純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『肉体操作』 > 人形『figure』

 俺は澪の背中に回って四つん這いに起こさせた。

      7120901a.png

「ちょっとまて、まって・・・!」

 澪の叫びを聞きながらも腰に手を回す、滑らかで艶やかな曲線を描く澪の背中を見ながら、俺の逸物の興奮は最高潮に達していた。

「指よりももっと奥に挿入れてやるからな」
「あっ・・・!」
 
 腰を引いて陰部を密着させる。供に濡れた愛液が互いに挿入する前から絡みあう。ゆっくり俺の腰を押したのか、それとも焦って澪の腰を引かせたのかはあまり覚えていない。しかし、その時に――

「う、ああああん!!」

 澪の喘ぎ声は俺の耳に確かに残った。
 澪の膣内に挿入った感触、俺のモノが澪の中を埋めている実感。いま、この瞬間、生きていると言う素晴らしさを痛感した。

「くふぅ・・・あっ、ひんっ・・・ああっ・・・はっ、あっ……」

 腰を引けば澪が甘い声で泣き、腰を押せば澪が喘ぎ声で鳴く。俺の腰が動くと澪の身体が連動するように動き、重力に垂れ落ちる乳房がユサユサと小ぶりに揺れていた。

「すげえ、吸いついてくる……。はぁ・・・はぁ・・・ヤバイ。これが、澪の膣内なんだ・・・ああっ……」

 腰を動かしていると澪が首だけを振り向かせて俺を見てくる。その潤んだ瞳や赤く高揚した頬が、俺に何かを求めていた。

「にいちゃ・・・キスしてぇ・・・。すごく、怖い・・・」

 澪ですらどうなるか分からないほど感じている。こんな気持ち良いことを味わったことがあるだろうか、いや、あるわけがない。よし、わかった。俺が澪に安心を与え続け、一緒に恐怖から解き放たれよう。
 繋がったまま腰を倒して顔を寄せて唇を塞ぐ。供に苦しい体制かもしれないが、苦しささえも愛おしさが勝っている今の状況だ。

「ふぅんっ・・・・・・あふっ・・・んんっ・・・ちゅっ、ちゅくっ・・・はぁっ・・・チロチロ・・・」

 澪の顔を間近で見る、濡れた唇から漏れる吐息を感じる。澪は俺の姿をどう見ているだろうか・・・。

「感じてくれ、澪。俺がお前をいっぱい愛してやる」

 腰の動きを速め、子宮口を何度も当てる。

「ああっ!うああっ、あっ、あっ、あっ・・・!」

 亀頭が当たった瞬間に漏れる声。ビリビリと震える澪の身体が、小さな波を何度も起こしていることを知らせていた。

「とどく・・・奥まで、とどいてる・・・これが、子宮を叩かれてる感じ……なんだ……」

 苦しくても澪から笑みが漏れる。俺にはそれが嬉しい。澪を満足させられる男なんだと誇りに思う事が出来るから。
 男としての最高の名誉だ。ああ、やべえ。俺の方が先に逝きそうだ・・・。

「はぁ、はぁ、み、みお・・・おれ、もう、出そうだ」
「や、やだ・・・、抜いて、」

 急に慌てる澪。ぬっ、中は駄目なのか、しょうがないな。

「じゃあ、ぶっかけるぞ」

 中がダメなら外に出す。俺の熱い逸物が澪の膣内から抜きだし精液を放出するまで時間はかからないだろう。

「だ、だめっ、それもやだ」

 外に出した瞬間に発せられた澪の声に、俺は理性と抑制の狭間を垣間見た。

 ……はっ?中だしはNGで、ぶっかけもNG?
 それって、何処に出せばいいの?

 そんな冷静な判断が出来るわけもなく、答えが見つからないまま俺の本能は迸っていた。

「ば、バカ野郎!!くああああ―――!!!」
「ひやああああああ!!あっ、あん、はあああああああああ――――――っっっっ!!!!」

 澪の膣内から外に抜け出た瞬間に放出した精液は、俺が後ろに倒れると同時に綺麗な放物線を描いて部屋中に飛びまくっていた。
 何故かその瞬間、全ての動きがスローモーションになって見えたのだった。

続きを読む

 ベッドの上で泣いている澪。と言っても、元は自分の弟、和樹である。
 人形で澪にしたと言っても、記憶が完全に澪そのものになってしまっている。泣き方が完全に男じゃない、女性そのものだ。

