純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『憑依・乗っ取り』 > 飲み薬『コスチュームに着替えたら』

 会場はコスフェ。
 木戸絵里奈は会場を沸かせていた。
 常連となった彼女に集まるカメラ小僧も多く、また、同じコスプレ仲間との信頼も厚い。
 今回はコスフェで初の試みである、コスプレ仲間の舞台が催されていた。

 仲間内で魔王に挑む勇者を演じる。絵里奈もその仲間の一人として観客を大いに沸かせていた。
 
「ふっ、はっ、火―かえん―、続けて炎―ぐれん―、まだまだ陽―シャイン―、もういっちょ光―ビッグバン―――

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――燃え尽きろ、紅赤朱焔―あかつきのほむら―!!」

 灼熱の火柱があがり魔王が火だるまになる。普段言えない台詞を叫んでも許されるのがコスフェだ。むしろ恥ずかしさを吹き飛ばすくらいの役になりきっている絵里奈に会場から声援が飛んでくる。

「ふおおおおおおおおおお!!!」
「もええええええええええええええええ!!!」

 魔王の最後である。絵里奈の一撃で魔王が倒れると同時に観客も盛り上がりを見せた。一体感に包まれヒートアップする。冷静に見ている人ですら、湧き上がる興奮と少しの小っ恥ずかしさで、

「身体が熱い~~~!!」

 冷や汗すら蒸発するほどの熱気に帯びた舞台の幕が終わる。

「業火絢爛!つぎいってみよう!」
「絵里奈さま、漢字が違いますわ」
「ウソ!決まったと思ったのに!」

 拗ねる絵里奈に向けてフラッシュがたかれる。

「かわいい」
「きゃー!格好いい!!」

 絵里奈と振り向いた瞬間、女性たちはまた「可愛い」と声をそろえ、男性陣はシャッターをきった。

「シャッターチャンスくれええ~!」

 絵里奈にフラッシュが浴びせられ、最高の気分で舞台から降りてくる。コスプレの本領を発揮して母親のもと帰って来たのだ。母親もメイド服で会場にいることに何の違和感を示さない。むしろ、絵里奈の母親がメイド服を着ていることで親子そろってコスプレに嵌っている図として二人にシャッターを押していた。
 そう、コスプレをする者に悪い人はいないからこそ、コスプレは愛されるのである。そして愛するからこそ、なんだってできる。可愛いはなんでも許されるのだ。

「みなさんも、役になり切りましょうね!」
『うわああああああああああああああああああああああ―――――!!!』

 絵里奈は高々と宣言する。舞台にあがっている女性達に向かって、男性陣は駆け上がっていった。

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 隆二が帰ってきた。母親の身体に憑依して絵里奈(隆太)の前に現れたことが涙ぐむほどに嬉しい。
 隆太は今、絵里奈の身体に憑依していることを実感し、そして、絵里奈の身体を動かせることに悦びを感じる。
 好きなひとの身体を一度でいいから自由に動かしてみたい。
 憑依には、そんな魅力がある。そんな夢がある。
 だから、醒めないで。

「なに湿気た顔してるんだよ?」
「あ・・・、ああ……」

 夢見心地を連れ戻すような母親の声。それは先程娘を心配していた声とは程遠い、何かを期待して悦びを溢れさせている甲高い声。
 母親の身体を見てニヤニヤと笑っている表情にそそられてしまう。きっと絵里奈に憑依した時、隆太も同じ表情を浮かべていたのだろう。
 隆二のもとは隆太だ。考えること、なにを望むかなんて聞くまでもない。

「女の身体が二つあったらやることなんて、一つしかないだろう?」

 母親(隆二)の質問に絵里奈(隆太)も同じ表情で答える。

「そうだよな。アレ、だよな?」
「おう、アレだろ?」

 すっと立ち上がり二人は寝室へと入っていく。絵里奈は先にベッドで座り、母親の着替えを待ち侘びる。
 メイド服に着替える母親。長年着ているだけあって身体が覚えているかのように手際が良い。
 落ちついた衣装から一転、フリフリのスカートにガーターベルトや白いカチューシャまでつくと雰囲気は先程とガラッと変わる。
 笑顔で微笑むその表情は母親ではなくメイドそのものだった。

「ママ?」
「はい、絵里奈さま」

 なんの違和感はない。さすが仕えるさんである。

「そのメイド服似合ってるわよ」
「お誉めに預かり光栄でございます」

 母親(隆ニ)が言っているはずなのに、まったくそう聞こえない。自分が敬語を仕えるとは隆太も思っておらず、きっと母親の記憶や口ぶりを読んだのだろうと察した。
 絵里奈(隆太)もとっくに絵里奈の記憶や口ぶりになっているのでお生憎様である。

「なんなりと御命令ください」

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 母親同様、絵里奈(隆太)に対して忠誠な隆二。命令できるだけで十分気分が良いが、少し期待をしながら母親〈隆二)に命令する。

「じゃあ、気分を良くしたんだから、私も気分をよくしてよ」
「はい、絵里奈さま」

 返事をした母親(隆二)は今着たメイド服を今度は脱ぎ始めた。飽きることのない母親の身体を余すとこなく目に映す。
 絵里奈にはないEカップはあるであろう乳房、処理のされた脇毛やアンダーヘア―。柔らかく摘まめそうなお腹のお肉。
 そのすべてが一度に味わえる至高の瞬間を瞳と言うレンズに映した。

