは思えないほど臨場感がある。
 それなのに悪夢の光景に清海は早く夢から覚めることを望んでいた。

「これは夢よ!私の見ている夢だもの!一回、起きないと!」
「夢?これを夢だと思っているなら、しっかりと教えてあげよう。これが現実だと」

 コーチは水着を脱いで全裸になると、そそり立った逸物を清海の前に向けていた。その巨根に清海は目を奪われた。

「そんな大きなの・・・見たことない。人間じゃないよぉ!」

 夢だからと言っても認められないものがあるのか、コーチの逸物は拳サイズのビッグマグナムある。入ったら心臓まで貫かれてしまうくらいデカイものだった。

「これくらい普通でしょう?楽勝楽勝」
「そうそう。大きいぐらいがちょうどいいのよ」

 部員たちはしれっとしていることが既に異常。清海は耐えきれなくなって遂に叫んだ。

「どうして夢から醒めないのよ!!」

 夢から覚めなければ現実と同じである。
 今から犯される清海もまた、俺から逃げる術を持っていないのである。
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 皆が寝静まった夜。
 俺は一人行動を開始する。
 静かに扉を開けて、今一度、津軽清海の家へと向かった。

「でも、どうして同じ人の家に向かうのさ。別の人の家でも構わないじゃないか?」

 隣で歩く少女が質問する。ふっ、こいつはなにも分かっていない。

「当たり外れがあるよりも無難な線を責めるのがいいじゃないか」
「冒険はしないんだね。きみはイマドキの子だね」
「堅実だと言ってくれ」

 あっという間に清海の家に到着した俺。家の電気も全て消えており、どうやら家族全員寝静まっているようだ。
 とても静かな家。
 当然、鍵もかかっており、中に誰も入れなかった。

「で、本当にできるのか?」
「その為にボクを呼んだんでしょう?」

 それもそうだ。少女が何故この場にいるかと言えば、清海に会うためにどうしても突破しなければいけない壁を超えるために俺が少女を呼び寄せたのだ。
 壁とはもちろん、この家の鍵だ。侵入者を許さないそれは、当然、俺にとって最大の壁として立ちはだかる。
 人知を超えた力がなければ家の鍵は開かない。内側から鍵がかかっているから人は安心して眠ることが出来るのだ。


 そんな壁をもろともせずに、少女は笑っていた。


 宇宙人の存在にして、『宇宙』を股に掛ける者の能力。解読不能のブラックボックスから取り出す七つ道具――と、自らの力を分け与え、同調―シンクロ―する『感応―manufacture licence―』

「ボクの能力を少しだけ垣間見せてあげるよ」

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 少女が能力を解き放つと夜の静けさと禍々しい暗黒のオーラが溶け込む。まるで別世界に来ているかのような暗黒物質の空間。
 次の瞬間、ガチャッと扉の音が聞こえた気がした。
 誰も扉の前にはいない。ひとりでに扉のカギが開き、そして、俺たちの目の前で扉が開いたのだ。
 奥には誰もいない。
 なのに、まるで手招きをしているように扉は開いて中に入るよう催促をかける。

「さあ、開いたよ。中に入ろうか」

 少女はまるで自分の家のように靴を脱いで上がっていく。俺はぐいっと肩を掴んで「待て」と少女に足止めさせる。

「このままじゃもし誰か起きたら気付いちまうじゃねえか。不審者、不法侵入で警察沙汰なんて御免だぜ」
「あっ、そうだったね」

 忘れていたように少女は俺に目を合わせる。澄んだ瞳に吸い込まれそうになり、俺の中になにかが入り込んでいくのを感じた。
 これが、『感応』というものだろうか。不思議と力が湧いてくる。

「はい。これでボク達の姿は誰にも気付かれることがなくなったよ」
「本当かよ・・・」

 信じがたい。何故なら俺たちはお互いの姿を見ているのだから、誰かが俺たちに気付くことなく素通りしてくれない限りは証明しようがない。
 まわりには誰もいない。まあ、誰もいないに越したことがないんだし、少女の言葉を信じなければこの先進むことが出来ないのも事実。
 俺は決心して清海の家に上がり込んだ。
 暗闇で一体どこを歩いているのか分からないが、目が慣れたこともあってうっすらと家の内部は見ることが出来る。足まわりにさえ気を付ければ歩けないことはない。
 部屋もいくつかあり、どこに清海がいるのか分からないが、一部屋ずつしらみ潰していくしかなさそうだ。

