純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『挿げ替え・融合』 > 塗薬『ointment』

「う・・うう・・・うああああああああん!!!」

 私は泣いた。私に犯されたことに泣いた。
 もう戻ってこない私の身体。

「泣くなよっていうのが無理の話だよな?じゃあ、ありがたく頂いていくよ」

 私の着ていた服を着始める。肌を擦りながら穿いていくショーツの音、
 ブラを付けて谷間を強調させる仕草。その全てを覆い隠して人前に出ても恥ずかしくない格好で身を包み、
 今日穿いていた私服を全て奪ってしまった。

「よし、これで完成。どう?どこから見ても奥富葉子でしょう?」

 葉子(男性)は楽しげに聞いてきた。嬉しくて仕方がないのだろう。

「これから俺の・・・いいえ、私の第二の人生が始まるのね・・・看護師として救える命を救ってあげないとね。精神的にも、肉体的にもね。ウフフ・・・」
「もう、やめてえ!お願いだから・・・まっ・・・ゴホッ!」

 くしゃみをした瞬間、私の視界がぐらっと歪んだ。真っ直ぐ歩くこと出来ず、眩暈と同時に手術室が一斉にまわり出した。

「なに、これ・・・きもちわるい・・・」
「それはそうだ。その身体、もう持たないだろうし」
「・・・えっ?」

 持たない、ってどういうこと?寛太くんの身体が持たないって、それは一回死んじゃったから腐敗しているっていう事なの?
 葉子(男性)は私の具合の悪さの理由を知っていた。

「違うよ。言っただろう?その身体は使える部分を塗り固めたって。身体は至って健康そのもの」
「・・・じゃあ、なにが持たないの?」
「俺が言ってるのは、おまえの心臓だよ」
「しん・・・ぞう・・・?」

 私の心臓が身体に負担をきたしている?高血圧でもない私だけど、確かになんか心臓が跳ねるように大きく動いていた。
 葉子(男性)の声を聞いている度に息苦しく思えるのはそのせいかもしれない。

「俺はな、その身体の時に何度もオナニーしたんだよ。子供の身体だぜ?正直無理させたと思ったんだけどさ、これが思いの外気持ち良くてな。まるで子供に戻ったようだったぜ。オナニーを覚えた一発目見たいな感じでさ。うひひ。あんなビッグな逸物を持ってよ。子供が知るには恐ろしいくらいの快感だったぜ。しかも何度でも暴発できるし、本当に子供って恐ろしいよな!
 ――だがな、その恐ろしさの反面っていうのがあったんだな、これが。病みつきになって馬鹿になっていたのかもしれないな」

 自慰の暴露話を聞いていてもいったい何を言おうとしているのかわからない。
 自慰をしすぎたせいで起こる病気がこの世にあるのだろうか?考えることもできないほどの痛みが心臓を襲う。発作的に心臓を抑えて、痛みを抑えつけようとしても、ボロボロの身体は心まで蝕んでしまう。
 ひょっとしたら、寛太くんの身体は、私との性交で力尽きてしまっていたのかもしれない。

「なに、なんなの・・・!?」
「テクノブレイクだよ」
「てくの、ぶれいく・・・?」
「長時間の自慰によって引き起こされる突然死さ。心臓を締めつけられるようだろう?男性にはこんな危険性もあるんだぜ?俺が言ったのはそういうことだ。その身体でやりすぎちまったもんで、心臓に負担が来たんだよ。別にそれで死んでも良かったんだがな・・・ま、女性なら何度でも逝くことが出来るし。テクノブレイクなんて気にしなくていいんだから最高だよな、アハハハ!!」

 男性に会ってしまったから、健康そのものだった私が、突然の死を目の前にする。
 報われない。ほんとうに報われないよ・・・。
 何事もなく、何気なく過ごしていた私の生活がここで終わりを迎えるなんて、そんなのイヤ・・・。

 事故で運ばれてくる患者を見てきた。
 重傷をおってくる人もいれば、意識不明の重体で運ばれてくる人もいる。
 誰だって事故になんか巻き込まれたくない。
 誰だって事故なんか予測できるものじゃない。
 予期できないから毎日を気をつけながら生きている。
 当たり前の生活、
 そんなありふれた日常が、かけがえのないものだったって・・・
 私は、最後に思いながら息絶えた。  