「見えますか?絵里奈さま。私の裸体です」

 手で隠すことをしないで堂々と見せつける母親の自信。羨ましいと絵里奈(隆太)に思わせた時点で隆二の勝ちである。

「おっきぃ。ママのおっぱい……」

 ポツリとつぶやいた絵里奈(隆太)に微笑んで近づくと、母親(隆二)は絵里奈の着ていたコスチュームを頭から外すように脱がし始めた。

「えっ、ちょっと?なにをしてるの?」
「絵里奈さまも裸になると、気が楽になりますよ?」
「それ違う。いやん!」

 まるで母親に着替えを手伝わされているように、バンザイをした絵里奈(隆太)からコスチュームが外され、いっきに裸になってしまった。
 母親の身体と比べると凸凹のない絵里奈の身体に女性的に恥ずかしくなって身体を布団で隠してしまった。

「恥ずかしいよ……」
「照れる絵里奈さまも可愛くございます」

 ジリッと迫る母親(隆二)は布団を剥ぎ取ると、絵里奈の裸をマジマジと干渉した。見られるだけで絵里奈は顔が赤く紅潮し、目を泳がせて真っ直ぐ見ることが出来なかった。

「きゃふん!」

 ふと身体の一部から刺激が送られた絵里奈はびっくりした声を出してしまった。いつの間にか母親は絵里奈の乳房をいじりだしていた。

「ちょっと、なにしてるの?」
「絵里奈さまのおっぱいを舐めているのでございます」

 猫のように舌を出して絵里奈の乳首をいじり出す。

「やめなさいよ。汚いじゃない」
「ですから私が綺麗にしているのでございます」
「それも違う、あんっ!」

 『気分を良くしてほしい』という命令から外れてきている気がする、それも母親(隆二)の計算のうちなのだろうか。

「ぺろ、ちゅぷ……はむっ、ちゅーちゅー、じゅるじゅる……」
「あっ……ふあっ……ああ……あんっ!」

 母親にいじられて目が段々虚ろになる絵里奈。息使いも荒くなってきて、いよいよ感じ始めているようだ。

「気持ちが良くなってきましたか?」
「それも、ちがう、けど……身体があついの……」
「……絵里奈さま?」

 母親の動きが止まると、絵里奈は自分で乳房をいじり始めた。クニクニと乳首をつまんで感度を高めるように、いじってないと気が済まなくなってきている様子だった。

「ちくびがいたい……ムズムズする」

 絵里奈の異変に母親(隆二)はもしやと思い質問する。

「絵里奈さまはオナニーしたことないのですか?」
「オナニー……?」

 一瞬考え込む間が生まれる。当然隆太はオナニーと言う言葉を知らないはずがない。しかし、その言葉が出てこないで考え込むと言う事は、それほどまでに絵里奈という女性にのめり込んでいる証拠だ。
 確かに最初の時には見えた隆太の面影が今ではすっかり見えなくなっており、母親(隆二)の前には絵里奈と言う少女しかいない。
 隆太は完全に絵里奈になりきっていた。いや、絵里奈そのものになっていた。
 はっと、思い出したかのように絵里奈は顔を真っ赤にして母親に怒鳴った。

「あるわけないでしょう!今初めてそんな言葉聞いたんだから!」
「純粋ですわ、今時珍しい」

 『純粋』と言う言葉にようやく絵里奈は気分を良くした。

「んふぅ……、ママが、そう育ててくれたんだもの」

 恥ずかしそうに言う絵里奈。やはり親の育てが子を賢くするものだ。
 とはいうものの、絵里奈(隆太)は先程隆二としたセックスの記憶を忘れているのだろうか。
 雌のようになった絵里奈と今の絵里奈はどこか違う。
 きっと今の絵里奈となら、本物の絵里奈を抱いている感覚をあじわえるだろうと、
 母親(隆二)はそう思った。

「そっか。じゃあ、俺とのセックスが先だったのか、ンフフ」
「おまえが気分良くなるなよ!」

 前言撤回。口は災いのもとである。
 絵里奈から一瞬にして隆太があらわれてツッコミをかましたのであった。続きを読む

 母親の股の間に顔を入れて、マジマジとおま〇こを見る。アンダーヘア―もしっかりと処理されており、自分で両手でしっかりと広げているため、絵里奈は奥でヒクヒクと口を開けて動いている母親の膣内をバッチリ見ることが出来た。

「うわあ、凄い……」
「絵里奈さま」

 絵里奈の鼻息がかかるせいか、母親もまた息をあげていた。母娘ともに興奮を増してくる。

「うふっ。娘にイヤらしいところを見られてどんな気持ち?」
「すごく…恥ずかしいです……」

 恥じらう母親の仕草が可愛らしい。絵里奈はもっと恥ずかしくしてやろうと舌を出すと、母親のおま〇こに口を付けた。

「ひゃあん!」

 母親の目が大きく見開く。娘の絵里奈が自分の恥部を舐め出したのだ。母親としての衝動か、叱らなければいけないと手を伸ばすが、絵里奈が顔を見上げるとビクッと全ての動きが硬直してしまった。
 今は絵里奈に仕えるメイドであることを忘れてはいけない。
「んん!……ちゅ、ちゅく…ん、んちゅ……ちゅ、んぅ、んん…ふ、はぁん……」
「う…、あっ、あっ、そんなところ、舐めないでください……」