「まぁ、そろそろ泣きやめよ。誰か部屋に入ってくるぞ?」
「触らないでよ、変態!いやあ!こっち来ないで!!」
「ばっ、バカ!!」

 慌てて口を塞ぐと苦しそうに首を振って俺の手を払いのけようとする。その力の入れ方から、本気で嫌がっているのが分かる。
 と、一瞬緩んだすきに口が開き、人先指をかまれてしまった。

「いって!」

 手を放すと逃げ出す様に距離を取る。俺に恐れながらも完全に敵意の眼差しで見ており、その目はさしずめ、ライオンに挑もうとしている猫のようだ。

「おまえなあ、いい加減にしろよ」
「なんでそんなに馴れ馴れしいの?あんたこそ、いったい誰よ?」
「そりゃあ…………。ふぅ・・・。俺はきみを知っているけど、きみは俺を知らないわな・・・」
「……はぁ?」

 尻つぼみになる俺の声に合わせるように、澪の台詞も尻つぼみになる。悲しきかな、次元の境目。
 俺の想いはフィルターを通じて伝わることはないのであった。
 言いたいことは山ほどあっても、グッと呑みこんで現実へと戻ってこよう。
 
「おまえもそろそろ目を覚ませよ、和樹」

 和樹の『人形』を投げ渡すと、澪は訳も分からず受け取った。
 そして、ビクッと身体が震えたかと思うと、苦しそうな呻き声をあげた。

『もし本人の記憶がなかなか戻らなかったら、元の自分の人形に触れさせればいいよ』

 そう少女が言っていた。だから今澪が苦しんでいるのは、きっと和樹の記憶を流し込まれているせいだろう。元の自分に戻る為の保険である。
 しばらくすると、澪が落ちついた表情になっていた。今まで俺に見せていた敵意は完全に見失っていた。

「兄ちゃん」

 澪がそう言った。和樹が言ったのだろうけど、澪に言われると、うう、萌える。

「んん、声がなんかおかしい。酒でも飲みすぎたかな?」

 自分の声は他の人とは違った音で聞こえると言う。しかし、今回は全くの別次元の話だ。

「それはそうだ。何故ならおまえはいつものの姿をしていないからだ」
「はあ?なに言ってんだよ?そんなわけあるはずが――――っ!?」

 自分の姿を見て目が点になっていた和樹が、ぐわっと目を見開いていた。そして鏡に釘づけになったかと思うと、割れるのではないかと思うくらいに鏡に掌を押しつけていた。

「なんだこりゃあああああ!!!!?」

 驚きを隠せない澪(和樹)。

「俺が澪になってるうううぅ?!」

 ちなみに俺の弟も澪が大好きなのであった。

「そうだ。兄の力でおまえを澪にしてやったぞ。感謝しろ、ぐはあ――!!」

 ガチで殴られた。澪に殴られた・・・。最高の御褒美です。って、

「何故殴った!?」
「勝手なことするなよ!!」
「喜べよ!澪になったんだぞ!?」
「兄ちゃんとは趣味が合わねえんだよ!ナニを期待してる?」
「えっ、そりゃあ、あんなことやこんなこと」
「澪がそんなことするわけないだろうううう!!!!」

 そんな叫びが全てを物語る。ああ、清純派な弟よ。俺はそんなおまえが大好きだ。

「悪かった。兄ちゃんが謝る」

 澪(和樹)に頭を下げる。時々自分の姿を鏡でチラ見しているのが気になるが、澪(和樹)は俺に言う。

「じゃあ、早く俺を元に戻せよ」

 と。しかし、弟よ、おまえは既に根本的に間違っている。この俺が頭を下げている本当の目的を――。

「いや、先に謝ってるんだ」
「はっ?先、だと?」

 ――既に事後のはずの謝罪ではなく、先に断っておく謝罪と言うこと。
 ゆらりと動き出した俺は、猫のように縮こまっている澪(和樹)に対して、ライオンのように牙をむけた。

「俺の為に犠牲になってくれ、弟よ!!!」

 いやああああ――――!!!!と、悲鳴もあげる間もなく、澪(和樹)の上へと覆いかぶさった。

続きを読む

 俺は翌日、今度は弟の和樹―かずき―の部屋を訪れていた。
 時刻は朝10時。決して遅くない時間帯だが、弟も俺も、休日の10時に部屋から外に出ていることは決して珍しくない。