 寛太(葉子)の転がった身体を抱えて手術は終える。
 寛太のご家族にご臨終であることを伝え、すぐに葬式の準備を行うことが決まった。

「救われないよな。みんなさ・・・」

 手術の間にまさか寛太と看護師が入れ替わっているとは誰も思っていないだろう。家族にしてみれば寛太が男性と入れ替わっていることすら気付いていなかったのだ。

 世の中騙したものが勝ち。
 真実を知ったものは口封じに抹殺される。
 だからこそ、真実など知らない方がいい。
 救われない、みな・・・みな・・・・・・

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 私の顔に例の薬を塗りつける。

「この薬は一体何?」

 斬りつけても血は流れないし痛みもない。
 治ったわけではないけど、この薬があれば痛み止めの薬なんかいらなくなるのではないか。
 いや、薬があれば医者も看護師もいらなくなる。
 そんな現代の「ういろう」のような話、私は認めたくなかった。

「正直言って俺にも分かんない」
「なにそれ?そんなものを使ってるの?」
「うるせえな。素人が薬の成分を気にして呑んでると思うか?看護師や医師がくれたものを言われて飲んでるだろ?それと同じだよ」
「わたし達が分かってるから大丈夫でしょう!あなたが知らないなら、いったい誰が――」
「俺は言われているように使ってるんだ。大丈夫さ。絶対に失敗しない。ひっ、ひひっ・・・」

 狂ってる。
 こんな薬を使う彼も、『塗薬』を作り出した人も、
 狂気だ。狂喜以外なにも報われない。私は完全に殺される。『塗薬』という凶器にやられてしまう。

 首にまで塗られ、私の顔は蒸発するように熱くなる。

「あつい・・・アツイ・・・」

 今までこんな熱さを示すことはなかった。ひょっとしたらこれが本来の『塗薬』の使い方なのかもしれない。
 身体が熱くなる度に顔と身体が分離していく気がする。
 髪の毛はウィッグになって、毛穴から滝のように噴きだした汗まで拭けそうな気がする。

「・・・よし、こんなもんかな」
「ひっ!」

 私の顔を掴んで簡単に右に捻った彼。次の瞬間、私の顔は簡単に引き剥がれてしまった。
 意識が遠のいた私はそのままベッドに倒れこんでしまった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ああ、意識を失ったか。まぁここから先は知らない方がいい。あまり気持ち良いものじゃないし」

 男性の目の前に倒れた奥富葉子の身体。今はそのほとんどが小野寺寛太の身体になってしまい、最後の顔の部分でさえ今や男性の手に握られていた。
 葉子の顔。いや、顔の部位。デスマスクのように死んだような表情をしていた。
 顔を失い、のっぺらぼうになってしまっていた。

「はやく俺も取り外すかな」

 男性も同じように『塗薬』を顔にベトベト付けたし、寛太の顔が高揚してきたのを確かめると、自分の両手の親指と人差し指であごを挟み込んで自分の顔を勢いよく引き剥がした。
 男性の顔も葉子と同じようにのっぺらぼうになっており、男性はそのままの体勢で手に持っている葉子の顔を素早く自分の顔の部分に被せた。
 葉子の顔を被せられた部分は即座にくっつき、徐々に肌色を取り戻していった。血行がよくなりすっかり顔の色が身体と同色の肌色に戻った時には、普通の皮膚に戻っており、男性の身体だった身体はこうして完全に奥富葉子の身体として地面に立っていた。葉子の顔がゆっくり動いて目を開く。葉子の目で男性が辺りを見回し、口元を歪ませた。

「うひひ・・・。成功だぁ。手に入れたぞ、女性の身体」

 その声は葉子のものであったが、喋り方は男性そのもの。男性は葉子の目の前で高笑いをしていた。

「ひひひ!!ありがとう、葉子さん。じゃあ、元通りに戻してやるよ」

 男性は手に持っていた寛太の顔を葉子の顔の部分に被せる。先程まで男性の顔だった少年の顔だ。寛太の顔もそこにくっつくと徐々に肌色を取り戻していった。
 完全に肌色に戻ると、寛太の顔は葉子の身体にくっついていた。葉子の身体もまた完全に寛太の身体になってしまったのだ。

「おい、起きろよ!」

 実験台を蹴飛ばす葉子(男性)に寛太(葉子)は強制的に意識を取り戻す。目を覚ました寛太(葉子)が見たのは、目の前に立つ奥富葉子の姿であった。

「・・・わ、わたしの顔・・・」
「そうだよ、これはあんたの顔だろ?どうだい?可愛いだろ?」

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 ぬっと顔を覗かせてくる葉子(男性)に真っ青になる。身体が入れ替えられ、そして全て終わってしまったのだ。
 夢のような出来事の本当にあった惨劇だった。

「私の身体を返して!」
「バカ言うな。これはもう俺――、いや私の身体よ。奥富葉子、22歳。上から87、57、83――」
「どうしてそれを?」
「この身体の事なら分かって当然でしょう?それに、薬の知識も少しは引き出せる見たい。・・・うふっ、少し影響が出るかもしれないけど、忘れちゃったと言えばまわりも怒られながらもまた教えてくれるレベルね。日常的には何の支障も出ないし」