「そんな必要ないよ。はい。この部屋だよ」

 少女がある部屋を示して俺に促す。ここが清海の部屋だろうか。清海と一度も面会のない少女が、どうして清海の部屋を当てることが出来るのだろうか。

「ブラックボックス」
「言うと思った」

 秘密、ということで、何処か腑に落ちないけど納得してしまう。
 キャラ勝ちだなぁ。論理も矛盾もあったものじゃない。『宇宙すごい』で片が付いてしまう少女の能力――

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『黒虹箱―Black Rainbow box―』

 そう少女は名乗った。
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 うちの水泳部は温水プールの為、年中泳ぐことが出来る。
 そのせいか、部活というよりも遊びの方がメインで活動していることの方が多い。
 と、何故俺が水泳部の活動のことを知っているかというと・・・

「夾!いっしょに泳ごうよ!」
「結構です」

 クラスメイト、津軽清海―つがるきよみ―が水泳部の部長だからである。
 中学までは妹が憧れていたくらい泳ぎがうまかったのだが、今ではすっかり腑抜けてしまった。

「なによ。それでも夾よりも泳ぎが速いんだからね。勝負してみる?」
「乙姫に勝てるようになってから言えよ」

 兎と亀というか。井戸の中の蛙というか。
 高校になって親の目が放れて外の世界を知ってしまった清海は、泳ぐことを一時期やめて遊び呆けていた時期があった。
 決して悪いこととは言えない。しかし、その期間の努力分だけ差が開いてしまっただけのこと。
 妹だけじゃなく、好敵手だった他校の生徒に勝てなくなってしまった清海は、どこか水泳競技という部分を捨ててしまったのかもしれない。
 今ではすっかり遊泳を楽しむ部活となってしまっていた。

「いいのかよ、他校はもう6月の大会目指してるんだろう?」
「いいの。泳ぎたい人から痩せたい人まで水泳部は受け入れるの。水の中は気持ち良いよ?」
「部活じゃねえだろ、それは・・・」
「水を好きになることを目標にした部活動よ。それでいいじゃない」
「それならそれで・・・いいわけあるかああああ!!」

 俺は叫んでしまった。

「仕方ねえ。ここは俺が人肌脱いでやる」
「一肌でしょう?」

 漢字間違いを笑う清海。しかし、その表情もぼんやりとした表情に変わっていく。
 俺が『水晶』を室内プールにセットしたからだ。

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「いいな、清海。俺は水泳部のコーチだ。部員のみんなにも俺のことを紹介すること。俺の言うことには従ってもらうぞ」
「夾の言うことに従います・・・」

 水泳部改造計画。俺はまず清海の内面から変えていくことにした。
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「・・・ってなことがあったんだよ!」

 教室内で俺の昨日の自慢話で花を咲かす。

「いやあ、妹の膣内があんなに気持ち良いとは思わなかったぜ」
「おい、マジかよ!それって、所謂、近親相姦ってやつか!?」
「そういうことだ!」

 妹に夢を見ているクラスメイトが俺の話を聞いて悶絶していた。わなわなと震える拳や唇が次へ次へと先を読ませる。
 俺が昨日あった話を全部聞かせてやる(『水晶』の部分のみ伏せて)と、男子は床に倒れて転がってしまった。

「ぬおぉおおおおおおおおおぉぉおおぉぉぉ!!!うらやましいいいいいいいいい!!!」
「だろう!?」
「衛生兵!ナパーム持ってこい、ナパーム!!」
「死傷者多数!戦線を離脱する!!」

 聞いた男子が逃げ惑う。なんとも爽快な気持ちである。

「なに言ってるのよ、バカみたい」
「ムッ?」

 そんな中で一人平然と生き残っている女子生徒は生徒会長の天野真澄―あまのますみ―とその連れであった。

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「近親相姦なんて気持ち悪い。妹になにしてるのよ?信じらんない」

 人のワイ談を聞いておいて怒っているとは何様だろう。妹を含め女性の味方にでもなったかのような口のきき方だ。

「俺の家庭に口出し無用。おまえ達だってワイ談の一つくらいあるだろう?せっかくだから話してみろよ?」
「なんだ、なんだ?」

 何故か死んだはずの男子がムクリと起き出し、女子のワイ談を嗅ぎつけるように聞き耳を立てていた。その光景はまるでゾンビのようだ。

「わ、私たちにワイ談を話させようとしてるの?」
「むしろ男性より女子の方が好きだろ?言っちゃえよ?アピッちゃえよ!」

 休み時間で異様な盛り上がりを見せるクラスの風景に誰も気づかない。
 むしろ、修学旅行の夜で集合した時のような自然の流れを学校で始めていた。
 これも単に、俺が仕掛けた『水晶』の力であるのだが・・・。