 (当然根本的、決定的な違いはあるのだけど・・・)

 インドア派の俺とは違い、和樹はアウトドア派。翌日が休みのせいか、今朝も遅くに家に帰ってきて今も寝ている。
 所謂、和樹は夜遊びをしているのだ。昼夜逆転している俺と違うのはこれである。休みだからと一日中寝て過ごす和樹の部屋にこっそり訪れる。
 カーテンを締めて太陽が昇っているにもかかわらず真っ暗闇の部屋の中、ベッドには盛り上がった膨らみがあった。和樹はやっぱり眠っていた。

「……かずきっ?」

 小声で呼び掛けるも全く反応がない。熟睡しているようだ。布団から顔を覗かせて様子を見るも、当分起きそうにないくらい爆睡モードで小さくいびきをかいている。微かだがお酒のにおいのする。飲んで帰ってきたのなら泥のように眠っているのも納得した。

「起きなさいー、和樹くん。かぁずきくぅん?」
「ううんっ――」

 ユサユサと揺らしても手を跳ねのけてうざそうに寝返ってしまう。無意識なこととはいえ、兄としての威厳はまたくない。少し悲しくなってきた。
 
「和樹くん。……そんな態度取っちゃうなら――」

 俺は目を細めて和樹を卑屈に嗤う。忍ばせてた手に持ったのは、澪の『人形』だった。

「――きみを、澪ちゃんにしちゃうからね♪」

 『人形』に和樹の指を触れさせて胸にあるボタンを押させると、変化が始まった。成人を超えた弟の姿が目の前で変化していくのを見るだけで興奮する。ボサボサの髪が艶のあるサラサラのストレートヘアーに変わり、徐々に身長が縮んでいく。
 着ていたジャージ姿は何処かに消えて、女子の制服へと変わっていく。顔も小顔になっていき、出てくるところは制服の中から浮かび出て、筋肉は衰え、腰は細くくびれていく。
 一通りの変化が終わり、俺の持っていた『人形』には和樹の元の姿と入れ替わっており、ベッドに眠っている和樹の姿は、澪そのものになっていた。

「スー・・・スー・・・」

      2b23eabf.jpg

 和樹の声ではない規則正しい寝息が聞こえる。微かに開いた潤んだ唇が俺の心を躍らせる。
 ここに新たな俺の『妹』ができた。

続きを読む

「ほんとに亜須になってるんだな、へえ……」

 俺の言葉はそのまま妹の亜須の言葉となって発せられる。鏡の前で普段見せることのない、驚いた表情のまま自分の姿を眺めている期待。自分の身体を求めている亜須は、不意にタンスの中を漁り始めた。

「確かこの段の中に……」

 亜須の記憶を頼りにタンスの中を漁ると、求めているものを見つけることが出来た。

「……あった」

 ニヒッと――、
 タンスの中から取り出したのは、スクール水着であった。亜須が中学生まで使っていたものであり、二度と使う事がない代物だ。処分しようかと思っていたものだが、俺を前にすればスクール水着は絶対に捨てられない必需員となる。

「せっかく大事に取ってあるなら、久し振りに穿いてみようかな♪」

 目の前にかざしてシルエット曝すと、穿いてみたいという衝動にかられてしまう。むしろ中学時代からどれほど成長したのか興味を持ってしまう。俺にとって亜須は中学から進歩していないように思える。それはそうだ。中学を卒業して二年ではっきりした成長を示すはずがないと思っていたのだから。
 だから、スクール水着を身につけるまで、俺は亜須が成長したとは思わない、むしろ、わがままな妹のままだとずっと思っていた。
続きを読む

「うあっ!またイク――」

 あれから、身体が欲情し続ける限り俺は身体をなぐさめ続けた。女性の身体は本当に不思議で、一度だけでは身体の疼きは収まることはなく、二度、三度と快感を増幅させては絶頂を味あわせてくれる。
 他人の身体でイク新鮮さに、俺はどっぷり嵌ってしまった。ぷしゅっと潮を噴き、愛液が零れてベッドシーツを濡らしてシミを作る。

「はあ……はぁ……き、きもちよかったぁ……」

 満足気に漏らした俺は息を切らしながらもようやく落ちつくことが出来た。 澪の身体を堪能した俺は自分の身体の戻ることにした。疲れた身体に鞭打ち、床に転がる自分の『人形』に軽く触れる。すると、一瞬視界がブラックアウトしたかと思うと、次の瞬間には俺の身体は元の自分の姿に戻っていた。