 結果、絵里奈に対して敬語を使ってしまう。性分である、根っからのメイド気質である。 

「ん~。んふぅ、はぁ……叱ればいいじゃない。お母さんなんだから」

 それをみて絵里奈はさらに挑発する。そう、木戸母親―きどはちか―は絵里奈の『母親』なのだ。メイドを辞めて現実に戻り、今すぐにでも絵里奈を叱りつけてやればいい。
 そうすれば母娘ともに二度とコスプレなんて出来なくなる。恥ずかしい格好を人に見られて快感を味わう変態のマゾという現実を認識してしまうのだから。
 それが絵里奈(隆太)の母親に対する攻めだった。

「絵里奈――」

 喉から出そうになる叱る言葉。唇を震わせて『母親』の表情をグッと堪えているメイドの母親は見ているだけで爽快。悔しさを滲ませている母親がふっと力を抜いた。

「――さま……」
「あくまで抵抗するのね」

 絵里奈は悔しそうな表情を一瞬浮かべたが、さらに次の用意が出来ていた。引き出しから買ってきた袋を取り出すと、中身を母親に見せつけた。

「あ、あ、あああ……」

 母親がそれを見て驚愕する。それは男性の性器に似せて作った、バイブであった。

「見て、これ。すっごく大きいでしょう。お母さんなら挿入することできるでしょう?」
「それ、買ってきたの?」
「そうよ。この格好でね。店員さん、びっくりしてたよ。だから可愛くポーズを決めたら店員さん、喜んでくれたよ」

 絵里奈の告白は母親を震撼させた。母親にとって娘がバイブを買ってきたことに相当ショックを受けていたが、楽しそうに袋からバイブを取り出して正常に動くか確かめる絵里奈を見ると何も言えなくなってしまう。
 再び母親の股下にもぐりおま〇こにバイブを宛がう。

「ヌルヌルしてる。あくっ――!うう・・・」

 絵里奈の唾液だけでなく、バイブにはローションが既に塗られている。バイブはちょっと押し込んだだけで簡単に膣に押し込まれていった。

「入ってく入ってく。うふふ……」
「絵里奈さま、もうやめ……あああ……奥まで、とどく、はあぁ……!」

 ゆっくりと推し進めていく。シリコン製は膣内を傷つけることなく優しく膣壁をなぞりながら奥へと進んでいった。

「全部入っちゃった。すごい、お母さん!」

 絵里奈が歓喜している。母親は苦悶の表情を浮かべていた。

「お腹がいっぱい……ぬ、いてください…」
「じゃあ、動かすよ」

 絵里奈は母親の言葉を無視して唯一外に出ているスイッチを入れた。すると、膣内からくぐもった音が漏れだした。

「ふあああああ、あ、きゃあああああ―――!!」

 母親が叫び声に似た喘ぎ声を洩らす。バイブが動き出したことで身体全体が震え出した。

「おなかが、掻き回されてる!しゅごいいい。やだぁ……」

 恥ずかしそうに身体をねじりバイブを押し出そうとするが、絵里奈は取っ手を掴んで出かかったバイブを再び奥へと押し込んでいく。

「良い声で鳴いてね。それ!それ!」
「ひゃあああ!あっ、あっ、くひぃん、あくっ、ひっ、ひあ…あぐっ……」

 逃れられない母親からは愛液が滴り落ちてきた。娘によっていじられている状況が性的興奮に繋がっているのだ。絵里奈がバイブをいじりながら、母親のGスポットを探り出し、重点的に責め出すと、一際高い声で母親はないた。

「んああぁっ!?ふあっ!、はっ、はげしぃ……イヤぁ・・・ぬいてください!」
「本音を言ってよ、おかあさん。本当に抜いていいの?」

 急にバイブの電源を切り、答えを聞く体勢に持ち込む絵里奈。母親もまた身体が火照ってしかたがない。疼いた身体のもとめるままに、そして、絵里奈が欲しがっている答えを口にする。

「きもち、いいですぅ!もっと、おち〇ぽのように、じゅぼじゅぼ、してください!」
「……ぎりっ」

 急に雌の顔になった母親に絵里奈の表情が歪む。しかし、ここまできた以上、母親を逝かせなければ気が済まない。

 絵里奈(隆太)の負けは決定した。

「わかった。じゃあ最後まで私を楽しませてよ!」

 母親を壊すかのようにバイブを起動させ振動を最高まで高め、乱暴に上下に擦り上げる。膣内で上下左右に縦横無尽に暴れ出すバイブにたまらず母親に涙が滲んだ。

「ひああぁ! あ、あ、あ・・ああああぁぁんっ!!そこ・・当たってるぅ・・やめ・・ひっ、あっ、あっ、あああぁぁっ!だめ・・ああぁ、だめえぇっ! あ・・あ・・も、漏れちゃううぅ! くあああぁぁっ!!」

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 母親全身をわななかせたかと思うと、生暖かい液体が、絵里奈の顔面に叩きつけられた。

「んぐっ!?」

 しゃああぁぁ・・という音が出るほど、母親は勢い良く放尿していた。

「こんな・・あ・・や・・ん・・ん・・ううぅぅ・・」

 母親はそのままの体勢で硬直し、どうすればいいのか、分からない様子だ。ぶるぶると身体を震わせながら放尿し続ける。

「ん・・あ・・はああぁぁ・・やあぁ・・あ・・ごめんなさい・・。」

 攻めあげた絵里奈に謝る母親。何とも言えない背徳感が絵里奈を襲った。少量だけ入った母親の彼女の小水の匂いと味を堪能する。苦かった。

「あ・・あ・・んっ・・はああぁぁ・・」

 母親はそのままの体勢で、黄金水を最後まで出し切った。
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「げほ……うぅ……うあああああああ!!!」