 と、ここで鐘が鳴る。真澄は助かったような安堵の表情を浮かべていた。

「残念でした。先生が来たらこの話はおしまいね。また機会があったら話してあげる」
「ああ、先に言っておくけど、一限目は自習だから」

 俺が言うと真澄は驚きのこえをあげた。

「そんなはずない。さっき先生とあったんだから!」

 真澄の声と同時に扉が開いて先生が入ってくる。

「ほらっ!いるじゃない!」

 真澄が机に戻ろうとしたが、その前に先生が教壇に辿り着くこともなく、

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「えー。今日の時間は自習にします。あとは静かにやっていてください」

 とだけ残して教室を引き返してしまった。
 皆が一瞬だけ感じた緊張感を解放して大きく羽根を伸ばしていた。

「ウソでしょう!?」

 真澄は自習になったことの喜びよりも、先生が授業放棄した驚きよりも、俺が予言を当てたことに感銘を受けていた。早速俺の周りにクラスメイトが集まり、休み時間の続きを再開するのだった。

「さあ、ワイ談の続きしようぜ。誰が最初に話す?」

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 部屋の中で『水晶』について思考を巡らす。

 『水晶』さえあれば部屋の中であれば誰でも全員をかけることが出来る。
 ということは、一人じゃなく、一度に大勢の人に催眠をかけることが出来るのではないか。

 たとえば会社だとか、ファミレスだとか、クラブだとか、コンサートだとか・・・。

 妹の部屋で試してみたものの、それではせいぜい妹とその友達くらいしか命令が出来ないじゃないか(それでも十分すぎるのだが・・・)。

「一度で良いからハーレムを味わってみたいものだな・・・」

 男の夢、ハーレム天国。

 『英雄色を好む』という言葉がある。
 英雄といわれる人は、すべてに精力的であるために女色を好む傾向も強いということだ。
 ということは、エロい奴は『英雄』だという事だ。
 精神力、体力、筋力が高いのならば、それはつまり女性の好む『色男』そのもの。
 今こそ革命のときだ!!

「全世界にエロを発信させよう!」

 明日には学校中の女子が俺に夢中だな。妄想が止まらない。

 PPPP・・・

 そんな俺を現実に引きもどす携帯電話のコール音。

「いったい誰だよ・・・」

 かけてくる電話の主を画面越しに見る。妹の乙姫だった。

「同じ家の中だろ。電話かけてくるんじゃねえよ」

 電話代を払う親の身になれ。
 それともなにか、俺とは顔も見たくないと言う意志表示なのだろうか。それならそれでショックである。
 前回好き放題させてもらった人間が言える言葉じゃないが・・・

 PPPP・・・

「はい、もしもし」
『・・・兄ちゃん』

 声の主はやっぱり乙姫だった。抑揚がいつもよりないけど、その口調や声色は電話越しでも乙姫だと分かった。

「なんだよ?」
『お兄ちゃんにお願いがあるの』
「おまえが頼むなんて――」
『・・・して』
「えっ?」

 電話越しでよく聞こえなかった。俺の声を重ねるように言ってきたせいで肝心なところを聞き逃した。
 それとも、俺がはぐらかしているだけなのかもしれない。
 聞いていたのに頭で理解できなかったのかもしれない。
 乙姫はもう一度同じ口調で言った。

「わたしのおま〇こに、お兄ちゃんイヤらしいことして」
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「この『水晶』をおけばいいだけの簡単なお仕事です。それだけで部屋中の人みんなあなたの良いなりになるよ?」

 そんな簡単で良いのか?ものは試しに妹の乙姫―いつき―で実験しようと思う。

「乙姫。入るぞ」
「入るぞって言いながら扉を開けるな!」

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 間髪入れずに怒鳴る乙姫。確かに俺が悪いのかもしれない。デリカシーがなかったかもしれないな。

「ジャージなんて色気がねえな」
「ジャージが楽だもん。家の普段着じゃん」
「着替えるんだから私服にしろよ」

 学校指定のジャージなんか汗や空気中の汚れできたないだろ?面倒でも私服にしろよ。モラルがねえ妹め。

「もし私が下着姿だったらどうしてくれるのよ?」
「えっ?・・・えっと、ありがとう?」
「違う!」
「・・・えっと・・・、もっと大きくなれよ!」
「なんで私が怒られるのさ!?」

 いや、兄として時には妹をきつく叱らないといけないことがあるだろう?