 身体に染みついた習慣的なものはすべて奪われてしまった。葉子のまわりが助けをくれないことがわかると、葉子(男性)は安心して寛太(葉子)の目の前で自身の身体を弄り始めた。

「あんっ・・・あんっ!」

 葉子の声で喘ぐ男性。寛太(葉子)は驚愕していた。

「やめてええ!私の身体で変なことしないで!」
「へへ・・・。それは無理。もうこれは俺の身体なんだよ。うはっ、この感覚、この甘美、ぜんぶ俺のもんだ!」

 気持ちよさそうに胸を強く揉みほぐし、秘部から愛液をだらだら流す。
 淫らな格好だ。葉子ですら出したことのないイヤらしい表情で自身の身体を慰めていた。

「あんただって彼氏がいればこうやって喘いでたんだろう?」
「しらない!」
「それも直に分かるさ。さてと・・・」

 葉子(男性)は実験台によじ登り寛太(葉子)の上に跨った。

「なにするの!?」
「決まってるだろう?自分の身体でセックスしたいだろう?そんなにおち〇ぽそそり立たせて。自分の身体に欲情してたんだろう?」
「してない!」
「うひひ、強がんなよ。もうどうせ俺からは逃げられないよ。そんな子供の身体でも男性の喜びを味わえるようにしてやったんだから感謝しろよ」

 寛太の身体でも一箇所だけは別の男性のモノが付いている。その場所は既に葉子の身体に反応し、葉子に快感という信号を送り込んでいた。

「あっ・・・あっ・・・」

 葉子のスベスベの肌に擦られ、性器を握られた瞬間に寛太(葉子)は喘ぎ声を洩らした。
 それが答えだった。もう男性からは逃れられない。
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 腰をから真っ二つに自分の身体を両断した彼。
 寛太くんの小さな身体が、さらに小さくなりました。

「く、くく・・・」

 それでも彼は笑みを絶やしません。寛太くんじゃ絶対に浮かべない笑いです。
 私の腰を手繰り寄せ、『塗薬』で接着させると、今度は先程付けた私の足を再度外して自分の腰につけ直しました。
 これで彼の下半身と上半身はすべて私のものとなったわけです。バラバラだった部品が一人のシルエットが見えてくることに彼は興奮しています。

「うわっ!急に、きみの秘部から疼きが湧いてきた。・・・そういえばさっきまで弄ってたもんね。こんなに感じてたんだ」

 立ち上がった彼の背丈に寛太くんの面影はどこにもありません。私の下半身を必要に触りながら自分の快感を愉しんでいます。

「おうっ。いいねぇ。これが女の感じ方かぁ。ビリビリと痺れて、くはぁ、たまらんっ!」

 がに股に足を広げて指をヒダに添わせて激しく擦るその姿勢は下劣そのもの。見るに堪えません。それでも私の身体は感じてしまうのでしょう。彼の手の動きに合わせてイヤらしい水音が手術室に響いているのが分かります。

「あふっ、胸もまた一段も張りが出た。やっぱり下乳って重要だなぁ、うひひ・・・タプンタプンしてやがる」

 男性が動けば私の胸も激しく揺れています。細い腰を手に入れた分、乳房も出るようになったせいもあるのでしょう。暴走する胸を乱暴に掴んで揉みくしゃにしていき、さらに感度を高めていました。

「うはぁっ!一回、いこっ、・・・イク――」

 上半身も、下半身も、彼にとっては一度も感じたことのない快感なのでしょう。私の身体で逝った男性は、同時に失禁までしていました。
 ジョボジョボって。汚い水滴を撒き散らしながら――。

「はぁ・・・はぁ・・・最高だね、きみの身体・・・」

 散々好き放題にしてきた彼が私の身体の感想を言います。継ぎ接ぎだらけの身体のはずなのに、一体どうして身体を使いこなすことが出来るのでしょう。
 不思議なことで頭がいっぱいです。

「・・・あなた、痛くないの?」
「――?痛み?俺は痛みを全て快楽に変換してるよ。病院なんていらない。それってさ、健康で平和だよね?」

 一切、痛みで苦しむことはなく、悶え狂うこともない、穏やかな心境。それが――平和・・・?