 取り乱すように泣きだしたあかり。れいなが必死に慰めようと試みるが、その声が届くことはなかった。

「よくやった。では次は……」

 絵里奈はさらに命令を出そうとしていた。れいなも驚愕していた。

「もうやめてください!」

 さつきがたまらず叫んだ。

「もうやめてください、神さま。……こんなの、間違ってる。私があった神さまはこんなんじゃなかった……私のと親友にひどいことする神さまなら、神さまなんかいらない!!」

 神に仕える神社の娘が言ってはいけない禁句をぶつける。仕える巫女が神の否定をしたのだ。許される道理はない。

「……私は神さまでしょう?今なら取り消せるぞ?私はなんて寛大でしょう!もしこのまま私を否定するのなら、おまえも未来永劫災いが降りかかるぞ」
「……そ、それは」

 さつきの口が籠る。当然だ。将来の不安を恐れない者がいるだろうか。先行きの見えない不安を人質に取られる恐怖にさつきの勢いも失速してしまう。

「怖いだろう?安らぎが欲しいだろう?神に祈れ。神に祈ることが人間にできる唯一の方法だぞ?」

 強気に攻める絵里奈(隆太)。面白がるように顔を覗きこむと、さつきの口元が微かに動いていた。なにかの言葉を必死に繋いでいたので、絵里奈(隆太)はなんといっているのかを口の動きから推測した。

「…………いやだ」
「なに?」

 さつきは顔をあげ、絵里奈(隆太)を逆に睨み返した。明らかな敵意が含まれており、それだけではなく、覚悟もその瞳に宿らしていた。

「私はわかったの。みんなと一緒に歩くんだって。辛いこともあると思うけど、あかりさんやれいなちゃんと一緒に乗り越えていきたい」

 神さまの用意した祈りの時間より、親友と一緒に歩く時間を大事にすると言う。
 愚かな行為である。自ら進んで苦の道を歩もうとしているのだ。楽を選べばいいのにそうしないさつきの信念が絵里奈(隆太)にはわからない。しかしーー、


「よくぞ言った!」


 さつきの意志に賛同する声が境内に響き渡った。

「なに?」

 絵里奈(隆太)が振り向き、声の主を瞳に映す。その姿は絵里奈と瓜二つの少女であった。あかりも驚いていた。れいなも驚いていた。さつきも声を失うくらい驚いていた。そしてなにより、一番驚いていたのは、絵里奈(隆太)自身であった。

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「かみさまが、二人――?」

 そう。運命の悪戯か、絵里奈のコスチュームは笹林神社で奉る神さまと全く同じ格好だったのだ。神は全く気にしておらず、自分と同じ成りをしている絵里奈(隆太)ではなく、さつきとずっと目を合わせてコンタクトを取っていた。

「自由に歩くが良い。童に縛られるでない。童は自由な故、誰も縛りつけぬ。そして誰にも恩恵を与えぬ。しかし、常に傍にいてやる。これが神と人間の自然のカタチだ」

 少女の物言いにさつきは目に涙を浮かべて喜ぶ。今まで会えなかった分、再会できたことに感極まったのだ。

「……ひどいよ、こういう時にあっさり出てくるなんて……」
「泣くでない、人間。……と、泣きたいときは泣かせるべきか。どっちだと思う?童は分からぬ」
「えっ、あっ、その……」

 急に降られて焦るれいな。

「あなた、本当に……神さま、なの?」

 巫女であるのに神さまに会ったことは一度もない。だからこそあかりは神さまの存在を今は信じたかった。答えが欲しかったのだ。

「在るがまま答えを受け入れよう。それが自然の答えだ……人間の言葉で言うなら、『御想像にお任せ』であろうな」

 有耶無耶にする少女の答えだが、何故だかあかりは掬われた様な気がして気持ち軽くなったのを感じた。
 そして気持ちの余裕からか、笑みを浮かべたのだ。あかりの笑顔でまたれいなもさつきも笑顔になった。
 そして三人は少女と全く同じ格好で現れた絵里奈(隆太)へ顔を向けた。

「じゃあ、あの子は?」
「うわわっ!」

 三人が絵里奈を見て睨みつけている。ウソがばれたのだ。今までの恨みを晴らすかのようにジワリと距離を詰めていった。

「自ら神と名乗り、仕える巫女を誑かす者よ。本当なら天罰を下したいところだが……そうか。余もまた人ならざる者か」
「えっ?」

 少女は隆太の正体を見透かしていた。今の絵里奈は意識はなく、隆太がやりたい放題している。笹林神社の一件すら絵里奈は知らない。
 つまり絵里奈には罪はない。あるのはすべて隆太なのだから。

