純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『常識改変』 > 塗り薬『塗り絵』

「おっ」

 屋上から見下ろした俺の目に、ようやく医者が到着したのが見えた。

「先生。よろしくお願いします」

 保険の先生がお出迎えし、これから準備をするのだろう。慌ただしく校内に入っていく先生を見下ろし、俺もようやく動き出す。
 昼休みには身体測定が始まるだろう。その間に俺も事を進めなくてはいけない。

 『塗薬』で身体測定の注意事項を校内へ塗り込んでいく。
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 屋上から見下ろす、女子生徒たちで、俺が目を付けたのは。小金井薫だった。
 スポーツ万能で人を寄りつかせない態度をとる彼女が、人に助けを求める姿を見たかったからである。

「よし、おまえは小金井薫だ」

 フィギュアに相手の人物を想いながら『塗薬』を塗っていく。フィギュアも二回目とあって『塗薬』でベタベタになっていた。しかし、フィギュアは二回目も成功したように、光に包まれると、小金井薫と同じ姿になって俺の前に現れた。

      スポーツ少女お久し振り

 先生の話を聞いているせいか、無表情で真っ直ぐを前を見て気を付けをしている薫。
 体操服姿をマジマジ見られているのにイヤな顔せずにじっと立ちつくしている。それだけでも十分目の保養になる。
 と、グランドでは大きく隣同士と距離を取って、準備体操を始めた。
 薫もまた準備体操を始めると、屋上での薫も準備体操を始めた。
 屈伸から始め、アキレス腱、腰を大きく反らすようにと、関節をほぐしていく。寒くなってきたこの時期は特に準備体操に時間を割いた。

「・・・もう、そろそろ触ってもいいかな?」

 準備体操する薫を見ているのもいいが、我慢の限界だった。俺は薫の細い身体を抱きしめると、薫が驚いたように「きゃっ」と声を上げた。

「いま、誰かに抱きつかれた様な気がして……」

 グランドでは急に声を上げた薫に皆が驚いたように目線を送っていた。当然、グランドでは薫の周りには誰もいない。抱きつくような生徒の影は微塵もないのである。薫は気のせいだと思い、再び準備体操を始める。

「……そうか。感覚とかリンクしちゃってるから相手が驚いちゃうのも無理ないか」

 しかし、これでは思ったように身動きが取れない。せっかく薫の人形が目の前にあるのに触れないのであれば意味がない。棚から牡丹餅である。

「そうだ。同じように『塗薬』で――」

 俺は自分のベルトを取ると、『塗薬』で丁寧に塗っていく。

『このベルトに巻かれたモノは感覚が途切れる』

 『塗薬』を込めたベルトを薫の身体に巻きつける。腰に巻いたベルトが取れないように一番奥の穴でベルトをしっかり締めた。ベルトをした違和感に薫が気付くかと思ったが、最後まで薫は気付くことはなかった。

「・・・それってつまり、効果がでたのかな?」

 未だに準備体操をしている薫の身体をゆっくりと抱きしめる。ぎゅっと抱いた薫の身体は思った以上に細い。シャンプーの臭いもしっかり香るまで近づいた俺に、グランドにいる薫は今度は叫ぶことをしなかった。

「じゃあ、今度は――」

 後ろから抱いた手を今度は薫の体操服の中に入れ、まさぐり始めた。薫の肌の温かみを直に触れる。

「人の体温ってあったけえ。……んっ、このコリコリしてるのは、まさか――」

 右胸の辺りにある薫の乳首だ。薫は思った以上に山がなかったため、最初は乳首だと思わなかった。

「スポーツマンはよく食べるからおっぱいもあるかと思ったけど、薫はあまりないね。あるのは筋肉だけなのか」

 薫本人が聞いたら怒鳴られそうな発言も切り捨てられ、俺は薫のフィギュアと抱きついていた。
 グランドではマラソンが始まり、生徒たちがマラソンコースへ走り去った様子が見届けていた。

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 身体測定まで時間があった。俺の予想が正しければ、今から医者を手配しているはずだ。
 用意できても半日経たなければ医者も動けないだろう。診察の時間はどこも始まっているだろう。

 となれば授業をただ過ごすのもつまらない。せっかく『塗り薬』が手元にあるのだ。

(そうだ。いま先生から預かったモノ)

 持ち物検査に引っかかった私物をみる。

「下着。手をつけたらタダじゃおかないからね」
「誰が触るか!!」

 隣の席に座る三枝真希―さえぐさまき―に念を押される。前回は女性の下着系を扱った為に勘違いしているかと思われがちだが、下着以外にクラスメイトからは多くの私物を預かっていた。漫画、化粧品、香水、ゲーム、終いにはフィギュアなんかも入っていた。

(いったい誰がこんなの持ってきてるんだよ……)

 クラスでボッチになるのも良くないが、自らボッチになりたいと思う奴も良くないと俺は思う。フィギィアを取り上げることでクラスが一段と団結するのなら、持ち物検査は成功だったんじゃないかとある意味思う。
 ……自己弁護ではあるけどね。

(まてよ。せっかくだからこのフィギュアを使って――――)

 俺の中でフツフツと湧き上がる欲望が込み上げてきたのだった。
 授業が終わり、休み時間になると女子生徒たちは思いっきり机に突っ伏していた。

「ながいよぉ」
「わたし、だめぇ」
「次、体育だよね?ちょっと、休ませて」

 始まる前からぐったりしている女子たち。座っている椅子にも水滴が付着しているのを確かに見た。

「こんなんじゃ動けないよ」
「お願い、發春くん……下着返して」
「もっと、清楚なのに変えてくるから。今回だけは大目に見て」

 先程の強気な発言がウソのように、女子たちは俺に頭を下げていく。これだけでも悪い気はしない。俺も女子の下着を持っていてもどうすることもできない。

「わかったよ。好きに持って行けよ」

 俺が席から放れると、女子たちは群がるように自分の下着を回収に走った。

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 俺と川島さんは学校についたが、当然門前で持ち物検査をやっているわけもなく、俺たちは静かに校舎内に入った。
 身体測定も持ち物検査も話題にのぼらず、生徒たちはそれぞれ雑談し花を咲かせていた。