「平和を乱しているあなたが平和について語らないでよ!平和は一人じゃきっと築けないわ。こんなの、占拠よ!」
「独りよがりの平和・・・独占か。・・・いいこと言うね。お姉ちゃん」
「あなたにお姉ちゃんなんて言ってもらいたくない!」

 「うひひっ!」と、嫌がる私をさらに嫌がらせるように、下劣な笑い声を聞かせます。そんな彼がふっと柔らかく頬笑みました。


「安心してよ。最後にはちゃんとハッピーエンドをあげるからさ」


 男性の口から疑うような言葉を耳にします。この状況下でハッピーエンドなんかあるのでしょうか?
 あるのなら、正直なことを言えば嬉しい。
 ここまで惨劇を目の当たりにしたら、元の生活には戻れないのではないかという不安もありました。あたりまえのことが尊く、目が腐り、鼻が腐り、肉が腐敗するまでこの状態なのではないかという心配もしてました。
 彼が提示するハッピーエンド。
 地獄の底から復活した彼が手に入れた最高の幸福の提示―ハッピーエンド―。
 それは、私の予想したものとはまるで違う――


「じゃあ、お姉ちゃんもそろそろ身体を戻してあげるよ」


 ああ――身体が元に戻りたい。バラバラでまったく動かない私の身体を早く返してほしい。
 彼は、 床 に 散 ら ば っ て い る 身 体 を 掻 き 集 め ま す 。

「それ・・・」

 青白い顔して私は改めて聞きます。彼は答えます。

「寛太くんの身体だよ。お姉ちゃんの大好きな少年の身体だよ、嬉しいだろう?」
「それを、どうするの?」
「どうって、今からお姉ちゃんに付けてげるんだよ。俺の手でさ」
「ひっ――!」

 私は呻き声をあげるのと、彼が襲いかかるのは同時でした。
 悲鳴もあげることも、暴れることも忘れて、
 彼の着せ替え人形になったかのように、私の身体を寛太くんの身体で塗り固めていきます。
 手、足――、
 外された部品を手際よく付けていきます。わたしの身体については取れないようにくっついて、思い通りに動きだします。

「あ・・・あ・・・」

 お腹、腰――

 なかった場所が戻ってくる。私じゃない、別の部品がくっついてくる。

「やめて――!」

 これ以上しないで!これ以上されると、私が私じゃなくなる――!

「ニイッ――」
「あっ・・・」

 私が声をあげたのは、その中で異彩の輝きを放つ、男性の性器だった。腰からさらに外したのだろうか。完全に男性の身体から外されていても、その大きさは寛太くんの年齢とは思えないほどそそり立っていた。
 まるで生きているように、私―かれ―の手の中でピクピク蠢いていた。

「みてよ、このおち〇ぽ。特大だろ?立派なもんに育っただろう?」
「…………まさか」
「そうだよ。これは元々俺のだよ。でも、俺ももういらないから付けてやるよ」
「いやあああ!!」

 男性の性器に満遍なく塗薬をつけ、私の腰に宛がうと、性器は普段男性が付いている足の付け根にばっちりとくっつけられた。

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 上半身と下半身。
 二つにされた私の身体。
 でも、痛くない。痛くないから涙も出るはずがない。

「あ・・・あ・・・」

 それでも、声が掠れてしまうのは、恐怖を覚えてしまっているからでしょうか。
 恐怖は時に感情を支配する。
 だとすれば、今の私がこんなに苦しく、辛く、涙を流しているのは、

 やっぱり、身体―こころ―が痛いと言っているからでしょう。

「はぁ・・・うくっ・・・ぐすっ・・・」
「あーあ。泣かないでよお姉ちゃん。ちゃんと身体は繋がってるんだよ?」

 そう言って私の腰部分を持ち上げた寛太くんは、私の股下についていた秘部を弄りました。
 そうすると、下半身のない私にムズムズと、誰かに触られると言う感覚が襲ってきました。

「ひゃあ・・・っ!・・・あうっ・・・ひっ・・・んっ・・・」

 くちゅくちゅと、私の目の前でいじられる私の秘部は、寛太くんの付いている元私の指を濡らしていきます。

「怖さって感情が高ぶっている証拠だからね。普段以上に感じるでしょう?」
「そんな、こと・・・あんっ・・・!」

 怖さを演出させるているのでしょうか。子供の寛太くんがそんな大それたことをするのでしょうか。
 そうだとしたら、私がなによりも怖いのは、ナイフで斬られることよりも、寛太くんそのものだと思います。