「罪人を裁きたいところだが、彼女に邪気はないか。はてさて、どうしてやろうか……」

 少女が考えるように視線を外した。その一瞬の隙をついて絵里奈(隆太)は全速力で横をすり抜け、階段を駆け下りていった。

「あっ逃げるよ!」
「こらあ、待てえ!」

 巫女三人も絵里奈(隆太)を追いかける。しあし、捕まればアウトなだけに隆太も死に物狂いで走り去っていった。結果途中で諦めてさつきたちは追うのを辞めてしまった。

 階段を全段降りた絵里奈(隆太)はそのままの足で帰路へ着いた。このまま走り抜ける予定だった。

『人でなしよ』

 耳に響く少女のに後ろを振り返らず走り続ける。余裕があれば人でなしという最高の褒め言葉に最高の皮肉でお返しするであろう。

『覚えておくがいい。余もまた人間であることを忘れてはいかん。自然の姿に還るが良い。……確かに伝えたぞ』

 テレパシーか。その一言を残して神の声もまた聞こえなくなった。 なにを言いたいのか分からずに絵里奈(隆太)もまた少女に反論を叫んでいた。

「自然の姿?元の姿に還る?バーカ!愛しの絵里奈ちゃんと一つになれたこの感動をみすみす手放してたまるかよ!」

 絵里奈の足でさらに加速する。気付けば時刻は15時を回っていた。


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 隆太はあかりに憑依していた。水着に着替えて一人軽い足取りで境内を歩く。当然、その場違いな容姿は周囲の人から不審がられ、遠巻きで見られていた。
 しかし、あかり(隆太)は全く気にしていない様子で自分の水着姿を上から覗いていた。

「えへっ。水着もまた栄えるなあ」

 目をとろんとしたように水着を引っ張り中を覗くと、あかりの綺麗な乳房が山をなしている。上から女性の身体を覗くと言うのがこんなにもえろいのかと隆太は改めて思い知らされる。絶対にカメラのレンズからでは撮影出来ない方向である。

「そうだ。家に帰ったら早速この角度からの撮影をしよう!その時は当然、絵里奈ちゃんの身体でね。うふっ」
「……寒いです、すごく」

 あかりの独り言にれいなだけじゃなくさつきも言葉を忘れて絶句していた。

「そうかしら。身体が火照って仕方ないんだけど?」
「あかりさん……」

 神さまの命令とはいえ、自分の親友が境内で水着姿でいることが本当に正しいことなのか分からない。現にれいなはこの苦痛に耐えられないように目をつぶって身体を震わしてていた。さつきは神さまと自分の判断、どちらを優先すべきかどうか答えを見い出せない状態が続いていた。
 そんな中、あかり(隆太)の暴走はさらに続く。

「ごめん。ちょっとトイレいってくる」

 一人走って境内のトイレに籠ってしまう。女子トイレで改めて明りの姿を鏡で映し、水着姿をあの辺りにする。

「うわあ。この子も可愛いなあ。贅肉もついてないし、モデルにぴったり容姿だよ。うふふ……ジャーン」

 肩からかけた水着を外し上半身を露出させる。白い肌がほんのり赤く染まっており、乳房を揉みながら感度も確かめていた。

「もう少しおっぱいはあった方がいいと思うけど、うふっ、揉み心地は申し分ないし、なんだか触っているだけでくすぐったいや」

 笑顔で乳房を揉んでいるあかりの姿も、誰かが見たら完全なオナニーだ。乳首をつまむと身体をビクンと震わせ、ポニーテールを揺らす。じわりと下半身が熱くなってくるのを感じるのだ。

「うわあ……これはもうダメだ。せっかくだから体験してみよう」

 実はあかりは尿意を我慢していたのだ。下半身が疼きながらも、先に排出するものをしたいという身体の訴えが徐々に強がってくるのを感じていた。
 あかり(隆太)は和室トイレに入る。腰をかがめ、水着を降ろして下半身も露出させる。薄いアンダーヘアーの見えるあかりの下半身に力をこめると、ちょろちょろと黄色い水が垂れ落ちてきた。

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「うわあ。足にまで流れてきちゃう、マズイ!」

 飛び散る尿に驚きながらも動くことのできないあかり(隆太)は出し切るまでじっと我慢する。ようやく全てを出し切ったように放尿が終わると、トイレットペーパーでアソコを綺麗にしながら、再び水着を装着した。

「はぁ。気持ち良かった!」

 尿一回で気持ち良くなるのは、おそらく男子とは尿への感じ方が微妙に違っていたからだろう。やはり、男子のように出ている場所からだすのではなく、内にある場所から尿を出すのだから、尿を出している間、身体を微弱で震わせているような感覚が続く。そのせいで火照った身体が出し切ったことで冷え切ることもなく、継続される。

 再び鏡の前に立ったあかり(隆太)は水着のゴムを掴むと、思い切り上に引き上げた。

「くひぃ――」

 ナイロン生地が股間に食い込む。あかりの陰部のカタチをばっちり残し、先程の放尿が微かに残っていた分を吸い込んだのか、シミになってかたどっていた。

「すごくイヤらしい……」

 次にあかり(隆太)は背をむいてお尻を突き出すと、もう一度水着を上に引き上げた。
 ハイレグのように食い込んだ水着はお尻を外気に曝し、お尻の割れ目も浮かび上がらせていた。

「はぁ……はぁ……」

 息が上がるあかり(隆太)。疼きっぱなしの身体に足をくねらせ、誰でもいいから犯してほしいと言う願望をよぎらせる。
 もしこの状態をあかり本人が知った時、いったいどのような反応を示すのか隆太は閃いたように鏡に笑みを浮かべた。