「……今日、身体測定あるはずじゃないの?」

 疑いの眼差しで見られるのはもっともである。

「も、もうすぐじゃないかな。川島さん先に行きなよ」

 頭に?マークを浮かべたまま教室に向かう川島さんと別れ、俺は裏庭に足を運ぶ。誰の目にもつかない校舎の老朽化した傷。色あせたコンクリートが代々続く校舎の面影を残す。

 今日はなんて良い天気なんだろう、と思わず回想しそうになった。

 校舎に染み渡るように塗る『塗り薬』。俺の思い描く学校へと生まれ変わるように――。

 ・定期的に持ち物検査がある。私物はもちろん、下着もチェックが入る。
 ・持ち物検査と身体測定は毎回同じ日に行われる。
 ・身体測定時はなにをされても測定中なので気にしない。でも感じることはできる。
 ・検査、測定に引っかかった生徒は公正する場が与えられる。
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 この事に気がついたのは、単に興味本位だったのかもしれない。
『塗薬』を購入した俺、鶴野發春―つるのはつはる―の手元に、オ〇ナインH軟膏のような『塗薬』が届いたのは最近だった。
 蓋を開けて中身を掬うと白く艶のあるクリームが重く付着していてとても綺麗だった。、いったいこれにどういう効果があるのか物凄く期待していた。
 しかし、部活は帰宅部、ケンカは日和見主義、いじめは見て見ぬフリの俺が怪我をすることは日常ではまったくなく、傷を作って家に帰った日には血相変えて飛んできて心配するほどの過保護に育てられた俺にとって、生傷を作るのでさえ難しい。
 リスカのように手首をカッターで切るという現場を見られた日には、臨時の家族会議が行われるであろう。

「(………俺、なんで『塗薬』なんて買ったんだ?)」

 手に付けたクリームをノート(たまたまティッシュがなく、取り行くのが面倒くさかった)で拭いた。
 次の瞬間だ。
 姉の美羽―みう―が俺の部屋に入ってきたのだ。・・・・・・裸姿で。

「はっ……?」

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 呆気にとられる俺、いったいなにしに入ってきたというのか。

「あれ?ここ私の部屋じゃなかったっけ?」
「ボケたか、ババア」
「なんですってえ!」
「事実だろうが!ねえちゃんの部屋は隣だろう?」
「あああ。そうだったわね!ごめんねえ」

 普段にもまして声が裏返っているぞ。動揺しまくりじゃねえか。

「ちなみに、なんで裸なんだよ?風呂あがりでもなさそうだし」
「わたし、部屋に入る前は全裸になるの」
「俺、弟なのに初めて聞いたわ!!」

 そんな姉イヤだああああ!!!

「馬鹿か!いますぐそんな癖を辞めろ!」
「くせ?私の癖だったかしら?ホホホホ……」

 笑い方が叔母さんくせえ。大丈夫か、俺の姉。ちょっと、いや、物凄く将来が心配になってきた。こう見えても22だぞ。今のやり取りで大学から帰ってきてから物凄く変わってしまったんじゃないかと冷や汗をかいたぞ。大学こわい。

「わたしの処女あげようか?」
「でてけええええ!!!」

 扉と供に姉を部屋から追い出す。先程、『勉強やりなさい』と言われて険悪ムードの仲だった俺たちの間は、さらに深い修復不可能な溝が入ってしまったような気がした。

 こんな馬鹿姉に叱られる俺って一体……

 テーブルに座って勉強姿勢に戻る。……そういえば、『塗薬』の存在を一気に忘れてしまったような気がした。
 まともな姉だと思っていたのに、幻滅に近い思いが込み上げて疲れてしまった。


「おかあさん!どうして夜空は暗いの?」


「姉ちゃん、馬鹿だろう!!!」

 思わず叫んでしまった。夜空が暗いのは当り前だろうが。――夜なんだから!!

 いったい、どうして姉がここまで馬鹿になったのだろうか。姉の変わり様に頭が痛い。『塗薬』でも塗ってみるか……。
 と、先程手についた『塗薬』を落とす為に拭いた丸めたノートをおもむろに広げて見せる。ちょうど姉に叱られむしゃくしゃしていた時だ。

『姉ちゃんの バカ !! 』

 白紙のノートにデカデカと書かれた姉への恨み言。まあ、何の役にも立たないノートだ。丸めて捨てるしかなかったノートであるが、そこに『塗薬』をつけてしまっただけのことだ。

「………まさか――――」

 姉の変わり様が、この一文にかかっているものだとしたら――――
 俺は塗薬に描かれた姉への恨み言を消しゴムで丁寧に消していった。
 バカという文字が見えなくなったくらいだ。

「お父さん。地球が丸いのは、実は一度地球が溶けたからなんだよ。ほらっ、宇宙空間で水って丸くなるよね?地球の起源を知るために一度も溶けていない小惑星の化石を手に入れてきた宇宙探査機ハヤブサって凄いよね?」

 姉ちゃん、マジすげえ。宇宙、マジぱねえ。
 姉ちゃんってなに専攻してたんだろう?天文学?物理学?etc・・・

「やっぱりそうなんだ……」

 『薬』と聞いて人にしか効果が及ばないと思っていたまさかの罠。


 『塗薬』は『物』にも効果があるんだ。



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