「凄いね。お姉ちゃんのココぐちょぐちょだよ?よっぽど気持ち良くなってるんだね。もっと濡らしてあげるよ、その感じ方もいずれ僕のものになるんだ」

 黒い笑みで弄ぶ寛太くんに私は甘い息を吐き出します。確かに寛太くんに責められると、私の弱い部分をいじってくるので感じてしまいます。でも――、

「・・・どうして寛太くんが、こんなこと知ってるの?」
「ん?」
「誰かに教えてもらったの?女性の扱い方を、誰かに聞いたことがあるの?」

 胸をまさぐる、足を触る、アソコを弄る、
 子供の時、私はそんなこと知りませんでした。
 初潮が来た時に知りました。私が小学校6年生の時です。
 でも、寛太くんはまだ小学低学年です。雪の日にもお外で元気いっぱい遊んでいた頃です。
 初潮も、ましてやオナニーも、
 知るはずがない年齢です。

「――――」

 子供とは思えないほど大人の黒い部分が見え隠れしています。
 寛太くんの中に、どうしても子供っぽさがありません。
 口で寛太くんを真似ても、寛太くんの記憶から私に関わる情報を読むことが出来たとしても、

 寛太くんは、ここにはいません・・・

「――――なんでばれたかなぁ?」
「っ!」

 寛太くんを上塗りした大人の姿が、私には見えました。
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 私の手がナイフに斬られてしまった。
 足と同じように、手までが地面に落ちてしまった。

「あっ・・・」

 拾いたくても拾いに行けない。行けたとしても両手がないから持つこともできない。
 痛さはなく、今も両手は生えているのではないかと思ってしまうのに、まったく機能しないことにもの淋しさを感じてしまう。

「ああ・・・・・・!」

 悲しい。まるでお人形になってしまったように、私の身体はバラバラに分解されていってしまう。

「あーあ。手なんて出すからそうなるんだよ」

 この場においても寛太くんは決して悪気を見せない。僕は悪くない、手を出した私の方が悪いのだと責め立てる。反論する気も起きない。私の知っている寛太くんとは想像もつかないくらい、今の寛太くんは落ちぶれていた。

「でも、いいや。いずれこの手も斬り落とす予定だったし」

 寛太くんは私の手を拾いあげる。私の腕はまるで機械の部品のように傷もなく綺麗に抜け落ちていた。でも、決してはめ込めるものではない。人間の身体がパーツになって取り替えることなんて出来るはずがない。

「よっと・・・、うん―――ふっ!」

 ザクッと、寛太くんが自分の手を切り落とした。
 迷いも躊躇もなく、自分の身体を切り離した。

 取れてしまった小さな手。肩から抜け落ちた腕をワゴンに置くと、もう片方の手に持っていた私の手を、今度は自分の肩にはめ込んでみせた。

 ズブズブ・・・と、奥に深く入れるかのようにぐいぐいと突っ込んで見せる寛太くん。私の手が寛太くんに生えているかのように深くまで差し込み、ある一定の部分まで到達して寛太くんは腕を放した。
 奥に入れても腕を放したら重力で落ちてくると思っていた私の手が、寛太くんの肩に刺さったまま落ちてこなかった。
 それだけじゃない。寛太くんに付いた私の手が、ゆっくりと動いて見せたかと思うと、閉じたり開いたりして寛太くんの手の動きに合わせて動き始めたのだ。

「―――――っ!」

 息を呑む寛太くん。私の手に頬擦りすると、肩から大きく振りまわして見せたのだ。

「見てよ!僕の手にお姉さんの手が生えちゃった。あはっ、左手だけ手の長さがあってないや。悪魔の手みたいだね」

 私の手を悪魔のように言って欲しくない。
 どちらかといえば、今の寛太くんは両足左手が私のものになっているのだから、右手だけが子供のように短くなっている。そっちの方が合っていないように見えた。

「んん?・・・・・・そうか。じゃあ右手も――!」

 同じように寛太くんは右手を付け替える。私の身体をつけ替える寛太くんはまさに悪魔の姿だ。

「どうして・・・寛太くんはこんなことする子じゃなかったのに・・・」

 自分の身体を傷つけて嗤っているのは悪魔のような人で、他人の身体を傷つけて笑っているのは犯罪者だ。
 寛太くんは極悪人だ。
 私にはそう思えてならなかった。

「実は、僕はこうしてお姉ちゃんの手で扱いてもらいたかったんだ」

 パンツを脱いで寛太くんは自分の竿を取り出した。子供の標準サイズの小さい竿であったけれど、それでも堂々と出されると異性的に恥ずかしくなってしまう。目を背けるように視線を逸らしていた私を無視して、寛太くんは竿を触り始めた。
 寛太くんについた私の手で――

「あっ、お姉ちゃんの手で僕のおち〇ち〇触られてる。うあっ!だめだって・・・!」

 恥ずかしがっているのか嬉しがっているのか分からないけれどはしゃいでいる声が聞こえる。

「お姉ちゃん、上手いね。僕の弱いところ、全部知り尽くしているみたいに触ってくるよ」

 それは自分で触っているのだから当然だろう。きっと寛太くんはそういうことで私に触ってもらっているような錯覚に陥っているんだ。
 視線を少しだけ向けてみると、寛太くんが私の手を必死に動かして自分の竿を扱いてみせていた。小さかった竿は今ではこんもり盛りあがってウインナーのように太く伸び始めていた。