「さてと、この状態で戻してみるかな。いったいどんな反応示すだろうな」

 期待に胸ふくらませながら、すぅっとあかりの身体から抜け出すと、あかりは気を失うことなく辺りを見回していた。

「えっ……?わたし……っ!?」

 鏡の前に立っていることに茫然としていたあかりが、自分の状況に気付くと急に恥ずかしくなったのか、身を強張らせて隠す様に身体を抱いて小さくしていた。 

「なんで水着姿!?きゃああああ――――!!!」

 トイレから聞こえる悲鳴。さつきが慌てて駆けつけると、あかりは逆に逃げるように家の中へと消えていった。水着で慌てる様は滑稽で隆太は思わず笑い転げてしまった。

「あはは。その姿も写真に収めたかったな。さてと、元の身体に戻るとするか」

 隆太は絵里奈の身体に戻ろうと、先程境内の森の中に忍ばせた絵里奈の身体へ舞い戻る。木の根もとで眠る様に目を閉じている絵里奈。未だ気を失って眠っているのは、あかりと違いメンタル的に彼女の方が弱いせいかもしれない。
 隆太は絵里奈に重なる様に身体の中に入り込む。そうして隆太の姿が絵里奈の中に全て隠れてしまった時、眠っていた絵里奈の手がピクッと反応し始めた。

「ん……」

 瞼がゆっくり動きだし、絵里奈は目を覚ました。そうして身体が動くことを確認すると、不敵に笑った。

「はぁ。まだ眠っていて助かった。ただいま、絵里奈ちゃん」

 絵里奈(隆太)が絵里奈の身体を抱き住めると、服の中を覗き込むように服を引っ張り乳房を観察し鼻を伸ばしていた。

「くしゅん!……うわ。寒い」

 突然くしゃみをする絵里奈(隆太)。身体は熱を保っていなかったせいかやけに寒く感じられた。水着状態のれいなが感じていた寒さを実感すると、この寒さは思った以上に寒いことが分かった。
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 絵里奈(隆太)が目をさました後、しばらく隆太(隆二)と戯れる。気付くとお昼時になっていた。
 窓から外を覗くと朝と変わらない良い天気が続いていた。陽が出ていると幾分外は温かく、中にいるのはもったいない気がしてくる。
 そこで絵里奈(隆太)は思いついたように手を叩いてみせた。

「家の中にいても仕方ないし、出掛けちゃおうかな」

 外出することに決めたのだ。当然。絵里奈の姿での散歩である。隆太(隆二)も絵里奈(隆太)が決めた意見に否定をしない。

「じゃあ俺の身体はどこか押し入れにでも隠しておいてやるよ。俺はどうする?留守番でもしてようか?」
「うーん……。いや、せっかくだから、連れていくことにするよ」

 なんとなく母親は帰ってこない気がしていたし、自分を一人残しておくのは忍びなかったこともある。隆太(隆二)は絵里奈の部屋の押し入れに入り込み、目を閉じるとふっと身体から抜け出したように脱力した。そしてしばらくすると絵里奈の身体がゾクゾクと背筋が震えた。きっと隆二が戻ってきたという合図なのだろう。
 憑依される感じってこういう感じなのだろうと思いながら、手をゆっくり動かし、絵里奈の身体が今まで通り順調に動くことを確認した。そうしてようやく外に出かけたのだ。

 ――私服ではなく、コスチューム姿で。

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 あれほど親に咎めていた絵里奈にコスチュームで外出をさせてみる。魔法使いコスチュームではなく、神さまコスチュームにしただけ有りがたいと思ってほしい。
 まだギリギリ許されるかと思ったんだが、やはり絵里奈の容姿にコスチュームは目立ちすぎてしまうのだろう、通り過ぎる人々からは賛否両論の視線が飛び交っていた。

「なにあの子、すごい格好」
「恥ずかしくないのかしら」
「うおお――、マジ可愛い・・・」
「別に普通じゃね?」

 すれ違いざまに聞こえる絵里奈の感想を盗み聞きして思わず笑ってしまう。

(ああ、みんなに見られてるってきもちいいな。まるで芸能人になったみたいだ)

 撮る側から撮られる側へ移った隆太の足取りは軽くこのまま何処までも歩いていけそうだった。気分が良いと気持ちまで軽くなるのだろう。
 長い階段を軽足でのぼっていき、神さまのコスチュームにふさわしい神社に訪れた。
 夏では出店があるほどの町内の祭りが開かれる大きな神社、笹林神社である。
 久し振りにのぼった境内は祭り時とは比べ物にならないくらい静まりかえっているが、これが神社本来の姿だろう。
 境内で働く巫女さんが落ち葉を払って一ヶ所にまとめる。
 自分の心だけが高ぶっており、静かに流れている時間の流れに逆行してみたくなった。

「わああーーーーー!!」

 声をかけると何事かと思ったのだろう、巫女が振り向いていた。絵里奈を見てどういう態度をとるのか非常に興味があった。可愛く見えるようにニコニコ笑みを浮かべながら返事を待っていると、巫女の一人が絵里奈の姿を見て手に持っていた竹ぼうきを落としていた。
 その表情は絵里奈を見て心底驚いていると言う表情だった。

「カミサマ!?」

 巫女が絵里奈のことをそう言った。
 
「はっ?」
「ねえ、みんな。神さま!神さまが現れたよ!」

 巫女が絵里奈(隆太)のテンションをさらに上回る高い声で他の巫女にも声をかけた。ぐいっと襟を引っ張り呼びかける姿はただ事ではないことを絵里奈(隆太)にも知らせていた。

「神さまなんて、さつきの冗談だと思ってた・・・」
「本当に、神様っていたんですね」

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 残りの巫女が絵里奈の顔をしみじみ眺めていた。巫女がポツリとつぶやいた言葉から状況を察する。

(・・・まさか、俺を本気に神様だと思ってるのか?)