「謝罪を要求!」
「兄として妹に頭を下げられるわけねえだろ!?」
「ムカッぱ!なによそれ!」
「そもそも、なんで『もしも』話で謝罪を要求されなくちゃいけないんだよ!見られてねえんだからいいだろう!?それとも本当に見せてくれるのかよ!?」
「えっ?えっと、それはいや・・・」

 妹が一歩引いた。この機会を逃すはずがない。このまま押し通す!

「じゃあ謝罪しろよ!『兄ちゃんに私の裸見せられなくてごめんね』って言えよ!?言わねえとガチで泣いてやる!」
「なんと、私が謝る立場に!!?しかも『もしも』話じゃなくからほっといたら本当に泣きそう・・・お、男として泣いたら恥ずかしいでしょう!」
「時に男は妹の為に泣くことだってあるんだってことを教えてやる・・・くっ・・・」
「なんだか不快ィ話に持っていこうとしてる。キモイ!やっぱりお兄ちゃんキモイ!!」
「・・・ちっ」

 『深イイ』じゃないのかよ・・・。後一歩のところで逃がしたか。

「逃がした魚は魚人やで」
「人魚でしょ!?」

 自分で言うなよ・・・。
 乙姫は水泳部で様々な大会で優勝をするほどの実力を持つ選手である。スポーツ推薦まで貰って高校に通っているので、付いた仇名は『ニンギョヒメ』だった。

「東〇龍かよ!?」
「はい?」
「ちっ!」

 やっぱり知らねえよな。今でもお気に入りなんだけどな・・・。
 前回のテンションが抜けてないのかな・・・。
 まぁ、いいや。

「用がないなら出てってよ」

 漫画を読みながらお菓子を食べている乙姫にばれない様に『水晶』を置いてみた。


 部屋中の空気が一変した。


 妹に変化があったわけじゃない。ただ、俺の中で何かが変わったような気がするだけだ。
 そう、まるで、――部屋中の環境を支配したような感覚を手に入れた、というのだろうか。まわりくどいけど、そんな曖昧な言い方しか出来ない。
 目で見えるものではない。感じるものだからだ。
 俺が気付かなければ、きっとこの空気中に淀んでいる紫色のスモッグはなんの意味を持たないのだろう。
 でも、そのスモッグは俺に教えてくれるのだ。
 妹に命令しろ、と。

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 中山夾―なかやまきょう―は一日中そわそわしていた。今日は待ちに待った月曜日。
 皆が鬱になる曜日であるが、俺にとって土曜日に注文した商品が届く曜日だ。
 呼び鈴が鳴るのが待ち遠しくて仕方がない。

「ああ、早く来ないかなぁ!」

 その日の為に学校をサボっているくらいだ。昼を過ぎて時刻は三時。ついに念願の時が訪れた。

 ――ぴんぽーん

「きたっ!」

 身体を起こして玄関に降りる。そうしてドアホンで確認することなく俺は玄関のドアを開けた。

「はい!」

 笑顔で来客を迎え入れる。この清々しい笑顔を見てほしい。我ながらなかなか見せない表情である。

「お待ちして――」
「うっく・・・ぐずっ・・・」

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 ・・・・・・・・・・・・

 来客は泣いていた。
 少女だった。
 ナンデナイテイルノ?
 俺が聞きたい。

「えぐ・・・うあ・・・」

 泣きやむ様子がない。俺の笑顔が怖かったのではないかと心配になるじゃないか。
 よく友達からも笑顔が怖いって言われるし。
 縦目だし・・・。 

「えっと、その、なんだ・・・」

 泣いてる子供は正直苦手だ。ここは一先ず騒ぎを大きくしないように優しく声をかけることから始めようと思う。

「とりあえず、中入ろうな」
「あ・・・うああっ・・・!」
「とりあえず落ち付けって。人ん家の玄関前で泣くなよ!」

 駄々をこねるように抵抗するので、無理やり入れたら今度は少女を拉致監禁しようと企てているのではないかと疑われてしまう。
 しくった。
 まさか、楽しみにしていた心が一瞬で公開に苛まれるとは思わなかった。
 うらむよ、神さま・・・