「あっ・・・やめてよ・・・。わたしの手をそんなふうにいじらないでよ」
「お姉ちゃんの手じゃないよ。もうこれは僕の手なんだよ。だから僕がどうしようが別にいいじゃない」

 目を細めて嘲笑う寛太くん。先走り汁が零れて私の手に付着していた。

「言い訳ないじゃない!そんなものに触らせないでよ!」
「そんなもの・・・?」

 ピクッと寛太くんはその手を止めた。

「あっ・・・」

 言い過ぎたと思ったけど、後の祭りだった。寛太くんは影を落とした。

「僕の大事なものをそんなものって言っちゃうんだ?それじゃあ、さぞお姉ちゃんの身体は立派なものなんだろうな。楽しみだよ。じゃあ次はなにをいただこうかな?」

 ナイフを持った寛太くんが、次の部位を斬り落とそうとしていた。
 手も足もない私はどうすることもできなかった。
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「ひぃ――!」

 足が斬られた。なんて経験をすることがあるでしょうか?
 私も初めてです。
 本当なら、一度もあってほしくなかったのですが、残念ながらそういうわけにはいきませんでした。

「きゃあああああああああああああああ――――!!!」

 アツイ、アツイ、
 イタイ、イタイ、

 きっと私の足からは真っ赤な鮮血が噴きでて、手術室を惨劇の舞台に変えているのでしょうね。
 怖くて見ていられない。
 意識を失って、そのまま出血多量で帰ってこられなくなっても不思議ではありません。
 それくらい、刃物の扱いは怖いものです。

「大丈夫だよ、お姉さん」

 冷静を欠けた私を現世に留めるように、寛太くんの声が木霊します。
 いったい寛太くんはどういう心境で見ているのでしょう。こんなときにも同情してしまうところが私の弱いところでもあるのです。
 目の前が子供ではなく、犯罪者だったらきっと私は声に耳を貸すことはなかったでしょう。
 目を疑う惨劇をこれ以上見ることはなかったのですが・・・
 私は、寛太くんに耳を貸してしまったのです。

「・・・えっ?」

 恐る恐る、私はゆっくり目を開きます。すると、不思議なことに視界には鮮血がまったく出ていなかったのです。
 寛太くんが私に微笑んでいるだけです。

(あれ・・・もしかして、夢?)

 そんな淡い期待を胸に、斬られたはずの右足を見る。

「ひっ――!」

 やっぱり右足は斬られていた。ばっさりとさっくりと、付け根からなくなっていた。
 眩暈を覚える現実。視界は揺らぎ、気持ち悪さが込み上げる。それでも意識を保ってしまうのは、傷がなかったかのように痛まなかったからだ。

 アツイのもイタイのも幻想で、まるで最初から右足がなかったかのように、傷口がふさがっていた。

「いったい・・・・・・どういうこと?」
「ああ。これじゃあバランスがきっと悪いよね?じゃあもう片方の足もいただくよ」

 ――スパッと寛太くんが再びナイフを振るう。すると、私の左足も右足と同様綺麗に斬られてしまった。

 今度は見てしまった。声をあげることもなく見つめてしまった。
 私の足の斬られる瞬間――
 バターナイフで切り取る様に簡単に斬って見せてしまった。
 私の骨も皮も肉もある左足を、いとも簡単に切り取ったのだ。子供の力ではそんなこと出来ない。出来るはずがない。

「それに・・・・・・・・・なんで血が出ないの?」

 斬られたことよりも、斬られた後の処理が出来ないことが悔しい。せめて血を見れれば気を失うことができるのに、精神力のタフさがこんなところで裏目に出てしまう。
 まるで私は――

「痛い?お姉ちゃん?」
「・・・」
「よく聞かされたでしょう?痛いの痛いの飛んでけって。きっと痛みは誰かが持ってくれるよ」

 痛みを誰かが背負うなんて都合の良い発想よ。
 寛太くんは子供だ。無邪気だ。

「でも、安心してね。ちゃんと足は元に戻してあげるからね」
「えっ?」

 寛太くんがなにかを告げようとした。次の瞬間、寛太くんは自らの足を斬りつけた。
 左から右への一閃で、両足を一気に斬り落とした。
 自分よりも寛太くんが足を失った時の方が印象が強い。支えを失った寛太くんが床にたたき落ちるのを見て思わず心配で声をかけてしまった。