「あれ・・・、戻った……」

 疲労も快感も一瞬で消え失せてしまった。まるで今までの出来事が全部夢だったかのような虚無感に襲われた。手に持った澪の『人形』は、元の制服姿に包まれたドールサイズに戻っていた。

「どうだったかい?うちの『人形』は気に行ってくれたかい?」

 それでも、少女がいる限り今までの出来事は夢じゃなかったんだと実感する。少女の笑みにつられるように口元を釣り上げ、久し振りに笑みを浮かべてしまった。

「凄かったよ。一回の買い物で十分すぎる体験が出来た。他の『人形』にもなってみたいな」

 強欲なのは人間にとってプラスでもありマイナスでもある。アタッシュケースに収められた『人形』の品々に同じような力が宿っているとするなら、無尽蔵な快楽を味わうことができそうだ。
 アニメのキャラはもちろんのこと、名前も知らない、服装でその職人だと言う事が分かる『人形』まで千差万別だった。

「いったいどうやって作ってるんだ?」
「企業秘密」
「だろうなぁ」

 『人形』の中には最新鋭のテクノロジーが込められたブラックボックスに違いない。

「しかし、この無名の『人形』たちにもモデルはいるんだろ?」
「もちろんだよ。記憶を読めば彼女たちになりきれるようにね。自分で名前を決めたりするのは面倒だろ?『人形』にはモデルの設定が付いているよ」
「じゃあ、この職業柄の『人形』たちは実際にいるんだ。へぇ・・・」

 俺がイヤらしい笑みを浮かべているからだろうか、少女がよからぬ悪寒を感じた。

「なんだい?」
「じゃあ、俺の知ってる人の『人形』も作ることが出来るのか?」

 俺は少女に尋ねた。

「知ってるって、友人とかかい?」
「そう!芸能人じゃなく、もっと近い親戚やクラスメイトとかの『人形』が欲しいんだ」

 輝かしい理想の人たちよりも、俺の目に映る現実の人たちの方が俺の性に合っている。歴史に名の残らない人たちの方がよっぽど偉大だ。そんな人たちを俺は『人形』として形に残したい。

 ……なんて、都合の良い解釈を建て前にして、なにかと便利な隣人に成りすましたいだけだったりする。 
 そんな俺に少女は微笑んだ。

「もちろんだよ。時間もさほどかからないよ」
「よっしゃあ!じゃあ、早速注文していい?」

 追加注文、追加要求。俺専用の『人形』の発注だ。少女は喜んで受けてくれた。
 しかし、それだけじゃなかった。

「きみ、『人形』をどうやって作っているのか興味があるんだよね?」

 少女が発する言葉のニュアンスに、俺は期待に胸膨らませた。

「見せてくれるのか!?」
「中身は教えないけど、過程なら見せてあげられるよ」
「おっしゃあ!」

 本邦初公開、『人形』の生産工程。垣間見ることが出来るだなんて嬉しすぎる。
 エムシー販売店、最高!
 喜ぶ俺に少女はあるものを見せた。

「これを使うんだ」

 アタッシュケースの中に入っていたソレは、他の『人形』と明らかに違っていた。
 顔がないのだ。当然、服もなく、モデルもいない。全身が布で覆われた人形の原型であった。

「・・・まぁ、確かに『人形』のカタチはしてるな。ドールサイズだし」

 手に持っても特に変化はない。触っても変身することのない原型の『人形』だが、お腹の一点に不思議なスイッチが備え付けられていた。

「ん?なんだ、これは?」
「あとはモデルにお腹のスイッチを押してもらうだけだよ」
「…………それだけ・・・?」

 なんだか不安になってきた。
 続きを読む

「すげえ。どこから見ても澪ちゃんだ」

 鏡の前で何度も同じ台詞を吐いている。信じがたい出来事が起こったのだ。
 俺はエムシー販売店の人形と同じ姿になってしまった。秋山澪本人として、鏡に姿を映している。

「イメージしてって言ったけど、実際はそんなことしなくていいんだよ。人形に触れれば姿を変えられる。ちなみに今のきみの本体はこうして人形サイズになっているよ」

 そういって少女が見せたのは、俺の姿そっくりの『人形』だった。なるほど、つまり今の俺は『人形』と姿を入れ替わったと言う事か。つまり、少女の持ってきたアタッシュケース内の『人形』と、俺はいつでも姿を入れ替えることが出来る。