「おまえ、どちらさま?」
「・・・うぐぅ・・・あうあぅ・・・うーうー・・・」
「一息で三人のキャラの泣き声やりやがった!?」

 しかも全員、同じ中の人・・・
 こいつ、泣いている癖になかなか器用だ。
 これはキャラクターから作者へのアンチテーゼ的なメッセージが込められているのではないだろうか。

「私の声も堀江〇衣にして」、みたいな。

 ここで読者に向かって一言「あのね」と言えば完璧である。
 そんな訴え方初めて垣間見た。俺も関〇一みたいな格好イイ声で再生してほしいくらいだ。
 脳内再生で良いので、
 よろしく頼むよ、読者の皆さま・・・ 

 ・・・・・・・・・

 キャラクターから読者にメッセージを込めるなんて、
 俺もなかなかず太い神経の持ち主である。

「・・・・・・えむ・・・」
「え・・・?なに?」
「えむ・・・しぃ・・・はんばいてん!!」
「なんで急に怒るんだよ?!」

 語尾が急に大きくなるからてっきり怒っているのかと思ったら違ったみたいだ。
 しゃっくりを我慢しながら発した精いっぱいの声のようだ。

「で、なんで泣いてるんだ?話だけでも聞いてやるから」
「うああ・・・あああああああああん!!!」
「泣くなって!」

 わんわん泣いてやがる。袖が涙でびしょびしょである。
 ここまで気持ち良く泣ける奴を久し振りに見た気がする。

「だって・・・!だって・・・!」

 少女が懐から紫色の水晶を取り出した。何かと思って覗いてみると、『中山夾様』という文字が書き込まれていた。そこでようやくそれが俺の待ち望んでいた商品だと言うことに気付いた。

「『水晶』。お届けに来たんだよ」
「まるで俺が悪いかのような始まり方だな」

 やめろよ。俺が泣かせているみたいじゃねえか。だから俺はなにも悪くねえって。

「『水晶』はね。これを置いたらこの空間にいる人全員に催眠術をかけられるんだよ」
「ほぉ。素晴らしいじゃないか。さすがエムシー販売店」

 『水晶』が催眠術。やっぱり『マインドコントロール』っていう響きが素敵だ。MCだけじゃなく、『トランスセクシャル』といい、『タイムストップ』といい、このジャンルの響きってどうしてこう格好良いんだ。
 すっかりその魅惑に取り憑かれている俺である。
 少女はさらに説明してくれる。

「うん・・・。『水晶』が置いてある部屋にいる人、みんなの先生になれるんだよ?」
「ほぉ!『水晶』を前にした先生ってまるで占いの――」

 それを口にした瞬間い俺も気付いてしまった。その瞬間、悲しくなってしまった。

「ものすげえ時事ネタじゃないか!笑えねええぇええぇぇぇ!!」
「でしょう!?せっかく12月からネタを温存してきたのに、発表前になって不謹慎ネタにされてしまったこの心境、あんたになんか分かんないでしょう!」
「すまーん!」
「なるべく時間を稼いでいたにも関わらず今日という日を迎えてしまったんだよ?これで私、裏の人からの命狙われる生活が始まっちゃうよ!」
「マジですまなかった!」

 土下座でもしたい気持ちだが、少女に地面に頭をつけるなんてプライドとして許さなかった。
 いつの間にかやっぱり少女は怒っていた。俺に対してめちゃくちゃ不満を口にしまくっているので泣きそうになる。言い返しそうになる。

「そもそも、あんたも裏の人間だろ!?結局載せちゃうんだろう?能力バトルならあんたきっと強いんだから返り討ちにしてやれよ!!」

 とは口が裂けても言えない。
 口をぐっと結んで大人の対応で乗り切るんだ。

「ね、中〇さん?」
「これが一番あぶねえええ!!?」

 人の名字を伏字にするんじゃない!俺は中山だ。
 ・・・でも、俺は中〇さんの身の安否をお祈りしています。あまりマス〇ディアもこの記事を取り上げないでほしいとも思うけどな。と、何故だか後ろから妖しい黒服の男たちが見えるのは気のせいだろうか?

 とりあえず裏に行こう?
 表に掻くと色々と危ない気がするから。
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