「なんてバカなことしてるの!?」
「うぅ・・・」

 お互い血も出ていないのに両足を失っていた。転がる四本の足が生々しく、寛太くんは地べたを這いずりながら私の足を回収していく。

「そんなことはいいから、早く院長を呼んで。こんなことしたら、お互い困ることになるでしょう?」
「大丈夫だよ・・・ぅっ・・・くっ!」

 足がないので手に負担をかける状況が増える。身体を起こすのも手を床に付いてから反転してお尻を付いた。もともと体力の減っている寛太くんは、それだけの行動で息が上がっていた。ひょっとしたら、足を切ったせいで身体に異変が起こったのかもしれない。

「もう、なにしてるの!?そんなことしている場合じゃないでしょう!命に関わるかもしれないのよ!」
「・・・・・・僕にはこれがあるから・・・」

 ポケットから取り出したのは、『塗薬』だった。わたし達が処方する薬で、見覚えがある。しかし、私たち看護師は当然ながらそれを使ったことはない。だから、いま『塗薬』を取り出したところでいったいこの状況下でなにか変わるのだろうかと半信半疑であった。

「それでなにをするの?」
「はぁ・・・はぁ・・・もうすぐこれが僕のものに・・・」

 寛太くんが息をあげている。私はそう信じて疑っていなかったのに――。実は違ったのだと言うことに気付いてしまった。
 寛太くんは興奮していたのだ。成人男性のように鼻息を荒くして私の足をみて欲情する姿を見て青ざめてしまった。
 怖い。寛太くんが今までと違う人に見えた。

 寛太くんは私の右足に『塗薬』をぬっていく。そして、切断部分にまんべんなく『薬』が塗られると、今度は自分の切断された右足にくっつけてみせた。
 それはあたかも接着ボンドのような使い方だ。薬としては酷く間違った使いであり、まったく意味のない処方だ。

 ぬちゃっと、付けた私の右足は寛太くんとは色も肉質も違う。変に浮いている私の右足が異様だった。

「向きが違うのかな?・・・こう、かな・・・?んん?・・・んっ、んっ」

 必死に私の足を自分につけようとしている寛太くんの異様な光景を言葉を忘れたように見入っていた自分がいた。

 ・・・まさか――、・・・・・・まさか――――、

 そんな可能性がないという確証はない。最悪の事態を想定してもそんなわけあるはずないと言う不安を必死に振りほどくことでいっぱいいっぱいだった。
 でも、だったら言えば良かったと死ぬほど後悔することになる。
 寛太くんの動きは右足から左足へと変わっていた。
 左足は右足ほど時間はかからず、『塗薬』をつけてすぐに寛太くんは手を放して左足を解放した。
 『塗薬』によって傷口に付着した私の右足と左足。寛太くんの足についた私の身体の一部。
 次の瞬間、驚くべき光景を目の当たりにした。

 私の足が動いたのだ。膝が曲がったのだ。

「・・・ええっ!?」
「あっ、できた」

 膝を曲げたのは寛太くんの意志だった。そうして曲げた足を次は伸ばしてつま先を立ててフレックスにしてみせた。

「な、なな、なんで?」

 混乱する私。斬られた足が復活するなんて、どんな奇跡体験を目の当たりにしているのだろう。
 それも寛太くんの足ではない、私の足だ。私の足なのに、寛太くんが自分のもののように使っていた。

「よっ!」

 跳ねるように起き上がる寛太くん。再び地面を支える足を手に入れたことで、寛太くんは元気に立ち上がって見せたのだ。
 身長の伸びた寛太くんの目線は、手術台に縛られている私を見下ろすまでに成長していた。
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「・・・結局、幸福なんて妥協点でしかないのよ」

 そう答えてくれたのは、茂木接骨医院の看護師であり最良の女医でもある牧村貴美子だった。

「だ、妥協点ですか?」
「だってそう思わない?『今が幸せ』、なんて言ったってこの先未来永劫幸せなんてあるはずもない。不幸や困難が待っているのが運命よ。それを『現在』だけを捕えて幸福と示したところで、それは『現在なにもないから幸福』と言っているだけにすぎないじゃない。妥協でしょう?」

 なにもない≠幸福と示す貴美子。

 言おうとしているのは尤もだ。なにもないのに幸福があるのでは矛盾が生じてしまうではないか。
 しかし、なにかを始めようとすると必ず困難や苦労は付き纏う。
 だからなにもしない=妥協となってしまうのだ。