 コスプレしている姿を神様だと思う状況に驚きながら、絵里奈に近づいてくる巫女。

「神さま!お久し振りです!また会えてうれしいです!」

 少女、笹林さつきが声をかけた。彼女が神さまにあったことがあるのだろう。絵里奈に非常にくいつく神社の家系の女性である。そして、三人の中でもっとも影響力がありそうな子であった。
 
(それなら・・・)

 絵里奈(隆太)に一つの案が思い浮かぶと軽く咳ばらいをした。

「あー。私は神さまだ」
「・・・あれ?神さま。喋り方変えたのですか?」

 さつきに勘付かれたのではないかと焦りだす。なんとか誤解を解くように状況を打開する。

「神は気まぐれで話す。お前からすれば出会ったのはほんの数日前かもしれないけど、私からすると百万年前だ。だからあった時とは雰囲気が違うと思うけど、気にするんじゃないぞ」
「ハイ。神さま」
(あっさり信じちゃったよ。……確かに、信仰している神さまを疑ったら御利益なくなりそうだもんな。信じる者は掬われる、なんてな)

 神さまを信仰している故に神さまに騙される。
 隆太はどうあやら神さまになり変わり、さつきを誑かそうとしているようだった。

「見てください。今年の田畑の豊作を神さまに伝えるため、このような格好をいていました。似合ってますか?」

 大きくて赤い三角帽子を被り、まるでハロウィンの時に来ていたのではないかと思うくらいの魔法使いのコスチュームだ。

(似合ってるもなにも、コスプレとそう変わんねえな)

「ああ、に、似合っているよ。写真があったら撮りたいくらい」
「神さまの世界にもカメラがあるんですか?でしたら、一度でいいですから、神さまの世界を写真に収めて頂けませんか?神さまの住む極楽の世界を、是非一度拝見してみたいです」

(間違いなく閻魔の顔がドアップで映ってるだろうな)

 怖いことを言わないでほしい。……きっかけは自分で作ったんだが。
 それにしてもさつきは全く絵里奈を疑っていない。
 隙だらけと思えるほどの無防備である。

(これはいい)

 外に出たついでに、この神社で遊ぶことを考えた隆太であった。
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「絵里奈ちゃんのコスチューム姿ぁ……」

 カシャ――ッ
 独り言を言いながら絵里奈が先程やっていたように鏡の前でポーズを決めながら写真に収めていく。

「いいよぉ。とっても似合ってるよぉ……」

 カシャーーッ

 ボタンを押しフラッシュがたかれる度に、身体全体が熱くなるのを感じる。絵里奈のエクスタシーを隆太も感じているのだ。

「次はこの姿……魔法使いの姿をおさめよう!」

 絵里奈の部屋には普段着から水着姿や体操服もある中で、自分で作ったオリジナルのコスチュームもあった。
 記憶を読めば作ったのはやはり母親だった。完成度は極めて高く、普通に販売できるほどのコスチュームの山の中から一着を選んで着こんでいく。
 黒と赤をベースにした魔法使いの服だ。恥ずかしいという気持ちはさらさらなく、早く来てみたいと言う好奇心が掻き立てる。
 そうして着こんだ絵里奈の姿は先程とはまた違った印象を受けた。黒という落ちつきのある色が年齢よりもさらに落ちつきのある様子を伺わせる。それでも魔法使いと言うコスチュームが子供っぽさを滲ませており、お気に入りの姿としてカメラに保存されていく。

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「こんなの、やめられないよぉ。もっと撮ってぇ」

 カシャーーッ

 被写体は絵里奈。でも心は自分。憑依したことで絵里奈を好きなポーズを取らせることが出来る。絵里奈が絶対しないだろう、がに股姿や、お尻を突き出して誘うようなポーズもも写真に収めていった。

「くうぅ……撮られるってサイコー」

 100枚は超える回数で写真を撮り続けた。ようやく満足した絵里奈(隆太)は一度写真を撮ることを辞めて、未だ目を閉じ眠り続けている自分の身体へと近づいていった。
 二階まで自身の身体をあげるのは大変だった。しかし、そのまま外に放置するわけにもいかなかった手前、絵里奈の腕で引きずりながら二階にあげたのだ。
 傷だらけの身体。元に戻ればとっても痛そうだ。絵里奈のベッドで眠るように倒れる自分の身体を、絵里奈の目で見つめていた。身長が180cm近くあるせいか、とても大きく感じた。

「……絵里奈ちゃんが150cmいってないんだもんな。30cmの差はとても大きいな……」

 えへっ、と笑った隆太はなにかを思いつくと、三脚の向きを移動し、三脚に乗っているカメラを外した。

「さて、じゃあ次は動画だな」

 続いてハンディカムをセットする。ベッド全体が入る様にレンズを調整すると、録画ボタンを早速押した。
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「よし、とりあえず様子見だな。いつでもどっちにも憑依―はい―れるようにスタンバイしてよう!」

 隆太は『飲み薬』を口につけると、ぐいっと飲みほした。口の中に甘みが広がり、トロリと喉に流れ落ち、まどろみの中でたゆたっている自分がふと眼を開けると、身体が宙に浮いていることに気付く。
 重力は感じない。それでも何処かに飛ばされることなく、自分の行きたい方向に動かせる。それはまるで世界全体が水の中で、自分はその中で泳いでいるかのようだった。

(魚人になったみたい。これなら誰も俺から逃げられないぞ)

 手の平で掻き分けて木戸家に侵入する。中ではキッチンでホットココアを作っていた母親が電子レンジにかけていた。後はタイマーが鳴るのを待つだけなので、料理は終わったようなものである。
 と、ここで母親が絵里奈に声をかけた。

「絵里奈さま。私これから家を留守にします。少しの時間おひとりで我慢出来ますか?」
「いってらっしゃい……子供扱いしないでよね!」

 絵里奈は無愛想に言葉を返した。どうやら母親にはこれから用があるようだ。 

(絵里奈ちゃんを一人残すのか。・・・何かあったら大変じゃないか!)