 ナース、女子高生、教師、キャバお嬢――etc・・・

 そんな彼女たちに俺はなれる。

「人間は誰かになれる。なのに人間は変化を拒む。――どうして人間は同じ型で居続けたいって思うのかな?それって退化だよ」

 少女はつまらなそうに言った。

「きみだって人間だろう?人が進化するまでまだ技術が追いついてないだけだよ。いつか進化するんじゃないかな?成長という進化をね」
「ワタシが、人間…………プ――」

 アハハハハハハハハ―――――――――――

 少女が心の底から大笑いをしていた。そんなに俺の言葉が壺にはまったのだろうか。涙を浮かべて笑う少女に少し恥ずかしくなる。そんなに恥ずかしい台詞言ったかな?

 まあ、いいや。今の状況を冷静に受け止めるようになったのなら、俺のこれからやるべきことを提示しよう。
 澪の、女性の身体を手に入れたのだ。スカートを穿いて長い髪の毛を揺らしながらつぶらな瞳で自身を鏡で映し、腰をかがめて胸元を覗きこむ。
 制服の隙間から年相応の身体のラインが、奥でうっすらと覗いて見えた。

「じゃあ、やることは一つだよな?」

 口元が歪み、涎を唇から零しそうになるのをぐっと堪えて飲み込んだ。じゅるりと、喉を鳴らした時、俺は制服の上から胸元をがばっと鷲掴みしていた。続きを読む

 注文してはや三日。
 待ち時間と言うのは期待と胸が膨らむものだ。
 待っていれば商品が手元に届く、便利になった時代だからこそ、欲しいものが気軽に買えるようになった。
 誰の目にも触れられることのない、自分への御褒美、ムフッ。
 おもわず女性にでもなったかのように、俺、早出慎吾―はやでしんご―はほくそ笑んだ。

 ピンポンと呼び鈴が鳴る。

「来たか!」

 ガタッと椅子から立ち上がり、階段を下りて玄関に顔を出す。親よりも先に、気付かれないように――

「ハーイ」

 馬鹿ヤロウ、俺の親!俺の客だぞ!顔出すんじゃねえ!

「母さん!俺が出る!」

 母さんより先に玄関へ到着し、扉を開けて客人を迎え入れる。と、言っても郵便配達員に違いないと、俺は高をくくっていたのもあり、見事なまでの引き籠り臭全開のジャージ服を相手に見せることになった。

      委託販売お断りです

 女の子だった。
 想像を反する者の出現に、扉を開けた状態で俺は固まってしまっていた。
 可愛かった。俺がこうして家族以外に女性と人と顔を合わせるのは、一ヶ月ぶりであった。

「あ・・・えっ・・・・・・?」

 言葉が出ない。話しかけられているわけではないが、対人で話をしていないといざという時本当に言葉が出なくなる。そんな状態に陥っていた。
 少女は一向に言葉を喋らない。頼む、俺は駄目だ。少女の方からなにか喋ってくれないと、空気が変えられない気がした。

 少女がくすりと笑った。

「エムシー販売店です」

 エムシー販売店。それは、俺が商品を注文した先の社名だ。

「早出慎吾さんは御在宅でしょうか?」

 少女にしては言葉遣いがしっかりしている。むしろ俺よりも凛とした態度のせいか、少女の方が年上なんじゃないかと思うくらいに見えた。

「俺ですが?」
「きみが慎吾くん?ふぅん……」

 少女の目が俺をじっと見つめてくる。そんなに見つめないでくれ。照れるから。
 慌てて俺は少女から目を背けてしまった。

「なんだよ?」
「ご注文の商品お届けに来たよ」

 そういって少女は扉の影に置いていたアタッシュケースを取り出した。家の中に歩を進め、玄関先でアタッシュケースの中を取り出すと、数多くの『人形』が入っていた。

「おおおおおお――――!………おう?」

 ナースや女子高生をデザインした『人形』が仕舞われていたが、自称プロの目から見ればその材質は安っぽい。精巧に作られているせいか、汚れは確かに見当たらないが、仕上げは荒く、完成度は雑に見える。