 なるほど、妥協を幸福と言い換えているのか。それならば世間は堕落した者たちで溢れかえっているということだ。

「じゃあ、幸福なんてないということですか?」
「いいえ。幸福はあります。本当の幸福を皆さん知らないだけです」

 本当の幸福とまで言い切る貴美子の自信に満ちた笑み。

「本当の幸福ですか。それはいったいどういうものなんですか?」

 マイクを向けて先を促す。貴美子は息を整えるでも、間をおいて強調するでもなく、淡々と、さらっと、あっさりと――


「怪我をして下さい」


 そう言った。

「怪我・・・?」
「そう。それも骨を折る、顔が沈む、頭蓋骨が陥没する。重症を覆うくらいの事故を起こしてください」

 看護師である人の言葉とは思えないほど恐ろしい羅列が連なっていく。軽傷どころか一人では身動きもできない様な重い傷を受けろと言っている。

「そうすれば、あなた方看護師の優しさや、お見舞いに来る者たちの優しさに触れることが出来ると言う意味ですね?・・・あっ、なるほど!入院をして弱くなった人を私も見たことがありますよ」

 病院という独特の空間、清らか過ぎる空気、人間味のない部屋、無臭の環境――
 人は毒がないと逆に生き辛くなる。恐ろしいほど綺麗な場所では耳鳴りが聞こえ、黙っていなければいけない環境で急に笑いたくなる習性がある。

 病が人を変えることがある。それは処方された薬のおかげでもなく、人の温もりという特効薬を貰ったおかげでもある。

「病から立ち直った人が幸福というんですね。人の温かさを知ることができますからね。恩を返していくのが人生なんて素敵なことではないですか!」

 そう締めくくりたかった。
 そう終わらせたかった。
 これ以上聞きたくなかった。

 どうして胸騒ぎがするんだろう。
 ――何故、看護師は、今も私の話を聞いて嘲笑っているのだろう――

 看護師の潤んだ唇が微かに動いた。

 お バ カ さ ん ――

 そう、口ずさんだように私は思えた。

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 ゾクッと背筋が震えあがった。

「動かなくなった足が何かの拍子で動けるようになれたら、たとえこの先何が起ころうと歩けるだけで幸福を感じることが出来るでしょう?
 もし、余命一カ月といわれて、好きな人と最後まで一緒にいられたら、死ぬ瞬間まで幸福でいることが出来るでしょう?
 痴呆症を自覚した人にはあたり前のことが幸福だったと噛み締められる。

 病という不幸のどん底まで落ちた先に待ちうけている出来事は、大抵のことは幸福へ繋がる軌跡ですよ?
 人は痛い目見ないと優しくなれないんだから、一回痛い目見て分からせなくちゃいけないのよ」

 痛い目・・・何故だか急に息苦しくなってきた。
 貴美子さんの目を見ていると、意識が朦朧としてきた私がいた。

「だからって、人は痛い目にあうことを拒み、ます。自ら痛みを受ける人なんかドMの方ぐらいしかいないでしょう、あはは・・・」
「ええ、ほんと。自分は痛みを負いたくないのに、他人には平気で傷つける。ずるい方ばかりです」

 アツ、アツイ・・・
 なんだ、この熱さは・・・身体が急激に燃えるようだ・・・。
 アツイ――!熱気で息ができな――っ!

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「痛みを教えてあげなくていけないの。『九死に一生の体験―come back from a miracle―』の果てに幸福はあるのですから」
「がっ・・・!」

 そんな――
 死の経験の先の幸福って・・・そこは天国じゃないか。笑い話にもなれないし・・・当然、原稿にもでき――



 ガタンッ!
 意識をなくしたインタビュアーが貴美子の足元に転がった。

「えっ?いったいどうしたと言うのかしら?」

 カメラマン、音響、アシスタントが急に慌てだした。何が起こったのかまったくわからず、まさか記者側が異変を起こすとは予想だにしなかったことだ。

「私の取材中に倒れたら、まるで私が悪いみたいですわね」
「す、すみません」
「いいえ。これでも私、看護師です。しっかり治療させてもらいますわ。よかったですわ。倒れた先が病院で」
「まったくです。ガハハ・・・」

 手分けして記者をタンカに乗せる。早速集中治療室へと運ばれた・・・。

 突如倒れた記者はそれから三日間意識が回復せず、さらに大事を取って一ヶ月の入院を余儀なくされた。
 当然、今回の取材はお流れになり、貴美子がテレビに報道されることはなくなった。

「ああ、残念。私の仕事がテレビに流れることを期待していたのに」

 口を尖らせ今日もまた貴美子は廊下を歩く。

「さて、今日はどんな看護師さんを元気づけてあげようかしら」

 用意された九つの秘薬――。
 貴美子はそのうちの一つを持って一人の患者の元へと訪れた。

「失礼しまーす・・・」
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