 と、不法侵入している隆太が思う。幽体の身であるから誰にも気づかれることはないとはいえ、子供一人残して出掛ける親の不用心さはない。常に危険はいっぱいである。

(わかりました、お母さん!絵里奈ちゃんは俺が責任を持ってお守り致します!)

 そう胸に硬く誓うが、当然隆太の声は母親には届かなかった。
 チーンとレンジが鳴った。ホットココアが完成したのだ。
 絵里奈は差し出されたココアを美味しそうに飲み干していく。その横で母親は出掛ける支度を始めていた。ガーターベルトを外し白のソックス、、メイド服を脱いで下着姿を披露する。

(そう言われると絵里奈のお母さんって年齢の割に若く見えるよな。一体何歳なんだろう?メイド服が似合うくらいだもんな。ひょっとしたらまだ三十歳前なんじゃないか)

 メイド服と言う艶やかなファッションから一変、カジュアルの落ちつきのある色を使ったカーディガンとタイトスカートを着こなし、そして黒のストッキングを身に付け終え、最後に眼鏡をかけると、そこにはどこにでもいる母親の姿があった。

(コスプレってすげえ。本当に別人だよな)

「絵里奈。良い子にしてるんですよ」
「わかってるわよ。いってらっしゃい!」

 母親の口調に戻っている。ここまで別人になりきると逆に清々しいほどである。メイドという目下の立場から母親の目上の立ち場への変貌。
 口調が変わったのは、母親の思うメイド像が相手を尊重していると言う態度を映しているからである。普段なら娘に対して使わない様な態度も、母親の演じるメイドには必要なものとなる。

(最初会ったときはコスプレに興味ないと思ってたけど、なんだかんだで母親も楽しんでいたんだな)

 それは然り。絵里奈がコスプレが好きであるのなら、その親もまたコスプレが好きに違いない。
 メイドになりきっている母親もまたコスプレを楽しんでいたのである。 


 と、扉が閉まり母親が外出してしまった。家に残されたのは絵里奈だけになっていた。

「さて、と……へへっ」

 母親が外出したことで気が楽になったのか、ホットココアを一気に飲み干した絵里奈は突然二階に駆け上がり自分の部屋に戻っていった。
 これからなにをするのか興味があった隆太は絵里奈を追いかける。スピードでは負けるものの、壁や階段など関係ない為、最短距離を突き進めばさほど絵里奈から遅れることなく絵里奈の部屋を訪れることが出来た。
 締められた扉。かぎは掛かっていないものの、幽体である以上ドアノブを掴むことの出来ない。
 いったい中でなにをしているのか気になって仕方がなかった。

(開け、ドアアアア――!!……って、今の俺、幽体なんだっけ?)

 常識は通用しないことを忘れていた。身体を扉に押し付けグッと力を入れると、扉は開くことなく隆太を部屋の中に入れてくれた。というよりはむしろ、すり抜けたという言った方が良い。
 身体がなければこんなことだって出来る。そして、隆太の目に映り込んだ絵里奈の姿は――
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「きゃー!可愛い!!」
「カミサマ~!こっち向いて~!」

 くるりと振り向く少女。目があった瞬間、女性たちはまた「可愛い」と声をそろえ、男性陣はシャッターをきった。
 フラッシュを浴びることや注目を浴びることが少女、木戸絵里奈―きどえりな―は大好きだった。
 今日は年に二回しかないコスチュームフェスティバル(略してコスフェ)。絵里奈は近くの神社が奉っている神さまの格好をして颯爽として登場したのだ。
 毎年出ている彼女だが、今年は特に評判が良かった。黄色い歓声に応えるようにポーズを決めると、カメラマンがフラッシュを一斉にたいた。

(きもちが良いなぁ……ずっとこうしていたいかも)

 身体が熱くなるのを感じながら快感に酔う絵里奈だったが、

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「絵里奈さま。お時間になります」
「ええ!?もう?」

 連れの女性が絵里奈に声をかけると、驚いたように時計台を振り向いた。確かに時間は既に訪れてから3時間が立とうとしていた。

「もう少しいいでしょう?今年は特に評判がいいの」
「ダメです、絵里奈さま。帰りますよ」

 どうやら女性との約束の時間が経ったらしく、家に帰る様に言われているらしい。
 まさに子供である。

「ケチ!次は半年なんだよ!次の半年にはどうなっちゃうか分かんないよ!人気なんて一気に風化して行っちゃうし、この時を逃したら次はないかも☆」 
「こういうお姿がみっともないですよ、絵里奈さま」
「ううう……」

 可愛くしても女性には聞かず、結局絵里奈は女性と供にお祭りを放れることになった。
 絵里奈のいなくなった後の会場は盛り上がりを見せていたが、メインの退場によって、少しだけ賑やかさが少なくなったような気がしていた。

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