「これが、お宅の『人形』かい?」
「そうだよ」
「悪いけど、あまり完成度が高い出来栄えとは言えないね」
「そうかい?」

 少女は淡々と俺の言葉を受け入れていた。社内製品を否定したと言えば批判してくるかと思ったけど、それほど少女は社内奴隷と言うわけではないらしい。

「まぁ、私にとっては『人形―フィギュア―』のどこが面白いのか分からないけどね?」

 カチーン。おい、ちょっと待て。
 俺の中の触れてはいけないスイッチを少女は押しちまったぜ。

「こんな『人形』に投資してなにに使うの?」
「いいか。フィギュアはな、俺の心を癒してくれるんだよ!疲れた身体で硬くなった心に、臨場感があって今にも動き出しそうな彼女たちを見ているとな、心を柔らかくしてく癒しをくれるんだよ!」
「で、癒しをもらって他になにをするの?」
「観賞だよ!映画のワンシーンを切り抜いたかのような彼女たちの魂の鼓動を感じるんだよ!」
「映画で見ればいいじゃない」
「止まったワンフレーズにこそ美学があるのだよ!」

 ダダダダダダダダ・・・・・・

「見ろ!」

 少女を俺の部屋まで連れていく。少女は俺に抱かれたことに驚いていたのか、それともおれの部屋の雰囲気に圧倒されたからか、「おおう」と唸り声をあげていた。
 部屋にGケースに入って大事に保管してある『彼女―フィギュア―』たち。その数ざっと100人を超える。

「俺の大事な恋人たちさ」
「淋しいねえ」

 ほっとけ。自分の部屋くらい自分の好きな空間に染めても良いじゃないか。プラモで戦車を作る様に、レゴで御城をつくる様に、フィギュアで部屋の模様を作るのだっておかしなことじゃないだろう。

「そうかなぁ?ボクにはよく分かんないよ」

 やはり、趣味は他人が理解できるものではないのだろうか。なんだか悲しくなってきた。

「以上です。ご鑑賞ありがとうございました」
「いいよ。ボクも楽しませてもらったから」

 自慢のコレクションを見ていた少女はご満悦に微笑んでいた。そういえば俺の部屋に女性を案内したのは初めてかもしれない。暴走したとはいえ、少女がフィギュアを見て楽しんでくれたと言うのなら、やっぱり少女はエムシー販売店で『人形』を売るにふさわしい女性なのではないだろうか。
 少女が俺の『人形』を見つめるように、俺も少女の持ってきた『人形』を手に取る。それがお互いの距離を縮めるかのように。

 某アニメキャラクターの人形。普段ならベースの一つくらい持っていてほしいくらいだが、生憎、エムシー販売店の人形はなにも持っていない。棒立ちだった。

「はぁ・・・」

 ため息が出るくらい安く見える。Gケースに入れるのがもったいないくらいだ。

「そういえば、映画見た?」
「時事ネタかよ!?見てねえ!」

 見たいけど、都会行かないと。地元でやってないし……って、何の話だよ。

「きみ。『人形』は観賞用って言ってたけど、本当に観賞するだけでいいの?」

 少女が改まって聞き返す。『人形』はいわば像だ。部屋を飾るのが役目だ。

「それ以外になにがあるんだよ。好きにさせてくれよ」
「観賞なんかより、干渉すればいいじゃない」
「・・・・・・干渉?」

 よく分からないので俺は少女へ顔を向けた。

「そう。『人形』への干渉。ボクがきみを導いてあげるよ」

      c84166cc.jpg

 突如、俺には少女から発するオーラがくっきりと見えた気がした。
 禍々しいほどの少女のオーラは、俺の手に持つ『人形』に注がれて吸いこまれていった。

「さあ、『人形』に干渉して。心を溶かしイメージを膨らませて。きみ自身を『人形』に流し込み、型を形成して再構築させよう」
「―――――――」

 少女の言葉通りに、俺は何故かイメージを作ってしまう。
 手に持つ『人形』が俺との干渉を進めていくにつれて光りに包まれる。
 目を閉じているからいったい俺の身になにが起こっているのか分からない。身体が熱くなって、まるで液状になったシリコンにでもなったようだ。そんな俺が自分の身体ではなく、別の型に収められていく。急激に冷やされ、体温が元通りに戻ってくると、俺と『人形』との干渉が終わっていた。
 いったい俺がどうなってしまったのかは分からない。でも、 次に目を開けた時、俺は文字通り、人形になっていた。
続きを読む

↑このページのトップヘ